説明

溶接状態監視装置及び方法

【課題】溶融状態や突合せ状態等の電縫管の状態を、オンラインで且つ従来よりも正確に監視できるようにするための溶接状態監視装置及び方法を提供する。
【解決手段】鋼板の両端部を加熱して溶接する際に、該溶接部分から放射された光に基づく画像を拡大して撮像できるようにするためのレンズと、該画像を製造ラインの上流側から撮像し画像データに変換する撮像素子を有する撮像手段と、それによって得られた画像データに基づいて、前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報を求め、求めた輝度情報又は温度情報から、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報を計算して、計算した1次元の輝度情報又は温度情報を用いて、該溶接部分における鋼板の溶融状態及び鋼板の突合せ状態を解析。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫管の製造状態監視装置、及び電縫管の製造状態監視方法に関し、特に、電縫管の状態をオンラインで監視するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電縫管を製造する場合には、まず、帯状鋼板の両端部が互いに対向するように複数の成形ロールを用いて、帯状鋼板を円筒状にする。そして、当該円筒状の帯状鋼板と略同軸に配設した誘導コイル、又は電極であるコンタクトチップによって、円筒状にした帯状鋼板の両端部(溶接面)に高周波電流を通電し、この高周波電流により帯状鋼板の両端部に生じるジュール熱により、溶接面を加熱溶融する。そして、加熱溶融した部分をスクイーズロールで加圧することにより接合する。
【0003】
以上のようにして電縫管を製造する場合、溶接面のエッジ部分から溶融する。したがって、溶接面の中央部分の溶融状態が問題となる。すなわち、溶接面の中央部分が溶融していないと、スクイーズロールで加圧しても溶接面が接合しなかったり、製造した電縫管の強度が不足したりする。一方、溶接面の中央部分が溶融し過ぎていると、溶接面から押し出されたスケール(酸化物)が電磁力により溶接面に引き込まれ、このスケールが欠陥の要因になる。
したがって、電縫管製造ラインにおける電縫管の溶接状況を正確に監視することは極めて重要である。
【0004】
そこで、特開平5−123874号公報には、製造中の電縫管の溶接点の真上に設置したカメラを用いて溶接点の周辺の静止画像を撮像し、撮像した静止画像をデジタル画像として取り込んで画像処理を行うことにより、溶接点の位置を求める技術が開示されている。
【0005】
また、特開昭62−203680号公報には、製造中の電縫管の管内にイメージファイバ(ファイバスコープ)を通し、そのイメージファイバにより得られた溶接部分の画像を画像処理して電縫管の突合せ状態を推定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開平5−123874号公報に記載の技術では、製造中の電縫管の溶接点の真上から溶接点の周辺の画像を撮像しているために、例えば、電縫管の軸方向から見た突合せ状態が逆V型であり、低入熱の状態(溶接面が十分に溶融していない状態)であると、適正な状態であると判断してしまうおそれがある。したがって、溶接面の突合せ状態を含めた入熱状態(溶融状態)を把握することが極めて困難であるという問題点があった。
【0007】
また、特開昭62−203680号公報に記載の技術では、イメージファイバにより画像を得ているために、溶接面の状態を把握するのに十分な解像度で撮像することができない。また、イメージファイバを構成する各ファイバの間(隙間)の部分の画像が得られず、全体の画像が所謂メッシュ状になってしまう。したがって、溶接面の状態を正確に把握することが極めて困難であるという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、溶接部分における鋼板の溶融状態及び鋼板の突合せ状態等の電縫管の溶接状態を、オンラインで且つ従来よりも正確に監視できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
本発明の電縫管の製造状態監視装置は、電縫管を製造するために円筒状に形成された鋼板の両端部を加熱して溶接するときに、溶接部分の状態をオンラインで監視する電縫管の製造状態監視装置であって、
【0010】
具体的態様として、前記溶接部分から放射された光に基づく画像を伝達するリレーレンズと、前記リレーレンズを収容する、少なくとも一部が非導電体製の収容体と、前記リレーレンズにより伝達された画像を撮像する撮像手段または、前記溶接部分を拡大して撮像できるようにするためのレンズと、前記レンズを透過した光に基づく画像を、製造ラインの上流側から撮像する撮像手段と、それら撮像手段によって得られた画像データに基づいて、前記溶接部分における鋼板の板厚方向の状態を解析する解析手段と、該解析手段により解析された結果を表示装置に表示する表示手段とを有し、溶接部分の板厚方向の情報を収集及び処理することを特徴とする。そして、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0011】
(1)電縫管を製造するために鋼板を円筒状に形成しながら、該鋼板の両端部を加熱して溶接する際に、該溶接部分の状態をオンラインで監視する電縫管の製造状態監視装置であって、
該溶接部分の該鋼板の突合せ面から放射された光を該溶接工程の上流側から撮像する撮像手段と、
該撮像手段によって得られた画像データにおいて、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向内側端部を下端中央とし、前記鋼板の板厚に相当する長さを縦方向長さとする測定エリアを設定して、該測定エリアの画像データに基づいて、前記溶接部分における鋼板の板厚方向の状態を解析する解析手段と、
該解析手段により解析された結果を表示装置に表示する表示手段を有し、
前記解析手段は、前記測定エリアにおける画像データに基づいて、前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報を求め、求めた輝度情報又は温度情報から、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報を計算して、計算した1次元の輝度情報又は温度情報を用いて、該溶接部分における鋼板の溶融状態及び鋼板の突合せ状態を解析することを特徴とする電縫管の製造状態監視装置。
(2)前記解析手段が、前記測定エリアにおける前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報から、ライン毎の最大輝度又は温度を求めて、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報とすることを特徴とする(1)に記載の電縫管の製造状態監視装置。
(3)前記撮像手段の撮影分解能が0.2mm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電縫管の製造状態監視装置。
(4)前記解析手段は、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における輝度情報又は温度情報と、予め設定した第1及び第2の閾値とを比較し、前記輝度情報又は温度情報が第1の閾値以下である場合には、前記溶接部分が低入熱状態であるか否かを解析する第1の判断手段と、前記輝度情報又は温度情報が第2の閾値以上である場合には、前記溶接部分が過入熱状態であると判断する第2の判断手段とを有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
(5)前記輝度情報又は温度情報の飽和領域が、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向の外側端部又は内側端部に対応する位置にある場合には、前記溶接部分の突合せ角が異常であると判断する第3の判断手段とを有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
(6)前記解析手段は、前記撮像手段によって異なる時間に得られた2つの画像データにおいて、前記測定エリアを第1の測定エリアとして、該第1の測定エリアを含み、且つ少なくともその横方向の長さが該第1の測定エリアの横方向長さより長い第2の測定エリアをさらに設定して、該2つの画像データそれぞれの第2の測定エリアの画像データに基づく輝度情報又は温度情報を比較して、前記溶接部分における酸化物の混入状態を解析する電縫管の製造状態監視装置であって、
該2つの画像データの差分データを生成する差分画像生成手段と、前記差分画像生成手段により生成された差分データの内の前記第2の測定エリア内のデータに基づいて、前記溶接部分に予め設定した閾値以上の輝度低下又は温度低下があったか否かを判定する変化判定手段を有し、前記変化判定手段により前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下があったと判定された場合には前記溶接部分に酸化物があると判断し、前記変化判定手段により前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下がなかったと判定された場合には、前記溶接部分に酸化物がないと判断する
ことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
(7)前記撮像手段が、前記溶接部分から放射された光に基づく画像を拡大して撮像できるようにするためのレンズと、該画像を製造ラインの上流側から撮像し画像データに変換する撮像素子を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
(8)前記レンズが、前記溶接部分の突合せ面の板厚方向の各位置から放射された光を入光できる位置にあって、該レンズの焦点を該溶接部分に合わせることのできる位置に設けられたことを特徴とする(7)に記載の電縫管の製造状態監視装置。
(9)前記レンズが、前記溶接部分の中心部分から該レンズの光軸方向を見たときの仰角が、マイナス20°以上20°以下である位置に設けられていることを特徴とする(8)に記載の電縫管の製造状態監視装置。
本発明の電縫管の製造状態監視方法は、電縫管を製造するために円筒状に形成された鋼板の溶接部分の状態をオンラインで監視する電縫管の製造状態監視方法であって、前期電縫管の製造状態監視装置に関し、該溶接部分から放射された光を撮像し、それを画像データに変換する撮像ステップと、該画像データに基づいて、前記溶接部分の鋼板の板厚方向の状態を解析する解析ステップと、前記解析した結果を表示装置に表示する表示ステップを有することを特徴とする。
そして、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(10)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置に関し、電縫管を製造するために鋼板を円筒状に形成しながら、該鋼板の両端部を加熱して溶接する際に、該溶接部分の状態をオンラインで監視する電縫管の製造状態監視方法であって、
該溶接部分から放射された光を撮像し、それを画像データに変換する撮像ステップと、
