説明

滑らかな無機表面に易洗浄特性を耐摩耗的及び耐候的に施与するための貯蔵安定性のコーティング組成物

本発明は、a)一般式(I)CF3(CF2n(CH22Si(CH3y3-y(I)[式中、Xは塩素、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びn−プロポキシの系列からの基であり、nは3、4、5、6、7、8及び9の系列からの数であり、yは0又は1である]の少なくとも1種の加水分解可能なフルオロアルキルシラン、b)HCl、c)水、d)イソプロパノール、及びe)ドデカンの成分をベースとし、かつシラン成分(a):水のモル比が1:4.5〜1:9であることを特徴とする特別なコーティング組成物に関する。本発明は更に、そのような組成物の製造法、及び、滑らかな無機基材表面に耐摩耗性及び耐候性の易洗浄性コーティングを施与するための該組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に撥油性、撥水性及び撥汚性コーティングを施与するための新規のコーティング組成物に関する。本発明は更に、新規の組成物の製造方法及びその使用に関する。
【0002】
撥油特性、撥水特性及び撥汚特性を有する表面は、今日の技術において「易洗浄性(easy to clean)」と呼称される。
【0003】
アルキルシラン及び/又はフルオロアルキルシランをベースとする易洗浄性コーティングは十分に公知である(他の多数の刊行物のうち、GB GB935380、US3,012,006、US3,354,022、JP2001/115151、DE834002、DE1518551、DE3836815、DE4218657、DE19544763、EP0492417、EP0513727、EP0548775、EP0657393、EP0672779、EP0799873、EP0846716、EP1033395、EP1101787、WO95/23830、WO00/063312及びWO05/014731から)。
【0004】
既存のコーティング系のうち、フルオロオルガノ官能性シラン及び/又はシロキサンをベースとするコーティング系は、その易洗浄特性の点から最適である。易洗浄コーティングを製造するために記載された系は、相応する100%系、溶剤含有系、エマルション及び水性系を含む。
【0005】
EP0825157A2、EP0947478A1及びWO99/014284からのコーティング系は、加水分解可能なフルオロアルキル官能性オルガノシランをベースとする水解物又は縮合物を含有し、かつ、意図的に導かれた加水分解及び縮合と共に、触媒としての硝酸の使用が強調されている。他の酸は触媒として殆ど不適当であると記載されている。この種の組成物は、更に、有機溶剤、例えば低級アルコール、エーテル及びケトンを含有してよい。
【0006】
既に市販されている製品は、これを用いて得られたコーティングにおいて、比較的短い貯蔵安定性又は低い耐摩耗性を有するに過ぎない。更に、多くの系は、ほんの短時間後に、特に疎油効果の点でその活性を失う。更に、より良好な耐候性がますます求められている。
【0007】
本発明の課題は、易洗浄性の適用のための、最大の貯蔵安定性と有効性とを兼ね備えた更なるコーティング系を提供することであった。本発明による特別な課題は、滑らかで実質的に無機の表面上に、耐摩耗性及び耐候性の易洗浄性コーティングに適した系を施与することであった。
【0008】
前記課題は、請求項で規定された本発明により解決される。
【0009】
従って意外にも、以下の成分
a)式(I)
CF3(CF2n(CH22Si(CH3y3-y (I),
[式中、
Xは塩素、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びn−プロポキシの系列からの基であり、nは3、4、5、6、7、8及び9の系列からの数であり、yは0又は1である]の少なくとも1種の加水分解可能なフルオロアルキルシラン、
b)HCl、
c)水、
d)イソプロパノール、及び
e)ドデカン、有利にn−ドデカン
をベースとし、かつシラン成分(a):水のモル比が1:4.5〜1:9である貯蔵安定性の易洗浄性コーティング組成物を、有利に、単純かつ経済的に、効果的かつ永続的に、特に、滑らかで実質的に無機の − しかしながら専ら無機のみというわけではない − 基材の表面に、及び特にアウトドアにおける適用において施与することができることが見出された。
【0010】
従って、本発明の組成物は少なくとも1年間の傑出した貯蔵安定性が顕著である。更に、意外にも、触媒としてHClを含有する本発明の系は、実際に、適用に続いて、傑出した易洗浄特性、優れた耐摩耗性及び同時に高い耐候性及び耐薬品性が顕著である。
【0011】
従って本発明は、以下の成分
