説明

漏液センサ

【課題】簡単な構造で、安価に、完全に液体に接触しないようにして、水と油等の漏液の種類を判別する漏液センサを提供する。
【解決手段】漏液の感知部を形成する平行電極と、平行電極に電気接続されている発振用回路と、平行電極及び発振用回路を被覆するチューブと、平行電極及び発振用回路で成る発振回路の発振周波数によって漏液の種類を判別する周波数弁別部と、前記判別の結果に応じて警報を発する警報部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏液の感知部を形成する平行電極の静電容量の大きさによって漏液の種類を判別する漏液センサに関し、特に平行電極を漏液と非接触にした漏液センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来工場等の設備では、配管により液体を供給している。配管には多くの箇所に接続用の継手が設けられているため、継手から液体が漏液する場合が多い。液体の種類によっては、漏液の監視を人間が常時行わなければならなかったが、漏液を自動的に検出して報知する漏液センサが開発されている。漏液を監視するために従来用いられてきた漏液センサには、光学式の漏液センサ、磁気センサを用いた漏液センサ、導通式の漏液センサ及び静電容量式の漏液センサがある。
【0003】
特開2005−156541号公報(特許文献1)には、漏液と接触し得る少なくとも1つの漏液検知部を備えた漏液センサ、及びその漏液センサを少なくとも1つ使用する漏液検知システムが開示されており、漏液検知部は、少なくとも1つの光学式反射境界面若しくは光学式透過境界面を含む光学式漏液検知部、及び/又は、非絶縁性液体の存在によって電極間インピーダンスが変化する電極対を含む導電式漏液検知部からなることが記載されている。
【0004】
特開2008−32428号公報(特許文献2)には、2線の平行電線間に発生する静電容量から漏液位置を特定することのできる漏液センサ装置が開示されている。2線の平行電線を絶縁体で被覆し、絶縁体の中央を平行電線の延長方向に沿って連続溝又は間歇溝を形成し、漏液がこの溝に貯えられるようにする。漏液が発生すると平行電線間に静電容量が発生し、平行電線間に高周波の正弦波電圧を印加したときに平行電線に流れる電流の位相が変化する。この電流の位相変化量を検出し、給電端から漏液発生位置までの距離を判定する検出/判定手段を備えることによって、漏液発生位置を特定するようにしている。
【特許文献1】特開2005−156541号公報
【特許文献2】特開2008−32428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている漏液センサ及び漏液検知システムに用いられるような、従来の導電式又は静電容量式の漏液センサは、平行電極を直接漏液に接触させて、電極間に流れる電流又は電極間の静電容量を検出するようにしている。このように平行電極を直接漏液に接触させるようにした場合、回路等が液体に浸からないようにするための防水構造が複雑になり、コストが大きくなるという問題が有る。
【0006】
また、特許文献2に開示されている漏液センサ装置では、導線の絶縁体で被覆されていない部分及び検出/判定手段が液体に浸からないようにするのが困難である。
【0007】
本発明は上述のような事情によってなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構造で、安価に、完全に液体に接触しないようにして、水と油等の漏液の種類を判別する漏液センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、漏液の感知部を形成する平行電極の静電容量の大きさによって漏液の種類を判別する漏液センサに関し、本発明の上記目的は、漏液の感知部を形成する平行電極と、前記平行電極に電気接続されている発振用回路と、前記平行電極及び前記発振用回路を被覆するチューブと、前記平行電極及び前記発振用回路で成る発振回路の発振周波数によって前記漏液の種類を判別する周波数弁別部と、前記判別の結果に応じて警報を発する警報部とを具備することによって達成される。
【0009】
本発明の上記目的は、前記周波数弁別部が、前記発振周波数を電圧に変換するF−V変換器と、前記電圧を基準電圧と比較して前記漏液の種類に応じた信号を前記警報部に出力するコンパレータとで構成されていることによって、或いは前記平行電極の間に空隙を有するプラスチック部材を挿設したことによって、より効果的に達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記発振回路が、前記平行電極に直列に抵抗R1、コンデンサC1、抵抗R2、ヒステリシス付きのインバータIC1の順に接続されると共に、前記抵抗R2及び前記ヒステリシス付きのインバータIC1に並列に抵抗R3が接続されたマルチバイブレータであることによって、或いは前記発振回路が、前記平行電極に演算増幅器の負入力端子が接続されると共に、前記負入力端子及び前記演算増幅器の出力の間に抵抗R3が接続され、接地された抵抗