説明

溶液中の単層および多層グラフェンの安定な分散系

【課題】溶液中で安定なグラフェンのコロイド分散系、特に、分散剤を必要としないコロイドのグラフェン分散系を生成するための方法を提供すること。
【解決手段】コロイドのグラフェン分散系を生成するための方法であって、(i)分散媒中にグラファイト酸化物を分散させることによって、コロイドのグラフェン酸化物またはマルチグラフェン酸化物分散系を形成するステップと、(ii)分散系中のグラフェン酸化物またはマルチグラフェン酸化物を熱還元するステップとを含む方法が開示されている。出発分散系を調製するために使用される方法に応じて、グラフェンまたはマルチグラフェン分散系が得られ、これは、さらに処理することによって、グラファイトより大きい面間距離を有するマルチグラフェンにすることができる。そのような分散系およびマルチグラフェンは、例えば、充電式リチウムイオン電池の製造において適切な材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子導電性炭素質材料およびその製造、特に、充電式リチウムイオン電池において使用するのに適した材料の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
用語グラフェンは、6個の炭素原子を有するsp2−混成環の、1原子の厚さの平面シートを示す。完全なグラフェンは、もっぱら六角形セルからなる。円筒形のグラフェン層は、カーボン・ナノチューブと呼ばれる。用語グラフェンはまた、グラファイトにおいて単層の特徴が論じられる場合、使用することができる。そのような特徴は、例えば、それぞれ反応性もしくは起こった反応、または構造的な関係である。
【0003】
グラフェン層は、適切な剥離(abrasion)、機械的剥離(mechanical exfoliation)または化学蒸着によって生成することができる。そのような方法の1つは、いわゆるスコッチテープ法[10]である。この方法では、単層がグラファイト結晶から取り出され、試料ホルダーに移される。
【0004】
最近記載された化学蒸着では、グラフェン層を生成することができる前に、SiO2/Si基板を薄いNi層で覆わなければならず、このコーティングされた基板を、特定のガス処理にかけなればならない方法が開示されている。グラフェン層を他の基板にコーティングするのに使用可能にするために、Ni層またはSiO2層を除かなければならない。そのようなグラフェン膜は、非常に良好な電気的、光学的、および機械的(例えば、曲げ)特性[9]を有していた。
【0005】
別の方法は、炭化ケイ素を高温(1100℃)に加熱することによってこれをグラフェンに還元することである。このプロセスは、層の程度が使用されるSiC基板のサイズに依存する層を生じ、高価な出発材料のために、かなり高価であり、また、高温を必要とするために有用性が限られている。
【0006】
グラフェンはほとんどの固体とかなり異なる。グラフェンは、半金属または「ゼロギャップ」半導体として挙動し、室温で著しく高い電子移動度を有する。
【0007】
炭素質材料、例えば、グラファイト、グラフェンまたはカーボン・ナノチューブなどの水分散系は、文献に記載されている。様々な分散剤によって安定化された、それぞれ1μmから50μmまたは100μmの間の好適な粒径を有するグラファイトから水性グラファイト分散系を製造することが記載されている(例えば、米国特許第5,476,580号および国際公開第2007/031055号を参照されたい)。それぞれ最大20重量%または最大70重量%まで、グラファイトを水中に分散させることができる。
【0008】
2%のナノチューブ含量を有するカーボン・ナノチューブの分散系は、例えば、分散助剤のポリエチレングリコールを用いた安定化[1]、またはカーボン・ナノチューブの化学的官能化[2]によって得られる。
【0009】
国際公開第2008/048295号には、ポリマーコーティングによって溶媒中のグラフェン層を安定化するための方法が記載されている。約0.065重量%のグラフェンベース材料が得られる。コロイドのグラフェン分散系は、ヒドラジン水和物を使用して、分散したグラファイト酸化物を還元することによって生成される。
【0010】
Dan Liら[3]は、水溶液をアンモニアによって静電気的に安定化し、約0.015重量%のグラフェン含量を有するグラフェンベース材料を得ることができることを記載している。またDan Liらは、ヒドラジン水和物を用いて還元することによってグラファイト酸化物分散系からコロイドのグラフェン分散系を調製した。現況技術において開示された、ヒドラジン水和物を用いた還元により、13.5未満のC/O比がもたらされ、最大限でも酸素の約80%が除去されたことを意味する[4、5、6]。
【0011】
グラファイト酸化物の還元についての別の方法は、熱還元である。所望の製造条件、純度条件および還元条件に応じて、グラファイト酸化物粉末の熱還元は、最大約200℃の温度までゆっくりであり、次いで活発になる[7]。この温度での還元により、CO、CO2および水が形成するために、酸素の約65%、炭素の10%、およびほとんどの水素が排除される。より高い温度に加熱すると、連続的なさらなる還元が生じる。酸素を約90%除去するのに約1000℃の温度が必要である。こうして生成したグラファイト材料は、もはや水中に分散することによってコロイド分散系を形成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,476,580号
【特許文献2】国際公開第2007/031055号
【特許文献3】国際公開第2008/048295号(末尾の文献リスト[4])
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】A.K.Geimら;Nature Materials;2007;6;183〜191頁(末尾の文献リスト[10])