該画像データにおいて、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向内側端部を下端中央とし、前記鋼板の板厚に相当する長さを縦方向長さとする測定エリアを設定して、該測定エリアの画像データに基づいて、前記溶接部分における鋼板の板厚方向の状態を解析する解析ステップと、
前記解析した結果を表示装置に表示する表示ステップを有し、
前記解析ステップは、前記測定エリアにおける画像データに基づいて、前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報を求め、求めた輝度情報又は温度情報から、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報を計算して、計算した1次元の輝度情報又は温度情報を用いて、前記溶接部分における鋼板の溶融状態及び鋼板の突合せ状態を解析することを特徴とする製造状態監視方法。
(11)前記解析ステップが、前記測定エリアにおける前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報から、ライン毎の最大輝度又は温度を求めて、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報することを特徴とする(10)に記載の電縫管の製造状態監視方法。
(12)前記解析ステップは、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における輝度情報又は温度情報と、
予め設定した第1及び第2の閾値とを比較し、該輝度情報又は温度情報が第1の閾値以下ある場合には、前記溶接部分が低入熱状態であるか否かを解析する第1の判断ステップと、前記輝度情報又は温度情報が第2の閾値以上である場合には、前記溶接部分が過入熱状態であると判断する第2の判断ステップとを有することを特徴とする(10)又は(11)に記載の電縫管の製造状態監視方法。
(13)前記輝度情報又は温度情報の飽和領域が、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向の外側端部又は内側端部に対応する位置にある場合に、前記溶接部分の突合せ角が異常であると判断する第3の判断ステップとを有することを特徴とする(10)〜(12)のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視方法。
(14)前記解析ステップは、撮像した異なる時間に得られた2つの前記画像データにおいて、前記測定エリアを第1の測定エリアとして、該第1の測定エリアを含み、且つ少なくともその横方向の長さが該第1の測定エリアの横方向長さより長い第2の測定エリアをさらに設定して、該2つの画像データそれぞれの第2の測定エリアの画像データに基づく輝度情報又は温度情報を比較して、前記溶接部分における酸化物の混入状態を解析する電縫管の製造状態監視方法であって、
該2つの画像の差分データを生成する差分画像生成ステップと、該差分画像生成ステップにより生成された差分データの内の前記第2の測定エリア内のデータに基づいて、前記溶接部分に予め設定した閾値以上の輝度低下又は温度低下があったか否かを判定する変化判定ステップを有し、該変化判定ステップにより、前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下があったと判定された場合には、前記溶接部分に酸化物があると判断し、前記変化判定ステップにより、前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下がなかったと判定された場合には、前記溶接部分に酸化物がないと判断する
ことを特徴とする(10)又は(11)に記載の電縫管の製造状態監視方法。
【0012】
ここで、(6)(14)にて言う「異なる時間に得られた2つの画像」とは、時間間隔を空けて撮像された2つの画像のことであり、30msec以内の時間間隔にて撮像された2つの画像であることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、次のような効果が得られる。即ち、電縫管を製造するために円筒状に形成された鋼板の溶接部分から放射された光を、高精細に撮像することができ、それを画像データに変換して解析、表示することができ、これにより高精度な解析と、画像加工やデータ加工による分かり易い表示が可能となる。これら高精度な解析結果や分かり易い表示は、結果的に、高精度、応答性のよい制御を可能とし、品質の安定や生産性の向上に寄与するだけでなく、オペレータの作業性、監視性を著しく改善する。
【0014】
また、少なくとも一部が非導電体製の収容体の内部に入光させ、入光させた光に基づく画像をリレーレンズにより伝達して撮像手段で撮像するとき、収容体を非導電体製にすることによって、収容体が電磁ノイズによって溶損してしまうことを防止することができるだけでなく、撮像手段を電磁ノイズ源である誘導コイル或いはコンタクトチップから離れた場所に設置できるため、ノイズの影響を抑制でき、溶接部分をその側方から撮像手段の解像度に応じた解像度で撮像することができることから、溶接部分の情報を従来よりも正確に且つオンラインで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、CCDカメラ、変換レンズ、及びリレーレンズユニットの詳細な構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、情報処理装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、円筒状帯鋼の両端部(溶接部分)の様子の一例を示す図である。
【図5】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、突合せ角が0[°]である場合の“円筒状帯鋼の溶接部分の画像”の一例を示す図である。
【図6】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、突合せ角が異なる場合の“円筒状帯鋼の溶接部分の画像”の一例を示す図である。
【図7】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、円筒状帯鋼の両端部の突合せ角を説明する図である。
【図8】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、第1の測定エリアの一例を示す図である。
【図9】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、R成分の輝度分布の一例を示す図である。
【図10】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、B成分の輝度分布の第1の例を示す図である。
【図11】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、B成分の輝度分布の第2の例を示す図である。
【図12】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、第2の測定エリアの一例を示す図である。
【図13】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、差分画像を生成する過程の一例を概念的に示す図である。
【図14】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、円筒状帯鋼の溶接部分の“入熱状態及び突合せ状態”を解析する際の情報処理装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、円筒状帯鋼の溶接部分におけるスケールを解析する際の情報処理装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図16】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の他の例を示した図である。
【図17】本発明の関連発明の第2の実施形態を示し、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示す図である。
【図18】本発明の関連発明の第2の実施形態を示し、円筒状帯鋼の溶接部分の真上に配置されたCCDカメラにより撮像された画像の一例を示す図である。
【図19】本発明の関連発明の第3の実施形態を示し、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示した図である。
【図20】本発明の関連発明の第3の実施形態を示し、CCDカメラ、変換レンズ、及びリレーレンズユニットの詳細な構成の一例を示す図である。
【図21】本発明の関連発明の第1の実施形態を示し、リレーレンズユニットの詳細な構成の一例を示す図である。
【図22】本発明の実施形態(第4の実施形態)を示し、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示した図である。
【図23】本発明の実施形態(第4の実施形態)を示し、図22に示す電縫管製造ライン(電縫管製造システム)を横方向から見た図である。
【図24】本発明の実施形態(第4の実施形態)を示し、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の他の例を示した図である。
【図25】本発明の実施形態(第5の実施形態)を示し、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の関連発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示した図である。尚、図1では、説明の都合上、電縫管製造ラインが有する構成の一部を省略している。また、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は図1(a)を横方向から見た図である。また、図1では、矢印の方向(図1(a)では手前から奥方向、図1(b)では左から右方向)に帯状鋼板1が進むものとする。
【0017】
電縫管製造ラインでは、帯状鋼板1の両端部(両側端部)が互いに対向するように、図示しない複数の成形ロールを用いて、帯状鋼板1を円筒状にする。図1では、このようにして帯状鋼板1が円筒状になった後の状態を示している。尚、以下の説明では、円筒状になった帯状鋼板1を必要に応じて円筒状帯鋼1と称する。
【0018】
インピーダ2は、円筒状帯鋼1の内部に位置するようにしている。コンタクトチップ3a、3bに高周波電力が供給されると、インピーダ2とコンタクトチップ3a、3bとの作用により、高周波電流が円筒状帯鋼1に流れる。高周波電流は、表皮効果により円筒状帯鋼1の両端部に集中する。これにより、円筒状帯鋼1の両端部がジュール熱により加熱溶融される。尚、本実施形態では、必要に応じて、コンタクトチップ3a、3bに冷却水が供給されるものとする。また、円筒状帯鋼1を直接通電加熱するとき場合には、インピーダ2を用いずに、コンタクトチップ3a、3bの作用によって高周波電流を円筒状帯鋼1に流すことができる。このようにインピーダ2は必須の構成ではない。
【0019】
