説明

溶融金属吐出装置及び溶融金属の接合方法

【課題】 加熱効率の向上及び作業効率の向上等を図る。
【解決手段】 溶融金属100を貯蔵する金属貯蔵ブロック2と、溶融金属から形成された金属ボール100aをインターポーザ21上に設けられた電極22へ向けて吐出するノズル14を有する金属吐出ブロック3と、加熱光線200を出射する光線出射部17と該光線出射部から出射される加熱光線を生成する光線源18とを有する光線照射ブロック4と、光線出射部から出射された加熱光線を電極へ導く光線誘導体5とを設け、光線誘導体によって電極へ導かれる加熱光線内をノズルから吐出された金属ボールが進行して電極に着弾するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶融金属吐出装置及び溶融金属の接合方法についての技術分野に関する。詳しくは、電極へ導かれる加熱光線内をノズルから吐出された金属ボールが進行するようにして加熱効率の向上及び作業効率の向上等を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板等のインターポーザ上に設けられた電極へ向けて、例えば、半田ボール等の金属ボールを吐出し、電極に溶融された金属ボールを接合し、例えば、バンプを形成する溶融金属吐出装置がある。
【0003】
このような溶融金属吐出装置として、ヒーター板に載置されたインターポーザ上に設けられた電極へ向けてノズルによって金属ボールを吐出するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された溶融金属吐出装置にあっては、インターポーザに対して下面側からヒーター板によって予熱(プリヒート)を行って電極を加熱し、加熱された電極に金属ボールを着弾させて該金属ボールを電極に接合するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−5567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載された溶融金属吐出装置にあっては、ヒーター板によってインターポーザの全体を電極が設けられた側と反対側(下面側)から加熱しているため、局所的な加熱を行っておらず、電極が必要な温度まで上昇する時間が長く、加熱効率が悪く加熱の開始から電極への金属ボールの接合までの作業時間も長くなると言う問題がある。
【0007】
また、金属ボールがノズルから吐出され電極に着弾されるまでに金属ボールの温度が低下してしまい、電極に着弾したときに金属ボールの溶融状態が不十分となり、電極に対する金属ボールの接合性が低下するおそれもある。
【0008】
そこで、本発明溶融金属吐出装置及び溶融金属の接合方法は、上記した問題点を克服し、加熱効率の向上及び作業効率の向上等を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
溶融金属吐出装置は、上記した課題を解決するために、溶融金属を貯蔵する金属貯蔵ブロックと、前記溶融金属から形成された金属ボールをインターポーザ上に設けられた電極へ向けて吐出するノズルを有する金属吐出ブロックと、加熱光線を出射する光線出射部と該光線出射部から出射される前記加熱光線を生成する光線源とを有する光線照射ブロックと、前記光線出射部から出射された前記加熱光線を前記電極へ導く光線誘導体とを備え、前記光線誘導体によって前記電極へ導かれる前記加熱光線内を前記ノズルから吐出された前記金属ボールが進行して電極に着弾するようにしたものである。
【0010】
従って、溶融金属吐出装置にあっては、光線出射部から出射された加熱光線によって電極が加熱されると共にノズルから吐出された金属ボールが電極に着弾されるまでの間に加熱光線によって加熱される。
【0011】
上記した溶融金属吐出装置においては、前記光線出射部に前記加熱光線が透過され前記加熱光線の径を絞る凸レンズを設け、前記光線出射部を該光線出射部から前記光線誘導体への出射方向及びその反対方向へ移動可能とすることが望ましい。
【0012】
光線出射部に加熱光線の径を絞る凸レンズを設け光線出射部を該光線出射部から光線誘導体への出射方向及びその反対方向へ移動可能とすることにより、加熱光線の照射位置における径を変化させることが可能となる。
【0013】
上記した溶融金属吐出装置においては、前記光線誘導体として前記光線出射部から出射された前記加熱光線を前記電極へ向けて反射する反射面を有する反射ミラーを設け、前記反射ミラーに前記ノズルから吐出される前記金属ボールの経路となる貫通孔を形成することが望ましい。
【0014】
光線誘導体として反射ミラーを設け、反射ミラーに金属ボールの経路となる貫通孔を形成することにより、金属ボールが貫通孔を通って反射ミラーで反射された加熱光線内を進行される。
