溶接装置
【課題】溶接ガンの姿勢変更の際に、ロボットの動作軌道や空間移動時間が短く、さらに、段取り作業時間を短縮可能な溶接装置の提供を目的とする。
【解決手段】多関節型のロボット１と、ロボット１の先端の手首関節部１ａを介して取着されるガン取付アーム２と、を備え、ガン取付アーム２にスポット溶接用の溶接ガン３を水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着した。
【解決手段】多関節型のロボット１と、ロボット１の先端の手首関節部１ａを介して取着されるガン取付アーム２と、を備え、ガン取付アーム２にスポット溶接用の溶接ガン３を水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、溶接装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来の溶接装置は、ロボットの先端の手首関節部を介してガン取付アームを取着し、そのガン取付アームにスポット溶接用の溶接ガンを固着していた（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特許第４２１８８６６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかし、従来の溶接装置では、ワークの複数の溶接すべき箇所に合わせて、溶接ガンの姿勢を変更して接近させるには、ロボットの姿勢を大きくかつ複雑に動作させる必要があった。このため、ロボットの空間移動時間（エアーカット時間）や、動作軌道（移動軌跡）が長くなり、１つのワークを溶接するためにかかる時間（タクトタイム）に無駄が発生していた。また、段取り作業におけるティーチング設定や動作確認に多大な時間と労力が費やされてしまうという問題があった。
【０００５】
そこで、本発明は、溶接ガンの姿勢変更の際に、ロボットの動作軌道や空間移動時間が短く、さらに、段取り作業時間を短縮可能な溶接装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成するために、本発明の溶接装置は、多関節型のロボットと、該ロボットの先端の手首関節部を介して取着されるガン取付アームと、を備え、上記ガン取付アームにスポット溶接用の溶接ガンを水平軸心廻りに揺動自在に枢着したものである。
【０００７】
また、鉛直軸心廻りに回転自在な基台部と、該基台部に第１水平軸心廻りに揺動自在に枢着された第１腕部と、該第１腕部に第２水平軸心廻りに揺動自在に枢着された第２腕部と、該第２腕部の先端に設けられた手首関節部と、該手首関節部によって第３水平軸心廻りに揺動自在に枢着されたガン取付アームと、を備え、上記ガン取付アームにスポット溶接用の溶接ガンを第４の水平軸心廻りに揺動自在に枢着したものである。
【発明の効果】
【０００８】
本発明の溶接装置によれば、溶接ガンの姿勢変更動作の自由度を向上させ、姿勢変更動作を簡略化でき、空間移動時間や、動作軌道を最小限に抑えて、溶接することができる。動作の無駄を省いてスムーズに効率良く溶接でき、生産能力を向上できる。また、初期ティーチング設定や動作確認等の段取り作業時間を大幅に削減できる。ワークの姿勢を変更するためのターンテーブルやパレット装置等の治具装置を、回転動作させる必要がなく、迅速に効率良く作業できると共に、生産設備全体を簡素化できる。ワークに溶接ガンを様々な方向から接近させて、溶接可能範囲を向上できる。ワークに接近させる際の姿勢（ガン進入姿勢）の自由度を向上させ、様々なワークや治具装置の形状に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【０００９】
【図１】本発明の溶接装置の実施形態の側面図である。
【図２】作用説明図である。
【図３】作用説明図である。
【図４】作用説明図である。
【図５】比較例の作用説明図である。
【図６】比較例の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１０】
以下、図示の実施の一形態に基づき本発明を詳説する。
図１に於て、本発明に係る溶接装置は、鉛直軸心Ｌо廻りに回転自在な基台部10と、基台部10に基端側が第１水平軸心Ｌ１廻りに揺動自在に枢着された第１腕部11と、第１腕部11の先端側に第２水平軸心Ｌ２廻りに揺動自在に枢着された第２腕部12と、第２腕部12の先端（側）に設けられた手首関節部１ａと、を有する多関節型の産業用のロボット１を備えている。