スクイーズロール4a、4bは、円筒状帯鋼1の溶接部分5よりも後段で、円筒状帯鋼1を介して互いに対向する位置に配置される。加熱溶融された円筒状帯鋼1は、このスクイーズロール4a、4bにより加圧されることによってその両端部が接合される。加熱溶融された円筒状帯鋼1がスクイーズロール4a、4bにより加圧される際には、溶融金属の一部と共にスケール(酸化物)が、円筒状帯鋼1の衝合部(円筒状帯鋼1の両端部のうち最初に接合する部分)等から排出される。
以上のようにして形成される電縫管6の溶接部分の状態を監視するために、電縫管の製造状態監視装置(以下、必要に応じて監視装置と略称する)が設けられている。
【0020】
図1において、監視装置は、CCDカメラ11と、変換レンズ12と、リレーレンズユニット13と、エアポンプ14と、情報処理装置15と、表示装置16と、制御装置17と、電源装置18とを有している。
図2は、CCDカメラ11、変換レンズ12、及びリレーレンズユニット13の詳細な構成の一例を示す図である。図2(a)は、CCDカメラ11、変換レンズ12、及びリレーレンズユニット13の全体構成を示す図であり、図2(b)は、リレーレンズユニット13の内部構成を示す図である。
【0021】
図2(a)において、CCDカメラ11は、例えばVGA以上の解像度を有する撮像装置である。変換レンズ12は、後述するリレーレンズユニット13から得られた画像をCCDカメラ11内の撮像面(CCD)に結像するための光学モジュールである。本実施形態では、CCDカメラ11と変換レンズ12とを用いることにより撮像手段が実現される。
【0022】
また、リレーレンズユニット13は、本体部13aとエアパイプ13bとを有している。本体部13aは、その先端部から取り込まれた“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”を(そのままの大きさで(又は拡大して))変換レンズ12に伝えるためのものである。一方、エアパイプ13bは、本体部13aの表面に螺旋状に取り付けられた非導電体製の管であり、その内部にはエアポンプ14から供給されたエアーが通風される。
【0023】
図2(b)に示すように、リレーレンズユニット13の本体部13aは、収容体21と、耐熱ガラス22と、ミラー23と、リレーレンズ24とを有している。
【0024】
収容体21は、絶縁体(非導電体)又は半導電体からなる非導電体(好ましくは105[Ω・cm]以上の比抵抗を有する絶縁体)を用いて形成された円筒状の管である。収容体21の材質としては、例えば、セラミックや、樹脂や、ガラス等を用いることができる。また、収容体21の全てを、非導電体を用いて形成する必要はなく、収容体21が溶損しないように、少なくとも一部(好ましくは先端側(ミラー23が取り付けられている側)の部分)を、非導電体を用いて形成していればよい。
収容体21の先端側の側面の開口部には、耐熱ガラス22が取り付けられている。耐熱ガラス22としては、例えば石英ガラスを用いることができる。
【0025】
ミラー23は、収容体21の内部において、その鏡面が耐熱ガラス22と所定の角度を有して対向する位置に設けられている。更にミラー23は、耐熱ガラス22を介して入光する“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”が、収容体21の管軸方向(リレーレンズ24の方向)に映し出されるようにするために傾斜している。ミラー23の材質には、可視光を高い効率で反射する誘電体多層膜が用いられることが望ましい。
【0026】
リレーレンズ24は、収容体21の内部において、ミラー23の鏡面と所定の角度を有して対向する位置に設けられ、ミラー23に映し出された“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”を収容体21の基端部に取り付けられた変換レンズ12に伝えるためのものである。
【0027】
図2(b)に示すように、本実施形態では、収容体21の管軸方向と耐熱ガラス22を介して入光する光の方向とに対して、夫々45[°]の角度を有するように、ミラー23が収容体21の内部に取り付けられている。
【0028】
前述したように、本体部13aの表面には、螺旋状にエアパイプ13bが取り付けられている。したがって、エアパイプ13bに、例えば常温よりも低温のエアーを通風することにより、本体部13aの温度上昇を抑制することができる。また、図2(b)に示すように、エアパイプ13bからのエアー25が、耐熱ガラス22上に排出されるようにすることにより、耐熱ガラス22にスケール等が付着することを抑制することができる。
【0029】
以上のように本実施形態では、収容体21を用いることにより、収容体が実現され、耐熱ガラス22を用いることにより、透過部材が実現される。また、エアパイプ13bを用いることにより、非導電体製のパイプが実現され、エアポンプ14を用いることにより供給手段が実現される。
【0030】
図1の説明に戻り、情報処理装置15は、CPU、ROM、RAM、HDD、キーボード、マウス、各種インターフェース、及び画像入力ボード等を備える。情報処理装置15は、以上のような構成を有するリレーレンズユニット13、変換レンズ12、及びCCDカメラ11を用いて得られた“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像データ”を入力すると共に、エンコーダ19から“円筒状帯鋼1の溶接部分5の位置に関する位置データ”を入力する。そして、情報処理装置15は、入力した“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像データと位置データ”に基づいて、円筒状帯鋼1の溶接部分5の溶融状態と突合せ状態とスケールの状態とを解析する。
【0031】
表示装置16は、例えば液晶ディスプレイを備え、情報処理装置15で行われた解析の結果(円筒状帯鋼1の溶接部分5の溶融状態と突合せ状態)等を表示する。
制御装置17は、情報処理装置15で行われた解析の結果(円筒状帯鋼1の溶接部分5の溶融状態と突合せ状態)に基づいて、電源装置18や、図示しない成形ロール等の動作を制御する。
電源装置18は、制御装置17による制御に従って、コンタクトチップ3a、3bに電力を供給し、円筒状帯鋼1に高周波電流が流れるようにする。
【0032】
図3は、情報処理装置15の機能的な構成の一例を示す図である。
図3において、画像取得部31は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像データをCCDカメラ11から取得すると共に、そのときの円筒状帯鋼1の位置に関する位置データをエンコーダ19から取得する。そして、画像取得部31は、それらのデータを互いに関連付けてHDD等の記憶媒体に記憶する。
画像取得部31は、例えば、画像入力ボード、エンコーダ19とのインターフェース、CPU、ROM、及びRAM等を用いることにより実現できる。
【0033】
図4は、円筒状帯鋼1の両端部(溶接部分)の様子の一例を示す図である。また、図5は、突合せ角が0[°]である場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。具体的に図5(a)は、入熱状態(溶融状態)が正常である場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。図5(b)は、入熱状態が低入熱である場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。図5(c)は、入熱状態が過入熱である場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。
【0034】
入熱状態(溶融状態)が正常である場合には、図5(a)に示すように、溶接部分5(図4の領域41に対応する部分であり、図5(a)においてグレーの縦線で見える部分)における輝度が適正範囲で概ね一定になる。これに対し、入熱状態が低入熱である場合には、溶接部分5の熱が不十分になり、図5(b)に示すように、溶接部分5における輝度は低く暗い画像になる。また、入熱状態が過入熱である場合には、溶接部分5の両端部でアークが発生し、図5(c)に示すように、その溶接部分5の両端部の輝度が著しく高くなる(図5(c)の白色の部分)。
【0035】
図6は、突合せ角が異なる場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。具体的に図6(a)は、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角が正常(概ね0[°])である場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。図6(b)は、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角がV字形である場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。図6(c)は、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角が逆V字形である場合の“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”の一例を示す図である。尚、図6では、円筒状帯鋼1の溶接部分5の入熱状態が一定であるとする。
【0036】
ここで、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角が正常であるとは、図7(a)に示すように、円筒状帯鋼1の溶接部分5(両端部)が互いに概ね平行であることをいう。また、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角がV字形であるとは、図7(b)に示すように、円筒状帯鋼1の溶接部分5(両端部)の外側が内側よりも開いている状態をいう。また、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角が逆V字形であるとは、図7(c)に示すように、円筒状帯鋼1の溶接部分5(両端部)の内側が外側よりも開いている状態をいう。
【0037】
円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角が正常である場合には、図6(a)に示すように、溶接部分5における輝度が適正範囲で概ね一定になる。これに対し、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角がV字形である場合には、溶接部分5の内側端部でアークが発生し、図6(b)に示すように、その溶接部分5の内側端部の輝度が著しく高くなる(図6(b)の白色の部分)。また、円筒状帯鋼1の両端部の突合せ角が逆V字形である場合には、溶接部分5の外側端部でアークが発生し、図6(c)に示すように、その溶接部分5の外側端部の輝度が著しく高くなる(図6(c)の白色の部分)。
【0038】
