説明

溶解物濃度の測定方法及び測定装置、並びに色調の検出方法及び検出装置

【課題】 光の透過率又は吸光度に基づいて試料中の溶解物濃度を測定するに当たり、装置の小型化を達成できるとともに、試薬や試料の量も少なくすることができる、溶解物濃度の測定方法を提供する。
【解決手段】 試料への試薬の添加により発色した被測定液S1等に光を透過させることにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、試料中の溶解物の濃度を測定する溶解物濃度の測定方法であって、被測定液S1中を透過した発光体31からの光を、被測定液S1を挟むように、発光体31に対向して置かれた反射板21で反射して、この反射光を、被測定液S1中に再度透過させた後、発光体31側にある受光体32で受光する。被測定液S1中を往復するように光を透過させるため、被測定液S1中を通過する光の通過距離を通常の2倍以上とすることができ、その分、被測定液S1による光の吸収量を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過率又は吸光度に基づいて試料中の溶解物濃度を測定する溶解物濃度の測定方法及び測定装置に関するものである。また、本発明は、被検出液による光の吸収作用に基づいて、この被検出液の色調を検出する色調の検出方法及び検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体中に溶解している溶解物の濃度は、吸光光度法により求められる場合も多い。この吸光光度法では、例えば、溶解物を有する試料に試薬を添加し、この試料を発色させて被測定液とした後、この被測定液を透明な測定セル中に収容する。つぎに、この被測定液に、測定セルを介して、発光体からの、吸収度合いの高い特定波長の光を透過させて、この被測定液に一部の光を吸収させた後、この透過光を受光体で受光し、このときの透過光強度を計測する。つづいて、このとき測定した透過光強度と、別に測定した、例えば透明液に対する特定波長の光の透過光強度とから吸光度(又は透過率)を求めることにより、この溶解物に関して予め既知濃度の試料により作成した、吸光度(又は透過率)と溶解物濃度との関係を示す検量グラフを用いて、試料中の溶解物濃度を求める。
【0003】
この場合、溶解物濃度の変化に対して、吸光度(又は透過率)の変化が大きく、これらの関係を示す検量グラフの傾斜が大きければ、被測定液中の溶解物濃度は、精度良く求めることができる。
【0004】
ここで、被測定液中の溶解物濃度を測定する場合、発光体と受光体とは、特許文献1に記載されているように、一般に、被測定液を収容した測定セルを挟むように、対向して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−275753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被測定液により吸収される光の量は、被測定液中を通過する光の通過距離によって定まり、通過距離が大きいほど大きくなる。そして、吸収される光の量が多くなると、溶解物の濃度当たりの光の透過量が小さくなり、溶解物濃度の変化に対して、透過率(又は吸光度)の変化は大きくなる。したがって、従来の被測定液中の溶解物濃度の測定方法では、発光体と受光体間に配置される測定セル内の被測定液の幅サイズを大きくせざるをえなかった。
【0007】
このため、従来の測定方法や測定装置では、測定セルの大型化に起因して、装置が大型化するとともに、試薬や試料の量も多くなってしまうという問題があった。
【0008】
一方、発光体からの光を被検出液に当て、この被検出液からの透過光強度を受光体で計測することにより、光の吸収作用に基づいて被検出液の色調を検出する場合でも、上記溶解物濃度を測定する場合と同様な問題が生じる。
【0009】
この発明は、以上の点に鑑み、光の透過率又は吸光度に基づいて試料中の溶解物濃度を測定するに当たり、装置の小型化を達成できるとともに、試薬や試料の量も少なくすることができる、溶解物濃度の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。また、この発明は、被検出液による光の吸収作用に基づいて、この被検出液の色調を検出するに当たり、装置の小型化を達成できるとともに、試料の量も少なくすることができる色調の検出方法及び検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の請求項1記載の発明は、試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物濃度によって着色した試料である被測定液に光を透過させることにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物の濃度を測定する溶解物濃度の測定方法であって、前記被測定液中を透過した発光体からの光を、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた反射板で反射して、この反射光を、前記被測定液中に再度透過させた後、前記発光体側にある受光体で受光することを特徴とする。
【0011】
この発明では、発光体から被測定液に向けて発せられた光は、一部の光が被測定液に吸収されつつ、この被測定液中を透過した後、発光体の反対側にある反射板で反射され、再度、一部の光が被測定液に吸収されつつ、この被測定液中を透過して、発光体側にある受光体にて受光される。すなわち、この発明では、発光体からの光を、被測定液中を往復するように透過させるため、被測定液中を通過する光の通過距離を通常の2倍以上とすることができ、被測定液による光の吸収量をその分増加させることができる。もちろん、この発明では、被測定液の光の吸光度等を算出する必要性から、受光体は、発光体から発せられた光の被測定液に対する透過光強度を計測するとともに、被測定液による吸収が生じていない場合(例えば、被測定液に替えて透明液を使用する場合)の発光体からの光の透過光強度をも計測し、このことによって、この被測定液の光の吸光度等が算出される。そして、事前に作成した溶解物濃度と光の吸光度等との関係から、試料中の溶解物の濃度が算出される。
【0012】
この発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被測定液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光、グリーン領域成分の光、及びブルー領域成分の光の何れかを受光するか、又はこれらを組み合わせた複数の色領域成分の光をそれぞれ受光することを特徴とする。