【００１１】
そして、ロボット１の先端（側）の手首関節部１ａを介して取着されるガン取付アーム２を備えている。ガン取付アーム２は、手首関節部１ａによって第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動自在に枢着されている。つまり、ロボット１の手首関節部１ａは、第２腕部12の先端側で第３水平軸心Ｌ３廻りに回転駆動される水平状手首軸13と、手首軸13に枢着された（アタッチメント用）取付部14とを有している。そして、取付部14にガン取付アーム２を取着することで、手首軸13が回転駆動すると、ガン取付アーム２が第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動するように設けている。
【００１２】
さらに、ガン取付アーム２に、スポット溶接用の溶接ガン３を、第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着している。
溶接ガン３は、ガン取付アーム２に両端部が回転自在に支持された支持軸５に取着（固着）され、支持軸５が第４の水平軸心Ｌａ廻りに回転駆動することで揺動するように設けられている。又は、ガン取付アーム２に支持軸５を固着し、溶接ガン３を支持軸５に揺動自在に枢着して、ギヤ等の送り装置で第４の水平軸心Ｌａ（支持軸５）廻りに溶接ガン３を揺動自在に設けても良い。
【００１３】
溶接ガン３は、所望の回転位置（回転角度）で停止可能な回転位置決め機構を介して、図示省略の制御部で制御されている。即ち、溶接ガン３は、第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動・固定自在に設けられている。また、溶接ガン３の先端側で対向される対向状に配設される一対の第１電極３ａと第２電極３ｂとを有している。また、第１電極３ａが先端に略直角に取着された第１支持部材30と、第２電極３ｂが先端に略直角に取着された第２支持部材31とを備えている。第１支持部材30と第２支持部材31は平行に設けられ、一対の第１電極３ａと第２電極３ｂとを、接近・離間させる往復（開閉）作動方向Ｎに開閉するものである。
【００１４】
第４の水平軸心Ｌａは、一対の第１電極３ａと第２電極３ｂとが接近・離間する往復（開閉）作動方向Ｎ（溶接軸心Ｌｅ）の直交平面上に配設される。第３水平軸心Ｌ３と平行に配設されている。
また、図１では、第４の水平軸心Ｌａと、第１水平軸心Ｌ１と、第２水平軸心Ｌ２と、第３水平軸心Ｌ３と、は平行である。
【００１５】
基台部10の回転、第１腕部11の揺動、第２腕部12の揺動、ガン取付アーム２の揺動といったロボット１側の動作と、溶接ガン３の揺動と、は、制御部によって、同期（同時）駆動制御可能に設けられ、各軸心廻りの駆動（動作）の組合せや選択により、最適な軌道で動作するように制御されている。
【００１６】
次に、本発明の実施形態の溶接装置の使用方法（作用）について比較例の溶接装置と比較しながら説明する。
先ず、本発明が、図２に示すように、溶接ガン３がワークＷの水平面状部を挟む縦向き溶接姿勢から、図３に示すように、溶接ガン３がワークＷの鉛直面状部を挟む横向き溶接姿勢に姿勢変更を行う場合について説明する。なお、本発明において縦向き溶接とは、溶接面が水平状で、溶接軸心Ｌｅを鉛直状とした作業を言う。また、横向き溶接とは、溶接面が鉛直状で、溶接軸心Ｌｅを水平状とした作業を言う。また、図２に於て、第１支持部材30と第２支持部材31とは水平状に配設され、第１支持部材30と第２支持部材31が接近・離間することで、水平面状の溶接面を、（図１に示した）第１電極３ａと第２電極３ｂとで挟むように溶接が可能となる。このような溶接ガン３の姿勢を水平溶接打点姿勢とも言う。また、図３に於て、第１支持部材30と第２支持部材31とは鉛直状に配設され、鉛直面状の溶接面を、（図１に示した）第１電極３ａと第２電極３ｂとで挟むように溶接が可能となる。この溶接ガン３の姿勢を、鉛直溶接打点姿勢とも言う。
【００１７】
本発明は、縦向き溶接姿勢（図２参照）から、溶接軸心Ｌｅが鉛直状態から水平状態になるように溶接ガン３を第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動させると共に、第２腕部12及びガン取付アーム２を上方へ揺動させ、第１腕部11を前方側へ揺動させて、横向き溶接姿勢（図３参照）となる。
