説明

漏電検出装置

【課題】漏電検出装置を利用してコンタクタの溶着有無を検出できる溶着検出装置を、簡単な構成によって実現する。
【解決手段】コンタクタ11が閉状態にあり、かつ、擬似漏電回路4のトランジスタQがオン状態にあるときに、パルス発生器2から、カップリングコンデンサC1、第1端子T1、第1ケーブルL1、コンタクタ11、第2ケーブルL2、および第2端子T2を経由して、擬似漏電回路4へ至る電流経路が形成される。ECU200は、コンタクタ11を開状態にする指令信号を出力している状態で、トランジスタQがオンした場合に、漏電判定部7が漏電ありと判定したときは、コンタクタ11に溶着が発生したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車において、直流電源の漏電を検出するために用いられる漏電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車においては、モータや車載機器を駆動するための高電圧の直流電源が搭載される。この直流電源は、グランドに接地されている車体と電気的に絶縁されている。しかしながら、何らかの原因により、直流電源と車体との間で絶縁不良や短絡等が発生した場合、直流電源からグランドへ至る経路に電流が流れ、漏電が生じる。そこで、この漏電を検出するための漏電検出装置が、直流電源に付設される。
【0003】
漏電検出装置には、漏電検出を正常に行えるか否かを診断することができる、いわゆる自己診断機能を備えたものがある。後記の特許文献1、2には、自己診断機能を備えた漏電検出装置が記載されている。
【0004】
特許文献1では、検出抵抗と絶縁抵抗との接続点と、グランドとの間に、自己診断用抵抗およびスイッチング素子が直列に接続されている。自己診断時には、スイッチング素子がオンの状態で、検出抵抗と絶縁抵抗との接続点に現れる電圧の値が基準値と異なる場合に、検出抵抗の劣化または故障と判定する。
【0005】
特許文献2では、カップリングコンデンサを通じて対地絶縁回路にパルス電圧を印加し、対地絶縁回路に流れる漏電電流に略比例する信号電圧の大きさに応じて、対地絶縁回路の絶縁良否を判定する絶縁性能診断装置において、対地絶縁回路の対地絶縁抵抗が低下した場合と同じ信号変化を生じさせる疑似絶縁低下回路が設けられている。
【0006】
また、後記の特許文献3には、外部強制漏電回路および自己診断回路を備えたバッテリパック検査装置が記載されている。この検査装置では、外部強制漏電回路をバッテリパックにコンタクタを介して接続し、自己診断回路をオン状態にした後、外部強制漏電回路を作動させて漏電の有無を検出する。
【0007】
また、後記の特許文献4には、自己診断回路を備えた漏電センサを利用して、バッテリと外部充電器との間に設けられるコンタクタの溶着有無を検出する溶着検出装置が記載されている。
【0008】
図12は、特許文献4に記載されている溶着検出装置の概略構成図である。漏電検出装置50は、パルス発生器51、漏電判定部52、カップリングコンデンサ53、アースリレー54、および抵抗55を含む。アースリレー54と抵抗55は、擬似漏電回路を構成している。カップリングコンデンサ53の一端は、パルス発生器51に接続されている。カップリングコンデンサ53の他端は、バッテリ60の負極に接続されている。漏電判定部52は、カップリングコンデンサ53とパルス発生器51との接続点に接続されている。アースリレー54の一端は、カップリングコンデンサ53の他端に接続されている。アースリレー54の他端は、抵抗55の一端に接続されている。抵抗55の他端は、グランドに接地されている。
【0009】
バッテリ60と外部充電器70との間には、コンタクタ(充電リレー)71、72が接続されている。コンタクタ71の一端は、バッテリ60の負極に接続されている。コンタクタ71の他端は、溶着検出リレー73を介して、アースリレー54と抵抗55の接続点に接続されている。コンタクタ72の一端は、バッテリ60の正極に接続されている。コンタクタ72の他端は、溶着検出リレー74を介して、アースリレー54と抵抗55の接続点に接続されている。バッテリ制御部80は、上位装置であって、漏電検出装置50およびコンタクタ71、72のそれぞれの動作を制御する。