【0013】
この発明では、受光体は、被測定液を透過した発光体からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光の、何れかを受光して、その光の強度を計測する。このため、例えば、試薬の添加により被測定液が溶解物によって黄色に発色する場合には、受光体により、黄色の補色である青色、すなわち、ブルー領域成分の光の強度を計測し、この光の吸光度を算出することにより、被測定液中等の溶解物濃度を容易に求めることができる。
【0014】
また、この発明では、受光体は、被測定液を透過した発光体からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光とを組み合わせた、複数の色領域成分の光を受光して、それぞれの光の強度を計測している。このため、例えば、被測定液の色が、溶解物濃度の大小によって、赤色の補色から青色の補色に変わるように変化する場合には、受光体により、レッド領域成分の光とブルー領域成分の光の強度をそれぞれ計測し、これらの光の吸光度等を算出することにより、被測定液中の溶解物濃度を容易に求めることができる。もちろん、被測定液の色が単純で無い場合や、被測定液の色が溶解物濃度によって種々に変化する場合には、受光体により、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光の、何れをも受光し、3つの領域成分の光の吸光度等をそれぞれ算出して、被測定液中の溶解物濃度を求める。
【0015】
この発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の場合において、前記反射板の反射面の色は白色であることを特徴とする。
【0016】
この発明の請求項4記載の発明は、試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物によって着色している試料である被測定液に光を透過させることにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物の濃度を測定する溶解物濃度の測定装置であって、前記被測定液中に光を透過させる発光体と、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれ、前記被測定液中を透過した前記発光体からの光を反射させる反射板と、前記被測定液に対して前記発光体と同じ側に配置され、前記反射板により反射されて、前記被測定液中を再度透過した前記発光体からの光を受光する受光体とを有することを特徴とする 。
【0017】
この発明の請求項5記載の発明は、被検出液中を透過した発光体からの光を受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出方法であって、前記被検出液中を透過した前記発光体からの光を、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた反射板で反射して、この反射光を、前記被検出液中に再度透過させた後、前記発光体側にある受光体で受光し、かつ、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の、それぞれの強度を計測することを特徴とする。
【0018】
この発明では、受光体は、被検出液を透過した発光体からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光とグリーン領域成分の光とブルー領域成分の光とを別々に受光して、それぞれの光の強度を計測しているので、光の3原色に対応すると考えられる、これら3つ色領域成分の光の強度を用いて、被検出液による光の吸収作用により、被検出液の色調を容易に求めることができる。この場合、発光体からの光が、被検出液中を往復するように透過するため、被検出液中を通過する光の通過距離は通常の2倍以上となり、その分、被検出液による光の吸収量は増加する。なお、例えば、透明液中を透過する発光体からの光を受光体により受光して、透過率が100%に近い透過光強度をも計測することにより、この透過光強度をもとに吸光度や透過率を算出し、これらの吸光度や透過率に基づいて被検出液の色調を検出するようにしてもよい。
【0019】
この発明の請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の場合において、前記反射板の反射面の色は白色であることを特徴とする。
【0020】
この発明の請求項7記載の発明は、被検出液中を透過した発光体からの光を受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出装置であって、前記被検出液中に光を透過させる発光体と、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれ、前記被検出液中を透過した前記発光体からの光を反射させる反射板と、前記被検出液に対して前記発光体と同じ側に配置され、前記反射板により反射されて、前記被検出液中を再度透過した前記発光体からの光を受光する受光体とを有し、かつ、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の、それぞれの強度を計測するためのフィルタを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明の請求項1及び請求項4記載の発明によれば、発光体からの光を、被測定液中を往復するように透過させ、被測定液中を通過する光の通過距離を通常の2倍以上とすることができるので、発光体や受光体と反射板との間にある被測定液の幅サイズ、すなわち、被測定液を保有する測定セルの幅サイズを小さくでき、装置の小型化を図ることができるとともに、測定セル中の被測定液の流路面積を小さくできるので、被測定液となる試料や必要な試薬の量も減らすことができる。また、この発明によれば、従来のように、発光体と受光体とを被測定液を介して対向させるように配置する必要がなく、発光体と受光体とを同じ側に配置できるので、発光体と受光体との光軸合わせが容易となり、かつ、発光体と受光体とを一体となるように製作できる。このため、この発明では、濃度の測定を容易になすことができるとともに、測定装置の製作も容易になすことができる。
