説明

溶接部材の溶接部検出装置及び溶接部検出方法

【課題】画像処理時間を短縮して短時間で溶接部を検出することができる溶接部検出装置及び溶接部検出方法を提供する。
【解決手段】溶接部を有する測定対象に対して放射線を照射する放射線源と、該放射線源から前記測定対象を透過した放射線を所定範囲で撮影し、撮影画像信号を出力する放射線撮影手段と、該放射線撮影手段から出力される撮影画像信号を処理して溶接部を検出する溶接部検出手段とを備えた溶接部検出装置であって、前記溶接部検出手段は、前記放射線撮影手段から出力される撮影画像信号から溶接線方向に所定距離離れた少なくとも2個所の当該溶接線方向と交差する線画像情報を切り出す画像情報切り出し手段と、該画像情報切り出し手段で切り出した各線画像情報を2値化処理する2値化処理手段と、該2値化処理手段で処理された2値化処理画像に基づいて溶接部を特定する溶接部特定手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接鋼管、溶接鋼板等の溶接部材の溶接部を検出する溶接部材の溶接部検出装置及び溶接部検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大径溶接鋼管の溶接部非破壊検査においては、溶接部を非破壊検査装置の視野内に位置合わせさせる必要がある。この工程の自動化または検査者の遠隔操作による位置合わせ作業のためには溶接部位置の検出が必要となる。
溶接部の検出方法には、従来、シーム部の表面段差を捕らえる方法があり、接触式と非接触式とがある。溶接鋼管製造工程における溶接部の接触式検出方法としては、例えば倣いロールを測定対象である溶接鋼管の外周又は内周に押付け、測定対象の溶接鋼管自体を円周方向に回転させる又は相対する倣いロールを円周方向に移動させ、その倣いロールの溶接鋼管溶接部通過時における溶接鋼管半径方向の変位を捕らえる方法を基本としたものがある。また、非接触式には前述の倣いロールに変わり、レーザ距離計などを用いたものや測定対象である溶接鋼管の溶接部とそれ以外の部位との磁気特性変化を検出する方法などがあり、溶接部の検出に渦流検出器とレーザ検出器とを用いる方法もある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらには、溶接鋼管等の管端部の放射線透過試験における被試験部の放射線透過画像を画像処理後デジタル画像として計算機に取り込み、この画像の輝度正規化、雑音除去、2値化処理後に、溶接線中心線の抽出処理を行うようにした金属部材の両面突合せ溶接部のオフシーム量計測方法及び装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−311806号公報
【特許文献2】特開平10−156576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、非破壊検査を行うX線撮影装置とは別に溶接ビードを検出する渦流検出器及びレーザ検出器を設ける必要があり、装置が大型化するという課題がある。
これに対して、特許文献2に記載の従来例にあっては、放射線透過試験を行う際の放射線透過画像を画像処理した後にデジタル画像として計算機に取り込み、このデジタル画像を輝度正規化、雑音除去、2値化処理した後に、溶接中心線の抽出を行うようにしているので、別途溶接ビードを検出するための装置を必要としない利点がある。しかしながら、上記特許文献2に記載された従来例では、輝度正規化してから雑音除去して2値化した補正画像を溶接線方向に適当な幅で分割し、溶接線に直交する方向の輝度分布を求め、分割幅ごとに最小2乗基準に基づいて自動的に2値化閾値を求めて2値化を行い、2値化画像の各列の中心点の座標を求め、最小2乗法により溶接線領域の中心線を求めるようにしている。このため、溶接線領域の中心線を求めるための画像処理量が多くなり、画像処理する計算機の負担が大きいという未解決の課題がある。