つまり、第１腕部11と第２腕部12とガン取付アーム２と溶接ガン３とを、夫々、１方向へ１度だけ動作させる（１動作させる）だけで、容易かつ迅速に姿勢変更する。言い換えると、図３に於て、溶接ガン３が矢印Ｚ方向に起き上がるような動作を可能としている。なお、本発明において、前方とは、基台部10からワークＷへ向かう矢印Ｘの方向を言う。
【００１８】
比較例は、図５に示すように、ロボット１´の先端の手首関節部１ａ´を介して取着されるガン取付アーム２´に、溶接ガン３´が直接的に固着されているものである。
図５（ａ）の縦向き溶接姿勢から、図５（ｂ）に示すように、第１腕部11´と第２腕部12´を後方（矢印Ｙ方向）へ揺動させ、溶接ガン３´をワークＷから大きく離間（後退）させる。
次に、図５（ｃ）及び図５（ｄ）に示すように、ガン取付アーム２´及び溶接ガン３´を、第３水平軸心Ｌ３´に直交する回転軸心（反転軸心）Ｌβ廻りに１８０度回転（反転）させる。しかも、反転の際にワークＷや基台部10´に溶接ガン３´が接触するのを防止するため、第２腕部12´及びガン取付アーム２´を上方へ揺動させて溶接ガン３´を予め逃がす必要がある。
次に、図５（ｅ）に示すように、ガン取付アーム２´をさらに上方へ揺動させつつ、第２腕部12´を下方へ揺動し、第１腕部11´を前方に揺動させて、溶接ガン３´をワークＷに接近させる。そして、図５（ｆ）に示す横向き溶接姿勢とする。
つまり、比較例は、図５に示したように、第１腕部11´は、後退後に、前方へ揺動する２動作（往復動作）を行っている。第２腕部12´は、後退後に、上方へ揺動し、その後、下方へ揺動する３動作を行っていることが分かる。ガン取付アーム２´は、上方へ揺動した後、下方へ揺動する２動作（往復動作）を行っている。さらに、関節部１ａ´がガン取付アーム２´を介して溶接ガン３を第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動させるのみならず、反転軸心Ｌβ廻りに１８０度回転させる反転動作を行う必要がある。
【００１９】
即ち、本発明は、溶接ガン３を第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動可能であるため、第３水平軸心Ｌ３に直交する軸心廻りに１８０度回転させる必要がなくなると共に、ワークＷや治具装置及び基台部10との干渉を防止するために大きく逃がす必要や、逃がした位置から再接近させる必要（往復動作させる必要）がなくなって、比較例に比べて装置全体の動作が簡略化し、空間移動時間や動作軌道も短縮（簡略化）され、溶接ガン３を容易かつ迅速に姿勢変更させることが可能である。
【００２０】
また、本発明は、図４に示すように、ガン取付アーム２を、ワークＷの上方を通過させて、溶接ガン３をワークＷの背面側Ｗｂに回り込むように移動可能となっている。なお、ワークＷの正面側Ｗａを、ロボット１の基台部10と対面する側とし、その反対側を背面側Ｗｂと呼ぶ。
【００２１】
比較例は、図６に示すように、ガン取付アーム２´に溶接ガン３´が固着されているため、溶接ガン３´をワークＷの上部までしか配設できず、ワークＷの背面側Ｗｂを溶接することは困難である。そのため、ワークＷの背面側Ｗｂを溶接するには、ターンテーブル（パレット）等の治具装置を制御してワークＷを鉛直軸心廻りに１８０度回転（反転）させるか、ワークＷの背面側Ｗｂに別の溶接装置を配設する必要がある。
【００２２】
つまり、本発明では、溶接可能範囲が広くなり（ワークＷの背面側Ｗｂの溶接が可能になり）、ワークＷを治具装置にて反転させる時間が省略される。また、反転するワークＷに溶接ガン３が接触するのを防ぐために、溶接ガン３を大きく逃がす動作が必要なくなり、生産時間の短縮化を可能にしている。又は、別の溶接装置をワークＷを挟んで対面状に設ける必要がなく、溶接工程における設備の簡素化を可能としている。
【００２３】
また、溶接ガン３を様々な溶接姿勢に容易に変更させることができ、溶接を行う際に、姿勢変更だけを行う動作時間（空間移動時間）を短縮可能とすると共に、ワークＷへの接近の際に、ワークＷの形状に影響を受けにくく（複雑なワークＷや治具装置の突出部をかわしやすく）なっている。
【００２４】
なお、本発明は設計変更可能であって、溶接ガン３は、図示した以外の形状でも良い。つまり、対向する一対の第１・２電極３ａ，３ｂを有し、第１電極３ａと第２電極３ｂとが接近・離間するスポット溶接用のものであれば良い。また、ロボット１は、手首関節部１ａの取付部14が、ギヤ等の送り装置で第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動自在なものでもよい。