a)式(I)
CF3(CF2n(CH22Si(CH3y3-y (I),
[式中、
Xは塩素、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びn−プロポキシの系列からの基であり、nは3、4、5、6、7、8及び9の系列からの数であり、yは0又は1である]の少なくとも1種の加水分解可能なフルオロアルキルシラン、
b)HCl、
c)水、
d)イソプロパノール、及び
e)ドデカン、
をベースとし、かつシラン成分(a):水のモル比が1:4.5〜1:9、有利に1:4.8〜1:7、更に有利に1:5〜1:6であるコーティング組成物を提供する。
【0012】
本発明の組成物は、有利に以下
a)式(I)のフルオロアルキルシラン成分 20質量部、
b)HCl 0.05〜0.15質量部、有利に0.07〜0.12質量部、更に有利に0.074〜0.11質量部、
c)H2O 3.2〜6.4質量部、有利に3.6〜6質量部、更に有利に3.7〜4.2質量部、特に3.8〜4.0質量部、
d)イソプロパノール500〜1000質量部、有利に600〜900質量部、及び
e)ドデカン30〜60質量部、有利に40〜50質量部
を含有する。
【0013】
特に、シラン成分(a):水のモル比が1:5.3〜1:5.8であるのが有利である。
【0014】
この種の本発明のコーティング組成物は、有利に、シラン成分(a)をイソプロパノールで希釈し、これをHClの存在で部分加水分解、即ち制御された状態で加水分解し、かつ縮合させ、その際、シラン成分(a):水のモル比は1:4.5〜1:9であり、かつ、引き続き、このようにして得られた反応混合物をイソプロパノール及びドデカン含有混合物で希釈することによって得られる。
【0015】
本発明は更に、特に、シラン成分(a)をイソプロパノールで希釈し、次いで水を添加し、次いで塩酸を添加し、このようにして得られた混合物を0〜80℃の温度で、有利に室温〜40℃の温度で1〜4時間、有利に2〜3時間撹拌し、その際、加水分解工程は、シラン成分(a):水のモル比1:4.5〜1:9に基づいており(簡略化のために、部分加水分解と縮合とを加水分解工程と呼称する)、引き続き、このようにして得られた反応混合物(簡略化のために水解物と呼称する)をイソプロパノール及びドデカンの混合物で希釈するか、又は、
シラン成分(a)をイソプロパノール、水及び塩酸の混合物に添加し、このようにして得られた混合物を0〜80℃の温度で、有利に室温〜40℃の温度で1〜4時間、有利に2〜3時間撹拌し、その際、加水分解工程は、シラン成分(a):水のモル比1:4.5〜1:9に基づいており(簡略化のために、部分加水分解と縮合とを加水分解工程と呼称する)、引き続き、このようにして得られた反応混合物(簡略化のために水解物と呼称する)を成分(d)、(e)及び塩酸の混合物で希釈する
ことによる、本発明の組成物の製造法をも提供する。
【0016】
本発明において、成分は有利に以下の量
a)式(I)のフルオロアルキルシラン 20質量部、
b)HCl 0.05〜0.15質量部、
c)H2O 3.2〜6.4質量部、
d)イソプロパノール 500〜1000質量部、及び
e)ドデカン 30〜60質量部
で使用される。
【0017】
加水分解工程において、成分(a)1質量部当たり1〜1.5質量部の成分(d)を使用するのが特に有利である。
【0018】
更に、本発明の方法において、加水分解工程において成分(b)40〜100質量%を使用するのが有利である。
【0019】
更に、本発明の方法において、本発明により得られた水解物を成分(e)及び成分(d)の残分の混合物で希釈するか、又は成分(e)、成分(d)の残分及び成分(b)の残分の混合物で希釈するのが有利である。
【0020】
従って、本発明の方法において、成分(a)として、例えば− これに限定されるものではないが − CF3−(CF25−(CH22−Si(OCH33、CF3−(CF25−(CH22−Si(OC253、CF3−(CF25−(CH22−SiCl3、CF3−(CF25−(CH22−Si(CH3)Cl2、CF3−(CF27−(CH22−SiCl3、CF3−(CF27−(CH22−Si(OCH33、CF3−(CF27−(CH22−Si(OC253、C1021−(CH22−Si(OCH33、C1021−(CH22−Si(OC253、C1021−(CH22−SiCl3又は式(I)のの少なくとも2種の加水分解可能なフルオロアルキルシランの混合物を使用することができる。
【0021】
成分(b)として、HCl水溶液、特に濃度37%の塩酸水溶液を使用するのが有利である。これとは別に、HCl成分を、加水分解条件下で、クロロシランを相応する割合で使用することにより生成させることができる(特に式(I)を参照のこと)。更に、これとは別に、HClを相応して例えば成分a)、c)及びd)の混合物に導入することによってHClを系にガス状で供給することができる。