そこで、本発明は上記従来例の課題に着目してなされたものであり、画像処理時間を短縮して短時間で溶接部を検出することができる溶接部検出装置及び溶接部検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る溶接部検出装置は、溶接部を有する測定対象に対して放射線を照射する放射線源と、該放射線源から前記測定対象を透過した放射線を所定範囲で撮影し、撮影画像信号を出力する放射線撮影手段と、該放射線撮影手段から出力される撮影画像信号を処理して溶接部を検出する溶接部検出手段とを備えた溶接部検出装置であって、前記溶接部検出手段は、前記放射線撮影手段から出力される撮影画像信号から溶接線方向に所定距離離れた少なくとも2個所の当該溶接線方向と交差する線画像情報を切り出す画像情報切り出し手段と、該画像情報切り出し手段で切り出した各線画像情報を2値化処理する2値化処理手段と、該2値化処理手段で処理された2値化処理画像に基づいて溶接部を特定する溶接部特定手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に係る溶接部検出装置は、請求項1に係る発明において、前記溶接部特定手段は、前記線画像情報の2値化処理画像の夫々について溶接部を表す白色部を検出する白色部検出手段を備え、該白色部検出手段で検出した白色部間の重心位置を演算し、演算した重心位置を溶接部位置として特定することを特徴としている。
また、請求項3に係る溶接部検出装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記測定対象が大径溶接鋼管であることを特徴としている。
【0008】
また、請求項4に係る溶接部検出方法は、溶接部を有する測定対象に対して放射線を照射し、測定対象を透過した放射線を所定範囲で撮影した放射線画像情報に基づいて溶接部を検出する溶接部検出方法であって、前記放射線画像情報を2値化処理して2値化画像情報を得る2値化処理ステップと、該2値化画像情報から溶接線方向に所定距離離れた少なくとも2個所の当該溶接線方向と交差する線画像情報を切り出す情報切り出しステップと、切り出した線画像情報に基づいて溶接部を特定する溶接部特定ステップとを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項5に係る溶接部検出方法は、請求項4に係る発明において、前記溶接部特定ステップは、前記線画像情報の夫々について溶接部を表す白色部を検出したときに、白色部間の重心位置を演算し、演算した重心位置を溶接部位置として特定することを特徴としている。
また、請求項6に係る溶接部検出方法は、請求項4又は5に係る発明において、前記測定対象が大径溶接鋼管であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶接部を透過した放射線を放射線撮影手段によって所定範囲で撮影して撮影画像信号として出力し、この撮影画像信号を2値化処理し、2値化処理した画像信号から溶接線方向に所定距離離れた少なくとも2個所の当該溶接線方向と交差する線画像情報を切り出し、切り出した線画像情報に基づいて溶接部を検出するようにしたので、画像処理量を少なくして短時間で溶接部を正確に検出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】X線画像信号処理装置で実行する画像処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】画像切り出し処理の説明に供する図である。
【図4】溶接部のX線画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の溶接部検出装置のシステム構成図である。図中、1は溶接部検出装置であって、測定対象となる溶接部2を有する大径の溶接鋼管3の外周部が溶接鋼管3の外径より短い所定間隔を保って配設されたターニングロール4a及び4bによって円周方向に回転可能に支持されている。
【0013】
ターニングロール4a及び4bのそれぞれは、電動モータ5a及び5bの回転軸に減速機等の所定の動力伝達機構を介して連結されて、モータ駆動回路6a及び6bによって互いに同期して双方向に回転駆動される。これらモータ駆動回路6a及び6bは、ターニングロール回転制御装置7から入力されるモータ回転数指令に基づいて電動モータ5a及び5bを回転駆動する。
【0014】
また、電動モータ5aには、モータ回転数を検出するエンコーダ等の回転数検出器10が連結されている。この回転数検出器10から入力される回転数信号及び後述するX線撮像信号処理装置15から入力される溶接部検出信号に基づいて溶接部位置ずれ量Pgを算出すると共に、溶接部をトラッキングする溶接部トラッキング装置11が設けられている。そして、この溶接部トラッキング装置11から出力される溶接部の溶接部位置ずれ量Pgに基づいてターニングロール回転制御装置7で、溶接部2がターニングロール4a及び4b間の中央位置となるように溶接鋼管3の回転位置が制御される。