【0015】
上記した溶融金属吐出装置においては、前記金属吐出部ロックから前記金属ボールが吐出される前に前記加熱光線を前記電極に照射してプリヒートを行うようにすることが望ましい。
【0016】
金属ボールが吐出される前に加熱光線を電極に照射してプリヒートを行うことにより、金属ボールの着弾前に加熱光線によって電極が加熱される。
【0017】
上記した溶融金属吐出装置においては、前記電極の表面を洗浄する紫外線を前記電極に照射し、前記紫外線の光路の少なくとも一部と前記加熱光線の光路の少なくとも一部とを同一の光路とすることが望ましい。
【0018】
紫外線の光路の少なくとも一部と加熱光線の光路の少なくとも一部とを同一の光路とすることにより、加熱光線の光路の一部において紫外線が進行される。
【0019】
上記した溶融金属吐出装置においては、前記加熱光線と前記紫外線を前記電極に同時に照射することが望ましい。
【0020】
加熱光線と紫外線を電極に同時に照射することにより、電極の加熱と電極の表面の洗浄が同時に行われる。
【0021】
溶融金属の接合方法は、上記した課題を解決するために、光線源によって生成された加熱光線を光線出射部から出射し前記加熱光線を光線誘導体によってインターポーザ上に設けられた電極へ導いて該電極を加熱し、溶融金属から形成された金属ボールをノズルから前記電極へ向けて吐出し前記光線誘導体によって前記電極へ導かれる前記加熱光線内を金属ボールが進行するようにし、前記電極に前記金属ボールを着弾させて前記金属ボールを前記電極に接合するようにしたものである。
【0022】
従って、溶融金属の接合方法にあっては、光線出射部から出射された加熱光線によって電極が加熱されると共にノズルから吐出された金属ボールが電極に着弾されるまでの間に加熱光線によって加熱される。
【発明の効果】
【0023】
本発明溶融金属吐出装置は、溶融金属を貯蔵する金属貯蔵ブロックと、前記溶融金属から形成された金属ボールをインターポーザ上に設けられた電極へ向けて吐出するノズルを有する金属吐出ブロックと、加熱光線を出射する光線出射部と該光線出射部から出射される前記加熱光線を生成する光線源とを有する光線照射ブロックと、前記光線出射部から出射された前記加熱光線を前記電極へ導く光線誘導体とを備え、前記光線誘導体によって前記電極へ導かれる前記加熱光線内を前記ノズルから吐出された前記金属ボールが進行して電極に着弾するようにしている。
【0024】
従って、溶融金属の接合の対象となる電極に対して局所的に加熱光線による加熱を行うため、電極が必要な温度まで上昇する時間を短縮化することができ、加熱効率が向上し作業時間の向上を図ることができる。
【0025】
また、吐出から電極への着弾までの間の金属ボールの温度低下が抑制され、電極に着弾されたときに金属ボールが電極に瞬時に接合され、加熱効率の向上及び作業効率の向上を図ることができる。
【0026】
請求項2に記載した発明にあっては、前記光線出射部に前記加熱光線が透過され前記加熱光線の径を絞る凸レンズを設け、前記光線出射部を該光線出射部から前記光線誘導体への出射方向及びその反対方向へ移動可能としている。
【0027】
従って、光線出射部が移動されることにより加熱光線の径を変化させることが可能であり、金属ボールの径に応じて加熱光線の径を任意の大きさに変化させることができると共に必要かつ十分な径で加熱光線を電極に照射することができる。
【0028】
請求項3に記載した発明にあっては、前記光線誘導体として前記光線出射部から出射された前記加熱光線を前記電極へ向けて反射する反射面を有する反射ミラーを設け、前記反射ミラーに前記ノズルから吐出される前記金属ボールの経路となる貫通孔を形成している。
【0029】
従って、加熱光線を簡素な手段により確実に電極に照射することができると共に金属ボールの加熱光線内における進行を容易に実現することができる。
【0030】
請求項4に記載した発明にあっては、前記金属吐出部ロックから前記金属ボールが吐出される前に前記加熱光線を前記電極に照射してプリヒートを行うようにしている。
【0031】
従って、金属ボールの着弾時に加熱光線によって電極を十分な温度に上昇させることが可能であり、電極に対する溶融金属の接合作業の迅速化を図ることができる。
【0032】
請求項5に記載した発明にあっては、前記電極の表面を洗浄する紫外線を前記電極に照射し、前記紫外線の光路の少なくとも一部と前記加熱光線の光路の少なくとも一部とを同一の光路としている。
【0033】
従って、機構の簡素化を図った上で電極の表面を洗浄して溶融金属の電極に対する接合性の向上を図ることができる。
【0034】
請求項6に記載した発明にあっては、前記加熱光線と前記紫外線を前記電極に同時に照射している。
【0035】
