説明

溶解物分離装置、地熱発電用設備、ならびに溶解物の分離方法、及びシリカ沈殿物含有物

【課題】添加物の供給量を抑えることができ、また、地熱水中に含まれる溶解物としてのシリカを確実に除去することができ、さらに、沈殿物が除去された処理液に含まれるカルシウムの含有量を減らすことにより、地熱水を河川や地面に戻すことができ、さらに、生成される沈殿物の量を確実に減らすことができる溶解物分離装置、この溶解物分離装置を備えた地熱発電用設備、及び溶解物分離方法及びかかる方法により分離されたシリカ沈殿物を利用した含有物を提供すること。
【解決手段】溶解物を含む処理液20が流通する管路25と、管路25内に添加物を供給する添加部28と、沈殿物と処理液20を分離する沈殿槽24とを備えた溶解物分離装置10において、管路25の軸線方向と交差する方向に揺動可能に支持された攪拌板と、管路内の処理液を振動させる振動装置31とを備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶解物分離装置、この溶解物分離装置を備えた地熱発電用設備、ならびに溶解物の除去方法、及びかかる方法により分離されたシリカ沈殿物の含有物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工業用水、生活用水又は鉱山廃水等の処理液から溶解物を分離、除去する方法及び溶解物分離装置としては、処理液中に含まれる溶解物と化学反応を起こさせ、沈殿物を生成する添加物を処理液中に供給して、生じた沈殿物を沈殿させ、沈殿物を分離、除去することにより溶解物を分離する方法及び、溶解物分離装置が知られている。
このような、溶解物分離装置及び溶解物分離方法においては、処理液中に含まれる溶解物と添加物とを常時反応させるために、添加物が常時供給されると共に、沈殿物が常に生成される。
【0003】
例えば、地熱水に含まれるシリカを分離、除去する方法及びシリカ分離装置としては、地下から汲み上げられた地熱水にカルシウムの酸化物や水酸化物からなるシードを添加して、地熱水とシードとを攪拌装置に送り、混合攪拌反応させて、CaO・SiO2等からなる沈殿物を生成し、また、生成されたCaO・SiO2等からなる沈殿物の一部を添加物として戻して、供給された沈殿物を核として沈殿物の結晶を成長させ、この成長した結晶や沈殿物を除去することにより、地熱水中からシリカを除去するシリカの除去方法及びシリカ除去装置が知られている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、このようなシリカの除去方法及びシリカ除去装置は、地熱発電設備において、地下から汲み上げられた地熱水を用いてタービンを駆動したり、他の媒体との間で熱交換を行う際に、地熱水を流通させる管路内にシリカが析出することを防止するために多用されている。
【特許文献1】特開2003−95641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の溶解物の除去方法及び溶解物除去装置においては、添加物を常時供給する必要があるため、コストがかかるという問題があり、また、生成される沈殿物の生成量が多く、別途処理が必要であるという問題があった。
また、上記従来のシリカの除去方法においては、沈殿物の一部を添加物として戻した際には、沈殿物の表面にシリカが析出して、沈殿物は漸次大きくなることにより、体積当たりの表面積が小さくなり、処理液中のシリカが析出し難いという問題があった。
【0006】
また、添加物として処理液に添加されるシードは、カルシウムの酸化物又は水酸化物であるため、沈殿物が除去された処理液中にもカルシウムが多く含まれることとなり、沈殿物が除去された処理液を河川や地面に直接戻すことができず、別途カルシウムを除去する手段を設ける必要があるという問題があった。
さらに、生成されるCaO・SiO2等からなる沈殿物を別途処理する工程及び装置が必要であるとともに沈殿物等が大量に発生して産業廃棄物となるため、かかる工程を簡素にし、産業廃棄物を削減したいという要請があった。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、添加物の供給量を抑えることができ、また、地熱水中に含まれる溶解物としてのシリカを確実に分離、除去することができ、さらに、沈殿物が除去された処理液に含まれるカルシウムの含有量を減らすことにより、地熱水を河川や地面に戻すことができ、さらに、生成される沈殿物の量を確実に減らすとともに分離された沈殿物を利用可能とする溶解物分離装置、この溶解物分離装置を備えた地熱発電用設備、ならびに溶解物の分離方法、及びかかる方法により分離されたシリカ沈殿物を利用した含有物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、溶解物を含む処理液が流通する管路と、該管路内に添加物を供給する添加部と、添加物と溶解物とにより生成された沈殿物を前記処理液から分離して沈殿物が除去された処理液を取り出す一方、前記添加部に前記沈殿物の少なくとも一部を前記添加物として供給する沈殿槽とを備え、前記処理液に含まれる溶解物を除去する溶解物分離装置において、前記管路の軸線方向と交差する方向に揺動可能に支持された攪拌板と、前記管路内の処理液を振動させる振動装置とを備えてなることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、振動装置により振動させられた処理液が攪拌板を揺動して、この揺動する攪拌板が沈殿物と衝突して沈殿物を微細化し、この微細化された沈殿物を核として溶解物が析出することにより、処理液中に溶解した溶解物が結晶として分離、除去される。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された溶解物分離装置において、前記管路が断面円形状に形成され、前記攪拌板が円板状に形成され、該攪拌板の径が前記管路の径の80%以上95%以下とされていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、攪拌板の径が管路の径の80%以上95%以下となるように形成されているため、処理液が管路の内面と攪拌板の外周端部を通過する際に、処理液中の沈殿物が、揺動する攪拌板と衝突し易く微細化が促進される。