【0015】
このターニングロール4a及び4b間の中央位置における溶接鋼管3の外周側に放射線源としての長方形状にX線を発生するX線発生源12が配設され、このX線発生源12と溶接鋼管3の外周面との間にベネトラメータ13が配設されている。また、X線発生源12に溶接鋼管3を挟んで対向する溶接鋼管3の内周側位置に、溶接鋼管3を透過したX線を図4に示すように円周方向に所定幅Wで且つ溶接線方向に所定長さLとなる所定撮影範囲で撮影し、これを撮影画像信号として出力する放射線撮影手段としてのCCDカメラ集積パネル14が配設されている。
【0016】
そして、CCDカメラ集積パネル14によって撮影された撮影画像信号がX線撮像信号処理装置15に入力され、このX線撮像信号処理装置15で、所定の画像処理が行われて溶接鋼管3の溶接部2が検出される。
このX線撮像信号処理装置15は、CCDカメラ集積パネル14から出力される所定撮影範囲の撮影画像信号から溶接線方向に所定距離離れた少なくとも2つの所定幅の線画像情報を切り出す画像情報切り出し手段としての画像情報切り出し処理部16と、この画素情報切り出し処理部16で切り出した各線画像情報を2値化処理して溶接部を検出する溶接部検出手段としての溶接部検出処理部17とを備えている。
【0017】
ここで、溶接部検出処理部17は、図2に示す溶接部検出処理を実行する。この溶接部検出処理は、溶接鋼管3をターニングロール4a及び4b上に載置し、溶接鋼管3の端部先端から所定距離までの間に、X線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14を、溶接鋼管3を挟んで対向させるようにセットした状態で、図示しないスタートスイッチを押圧することにより実行開始される。
すなわち、溶接部検出処理は、先ず、ステップS1で、ターニングロール4a及び4bを一方向に慣性力が小さい比較的低速の所定回転速度で定速回転させる回転指令をターニングロール回転制御装置7及び溶接部トラッキング装置11に出力する。
【0018】
次いで、ステップS2に移行して、画像情報切り出し処理部16に対してCCDカメラ集積パネル14で撮影した所定撮影範囲の撮影画像信号を読込む画像信号読込指令を出力する。次いで、ステップS3に移行して、画像情報切り出し処理部16から出力される所定撮影範囲の撮影画像情報の内の溶接線方向の両端から所定距離内側の少なくとも2点における所定画素幅の溶接線方向と直交する線画像情報を読込んでからステップS4に移行する。ここで、線画像情報の画素幅は、2値化処理したときの誤検出を避けるには広ければ広い方が好ましいが、余り広すぎると画像処理速度が低下するので、画像処理速度を低下させない程度で、2値化処理した場合に溶接部2の白認識を誤らないように例えば数ミリ〜数十ミリ程度の画素幅に設定する。
【0019】
このステップS4では、切り出された2つの所定幅の線画像情報をそれぞれ所定の閾値で2値化処理して2つの2値化線画像情報を形成し、次いでステップS5に移行して、2つの2値化線画像情報内にそれぞれ切り出し範囲内の全画素数のうち2値化処理により白認識が例えば30%〜60%を占める溶接部が確実に存在するか否かなど、画像情報切り出し画素数と溶接鋼管のサイズ等により決まる溶接部長さに相当する画素数との関係を考慮した判定基準を用いて判定する。この場合に溶接部が確実に存在するとの判定は、溶接部と判定された領域の外側に所定長さの黒認識される領域が存在するか否かを判定するものであり、2つの2値化線画像情報中に溶接部が存在しない場合、何れか1つの2値化線画像情報中に溶接部が存在する場合及び2つの2値化線画像情報の双方に溶接部が存在するが何れか一方の2値化線画像情報の外側に黒認識される領域が存在しない場合には、溶接部を検出していないものと判断してステップS6に移行する。
【0020】
このステップS6では、前記ステップS2の撮影画像信号の読込時の撮影位置から円周方向に前回の撮影画像信号と所定のオーバーラップ距離だけ重なる撮影位置となる所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過していないときには、前記ステップS2に戻り、所定時間が経過しているときには、ステップS7に移行して、ターニングロール回転停止指令を出力し、次いで、ステップS8に移行して溶接位置検出不能警報を出力する。