従って、作業効率の向上を図った上で溶融金属の電極に対する接合性の向上を図ることができる。
【0036】
本発明溶融金属の接合方法は、光線源によって生成された加熱光線を光線出射部から出射し前記加熱光線を光線誘導体によってインターポーザ上に設けられた電極へ導いて該電極を加熱し、溶融金属から形成された金属ボールをノズルから前記電極へ向けて吐出し前記光線誘導体によって前記電極へ導かれる前記加熱光線内を金属ボールが進行するようにし、前記電極に前記金属ボールを着弾させて前記金属ボールを前記電極に接合するようにしている。
【0037】
従って、加熱効率の向上、作業効率の向上、機構の簡素化及びエネルギー効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0039】
溶融金属吐出装置1は、金属貯蔵ブロック2と金属吐出ブロック3と光線照射ブロック4と光線誘導体5を備えている(図1参照)。
【0040】
[金属貯蔵ブロックの構成]
金属貯蔵ブロック2は、例えば、第1の貯蔵槽6と第2の貯蔵槽7と第3の貯蔵槽8の三つの槽によって構成されている。第1の貯蔵槽6と第2の貯蔵槽7と第3の貯蔵槽8には、例えば、220°C以上の温度で溶融された溶融金属100が貯蔵され、該溶融金属100は図示しないヒーターによって加温されて溶融状態が保持されている。溶融金属100としては、例えば、半田が用いられている。
【0041】
第1の貯蔵槽6と第2の貯蔵槽7は開口9によって連通され、第2の貯蔵槽7と第3の貯蔵槽8は開口10によって連通されている。開口10には溶融金属100に混合される異物を除去するための図示しないフィルターが配置されている。
【0042】
第1の貯蔵槽6にはインゴット101が投入され該インゴット101が加熱されて溶融金属100が生成される。インゴット101は第1の貯蔵槽6において溶融され、次に、開口9から第2の貯蔵槽7に流入され、次いで、開口10から第3の貯蔵槽8に流入されて金属吐出ブロック3から吐出するために適した温度に調節される。
【0043】
尚、金属貯蔵ブロック2に対する溶融金属100の貯蔵量は、図示しないセンサーが液面を監視することにより把握されており、センサーによる検出結果に基づいて溶融金属100の金属貯蔵ブロック2に対する貯蔵量が一定範囲に確保されるようにインゴット101が第1の貯蔵槽6に投入される。
【0044】
第1の貯蔵槽6と第2の貯蔵槽7と第3の貯蔵槽8には不活性ガスが波状の経路50を通されて注入されている。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が用いられ、不活性ガスによって溶融金属100の酸化が防止される。不活性ガスは波状の経路50を通されることにより、溶融金属100によって加熱され、溶融金属100と略同一の温度にされた状態で金属吐出ブロック3に供給される。
【0045】
[金属吐出ブロックの構成]
金属吐出ブロック3は貯留部11、チャンバー12、ベース部13、ノズル14、スリット板15及びアクチュエーター16を有している。
【0046】
貯留部11は金属貯蔵ブロック2の第3の貯蔵槽8に連通されている。貯留部11は第3の貯蔵槽8から供給された溶融金属100を一時的に保存する部分である。
【0047】
チャンバー12は貯留部11に連通され、チャンバー12には貯留部11から溶融金属100が供給される。チャンバー12の下端部には供給口12aが形成されている。チャンバー12は、溶融金属100を一定温度に保つように制御されている。
【0048】
尚、溶融金属100の補充のためにチャンバー12にインゴット101を投入した場合には、チャンバー12に保存されている溶融金属100の温度がインゴット101の投入によって低下してしまう。そこで、溶融金属吐出装置1にあっては、上記したように、チャンバー12とは別の金属貯蔵ブロック2を設け、該金属貯蔵ブロック2の第1の貯蔵槽6にインゴット101を投入することによりチャンバー12に保存されている溶融金属100の温度低下を防止するようにしている。
【0049】
ベース部13は金属吐出ブロック3の下端部に設けられ、上下に貫通されたノズル配置孔13aを有している。
【0050】
ベース部13には不活性ガスが経路50に連続する経路60を通されて注入され、ノズル配置孔13aに不活性ガスが供給される。このとき不活性ガスは波状の経路50を通されることにより溶融金属100と略同一の温度にされた状態で経路60を通されてノズル配置孔13aに供給される。
【0051】
ノズル14はベース部13のノズル配置孔13aに配置されている。ノズル14からはチャンバー12から押し出された溶融金属100の一部が金属ボール100aとして下方へ向けて吐出される。このとき不活性ガスがノズル配置孔13aに溶融金属100と略同一の温度にされた状態で供給されるため、ノズル14からの吐出直後の金属ボール100aの冷却凝固が抑制されると共に酸化が防止される。