【００２５】
以上のように、本発明の溶接装置は、多関節型のロボット１と、ロボット１の先端の手首関節部１ａを介して取着されるガン取付アーム２と、を備え、ガン取付アーム２にスポット溶接用の溶接ガン３を水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着したので、溶接ガン３の姿勢変更動作の自由度を向上させ、姿勢変更動作を簡略化でき、空間移動時間や、動作軌道を最小限（最短）に抑えて、溶接できる。動作の無駄を省いてスムーズに効率良く溶接を行え、生産能力を向上できる。また、初期ティーチング設定や動作確認等の段取り作業時間を大幅に削減できる。ワークＷに溶接ガン３を様々な方向から接近させて、溶接可能範囲を向上できる。つまり、ワークＷに接近させる際の姿勢（ガン進入姿勢）の自由度を向上させ、様々なワークＷの形状に対応できる。ワークＷの背面側Ｗｂに回り込むように溶接ガン３を配設でき、ワークＷの姿勢を変更するためのターンテーブルやパレット装置等の治具装置を、回転動作させる必要がなく、迅速に効率良く作業できると共に、生産設備全体を簡素化できる。ロボット１に複雑な姿勢変更動作をさせることなく容易に溶接ガン３の姿勢を変更できる。
【００２６】
また、鉛直軸心Ｌо廻りに回転自在な基台部10と、基台部10に第１水平軸心Ｌ１廻りに揺動自在に枢着された第１腕部11と、第１腕部11に第２水平軸心Ｌ２廻りに揺動自在に枢着された第２腕部12と、第２腕部12の先端に設けられた手首関節部１ａと、手首関節部１ａによって第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動自在に枢着されたガン取付アーム２と、を備え、ガン取付アーム２にスポット溶接用の溶接ガン３を第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着したので、溶接ガン３の姿勢変更動作の自由度を向上させ、姿勢変更動作を簡略化でき、空間移動時間や、動作軌道を最小限に抑えて、溶接できる。動作の無駄を省いてスムーズに効率良く溶接を行え、生産能力を向上できる。また、初期ティーチング設定や動作確認等の段取り作業時間を大幅に削減できる。ワークＷに溶接ガン３を様々な方向から接近させて、溶接可能範囲を向上できる。つまり、ワークＷに接近させる際の姿勢の自由度を向上させ、様々なワークＷの形状に対応できる。ワークＷの背面側Ｗｂに回り込むように溶接ガン３を配設でき、ワークＷの姿勢を変更するためのターンテーブルやパレット装置等の治具装置を、回転動作させる必要がなく、迅速に効率良く作業できると共に、生産設備全体を簡素化できる。また、水平軸心Ｌ３に直交する回転（反転）軸心Ｌβ廻りに回転が不可能な手首関節部１ａを有するロボット１であっても、縦向き溶接と横向き溶接の切換動作を迅速かつ容易に行うことができる。ロボット１に複雑な姿勢変更動作をさせることなく容易に溶接ガン３の姿勢を変更できる。
【符号の説明】
【００２７】
１ ロボット
１ａ 手首関節部
２ ガン取付アーム
３ 溶接ガン
10 基台部
11 第１腕部
12 第２腕部
Ｌо 鉛直軸心
Ｌ１ 第１水平軸心
Ｌ２ 第２水平軸心
Ｌ３ 第３水平軸心
Ｌａ （第４の）水平軸心
【技術分野】
【０００１】
本発明は、溶接装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来の溶接装置は、ロボットの先端の手首関節部を介してガン取付アームを取着し、そのガン取付アームにスポット溶接用の溶接ガンを固着していた（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特許第４２１８８６６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかし、従来の溶接装置では、ワークの複数の溶接すべき箇所に合わせて、溶接ガンの姿勢を変更して接近させるには、ロボットの姿勢を大きくかつ複雑に動作させる必要があった。このため、ロボットの空間移動時間（エアーカット時間）や、動作軌道（移動軌跡）が長くなり、１つのワークを溶接するためにかかる時間（タクトタイム）に無駄が発生していた。また、段取り作業におけるティーチング設定や動作確認に多大な時間と労力が費やされてしまうという問題があった。