【0021】
一方、前記ステップS5の判定結果が、2つの2値化線画像情報のそれぞれに溶接部が存在し、且つそれらの溶接部の外側に所定長さの黒認識される領域が存在する場合には、溶接部が確実に認識されたものと判断してステップS9に移行する。
このステップS9では、2つの2値化線画像情報で認識された溶接部間の重心位置CGを演算し、この重心位置CGを溶接部の中心線位置として判断し、次いでステップS10に移行して、演算した重心位置CGを溶接部検出情報として溶接部トラッキング装置11に出力し、次いでステップS11に移行して、ターニングロール回転制御装置7に対してターニングロール回転停止指令を出力してからステップS12に移行する。
【0022】
このステップS12では、溶接部トラッキング装置11から位置ずれ修正完了通知を受信したか否かを判定し、位置ずれ修正完了通知を受信していないときにはこれを受信するまで待機し、位置ずれ修正完了通知を受信したときには、ステップS13に移行して、後述する撮影画像信号取込み部18に対して画像読込指令を出力してから溶接部検出処理を終了する。
この図2の処理において、ステップS4の処理が2値化処理手段に対応し、ステップS5、S6、S9及びS10の処理が溶接部特定手段に対応している。
【0023】
また、X線撮像信号処理装置15は、溶接部検出処理部17からの画像取込み指令が入力されたときに、CCDカメラ集積パネル14から出力される溶接部2が撮影された所定撮影範囲の撮影画像信号を取込む撮影画像信号取込み部18と、この撮影画像信号取込み部18で取込んだ所定撮影範囲の撮影画像信号に対して輝度正規化補正、雑音除去補正等の補正処理を行って、検査画像信号を形成する画像信号補正処理部19と、この画像信号補正処理部19から出力される検査画像を表示する検査画像表示部20と、画像信号補正処理部19から出力される検査画像信号を記憶する画像メモリ21とを備えている。
【0024】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
溶接が終了した溶接鋼管3の溶接部2についてX線による非破壊検査を行う際に、先ず、溶接が終了した溶接鋼管3をターニングロール4a及び4b上に載置する。そして、溶接鋼管3の内部にCCDカメラ集積パネル14を挿入してX線発生源12と対向させる。
【0025】
この状態で、図示しないステートスイッチを押下して溶接部検出処理部17で図2に示す溶接部検出処理を実行開始させる。このため、先ず、ターニングロール4a,4bを比較的低回転速度で定速回転させる低速回転指令をターニングロール回転制御装置7及び溶接部トラッキング装置11に出力する(ステップS1)。
ターニングロール回転制御装置7では、モータ駆動回路6a及び6bに対して回転駆動信号を出力し、これらモータ駆動回路6a及び6bによって電動モータ5a及び5bが一方向に同期されて回転駆動され、ターニングロール4a及び4bを回転させて溶接鋼管3を一方向に低速度で定速回転させる。
【0026】
また、溶接部トラッキング装置11では、ターニングロール4aを回転駆動する電動モータ5aの回転数を検出する回転数検出器10からの回転検出信号を読込み、溶接部のトラッキングを開始する。
このように、溶接鋼管3が一方向に回転を開始すると、画像情報切り出し処理部16に対してCCDカメラ集積パネル14で撮像した所定撮影範囲の撮影画像信号を読込む撮影画像信号読込指令を出力する(ステップS2)。次いで、画像情報切り出し処理部16から出力される所定撮影範囲の撮影画像信号から溶接線方向の両端から所定距離内側位置の溶接線方向に所定距離離れた位置における溶接線方向と直交する所定幅の2つの線画像情報を読込む(ステップS3)。
【0027】
次いで、切り出した2つの線画像情報に対して、所定閾値に基づいて2値化処理して2値化線画像情報Da,Dbを形成し(ステップS4)、この2つの2値化線画像情報Da、Dbのそれぞれに溶接部が存在するか否かを判定する(ステップS5)。この判定は、2つの2値化線画像情報Da、Dbのそれぞれについて全画素中の白認識されている画素が例えば30%〜60%であるか否かを判定することにより、溶接部が存在するか否かを判定する。
【0028】