【非特許文献2】K.S.Kimら、Nature Letters;2009、457、706〜710頁(末尾の文献リスト[9])
【非特許文献3】Valerie C.Mooreら;Nano Letters;2003;3;1379〜1382頁(末尾の文献リスト[1])
【非特許文献4】Weijie Huangら;Nano Letters;2003;3;565〜568頁(末尾の文献リスト[2])
【非特許文献5】Dan Liら;Nature Nanotechnology;2008;3;101〜105頁(末尾の文献リスト[3])
【非特許文献6】Ulrich Homannら;Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie;1937;234;311〜336頁(末尾の文献リスト[5])
【非特許文献7】H.P.Boehmら;Zeitschrift fuer Naturforschung;1962;17b;150〜53頁(末尾の文献リスト[6])
【非特許文献8】H.P.Boehmら;Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie;1965;335;74〜79頁(末尾の文献リスト[7])
【非特許文献9】H.P.Boehmら;Annalen der Chemie;1965;691;1〜8頁(末尾の文献リスト[8])
【非特許文献10】C.Nethravathi、Michael Rajamathi;Carbon;2008;46;1994頁(末尾の文献リスト[11])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の一般的な目的は、溶液中で安定なグラフェンのコロイド分散系、特に、いずれの分散剤も必要としないコロイドのグラフェン分散系を生成するための方法を提供することである。
【0015】
本発明の目的はまた、単層および多層グラフェンの安定な分散系を提供することである。
【0016】
本発明の目的はまた、そのようなグラフェン分散系の使用を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、例えば、充電式リチウムイオン電池における電極の製造に有利に使用することができる、インターカレーティング特徴が改善されたマルチグラフェン(multi−graphene)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ここで、本説明が進むにつれてより容易に明らかになる、本発明のこれらの目的およびなおさらなる目的を実行するために、コロイドのグラフェン分散系を生成するための方法は、この方法が以下のステップ、すなわち
(i)分散媒中にグラファイト酸化物を分散させることによって、コロイドのグラフェン酸化物またはグラファイト酸化物分散系を形成するステップと
(ii)分散系中のグラフェン酸化物またはグラファイト酸化物を熱還元するステップと
を含む特徴によって明らかにされる。
【0019】
本発明の範囲では、分散に関係する用語は、以下の意味で使用される。
【0020】
「分散系」は、分散媒中の分散相からなる二相系であり、分散相は、分散媒中で微粉化している。
【0021】
「分散相」は固体、場合によりコロイド相を示す。
【0022】
「分散媒」は、連続相および液相に対する同義語として使用される。分散媒は、溶媒として知られる物質または物質の混合物であるので、溶媒または溶媒相という用語も使用される。分散媒は、添加剤、および分散剤などの補助剤も含むことができる。
【0023】
「分散剤」は、界面活性剤などの、分散系の安定化を補助する、例えば、分散相の凝固および/または凝集を防止する物質である。この本文では、分散剤(dispersant)は、分散剤(dipersing agent)、分散助剤とも呼ばれる。
【0024】
本発明の範囲では、炭素質材料を記述する用語は、以下のように使用される。
【0025】
さらに特定されていなければ、単独またはグラフェン酸化物における用語「グラフェン」は、それぞれグラファイトまたはグラファイト酸化物の単層を示す。
【0026】
グラファイトの通常の面間距離を有する2つ以上のグラフェン層のアセンブリは、グラファイトと呼ばれる。
【0027】
グラファイトより大きい面間距離を有する2つ以上のグラフェン層のアセンブリは、「マルチグラフェン」と呼ばれる。
【0028】
グラファイト酸化物、特にこれから最終的に得られる生成物に関しては、同じ区別がされる。
【0029】
用語グラフェン/マルチグラフェン/グラファイトは、4以上の炭素:酸素(C/O)比を有する炭素質材料について使用され、用語グラフェン酸化物/マルチグラフェン酸化物/グラファイト酸化物は、4未満のC/O比を有する材料について使用される。
【0030】
分散系中でグラフェン酸化物を還元することは、還元ステップの間に、グラフェン酸化物/グラフェンまたはグラファイト酸化物/グラファイトが、溶媒中で分散したままであることを意味する。低沸点溶媒については、これは、例えば、オートクレーブ、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))インサートを有するオートクレーブ、またはガラスオートクレーブ内で、圧力下で分散系を加熱することによって実現することができる。
【0031】
所望の炭素:酸素(C/O)比に応じて、熱還元ステップは、約120〜130℃の低温、または少なくとも約130℃の高温で実施される。120℃付近の温度により、所望のC/O比の微調整が可能になるが、この温度は、高いC/O比への還元のために、または非常に長い反応時間のみでは使用することができない。反応温度が高いほど、還元は速く進行する。これにより、高いC/O比の速い生成が可能になる。
【0032】
例えば、本発明の方法によって、140℃で既に、酸素の約80%が除去され、したがってこの温度で既に、13.5を超えるC/O比、すなわち、ヒドラジン水和物を用いた還元について報告されているよりも良好なC/O比が得られる。250℃で既に(文献中に報告されている1000℃と比較して)、酸素の90%超が除去される一方で、単層グラフェンのコロイド分散系は、依然として長時間安定である。