【0022】
この発明の請求項2記載の発明によれば、どのような溶解物の濃度を測定する場合でも、簡単な1組の発光体と受光体があればよく、例えば従来のように、溶解物の種類毎に波長の異なる発光体を使用したり、濃度によって色変わりを生じる溶解物濃度を測定する場合に複数組の発光体や受光体を使用する必要がないので、測定コストの低減や測定装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。また、この発明によれば、発光体は、可視光域を含む光を発すればよく、従来のもののように特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、いつも精度の良い測定を行うことができる。
【0023】
この発明の請求項3記載の発明によれば、反射面が特定の波長の光のみを吸収することがないので、反射の影響を小さく抑えることができる。
【0024】
この発明の請求項5及び請求項7記載の発明によれば、被検出液の色調がどのようなものであっても、色調の検出には1組の発光体と受光体とがあればよく、検出する色調の数によって複数組の発光体や受光体を用いたり、色変わりを生じる色調を検出する場合に複数組の発光体や受光体を用いる必要がないので、検出コストの低減や検出装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。また、この発明によれば、発光体は、可視光域を含む光を発すればよく、特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、いつも精度の良い色調の検出を行うことができる。
【0025】
さらに、この発明によれば、発光体からの光を、被検出液中を往復するように透過させ、被検出液中を通過する光の通過距離を通常の2倍以上とすることができるので、発光体や受光体と反射板との間にある被検出液の幅サイズ、すなわち、被検出液を保有する測定セルの幅サイズを小さくでき、検出装置の小型化を図ることができるとともに、測定セル中の被検出液の流路面積を小さくできるので、被検出液となる試料の量も減らすことができる。
【0026】
この発明の請求項6記載の発明によれば、反射面が特定の波長の光のみを吸収することがないので、反射の影響を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施の形態に係る濃度測定装置の分解斜視図である。
【図2】濃度測定装置の作用説明図である。
【図3】受発光部内の電気配線図である。
【図4】他の濃度測定装置の説明図である。
【図5】濃度測定装置を使用した場合と分光光度計を使用した場合における、リン酸イオン濃度に対する吸光度の測定値を示す図であり、(a)はリン酸イオン濃度と吸光度の値とを表にまとめたものであり、(b)はリン酸イオン濃度と吸光度との関係をグラフで示したものである。
【図6】濃度測定装置を使用した場合と分光光度計を使用した場合における、カルシウム硬度に対する吸光度の測定値を示す図であり、(a)はカルシウム硬度と吸光度の値とを表にまとめたものであり、(b)はカルシウム硬度と吸光度との関係をグラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
実施形態1
図1はこの発明の一実施の形態に係る濃度測定装置の主要部を示しており、図2はこの濃度測定装置の作用説明図である。
【0029】
濃度測定装置1は、例えば、工業用水や生活用水等に溶解する、溶存酸素、リン酸、アルカリ度成分、硬度成分、シリカといった溶解物の濃度を、吸光度や光の透過率を用いて簡便に測定するものである。この濃度測定装置1は、図1で示されるように、内部に被検出液S1や調整液S0が流される測定部2と、測定部2の一側面に取り付けられ、測定部2側への発光と測定部2からの反射光の受光とを行う受発光部3と、測定部2に被検出液S1や調整液S0を供給する液供給ライン4と、測定部2からの被検出液S1や調整液S0を排出する液排出ライン5と、受発光部3からの出力が入力される演算処理装置6(図3参照)とを有している。なお、液供給ライン4には、チューブポンプ40とストレーナ41とが設けられている。
【0030】
測定部2は、図1及び図2で示されるように、左右幅の小さい箱状のものであり、左側面部が厚さt1=2mmの白い反射板21から形成され、この反射板21に対向する、内面黒色の右側面部22も厚さt2=2mmの板材で形成されているが、この右側面部22の中央部には、高さHが18mmで、幅Wが8mmの長方形状のアクリル製透明部23が形成されている。測定部2の前面部、後面部、上面部、下面部とも、所定厚さで内面が黒色の板材で形成されており、下面部には、液供給ライン4が連結され、上面部には、液排出ライン5が連結されている。測定部2の内面の左右幅サイズ、すなわち、被測定液S1等の流路の左右幅サイズTは、6mmに設定されている。また、この測定部2には、透明部23と、この透明部23を反射板21側に投影した被測定液S1の長方形流路部及び反射板21の長方形部とで、容量が0.7mLの測定セルGが形成されている。なお、測定部2の内面の左右幅サイズTは、発光体31や受光体32の形状や性能、溶解物濃度によって変更できるようになっている。
【0031】
受発光部3は、測定部2側に開口30aが設けられたケーシング30内に、発光体31、受光体32、配線基盤等を収納したもので、電源供給用及び出力用のケーブル33が、ケーシング30からが突出するように設けられている。発光体31は、測定セルG内に光を発し、この光を被測定液S1中や調整液S0中に透過させるものである。この発光体31には、可視光域を含んだ光(白色光)を発する、例えば、発光ダイオード(LED)のような光源が使用される。
【0032】