【0022】
成分(c)としての水は、成分(b)中に −少なくとも比例して − 既に存在するか、又は別個又は付加的に、完全脱イオン水又は蒸留水の形で使用されることができる。
【0023】
成分(d)、即ちイソプロパノール及び成分(e)ドデカンは各々、それぞれ市販の形で使用されてよく;例えば純粋な形、即ち特に(e)の場合にはn−ドデカンか、又は実質的にドデカンをベースとしかつ180℃を上回る沸点範囲を有する異性体混合物の形で使用されてよい。
【0024】
一般に、本発明の方法は以下の通りに実施される:
一般に、式(I)のシラン成分は、通常、定義された量のHCl及びイソプロパノールの存在で、制御された加水分解及び縮合が行われ、その際、シラン成分(a):水のモル比は1:4.5〜1:9に設定される。通常、反応は有利に、有効な混合を用いて、かつ0〜80℃の範囲内の温度で、特に室温で、1〜4時間の時間にわたって行われる。このようにして得られた水解物は、次いで、イソプロパノール/ドデカン含有混合物で希釈され、有利に、貯蔵安定性でかつ効果的なコーティング組成物がもたらされる。しかしながら、反応混合物又は水解物の制御された希釈のためには、イソプロパノール/ドデカン含有混合物の代わりに、相応する量のイソプロパノール、ドデカン及びHClの混合物を使用することも可能である。それとは別に、上記物質をそれぞれ個々の成分として使用することができる。
【0025】
有利に、このようにして、少なくとも1年間の貯蔵安定性を有し、かつ滑らかで実質的に無機の基材表面に施与される際に特に耐摩耗性及び耐候性の易洗浄性コーティングを生じさせる本発明によるコーティング組成物が得られる。
【0026】
本発明のコーティングは、同様に、その効果をより長期間にわたって保持する疎水特性及び疎油特性が顕著である。
【0027】
本発明のコーティング系は、特に有利に、ガラス又はうわぐすりに、例えば風防ガラス、ガラスのシャワー室、壁タイル及び衛生用セラミックに使用されてよい。
【0028】
本発明のコーティング組成物を滑らかで実質的に無機の基材表面に施与する方法は、適切には以下の通りである:
− 特にダスト及び油分を除去するために基材表面を適切に初期洗浄し、かつ所望の場合には活性化させる。これは、例えばイソプロパノール、アセトン又は市販のガラスクリーナーを用いて行うことができる。活性化は、例えば、有利に、6μm未満、有利に0.05〜5μmの平均粒径(d50)を有する酸化物粒子を含有する研摩剤、水性剤を用いて生じ得る。この種の研磨媒体は、懸濁液、分散液又はペーストの形であってよい。相応する水性及び/又はアルコール性金属スラリーは、有利に、酸化セリウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素又は上記酸化物の混合物を含有する。そのような組成物は、有利にアルカリ性又は酸性の配合物を有してよい。
【0029】
− 本発明のコーティング組成物は、準備された基材表面に対して、有利に浸漬、噴霧、噴射、刷り込み、研磨又はバフ研磨により、有利に5〜30℃、特に10〜25℃の温度で、かつ30〜80%の相対湿度で、特に50%〜60%付近の相対湿度で施与され、かつ硬化及び反応されてよい。
【0030】
− 一般に、このように施与されるコーティング組成物は、たった数分後にその有利な効果を示す。コーティング工程に続き、所望であれば、熱後処理を40〜250℃の温度で約10分間行うことができる。しかしながら一般に、このコーティングは単に周囲条件下で乾燥にかけられる。コーティングを約25℃の温度で約1日間硬化させ、その間、新たにコーティングされた範囲には水を施与しないのが特に有利である。
【0031】
従って、本発明は更に、滑らかで実質的に無機の基材表面、特に、金属、ガラス、セラミック又は艶出し加工された表面、例えば若干の例を挙げると、風防ガラス、シャワー室、窓、ドア、壁タイル及び他の衛生用セラミック又は衛生器具、及び更に、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリウレタン(PU)及びポリスチレンをベースとする基材表面に耐摩耗性及び耐候性の易洗浄性コーティングを施与するための、本発明の組成物の使用を提供する。
【0032】
本発明の対象を制限することなく、以下の実施例によって本発明をより詳説する。
【実施例】
【0033】
実施例
以下に実施例に示す反応を、それぞれ、撹拌機、計量供給部、冷却器、水浴及び温度計を備えた加熱可能でかつ冷却可能なガラス製装置中で行った。
【0034】
pH値を、それぞれ、水中で1:1でDIN19268に準拠して測定した。