【0052】
ノズル14から吐出される金属ボール100aの温度は、例えば、220°C乃至400°Cとされ、金属ボール100aの径は、例えば、0.01mm乃至1mmとされている。
【0053】
スリット板15はベース部13とチャンバー12の間に配置され、ノズル14に対応した位置に供給孔15aを有している。供給孔15aは、例えば、20μm乃至500μm程度の小さな孔であり、表面張力によって溶融金属100がノズル14側へ流れ出ない程度の大きさに形成されている。
【0054】
アクチュエーター16は、例えば、圧電素子を駆動源とした駆動部16aと該駆動部16aによって振動される振動板16bとを有している。振動板16bはチャンバー12に接した状態で配置されている。
【0055】
駆動部16aの駆動力によって振動板16bが振動されると、チャンバー12の内圧が高められ、供給口12aからスリット板15の供給孔15aを介してノズル14に一定量の溶融金属100が供給され、供給された溶融金属100がノズル14から金属ボール100aとして下方へ向けて吐出される。
【0056】
アクチュエーター16の駆動部16aに圧電素子を用いることにより、金属ボール100aを高速で間欠的にノズル14から吐出することが可能となる。駆動部16aに圧電素子を用いる場合には、圧電素子を溶融金属100の熱から保護するために、例えば、断熱材を用いたり空冷による冷却を行うことが望ましい。
【0057】
尚、アクチュエーター16の駆動源は圧電素子に限られることはなく、例えば、磁歪素子を用いてもよく、また、モーター等を用いた機械的な構造の駆動源としてもよい。
【0058】
[光線照射ブロックの構成]
光線照射ブロック4は光線出射部17と光線源18と光線送り部19によって構成されている。
【0059】
光線出射部17は保持部17aと該保持部17aに保持された凸レンズ17bとを有し、金属吐出ブロック3におけるベース部13の下面に水平方向へスライド自在に支持されている。光線出射部17からは加熱光線200、例えば、レーザー光や赤外光が水平方向へ出射される。
【0060】
光線出射部17のベース部13に対する移動方向は光線出射部17からの加熱光線200の出射方向及びその反対方向に一致されている。加熱光線200は光線出射部17の凸レンズ17bの作用によって該凸レンズ17bから遠去かるに従って径が絞られて小さくなるようにされている。
【0061】
光線源18は光線出射部17から出射される加熱光線200を生成する。
【0062】
光線源18において生成された加熱光線200は、光線送り部19を経由して光線出射部17から出射される。光線送り部19としては、例えば、光ファイバーが用いられており、光線源18において生成された加熱光線200は、光線送り部19によって平行光として光線出射部17に送られる。
【0063】
[光線誘導体の構成]
光線誘導体5は光線出射部17から出射された加熱光線200を後述するインターポーザの電極へ誘導する機能を有する。光線誘導体5としては、例えば、プリズム形状の反射ミラーが用いられ、光線誘導体5は金属吐出ブロック3におけるベース部13の下面にノズル配置孔13aを下方から閉塞した状態で取り付けられている。
【0064】
光線誘導体5は水平方向に対して45°傾斜された反射面5aを有している。光線誘導体5には反射面5aとノズル配置孔13aを連通する上下に貫通された貫通孔5bが形成されている。
【0065】
光線出射部17から出射された加熱光線200は光線誘導体5の反射面5aで90°屈曲される方向へ反射されインターポーザの電極へ向かう。
【0066】
光線誘導体5の貫通孔5bはノズル14から吐出された金属ボール100aの経路として用いられる。従って、ノズル14から吐出された金属ボール100aは貫通孔5bを通り、光線誘導体5によって電極へ導かれる加熱光線200内を進行されて電極に着弾される。
【0067】
[保持台の構成]
金属吐出ブロック3の下方には保持台20が配置されている。保持台20は基部20aと該基部20a上に設けられた支え部20b、20bと該支え部20b、20bによって支えられたテーブル部20cとを有している。
【0068】
テーブル部20cは平板状に形成され、図示しない吸引機構を有している。
【0069】
テーブル部20cには基板等のインターポーザ21が吸引機構によって吸引されることにより保持され、インターポーザ21の上面には電極22、22、・・・が設けられている。
【0070】
保持台20は図示しない移動機構によって水平方向(前後方向及び左右方向)へ移動可能とされている。従って、保持台20に保持されたインターポーザ21は保持台20の水平方向における移動に伴って移動され、所定の電極22が加熱光線200の照射位置に移動される。