【0033】
本発明の脈絡における長時間安定は、グラフェンが、少なくとも1日間、好ましくは少なくとも1週間、より好適には少なくとも1カ月または3カ月、最も好適には、少なくとも1年間(0.1重量%の分散系について室温で測定)、コロイド的に分散したままであることを意味する。
【0034】
本発明のコロイドのグラフェン分散系は、最大限でも0.5重量%、通常約0.1重量%のグラフェン含量で、または用途に応じてより希釈された状態で生成されることが好ましい。そのような安定な分散系は、最大25超のC/O比まで得ることができる。
【0035】
例えば26のC/O比は、酸素の約90%が除去されていることを意味し、これは、いくつかの用途に対して非常に良好なグラファイト/グラフェン純度であることが立証された。しかし、多くの用途については、より低いC/O比でも、既に使用可能であり、または好適でさえある。そのようなより低いC/O比は、例えば、少なくとも4であるが、好ましくは最大限でも13のC/O比、例えば約7などのC/O比である。他の用途については、高いC/O比が好適である場合、そのようなC/O比は、少なくとも13.5、好ましくは少なくとも20、より好適には少なくとも25である。
【0036】
本発明の一実施形態では、分散系は水分散系である。そのような水分散系を、分散剤を必要とすることなく、4.5〜14の広いpH範囲で生成することができるが、分散剤、または他の補助剤および/または添加剤を添加することによって、分散系、またはグラフェン堆積によって形成したその層の特徴をさらに改善することができる。
【0037】
意外にも、本発明者らは、本発明の方法のパラメータを、コロイドのグラフェン分散系の品質に影響を与えることなく、広い範囲で変更することができることを見出した。
【0038】
出発材料として適切なコロイドのグラフェン酸化物分散系は、コロイド分散系が見た目に透明であると思われるまで、所望の溶媒、例えば水中でグラファイト酸化物粉末を撹拌することによって調製することができる。1〜5時間後に透明な分散系がまったく得られない場合、分散系を遠心することによって、非溶解不純物を除去することができる。必要とされる時間は、最小量のアンモニアを添加することによって短縮することができる。そのような量は通常、アンモニアの非存在下で得られるpHを変化させるレベル未満である。
【0039】
超音波処理を使用して溶解を促進することも可能である。しかし、そのような処理は、グラフェン酸化物層、およびそれとともにグラフェン層のサイズを縮小する。
【0040】
次いで分散系は加熱される。少なくとも約150℃の温度が、特に水分散系にとって、効率的に還元するのに必要であると現在想定されている。300℃超の温度は、C/O比をさらに改善することができるが、これは、これまでに想定された用途については不要である。
【0041】
加熱速度は重要でない。所望の温度で、5時間未満の反応時間で十分であると見出された。通常、所望の温度で、約1時間で既に、水分散系に関して十分である。他の溶媒の場合では、温度および時間などのパラメータを適合させることが、有利となり得る。
【0042】
水などの低沸点溶媒を用いた高温反応を、オートクレーブ内で実施することが適切である。溶媒によって生じる圧力より高い圧力も、特定の、例えば、不活性な雰囲気も必要ではない。
【0043】
使用することができる水以外の溶媒は、極性プロトン性であるが、アセトニトリルまたはホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒も使用することができる。
【0044】
非極性溶媒も、コロイドのグラフェン分散系に適した連続相である。しかし、グラファイト酸化物粉末は、極性溶媒中で容易に分散性となるが、非極性溶媒中ではこれはほとんど可溶性にならないか、可溶性でない。したがって、非極性溶媒中のコロイドのグラフェン分散系を生成するために、グラファイト酸化物は極性溶媒中に分散され、次いで非極性溶媒と混合され、ここで前記極性溶媒と前記非極性溶媒の混合物は、室温ではないが高温で混和性とならなければならない。次いでそのような混合物は、グラフェンへの還元が起こるまで、オートクレーブ内で高温に曝される。次いで、例えば、上相をデカントするか、分離漏斗から下相を放出することによって、極性溶媒が除去される。この方法に適した溶媒系は、TMS系(温度依存性多成分溶媒系(Temperature Depending Multicomponent Solvent System))として当業者に知られている。
【0045】
カーボン・ナノチューブのうちの1つと同様であるか、これより良好でさえある、グラフェンの高い熱伝導率、普通でない電気的特徴、および高い機械的安定性は、グラフェンをコンポジット材の大いに有望な成分にする。
【0046】
本発明のコロイドのグラフェン分散系は、充電式リチウム電池における電極材料として使用することができるナノ粒子などの基板をコーティングするために使用することができる。
【0047】
化学的および/または技術的な理由のために、本発明のコロイドのグラフェン分散系から出発して、グラフェン/グラファイトを含むコンポジットを作製することが不可能である場合、グラファイト酸化物またはグラフェン酸化物を含むコンポジット材を作製してもよく、次いでこの材料を、本発明の熱還元法を用いて還元することができる。
【0048】
グラファイト酸化物粉末を、乾燥環境でない下で、例えば、オートクレーブ内で上記に示したように熱に直接かけ、マルチグラフェン、すなわち、2つの結晶格子面間、すなわち、2つのグラフェン層間でより大きい間隔を有し、したがってグラファイトと比較してインターカレーティング特性が改善されたカーボネート系(carbonateous)材料を得ることができることも見出された。いずれの理論によっても束縛されることを望むことなく、グラフェン酸化物層同士間に存在する水は、乾燥条件でない下で熱還元すると、「通常の」グラファイトの形成を妨げると仮定される。