【0010】
図12の装置において、漏電検出装置50の自己診断を行うには、アースリレー54をオンにする。アースリレー54がオンになると、バッテリ60から、アースリレー54および抵抗55を経て、グランドに至る電流経路が形成される。これにより、バッテリ60は擬似漏電状態となる。このため、カップリングコンデンサ53の電圧が減少し、この電圧変化に基づいて、漏電判定部52は、漏電検出装置50が正常に機能していると判定する。
【0011】
また、図12の装置において、コンタクタ71、72の溶着検出を行うには、アースリレー54をオフにする。そして、溶着検出リレー73、74を交互に閉じて、コンタクタ71、72を、それぞれ溶着検出リレー73、74を介して、抵抗55に接続する。このとき、コンタクタ71、72に溶着が発生してなければ、コンタクタ71、72から、溶着検出リレー73、74および抵抗55を介して、グランドに至る電流経路は形成されない。したがって、カップリングコンデンサ53の電圧は減少しないので、漏電判定部52は、コンタクタ71、72に溶着が発生していないと判定する。
【0012】
一方、コンタクタ71、72の一方または両方に溶着が発生していると、コンタクタ71、72から、溶着検出リレー73、74および抵抗55を介して、グランドに至る電流経路が形成される。このため、カップリングコンデンサ53の電圧が減少し、漏電判定部52は、コンタクタ71、72に溶着が発生していると判定する。
【0013】
このように、特許文献4の溶着検出装置では、漏電検出装置50を利用して、コンタクタ71、72の溶着有無を検出することができる。その一方で、この装置では、アースリレー54と抵抗55とで構成される擬似漏電回路が、カップリングコンデンサ53とバッテリ60との接続点に接続されている。また、アースリレー54と抵抗55との接続点に、溶着検出リレー73、74を介してコンタクタ71、72が接続される構成となっている。そして、溶着検出時には、アースリレー54をオフにする必要がある。したがって、コンタクタ71、72の溶着を検出するためには、アースリレー54とは別に、溶着検出リレー73、74を設けなければならず、回路構成が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−127821号公報
【特許文献2】特開2007−163291号公報
【特許文献3】特開2010−181368号公報
【特許文献4】特開2010−178454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、漏電検出装置を利用してコンタクタの溶着有無を検出できる溶着検出装置を、簡単な構成によって実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るコンタクタの溶着検出装置は、一端が直流電源の一方の極に接続されるカップリングコンデンサと、このカップリングコンデンサの他端にパルスを供給するパルス発生器と、前記パルスにより充電されるカップリングコンデンサの電圧を検出する電圧検出部と、この電圧検出部が検出した電圧に基づいて、直流電源の漏電の有無を判定する漏電判定部と、スイッチング素子を有し、当該スイッチング素子がオンすることにより、直流電源を擬似的に漏電状態にする擬似漏電回路と、この擬似漏電回路により直流電源を擬似的に漏電状態にした場合に、漏電判定部が漏電ありと判定したか否かを診断する自己診断部と、直流電源の一方の極に一端が接続された第1ケーブルの他端を、カップリングコンデンサの一端に接続するための第1端子と、直流電源の一方の極または他方の極にコンタクタを介して一端が接続された第2ケーブルの他端を、擬似漏電回路に接続するための第2端子と、コンタクタの開閉を制御するとともに、当該コンタクタの開閉状態と漏電判定部の判定結果とに基づいて、コンタクタの溶着の有無を判定する制御手段とを備える。そして、コンタクタが閉状態にあり、かつスイッチング素子がオン状態にあるときに、パルス発生器から、カップリングコンデンサ、第1端子、第1ケーブル、コンタクタ、第2ケーブル、および第2端子を経由して、擬似漏電回路へ至る電流経路が形成される。