【0071】
[制御部の構成]
上記した光線照射ブロック4、光線吐出ブロック3のアクチュエーター16及び保持台20は制御部23によって制御される。
【0072】
光線照射ブロック4は、例えば、光線出射部17から出射される加熱光線200の出射タイミング、加熱光線200の光量、加熱光線200の照射時間等が制御部23によって制御される。
【0073】
アクチュエーター16は光線出射部17から出射される加熱光線200の出射タイミングに応じたタイミングで金属ボール100aがノズル14から吐出されるように制御部23によって制御される。
【0074】
保持台20は光線出射部17から出射される加熱光線200の出射タイミング及びノズル14から吐出される金属ボール100aの吐出タイミングに応じたタイミングで所定の電極22が照射位置に移動されるように制御部23によって制御される。
【0075】
[溶融金属吐出装置の動作]
以下に、溶融金属吐出装置の動作(溶融金属の接合方法)について説明する(図2乃至図7参照)。図2は、溶融金属の基板に対する接合の手順を示すフローチャート図である。
【0076】
(S1)移動機構によって保持台20が水平方向(図3に示すXY方向)へ移動され、インターポーザ21に設けられた所定の電極22が加熱光線200の照射位置に移動される(図3参照)。
【0077】
(S2)光線照射ブロック4の光線出射部17から加熱光線200が出射される(図4参照)。出射された加熱光線200は光線誘導体5の反射面5aで90°屈曲され照射位置に移動された電極22に照射され、該電極22に対する予熱(プリヒート)が行われる。加熱光線200の照射位置における径は、例えば、0.01mm乃至5mmとされ、金属ボール100aの径(0.01mm乃至1mm)以上とされている。電極22に対する加熱光線200の照射は、例えば、0.001秒乃至3秒行われる。尚、電極22にはフラックスが塗布されている。
【0078】
(S3)金属吐出ブロック3のノズル14から金属ボール100aが吐出される(図5参照)。金属ボール100aは光線誘導体5の貫通孔5bを通り、電極22に照射されている加熱光線200内を進行されて電極22に向かう。
【0079】
(S4)電極22へ向けて吐出された金属ボール100aが電極22に着弾される(図6参照)。上記のように、金属ボール100aは加熱光線200内を進行されて電極22に着弾されるため、ノズル14から電極22への着弾までの間に加熱光線200によって加熱され、温度の低下が抑制される。ノズル14から電極22までの距離は、例えば、200mm以下とされており、金属ボール100aはこの距離の間に加熱光線200内を進行される。
【0080】
(S5)電極22に着弾された金属ボール100aが電極22に接合されたか否かが判定される。即ち、合金化反応の状態が確認され、電極22に金属ボール100aが適正に接合されたか否かが判定される。判定は、例えば、目視、監視カメラによる撮影、電極22や金属ボール100aの温度検出等に基づいて行われる。金属ボール100aが適正に接合されていないと判定された場合には(S6)に移行し、金属ボール100aが適正に接合されたと判定された場合には(S7)に移行する。
【0081】
(S6)加熱光線200による電極22に対する加熱が引き続き行われる。
【0082】
(S7)加熱光線200による電極22に対する加熱が停止される。
【0083】
上記した(S1)乃至(S7)の一連の動作が終了することにより電極22に金属ボール100aが接合されてバンプが形成され、次いで、再び、(S1)乃至(S7)の一連の動作が行われることにより別の電極22にバンプが形成される。
【0084】
[まとめ]
以上に記載した通り、溶融金属吐出装置1にあっては、加熱光線200によって溶融金属100(金属ボール100a)の接合を行おうとする電極22を加熱するようにしている。
【0085】
従って、溶融金属100の接合の対象となる電極22に対して局所的に加熱光線200による加熱を行うため、電極22が必要な温度まで上昇する時間を短縮化することができ、加熱効率が向上し作業時間の向上を図ることができる。
【0086】
また、インターポーザ21における電極22、22、・・・の周辺に搭載された電子部品に対する熱の影響を抑制することができる。
【0087】
さらに、溶融金属吐出装置1にあっては、光線誘導体5によって電極22へ向かう加熱光線200内を金属ボール100aが進行して電極22に着弾される。
【0088】
従って、吐出から電極22への着弾までの間の金属ボール100aの温度低下が抑制され、電極22に着弾されたときに金属ボール100aが電極22に瞬時に接合され、加熱効率の向上及び作業効率の向上を図ることができる。また、加熱光線200によって電極22と金属ボール100aの双方を加熱するため、電極22と金属ボール100aの加熱手段が共通であり、機構の簡素化及びエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0089】