【０００５】
そこで、本発明は、溶接ガンの姿勢変更の際に、ロボットの動作軌道や空間移動時間が短く、さらに、段取り作業時間を短縮可能な溶接装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成するために、本発明の溶接装置は、多関節型のロボットと、該ロボットの先端の手首関節部を介して取着されるガン取付アームと、を備え、上記ガン取付アームにスポット溶接用の溶接ガンを水平軸心廻りに揺動自在に枢着したものである。
【０００７】
また、鉛直軸心廻りに回転自在な基台部と、該基台部に第１水平軸心廻りに揺動自在に枢着された第１腕部と、該第１腕部に第２水平軸心廻りに揺動自在に枢着された第２腕部と、該第２腕部の先端に設けられた手首関節部と、該手首関節部によって第３水平軸心廻りに揺動自在に枢着されたガン取付アームと、を備え、上記ガン取付アームにスポット溶接用の溶接ガンを第４の水平軸心廻りに揺動自在に枢着したものである。
【発明の効果】
【０００８】
本発明の溶接装置によれば、溶接ガンの姿勢変更動作の自由度を向上させ、姿勢変更動作を簡略化でき、空間移動時間や、動作軌道を最小限に抑えて、溶接することができる。動作の無駄を省いてスムーズに効率良く溶接でき、生産能力を向上できる。また、初期ティーチング設定や動作確認等の段取り作業時間を大幅に削減できる。ワークの姿勢を変更するためのターンテーブルやパレット装置等の治具装置を、回転動作させる必要がなく、迅速に効率良く作業できると共に、生産設備全体を簡素化できる。ワークに溶接ガンを様々な方向から接近させて、溶接可能範囲を向上できる。ワークに接近させる際の姿勢（ガン進入姿勢）の自由度を向上させ、様々なワークや治具装置の形状に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【０００９】
【図１】本発明の溶接装置の実施形態の側面図である。
【図２】作用説明図である。
【図３】作用説明図である。
【図４】作用説明図である。
【図５】比較例の作用説明図である。
【図６】比較例の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１０】
以下、図示の実施の一形態に基づき本発明を詳説する。
図１に於て、本発明に係る溶接装置は、鉛直軸心Ｌо廻りに回転自在な基台部10と、基台部10に基端側が第１水平軸心Ｌ１廻りに揺動自在に枢着された第１腕部11と、第１腕部11の先端側に第２水平軸心Ｌ２廻りに揺動自在に枢着された第２腕部12と、第２腕部12の先端（側）に設けられた手首関節部１ａと、を有する多関節型の産業用のロボット１を備えている。
【００１１】
そして、ロボット１の先端（側）の手首関節部１ａを介して取着されるガン取付アーム２を備えている。ガン取付アーム２は、手首関節部１ａによって第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動自在に枢着されている。つまり、ロボット１の手首関節部１ａは、第２腕部12の先端側で第３水平軸心Ｌ３廻りに回転駆動される水平状手首軸13と、手首軸13に枢着された（アタッチメント用）取付部14とを有している。そして、取付部14にガン取付アーム２を取着することで、手首軸13が回転駆動すると、ガン取付アーム２が第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動するように設けている。
【００１２】
さらに、ガン取付アーム２に、スポット溶接用の溶接ガン３を、第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着している。
溶接ガン３は、ガン取付アーム２に両端部が回転自在に支持された支持軸５に取着（固着）され、支持軸５が第４の水平軸心Ｌａ廻りに回転駆動することで揺動するように設けられている。又は、ガン取付アーム２に支持軸５を固着し、溶接ガン３を支持軸５に揺動自在に枢着して、ギヤ等の送り装置で第４の水平軸心Ｌａ（支持軸５）廻りに溶接ガン３を揺動自在に設けても良い。
【００１３】