【0017】
このようにすると、コンタクタを開状態にして行う故障診断において、コンタクタに溶着が発生している場合は、擬似漏電回路のスイッチング素子をオンにしたとき、コンタクタから第2端子を介して擬似漏電回路に電流が流れる。このため、漏電判定部は「漏電あり」と判定するので、制御手段は、この判定結果に基づいて、コンタクタの溶着を検出することができる。また、コンタクタからスイッチング素子へ至る電流経路が形成されるので、特許文献4のように溶着検出リレーを設けなくても、スイッチング素子だけで溶着の検出が可能となる。
【0018】
本発明において、制御手段は、コンタクタを開状態にする指令信号を出力し、この指令信号を出力している状態で、スイッチング素子がオンした場合に、漏電判定部が漏電ありと判定したときは、コンタクタに溶着が発生したと判定することができる。
【0019】
また、本発明において、制御手段は、コンタクタを開状態または閉状態にする指令信号を出力し、コンタクタを開状態にする指令信号を出力している状態で、スイッチング素子がオンした場合に、漏電判定部が漏電ありと判定したときは、コンタクタに溶着が発生したと判定し、コンタクタを閉状態にする指令信号を出力している状態で、スイッチング素子がオンした場合に、漏電判定部が漏電なしと判定したときは、コンタクタの溶着以外の異常が発生したと判定するようにしてもよい。
【0020】
また、本発明において、コンタクタは、直流電源の負極に接続される第1コンタクタと、直流電源の正極に接続される第2コンタクタとからなり、第1コンタクタと第2端子との接続、および第2コンタクタと第2端子との接続を切り替える切替手段を設けてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、漏電検出装置を利用してコンタクタの溶着有無を判定できる溶着検出装置を、簡単な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る溶着検出装置を示した回路図である。
【図2】漏電検出装置の通常時の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】漏電検出装置の故障診断時の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】コンタクタを閉状態にした場合の故障診断のフローチャートである。
【図5】コンタクタを閉状態にした場合の正常状態の回路図である。
【図6】コンタクタを閉状態にした場合の異常状態の回路図である。
【図7】コンタクタを開状態にした場合の故障診断のフローチャートである。
【図8】コンタクタを開状態にした場合の正常状態の回路図である。
【図9】コンタクタを開状態にした場合の異常状態の回路図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る溶着検出装置を示した回路図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態に係る溶着検出装置を示した回路図である。
【図12】従来の溶着検出装置を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には同一符号を付してある。以下では、本発明を電気自動車に搭載される漏電検出装置に適用した場合を例に挙げる。
【0024】
図1において、漏電検出装置100は、直流電源であるバッテリ30の漏電を検出するものであって、上位装置であるECU(電子制御ユニット)200と接続されている。漏電検出装置100とECU200により、コンタクタの溶着検出装置が構成される。ECU200は、本発明における「制御手段」の一例である。
【0025】
漏電検出装置100は、CPU1、パルス発生器2、フィルタ回路3、擬似漏電回路4、メモリ5、抵抗R1、カップリングコンデンサC1,C3、および端子T1〜T4を備えている。
【0026】