図3の説明に戻り、測定エリア設定部32は、以上のような“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”が得られると、その画像に、円筒状帯鋼1の内側端部(図4の領域42、43に対応する部分)の形状に合わせた直線を挿入し、その直線の交点を、突合せ面(溶接部分5)の内側端部の位置として検出する。そして、測定エリア設定部32は、検出した内側端部の位置を下端中央とする第1の測定エリアを設定する。図8は、第1の測定エリアの一例を示す図である。図8に示す例では、円筒状帯鋼1の内側端部の形状に合わせて挿入された2つの直線81、82の交点83が突合せ面(溶接部分5)の内側端部の位置として検出される。そして、この突合せ面(溶接部分5)の内側端部(交点83)を下端中央とし、縦方向が円筒状帯鋼1の厚さ(板厚)に対応する長さを有し、横方向が例えば20画素の長さを有する第1の測定エリア84を設定する。尚、第1の測定エリア84の横方向が、ある程度の長さを有するようにするのは、前述したように突合せ面(溶接部分5)がV字形になったり、逆V字形になったりする等、突合せ面(溶接部分5)が垂直にならないことがあるからである。
測定エリア設定部32は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を用いることにより実現できる。
【0039】
図3の説明に戻り、輝度抽出部33は、測定エリア設定部32で設定された第1の測定エリア84において、ライン毎の最大輝度を求める(すなわち、第1の測定エリア84の各ラインにおける最大輝度を求める)。これにより、1次元の輝度情報が得られる。そして、ライン毎の最大輝度である1次元の輝度情報をR(Red)成分とG(Green)成分とB(Blue)成分とに分離し、R成分、G成分、及びB成分の輝度分布(第1の測定エリア84内におけるRGB各成分の1次元の輝度情報)を求める。本実施形態では、例えば、400[nm]以上500[nm]未満の波長を有する成分をR成分として抽出し、500[nm]以上550[nm]未満の波長を有する成分をG成分として抽出し、550[nm]以上700[nm]未満の波長を有する成分をB成分として抽出するものとする。
輝度抽出部33は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を用いることにより実現できる。
【0040】
R成分判定部34は、輝度抽出部33により得られたR成分の輝度分布を参照し、R成分の輝度が予め設定した第1の閾値以下の領域が、一定領域(例えば突合せ部分(中央部分)の60[%])以上であるか否かを判定する。この判定の結果、R成分の輝度が第1の閾値以下の領域が、一定領域以上である場合には、円筒状帯鋼1の溶接部分5は、低入熱(冷接)状態であると判定する。尚、判定の閾値は、撮影したデータとシャルピー試験結果との相関を解析して決定する。このとき、画像全体の輝度レベルが変化しても誤判定しにくくするために、つき合わせ部両端の輝度レベルとつき合わせ内部との相対的なレベル変化(例えば両者の平均値を計算後、つき合わせ内部/つき合わせ部両端が50%以上かどうか)を閾値とすることもできる。
【0041】
図9は、R成分の輝度分布の一例を示す図である。図9に示す例では、グラフ(輝度分布)91のようになると、円筒状帯鋼1の溶接部分5は、低入熱(冷接)状態であると判定される。尚、図9では、外側になるほど値が大きくなるように横軸の値をとっている。
R成分判定部34は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を用いることにより実現できる。
【0042】
B成分判定部35は、R成分判定部34により、R成分の輝度が閾値以下の領域が、一定領域以上でないと判定されると、輝度抽出部33により得られたB成分の輝度分布を参照し、B成分の輝度が飽和している領域が、一定領域(例えば突合せ部分(中央部分)の40[%])以上であるか否かを判定する。この判定の結果、B成分の輝度が予め設定した第2の閾値以上の領域又は飽和している領域が、一定領域以上である場合には、円筒状帯鋼1の溶接部分5は、過入熱状態であると判定する。
【0043】
図10は、B成分の輝度分布の第1の例を示す図である。図10に示す例では、グラフ(輝度分布)101のようになると、円筒状帯鋼1の溶接部分5は、過入熱状態であると判定される。尚、図9と同様に図10でも、外側になるほど値が大きくなるように横軸の値をとっている。
【0044】
一方、B成分の輝度が飽和している領域が、一定領域以上でないと判定した場合には、B成分判定部35は、B成分の輝度が飽和している領域が、特定の位置にのみにあるか否かを判定する。ここで特定の位置とは、突合せ面(溶接部分5)の外側端部又は内側端部に対応する位置である。この判定の結果、B成分の輝度が飽和している領域が、特定の位置にのみないと判定した場合、B成分判定部35は、円筒状帯鋼1の溶接部分5は正常であると判定する。
【0045】
一方、B成分の輝度が飽和している領域が、特定の位置にのみある場合には、円筒状帯鋼1の溶接部分5の突合せ角が異常であると判定する。また、B成分の輝度が飽和している領域が、突合せ面(溶接部分5)の外側端部に対応する位置にある場合には、突合せ面(溶接部分5)が逆V字形であると判定し、突合せ面(溶接部分5)の内側端部に対応する位置にある場合には、突合せ面(溶接部分5)がV字形であると判定する。
【0046】
図11は、B成分の輝度分布の第2の例を示す図である。図11に示す例では、グラフ(輝度分布)111のようになると、突合せ面(溶接部分5)が逆V字形であると判定される。また、グラフ(輝度分布)112のようになると、突合せ面(溶接部分5)がV字形であると判定される。尚、図9及び図10と同様に図11でも、外側になるほど値が大きくなるように横軸の値をとっている。
B成分判定部35は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を用いることにより実現できる。
【0047】
図3の説明に戻り、前述した測定エリア設定部32は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像が得られると、第1の測定エリア84に加えて、第2の測定エリアを設定する。前述したように、第1の測定エリア84は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の溶融状態と突合せ状態とを解析するエリアである。これに対し、第2の測定エリアは、円筒状帯鋼1の溶接部分5におけるスケール(酸化物)の混入状態を解析するエリアである。具体的に測定エリア設定部32は、第1の測定エリア84よりも横方向の長さが長い(例えば200画素の長さを有する)測定エリアを第2の測定エリアとして設定する。このように、第2の測定エリアの横方向の長さを第1の測定エリア84よりも長くするのは、スケールが円筒状帯鋼1の溶接部分5に飛び込む様子をできるだけ遠方から把握できるようにするためである。尚、横方向の長さ以外については、第1の測定エリア84と同じ方法で第2の測定エリアは設定されるので、第2の測定エリアの設定方法の詳細な説明を省略する。図12は、第2の測定エリアの一例を示す図である。図12に示すように、第2の測定エリア121は、図8に示した第1の測定エリア84よりも横方向の長さが長い。
【0048】
図3の説明に戻り、差分画像生成部36は、時間的に連続する(撮影時間が異なる)“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”が2つ得られると、それら2つの画像を比較するために、それら2つの画像の差分画像を生成する。ここで、差分画像を生成するための画像の撮影間隔は、予め定められた間隔であるとする。好ましくは、30msec以内の時間間隔にて撮像された2つの画像であることが望ましい。例えば、連続して撮像された2つの画像の差分画像を生成することができる。図13は、差分画像を生成する過程の一例を概念的に示す図である。図13(a)は、第2の測定エリア121内にスケールが飛び込む前の画像を示し、図13(b)は、第2の測定エリア121内にスケールが飛び込んだときの画像を示す。そして、図13(c)は、図13(a)に示す画像と図13(b)に示す画像との差分画像を示す。
差分画像生成部36は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を用いることにより実現できる。
【0049】
状態判定部37は、以上のようにして得られた差分画像に基づいて、第2の測定エリア121内に、閾値以上の輝度変化が生じたか否かを判定する。この判定の結果、第2の測定エリア121内に、閾値以上の輝度変化が生じていないと判定した場合には、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んでいないと判定する。一方、第2の測定エリア121内に、閾値以上の輝度変化が生じていると判定した場合には、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んでいると判定する。
【0050】
状態判定部37は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を用いることにより実現できる。尚、本実施形態では、時間的に連続する2つの画像の差分画像に基づいて、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んでいると判定するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、連続して得られた複数の差分画像に基づいて、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んでいると判定するようにしてもよい。
【0051】
判定結果出力部38は、R成分判定部34による判定結果(円筒状帯鋼1の溶接部分5が低入熱(冷接)状態であるという判定結果)、B成分判定部35による判定結果(円筒状帯鋼1の溶接部分5が過入熱状態であるという判定結果、溶接部分5がV字形又は逆V字形であるという判定結果、円筒状帯鋼1の溶接部分5が正常であるという判定結果)、及び状態判定部37による判定結果(円筒状帯鋼1の溶接部分5におけるスケールの状態の判定結果)に基づいて、円筒状帯鋼1の溶接部分5の状態を表示装置16に表示するための表示データを生成して表示装置16に出力する。これにより、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“入熱状態及び突合せ状態”と、円筒状帯鋼1の溶接部分5におけるスケールの有無(スケールがある場合にはその位置と大きさ)とをオンラインで同時に監視することができる。
【0052】
また、判定結果出力部38は、R成分判定部34、B成分判定部35、及び状態判定部37による判定結果を示す情報を、制御装置17に出力する。これにより、制御装置17は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“入熱状態及び突合せ状態”と、円筒状帯鋼1の溶接部分5におけるスケールの有無とに応じて、電縫管製造ラインの操業を制御することができる。例えば、円筒状帯鋼1の溶接部分5が低入熱(冷接)状態である場合、制御装置17は、コンタクトチップ3a、3bに供給する電力を増大させる。逆に、円筒状帯鋼1の溶接部分5が過入熱状態である場合、制御装置17は、コンタクトチップ3a、3bに供給する電力を減少させる。また、溶接部分5がV字形又は逆V字形である場合、制御装置17は、溶接部分5の突合せ状態に合わせて図示しない成形ロールを制御する。更に、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んだ場合、制御装置17は、コンタクトチップ3a、3bに供給する電力や、ロール(図示しない成形ロール、スクイーズロール4a、4b等)を制御して、スケールの発生量等を調整する。