【0049】
分散または単離された形態でのそのようなマルチグラフェンは、コロイドのグラフェン分散系から直接または沈殿を介して生成することができ、これらは、3.35Å超、好ましくは3.40Å超、または3.50Å超、または3.60Å超、例えば、3.55Åまたは3.68Åの面間距離を有する。
【0050】
高いC/O比を有するグラフェン/マルチグラフェンの生成に使用されるより穏やかな反応条件下で、例えば、オートクレーブ内で5時間140℃で、はるかに大きい面間距離、例えば、約4.6Åを有するグラファイトベース材料を得ることができる。そのような材料は、「低い」C/O比を有するが、それにもかかわらず、電極材料として使用されるのに十分な伝導率を有することが判明した。C/O比に応じて、この材料は、Li+イオンを装填し、カソード材料(グラファイト酸化物のような炭素質材料)として使用することができ、またはこれは、面間空間内にLi+イオンを吸収する能力を有するアノード材料として使用することができる。例えば、化学式C842を有するグラファイト酸化物を、LiOHで処理することによって(最適な交換の場合)、C84Li2を得ることができる。
【0051】
電極は、アルミホイルなどの導体を、本発明の炭素質材料でコーティングすることによって作製することができる。
【0052】
本発明のさらなる利点は、グラファイト酸化物またはグラフェン酸化物のコンポジット材またはコーティングの還元を、現況技術の方法で処理されたもので、化学反応または高温によって破壊される材料の存在下で実施することができるということである。
【0053】
以下の本発明の詳細な説明を考慮すると、本発明はより良好に理解されることになり、上記に示したもの以外の目的は明らかになる。そのような説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】グラフェン分散系の極低温透過型電子顕微鏡画像を示す図である。
【図2】コロイドのグラフェン分散系から沈殿したマルチグラフェンの粉末ディフラクトグラムであり、乱層構造グラファイトの反射と同様の反射であるが、3.55Åの面間距離を有することを示す。
【図3】マルチグラフェンの粉末ディフラクトグラムであり、反射は乱層構造グラファイトの反射と同様であるが、3.68Åの面間距離を有することを示す。
【図4】ブラッグ−ブレンタノジオメトリー(Brag−Brentano geometry)でのX線回折ダイアグラムであり、グラフェン酸化物を用いたコーティングの間に、グラフェン酸化物プレートレットが乾燥の間に水平に堆積され、グラファイト酸化物層状を形成したことを示す。
【図5】共沈によって、コロイド的に分散した金および本発明のコロイドのグラフェン分散系から得られた、金−(マルチ−)グラフェン・コンポジットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
コロイドのグラフェン分散系は、コロイドのグラフェン酸化物分散系を熱還元することによって容易に生成することができる。
【0056】
グラフェン酸化物粉末出発材料についての生成方法は、重要ではない。適切な改良Brodie法は、Boehmら[8]によって記載されている。粉末グラファイト酸化物から出発して、最初に、所望の溶媒または溶媒系中の分散系が生成される。
【0057】
そのようなコロイドのグラフェン酸化物分散系は、グラファイト酸化物湿潤(分散)溶媒または溶媒混合物または溶媒系中でグラファイト酸化物粉末を撹拌することによって容易に得ることができる。コロイドのグラフェン酸化物分散系を生成するのに必要とされる時間は、選択される溶媒に応じて変化し得るが、必要とされる時間は、視覚的に、すなわち、透明な「溶液」(コロイド分散系)が得られると速やかに容易に求めることができ、撹拌を終了することができ、熱還元を開始することができる。溶液が約5時間後も濁ったままであるか、混濁した中で還元をしばらくの間まったく観察することができない場合、不純物が存在する場合があり、これは、例えば、遠心分離または濾過ステップによって熱還元を開始する前に除去されるべきである。
【0058】
超音波処理は、「溶解」を速めることが見出されたが、これはまた、グラフェン酸化物のサイズ、したがってグラフェン層のサイズを縮小させた。超音波処理の代替は、非常に少量の量のアンモニアを添加することである。
【0059】
溶媒が、所望の反応温度未満またはこれに近い沸点を有する場合、熱還元をオートクレーブ内で実施することによって、溶媒が還元ステップの間に蒸発しないことを保証することが好ましい。
【0060】
高いC/O比にもかかわらず、本発明のコロイドのグラフェン分散系は、良好な安定性を示す。そのような高いC/O比は、水分散系については約150℃の温度で得られ、約250℃で既に優れている。300℃超での処理は、さらに改善された分散系に導く場合があるが、しかし、ほとんどの用途についてこれは不要である。さらに、還元ステップの間に、グラフェン層を基板上に堆積させることが望まれる場合、温度感受性の基板については低温が、はるかに有利である。
【0061】
化学的および/または技術的な理由のために、本発明のコロイドのグラフェン分散系から出発して、グラフェン/マルチグラフェンを含むコンポジットを作製することが不可能である場合、マルチグラフェン酸化物またはグラフェン酸化物を含むコンポジット材を作製してもよく、次いでこの材料を、本発明の熱還元法を用いて還元することができる。
【0062】
これから本発明をいくつかの実施例によってさらに説明する。これらの実施例において、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))インサートを有するオートクレーブを使用した。
【実施例1】
【0063】
グラファイト酸化物の調製