CPU1は、漏電検出装置100の動作を制御するもので、電圧検出部6、漏電判定部7、および自己診断部8を備えている。実際には、これらのブロック6〜8の各機能は、ソフトウェアによって実現される。パルス発生器2は、CPU1からの指令に基づき、所定周波数のパルスを生成する。抵抗R1はパルス発生器2の出力側に接続されている。カップリングコンデンサC1は、バッテリ30と漏電検出装置100とを直流的に分離するためのコンデンサであって、抵抗R1と端子T1(第1端子)との間に接続されている。
【0027】
フィルタ回路3は、抵抗R1とカップリングコンデンサC1との接続点(a点)と、CPU1との間に設けられている。このフィルタ回路3は、CPU1に入力される電圧のノイズを除去するためのもので、抵抗R2およびコンデンサC2からなる。抵抗R2の一端はa点に接続されている。抵抗R2の他端は、CPU1に接続されているとともに、コンデンサC2の一端に接続されている。コンデンサC2の他端は、グランドGに接地されている。なお、本実施形態の場合、グランドGは電気自動車の車体である。
【0028】
擬似漏電回路4と端子T2(第2端子)との間には、カップリングコンデンサC3が接続されている。このカップリングコンデンサC3は、カップリングコンデンサC1と同様に、バッテリ30と漏電検出装置100とを直流的に分離するためのコンデンサである。
【0029】
擬似漏電回路4は、トランジスタQおよび抵抗R3〜R5からなる。トランジスタQのコレクタには抵抗R3が接続されており、カップリングコンデンサC3は、抵抗R3と直列に接続されている。トランジスタQのエミッタは、グランドGに接地されている。トランジスタQのベースは、抵抗R5を介して、CPU1に接続されている。抵抗R4は、トランジスタQのベースとエミッタとにまたがって接続されている。トランジスタQは、本発明における「スイッチング素子」の一例である。
【0030】
メモリ5は、ROMやRAMなどからなる。このメモリ5には、CPU1の動作プログラムや制御用データが記憶されているとともに、後述する漏電有無判定のための閾値SHが記憶されている。
【0031】
CPU1において、電圧検出部6は、a点からフィルタ回路3を介してCPU1に取り込まれる入力電圧Vに基づいて、カップリングコンデンサC1の電圧を検出する。
【0032】
漏電判定部7は、電圧検出部6が検出した電圧を閾値SHと比較し、その比較結果に基づいて、バッテリ30の漏電有無を判定する。
【0033】
自己診断部8は、漏電検出装置100が正常に動作するか否かを診断する自己診断時に、擬似漏電回路4を駆動してバッテリ30を擬似的に漏電状態にする。そして、この擬似漏電状態において漏電判定部7が「漏電あり」と判定したか否かを診断する。
【0034】
バッテリ30は、コンタクタ11、12を介して、高電圧ユニット20に接続されている。コンタクタ11(第1コンタクタ)は、バッテリ30の負極と高電圧ユニット20との間に接続されており、コンタクタ12(第2コンタクタ)は、バッテリ30の正極と高電圧ユニット20との間に接続されている。高電圧ユニット20は、DC−DCコンバータやインバータ回路などから構成され、図示しないモータや車載機器に電源を供給する。
【0035】
ケーブルL1(第1ケーブル)の一端は、b点において、バッテリ30の負極に接続されている。ケーブルL1の他端は、漏電検出装置100の端子T1に接続され、この端子T1を介して、カップリングコンデンサC1の一端に接続されている。
【0036】
ケーブルL2(第2ケーブル)の一端は、コンタクタ11と高電圧ユニット20との間のc点に接続されていて、コンタクタ11を介してバッテリ30の負極に接続されている。ケーブルL2の他端は、漏電検出装置100の端子T2に接続され、端子T2およびカップリングコンデンサC3を介して、擬似漏電回路4に接続されている。
【0037】
漏電検出装置100の端子T3、T4は、CPU1に接続されている。端子T3へは、後述する故障診断を行う場合に、ECU200から故障診断指令信号が入力される。この指令信号は、例えば、イグニッションスイッチ(図示省略)がオンしてから一定時間が経過した後に、ECU200から出力される。端子T4からは、漏電が検出された場合に、ECU200へ漏電検出信号が出力される。なお、漏電検出装置100は、端子T3、T4以外にも、ECU200との間で通信を行う端子を備えているが、本発明とは直接関係がないので、図示を省略してある。