なお、攪拌板の径が管路の径の80%よりより大きく形成されていることにより、沈殿物が攪拌板と管路との間を通り抜ける際に沈殿物が攪拌板に衝突して微細化され易く、また、攪拌板の径が管路の径の95%より小さく、攪拌板と管路の内周面との間に適度な隙間が形成され沈殿物が管路と攪拌板との隙間に挟みこまれることがないので、攪拌板の揺動が安定して維持され易く、沈殿物を微細化し易い。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された溶解物分離装置において、前記攪拌板には、複数の穴部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、攪拌板に形成された穴部からも処理液及び沈殿物が流通するので、攪拌板の周囲のみならず攪拌板の内方においても沈殿物と攪拌板とが衝突し、微細化が促進される。
【0014】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された溶解物分離装置において、前記穴部の総開口面積は、前記攪拌板の表面積の10%以上25%以下とされていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、攪拌板に形成された穴部の総開口面積が攪拌板の表面積の10%以上とされているため、処理液中に含まれた沈殿物が穴部に固着して目詰まりすることなく処理液が良好に流通し、また穴部の総開口面積が25%以下とされるため、通過する処理液が攪拌板の穴部と適度に衝突し処理液に含まれる沈殿物の微細化がスムースに行われる。
【0016】
請求項5に記載された発明は、請求項3又は4に記載された溶解物分離装置において、前記穴部は、前記攪拌板の中心を中心として外周縁部に向けて放射状に列設されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、穴部が攪拌板に均等に形成されることとなり、処理液が管路内を良好に流通し管路内に溜まることがないため、処理液中に溶解した沈殿物が大きく成長することなく、効率よく微細化される。
【0018】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載された溶解物分離装置において、攪拌板が前記管路の軸方向に向けて複数設けられており、少なくとも隣接する攪拌板に形成された穴部の位置が、前記軸方向から見て周方向にずれていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、攪拌板とこれに隣接する攪拌板とに形成された穴部がずれるように形成されているため、攪拌板に形成された穴部を通過した沈殿物を含む処理液の流路が曲げられ、地熱水が次に通過する攪拌板に衝突し易く微細化が促進される。
【0020】
請求項7に記載された発明は、請求項6に記載された溶解物分離装置において、前記攪拌板同士の間隔は、前記攪拌板の半径の2倍から4倍以下とされていることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、前記攪拌板同士の間隔が、前記攪拌板の半径の2倍以上とされているため、攪拌板が相互に影響することなく揺動し、処理液がスムースに流通するとともに攪拌板間に沈殿物が蓄積することなく沈殿物の結晶を微細化する。
また、攪拌板同士の間隔が4倍以下の間隔とされているため、攪拌板と攪拌板との間を処理液が流通する間に沈殿物の肥大化が抑制される。
【0022】
請求項8に記載された発明は、請求項6又は7に記載された溶解物分離装置において、隣接する前記攪拌板に形成された穴部の径が異なることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、攪拌板上の穴部の位置により穴部の径を変化させることによって穴部を多く形成し処理液に含まれる沈殿物が穴部を通過する際に、何れかの攪拌板に形成された穴部の周囲の壁部と衝突し、微細化が促進される。
【0024】
請求項9に記載された発明は、請求項6から8のいずれかに記載された溶解物分離装置において、前記攪拌板の枚数Nが1+L/(m×R)であることを特徴とする。ここで、Nは、上記右辺で得られる値の整数値、Lは、攪拌板が配置される管路の長さ、mは2以上4以下の数、Rは攪拌板の半径である。
【0025】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、攪拌板が配置される管路の長さに対して、処理液が滞ることなく良好に流通するために配置するべき攪拌板の枚数が算出される。
【0026】
請求項10に記載された発明は、請求項1から9のいずれかに記載された溶解物分離装置において、前記攪拌板は、前記管路の軸線方向に沿って延び前記攪拌板の揺動範囲を規制する規制部を備えてなる軸部が嵌挿されていることを特徴とする。
【0027】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、攪拌板の揺動範囲を規制して適切な揺動をさせることができる。
【0028】
請求項11に記載された発明は、請求項1から10のいずれかに記載された溶解物分離装置において、前記振動装置は、前記管路内の処理液を前記軸線方向に送る速度を、断続的に変化させることにより、前記処理液を140回/分以上200回/分以下振動させることを特徴とする。
【0029】
この発明に係る溶解物分離装置によれば、処理液が140回/分以上200回/分以下振動するため、管路内に配置された攪拌板が適度な回数、振動し、処理液内に含まれた沈殿物の微細化が攪拌板により促進される。