【0035】
実施例1
計量供給部、還流冷却器及び水浴を備えた100mlのガラス製撹拌装置に、Dynasylan(登録商標)F 8261(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン)20g、イソプロパノール26g、脱イオン水4g及び塩酸(37%HCl)0.2gを装入した。シラン:水のモル比は1:5.6であった。塩酸の添加直後に温度は5分以内に30℃に上昇した。次いで、バッチを26℃で3時間撹拌した。その後、該バッチを2Lガラス瓶中でイソプロパノール900g及びドデカン50gで希釈し、すぐに使用できるコーティング材料が生じた。組成は、Dynasylan(登録商標)F 8261 2質量%の活性物質含分、n−ドデカン5質量%及びイソプロパノール93質量%に相応しており、pH=3.2であった。
【0036】
実施例2
計量供給部、還流冷却器及び水浴を備えた100mlのガラス製撹拌装置に、Dynasylan(登録商標)F 8261(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン)20g、イソプロパノール26g、脱イオン水4g及び塩酸(37%HCl)0.2gを装入した。シラン:水のモル比は1:5.6であった。塩酸の添加直後に温度は5分以内に30℃に上昇した。次いで、バッチを26℃で3時間撹拌した。その後、該バッチを1Lガラス瓶中でイソプロパノール584g及びドデカン33gで希釈し、すぐに使用できるコーティング材料が生じた。組成は、Dynasylan(登録商標)F 8261 3質量%の活性物質含分、n−ドデカン5質量%及びイソプロパノール92質量%に相応しており、pH=3.0であった。
【0037】
実施例3
計量供給部、還流冷却器及び水浴を備えた100mlのガラス製撹拌装置に、連続的に、イソプロパノール26.0g及びDynasylan(登録商標)F 8261(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン)20gを撹拌しながら装入し、これらの成分を混合した。液相温度22℃で、脱イオン水3.8g及び塩酸(37%HCl)0.2gを撹拌しながら添加した。シラン:水のモル比は1:5.4であった。
【0038】
塩酸の添加直後に温度は5分以内に30℃に上昇した。次いで、バッチを26℃で3時間撹拌した。その後、該バッチを2Lガラス瓶中でイソプロパノール900g、ドデカン50g及び塩酸(37%HCl)0.1gで希釈し、すぐに使用できるコーティング材料が生じた。組成は、Dynasylan(登録商標)F 8261 2質量%の活性物質含分、n−ドデカン5質量%及びイソプロパノール92質量%に相応しており、pH=3.1であった。
【0039】
実施例4
計量供給部、還流冷却器及び水浴を備えた100mlのガラス製撹拌装置に、Dynasylan(登録商標)F 8261(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン)20g、イソプロパノール26g、脱イオン水4g及び塩酸(37%HCl)0.2gを装入した。シラン:水のモル比は1:5.6であった。
【0040】
塩酸の添加直後に温度は5分以内に30℃に上昇した。次いで、バッチを26℃で3時間撹拌した。その後、該バッチを1Lガラス瓶中でイソプロパノール584g、ドデカン33g及び塩酸(37%HCl)0.1gで希釈し、すぐに使用できるコーティング材料が生じた。組成は、Dynasylan(登録商標)F 8261 3質量%の活性物質含分、n−ドデカン5質量%及びイソプロパノール92質量%に相応しており、pH=3であった。
【0041】
ガラス表面上での性能検査
コーティングすべきガラス表面の前処理(ガラス板のサイズ:0.07m×0.15m):
ガラス板を最初にイソプロパノールで清浄化し、酸化セリウムの水性スラリーで摩耗活性化させ、その後、乾燥した酸化セリウムを紙タオルで完全に除去した。
【0042】
実施例1〜4からの、及び、比較例1及び2からの、すぐに使用できる配合物を、液体の薄膜としてガラス表面上に分配し、紙タオルを用いてこすり、研磨し、耐摩耗性について2日後に試験した。大抵は、室温での研磨直後に疎水硬化が生じた。
【0043】
耐摩耗性
摩耗試験を研磨溶液下でGardner社製摩耗装置で行った。
【0044】