溶接ガン３は、所望の回転位置（回転角度）で停止可能な回転位置決め機構を介して、図示省略の制御部で制御されている。即ち、溶接ガン３は、第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動・固定自在に設けられている。また、溶接ガン３の先端側で対向される対向状に配設される一対の第１電極３ａと第２電極３ｂとを有している。また、第１電極３ａが先端に略直角に取着された第１支持部材30と、第２電極３ｂが先端に略直角に取着された第２支持部材31とを備えている。第１支持部材30と第２支持部材31は平行に設けられ、一対の第１電極３ａと第２電極３ｂとを、接近・離間させる往復（開閉）作動方向Ｎに開閉するものである。
【００１４】
第４の水平軸心Ｌａは、一対の第１電極３ａと第２電極３ｂとが接近・離間する往復（開閉）作動方向Ｎ（溶接軸心Ｌｅ）の直交平面上に配設される。第３水平軸心Ｌ３と平行に配設されている。
また、図１では、第４の水平軸心Ｌａと、第１水平軸心Ｌ１と、第２水平軸心Ｌ２と、第３水平軸心Ｌ３と、は平行である。
【００１５】
基台部10の回転、第１腕部11の揺動、第２腕部12の揺動、ガン取付アーム２の揺動といったロボット１側の動作と、溶接ガン３の揺動と、は、制御部によって、同期（同時）駆動制御可能に設けられ、各軸心廻りの駆動（動作）の組合せや選択により、最適な軌道で動作するように制御されている。
【００１６】
次に、本発明の実施形態の溶接装置の使用方法（作用）について比較例の溶接装置と比較しながら説明する。
先ず、本発明が、図２に示すように、溶接ガン３がワークＷの水平面状部を挟む縦向き溶接姿勢から、図３に示すように、溶接ガン３がワークＷの鉛直面状部を挟む横向き溶接姿勢に姿勢変更を行う場合について説明する。なお、本発明において縦向き溶接とは、溶接面が水平状で、溶接軸心Ｌｅを鉛直状とした作業を言う。また、横向き溶接とは、溶接面が鉛直状で、溶接軸心Ｌｅを水平状とした作業を言う。また、図２に於て、第１支持部材30と第２支持部材31とは水平状に配設され、第１支持部材30と第２支持部材31が接近・離間することで、水平面状の溶接面を、（図１に示した）第１電極３ａと第２電極３ｂとで挟むように溶接が可能となる。このような溶接ガン３の姿勢を水平溶接打点姿勢とも言う。また、図３に於て、第１支持部材30と第２支持部材31とは鉛直状に配設され、鉛直面状の溶接面を、（図１に示した）第１電極３ａと第２電極３ｂとで挟むように溶接が可能となる。この溶接ガン３の姿勢を、鉛直溶接打点姿勢とも言う。
【００１７】
本発明は、縦向き溶接姿勢（図２参照）から、溶接軸心Ｌｅが鉛直状態から水平状態になるように溶接ガン３を第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動させると共に、第２腕部12及びガン取付アーム２を上方へ揺動させ、第１腕部11を前方側へ揺動させて、横向き溶接姿勢（図３参照）となる。
つまり、第１腕部11と第２腕部12とガン取付アーム２と溶接ガン３とを、夫々、１方向へ１度だけ動作させる（１動作させる）だけで、容易かつ迅速に姿勢変更する。言い換えると、図３に於て、溶接ガン３が矢印Ｚ方向に起き上がるような動作を可能としている。なお、本発明において、前方とは、基台部10からワークＷへ向かう矢印Ｘの方向を言う。
【００１８】
比較例は、図５に示すように、ロボット１´の先端の手首関節部１ａ´を介して取着されるガン取付アーム２´に、溶接ガン３´が直接的に固着されているものである。
図５（ａ）の縦向き溶接姿勢から、図５（ｂ）に示すように、第１腕部11´と第２腕部12´を後方（矢印Ｙ方向）へ揺動させ、溶接ガン３´をワークＷから大きく離間（後退）させる。
次に、図５（ｃ）及び図５（ｄ）に示すように、ガン取付アーム２´及び溶接ガン３´を、第３水平軸心Ｌ３´に直交する回転軸心（反転軸心）Ｌβ廻りに１８０度回転（反転）させる。しかも、反転の際にワークＷや基台部10´に溶接ガン３´が接触するのを防止するため、第２腕部12´及びガン取付アーム２´を上方へ揺動させて溶接ガン３´を予め逃がす必要がある。
次に、図５（ｅ）に示すように、ガン取付アーム２´をさらに上方へ揺動させつつ、第２腕部12´を下方へ揺動し、第１腕部11´を前方に揺動させて、溶接ガン３´をワークＷに接近させる。そして、図５（ｆ）に示す横向き溶接姿勢とする。