受光体32は、発光体31から発せられた光の、被測定液S1や調整液S0からの透過光を受光して、これらの透過光の透過光強度を計測するものである。この受光体32は、3つのフォトダイオードと、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光(以下赤色帯域光という)、グリーン領域成分の光(以下緑色帯域光という)、及びブルー領域成分の光(以下青色帯域光という)のみをそれぞれ透過させる3つのカラーフィルタF、すなわち、赤色(R)フィルタ、緑色(G)フィルタ、青色(B)フィルタとを有している。すなわち、この受光体32には、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1と、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2と、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3とを有したRGBカラーセンサが使用されており(図3参照)、この受光体32により、被測定液S1等を透過した光のうち、各フィルタを透過した赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度が同時に計測される。なお、Rフィルタは、赤色帯域光のうち赤色光を最も透過し、Gフィルタは、緑色帯域光のうち緑色光を最も透過し、Bフィルタは、青色帯域光のうち青色光を最も透過する。
【0033】
また、受光体32は、図1や図2で示されるように、測定セルGに対して、発光体31と同一側に配置されている。このため、受光体32は、発光体31から発せられた被測定液S1中の透過光が、被測定液S1を挟んで発光体31に対向する反射板21により反射され、被測定液S1中を再度透過したときの透過光を受光する。この場合、図2で示されるように、発光体31と受光体32とは、発光体31の光軸K1が、反射板21に対してα=略45度をなすように向けられるとともに、受光体32の光軸K2が、反射板21に直行するように向けられ、かつ、発光体31の光軸K1の反射板21との交点Pと、受光体32の光軸の反射板21との交点とが略一致するように位置決めされている。このため、反射板21で反射される、発光体31からの主要光は、受光体32には達せず、受光体32は、発光体31からの主要光周りの周辺光による反射光の一部や反射板21で乱反射された光の一部を受光する。
【0034】
図3は測定部2内の回路図である。図中、符号D1は、Rフィルタを備えたフォトダイオードであり、符号D2は、Gフィルタを備えたフォトダイオードであり、符号D3は、Bフィルタを備えたフォトダイオードであり、これらが一体になって、受光体32を形成している。また、図中、符号Lは、発光体31となる発光ダイオード(LED)であり、符号C1,C2,C3は、各フォトダイオードD1,D2,D3用の主回路であり、符号O1,O2,O3は、各フォトダイオードD1,D2,D3用のオペアンプ(演算増幅器)である。受光体32から出力された各帯域光の透過光強度の信号は、オペアンプO1,O2,O3を通って、演算処理装置6に伝達される。
【0035】
演算処理装置6は、受光体32から出力された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の光の強度信号に基づいて、各帯域光についての時間平均強度を算出したり、特定色が吸収された光の透過光強度と吸収のない光の透過光強度とを用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率を算出したり、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率から溶解物濃度を算出する演算部を有すとともに、溶解物の種類毎に、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率と溶解物濃度との関係を示す表等を記憶する記憶部や、溶解物濃度等を表示する表示部を有している。
【0036】
つぎに、この濃度測定装置1を用いて試料中の溶解物(例えば、リン酸イオン)の濃度を測定する手順について説明する。
まず、リン酸3ナトリウム(Na3PO4)を溶解した一定量(40mL)の試料に、試薬(モリブデン酸アンモニウムとアステル酸の混合液)を一定量(例えば4mL)添加後、この試料を、20〜40℃の状態で約15分間放置し充分に発色させて、被測定液S1を作る。この場合、被測定液S1の色は、溶解物(リン酸イオン)の濃度によって濃淡が異なる。
【0037】
つづいて、光の吸収の生じない透明な調整液S0(例えば、純水や発色前の透明な試料)を、チューブポンプ40(例えば、EYELA製SMP21)を使用して、液供給ライン4から測定部2に、10mL/分の流量で3分間程度通水した後、通水を止め、1分間の間、発光体31からの光を、測定セルGの透明部23を介して、被測定液S1中に照射(発射)させる。このことにより、発光体31からの可視光域を含んだ光は、被測定液S1を透過して反射板21で反射された後、再度被測定液S1を透過して、受光体32により受光される。この場合、受光体32は、発光体31からの被測定液S1の透過光を、RGBの3つのカラーフィルタFを介して受光するので、受光体32は、可視光域の光の波長帯を略3分割した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度を同時に計測する。そして、演算処理装置6は、1分間にわたる受光体32からの出力値を平均して、被測定液S1による光の吸収が無い場合(透過率100%)の、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均の光強度を算出する。
【0038】
つぎに、試薬を加えて一定時間放置し、充分に発色した被測定液S1を、上記調整液S0の場合と同様に、測定部2(測定セルG)に10mL/分の流量で3分間通水して、通水を止め、その後1分間の間、発光体31からの光を、被測定液S1中に透過させて、受光体32により受光させる。受光体32は、受光時に、被測定液S1により一部の光の吸収がなされた、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度を計測する。演算処理装置6は、1分間にわたる受光体32からの出力値を平均して、被測定液S1により一部の光の吸収がなされた、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均光強度を算出した後、透過率100%の調整液S0を用いて計測された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均光強度を用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光についての、それぞれの吸光度(又は透過率)を算出する。そして、演算処理装置6は、特定の溶解物(リン酸イオン)について記憶している、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光についての、それぞれの吸光度(又は透過率)と溶解物の濃度との関係から、現在の被測定液S1中のその溶解物の濃度を算出して表示する。