使用した試験装置は、Gardner社製摩耗試験装置、250mlガラスビーカー、撹拌棒、マグネチックスターラー及び天秤であった。摩耗試験をDIN53778、第2部のエリクセン試験に準拠して行ったが、但し、ブラシの代わりに研磨用スポンジを用いた。従って、Glitzi研磨用スポンジを用いて試験を行い、かつ1kgの重りを7.5×10.4cmの表面範囲に施与した。機械の設置は、基材に対して平行であった。後方及び前方への一動作を一サイクルと呼称する。使用した滑剤は濃度3質量%のケイ酸アルミニウムの水溶液であった(ケイ酸アルミニウム粒子は約80μmのサイズを有していた)。摩耗試験の開始前に、新たにコーティングされたガラス板の水接触角(CA)(識別:暴露なし)を最初に測定した。
【0045】
接触角が80°未満では、コーティングはもはや易洗浄性であるとは言えない;従って、この値に達したところで測定を終了させた。脱イオン水との静的接触角(CA)を、この目的のために、KRUESS社製接触角測定装置G−15(DIN828)を用いて、それぞれの摩耗サイクルの前と後との双方で、複数回測定した。疎油特性を試験するために、Kaydol(Crompton Corporation社製の鉱油、CAS番号8012-95-1)との静的接触角を摩耗暴露の前に測定した。以下の表中で、これをCA Kaydolと略記した。
【0046】
接触角測定誤差:±4°
それぞれの試験の結果を表に示す。
【0047】
耐薬品性(アルカリ及び酸)
コーティングされた試料を室温で完全にそれぞれの試験溶液中に装入した。2時間後、試料を流水下ですすぎ、紙タオルで乾燥させた。その後、暴露されたコーティングの疎水特性を、DIN828に準拠した多重接触角測定を用いて測定した(識別:暴露あり)。接触角が80°未満である場合、コーティングは侵食されたものと見なした。
【0048】
試験溶液:0.1モルH2SO4及び0.1モルNaOH
貯蔵安定性及び促進耐候に関する検査
貯蔵安定性を決定するために、実施例の配合物を通風乾燥棚中で60℃で貯蔵した。様々な期間(例えば1又は2ヶ月)の後に、ガラス板をコーティングし、耐摩耗性を試験した;第7表も参照のこと。更に、実施例の生成物を室温(RT)、即ち20〜26℃で貯蔵した。貯蔵時間はポットライフとしても識別される。貯蔵時間を、最初(即ち、数日)から数ヶ月までで試験した。
【0049】
以下の相関関係によって比較ができる:
【表1】

【0050】
ISO4892−3による1型ランプ(UV−A 340)、発光ピーク340nm、試料表面上での照射強度:340nmで0.92W/m2
【0051】
1暴露サイクル(8時間):60℃での照射サイクル4時間、その後、結露サイクル3時間55分及び散水5分間。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
比較例1
イソプロパノール25.8g、脱イオン水4.0g、硝酸(37%HNO3)0.2gを連続的に導入し、混合した。Dynasylan(登録商標)F 8261(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン)20gを添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。バッチを、イソプロパノール900g、ドデカン50g及び硝酸(37%HNO3)0.1gからなる混合物で希釈し、すぐに使用できるコーティング材料が生じた。シラン:水のモル比は1:5.6であった。組成は、Dynasylan(登録商標)F 8261 2質量%の活性物質含分、n−ドデカン5質量%及びイソプロパノール92質量%に相応しており、pH=3であった。
【0055】
比較例2
系は、アルコール性溶液中の活性化されたフルオロアルキルトリアルコキシシランをベースとする。シラン/水のモル比は1:3.6であった。Dynasylan(登録商標)F 8261 5.0g、塩酸(37%HCl)1.0g、イソプロパノール493.5g及びSnCl2×2H2O0.5gをガラス瓶中で室温で3時間撹拌した。組成は、Dynasylan(登録商標)F 8261 1.0質量%、H2O0.126質量%、HCl(絶対)0.074質量%、SnCl2×2H2O0.1質量%及びイソプロパノール98.7質量%に相応していた(DE19904132を参照のこと)。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ガラス上の得られたコーティングに関する促進耐候の結果を表す線図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物において、以下
a)一般式(I)
CF3(CF2n(CH22Si(CH3y3-y (I),
[式中、
Xは塩素、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びn−プロポキシの系列からの基であり、nは3、4、5、6、7、8及び9の系列からの数であり、yは0又は1である]の少なくとも1種の加水分解可能なフルオロアルキルシラン、
b)HCl、
c)水、