なお、処理液に与える振動が140回/分以上であるため、処理液中の沈殿物が処理液と相対的に運動することにより攪拌板と十分に衝突して沈殿物を微細化しやすくなり、また、処理液に生じる振動が200回/分以下であるため、攪拌板が処理液の振動に追随して良好に揺動し、処理液中に含まれる沈殿物を微細化しやすくなる。
【0030】
請求項12に係る発明の地熱発電設備は、請求項1から11のいずれかに記載された溶解物分離装置を備えることを特徴とする。
【0031】
この発明に係る地熱発電設備によれば、処理液に含まれる溶解物がタービンや管路の内周面に析出することが防止され、発電が良好になされる。
【0032】
請求項13に記載された発明は、溶解物を含む処理液を、沈殿物生成工程、沈殿物分離工程の順に流通させながら、前記沈殿物生成工程にて、前記処理液に添加物を添加して、添加物と前記溶解物とから沈殿物を生成させ、前記沈殿物分離工程にて、前記処理液から前記沈殿物を分離して沈殿物が除去された処理液を取出す一方、前記分離された沈殿物の少なくとも一部を前記沈殿物生成工程の処理液に供給する溶解物分離方法であって、前記沈殿物生成工程において前記処理液が攪拌されることにより沈殿物を微細化することを特徴とする。
【0033】
この発明に係る溶解物分離方法によれば、沈殿物生成工程において処理液を攪拌することにより沈殿物を微細化するため、沈殿物の総表面積が大きくなり、処理液中に含まれる溶解物が沈殿物の表面に析出し易くなり、溶解物が処理液中から良好に分離、除去される。
【0034】
請求項14に記載された発明は、請求項13に記載された溶解物分離方法であって、
前記沈殿物が分離された後に、前記分離された沈殿物の一部を、前記添加物に代えて前記沈殿物生成工程に供給することを特徴とする。
【0035】
この発明に係る溶解物分離方法によれば、処理液に添加する添加物に代えて、処理液から沈殿物が分離された後に、分離された沈殿物の一部を、沈殿物生成工程に供給するため、添加物が不要となるとともに、微細かつ純度の高いシリカ沈殿物を低コストにて生成することができる。
【0036】
請求項15に記載された発明は、請求項13又は請求項14に記載された溶解物分離方法において、前記処理液は溶解物であるシリカを含む地熱水であることを特徴とする。
【0037】
この発明に係る溶解物分離方法によれば、沈殿物生成工程にて、添加物とシリカとにより生成された沈殿物が微細化されて、沈殿物の総表面積が大きくなることにより、微細化された沈殿物を核として、その表面に地熱水中に含まれるシリカが析出する。
【0038】
請求項16に記載された発明は、請求項13から請求項15のいずれかに記載の溶解物分離方法において、前記沈殿物は、シリカ又はCaO・SiO2からなることを特徴とする。
【0039】
この発明に係る溶解物分離方法によれば、地熱水のシリカ又はCaO・SiO2が沈殿物生成工程にて沈殿物として生成され、その一部が沈殿物生成工程の処理液中に供給されることで処理液中のシリカの析出が促進される。
【0040】
請求項17に記載された発明は、請求項13又は請求項14に記載された溶解物分離方法において、前記処理液が、生活用水又は工業用水であることを特徴とする。
【0041】
この発明に係る溶解物分離方法によれば、生活用水や工業用水に含まれる溶解物が生活用水や工業用水から分離、除去される。
【0042】
請求項18に記載された発明は、セメント用混和材であって、請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とする。
【0043】
上記溶解物分離方法によれば、継続的に添加剤を用いる化学的処理を用いずに、沈殿物微細化工程における、シリカの物理的な結晶生成と微細化によって、シリカを主成分とする沈殿物を生成させるので、約900℃にて焼成した場合、粒径が約0.1μm〜10μmと小さく、純度が95wt%以上の高純度なシリカ含有粒状体が容易かつ低コストにて得られる。
また、スプレードライした後に焼成した場合、表面の空隙がほとんどないシリカ含有粒状体が得られる。
したがって、この発明に係る溶解物分離方法によって分離された沈殿物(シリカ含有粒状体)をセメント用混和剤(シリカヒューム)に適用することで、セメントモルタル等の機械特性を向上させることができる。例えば、セメントモルタルの圧縮強度を100N/mm以上とすることができる。
【0044】
請求項19に記載された発明は、化粧料であって、請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とする。
【0045】
この発明に係る溶解物分離方法によって分離された沈殿物は、上述のように粒径が約0.1μm〜10μmと小さく、純度が95wt%以上の高純度であるので、化粧料に適用することで、例えば、吸湿性が高い粒状体が得られるため、肌表面の保湿効果に優れた化粧品を得ることができる。
【0046】
請求項20に記載された発明は、塗料であって、請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とする。
【0047】
この発明に係る溶解物分離方法によって分離された沈殿物は、上述のように粒径が小さく、高純度であるので、塗料に配合することにより、顔料等の定着性や耐水性等の点で優れた塗料を得ることができる。
【0048】
請求項21に記載された発明は、記録シート用表面処理剤であって、請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とする。
【0049】