また、光線出射部17に加熱光線200の径を絞る凸レンズ17bが設けられ、光線出射部17が加熱光線200の光線誘導体5への出射方向及びその反対方向へ移動可能とされている。
【0090】
従って、光線出射部17が移動されることにより加熱光線200の照射位置における径を変化させることが可能であり、金属ボール100aの径に応じて加熱光線200の径を任意の大きさに変化させることができると共に必要かつ十分な径で加熱光線200を電極22に照射することができる。
【0091】
さらにまた、光線誘導体5として加熱光線200を電極22へ向けて反射する反射面5aを有する反射ミラーを用い、光線誘導体5に金属ボール100aの経路となる貫通孔5bを形成している。
【0092】
従って、加熱光線200を簡素な手段により確実に電極22に照射することができると共に金属ボール100aの加熱光線200内における進行を容易に実現することができる。
【0093】
加えて、溶融金属吐出装置1にあっては、電極22への金属ボール100aの着弾前に加熱光線200を電極22に照射してプリヒートを行っている。
【0094】
従って、金属ボール100aの着弾時に加熱光線200によって電極22を十分な温度に上昇させることが可能であり、電極22に対する溶融金属100の接合作業の迅速化を図ることができる。
【0095】
また、溶融金属吐出装置1にあっては、加熱光線200を光線誘導体5によって電極22へ導いて加熱し、金属ボール100aを加熱光線200内で進行させ、電極22に金属ボール100aを着弾させて電極22に接合する方法を用いている。
【0096】
このような方法により、電極22が必要な温度まで上昇する時間を短縮化することができ、吐出から電極22への着弾までの間の金属ボール100aの温度低下を抑制することができる。
【0097】
従って、加熱効率の向上、作業効率の向上、機構の簡素化及びエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0098】
[その他]
上記には、電極22に対して加熱光線200のみを照射する例を示したが、以下のように、加熱光線200に加えて電極22の表面を洗浄する紫外線を照射するようにしてもよい(図7参照)。
【0099】
紫外線300を照射する場合には、例えば、ビームスプリッター24を用いることが可能である。ビームスプリッター24は、例えば、光線照射ブロック4における光線源18の内部に配置され、光線源18においては加熱光線200と紫外線300が生成される。
【0100】
加熱光線200は、例えば、垂直方向へ出射されビームスプリッター24を透過されて光線送り部19を介して光線出射部17に送られ、紫外線300は、例えば、水平方向へ出射されビームスプリッター24によって90°反射されて光線送り部19を介して光線出射部17に送られる。
【0101】
尚、加熱光線200が水平方向へ出射されビームスプリッター24によって90°反射されて光線送り部19を介して光線出射部17に送られ、紫外線300が垂直方向へ出射されビームスプリッター24を透過されて光線送り部19を介して光線出射部17に送られるようにしてもよい。
【0102】
ビームスプリッター24を用いることにより、加熱光線200の光路の一部において紫外線300が進行され加熱光線200に加えて紫外線300が電極22に照射される。
【0103】
紫外線300が電極22に照射されると、紫外線300の照射によって発生するオゾンから分離される活性酸素の作用により電極22の表面に付着されている有機汚染物質が揮発性の物質に変化されて除去され電極22の表面が洗浄される。
【0104】
従って、加熱光線200の光路を用いて紫外線300を電極22に照射することにより、機構の簡素化を図った上で電極22の表面を洗浄して溶融金属100の電極22に対する接合性の向上を図ることができる。
【0105】
また、紫外線300を電極22に照射することにより該電極22の表面を洗浄することが可能となるため、電極22の表面に溶融金属100との接合性を高めるフラックスの塗布を省略することができる。
【0106】
電極22に対するフラックスの塗布を省略することにより、作業効率の向上及び製造コストの低減を図ることができる。
【0107】
また、加熱光線200と紫外線300を電極22に同時に照射することも可能であり、加熱光線200と紫外線300を電極22に同時に照射することにより、作業効率の向上を図った上で溶融金属100の電極22に対する接合性の向上を図ることができる。但し、加熱光線200と紫外線300を交互に照射することも可能である。