【0039】
ここで、被測定液S1は、例えば、溶解物の濃度に比例するような色の濃さを示しており、発色した色光の補色光を、この濃さに比例する割合で吸収する。したがって、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)と、被測定液S1中の溶解物の濃度との関係を事前に求めておけば、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)により、被測定液S1中の溶解物濃度は容易に算出できる。
【0040】
なお、被測定液S1が、試薬の添加により、例えば黄色に発色している場合は、この被測定液S1は、赤色帯域光と緑色帯域光をほとんど吸収せず、補色光である青色帯域光のみを吸収すると考えられるので、光の強度は、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3により計測される青色帯域光のみを考慮すればよい。また、被測定液S1が、例えば、青色に発色している場合は、この被測定液S1は青色帯域光をほとんど吸収せず、赤色帯域光と緑色帯域光を吸収すると考えられるので、光の強度は、RフィルタとGフィルタとを備えたフォトダイオードD1,D2により計測される赤色帯域光と緑色帯域光の強度を考慮すればよい。
【0041】
また、被測定液S1の色は、例えば、溶解物の濃度に従って、特定色から他の色にしだいに色変わりする場合もある。この場合でも、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)と、被測定液S1中の溶解物の濃度との関係を事前に求めておけば、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)により、被測定液S1中の溶解物濃度は容易に算出できる。
【0042】
つぎに、濃度測定装置1を用いて試料中の溶解物濃度を測定する方法(以下濃度測定方法という)の作用効果について説明する。
この濃度測定方法では、発光体31から被測定液S1に向けて発せられた光は、一部の光が被測定液S1に吸収されつつ、この被測定液S1中を透過した後、発光体31の反対側にある反射板21で反射され、再度、一部の光が被測定液S1に吸収されつつ、この被測定液S1中を透過して、発光体31側にある受光体32にて受光される。すなわち、この濃度測定方法では、発光体31からの光を、被測定液S1中を往復するように透過させるため、被測定液S1中を通過する光の通過距離を通常の2倍以上とすることができ、被測定液S1による光の吸収量をその分増加させることができる。
【0043】
このため、この濃度測定方法では、発光体31や受光体32と反射板21との間にある被測定液S1の幅サイズ、すなわち、測定セルGの流路断面の幅サイズTを小さくでき、このことによって、濃度測定装置1の小型化を図ることができるとともに、測定セルG内の流路断面を小さくできるので、被測定液S1用の試料や必要な試薬の量も減らすことができる。また、この濃度測定方法によれば、従来のように、発光体31と受光体32とを被測定液S1を介して対向させるように配置する必要がなく、発光体31と受光体32とを同じ側に配置できるので、発光体31と受光体32との光軸合わせが不要となり、かつ、発光体31と受光体32とを一体となるように容易に製作できる。このため、この濃度測定方法では、濃度の測定を容易になすことができるとともに、濃度測定装置1の製作も容易になすことができる。
【0044】
また、この濃度測定方法では、受光体32が、被測定液S1を透過した発光体31からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とを受光して、それぞれの光の強度を計測し、このことによって、これらの色帯域光の吸光度(又は透過率)を算出している。このため、この濃度測定方法では、どのような溶解物濃度を測定する場合でも(例えば、被測定液S1の色が何色であっても、又は、被測定液S1の色が、溶解物の濃度の大小によって特定色から他の色に変化する場合でも)、簡単な1組の発光体31と受光体32があればよく、例えば従来のように、溶解物の種類毎に波長の異なる発光体を使用したり、濃度によって色変わりを生じる溶解物濃度を測定する場合に複数組の発光体や受光体を使用する必要がないので、測定コストの低減や測定装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。
【0045】
さらに、この濃度測定方法では、発光体31は、可視光域を含む光を発すればよく、従来のもののように特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、この発光体31を用いて、いつも精度の良い測定を行うことができる。
【0046】
また、この濃度測定方法では、発光体31や受光体32の受発光部に汚れや泡等が付着して光の減衰効果が生じても、従来の測定方法で使用される、発光体(特定波長の光を発する)や受光体に比べて、その影響を受けにくく、測定に支障を生じさせにくい。
【0047】
さらに、この濃度測定方法では、反射板21の反射面の色を白色としているので、反射面が特定の波長の光のみを吸収することがなく、光の反射の影響を小さく抑えることができるとともに、鏡面に比べて、反射板21により、受光体32に達する乱反射光を増加させることができる。
【0048】
なお、受光体32は、被測定液S1の色が、赤色の補色、緑色の補色、又は青色の補色のみを示す場合には、それぞれ、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3のうち、何れか1つを有しておればよい。また、受光体32は、被測定液S1の色が上記3つの補色の中間色を示す場合、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3のうち、何れか2つのものを有しておればよい。
【0049】
さらに、受光体32は、RGBカラーセンサ以外に、CCDセンサやCMOSセンサを用いたものであってもよい。
【0050】
また、濃度測定方法に関する以上の説明は、濃度測定装置1についても、同様に当てはまる。
【0051】