この発明に係る溶解物分離方法によって分離された沈殿物は、上述のように粒径が小さく、高純度であるので、表面処理剤に配合して紙などの記録シート表面に塗布し、この表面処理剤からなる表面層を形成することによって、インク等の定着性や耐水性などの点で優れた記録シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、地熱水等の処理液に含まれるシリカ等の溶解物を分離、除去するに際しカルシウム等の添加物の供給量を抑えつつ溶解物を効率的に除去し、地熱発電設備等においてシリカが管路内で析出するのを抑制し、かかる設備を低コストにて運転可能とし、処理水を河川や地面に安全に戻すことが可能とされる。また、かかる方法により分離されたシリカ沈殿物を工業製品の原材料とすることで、産業廃棄物を削減するとともにコストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る溶解物分離装置を示した図であり、溶解物分離装置10は、シリカ(溶解物)を含有した地熱水(処理液)20を貯蓄するフラッシュタンク21と、カルシウムの酸化物又はカルシウムの水酸化物(添加物)が貯蓄されたカルシウム化合物添加手段22と、地熱水20を攪拌する攪拌機構23と、地熱水20に含まれる沈殿物を取り除く沈殿槽24と構成されている。
フラッシュタンク21には、地熱水20を供給する管路25が設けられており、フラッシュタンク21と攪拌機構23との間及び、攪拌機構23と沈殿槽24との間にも、管路25が設けられている。
【0052】
攪拌機構23は、管路25内に地熱水20を送り出すと共に振動させる送水振動装置26と、送水振動装置26により振動させられた地熱水20を攪拌する攪拌装置27とから構成されている。
送水振動装置26と攪拌装置27との間には、カルシウム化合物添加手段22に連設された添加物供給管路28aと、沈殿槽24に連設された返送管路28bとが連設されている。
管路25には、添加物供給管路28aと、返送管路28bとにより、カルシウム化合物等が管路25内に供給される添加部28が形成されている。
【0053】
送水振動装置26は、管路25内を流通する地熱水20を攪拌装置27側に押出すポンプ30と、流通する地熱水20に振動を加えることにより、地熱水の流通速度を断続的に変化させ、地熱水20を140回/分以上200回/分以下振動させる振動装置(ベビコン)31とから構成されている。
攪拌装置27は、送水振動装置26より地熱水20の流動方向前方側に設けられている。また、攪拌装置27は、図2に示されるように、断面円形状の管路40と、管路40の軸線方向に複数配置された円板状の攪拌板41と、攪拌板41に嵌挿された軸部42とから構成されている。
【0054】
軸部42は、小径の中心軸43と、中心軸43より大径に形成された複数の規制部44と、規制部44の両端部側に配置され中心軸43より大径に形成されたボルト部45とから構成されている。
規制部44は、軸方向の長さがL1となるように構成されており、各規制部44は、互いに間隔を隔てて中心軸43に固定されている。ボルト部45は、両端部側に配置された規制部44から間隔を隔てて中心軸43に固定されている。
【0055】
攪拌板41は、ボルト部45と規制部44との間及び、規制部44同士の間に配置されており、軸部42の中心軸43を中心として揺動可能に支持されている。
攪拌板41の径Rは、管路40の径rに対して80%以上95%以下となるように形成されている。
また、攪拌板41には、図3に示されるように複数の穴部46が、攪拌板41の中心点Oを中心として、攪拌板41の外周縁部に向けて放射状に形成されている。
すなわち、攪拌板41には、中心点Oを通り攪拌板41の外周縁部に向うように穴部が配置されることにより穴部列47が形成されており、この穴部列47が中心点Oを中心として周方向に10°以上20°以下ずれるように配置されている。
【0056】
また、攪拌板41に形成された複数の穴部46の総表面積は、攪拌板41の表面積の10%以上25%以下となるように形成されている。
図4に示されるように、軸方向に隣接する攪拌板41A、41Bにおいては、各攪拌板41A、41Bに形成された穴部46が、攪拌板41Aの周方向にずれるように配置されている。
すなわち、図5に示されるように、管路40内を流れる処理液の流動方向から見た際には、流動方向後方側に配置された攪拌板41Aに形成された穴部46Aと、流動方向前方側に配置された攪拌板41Bに形成された穴部46Bとが、周方向に5°以上10°以下ずれるように攪拌板41A、41Bとが配置されている。
【0057】
また、攪拌板41Aに形成された穴部46Aの径と、攪拌板41Bに形成された穴部46Bの径とは、異なるように形成されている。
このように構成された攪拌板41は、図2、図4に示されるように、管路40内に管路40の軸方向に沿って複数配置されており、管路40内に配置された攪拌板41の枚数Nは、N=1+L/(m×R)の右辺により求められる数値の整数値により設定されている。
ここで、Lは、攪拌板41が配置される管路40の長さ、mは2以上4以下の数、Rは攪拌板41の半径である。
このため、軸方向に隣接する攪拌板41同士の間隔は、攪拌板41の半径Rの2倍から4倍となるように配置されている。
【0058】
図1に示されるように、沈殿槽24は、円筒状の胴部24aと、逆円錐状に形成された円錐状下部24bとから構成され、円錐状下部24b内には反応槽39が設けられている。
沈殿槽24の胴部24aの上端部には、胴部24a内の地熱水20の上澄を排出する越流水導出管路50が設けられている。
円錐状下部24bの下端部には、円錐状下部24b付近に沈殿した沈殿物を排出する沈殿物排出経路53が接続されており、この沈殿物排出経路53の流通方向先端部側には、沈殿物を集めて脱水することにより、沈殿物を脱水ケーキとして取り出すことができるフィルタープレス51が設けられている。
沈殿物排出経路53には、返送経路28bの一端が分岐接続されており、この返送経路28bの他端部は、攪拌装置27より地熱水20の流動方向後方側の管路25に連設されている。
【0059】
反応槽39は、円筒状の胴部39aと、逆円錐状に形成された円錐状下部39bとから構成されている。