この判定結果が、図3(a)に示すように、2つの2値化線画像情報Da,Dbのそれぞれについて白認識されている画素が全画素の30%〜60%に達していない場合や、図3(b)に示すように、2つの2値化線画像情報Da,Dbの一方の2値化線画像情報Daで白認識されている画素が全画素の30%〜60%に達しているが、他方の2値化線画像情報Dbでは白認識されている画素が全画素の30%〜60%に達していない場合には、溶接部が存在しないものと判断して、ステップS2の撮影像画像信号の読込時から所定時間が経過するまでの間はステップS2に戻る。そして、所定時間が経過したときには、ターニングロール4a及び4bを駆動する電動モータ5a及び5bを停止させる駆動停止指令をターニングロール回転制御装置7に出力し(ステップS7)、その後溶接位置検出不能警報を出力する(ステップS8)。
【0029】
これに対して、図3(c)に示すように、2つの2値化線画像情報Da,Dbの双方で白認識されている画素が全画素の30%〜60%に達しており、白認識されている画素の外側に黒認識されている画素が存在する場合には、溶接部が存在するものと判断して、ステップS9に移行して、2つの2値化線画像情報Da,Dbで白認識されている領域の幅と、2つの線画像情報の切り出し位置間の距離とから図3(c)に示す重心位置CGを演算する。
そして、演算した重心位置CGを溶接部の中心位置として溶接部トラッキング装置11に出力する(ステップS10)。このため、溶接部トラッキング装置11では、現時点のトラッキング位置と溶接部検出処理部17から入力される溶接部の重心位置CGとに基づいて実際の溶接部の中心位置を特定する。
【0030】
次いで、ターニングロール4a及び4bを駆動する電動モータ5a及び5bを停止させる駆動停止指令をターニングロール回転制御装置7に出力し(ステップS11)、その後溶接部トラッキング装置11から溶接部の位置ずれ修正完了通知を受信するまで待機する。
【0031】
溶接部トラッキング装置11では、ターニングロール4a及び4bが回転停止したときの溶接鋼管3の回転位置と、特定した溶接部の中心位置との位置ずれ量Pgを算出し、算出した位置ずれ量Pgをターニングロール回転制御装置7に出力する。このためターニングロール回転制御装置7では、入力された位置ずれ量Pgが略“0”となるようにモータ駆動回路6a及び6bに対して極低速逆転指令を出力し、溶接部トラッキング装置11から入力される位置ずれ量が略“0”となった時点でモータ駆動回路6a及び6bに対して駆動停止指令を出力するとともに、溶接部検出処理部17に対して位置ずれ修正完了通知を出力する。
【0032】
溶接部検出処理部17では、溶接部トラッキング装置11から位置ずれ修正完了通知を受信すると(ステップS12)、撮像画像信号取込み部18に対して画像読取指令を出力し(ステップS13)、その後に溶接部検出処理を終了する。
このため、撮影画像信号取込み部18で、CCDカメラ集積パネル14で撮像した所定範囲の撮影画像信号を取込み、この撮影画像信号を画像信号補正処理部19で、輝度正規化補正、雑音除去補正等の補正処理を行って検査画像情報を形成し、この検査画像情報を検査画像表示部20に出力して表示するとともに、画像メモリ21に記憶する。
【0033】
ここで、検査画像表示部20で表示される検査画像は、図4に示すように、所定範囲内の略中央部に溶接部2が溶接ビードの肉厚分だけX線透過量が少なくなって白色化された状態で表示される。
この検査画像表示部20で表示された検査画像を視認して、溶接部2の撮影位置が適当でない場合には、再度溶接部検出処理部17で溶接部検出処理を実行させるか、溶接部トラッキング装置11に手動操作によって再度溶接部2の位置修正を行わせるか、溶接部トラッキング装置11に手動介入して溶接鋼管3の溶接位置を修正する等を行うことにより、溶接部2の位置を再調整する。
【0034】
また、溶接部検出処理部17の図2の溶接部検出処理で、2つの2値化線画像情報の双方に溶接部2が存在しない場合には、X線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14の設置位置が溶接線方向からずれていると判断して、X線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14の設置位置を溶接線方向に合わせるように修正してから再度図2の溶接部検出処理を行うことにより、溶接鋼管3の溶接部2を正確に検出することができる。