【0038】
次に、漏電検出装置100の基本的な動作について説明する。
【0039】
パルス発生器2は、図2(a)に示すような矩形波のパルスを所定周期で出力する。このパルスは、抵抗R1を介してカップリングコンデンサC1に供給され、カップリングコンデンサC1を充電する。なお、実際には、端子T1,T2と車体との間に浮遊容量が存在し、パルスによって浮遊容量にも充電が行われる。カップリングコンデンサC1への充電によって、図1のa点の電位が上昇する。このa点の電位はフィルタ回路3を介して、入力電圧VとしてCPU1に入力される。入力電圧Vは、図2(c)のような波形となる。
【0040】
端子T3に、ECU200から故障診断指令信号が入力されていない場合(図2(b))は、CPU1は、擬似漏電回路4へ駆動信号を出力しない。このため、擬似漏電回路4のトランジスタQはオフしている。
【0041】
CPU1の電圧検出部6は、入力電圧Vに基づいて、カップリングコンデンサC1の電圧を検出する。この電圧の検出は、カップリングコンデンサC1に供給されるパルスが立ち下がる時刻(あるいはその直前)において行われる。検出されたカップリングコンデンサC1の電圧を、以下では「検出電圧」という。
【0042】
漏電判定部7は、電圧検出部6で検出された検出電圧と、メモリ5に記憶されている閾値SHとを比較して、その比較結果に基づき漏電の有無を判定する。バッテリ30に漏電が生じていなければ、図2(c)のAで示すように、検出電圧が閾値SHを超える。したがって、漏電判定部7は「漏電なし」と判定し、CPU1から端子4を介して、ECU200へ漏電検出信号は出力されない(図2(d)で漏電検出信号がOFF)。
【0043】
一方、バッテリ30に漏電が生じていると、漏電インピーダンスのためにカップリングコンデンサC1の電圧が減少する。したがって、図2(c)のBで示すように、検出電圧が閾値SHを超えず、漏電判定部7は「漏電あり」と判定する。そして、CPU1から端子4を介して、ECU200へ漏電検出信号が出力される(図2(d)で漏電検出信号がON)。
【0044】
次に、ECU200が行う故障診断について説明する。この故障診断には、コンタクタ11、12を閉状態にして行う故障診断と、コンタクタ11、12を開状態にして行う故障診断の2種類がある。コンタクタ11、12は、ECU200からの「閉」指令信号を受けて閉状態となり、ECU200からの「開」指令信号を受けて開状態となる。
【0045】
図4のフローチャートは、コンタクタ11、12を閉状態にして行う故障診断の手順を表している。ECU200から漏電検出装置100の端子T3へ、故障診断指令信号が入力されると(図3(b)で故障診断指令信号がON)、CPU1から擬似漏電回路4へ駆動信号が与えられ、トランジスタQがオンする(ステップS101)。この後、ECU200は、漏電検出装置100から漏電検出信号を受信したか否かを判定する(ステップS102)。
【0046】
異常が発生してなければ、図5に示すように、ECU200から出力される「閉」指令信号により、コンタクタ11、12は閉状態となっているから、トランジスタQのオンにより、破線で示す電流経路Xが形成される。すなわち、パルス発生器2→抵抗R1→カップリングコンデンサC1→端子T1→ケーブルL1→コンタクタ11→ケーブルL2→端子T2→カップリングコンデンサC3→擬似漏電回路4の経路に電流が流れる。
【0047】
擬似漏電回路4のトランジスタQのエミッタはグランドG(車体)に接地されているので、上記経路に電流が流れることによって、バッテリ30と車体との間で実際に漏電が生じた場合と同様の、擬似的な漏電状態が作り出される。
【0048】
この擬似漏電状態においては、パルス発生器2が出力するパルスにより、カップリングコンデンサC1が充電されるとともに、カップリングコンデンサC3も充電される。このため、a点の電位すなわち入力電圧Vが減少する。その結果、図3(c)のBのように、カップリングコンデンサC1の検出電圧が閾値SH未満となるので、漏電判定部7は「漏電あり」と判定する。