反応槽39内には、地熱水を噴射するエジェクター54が設けられており、エジェクター54には、攪拌装置27を経た地熱水20を供給する管路25が連設されている。
また、反応槽39内には、供給された地熱水20を攪拌する攪拌機39cが設けられている。
円筒状の胴部39aの上端部は、地熱水20の水面より僅かに下方に位置させられており、胴部39aの外側には、円筒部54が配置されている。
円筒部54の上端部は、地熱水20の水面から上方に位置させられており、円筒部54の下端側は下方に向うに従って漸次縮径させられており、最下端部は、下方に向けて開口させられている。
【0060】
このように構成された溶解物分離装置10の作用について説明する。図1に示されるように、管路25には、地熱水20が供給され、地熱水20がフラッシュタンク21内に貯蓄される。
フラッシュタンク21内に貯められた地熱水20は、管路25を通って攪拌機構23に運ばれる。
攪拌機構23に運ばれた地熱水20は、まず、振動機構26により140回/分以上200回/分以下振動させられる。
このように振動させられた地熱水20には、カルシウム化合物添加手段22から添加物供給管路28aを介して、カルシウムの酸化物又はカルシウムの水酸化物が供給され、沈殿物生成工程が行われる。
【0061】
この沈殿物生成工程においては、カルシウム化合物添加手段22より供給されたカルシウム化合物と、地熱水20内に含まれるシリカとが反応して、沈殿物が生成される。
例えば、カルシウム化合物として生石灰を用いた場合は、以下のような反応が進む。
2CaO+SiO2 → 2CaO・SiO2または
3CaO+SiO2 → 3CaO・SiO2
また、カルシウム化合物として、消石灰を用いた場合は、以下のような反応が進行する。
2Ca(OH)2+SiO2 → 2CaO・SiO2+2H2Oまたは
3Ca(OH)2+SiO2 → 3CaO・SiO2+3H2
このため、沈殿物生成工程においては、CaO・SiO2が沈殿物として生成される。
【0062】
このように、地熱水20にカルシウム化合物が添加されると、地熱水20は、攪拌装置27内に運ばれ、生成された沈殿物を微細化する沈殿物微細化工程を経ることとなる。
この沈殿物微細化工程において、沈殿物が溶解した地熱水20は、攪拌装置27の管路40内を流通する際に、攪拌板41に形成された穴部46又は、管路40の内周面と攪拌板41との隙間を通って流通する。
この際、攪拌板41の径Rが、管路40の径rの80%以上となるように形成されているため、沈殿物が攪拌板41と管路40との間を通りぬける際に沈殿物が攪拌板に衝突して微細化され易い。
【0063】
また、攪拌板41の径Rが管路40の径rの95%以下となるように形成されているため、攪拌板41と管路40の内周面との間に適度な隙間が形成され沈殿物が管路と攪拌板との隙間に挟みこまれることがないので、攪拌板41の揺動を維持し易く、沈殿物を微細化し易い。
また、攪拌板41には、穴部46が複数形成されているため、地熱水20の流通が確保されており、さらに、穴部46が放射状に形成され、攪拌板41の表面上に均等に形成されているため、攪拌板41より地熱水20の流動方向後方側において、地熱水20が渦巻く等により、地熱水20が停滞することなく、良好に流通する。
【0064】
その一方で地熱水20は、送水振動装置26により振動させられており、攪拌装置27内に設けられた攪拌板41は、図2に示されるように、管路40の軸に対して揺動可能に支持されているため、攪拌板41は、地熱水20の振動に合わせて揺動する。
このように、攪拌板41が揺動することにより、地熱水20が攪拌され、地熱水20中のシリカと、カルシウム化合物との化学反応がさらに促進される。
生成された沈殿物は、沈殿物の結晶が成長するための核として機能し、生成された沈殿物及び、成長した沈殿物の結晶は、揺動する攪拌板41と衝突して微細化される。このように、沈殿物及び沈殿物の結晶が、微細化されることにより、地熱水20中に含まれる沈殿物の総表面積が大きくなり、沈殿物の結晶の成長がさらに促進される。
【0065】
この際、形成された穴部46の開口面積は、攪拌板41の表面積の10%以上とされているため、地熱水20の流通が確保されている一方で、攪拌板41の表面積の25%以下とされているため、径の大きな沈殿物が穴部46を通ることが防止され、攪拌板41により確実に微細化される。
【0066】
地熱水20が攪拌板41間を流通する間においては、カルシウム化合物と地熱水20中に含まれるシリカとが反応し沈殿物が新たに生成されたり、沈殿物の結晶が成長したりするが、攪拌板41は、管路40内に複数設けられているため、攪拌板41間にて生成された沈殿物及び、成長した沈殿物の結晶は、攪拌板41により微細化が促進される。
ここで、前記攪拌板41同士の間隔が、前記攪拌板41の半径の2倍以上とされているため、攪拌板41が相互に影響をすることなく揺動し、処理液がスムースに流通するとともに攪拌板41間に沈殿物が蓄積することなく沈殿物の結晶を微細化する。
また、攪拌板41同士の間隔が4倍以下の間隔とされているため、攪拌板41と攪拌板41との間を処理液が流通する間に沈殿物が肥大化することが抑制される。
【0067】
また、管路40内に配置される攪拌板41は、配置される枚数Nが、1+L/(m×R)により求まる整数値とされているため、管路40の長さL内に、攪拌板41が攪拌板41の径Rの2倍から4倍の間隔で配置される。
さらに、互いに隣接する攪拌板41に形成された穴部の径が異なり、さらに、形成された穴部の位置が周方向にずれるように配置されているため、地熱水20中に含まれる沈殿物が確実に微細化される。
【0068】
このように、沈殿物微細化工程においては、地熱水20中のシリカと、カルシウム化合物との化学反応がさらに促進させると共に、攪拌板41が生成された沈殿物を微細化することにより、沈殿物の結晶の成長を促進させる。
また、この沈殿物微細化工程において微細化された沈殿物の表面には、地熱水20中のシリカが析出し、このシリカの結晶が表面に付着した沈殿物がいずれかの攪拌板41により砕かれることにより、シリカの結晶が地熱水20中に浮遊する。