【0108】
尚、上記には、ベース部13のノズル配置孔13aに不活性ガスを供給して溶融金属100の酸化を防止する例を示したが、ノズル14から電極22までの金属ボール100aの経路にも不活性ガスを供給して金属ボール100aの酸化を防止するようにしてもよい。
【0109】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図2乃至図7と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、溶融金属吐出装置等を一部を断面にして示す側面図である。
【図2】溶融金属の基板に対する接合の手順を示すフローチャート図である。
【図3】保持台が水平方向へ移動され、インターポーザに設けられた所定の電極が加熱光線の照射位置に移動された状態を示す拡大斜視図である。
【図4】光線出射部から加熱光線が電極へ向けて出射されている状態を示す拡大斜視図である。
【図5】ノズルから吐出された金属ボールが加熱光線内を進行されている状態を示す拡大斜視図である。
【図6】ノズルから吐出された金属ボールが電極に着弾された状態を示す拡大斜視図である。
【図7】加熱光線に加えて紫外線を照射する例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0111】
1…溶融金属吐出装置、2…金属貯蔵ブロック、3…金属吐出ブロック、4…光線照射ブロック、5…光線誘導体、5a…反射面、5b…貫通孔、17…光線出射部、17b…凸レンズ、18…光線源、21…インターポーザ、22…電極、100…溶融金属、100a…金属ボール、200…加熱光線、300…紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を貯蔵する金属貯蔵ブロックと、
前記溶融金属から形成された金属ボールをインターポーザ上に設けられた電極へ向けて吐出するノズルを有する金属吐出ブロックと、
加熱光線を出射する光線出射部と該光線出射部から出射される前記加熱光線を生成する光線源とを有する光線照射ブロックと、
前記光線出射部から出射された前記加熱光線を前記電極へ導く光線誘導体とを備え、
前記光線誘導体によって前記電極へ導かれる前記加熱光線内を前記ノズルから吐出された前記金属ボールが進行して電極に着弾するようにした
溶融金属吐出装置。
【請求項2】
前記光線出射部に前記加熱光線が透過され前記加熱光線の径を絞る凸レンズを設け、
前記光線出射部を該光線出射部から前記光線誘導体への出射方向及びその反対方向へ移動可能とした
請求項1に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項3】
前記光線誘導体として前記光線出射部から出射された前記加熱光線を前記電極へ向けて反射する反射面を有する反射ミラーを設け、
前記反射ミラーに前記ノズルから吐出される前記金属ボールの経路となる貫通孔を形成した
請求項1に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項4】
前記金属吐出部ロックから前記金属ボールが吐出される前に前記加熱光線を前記電極に照射してプリヒートを行うようにした
請求項1に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項5】
前記電極の表面を洗浄する紫外線を前記電極に照射し、
前記紫外線の光路の少なくとも一部と前記加熱光線の光路の少なくとも一部とを同一の光路とした
請求項1に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項6】
前記加熱光線と前記紫外線を前記電極に同時に照射した
請求項5に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項7】
光線源によって生成された加熱光線を光線出射部から出射し前記加熱光線を光線誘導体によってインターポーザ上に設けられた電極へ導いて該電極を加熱し、
溶融金属から形成された金属ボールをノズルから前記電極へ向けて吐出し前記光線誘導体によって前記電極へ導かれる前記加熱光線内を金属ボールが進行するようにし、
前記電極に前記金属ボールを着弾させて前記金属ボールを前記電極に接合するようにした
溶融金属の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−61074(P2011−61074A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210559(P2009−210559)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】