判定結果出力部38は、例えば、CPU、ROM、RAM、ビデオRAM、画像処理装置、表示装置16とのインターフェース、及び制御装置17とのインターフェース等を用いることにより実現できる。
【0053】
次に、図14のフローチャートを参照しながら、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“入熱状態及び突合せ状態”を解析する際の情報処理装置15の動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、画像取得部31は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像データをCCDカメラ11から取得すると共に、そのときの円筒状帯鋼1の位置に関する位置データをエンコーダ19から取得するまで待機する。そして、これらのデータが取得されると、ステップS2に進む。
ステップS2に進むと、画像取得部31は、ステップS1で取得した画像データと位置データとを互いに関連付けて記憶媒体に記憶する。
【0054】
次に、ステップS3において、測定エリア設定部32は、ステップS2で記憶された画像データを読み出す。そして、測定エリア設定部32は、読み出した画像データを使用して、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像に、円筒状帯鋼1の内側端部の形状に合わせた直線81、82を挿入する。
【0055】
次に、ステップS4において、測定エリア設定部32は、ステップS3で挿入した直線81、82の交点83を、突合せ面(溶接部分5)の内側端部の位置として検出する。そして、測定エリア設定部32は、この突合せ面の内側端部(交点83)を下端中央とする第1の測定エリア84を設定する(図8を参照)。
【0056】
次に、ステップS5において、輝度抽出部33は、ステップS4で設定された第1の測定エリア84において、ライン毎の最大輝度を求める。
【0057】
次に、ステップS6において、輝度抽出部33は、ステップS5で求められた“ライン毎の最大輝度”をR成分、G成分、及びB成分に分離し、R成分、G成分、及びB成分の輝度分布を求める。
【0058】
次に、ステップS7において、R成分判定部34は、ステップS6で求められたR成分の輝度分布を参照し、R成分の輝度が閾値以下の領域が、一定領域(例えば突合せ部分の60[%]の領域)以上であるか否かを判定する。この判定の結果、R成分の輝度が閾値以下の領域が一定領域以上である場合には、ステップS8に進む。ステップS8に進むと、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5が低入熱(冷接)状態であるものとし、その状態を表示するための表示データを生成して表示装置16に出力する。この表示データには、ステップS2で記憶した画像データと、円筒状帯鋼1の溶接部分5が低入熱(冷接)状態であることを示すデータとが含まれているものとする。表示装置16は、この表示データに基づく画像を表示する。また、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5が低入熱(冷接)状態であることを示すデータを制御装置17に出力する。制御装置17は、このデータに基づいて電源装置18等の動作を制御する。そして、図14のフローチャートによる動作を終了する。
【0059】
一方、R成分の輝度が閾値以下の領域が一定領域以上でない場合には、ステップS9に進む。ステップS9に進むと、B成分判定部35は、ステップS6で求められたB成分の輝度が飽和している領域が一定領域以上であるか否かを判定する。この判定の結果、B成分の輝度が飽和している領域が一定領域以上である場合には、ステップS10に進む。ステップS10に進むと、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5が過入熱状態であるものとし、その状態を表示するための表示データを生成して表示装置16に出力する。この表示データには、ステップS2で記憶した画像データと、円筒状帯鋼1の溶接部分5が過入熱状態であることを示すデータとが含まれているものとする。表示装置16は、この表示データに基づく画像を表示する。また、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5が過入熱状態であることを示すデータを制御装置17に出力する。制御装置17は、このデータに基づいて電源装置18等の動作を制御する。そして、図14のフローチャートによる動作を終了する。
【0060】
一方、B成分の輝度が飽和している領域が一定領域以上でない場合には、ステップS11に進む。ステップS11に進むと、B成分判定部35は、ステップS6で求められたB成分の輝度が飽和している領域が、特定の位置にのみあるか否かを判定する。この判定の結果、B成分の輝度が飽和している領域が、特定の位置にのみある場合には、ステップS12に進む。ステップS12に進むと、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5が過入熱状態であるものとし、その状態を表示するための表示データを生成して表示装置16に出力する。この表示データには、ステップS2で記憶した画像データと、円筒状帯鋼1の溶接部分5の突合せ角が異常であることを示すデータと、突合せ面(溶接部分5)の形状(V字状又は逆V字状)を示すデータ又は突合せ角(図7の角度θ)を示すデータとが含まれているものとする。表示装置16は、この表示データに基づく画像を表示する。また、判定結果出力部38は、突合せ角(図7の角度θ)を示すデータを制御装置17に出力する。制御装置17は、このデータに基づいてロール等の動作を制御する。そして、図14のフローチャートによる動作を終了する。
【0061】
一方、B成分の輝度が飽和している領域が、特定の位置のみにない場合には、ステップS13に進む。ステップS13に進むと、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5が正常状態であるものとし、その状態を表示するための表示データを生成して表示装置16に出力する。この表示データには、ステップS2で記憶した画像データと、円筒状帯鋼1の溶接部分5が正常状態であることを示すデータとが含まれているものとする。表示装置16は、この表示データに基づく画像を表示する。そして、図14のフローチャートによる動作を終了する。
【0062】
以上のように、図14に示すフローチャートでは、ステップS3〜S7、S9、S11の処理を行うことによって解析手段が実現される。また、ステップS8、S10、S12、S13の処理を行うことによって表示手段が実現される。
【0063】
次に、図15のフローチャートを参照しながら、円筒状帯鋼1の溶接部分5におけるスケールを解析する際の情報処理装置15の動作の一例を説明する。
まず、ステップS21において、画像取得部31は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像データをCCDカメラ11から取得すると共に、そのときの円筒状帯鋼1の位置に関する位置データをエンコーダ19から取得するまで待機する。そして、これらのデータが取得されると、ステップS22に進む。
【0064】
ステップS22に進むと、画像取得部31は、ステップS21で取得した画像データと位置データとを互いに関連付けて記憶媒体に記憶する。
【0065】
次に、ステップS23において、測定エリア設定部32は、ステップS22で記憶された画像データを読み出す。そして、測定エリア設定部32は、読み出した画像データを用いて、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像に、円筒状帯鋼1の内側端部の形状に合わせた直線81、82を挿入する。
【0066】
次に、ステップS24において、測定エリア設定部32は、ステップS23で挿入した直線81、82の交点83を、突合せ面(溶接部分5)の内側端部の位置として検出する。そして、測定エリア設定部32は、この突合せ面(溶接部分5)の内側端部(交点83)を下端中央とする第2の測定エリア121を設定する(図12を参照)。
【0067】
次に、ステップS25において、差分画像生成部36は、時間的に連続する“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”が2つ得られたか否かを判定する。この判定の結果、時間的に連続する“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”が2つ得られていない場合には、ステップS21に戻る。
【0068】
一方、時間的に連続する“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”が2つ得られた場合には、ステップS26に進む。ステップS26に進むと、差分画像生成部36は、それら2つの画像の差分画像を生成する。
【0069】
次に、ステップS27において、状態判定部37は、ステップS26で生成された差分画像に基づいて、第2の測定エリア121内に、閾値以上の輝度変化が生じたか否かを判定する。この判定の結果、第2の測定エリア121内に輝度変化が生じている場合には、ステップS28に進む。
【0070】
ステップS28に進むと、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んだとし、その状態を表示するための表示データを生成して表示装置16に出力する。この表示データには、ステップS26で生成した差分画像のデータと、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んだことを示すデータと、スケールの位置と大きさとを示すデータとが含まれているものとする。表示装置16は、この表示データに基づく画像を表示する。また、判定結果出力部38は、スケールの位置と大きさとを示すデータを制御装置17に出力する。制御装置17は、このデータに基づいてロール等の動作を制御する。そして、図15のフローチャートによる動作を終了する。
【0071】
一方、第2の測定エリア121内に輝度変化が生じていない場合には、ステップS29に進む。ステップS29に進むと、判定結果出力部38は、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んでいないとし、その状態を表示するための表示データを生成して表示装置16に出力する。この表示データには、ステップS26で生成した差分画像のデータと、円筒状帯鋼1の溶接部分5にスケールが飛び込んでいないことを示すデータとが含まれているものとする。表示装置16は、この表示データに基づく画像を表示する。そして、図15のフローチャートによる動作を終了する。
以上のように、図15に示すフローチャートでは、ステップS23〜S27の処理を行うことによって解析手段が実現される。また、ステップS28、29の処理を行うことによって表示手段が実現される。
【0072】