この場合の位置調整は、2つの2値化線画像情報で溶接部2を検出しているので、2つの2値化線画像情報の内の何れが先に溶接部2を検出するかと、一方が先に溶接部2を検出してから他方が溶接部2を検出するまでの時間と、溶接鋼管3の回転方向及び回転速度とに基づいてX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14の設置位置の溶接線方向に対する傾斜量を検出することができる。このため、検出した傾斜量に応じてX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14の設置位置を修正する設置位置修正機構を設けることにより、X線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14の設置位置を自動的に修正することができる。
【0035】
このように、上記実施形態においては、測定対象となる溶接鋼管3の溶接部2を検出する際に、CCDカメラ集積パネル14で撮影した溶接鋼管3の端部から溶接線方向に100〜110mmで幅25ミリ程度の比較的広範囲の所定範囲の撮影画像信号の内の少なくとも溶接線方向の両端部寄りの2個所で所定幅の線画像情報を切り出し、切り出した2つの線画像情報をそれぞれ2値化処理して2値化線画像情報を形成し、この2つの2値化画像情報に基づいて溶接部を検出するので、溶接部を検出するための画像処理量を短縮して短時間の画像処理で溶接部を正確に検出することができる。このため、溶接部2の検出結果に基づいて溶接部2を所定範囲のX線画像信号の中央部に正確に収めた検査画像信号を取り込むことができる。
しかも、所定範囲の撮影画像信号の溶接線方向の両端寄りの2個所で所定幅の線画像情報を切り出すので、溶接部が所定範囲の撮影画像信号内に収まっているか否かを正確に判断することができ、溶接部の一部を検出して溶接位置を誤検出することを確実に防止することができる。
【0036】
そして、溶接部2を正確に位置決めしたら、引き続き同じX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14を用いて溶接部の非破壊検査を行う。このように、X線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14を非破壊検査と共用するので、別途溶接部検出装置を設ける必要がない。
なお、上記実施形態においては、溶接鋼管3の外側にX線発生源12を配置し、溶接鋼管3の内側にCCDカメラ集積パネル14を配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、X線発生源12を溶接鋼管3の内側に、CDDカメラ集積パネル14を溶接鋼管3の外側に配置するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、溶接部検出処理部17で溶接鋼管3の溶接部2を検出したときに、ターニングロール4a及び4bの回転を停止させて、溶接鋼管3の停止時の位置と溶接部2の位置とのずれ量に応じてターニングロール4a及び4bを逆転駆動して、溶接部2の中心位置をX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14との幅方向の中央位置とを一致させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、溶接部2の中心位置を溶接部トラッキング装置11で特定した後に、溶接鋼管3の溶接位置をトラッキングしながら溶接鋼管3の回転を継続し、一回転して溶接部2の中心位置がX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14との幅方向の中央位置に近づいたときに減速させて、溶接部2の中心位置がX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14との幅方向の中央位置と一致したときに、ターニングロール4a及び4bの回転を停止させるようにしてもよい。このとき、溶接部トラッキング装置11で溶接部2の中心位置を特定した後の溶接鋼管3の回転速度を、溶接部2を検出する場合の回転速度より速め、一回転して溶接部2の中心位置がX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14との幅方向の中央位置に近づいたときに減速させることにより、溶接部2の中心位置の位置決めに要する時間を短縮することができる。
【0038】