さらに、図4で示されるように、液供給ライン4に、ストレーナ41とともに定流量弁42や電磁弁43を設け、これらを使用して、被測定液S1を測定セルGに供給するようにしてもよい。また、図4で示されるように、測定部2に試薬供給ライン8を設け、ポンプ80を用いて、タンク81中の試薬を直接、測定セルGに供給して、この試薬と液供給ライン4から供給された試料とを測定セルG中で撹拌し、この測定セルG中で、試薬により発色した被測定液S1を作るようにしてもよい。
【0052】
また、以上の説明では、試料へ試薬を添加することにより、溶解物濃度に従って発色させた被測定液S1について述べているが、試料自身が溶解物により着色し、その濃淡等がこの溶解物濃度に従って定まる場合には、試料自身が被測定液S1となり、試薬の添加は不要である。
【0053】
さらに、濃度測定装置1を、例えば、軟水器出口の水質(カルシウム硬度)を測定する硬度センサーとして使用し、カルシウム硬度が所定値より高い場合には、軟水器の切り換えを行ったり、薬注ポンプを作動させて、軟水器出口ラインに薬液を注入するようにしてもよい。
【0054】
つぎに、この濃度測定方法による濃度の測定結果と、分光光度計を用いたJIS分析法による濃度の測定結果とを、具体的な測定データを示しつつ比較説明する。
[測定例1]
まず、リン酸イオン濃度の測定について説明する。
【0055】
リン酸3ナトウムを純水に溶解して、リン酸イオン濃度が、0、1、2、3、4、5mg/Lとなるように調整した試料を準備し、これに、JIS8224−1993のモリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法(光源の波長は880nm)に基づき、試薬を添加し、この試料を発色させて被測定液S1を作る。つづいて、これらの被測定液S1の吸光度を、同上のJIS8224−1993に基づき、分光光度計(島津製作所製UV1700)を用いて測定した。この場合、参考として、赤色光、緑色光、青色光に対応する、波長が、630nm、550nm、470nmの光源を用いた吸光度の測定も行った。つづいて、これらの被測定液S1の吸光度を、濃度測定装置1を使用した、この濃度測定方法により、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とについて、それぞれ測定した。この場合、測定セルGに試薬添加前の透明な試料を通液した際の発光体31からの光を反射板21で反射して、この反射光を受光体32で受光した場合の各帯域光の強度を、透過率100%のものとした。この透過率100%に関する測定は、溶解物の複数の濃度に対して1回だけ行ってもよいが、測定精度を上げるためには、濃度毎に行うのがよい。
【0056】
図5の(a)は、この濃度測定方法と分光光度計を用いた方法とで測定された、種々のリン酸イオン濃度に対する吸光度の値を示している。また、図5の(b)は、この濃度測定方法で測定された赤色帯域光と、分光光度計を用いた方法で測定された、波長が880nmと630nmの光とについての、吸光度とリン酸イオン濃度との関係をグラフで示している。
【0057】
図5の(a)から、分光光度計を用いた方法では、光源の波長が880nm(赤外光)の場合に、リン酸イオン濃度に対して吸光度の変化が大きく、特定の光源を1つ選択する場合には、波長が880nmの光源を選択することが好ましいことがわかる。また、図5の(a)から、この濃度測定方法では、赤色帯域光の場合が、緑色帯域光や青色帯域光の場合に比べて、リン酸イオン濃度に対して吸光度の変化が大きく、特定の帯域光を1つ選択する場合には、赤色帯域光を選択することが好ましいことがわかる。また、図5の(b)から、赤色帯域光や波長が630nmの光の場合でも、リン酸イオン濃度に対する吸光度の変化が大きい(グラフの傾きが大きい)ので、これらの光を用いた場合でも、リン酸イオン濃度の測定に支障がないことがわかる。なお、赤色帯域光の場合は、波長が630nmよりも長い波長領域の光の影響をうけることにより、波長が630nmの光の場合より、吸光度の変化が大きくなっていると考えられる。
【0058】
[測定例2]
つぎに、カルシウム硬度の測定について説明する。なお、カルシウム硬度成分が溶解している試料は、試薬(トリエタノールアミン80%、エタノール20%、エリオクロムブラックT0.025%)を添加すると発色するが、その色は、硬度の値(濃度)によって変化する。
【0059】
塩化カルシウム2水和物を純水に溶解して、カルシウム硬度として、0、2、5、10mgCaCO3/Lに調整した試料を準備し、これらの試料50mgに4mgの試薬を添加し、充分に撹拌・発色させて被測定液S1を作る。つぎに、これらの被測定液S1の吸光度を、波長が、630nm、550nm、470nmの光を用いて、分光光度計(島津製作所製UV1700)により測定した。つづいて、これらの被測定液S1の吸光度を、濃度測定装置1を使用した、この濃度測定方法により、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とについて、それぞれ測定した。この場合、測定セルGに試薬添加前の透明な試料を通液した際の発光体31からの光を反射板21で反射して、この反射光を受光体32で受光した場合の各帯域光強度を、透過率100%のものとした。
【0060】
図6の(a)は、この濃度測定方法と分光光度計を用いた方法とで測定された、種々のカルシウム硬度に対する吸光度を示し、図6の(b)は、この濃度測定方法と分光光度計を用いた方法で測定された吸光度と、カルシウム硬度との関係をグラフで示している。
【0061】
図6の(b)から、分光光度計を用いた方法では、波長が630nmの光の場合、カルシウム硬度の上昇に対し吸光度が減少するようにグラフN1が変化し、波長が550nmの光の場合、カルシウム硬度の上昇に対し吸光度が上昇するようにグラフN2が変化し、かつ、カルシウム硬度が一定値を超えると、グラフN1とグラフN2とが交差して、波長550nmの光の吸光度が波長630nmの光の吸光度より大きくなることが分かる。一方、この濃度測定方法でも、吸光度のグラフに関して、赤色帯域光の場合のグラフM1をグラフN1に近づけることができ、緑色帯域光の場合のグラフM2をグラフN2に近づけることができるので、事前にカルシウム硬度に関する吸光度の検量グラフを赤色帯域光と緑色帯域光について作成しておけば、赤色帯域光と緑色帯域光の各吸光度から、カルシウム濃度を容易に算出できる。なお、(赤色帯域光の吸光度/緑色帯域光の吸光度)の値とと、カルシウム硬度との関係を示す検量グラフを作成しておけば、これらの帯域光の吸光度の比の値を求めることにより、カルシウム硬度を簡易に算出できる。
【0062】
実施形態2.