グラファイト酸化物を、Boehmら[8]によって改良された、Brodieによる周知の方法に従って調製した。
【0064】
10gのグラファイトを、85gの過塩素酸ナトリウム粉末と徹底的に混合した。この混合物を、氷と塩化ナトリウムの混合物を使用して約−20℃に冷却し、次いで効率的なスターラーを用いて徐々に撹拌した。次いで60mlの発煙硝酸を非常にゆっくり添加した。粘性の緑色塊を、室温でさらに30分間撹拌した。この混合物を撹拌することなく一晩放置し、次いで60℃に10時間徐々に加熱した。次いで2リットルの水を反応生成物に加え、この混合物を濾過し、希塩酸で1回洗浄し、少なくとも2回、各回2リットルの水で洗浄した。濾過後、得られた塊を凍結乾燥し、非常に綿毛状の象牙色の粉末として、約14gのグラファイト酸化物を得た。
【0065】
グラファイト酸化物の元素分析に基づくと、化学式C841.7を得る。水として水素を除いた後、式C83.2が2.5のC/O比とともに得られる。X線回折解析を使用して、グラファイトにおける3.35Åの面間距離は、乾燥グラファイト酸化物において6.1Åに拡大されたことを示すことができた。
【実施例2】
【0066】
コロイドのグラフェン酸化物分散系の調製
実施例1で説明したように得た100mgのグラファイト酸化物を、100mlの脱イオン水に添加し、12時間徹底的に撹拌し、次いで超音波浴中に1時間置いた。次いでそのようにして得たグラファイト酸化物のコロイド分散系(これより先、グラフェン酸化物と呼ぶ)を反応させて、コロイドのグラフェン分散系にした(以下を参照されたい)。
【0067】
水中でグラファイト酸化物を分散させることによって得た、コロイドのグラフェン酸化物分散系は、肉眼で、および1000倍の拡大率での光学顕微鏡においてさえ光学的に透明であり、粒子がなく、pHは約5であった。レーザーを使用して、得られたチンダル効果は、グラファイト酸化物がコロイド分散系になったことを示した。
【0068】
そのような分散系を希釈し、次いで適切な試料ホルダーに適用する場合、走査型力顕微鏡法により、このコロイド分散系は、単層の酸化グラフェン、すなわちグラフェン酸化物からなることが明らかになる。
【実施例3】
【0069】
粗マルチグラフェン酸化物分散系の調製
実施例1で説明したように得た1gのグラファイト酸化物を、100mlの脱イオン水に添加し、塩酸を用いて酸性化して約4のpHにした。1時間撹拌した後、得られたマルチグラフェン酸化物の粗い分散系は、さらに反応させてマルチグラフェンの分散系にするのに適していた(以下を参照されたい)。
【実施例4】
【0070】
コロイドのグラフェン分散系およびマルチグラフェンの調製
実施例2のコロイドのグラフェン酸化物分散系をオートクレーブ内に置き、170℃の温度で5時間加熱した。この処理の間に、単層のグラフェン酸化物は、グラフェンに還元され、水中のグラフェンのコロイド分散系を得た。
【0071】
得られたコロイドのグラフェン分散系は濃黒色であり、そのpHは、約5であった。肉眼で、および1000倍の拡大率での光学顕微鏡においてさえ、この分散系は、コロイドのグラフェン酸化物分散系と同様に、眼に見える粒子がなく、コロイド分散系のチンダル効果を示した。
【0072】
走査型力顕微鏡法および透過型電子顕微鏡法などの画像が得られる方法を使用して、これは、コロイド分散系であることを示すことができた。単層は、例えば、極低温透過型電子顕微鏡画像において明らかに認識できる(図1)。
【0073】
グラフェン層の横径は、出発材料の横径の範囲内であり、したがって、グラファイトがグラファイト酸化物に酸化する前のグラファイトにおける単層グラフェンの直径に依存した。分散系から水を蒸発させることによって、グラフェンをマルチグラフェンとして沈殿させることができた。残留する水は、真空で乾燥させることによって除去し、生成物を様々な検査にかけた。
【0074】
粉末ディフラクトグラム(図2)は、3.55Åの面間距離とともに、乱層構造グラファイトの反射と同様の反射を示した。
【0075】
材料の元素分析により化学式C80.650.5を得た。水として水素を除いた後、式はC80.4であり、20のC/O比を得た。したがって、酸素の88%がグラフェン酸化物から除去されている。X線回折および元素分析は、この材料をマルチグラフェン、したがって純水中の単層グラフェンとしてのコロイドとして明らかに特徴づけ、これは、現在のところ1年を超えて、添加剤なしで長時間安定である。
【実施例5】
【0076】
マルチグラフェンの調製
実施例3のマルチグラフェン酸化物の分散系をオートクレーブ内に置き、200℃の温度で5時間加熱した。この手順によって、マルチグラフェン酸化物を還元してマルチグラフェンにした。次いで懸濁液を濾過し、得られたマルチグラフェンを乾燥させた。
【0077】
分散媒中の約4のpHのために、グラファイト酸化物は、その単層に分かれなかったが、単に最大約11Åの面間距離になった(マルチグラフェン酸化物)。
【0078】
グラファイト酸化物粉末が、最大約200℃の、現況技術の熱処理方法に従って還元される場合、水が除去され、面間距離が約4.4Åに減少する一方で、酸素の約65%がグラファイト酸化物から除去される。最大1000℃に温度を上昇させると、面間距離がさらに減少して3.38Åになる一方で、酸素の約90%が除去される。
【0079】
マルチグラフェン酸化物の分散系の熱還元を、約200℃の温度で本発明に従ってオートクレーブ内で実施した場合、本発明の種類の還元により、約90%の酸素含量が減少するが(1000℃での現況技術の処理と同様)、面間距離は、以前判明した3.38Åの代わりに3.68Åでとどまった。200℃以上での本発明の処理について、本発明者らは、高圧などのそれによって生じた条件下で、マルチグラフェン酸化物/マルチグラフェンの層同士間の水は、離れることができないか、困難を伴ってのみ離れ、より大きい面間距離をもたらすと仮定した。
【0080】