つまり、比較例は、図５に示したように、第１腕部11´は、後退後に、前方へ揺動する２動作（往復動作）を行っている。第２腕部12´は、後退後に、上方へ揺動し、その後、下方へ揺動する３動作を行っていることが分かる。ガン取付アーム２´は、上方へ揺動した後、下方へ揺動する２動作（往復動作）を行っている。さらに、関節部１ａ´がガン取付アーム２´を介して溶接ガン３を第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動させるのみならず、反転軸心Ｌβ廻りに１８０度回転させる反転動作を行う必要がある。
【００１９】
即ち、本発明は、溶接ガン３を第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動可能であるため、第３水平軸心Ｌ３に直交する軸心廻りに１８０度回転させる必要がなくなると共に、ワークＷや治具装置及び基台部10との干渉を防止するために大きく逃がす必要や、逃がした位置から再接近させる必要（往復動作させる必要）がなくなって、比較例に比べて装置全体の動作が簡略化し、空間移動時間や動作軌道も短縮（簡略化）され、溶接ガン３を容易かつ迅速に姿勢変更させることが可能である。
【００２０】
また、本発明は、図４に示すように、ガン取付アーム２を、ワークＷの上方を通過させて、溶接ガン３をワークＷの背面側Ｗｂに回り込むように移動可能となっている。なお、ワークＷの正面側Ｗａを、ロボット１の基台部10と対面する側とし、その反対側を背面側Ｗｂと呼ぶ。
【００２１】
比較例は、図６に示すように、ガン取付アーム２´に溶接ガン３´が固着されているため、溶接ガン３´をワークＷの上部までしか配設できず、ワークＷの背面側Ｗｂを溶接することは困難である。そのため、ワークＷの背面側Ｗｂを溶接するには、ターンテーブル（パレット）等の治具装置を制御してワークＷを鉛直軸心廻りに１８０度回転（反転）させるか、ワークＷの背面側Ｗｂに別の溶接装置を配設する必要がある。
【００２２】
つまり、本発明では、溶接可能範囲が広くなり（ワークＷの背面側Ｗｂの溶接が可能になり）、ワークＷを治具装置にて反転させる時間が省略される。また、反転するワークＷに溶接ガン３が接触するのを防ぐために、溶接ガン３を大きく逃がす動作が必要なくなり、生産時間の短縮化を可能にしている。又は、別の溶接装置をワークＷを挟んで対面状に設ける必要がなく、溶接工程における設備の簡素化を可能としている。
【００２３】
また、溶接ガン３を様々な溶接姿勢に容易に変更させることができ、溶接を行う際に、姿勢変更だけを行う動作時間（空間移動時間）を短縮可能とすると共に、ワークＷへの接近の際に、ワークＷの形状に影響を受けにくく（複雑なワークＷや治具装置の突出部をかわしやすく）なっている。
【００２４】
なお、本発明は設計変更可能であって、溶接ガン３は、図示した以外の形状でも良い。つまり、対向する一対の第１・２電極３ａ，３ｂを有し、第１電極３ａと第２電極３ｂとが接近・離間するスポット溶接用のものであれば良い。また、ロボット１は、手首関節部１ａの取付部14が、ギヤ等の送り装置で第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動自在なものでもよい。
【００２５】
以上のように、本発明の溶接装置は、多関節型のロボット１と、ロボット１の先端の手首関節部１ａを介して取着されるガン取付アーム２と、を備え、ガン取付アーム２にスポット溶接用の溶接ガン３を水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着したので、溶接ガン３の姿勢変更動作の自由度を向上させ、姿勢変更動作を簡略化でき、空間移動時間や、動作軌道を最小限（最短）に抑えて、溶接できる。動作の無駄を省いてスムーズに効率良く溶接を行え、生産能力を向上できる。また、初期ティーチング設定や動作確認等の段取り作業時間を大幅に削減できる。ワークＷに溶接ガン３を様々な方向から接近させて、溶接可能範囲を向上できる。つまり、ワークＷに接近させる際の姿勢（ガン進入姿勢）の自由度を向上させ、様々なワークＷの形状に対応できる。ワークＷの背面側Ｗｂに回り込むように溶接ガン３を配設でき、ワークＷの姿勢を変更するためのターンテーブルやパレット装置等の治具装置を、回転動作させる必要がなく、迅速に効率良く作業できると共に、生産設備全体を簡素化できる。ロボット１に複雑な姿勢変更動作をさせることなく容易に溶接ガン３の姿勢を変更できる。
【００２６】