ところで、濃度測定装置1は、被検出液S2の色調(色合い)を検出する場合にも使用できる。そこで、以下に、この濃度測定装置1と同様な色調検出装置1Aを使用した、被検出液S2の色調の検出方法(以下、色調検出方法という)について説明する。なお、色調検出装置1Aについて、濃度測定装置1と同一機能を有する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
まず、色調検出装置1Aと濃度測定装置1との違いについて説明する。
色調検出装置1Aは、種々の色調を検出する必要があることから、その受光体32は、例えば、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1と、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2と、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3の、3つのフォトダイオードを有している必要がある。また、色調検出装置1Aの演算処理装置6Aは、被検出液S2の種々の色調に対して、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率との関係を示す表等を記憶する記憶部と、受光体32から出力された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各光強度信号に基づいて、時間平均の光強度を算出したり、特定色が吸収された光の強度と吸収のない光の強度(代表的な値を記憶しておいてもよい)とを用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率を算出する演算部と、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率に基づいて、被検出液S2の色調を上記記憶部から選択する選択部と、選択された色調を色番号や色見本等で表示する表示部とを有している。
【0064】
なお、色調検出装置1Aが特定色調の検出に特化されている場合には、演算処理装置6Aは、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光について、吸光度や透過率を算出せず、それぞれの透過光強度につき一定の演算(例えば、赤色帯域光強度/緑色帯域光強度、赤色帯域光強度/青色帯域光強度など)を行って、その演算値をもとに、被検出液が特定色調をしているか否かの検出を行うようにしてもよい。
【0065】
この色調検出方法では、被検出液S2の色調を検出する場合に、発光体31から被検出液S2に向けて発せられた光は、一部の光が被検出液S2に吸収されつつ、この被検出液S2中を透過した後、発光体31の反対側にある反射板21で反射され、再度、一部の光が被検出液S2に吸収されつつ、この被検出液S2中を透過して、発光体31側にある受光体32にて受光される。すなわち、この色調検出方法では、発光体31からの光を、被検出液S2中を往復するように透過させるため、被検出液S2中を通過する光の通過距離を通常の2倍以上とすることができ、被検出液S2による光の吸収量をその分増加させることができる。このため、この色調検出方法では、発光体31や受光体32と反射板21との間にある被検出液S2の幅サイズ、すなわち、測定セルGの流路断面の幅サイズTを小さくでき、このことによって、色調検出装置1Aの小型化を図ることができるとともに、測定セルG内の流路断面を小さくできるので、被検出液S2となる試料や必要な試薬の量も減らすことができる。
【0066】
また、この色調検出方法では、受光体32は、被測定液S1を透過した発光体3からの光のうち、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とを受光して、それぞれの光の強度を計測する。このため、この色調検出方法では、どのような色調を測定する場合でも、又は、被検出液S1の色調が時間とともに変化する場合でも、簡単な1組の発光体31と受光体32があればよく、検出する色調の数によって波長の違う複数の発光体を用いる必要がないので、検出コストの低減や検出装置の小型化を図ることができる。このため、複数の発光体を同時に使用する場合に生じる光の相互干渉を生じさせることもない。
【0067】
さらに、この色調検出方法では、発光体31は、可視光域を含む光を発すればよく、特定波長の光のみを発する必要がないので、発光体(例えば、LED)の製品ロットによる波長のばらつきや、出力の経時変化による影響を受けにくく、この発光体31を用いて、いつも精度の良い測定を行うことができる。
【0068】
また、この色調検出方法では、発光体31や受光体32の受発光部に汚れや泡等が付着して光の減衰効果が生じても、従来の測定方法で使用される、発光体(特定波長の光を発する)や受光体に比べて、その影響を受けにくく、測定に支障を生じさせにくい。
【0069】
さらに、この色調検出方法では、反射板21の反射面の色を白色としているので、反射面が特定の波長の光のみを吸収することがなく、光の反射の影響を小さく抑えることができる。
【0070】
なお、色調検出方法に関する以上の説明は、色調検出装置1Aについても、同様に当てはまる。また、受光体32は、RGBカラーセンサ以外に、CCDセンサやCMOSセンサを用いたものであってもよく、色フィルタについても、赤、青、緑以外の帯域のものを用いても同様な効果を得ることができる。
【0071】
つぎに、この色調検出方法による具体的な色調の検出例について説明する。
紙パルプの製造工程中には、スメルトを溶解した液(緑液)をクラリファイヤーに導入し、この液からドレッグスを分離する清澄工程があるが、クラリファイヤーでの上澄み液の色が緑がかっていると、経験的に、清澄処理が良好になされている状況にあり、赤色を帯びていると清澄処理が不十分であって、後の工程に影響を与えることが知られている。そこで、清澄処理が不十分なクラリファイヤーの上澄み液に、清澄処理を促進する薬剤(例えば、カチオンポリマー)を添加したもの(以下、処理済上澄み液という)と添加しないもの(以下、未処理上澄み液という)とで、上澄み液の色の変化(透過率の変化)を、色調検出装置1Aを用いた、この色調検出方法により検証した。