NethravathiおよびRajamathiから最近公開された論文において、凝集したグラファイト層の黒色の沈殿物が報告された[11]。この知見と対照的に、本発明の方法は安定な水分散系をもたらし、グラフェン層は完全に分離していないが、グラファイトより互いに離れていた。
【0081】
本発明者らによって実現された異なる結果は、本発明者らが、すべてのグラファイト酸化物またはグラフェン酸化物がそれぞれ、コロイド的に分散している、すなわち、グラフェン沈殿の核として作用する場合のある、より大きい粒子がまったく残っていないことを保証したという事実によるものと仮定される。NethravathiおよびRajamathiは、コロイド分散系から開始したと述べているが、彼らが、グラファイト酸化物をコロイド的に分散させるのに不適当ないくつかの溶媒を使用したという事実から推定することができる結論は、水分散系も、すべての沈殿および凝集に好都合な粒子の完全な除去を保証するのに十分に長く処理されなかったということである。
【0082】
材料の元素分析から、化学式C80.50.3を推定し、残っている水について補正して、式C80.35を推定した。C/O比は22超であった。図3中の粉末ディフラクトグラムは、乱層構造グラファイトの反射と同様の反射であるが、3.68Åの面間距離を有することを示す。X線回折および元素分析は、このマルチグラフェン材料を、乱層構造グラファイトと密接に関係しているものとして明白に特徴づける。
【0083】
穏やかな反応条件下で、例えば、オートクレーブ内で5時間140℃で、約4.6Åの大きい面間距離を有するグラファイトベース(マルチグラフェン)材料を得た。この材料のC/O比は低いが、それにもかかわらず、電極材料として使用されるのに十分な伝導率を有していることが判明した。
【実施例6】
【0084】
グラフェン酸化物コーティングの熱還元を介したグラフェンコーティングの調製
化学的および/または技術的な理由のために、本発明のコロイドのグラフェン分散系から出発して、グラフェン/グラファイトを含むコンポジットを作製することが不可能である場合、マルチグラフェン酸化物またはグラフェン酸化物を含むコンポジット材を作製してもよく、次いでこの材料を、本発明の熱還元法を用いて還元することができる。
【0085】
例えば、コロイドのグラフェン酸化物分散系を、上記実施例2において説明したように生成した。次いでこのコロイド分散系を、薄層として石英プレートに施した。次いで石英プレートを、pH約4の酸性水(塩酸で酸性化した)中に浸漬し、次いでこの分散系を、200℃で5時間オートクレーブ内で処理することによってグラフェン酸化物層を還元し、したがって、石英プレートを、グラフェンまたはマルチグラフェンでコーティングした。
【0086】
グラフェン酸化物を用いたコーティングの間に、グラフェン酸化物プレートレットが乾燥の間に水平に堆積され、マルチグラフェン酸化物層状を形成した。これは、ブラッグ−ブレンタノジオメトリーでのX線回折で示すことができた(図4を参照されたい)。単層グラフェン酸化物での反射から生じる001反射のみが見られた。面間距離は6.4Åであった。粉末試料の場合である100および110反射は見られない。還元後、そのようにして得たマルチグラフェン中に層状構造も見出された。ディフラクトグラムにおいて、やはりグラファイトの002反射のみが見られた。面間距離は3.65Åであった。
【0087】
材料の元素分析により、化学式C80.50.3を得、水として水素を除いた後、C80.3およびこれとともに22超のC/O比を得た。
【0088】
X線回折および元素分析は、この材料をマルチグラフェンとして明らかに特徴づけた。
【実施例7】
【0089】
金−グラフェン/マルチグラフェン・コンポジットの調製
共沈によって、コロイド的に分散した金、および実施例4のコロイドのグラフェン分散系からコンポジット材を得た。非常に少量の、塩化ナトリウムなどの電解液を添加することによって共沈を誘発した。図5はそのような金−(マルチ)グラフェン・コンポジットを示す。
【0090】
本発明のコロイドのグラフェン分散系についての可能な用途
グラフェンの単層および二重層は、ほとんど温度非依存性である良好な導電率を伴った半金属性の特徴を示す。単層グラフェンは、基本的な電子工学の研究および新規のナノ電子工学の用途にとって興味深い。例えば、室温での量子ホール効果、ならびにさらなる磁気電気的および光学的な特徴を観察することができる[10]。これらの特徴のために、主に実用的に興味を持った人、ならびに主に理論的に興味を持った人によって、グラフェンについて多くの研究が開始された。これまでに、単層グラフェンを調製するための方法、およびこれらを適切な担体上に堆積させる方法は、わずかしか存在していない。したがって、実施することができる研究は限られている。既知の方法は、非常に時間がかかり、適切な試料の結果はほとんどない。
【0091】
これに反して、本発明の方法は、大量の、純水または他の溶媒中に分散したグラフェン層の製造を可能にする(上記を参照されたい)。添加剤または還元剤をまったく必要としない。C/O比は、25超の値に到達し得る。そのような純粋なコロイド分散系から、単層グラフェンを、例えば、誘電泳動によって2つの電極間に、意図的に堆積させ、例えば、スコッチテープ法によって、仮にあったとしてもほとんど可能でない特定の研究を行うことができる。
【0092】
適切な方法によって、層およびコーティングを、コロイドのグラフェン分散系から生成することができる。方法に応じて、これらは数ナノメートルの薄さ、すなわち、単層とすることができ、これらは透明になることでき、これらは、例えば、有機発光ダイオード中のインジウムスズ酸化物の代替品、グラフェントランジスタとして、または薄膜太陽電池として使用することができる。しかし、巨視的な層などのより厚い層も生成することができる。そのような巨視的な層は、例えば、マルチグラフェンホイルおよび膜であり、これらは例えば、電気工学および海水脱塩において用途がある。配向およびそれとともに異方性の材料が生じるように層またはコーティングを調製することが可能である。これはまた、高配向熱分解グラファイト(HOPG)の製造に対する非常に良好で単純な代替法である。