以上のように本実施形態では、非導電体で形成された収容体21内に、円筒状帯鋼1の溶接部分5を側方向から観察するためのミラー23と、ミラー23に映し出された画像を変換レンズ12に伝えるためのリレーレンズ24とを設けるようにした。このように収容体21を非導電体で構成することにより、円筒状帯鋼1の溶接部分5(コンタクトチップ3a、3b)に収容体21を近づけてもコンタクトチップ3a、3bの周囲に生じる電磁ノイズの影響を収容体21が受けることを低減することができ、収容体21が溶損することを防止することができる。また、コンタクトチップ3a、3bよりも溶接部分5に近い位置に収容体21を挿入することができるので、コンタクトチップ3a、3bの冷却水の影響を可及的に受けずに、円筒状帯鋼1の溶接部分5を観察することができる。
【0073】
そして、このような収容体21内の先端側に設けられたミラー23は、円筒状帯鋼1の溶接部分5が自己発光する光を、耐熱ガラス22を介して側方向から入光し、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像を、リレーレンズユニット13内の基端側に設けられたリレーレンズ24の方向に映し出す。リレーレンズ24は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像を変換レンズ12に伝え、変換レンズ12は、その画像をCCDカメラ11の撮像面に結像させる。したがって、円筒状帯鋼1の溶接部分5をその側方向からCCDカメラ11の解像度に応じた解像度で撮像することができ、円筒状帯鋼1の溶接部分5の情報を従来よりも正確に且つオンラインで得ることができる。つき合わせ面の板厚方向の発光部分は、約0.1[mm]と実測されており、サンプリング定理から、これを撮影するには、望ましくは0.05[mm]のCCDカメラの分解能が必要である。一方で、この部位の発光輝度が高く、結果的にCCDカメラの分解能は0.2[mm]であれば、溶接状態が識別できることが実験的に確認した。
【0074】
そして、このようにしてCCDカメラ11で撮像された“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像データ”を処理することにより、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“入熱状態及び突合せ状態”や、円筒状帯鋼1の溶接部分5におけるスケールの有無(スケールがある場合にはその位置と大きさ)をオンラインで従来よりも正確に解析することができる。また、円筒状帯鋼1の溶接部分5の撮影画像から、突合せ上部のビード幅を測定することで、溶融部分5の排出状態の可否も容易に判定できる。
【0075】
そして、解析した情報を表示することにより、電縫管の品質をオンラインで監視することができると共に、既に製造した電縫管を破壊検査しなくても、帯状鋼板の品替え時に、ロールの操業条件の設定を行うことが可能になる。
【0076】
また、リレーレンズユニット13の本体部13aの表面に、螺旋状に取り付けられた金属製のエアパイプ13bを取り付け、エアパイプ13bに、低温のエアーを通風し、そのエアーが、耐熱ガラス22上に排出されるようにした。したがって、リレーレンズユニット13の本体部13a(収容体21等)の温度上昇を抑制すると共に、耐熱ガラス22にスケール等が付着することを抑制することができる。
【0077】
尚、本実施形態では、CCDカメラ11で撮像された画像の輝度に関するデータを用いて処理を行うようにした場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、温度較正(温度と輝度との相関関係の設定)が予め行われているCCDカメラを用いた場合には、CCDカメラから、円筒状帯鋼1の溶接部分5の温度に関するデータ(温度情報)が得られるので、その温度に関するデータを用いて処理を行うようにしてもよい。また、撮像装置は、CCDカメラに限定されず、例えばCMOSセンサを有するカメラであってもよい。
【0078】
また、本実施形態では、螺旋状に取り付けられた金属製のエアパイプ13bに低温のエアー(空気)を通風するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、不活性ガス等の気体を通風するようにしてもよい。また、水等の液体をエアパイプ13bに供給してもよい。また、エアパイプ13bは螺旋状でなくてもよく、例えば、エアパイプからのエアーが、耐熱ガラス22上に排出されるように取り付けられていれば、エアパイプは直線状であってもよいし、必ずしもパイプである必要もない。例えば、図21は、パイプを用いないリレーレンズユニット13の構造図の一例である。リレーレンズを収容する収容体21を2重構造とし、内側の収容体21と外側の収容体21bとの間には数ミリの隙間を設け、通風ができるようになっている。ポンプに接続するエアーの挿入口と、排出口以外は、密閉しており、エアーが耐熱ガラス22表面に効率よく噴出される。また、鋼材からの熱輻射を受けやすい先端部を集中的に冷却するために、内側の収容体21と外側の収容体21bとの間にスペーサーを装着し、エアーを先端部に導く経路を形作ることも容易にできる。
【0079】
また、本実施形態では、円筒状帯鋼1の軸方向に対して、リレーレンズユニット13を垂直に挿入する構成を例に挙げて説明したが、リレーレンズユニット13を挿入する角度はこれに限定されるものではない。また、本実施形態では、ミラー23の取り付け角度を固定するようにしたが、ミラー23の取り付け角度を調整できるようにしてもよい。尚、ミラー23の取り付け角度を固定する場合でも調整できるようにする場合でも、リレーレンズユニット13を挿入する角度や、観察対象となる溶接部分5の大きさや位置等に応じてミラー23の取り付け角度を決定することになる。
【0080】
また、本実施形態では、R成分とB成分とを用いて処理を行う場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、R成分とB成分とを用いた処理だけでは円筒状帯鋼1の溶接部分5の状態を確実に判別することができない場合には、G成分も用いて処理を行い、その処理の結果も考慮して、円筒状帯鋼1の溶接部分5の状態を解析するようにしてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、コンタクトチップ3a、3bを用いて電縫管を製造する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。図16は、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の他の例を示した図である。図16に示すように、コンタクトチップ3a、3bの代わりにワークコイル(誘導コイル)161を用いるようにしてもよい。
【0082】
(第2の実施形態)
次に、本発明の関連発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、前述した第1の実施形態で説明した構成に加え、円筒状帯鋼1の溶接部分5を真上から撮像することにより得られた画像データも用いて円筒状帯鋼1の溶接部分5の状態を解析するようにしている。このように本実施形態は、前述した第1の実施形態に対して、円筒状帯鋼1の溶接部分5を真上から撮像して処理する構成が付加されたものである。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図16に付した符号と同一の符号を付すこと等により詳細な説明を省略する。
【0083】
図17は、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示す図である。図17において、CCDカメラ171は、その撮像面が円筒状帯鋼1の溶接部分5と正対するように、円筒状帯鋼1の溶接部分5の真上に配置されている。図18は、CCDカメラ171により撮像された画像の一例を示す図である。図18に示すように、円筒状帯鋼1の溶接部分5をその真上から撮像すると、V角(図18の角度φ、真上から見たときの円筒状帯鋼1の開き角)に関する情報を得ることができる。
【0084】
したがって、情報処理装置15は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“入熱状態及び突合せ状態”に関する情報をCCDカメラ11から得るようにすると共に、V角に関する情報をCCDカメラ171から得ることができる。尚、本実施形態の情報処理装置15は、CCDカメラ11、171において同じタイミングで撮像された画像を得るための同期回路を有し、この同期回路の動作により、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“側方向から見た画像”と“真上から見た画像”とを同時刻に取得することができるようにしている。
【0085】
以上のように本実施形態では、円筒状帯鋼1の溶接部分5を側方向から見た画像だけでなく、真上方向から見た画像を得るようにしたので、円筒状帯鋼1の溶接部分5の情報をより一層正確に得ることができ、また、制御装置17における制御の内容を決定するための指標としてV角を用いることもできる。
尚、本実施形態においても、前述した第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0086】
(第3の実施形態)
次に、本発明の関連発明の第3の実施形態について説明する。前述した第1及び第2の実施形態では、リレーレンズユニット13の収容体21の内部にミラー23を設けるようにした。これに対し、本実施形態では、ミラー23を設けずにリレーレンズユニットを構成する場合について説明する。このように本実施形態と前述した第1及び第2の実施形態とは、リレーレンズユニットの構成の一部が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1及び第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図17に付した符号と同一の符号を付すこと等により詳細な説明を省略する。
【0087】
図19は、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示した図である。
図19に示すように、本実施形態では、リレーレンズユニット191の軸方向が、帯状鋼板1が進む方向(電縫管6の管軸方向、図の矢印の方向)と略平行になるようにし、リレーレンズユニット191の先端面が溶接部分5と略正対するようにしている。
【0088】
図20は、CCDカメラ11、変換レンズ12、及びリレーレンズユニット191の詳細な構成の一例を示す図である。
図20(a)において、リレーレンズユニット191は、本体部191aとエアパイプ91bとを有している。本体部191aは、その先端面から取り込まれた“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”を(そのままの大きさで(又は拡大して))変換レンズ12に伝えるためのものである。一方、エアパイプ191bは、本体部191aの表面に螺旋状に取り付けられた非導電体製の管であり、その内部にはエアポンプ14から供給されたエアーが通風される。
図20(b)に示すように、リレーレンズユニット191の本体部191aは、収容体201と、耐熱ガラス22と、リレーレンズ24とを有している。