d)イソプロパノール、及び
e)ドデカン
の成分をベースとし、
かつシラン成分(a):水のモル比が1:4.5〜1:9であることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
以下
a)式(I)のフルオロアルキルシラン成分 20質量部、
b)HCl 0.05〜0.15質量部、
c)H2O 3.2〜6.4質量部、
d)イソプロパノール 500〜1000質量部、及び
e)ドデカン 30〜60質量部
を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
シラン成分(a):水のモル比が1:5.3〜1:5.8である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
シラン成分(a)をイソプロパノールで希釈し、HClの存在で部分加水分解し、かつ縮合させ、その際、シラン成分(a):水のモル比は1:4.5〜1:9であり、かつ、引き続き、このようにして得られた反応混合物をイソプロパノール/ドデカン含有混合物で希釈することによって得られる、請求項1から3までのいずれか1項記載のコーティング組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のコーティング組成物の製造法において、
シラン成分(a)をイソプロパノールで希釈し、次いで水を添加し、次いで塩酸を添加し、このようにして得られた混合物を0〜80℃の温度で1〜4時間撹拌し、その際、加水分解工程は、シラン成分(a):水のモル比1:4.5〜1:9に基づいており、引き続き、反応混合物をイソプロパノール及びドデカンの混合物で希釈するか、又は、
シラン成分(a)をイソプロパノール、水及び塩酸の混合物に添加し、このようにして得られた混合物を0〜80℃の温度で1〜4時間撹拌し、その際、加水分解工程は、シラン成分(a):水のモル比1:4.5〜1:9に基づいており、引き続き、反応混合物をイソプロパノール、ドデカン及び塩酸の混合物で希釈する
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
成分を以下の量
a)式(I)のフルオロアルキルシラン 20質量部、
b)HCl 0.05〜0.15質量部、
c)H2O 3.2〜6.4質量部、
d)イソプロパノール 500〜1000質量部、及び
e)ドデカン 30〜60質量部
で使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
加水分解工程において、成分(a)1質量部当たり1〜1.5質量部の成分(d)を使用する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
加水分解工程において、成分(b)40〜100質量%を使用する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
n−ドデカン又は180℃を上回る沸点範囲を有するC12−炭化水素の異性体混合物を成分(e)として使用する、請求項5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
水解物を成分(e)及び成分(d)の残分の混合物で希釈するか、又は成分(e)、成分(d)の残分及び成分(b)の残分の混合物で希釈する、請求項5から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
滑らかで実質的に無機の基材表面に耐摩耗性及び耐候性の易洗浄性コーティングを施与するための、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物、又は、請求項4から10までのいずれか1項記載の方法により得ることができるか又は得られた組成物の使用。
【請求項12】
処理すべき表面の基材が、ガラス、うわぐすり、鉱物、金属、セラミック、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン及びポリスチレンの系列から選択される、請求項11記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−519362(P2009−519362A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544917(P2008−544917)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068481
【国際公開番号】WO2007/068544
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】