【0093】
カーボン・ナノチューブを超える、グラフェンの高い熱伝導率、普通でない電子的特徴、ならびに高い機械的および化学的安定性は、グラフェンをコンポジット材の大いに有望な材料にする。
【0094】
様々な溶媒中のコロイドのグラフェン分散系から、材料が非常に均一に分布したコンポジット材を容易に生成することができる。コロイドのグラフェン分散系からのコンポジット材の利点は、コンポジットのさらなる材料も(グラフェンに加えて)、コロイド的に分散した形態、または少なくともナノ分散した形態で適用することができる場合特に高い。例えば、スズ−(マルチ−)グラフェン・コンポジット、またはケイ素−(マルチ−)グラフェン・コンポジットは、特に、スズおよびケイ素も溶媒中で微粉化している場合、それぞれの電池の大いに有望な材料である。図5中に、共沈によって、コロイド的に分散した金、およびコロイドのグラフェン分散系から得られた金−(マルチ−)グラフェン・コンポジットを示す(実施例7を参照されたい)。
【0095】
別の様式の用途は、本発明のコロイドのグラフェン分散系を用いた、任意の形状の鋳型のコーティングである。望まれているのと同数のコーティングを鋳型の表面に施すことができ、次いで、例えば溶媒の蒸発によってグラフェン/マルチグラフェンがコーティングから沈殿した。マルチグラフェン層が所望の厚さを有すると速やかに、任意の所望の形態および壁の厚さを有する成形された炭素製品を残して鋳型を取り出すこともでき、ここでグラフェン層の配列は異方性であってもよい。
【0096】
想定される新規の用途は、導電性ガラスの製造であり、ゾルまたはゲルに分散系を加えることによって実施されるゾル−ゲルプロセス(例えば、水−ガラス)の目的において、コロイドのグラフェン分散系が添加剤として使用される。
【0097】
本発明のマルチグラフェン製品についての可能な用途
適切な反応条件下で、例えば、オートクレーブ内で5時間140℃で、約4.6Åの大きい面間距離を有し、電極材料として使用されるのに十分な伝導率を有する炭素質材料(マルチグラフェン)が得られる。大きい面間距離を有する炭素質材料は、炭素化合物中への/炭素化合物からのイオンの容易なインターカレーション/デインターカレーションなど、充電式電池における電極材料として多くの利点を有する。
【0098】
本発明のマルチグラフェン層についての可能な用途
実施例6に従って生成することができるマルチグラフェン層/コーティングは、膜、異方性導体、およびスーパーコンデンサーとしての用途を有する。
【0099】
本発明の製品の可能なさらなる用途
ほとんどあらゆるC/O比とともに、およびほとんどあらゆる基板上に炭素質材料を生成する可能性のために、そのような材料はまた、コンデンサーを製造するのに非常に適している。そのような用途については、いくつかの(例えば、約40)層が、ポリエチレンまたはポリカーボネートホイルなどのプラスチックホイル上に堆積される。C/O比の容易な可変性はまた、充電式リチウムイオン電池における電極材料として本発明の炭素質材料を使用することにも有利である。
【0100】
充電式リチウムイオン電池用のそのような電極は、マルチグラフェンを用意するステップと、場合により結合剤の存在下で、導体を前記マルチグラフェンでコーティングするステップとを含む方法によって作製することができる。
【0101】
本発明の好適な実施形態が現在示され、説明されている一方で、本発明はこれらに限定されないが、以下の特許請求の範囲内で、別の方法で様々に具体化し、実行することができることが明確に理解されるべきである。
【0102】
文献リスト
[1] Valerie C. Moore et al.; Nano Letters; 2003; 3; 1379-1382
[2] Weijie Huang et al.; Nano Letters; 2003; 3; 565-568
[3] Dan Li et al.; Nature Nanotechnology; 2008; 3; 101-105
[4] Patent application No. WO 2008/048295
[5] Ulrich Homann et al.; Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie; 1937; 234; 311-336
[6] H. P. Boehm et al.; Zeitschrift fuer Naturforschung; 1962; 17b; 150-153
[7] H. P. Boehm et al.; Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie; 1965; 335; 74-79
[8] H. P. Boehm et al.; Annalen der Chemie; 1965; 691; 1-8
[9] K. S. Kim et al., Nature Letters; 2009, 457, 706-710
[10] A. K. Geim et al.; Nature Materials; 2007; 6; 183-191
[11] C. Nethravathi, Michael Rajamathi; Carbon; 2008; 46; 1994

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイドのグラフェン分散系またはマルチグラフェン分散系を生成するための方法であって、
(i)分散媒中にグラファイト酸化物を分散させることによって、コロイドのグラフェン酸化物分散系またはマルチグラフェン酸化物分散系を形成するステップと