【0072】
清澄処理が不十分な上澄み液を1Lずつ2L採取し、この上澄み液の一方にカチオンポリマーを20mg/L添加して撹拌し、その後直ちに、この処理済み上澄み液と未処理上澄み液を、チューブポンプ40を用いて、色調検出装置1Aの測定セルGに通して、色調(透過率)の検出(測定)を行った。
【0073】
未処理上澄み液では、時間の経過とともに、受光体32からの出力値(各帯域光の透過光強度)が上昇して安定するが、処理済上澄み液では、受光体32からの出力値は、一旦上昇した後、当初の値まで低下する。これは、未処理上澄み液では、時間の経過とともに析出やフロックの生成が生じて、光の透過量が増加するためと考えられ、処理済上澄み液では、薬剤の添加により、析出やフロックの生成が抑えられているためと考えられる。
【0074】
未処理上澄み液では、(赤色帯域光透過率/緑色帯域光透過率)の値と、(赤色帯域光透過率/青色帯域光透過率)の値とが、時間の経過とともに上昇したが、処理済上澄み液では、これらの値に変化はなかった。すなわち、未処理上澄み液では、時間の経過とともに赤味が増していることを示し、処理済上澄み液では、薬剤添加により、緑色から赤色への変化が抑制されていることを示している。
【0075】
以上のように、この色調検出方法では、各帯域光の出力値(光強度、透過率、吸光度)を用いて被検出液S2の性状の変化を容易に捉えることができるとともに、薬剤の添加効果についても同様に判定することができる。したがって、この色調検出方法を用いて、薬品の薬注制御や濃度管理も容易に可能となる。
【0076】
なお、この色調検出方法により、着色液(例えば、不凍液)へのプロセス側へのリーク検知や、染色工場、食品工場(お茶など)、メッキ工場、塗装ブースなどの排水処理水の管理を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 濃度測定装置
1A 色調測定装置
31 発光体
32 受光体
21 反射板
F フィルタ
H1 被測定液
H2 被検出液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物によって着色している試料である被測定液に光を透過させることにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物の濃度を測定する溶解物濃度の測定方法であって、
前記被測定液中を透過した発光体からの光を、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた反射板で反射して、この反射光を、前記被測定液中に再度透過させた後、前記発光体側にある受光体で受光することを特徴とする溶解物濃度の測定方法。
【請求項2】
前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被測定液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光、グリーン領域成分の光、及びブルー領域成分の光の何れかを受光するか、又はこれらを組み合わせた複数の色領域成分の光をそれぞれ受光することを特徴とする請求項1記載の溶解物濃度の測定方法。
【請求項3】
前記反射板の反射面の色は白色であることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の溶解物濃度の測定方法。
【請求項4】
試料への試薬の添加により発色した被測定液、又は溶解物により着色している試料である被測定液に光を透過させることにより、光の透過率又は吸光度に基づいて、前記試料中の溶解物の濃度を測定する溶解物濃度の測定装置であって、
前記被測定液中に光を透過させる発光体と、前記被測定液を挟むように、前記発光体に対向して置かれ、前記被測定液中を透過した前記発光体からの光を反射させる反射板と、前記被測定液に対して前記発光体と同じ側に配置され、前記反射板により反射されて、前記被測定液中を再度透過した前記発光体からの光を受光する受光体とを有することを特徴とする溶解物濃度の測定装置。
【請求項5】
被検出液中を透過した発光体からの光を受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出方法であって、
前記被検出液中を透過した前記発光体からの光を、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれた反射板で反射して、この反射光を、前記被検出液中に再度透過させた後、前記発光体側にある受光体で受光し、
かつ、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の、それぞれの強度を計測することを特徴とする色調の検出方法。
【請求項6】
前記反射板の反射面の色は白色であることを特徴とする請求項5記載の色調の検出方法。
【請求項7】
被検出液中を透過した発光体からの光を受光体にて受光することにより、前記被検出液の色調を検出する色調の検出装置であって、
前記被検出液中に光を透過させる発光体と、前記被検出液を挟むように、前記発光体に対向して置かれ、前記被検出液中を透過した前記発光体からの光を反射させる反射板と、前記被検出液に対して前記発光体と同じ側に配置され、前記反射板により反射されて、前記被検出液中を再度透過した前記発光体からの光を受光する受光体とを有し、
かつ、前記発光体は可視光域を含んだ光を発するとともに、前記受光体は、前記被検出液を透過した前記発光体からの光のうち、前記可視光域の光を略3分割して得られる、レッド領域成分の光と、グリーン領域成分の光と、ブルー領域成分の光の、それぞれの強度を計測するためのフィルタを有していることを特徴とする色調の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−181150(P2010−181150A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22121(P2009−22121)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】