R2が前記演算増幅器の正入力端子に接続されると共に、前記正入力端子及び前記出力の間に抵抗R1が接続されて成るマルチバイブレータであることによって、或いは前記チューブが熱収縮チューブであることによって、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る漏液センサによれば、平行電極及び発振用回路から成る発振回路をチューブで被覆して、チューブを平行電極に密着するようにしているので、簡単な構造で、安価に、漏液センサを完全に液体に接触しないようにして、水と油等の漏液の種類を判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による漏液センサでは、平行電極及び発振用回路から成る発振回路をチューブで被覆し、チューブを平行電極に密着するようにしている。平行電極を被覆するチューブが、空気や油と接しているか、水と接しているかによって、平行電極のキャパシタンスが相違して発振回路の発振周波数が異なる。従って、この発振周波数を弁別することによって、漏液の種類を液体に接触しないで判別することができる。
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る漏液センサの全体構成を示す図であり、可撓性で熱収縮作用を有するチューブ5の内側に、平行電極1及び発振用回路3が密閉されている。本発明に係る漏液センサは、キャパシタンスCxを形成する平行電極1及び発振用回路3で成る発振回路と、発振回路を密閉して被覆するためのチューブ5と、発振回路の発振周波数の周波数信号Fを送信するための信号線4と、発信周波数の大きさによって、平行電極1がチューブ5に覆われている部分の感知部5Cが、空気に接触している又は油に浸かっているか、水に浸かっているかを周波数で判別する周波数弁別部6と、周波数弁別部6の判別の結果を表す信号DSに応じて警報を発する警報部7とを具備している。警報部7が発する警報は、例えば警告灯8を点灯又は点滅させることによって、或いは警告音を発することによって行われる。また、図示はしていないが、発振用回路3等には電源が供給されている。
【0015】
チューブ5は、平行電極1及び発振用回路3がチューブ5に密着して移動しないように収縮性を有している。また、チューブ5は端部等から液体が侵入しないように半円状に折り曲げてあり、漏液の検出をし易いように直線部に平行電極1が配設されるようになっている。また、1本のチューブ5の端部を例えば2つの環状部材5A及び5Bで束ねている。本発明に係る漏液センサは、平行電極1が位置するチューブ5の直線部で漏液の検出を行い、平行電極1及び発振用回路3がチューブ5に密閉されて被覆されているので、液体に完全に非接触の状態で漏液を検出することができる。
【0016】
図2(a)は、チューブ5を折り曲げる前の、平行電極1と発振用回路3から成る発振回路と、その発振回路を被覆するチューブ5の配置関係を示す斜視図である。図2(b)はチューブ5が平行電極1に密着するように、チューブ5を収縮したときの斜視図である。図2(a)及び図2(b)では、発振回路を示す部分は、分かり易くするためチューブ5を透視して示している。
【0017】
図2(a)及び図2(b)に示されるように、平行電極1は感知側の電極1Aとアース側の電極1Bとから成り、感知側の電極1Aとアース側の電極1Bの間には空隙2Aを有する直方体状のプラスチック部材2が挿設されている。本発明に係る漏液センサは、図2(b)に示されるように、チューブ5が電極1を密着して移動しないようにチューブ5を収縮させている。
【0018】
チューブ5はスミチューブ(登録商標)等の熱収縮チューブであり、材質は石油などの油に強いポリオレフィン樹脂、その他用途によってはポリ塩化ビニル、フッ素樹脂が用いられる。チューブ5の厚さは、強度や使い易さから0.1mm〜0.5mmが適当である。
【0019】
漏液センサの平行電極1がチューブ5に覆われている感知部5Cが空気に接触している場合、つまり漏液が無い場合、又は漏液で油に浸かっている場合、平行電極1によって形成されるキャパシタンスCxが小さいため、発振回路の発振周波数は数百kHzと大きくなる。感知部5Cが水に浸かっている場合、チューブ5の厚みの分だけ平行電極1のキャパシタンスCxは小さくなるが、水は電気を通すためキャパシタンスCxは大きくなり、発振回路の発振周波数は数十kHzと小さくなる。
【0020】
図3に示されるように、周波数弁別部6は、F−V変換器6Aとコンパレータ6Bとを具備している。平行電極1と発振用回路3とから成る発振回路の発信周波数の周波数信号Fは、信号線4を通りF−V変換器6Aに入力され、周波数信号Fに対応した電圧Vに変換される。なお、F−V変換器6Aの特性は、例えば図4に示すように周波数信号Fの周波数fに比例して変換される電圧Vが大きくなる。電圧Vはコンパレータ6Bに入力され、基準電圧Vr1より大きいか小さいかが比較される。電圧Vが基準電圧Vr1より大きい場合、感知部5Cは空気に接触しているか又は油に浸かっていると判定され、電圧Vが基準電圧Vr1より小さいときは、感知部5Cは水に浸かっていると判定される。周波数弁別部6は、このようにして感知部5Cが空気に接触しているか又は油に浸かっているか、感知部5Cが水に浸かっているかを判定し、その判定結果は信号DSとして警報部7に出力され、警報部7は信号DSに応じた警報を発する。