収容体201は、第1の実施形態で説明した収容体21と同様の材料を用いて形成される。収容体201の先端面の開口部には、耐熱ガラス22が取り付けられている。
【0089】
リレーレンズ24は、収容体201の内部において、収容体201の管軸方向に沿って設けられ、耐熱ガラス22を透過した“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像”を収容体201の基端部に取り付けられた変換レンズ12に伝える。
【0090】
本体部191aの表面には、螺旋状にエアパイプ191bが取り付けられている。したがって、エアパイプ191bに、例えば常温よりも低温のエアーを通風することにより、本体部191aの温度上昇を抑制することができる。また、図19(b)に示すように、エアパイプ191bからのエアー25が、耐熱ガラス22上に排出されるようにすることにより、耐熱ガラス22にスケール等が付着することを抑制することができる。
【0091】
以上のように本実施形態では、収容体201を用いることにより収容体が実現され、エアパイプ191bを用いることにより非導電体製のパイプが実現される。
以上のように構成しても第1及び第2の実施形態と同等の効果を得ることができる。本実施形態のようにすれば、ミラーを設ける必要がなくなるので、リレーレンズユニット191の構成を第1及び第2の実施形態のリレーレンズユニット13よりも簡素化することができる。
【0092】
尚、前述した各実施形態において、耐熱ガラス22を用いれば、収容体21、201の内部を保護したり、収容体21、201の内部に異物(埃やスケール等)が混入したりすることを防止することができ好ましいが、必ずしも耐熱ガラス22を設ける必要はない。
【0093】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態(第4の実施形態)を説明する。
図22は、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示した図である。図22は、電縫管製造ライン自体は、図1に示した第1の実施形態と同様の製造ラインであるが、第1〜3の実施形態でのリレーレンズによる撮像手段に変わり、溶接部分から放射された光に基づく画像を拡大して撮像できるようにするためのレンズ(撮像レンズ12b)と、該画像を製造ラインの上流側から撮像し画像データに変換する撮像素子を有する撮像手段による形態を示している。
【0094】
図22において、監視装置(電縫管の製造状態監視装置)は、CCDカメラ11と、撮像レンズ12bと、情報処理装置15と、表示装置16と、制御装置17と、電源装置18とを有している。
【0095】
図23は、図22に示す電縫管製造ライン(電縫管製造システム)を横方向から見た図である。
図22及び図23において、CCDカメラ11は、例えばXGAの解像度を有する1/3型の撮像装置であり、例えば、縦30[mm]、横45[mm]の矩形領域の画像を、焦点距離が50[mm]のレンズを用いて、突合せ面からの距離0.5[m]から撮影すると、0.05[mm]程度の分解能が得られる。つき合わせ面の板厚方向の発光部分は、約0.1[mm]と実測されており、サンプリング定理から、これを撮影するには、望ましくは0.05[mm]の分解能が必要である。一方で、この部位の発光輝度が高く、分解能0.2[mm]であれば、溶接状態が識別できることが実験的に確認した。
【0096】
撮像レンズ12bは、溶接部分5全体から放射された光を、溶接部分5の突合せ面(正面)から入光できる位置であって、溶接部分5に焦点を合わせられる位置に設けられている。すなわち、撮像レンズ12bのレンズ面が溶接部分5と互いに向かい合い、且つ撮像レンズ12bの焦点距離に応じた距離だけ溶接部分5から離れた位置となるように撮像レンズ12bの位置が定められている。具体的に説明すると、溶接部分5の中心部分から撮像レンズ12bの光軸方向を見たときの仰角δが、マイナス20[°]以上20[°]以下、好ましくはマイナス10[°]以上10[°]以下となるようにしている。これは、電縫溶接では、溶接部分5付近で鋼材の端部から加熱されることから、板厚中心に近づくほど、つき合わせ面が下流側にシフトする状態になっており、板厚中心も含め、突合せ面全体を撮影するのに必要な角度条件である。また、溶接部分5と撮像レンズ12bのレンズ面との水平方向における距離xは、電磁ノイズを回避するために、0.5[m]以上離して設置することが好ましい。一方で、2[m]以上の距離から高倍率で撮影すると、溶接部分5の変動をカバーするだけの被写界深度が得られにくくなる問題もあることから、好ましくは0.5[m]以上、2[m]以下の距離から撮影する。
以上のような構成を有する撮像レンズ12bを透過した光がCCDカメラ11(CCD)に入光する。
【0097】
本実施形態では、CCDカメラ11を用いることにより撮像手段が実現され、撮像レンズ12bを用いることによりレンズが実現される。尚、本実施形態では、撮像レンズ12bとCCDカメラ11とを別々の構成としたが、CCDカメラ11と撮像レンズ12bとが一体のものを用いてもよい。また、撮像レンズ12bとして拡大レンズ(拡大専用のレンズ)を用いずに例えばズームレンズ(望遠レンズ、標準レンズ、広角レンズの機能を兼用するレンズ)を用いてもよい。
解析手段および表示手段については、第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0098】
以上のように本実施形態では、溶接部分5よりも製造ラインの上流側に、溶接部分5の中心部分から撮像レンズ12bの光軸方向を見たときの仰角δが小さくなるように(低角度になるように)、撮像レンズ12bとCCDカメラ11とを配置する。撮像レンズ12bは、溶接部分5を拡大して撮像するためのレンズを有し、溶接部分5の突合せ面から放射された光を、そのレンズを介してCCDカメラ11に伝える。このとき、撮像レンズ12bの焦点が溶接部分5に合うように、溶接部分5と撮像レンズ12bとの間の距離(溶接部分5と撮像レンズ12bとの水平方向における距離xと、溶接部分5の中心部分から撮像レンズ12bを見たときの仰角δ)やレンズの焦点距離(倍率)が調整される。
【0099】
以上のように構成することにより、溶接部分5の突合せ面の画像をCCDカメラ11の解像度に応じた解像度で撮像することができる。よって、溶接部分5の情報を、従来よりも正確に且つオンラインで得ることが、特別な装置を用いることなく簡易な構成で実現することができる。
【0100】
そして、このようにしてCCDカメラ11で撮像された“円筒状帯鋼1の溶接部分5の画像データ”を処理することにより、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“入熱状態及び突合せ状態”や、円筒状帯鋼1の溶接部分5におけるスケールの有無(スケールがある場合にはその位置と大きさ)をオンラインで従来よりも正確に解析することができる。また、円筒状帯鋼1の溶接部分5の撮影画像から、突合せ上部のビード幅を測定することで、溶接部分5の排出状態の可否も容易に判定できる。
【0101】
そして、解析した情報を表示することにより、電縫管の品質をオンラインで監視することができると共に、既に製造した電縫管を破壊検査しなくても、帯状鋼板の品替え時に、ロールの操業条件の設定を行うことが可能になる。
尚、第1の実施形態と同様、本実施形態でも、CCDカメラ11で撮像された画像の輝度に関するデータを用いて処理を行うことは、必ずしも必要はない。例えば、第1の実施形態と同様、温度に関するデータを用いて溶融温度処理を行うようにしてもよいし、また、温度較正も、情報処理装置15で行うようにしてもよく、撮像装置は、CMOSセンサを有するカメラであってもよい。
【0102】
また、本実施形態では、CCDカメラ11及び撮像レンズ12bを溶接部分5よりも上側に配置するようにしたが、CCDカメラ11及び撮像レンズ12bを溶接部分5と同じ高さ又は溶接部分5よりも下側に配置するようにしてもよい。CCDカメラ11及び撮像レンズ12bを溶接部分5と同じ高さに配置する場合には、溶接部分5の中心部分から撮像レンズ12bを見たときの仰角δは0[°]になる。また、CCDカメラ11及び撮像レンズ12bを溶接部分5よりも下側に配置する場合には、仰角δはマイナスの値となる。この場合、溶接部分5の中心部分から撮像レンズ12bを見たときの俯角を用いて、CCDカメラ11及び撮像レンズ12bの位置を特定することと同じ結果となる。
【0103】
また、本実施形態では、R成分とB成分とを用いて処理を行う場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、R成分とB成分とを用いた処理だけでは円筒状帯鋼1の溶接部分5の状態を確実に判別することができない場合には、G成分も用いて処理を行い、その処理の結果も考慮して、円筒状帯鋼1の溶接部分5の状態を解析するようにしてもよい。
【0104】
また、本実施形態では、コンタクトチップ3a、3bを用いて電縫管を製造する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。図24は、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の他の例を示した図である。図24に示すように、コンタクトチップ3a、3bの代わりにワークコイル(誘導コイル)161を用いるようにしてもよい。
【0105】
(第5の実施形態)
次に、本発明の実施形態(第5の実施形態)について説明する。本実施形態では、前述した第4の実施形態で説明した構成に加え、円筒状帯鋼1の溶接部分5を真上から撮像することにより得られた画像データも用いて円筒状帯鋼1の溶接部分5の状態を解析するようにしている。このように本実施形態は、前述した第4の実施形態に対して、円筒状帯鋼1の溶接部分5を真上から撮像して処理する構成が付加されたものである。したがって、本実施形態の説明において、前述した第4の実施形態と同一の部分については、図22〜図24に付した符号と同一の符号を付すこと等により詳細な説明を省略する。
【0106】
図25は、電縫管製造ライン(電縫管製造システム)の構成の一例を示す図である。図25において、CCDカメラ171は、その撮像面が円筒状帯鋼1の溶接部分5の真上に配置されている。図18は、CCDカメラ171により撮像された画像の一例を示す図である。図18に示すように、円筒状帯鋼1の溶接部分5をその真上から撮像すると、V角(図18の角度φ、真上から見たときの円筒状帯鋼1の開き角)に関する情報を得ることができる。
【0107】
したがって、情報処理装置15は、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“入熱状態及び突合せ状態”に関する情報をCCDカメラ11から得るようにすると共に、V角に関する情報をCCDカメラ171から得ることができる。尚、本実施形態の情報処理装置15は、CCDカメラ11、171において同じタイミングで撮像された画像を得るための同期回路を有し、この同期回路の動作により、円筒状帯鋼1の溶接部分5の“側方向から見た画像”と“真上から見た画像”とを同時刻に取得することができるようにしている。
【0108】