また、鉛直軸心Ｌо廻りに回転自在な基台部10と、基台部10に第１水平軸心Ｌ１廻りに揺動自在に枢着された第１腕部11と、第１腕部11に第２水平軸心Ｌ２廻りに揺動自在に枢着された第２腕部12と、第２腕部12の先端に設けられた手首関節部１ａと、手首関節部１ａによって第３水平軸心Ｌ３廻りに揺動自在に枢着されたガン取付アーム２と、を備え、ガン取付アーム２にスポット溶接用の溶接ガン３を第４の水平軸心Ｌａ廻りに揺動自在に枢着したので、溶接ガン３の姿勢変更動作の自由度を向上させ、姿勢変更動作を簡略化でき、空間移動時間や、動作軌道を最小限に抑えて、溶接できる。動作の無駄を省いてスムーズに効率良く溶接を行え、生産能力を向上できる。また、初期ティーチング設定や動作確認等の段取り作業時間を大幅に削減できる。ワークＷに溶接ガン３を様々な方向から接近させて、溶接可能範囲を向上できる。つまり、ワークＷに接近させる際の姿勢の自由度を向上させ、様々なワークＷの形状に対応できる。ワークＷの背面側Ｗｂに回り込むように溶接ガン３を配設でき、ワークＷの姿勢を変更するためのターンテーブルやパレット装置等の治具装置を、回転動作させる必要がなく、迅速に効率良く作業できると共に、生産設備全体を簡素化できる。また、水平軸心Ｌ３に直交する回転（反転）軸心Ｌβ廻りに回転が不可能な手首関節部１ａを有するロボット１であっても、縦向き溶接と横向き溶接の切換動作を迅速かつ容易に行うことができる。ロボット１に複雑な姿勢変更動作をさせることなく容易に溶接ガン３の姿勢を変更できる。
【符号の説明】
【００２７】
１ ロボット
１ａ 手首関節部
２ ガン取付アーム
３ 溶接ガン
10 基台部
11 第１腕部
12 第２腕部
Ｌо 鉛直軸心
Ｌ１ 第１水平軸心
Ｌ２ 第２水平軸心
Ｌ３ 第３水平軸心
Ｌａ （第４の）水平軸心
【特許請求の範囲】
【請求項１】
多関節型のロボット（１）と、該ロボット（１）の先端の手首関節部（１ａ）を介して取着されるガン取付アーム（２）と、を備え、
上記ガン取付アーム（２）にスポット溶接用の溶接ガン（３）を水平軸心（Ｌａ）廻りに揺動自在に枢着したことを特徴とする溶接装置。
【請求項２】
鉛直軸心（Ｌо）廻りに回転自在な基台部（10）と、該基台部（10）に第１水平軸心（Ｌ１）廻りに揺動自在に枢着された第１腕部（11）と、該第１腕部（11）に第２水平軸心（Ｌ２）廻りに揺動自在に枢着された第２腕部（12）と、該第２腕部（12）の先端に設けられた手首関節部（１ａ）と、該手首関節部（１ａ）によって第３水平軸心（Ｌ３）廻りに揺動自在に枢着されたガン取付アーム（２）と、を備え、
上記ガン取付アーム（２）にスポット溶接用の溶接ガン（３）を第４の水平軸心（Ｌａ）廻りに揺動自在に枢着したことを特徴とする溶接装置。
【請求項１】
多関節型のロボット（１）と、該ロボット（１）の先端の手首関節部（１ａ）を介して取着されるガン取付アーム（２）と、を備え、
上記ガン取付アーム（２）にスポット溶接用の溶接ガン（３）を水平軸心（Ｌａ）廻りに揺動自在に枢着したことを特徴とする溶接装置。
【請求項２】
鉛直軸心（Ｌо）廻りに回転自在な基台部（10）と、該基台部（10）に第１水平軸心（Ｌ１）廻りに揺動自在に枢着された第１腕部（11）と、該第１腕部（11）に第２水平軸心（Ｌ２）廻りに揺動自在に枢着された第２腕部（12）と、該第２腕部（12）の先端に設けられた手首関節部（１ａ）と、該手首関節部（１ａ）によって第３水平軸心（Ｌ３）廻りに揺動自在に枢着されたガン取付アーム（２）と、を備え、
上記ガン取付アーム（２）にスポット溶接用の溶接ガン（３）を第４の水平軸心（Ｌａ）廻りに揺動自在に枢着したことを特徴とする溶接装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−１８９３５２（Ｐ２０１１−１８９３５２Ａ）
【公開日】平成２３年９月２９日（２０１１．９．２９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−５５３５２（Ｐ２０１０−５５３５２）
【出願日】平成２２年３月１２日（２０１０．３．１２）
【出願人】（０００１６９９９４）高尾金属工業株式会社 (2)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年９月２９日（２０１１．９．２９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年３月１２日（２０１０．３．１２）
【出願人】（０００１６９９９４）高尾金属工業株式会社 (2)
【Ｆターム（参考）】
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