このシリカの結晶は、シリカの結晶が成長させるための核として機能することとなり、地熱水20中のシリカが、順次析出する。
【0069】
攪拌機構23を流通した地熱水20は、沈殿槽24に運ばれ、沈殿物分離工程が行われる。
沈殿物分離工程においては、まず、地熱水20が、エジェクター54により反応槽39内に供給され、攪拌機39cが地熱水20を攪拌し、未だ地熱水20中に含まれているカルシウム化合物を、シリカと反応させ沈殿物を生成する。
反応槽39内の地熱水20は、胴部39aの上端部を越えて、胴部39aと円筒部54との間を通って、沈殿槽39の下部に出る。
【0070】
沈殿槽24の下部に出た地熱水20は、ゆっくりと沈殿槽24の上方に向かい、越流水導出経路50から排出され、その間に沈殿物は、沈殿槽24の底部に沈殿する。
ここで、沈殿槽24の下部に沈殿物が所定量蓄積されると、カルシウム化合物の添加を停止する。
カルシウム化合物の添加が停止された後においては、CaO・SiO2が沈殿する量が漸次少なくなり、その一方で、沈殿物生成工程において、生成されたシリカの結晶が沈殿する。
【0071】
沈殿槽24の下端部に沈殿した沈殿物は、沈殿物排出経路53により沈殿槽24から排出され、フィルタープレス51において脱水されて、脱水ケーキとして取り出されるとともに、焼成(又は乾燥)、粉砕、分級等の工程を経てシリカを主成分とするシリカ含有粒状体とされる。
一方、沈殿物排出経路53により沈殿槽24から排出された沈殿物の一部は、返送経路28bにより搬送され、カルシウム化合物からなる添加剤に代えて沈殿物生成工程に供給される。
【0072】
返送経路28bにより搬送された沈殿物は、攪拌装置27より地熱水20の流動方向後方側の管路28b内に供給され、沈殿物の結晶が成長するための核として機能する。
ここで、沈殿物としてのシリカの結晶が返送管路28bにより返送された場合には、このシリカの結晶を核として、地熱水20中に含まれているシリカが順次析出し、シリカの結晶が漸次大きくなる。
このように成長したシリカの結晶は、揺動する攪拌板15により微細化される。シリカの結晶が微細化されることにより、シリカの結晶の表面積が大きくなり、地熱水20中のシリカの析出がさらに促進される。
【0073】
このように、溶解物分離装置10は、沈殿物分離工程、沈殿物微細化工程にて、地熱水20に溶解しているシリカを、沈殿物又はシリカの微細結晶として析出、成長を促進させ、微細化することにより、地熱水20から分離、除去することにより、地熱水20からシリカを除去することができる。
【0074】
また、この溶解物分離装置10及びこの溶解物分離装置10による溶解物分離方法においては、カルシウム化合物の添加を途中で停止するため、沈殿槽26の越流水導出管50により得られた地熱水20は、カルシウムの含有量が少なく、地面又は河川等に廃棄することができる。
さらに、カルシウム化合物の添加を途中で停止するため、添加されるカルシウム化合物の添加量を少量に抑えることができコストを削減することができる。
その上、添加物としてのカルシウム化合物の添加を途中で停止するため、地熱水20中に含まれるシリカとカルシウム化合物とが反応して生成される沈殿物CaO・SiO2の生成量を少量に抑えることができるため、容易に沈殿物の処理を行うことができる。
【0075】
上記実施の形態の溶解物分離装置10及び溶解物分離方法によれば、カルシウム化合物からなる添加剤を継続的に用いる化学的処理ではなく、沈殿物微細化工程におけるシリカの物理的な結晶生成と微細化によって、沈殿物を生成させているので、例えば、約900℃にて焼成した状態にて、粒径が約0.1μm〜10μmと小さく、金属成分等をほとんど含まない純度が95wt%以上の高純度なシリカ含有粒状体が容易かつ低コストにて得られる。
【0076】
その結果、この実施形態に係るシリカ含有粒状体からなる沈殿物をセメント用混和剤(シリカヒューム)に適用することで、セメントモルタル等の機械特性を向上させることができる。
また、吸湿性が高い粒状体が得られるため、肌表面の保湿効果に優れた化粧品を得ることができる。
また、この沈殿物を塗料に配合することにより、顔料等の定着性や耐水性等の点で優れた塗料を得ることができる。
また、この沈殿物を配合した表面処理剤を、紙などの記録シート表面に塗布し、この表面処理剤からなる表面層を形成することによって、インク等の定着性や耐水性などの点で優れた記録シートを得ることができる。
【0077】
図6は、本実施形態に係る溶解物分離装置10において、地熱水20に添加するCaOの量を各種変化させた場合に、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度と、濁度と、pHと、Ca濃度の変化を示したものであり、横軸に経過時間、左側の縦軸に地熱水20のシリカ濃度、右側の縦軸に濁度Dと、pHと、Ca濃度をとったグラフである。
【0078】
図6において、(1)に示されるように、25時間地熱水20の流量を10L/minとして、CaOの添加量を1.0g/Lとした場合には、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度は、略260(mg/L)、濁度Dは略18(ppm)、pHは9と、Ca濃度は、略322(mg/L)となっている。
(2)に示されるように、(1)の処理を行った後に、65時間地熱水20の流量を10L/minとして、CaOの添加量を0.5g/Lとした場合には、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度は、略310(mg/L)、濁度Dは略110(ppm)、pHは9と、Ca濃度は、略240(mg/L)となっている。