さらに、上記実施形態においては、測定対象として大径の溶接鋼管3を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、小径の溶接鋼管の溶接部を検出することもでき、さらには2つの部材を突き合わせて溶接した溶接鋼板の溶接部を検出することもできる。この場合には、ターニングロール4a及び4b上に溶接鋼板を載置し、これら溶接鋼板を挟むようにX線発生源12及びCCDカメラ集積パネル14を対向させた状態で、ターニングロール4a及び4bによって溶接鋼板を幅方向に移動させれば良いものである。
【0039】
なおさらに、上記実施形態では、放射線源としてX線発生源12を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、測定対象を透過可能で且つ画像信号として再生が可能なものであれば他の任意の放射線を適用することができる。
また、上記実施形態では、CCDカメラ集積パネル14から出力される撮影画像信号から溶接方向の両端よりの2個所の線画像情報を切り出す場合について説明したが、これに限定されるものはなく、3個所以上の線画像情報を切り出すようにしてもよい。また、線画像情報の切り出し方向としては溶接線に直行する方向に限らず、溶接線と交差する方向であればよい。
【符号の説明】
【0040】
1…溶接部検出装置、2…溶接部、3…溶接鋼管、4a,4b…ターニングロール、5a,5b…電動モータ、6a,6b…モータ駆動回路、7…ターニングロール回転制御装置、10…回転数検出器、11…溶接部トラッキング装置、15…X線撮像信号処理装置、16…画像情報切り出し処理部、17…溶接部検出処理部、18…撮影画像信号取込み部、19…画像信号補正処理部、20…検査画像表示部、21…画像メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部を有する測定対象に対して放射線を照射する放射線源と、該放射線源から前記測定対象を透過した放射線を所定範囲で撮影し、撮影画像信号を出力する放射線撮影手段と、該放射線撮影手段から出力される撮影画像信号を処理して溶接部を検出する溶接部検出手段とを備えた溶接部検出装置であって、
前記溶接部検出手段は、前記放射線撮影手段から出力される撮影画像信号から溶接線方向に所定距離離れた少なくとも2個所の当該溶接線方向と交差する線画像情報を切り出す画像情報切り出し手段と、該画像情報切り出し手段で切り出した各線画像情報を2値化処理する2値化処理手段と、該2値化処理手段で処理された2値化処理画像に基づいて溶接部を特定する溶接部特定手段とを備えていることを特徴とする溶接部検出装置。
【請求項2】
前記溶接部特定手段は、前記線画像情報の2値化処理画像の夫々について溶接部を表す白色部を検出する白色部検出手段を備え、該白色部検出手段で検出した白色部間の重心位置を演算し、演算した重心位置を溶接部位置として特定することを特徴とする請求項1に記載の溶接部検出装置。
【請求項3】
前記測定対象が大径溶接鋼管であることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接部検出装置。
【請求項4】
溶接部を有する測定対象に対して放射線を照射し、測定対象を透過した放射線を所定範囲で撮影した放射線画像情報に基づいて溶接部を検出する溶接部検出方法であって、
前記放射線画像情報を2値化処理して2値化画像情報を得る2値化処理ステップと、該2値化画像情報から溶接線方向に所定距離離れた少なくとも2個所の当該溶接線方向と交差する線画像情報を切り出す情報切り出しステップと、切り出した線画像情報に基づいて溶接部を特定する溶接部特定ステップとを備えたことを特徴とする溶接部検出方法。
【請求項5】
前記溶接部特定ステップは、前記線画像情報の夫々について溶接部を表す白色部を検出したときに、白色部間の重心位置を演算し、演算した重心位置を溶接部位置として特定することを特徴とする請求項4に記載の溶接部検出方法。
【請求項6】
前記測定対象が大径溶接鋼管であることを特徴とする請求項4又は5に記載の溶接部検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−163906(P2011−163906A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26653(P2010−26653)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】