【0049】
漏電判定部7が上記のように判定すると、図5に示したように、CPU1は、漏電検出信号を端子4へ出力し(図3(d)で漏電検出信号がON)、ECU200がこの漏電検出信号を受信する(ステップS102;YES)。
【0050】
ECU200は、コンタクタ11、12に対して「閉」指令信号を出力している状態で、トランジスタQのオン時に漏電検出信号を受信したことで、漏電検出装置100やケーブルL1、L2、コンタクタ11に異常が発生していないと判定する(ステップS103)。
【0051】
一方、擬似漏電回路4の故障、ケーブルL1、L2の断線、コンタクタ11のオープン故障などの異常(後述するコンタクタ溶着以外の異常)が発生すると、図6に示すように、前述の電流経路X(図5)が形成されない。図6は、コンタクタ11が開状態から閉状態へ切り替わらないオープン故障が発生した場合を示している。この結果、擬似的な漏電状態が作り出されないため、漏電判定部7は「漏電なし」と判定する。したがって、ECU200は、CPU1から漏電検出信号を受信しない(ステップS102;NO)。
【0052】
ECU200は、コンタクタ11、12に対して「閉」指令信号を出力している状態で、トランジスタQのオン時に漏電検出信号を受信しないことで、上記のような異常が発生したと判定する(ステップS104)。異常が発生した場合、ECU200は、警報を出力するなどの処置を行う。
【0053】
図7のフローチャートは、コンタクタ11、12を開状態にして行う故障診断の手順を表している。ECU200から漏電検出装置100の端子T3へ、故障診断指令信号が入力されると(図3(b)で故障診断指令信号がON)、CPU1から擬似漏電回路4へ駆動信号が与えられ、トランジスタQがオンする(ステップS201)。この後、ECU200は、漏電検出装置100から漏電検出信号を受信したか否かを判定する(ステップS202)。
【0054】
コンタクタ11に溶着が発生してなければ、図8で示したように、ECU200から出力される「開」指令信号により、コンタクタ11は開状態となっているから、図5の電流経路Xは形成されない。つまり、擬似的な漏電状態は作り出されない。このため、漏電判定部7は「漏電なし」と判定する。したがって、ECU200は、CPU1から漏電検出信号を受信しない(ステップS202;NO)。
【0055】
ECU200は、コンタクタ11、12に対して「開」指令信号を出力している状態で、トランジスタQのオン時に漏電検出信号を受信しないことで、コンタクタ11に溶着が発生していないと判定する(ステップS204)。
【0056】
一方、コンタクタ11に溶着が発生していると、図9で示したように、ECU200から「開」指令信号が出力されても、コンタクタ11は閉状態のままとなるので、トランジスタQがオンすることで、図5の場合と同じ電流経路Xが形成される。この結果、擬似的な漏電状態が作り出されるため、漏電判定部7は「漏電あり」と判定する。したがって、ECU200は、CPU1から漏電検出信号を受信する(ステップS202;YES)。
【0057】
ECU200は、コンタクタ11、12に対して「開」指令信号を出力している状態で、トランジスタQのオン時に漏電検出信号を受信したことで、コンタクタ11に溶着が発生したと判定する(ステップS203)。コンタクタ11の溶着が発生した場合、ECU200は、警報を出力するなどの処置を行う。
【0058】
このように、本実施形態においては、コンタクタ11、12を開状態にして行う故障診断において、コンタクタ11に溶着が発生している場合は、擬似漏電回路4のスイッチング素子Qをオンにしたとき、コンタクタ11から端子T2を介して擬似漏電回路4に電流が流れる。このため、漏電判定部7は「漏電あり」と判定するので、ECU200は、この判定結果に基づいて、コンタクタ11の溶着を検出することができる。また、コンタクタ11からスイッチング素子Qへ至る電流経路が形成されるので、特許文献4のような溶着検出リレーを設けなくても、スイッチング素子Qだけで溶着の検出が可能となる。これにより、部品数を少なくして、回路構成を簡略化することができる。