【0021】
また、周波数弁別部6にA/D変換器付きのマイクロコンピュータ(若しくはCPU等の電子処理手段)を使用することによって、F−V変換器6A及びコンパレータ6Bを不要にすることができる。
【0022】
平行電極1と発振用回路3から成る発振回路は、例えば図5に示されるようなマルチバイブレータであっても良い。図5に示されるマルチバイブレータは、平行電極1の感知側の電極1Aとアース側の電極1BによってできるキャパシタンスCxの変化を発振周波数Fに変換するため、電極1Aと直列に抵抗R1と、コンデンサC1と、抵抗R2と、ヒステリシス付きのインバータIC1とを接続し、抵抗R2とインバータIC1に並列に抵抗R3を接続している。マルチバイブレータの出力である周波数信号は、インバータIC2及びインバータIC3で成る波形整形回路によって波形整形され、波形整形回路の出力である周波数信号Fが信号線4を通って周波数弁別部6に入力される。
【0023】
また、平行電極1と発振用回路3から成る発振回路は、図6に示されるようなマルチバイブレータであっても良い。図6に示されるマルチバイブレータは演算増幅器(オペアンプ)Opを具備している。平行電極1の一方の電極が演算増幅器Opの負入力端子に接続され、接地された抵抗R2が演算増幅器Opの正入力端子に接続される。更に、演算増幅器Opの出力と負入力端子とを抵抗R3で接続し、演算増幅器Opの出力と正入力端子とを抵抗R1で接続している。このマルチバイブレータは、抵抗R1と抵抗R2でヒステリシスを設けるようにしており、キャパシタンスCxと抵抗R3で発振周波数が決まるようになっている。
【0024】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る漏液センサの全体構成を示す図である。
【図2】チューブを折り曲げる前の、チューブとチューブの内側にある平行電極及び発振用回路を示す斜視図である。
【図3】周波数弁別部の構成例を示すブロック図である。
【図4】F−V変換器の、周波数fから電圧Vへの変換の特性例を示す特性図である。
【図5】発振回路がマルチバイブレータである場合の、マルチバイブレータの一例を示す回路図である。
【図6】発振回路がマルチバイブレータである場合の、マルチバイブレータの他の例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1 平行電極
1A 感知側の電極
1B アース側の電極
2 プラスチック部材
3 発振用回路
4 信号線
5 チューブ
5A、5B 環状部材
6 周波数弁別部
6A F−V変換器
6B コンパレータ
7 警報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏液の感知部を形成する平行電極と、前記平行電極に電気接続されている発振用回路と、前記平行電極及び前記発振用回路を被覆するチューブと、前記平行電極及び前記発振用回路で成る発振回路の発振周波数によって前記漏液の種類を判別する周波数弁別部と、前記判別の結果に応じて警報を発する警報部とを具備することを特徴とする漏液センサ。
【請求項2】
前記周波数弁別部が、前記発振周波数を電圧に変換するF−V変換器と、前記電圧を基準電圧と比較して前記漏液の種類に応じた信号を前記警報部に出力するコンパレータとで構成されている請求項1に記載の漏液センサ。
【請求項3】
前記平行電極の間に空隙を有するプラスチック部材を挿設した請求項1又は2に記載の漏液センサ。
【請求項4】
前記発振回路が、前記平行電極に直列に抵抗R1、コンデンサC1、抵抗R2、ヒステリシス付きのインバータIC1の順に接続されると共に、前記抵抗R2及び前記ヒステリシス付きのインバータIC1に並列に抵抗R3が接続されたマルチバイブレータである請求項1乃至3のいずれかに記載の漏液センサ。
【請求項5】
前記発振回路が、前記平行電極に演算増幅器の負入力端子が接続されると共に、前記負入力端子及び前記演算増幅器の出力の間に抵抗R3が接続され、接地された抵抗R2が前記演算増幅器の正入力端子に接続されると共に、前記正入力端子及び前記出力の間に抵抗R1が接続されて成るマルチバイブレータである請求項1乃至3のいずれかに記載の漏液センサ。
【請求項6】
前記チューブが熱収縮チューブである請求項1乃至5のいずれかに記載の漏液センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−38740(P2010−38740A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202569(P2008−202569)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000133582)株式会社ツーデン (12)
【Fターム(参考)】