(3)に示されるように、(1)と(2)の処理を行った後に、98時間地熱水20の流量を10L/minとして、CaOの添加量を0.1g/Lとした場合には、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度は、略440(mg/L)、濁度Dは略80(ppm)、pHは9と、Ca濃度は、125(mg/L)となっている。
【0079】
(4)に示されるように、(1)から(3)の処理を行った後に、49時間地熱水20の流量を10L/minとして、CaOの添加量を0.0g/Lとした場合には、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度は、略490(mg/L)、濁度Dは略120(ppm)、pHは8と、Ca濃度は、57(mg/L)となっている。
(5)に示されるように、(1)から(4)の処理を行った後に、73時間地熱水20の流量を5L/minとして、CaOの添加量を0.0g/Lとした場合には、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度は、略520(mg/L)、濁度Dは略10(ppm)、pHは9と、Ca濃度は、15(mg/L)となっている。
【0080】
(6)に示されるように、(1)から(5)の処理を行った後に、18時間地熱水20の流量を2.5L/minとして、CaOを添加せずに0.0g/Lとした場合には、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度は、略490(mg/L)、濁度Dは略0(ppm)、pHは9と、Ca濃度は、12(mg/L)となっている。
(7)に示されるように、(1)から(6)の処理を行った後に22時間地熱水20の流量を5L/minとして、CaOを添加せずに0.0g/Lとした場合には、越流水導出管50から得られた地熱水20のシリカ濃度は、略520(mg/L)、濁度Dは略0(ppm)、pHは7と、Ca濃度は、9(mg/L)となっている。
【0081】
したがって、この図6に示されるように、本実施形態に係る溶解物分離装置10によれば、始め添加物としてのCaOを添加した後、漸次添加量を減らし、その後に添加を停止させた場合には、越流水導出管50から得られる地熱水20に含まれるシリカの量が略500(mg/L)付近でとどまり、地熱水中に含まれているシリカを略200(mg/L)除去することができる。
さらに、越流水導出管50から得られる地熱水20中に含まれるCa濃度を直接河川や地面に地熱水を破棄することができる10(mg/L)程度にまで抑えることができる。
その上、CaOの添加を停止させることができるため、生成される沈殿物CaO・SiO2の生成量を極少量に抑えることができ、容易に沈殿物の処理を行うことができる。
【0082】
なお、上記実施の形態に置いては、振動装置31としてベビコンを使用した場合について説明したが、振動装置31は処理水に振動を与えることができるものであればベビコン以外であってもよい。
また、地熱水から溶解物としてのシリカを除去する溶解物分離装置10及び、溶解物分離方法を示したが、図示はしないが図1の攪拌機構23と沈殿槽24の間に、地熱発電設備等を設置して、これら溶解物分離装置10及び、溶解物分離方法を、地熱水を用いてタービンを駆動させる地熱発電設備に適用してもよい。
この場合には、溶解物分離装置10が地熱水20中のシリカを分離、除去し、シリカが除去された地熱水20が、地熱発電設備のタービンを駆動することとなり、タービンや、地熱発電設備の管路内にシリカが析出することが防止される。
【0083】
このため、管路内にシリカが析出することが防止されるため、良好に地熱水を流通させることができ、良好に発電を行うことができる。
特に、地熱水20を熱交換機に通して、ペンタン、アンモニア、水等の二次媒体を加熱し、加熱された二次媒体を用いてタービンを駆動させるバイナリ方式の地熱発電設備に、本実施形態に係る溶解物分離装置10を用いた場合には、熱交換器内に地熱水20中のシリカが析出することが防止され、熱交換を長期間安定して行うことができ、熱交換効率を維持することができる。
【0084】
また、本実施形態においては、地熱水20中に含まれる沈殿物を分離、除去する手段として、沈殿槽24を用いる場合について説明したが、遠心分離機等の分離手段を用いても良い。
さらに、溶解物分離装置10に設けられた攪拌装置27は、管路40と、管路40内に複数設けられた攪拌板41とから構成されているが、管路40を並列に、又は折り返して接続させることにより設置場所に合わせて適宜形状を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明に係る溶解物分離装置、地熱発電用設備、溶解物分離方法によれば、地熱水等の処理液に含まれるシリカ等の溶解物を分離、除去するに際しカルシウム等の添加物の供給量を抑えつつ溶解物を効率的に除去し、処理水を河川や地面に安全に戻すことが可能とされるとともに、処理水を使用する地熱発電設備等における溶解物の析出を抑制し、かかる設備を容易かつ低コストにて運転することができるため、産業上の利用可能性が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る溶解物分離装置の一実施形態を示す概念図である。
【図2】図1に示された溶解物分離装置の攪拌装置の側面図である。
【図3】攪拌装置に設けられた攪拌板の正面図である。
【図4】攪拌装置の斜視図である。
【図5】攪拌装置を軸方向から見た際の、正面図である。
【図6】CaOの量を各種変化させた際に、地熱水のシリカ濃度と、濁度と、pHと、Ca濃度の変化を示した図である。
【符号の説明】
【0087】
10 溶解物分離装置
24 沈殿槽
25 管路
27 攪拌装置
28 添加部
28a 返送管路
31 振動装置
41 攪拌板