(ii)分散系中の前記グラフェン酸化物またはマルチグラフェン酸化物を熱還元するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(ii)が少なくとも120℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(ii)が120℃〜130℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(ii)が少なくとも130℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)が少なくとも150℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分散媒がプロトン性、極性の分散媒、好ましくは水ベースの分散媒である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分散媒が水であり、ステップ(i)における前記分散系がコロイドのグラフェン酸化物分散系であり、ステップ(ii)において生成される前記分散系がコロイドのグラフェン分散系である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分散媒がアンモニアを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記分散媒が非プロトン性、極性の分散媒、好ましくはアセトニトリルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)が、少なくとも4、および好ましくは最大限でも13、例えば約7など、最も好適には少なくとも13.5、好ましくは少なくとも20、より好適には少なくとも25の炭素:酸素(C/O)比を有するコロイドのグラフェン分散系をもたらす温度で、および時間にわたって実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分散媒が酸性化水、好ましくは約4のpHの水であり、ステップ(i)における前記分散系がマルチグラフェン酸化物分散系であり、ステップ(ii)で生成される前記分散系がマルチグラフェン分散系である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を使用して、グラフェンもしくはマルチグラフェン層、またはマルチグラフェン粒子を生成するための方法であって、
(i)分散媒中にグラファイト酸化物を分散させることによって、グラフェン酸化物またはマルチグラフェン酸化物分散系を形成するステップと
(ii)分散系中の前記グラフェン酸化物またはマルチグラフェン酸化物を熱還元するステップとを含み、
ステップ(i)の前記分散系を基板上に堆積もしくは沈殿させ、次いでステップ(ii)を実施するか、または
ステップ(ii)の前記分散系を基板上に堆積もしくは沈殿させる
こと、を特徴とする方法。
【請求項13】
少なくとも4、および好ましくは最大限でも13、例えば約7などのC/O比を有し、または少なくとも13.5、好ましくは少なくとも20、より好適には少なくとも25のC/O比を有する、好ましくは請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる、コロイドのグラフェン分散系。
【請求項14】
0.1重量%〜0.5重量%、好ましくは約0.1重量%のグラフェン含量を有する、特に請求項13に記載のコロイドのグラフェン分散系。
【請求項15】
いずれの分散剤も含まない、請求項13または14に記載のコロイドのグラフェン分散系。
【請求項16】
3.35Å超、好ましくは3.40Å超、または3.50Å超、または3.60Å超の、マルチグラフェンにおける面間距離を有する、マルチグラフェン分散系、または単離されたマルチグラフェン。
【請求項17】
少なくとも13.5のC/O比を有する電子導電性コーティングを含むナノ粒子を提供するための、請求項13から15のいずれか一項に記載されたコロイドのグラフェン分散系、または、請求項12に記載の方法によるコロイドのグラフェン分散系の使用。
【請求項18】
充電式リチウムイオン電池における電極材料としての、請求項11もしくは12に記載の方法によって得られる、または請求項16に記載のマルチグラフェンの使用。
【請求項19】
充電式リチウムイオン電池における電極材料としての、請求項11または12に記載の方法によって得られるような、低C/O比を有するマルチグラフェンの使用。
【請求項20】
電子導電性ナノ粒子を生成するための方法であって、請求項13から15のいずれか一項に記載のグラフェン分散系でナノ粒子をコーティングし、またはグラフェン酸化物分散系でナノ粒子をコーティングするステップと、次いで分散系中の前記コーティングされた粒子を熱還元することによって、少なくとも13.5のC/O比のグラフェン/マルチグラフェンでコーティングされたナノ粒子を得るステップとを含む方法。
【請求項21】
充電式リチウムイオン電池用の電極を作製するための方法であって、請求項11もしくは12に記載の、または請求項16に記載の方法によってマルチグラフェンを用意するステップと、場合により結合剤の存在下で、導体を前記マルチグラフェンでコーティングするステップとを含む方法。
【請求項22】
充電式リチウムイオン電池用の電極を作製するための方法であって、好ましくは請求項11または12に記載の方法によって、最大限でも13の低C/O比を有するマルチグラフェンを用意するステップと、場合により結合剤の存在下で、導体を前記マルチグラフェンでコーティングするステップとを含む方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−275186(P2010−275186A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120481(P2010−120481)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(510010894)ベレノス・クリーン・パワー・ホールディング・アーゲー (18)
【Fターム(参考)】