説明

溶融亜鉛めっきの表面処理方法

【課題】溶融亜鉛めっき製品の一次防錆及び塗装密着性の向上に効果的な表面処理方法及びこれにより得られる溶融亜鉛めっき品の提供を目的とする。
【解決手段】被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬及び上昇後の冷却工程において、冷却水は、亜鉛表面に亜鉛との難水溶性の塩を形成する、有機酸又はアミン類が含まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融亜鉛めっき製品の一次防錆及び塗装密着性の向上に効果的な表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄や鋼製品においては溶融亜鉛めっき処理が広く普及している。
溶融亜鉛めっきは金属光沢が高いものの、白錆が発生しやすく、例えば特開2002−356786号に示すようにクロメート処理を施す場合が多い。
しかし、クロメート処理液には6価クロムが含まれているので環境負荷低減の観点からクロメート処理に代替できる表面処理が必要であった。
また、溶融亜鉛めっき製品に塗装処理する場合にあっては、塗装の密着性を確保すべく、リン酸塩処理等の化成皮膜処理や、表面研削を施しているのが現状であり、生産性向上の観点から塗装前処理の省力化が要求されていた。
【0003】
クロメート処理に替わる防錆処理として特開昭51−71233号公報にはタンニン酸0.01%以上及び陰性ヒドロゾル0.001%以上含む混合水溶液で表面処理する技術を開示するが、シリカゾルやカオリンゾル等の陰性ゾルの共存が不可欠であり、また、防錆効果も不充分であった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−356786号公報
【特許文献2】特開昭51−71233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、溶融亜鉛めっき製品の一次防錆及び塗装密着性の向上に効果的な表面処理方法及びこれにより得られる溶融亜鉛めっき品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、溶融亜鉛めっき処理設備においては、被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬して亜鉛層(合金亜鉛層を含む)を形成後は鉄素地との反応を制御すべく冷却水にて冷却していることに着目し、本発明に至った。
即ち、被処理品を溶融亜鉛めっき浴から上昇し引き上げた直後のめっき表面は活性であり、このエネルギーを利用すれば冷却水に有機酸やアミン類を添加するだけで化成皮膜が形成され、且つ既設の生産設備に大きな改造が不要であることが明らかになった。
【0007】
請求項1記載の溶融亜鉛めっきの表面処理方法は、被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬及び上昇後の冷却工程において、冷却水は、亜鉛表面に亜鉛との難水溶性の塩を形成する、有機酸又はアミン類が含まれていることを特徴とする。
亜鉛めっきの表面に発生する白錆は水酸化亜鉛であることから本発明において冷却水に添加する有機酸又はアミン類は亜鉛の表面に水に難溶性の塩を形成するものであればよいがタンニン酸を用いるのが好ましい。
タンニン酸は接着剤効果も有しているからである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては溶融亜鉛めっきディッピング後の冷却工程における冷却水にタンニン酸等の有機酸あるいはアミン類を添加するだけで一次防錆(簡易防錆)が向上し、また、そのまま他に下地処理を施こすことなく塗装が可能になる。
特に鉛(Pb)の替わりにビスマス(Bi)等を添加した環境対応亜鉛めっきにおいてはBiが表面に濃縮されやすく、白錆が発生しやすいがこの種の鉛レス亜鉛めっき鋼板等においても防錆効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の効果を確認すべく以下のような評価を実施した。
(サンプルの作製)
冷却水にタンニン酸を質量比率で1%、5%溶解させた溶液を作製し、被処理品をめっき浴に浸漬後この溶液でサンプルを冷却した。
比較サンプルとして、クロメート処理有り、無しのものを作製した。
サンプル品仕様を図1にまとめて示す。
溶融亜鉛メッキ浴の条件は、440〜550℃の範囲がよく本サンプルの場合450℃に設定した。
また、浴組成も溶融亜鉛めっきに供されている各種浴成が適用できる。
本サンプルはPbレスCdレスの環境対応めっき浴を用い、質量%でZn:97.5%以上、Al:0.005%、Bi:0.3%及びPb:50ppm以下、Cd:10ppm以下のものを用いた。
(試験方法)
(1)亜鉛めっき後の一次防錆試験
各サンプルに対して、4日間の散水暴露試験を実施した。
散水には雨水を使用した。
(2)亜鉛めっき上の塗装性試験
各サンプルに対して、エポキシ粉体焼付け塗装(焼付け温度:250℃、塗膜厚さ:約80μm)を行い、碁盤目試験により塗装密着性を評価した。
(試験結果)
(1)亜鉛めっき後の一次防錆性
4日間の散水暴露試験後の各サンプルの表面状態を図2に示す。
クロメート処理無しサンプル3においては、表面全面に白錆が発生していたが、タンニン溶液サンプル1、2においては、一般の水冷サンプル3より防錆性能は向上していた。
タンニン酸の濃度を5%にしたサンプル1は、表面にタンニンのお茶色が部分的に濃く現れているものの白錆の発生はサンプル2より少ない。
タンニン酸を冷却水に添加すると白錆の発生を抑える効果があるが5%を超えるとタンニンの色が表面に出現することから5%以下がよい。
好ましくは0.5〜3.0%の範囲である。
本発明においてはめっき浴から引き上げためっき表面は高温になっていて、活性が高いので薄い濃度であっても充分に難溶性の皮膜が形成される。
また、浸漬時間も10秒以上確保できれば充分である。
一般的な生産ラインでは10〜30秒の範囲がよい。
また、冷却水は放流方式でも循環方式でもよいが放流水に所定の割合でタンニン酸を添加する方法の方が冷却水の品質を維持しやすい。
(2)亜鉛めっき上の塗装性
碁盤目試験の結果を図3に示す。
サンプル3、4は、塗装がほとんど密着しておらず、タンニン酸が入った冷却水に通したサンプル1、2は、サンプル3、4に比べ格段に塗装密着性が向上しているのが明らかになった。
タンニン酸は渋柿の渋み成分として存在しているものであり人体及び環境にも優しいので環境負荷を低減した溶融亜鉛めっき処理品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】サンプル作製条件を示す。
【図2】散水暴露後の白錆発生結果を示す。
【図3】碁盤目試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬及び上昇後の冷却工程において、冷却水は、亜鉛表面に亜鉛との難水溶性の塩を形成する、有機酸又はアミン類が含まれていることを特徴とする溶融亜鉛めっきの表面処理方法。
【請求項2】
有機酸は、タンニン酸であることを特徴とする請求項1記載の溶融亜鉛めっきの表面処理方法。
【請求項3】
溶融亜鉛めっき表面に亜鉛との難水溶性の塩を形成する、有機酸又はアミン類を用いて表面処理してあることを特徴とする溶融亜鉛めっき処理品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−95134(P2008−95134A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275876(P2006−275876)
【出願日】平成18年10月7日(2006.10.7)
【特許番号】特許第4072971号(P4072971)
【特許公報発行日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(391033724)シーケー金属株式会社 (32)
【Fターム(参考)】