46 穴部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解物を含む処理液が流通する管路と、該管路内に添加物を供給する添加部と、添加物と溶解物とにより生成された沈殿物を前記処理液から分離して沈殿物が除去された処理液を取り出す一方、前記添加部に前記沈殿物の少なくとも一部を前記添加物として供給する沈殿槽とを備え、前記処理液に含まれる溶解物を除去する溶解物分離装置において、
前記管路の軸線方向と交差する方向に揺動可能に支持された攪拌板と、前記管路内の処理液を振動させる振動装置とを備えてなることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載された溶解物分離装置において、
前記管路が断面円形状に形成され、前記攪拌板が円板状に形成され、該攪拌板の径が前記管路の径の80%以上95%以下とされていることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された溶解物分離装置において、
前記攪拌板には、複数の穴部が形成されていることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項4】
請求項3に記載された溶解物分離装置において、
前記穴部の総開口面積は、前記攪拌板の表面積の10%以上25%以下とされていることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載された溶解物分離装置において、
前記穴部は、前記攪拌板の中心を中心として外周縁部に向けて放射状に列設されていることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項6】
請求項5に記載された溶解物分離装置において、
攪拌板が前記管路の軸方向に向けて複数設けられており、少なくとも隣接する攪拌板に形成された穴部の位置が、前記軸方向から見て周方向にずれていることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項7】
請求項6に記載された溶解物分離装置において、
前記攪拌板同士の間隔は、前記攪拌板の半径の2倍から4倍以下とされていることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された溶解物分離装置において、
隣接する前記攪拌板に形成された穴部の径が異なることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載された溶解物分離装置において、
前記攪拌板の枚数Nが=1+L/(m×R)であることを特徴とする溶解物分離装置。
ここで、Nは、上記右辺で得られる値の整数値、mは2以上4以下の数、Rは攪拌板の半径
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載された溶解物分離装置において、
前記攪拌板は、前記管路の軸線方向に沿って延び前記攪拌板の揺動範囲を規制する規制部を備えてなる軸部が嵌挿されていることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載された溶解物分離装置において、
前記振動装置は、前記管路内の処理液を前記軸線方向に送る速度を、断続的に変化させることにより、前記処理液を140回/分以上200回/分以下振動させることを特徴とする溶解物分離装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載された溶解物分離装置を備えることを特徴とする地熱発電設備。
【請求項13】
溶解物を含む処理液を、沈殿物生成工程、沈殿物分離工程の順に流通させながら、
前記沈殿物生成工程にて、前記処理液に添加物を添加して、添加物と前記溶解物とから沈殿物を生成させ、
前記沈殿物分離工程にて、前記処理液から前記沈殿物を分離して沈殿物が除去された処理液を取出す一方、
前記分離された沈殿物の少なくとも一部を前記沈殿物生成工程の処理液に供給する溶解物分離方法であって、
前記沈殿物生成工程において前記処理液が攪拌されることにより沈殿物を微細化することを特徴とする溶解物分離方法。
【請求項14】
請求項13に記載された溶解物分離方法であって、
前記沈殿物が分離された後に、前記分離された沈殿物の一部を、前記添加物に代えて前記沈殿物生成工程に供給することを特徴とする溶解物分離方法。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載された溶解物分離方法において、
前記処理液は溶解物であるシリカを含む地熱水であることを特徴とする溶解物分離方法。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれかに記載の溶解物分離方法において、
前記沈殿物は、シリカ又はCaO・SiO2からなることを特徴とする溶解物分離方法。
【請求項17】
請求項13又は請求項14に記載された溶解物分離方法において、
前記処理液が、生活用水又は工業用水であることを特徴とする溶解物分離方法。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とするセメント用混和材。
【請求項19】
請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項20】
請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とする塗料。
【請求項21】
請求項15又は16に記載の溶解物分離方法によって得られた沈殿物を含むことを特徴とする記録シート用表面処理剤。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−843(P2006−843A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142410(P2005−142410)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】