以上のように本実施形態では、円筒状帯鋼1の溶接部分5をその突合せ面から見た画像だけでなく、真上から見た画像を得るようにしたので、円筒状帯鋼1の溶接部分5の情報をより一層正確に得ることができ、また、制御装置17における制御の内容を決定するための指標としてV角を用いることもできる。
尚、本実施形態においても、前述した第4の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0109】
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。上記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
【0110】
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
前述したように、本発明によれば、電縫管を製造するために円筒状に形成された鋼板の溶接部分から放射された光を、高精細に撮像することができ、それを画像データに変換して解析、表示することができる。これにより、高精度な解析と、画像加工やデータ加工による分かり易い表示が可能となる。これら高精度な解析結果や分かり易い表示は、結果的に、高精度、高応答な制御を可能とし、品質の安定や生産性の向上に寄与するだけでなく、オペレータの作業性、監視性を著しく改善するため、電縫鋼管の製造プロセスの飛躍的な発展に貢献するものと確信している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電縫管を製造するために鋼板を円筒状に形成しながら、該鋼板の両端部を加熱して溶接する際に、該溶接部分の状態をオンラインで監視する電縫管の製造状態監視装置であって、
該溶接部分の該鋼板の突合せ面から放射された光を該溶接工程の上流側から撮像する撮像手段と、
該撮像手段によって得られた画像データにおいて、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向内側端部を下端中央とし、前記鋼板の板厚に相当する長さを縦方向長さとする測定エリアを設定して、該測定エリアの画像データに基づいて、前記溶接部分における鋼板の板厚方向の状態を解析する解析手段と、
該解析手段により解析された結果を表示装置に表示する表示手段を有し、
前記解析手段は、前記測定エリアにおける画像データに基づいて、前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報を求め、求めた輝度情報又は温度情報から、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報を計算して、計算した1次元の輝度情報又は温度情報を用いて、該溶接部分における鋼板の溶融状態及び鋼板の突合せ状態を解析することを特徴とする電縫管の製造状態監視装置。
【請求項2】
前記解析手段が、前記測定エリアにおける前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報から、ライン毎の最大輝度又は温度を求めて、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報とすることを特徴とする請求項1に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項3】
前記撮像手段の撮影分解能が0.2mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項4】
前記解析手段は、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における輝度情報又は温度情報と、予め設定した第1及び第2の閾値とを比較し、前記輝度情報又は温度情報が第1の閾値以下である場合には、前記溶接部分が低入熱状態であるか否かを解析する第1の判断手段と、前記輝度情報又は温度情報が第2の閾値以上である場合には、前記溶接部分が過入熱状態であると判断する第2の判断手段とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項5】
前記輝度情報又は温度情報の飽和領域が、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向の外側端部又は内側端部に対応する位置にある場合には、前記溶接部分の突合せ角が異常であると判断する第3の判断手段とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項6】
前記解析手段は、前記撮像手段によって異なる時間に得られた2つの画像データにおいて、前記測定エリアを第1の測定エリアとして、該第1の測定エリアを含み、且つ少なくともその横方向の長さが該第1の測定エリアの横方向長さより長い第2の測定エリアをさらに設定して、該2つの画像データそれぞれの第2の測定エリアの画像データに基づく輝度情報又は温度情報を比較して、前記溶接部分における酸化物の混入状態を解析する電縫管の製造状態監視装置であって、
該2つの画像データの差分データを生成する差分画像生成手段と、前記差分画像生成手段により生成された差分データの内の前記第2の測定エリア内のデータに基づいて、前記溶接部分に予め設定した閾値以上の輝度低下又は温度低下があったか否かを判定する変化判定手段を有し、前記変化判定手段により前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下があったと判定された場合には前記溶接部分に酸化物があると判断し、前記変化判定手段により前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下がなかったと判定された場合には、前記溶接部分に酸化物がないと判断する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項7】
前記撮像手段が、前記溶接部分から放射された光に基づく画像を拡大して撮像できるようにするためのレンズと、該画像を製造ラインの上流側から撮像し画像データに変換する撮像素子を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項8】
前記レンズが、前記溶接部分の突合せ面の板厚方向の各位置から放射された光を入光できる位置にあって、該レンズの焦点を該溶接部分に合わせることのできる位置に設けられたことを特徴とする請求項7に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項9】
前記レンズが、前記溶接部分の中心部分から該レンズの光軸方向を見たときの仰角が、マイナス20°以上20°以下である位置に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の電縫管の製造状態監視装置。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視装置に関し、電縫管を製造するために鋼板を円筒状に形成しながら、該鋼板の両端部を加熱して溶接する際に、該溶接部分の状態をオンラインで監視する電縫管の製造状態監視方法であって、
該溶接部分から放射された光を撮像し、それを画像データに変換する撮像ステップと、
該画像データにおいて、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向内側端部を下端中央とし、前記鋼板の板厚に相当する長さを縦方向長さとする測定エリアを設定して、該測定エリアの画像データに基づいて、前記溶接部分における鋼板の板厚方向の状態を解析する解析ステップと、
前記解析した結果を表示装置に表示する表示ステップを有し、
前記解析ステップは、前記測定エリアにおける画像データに基づいて、前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報を求め、求めた輝度情報又は温度情報から、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報を計算して、計算した1次元の輝度情報又は温度情報を用いて、前記溶接部分における鋼板の溶融状態及び鋼板の突合せ状態を解析することを特徴とする製造状態監視方法。
【請求項11】
前記解析ステップが、前記測定エリアにおける前記溶接部分の鋼板の輝度情報又は温度情報から、ライン毎の最大輝度又は温度を求めて、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における1次元の輝度情報又は温度情報することを特徴とする請求項10に記載の電縫管の製造状態監視方法。
【請求項12】
前記解析ステップは、前記溶接部分の鋼板の板厚方向における輝度情報又は温度情報と、
予め設定した第1及び第2の閾値とを比較し、該輝度情報又は温度情報が第1の閾値以下ある場合には、前記溶接部分が低入熱状態であるか否かを解析する第1の判断ステップと、前記輝度情報又は温度情報が第2の閾値以上である場合には、前記溶接部分が過入熱状態であると判断する第2の判断ステップとを有することを特徴とする請求項10又は11に記載の電縫管の製造状態監視方法。
【請求項13】
前記輝度情報又は温度情報の飽和領域が、前記鋼板の突合せ面の前記円筒の半径方向の外側端部又は内側端部に対応する位置にある場合に、前記溶接部分の突合せ角が異常であると判断する第3の判断ステップとを有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の電縫管の製造状態監視方法。
【請求項14】
前記解析ステップは、撮像した異なる時間に得られた2つの前記画像データにおいて、前記測定エリアを第1の測定エリアとして、該第1の測定エリアを含み、且つ少なくともその横方向の長さが該第1の測定エリアの横方向長さより長い第2の測定エリアをさらに設定して、該2つの画像データそれぞれの第2の測定エリアの画像データに基づく輝度情報又は温度情報を比較して、前記溶接部分における酸化物の混入状態を解析する電縫管の製造状態監視方法であって、
該2つの画像の差分データを生成する差分画像生成ステップと、該差分画像生成ステップにより生成された差分データの内の前記第2の測定エリア内のデータに基づいて、前記溶接部分に予め設定した閾値以上の輝度低下又は温度低下があったか否かを判定する変化判定ステップを有し、該変化判定ステップにより、前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下があったと判定された場合には、前記溶接部分に酸化物があると判断し、前記変化判定ステップにより、前記溶接部分に前記閾値以上の輝度低下又は温度低下がなかったと判定された場合には、前記溶接部分に酸化物がないと判断する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の電縫管の製造状態監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−642(P2011−642A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158172(P2010−158172)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2009−539164(P2009−539164)の分割
【原出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】