【0059】
なお、ECU200による上述した故障診断とは別に、漏電検出装置100は、それ単体で自己診断機能を備えている。自己診断にあたっては、ケーブルL2の一端の接続点をc点からb点に変更し、擬似漏電回路4のトランジスタQをオンにして、バッテリ30を擬似漏電状態にする。そして、この擬似漏電状態で漏電判定部7が「漏電あり」と判定するか否かが、診断部8により判定される。判定部7が「漏電あり」と判定した場合は、診断部8は、漏電検出装置100が正常に動作していると診断する。一方、判定部7が「漏電なし」と判定した場合は、診断部8は、漏電検出装置100が正常に動作していないと診断する。診断部8の診断結果は、図示しない端子を介して、ECU200へ通知される。
【0060】
上述した実施形態(図1)では、ケーブルL2の一端がc点に接続されているので、2つのコンタクタ11、12のうち、コンタクタ11の溶着有無を検出する場合を例に挙げた。これに対して、コンタクタ12の溶着有無を検出するには、図10に示すように、ケーブルL2の一端を、コンタクタ12と高電圧ユニット20との間のd点に接続すればよい。すなわち、ケーブルL2の一端を、コンタクタ12を介してバッテリ30の正極に接続すればよい。
【0061】
また、コンタクタ11、12の両方について溶着有無を検出するには、図11に示すように、コンタクタ11と端子T2との接続、およびコンタクタ12と端子T2との接続を切り替えるスイッチ40を設ければよい。スイッチ40の切り替えは、ECU200によって行われる。切替手段としては、スイッチ以外に、リレーやトランジスタなどを用いることも可能である。
【0062】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記の実施形態では、漏電検出装置100とECU200とを別ユニットとし、2つのユニットによって溶着検出装置が構成される場合を例に挙げた。これに対し、漏電検出装置100とECU200とを1つのユニットに統合し、当該ユニットによって溶着検出装置が構成されるようにしてもよい。
【0063】
また、前記の実施形態では、擬似漏電回路4のスイッチング素子をトランジスタQで構成した例を示したが、スイッチング素子として、FETやリレーを用いてもよい。
【0064】
さらに、前記の実施形態では、電気自動車に搭載される漏電検出装置に本発明を適用した例を挙げたが、本発明は、電気自動車以外の用途に用いられる漏電検出装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 CPU
2 パルス発生器
4 擬似漏電回路
6 電圧検出部
7 漏電判定部
8 自己診断部
11 コンタクタ(第1コンタクタ)
12 コンタクタ(第2コンタクタ)
30 バッテリ(直流電源)
40 スイッチ(切替手段)
100 漏電検出装置
200 ECU(制御手段)
C1 カップリングコンデンサ
G グランド
T1 端子(第1端子)
T2 端子(第2端子)
L1 ケーブル(第1ケーブル)
L2 ケーブル(第2ケーブル)
Q トランジスタ(スイッチング素子)
X 電流経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が直流電源の一方の極に接続されるカップリングコンデンサと、
前記カップリングコンデンサの他端にパルスを供給するパルス発生器と、
前記パルスにより充電される前記カップリングコンデンサの電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した電圧に基づいて、前記直流電源の漏電の有無を判定する漏電判定部と、
スイッチング素子を有し、当該スイッチング素子がオンすることにより、前記直流電源を擬似的に漏電状態にする擬似漏電回路と、
前記擬似漏電回路により前記直流電源を擬似的に漏電状態にした場合に、前記漏電判定部が漏電ありと判定したか否かを診断する自己診断部と、
前記直流電源の一方の極に一端が接続された第1ケーブルの他端を、前記カップリングコンデンサの一端に接続するための第1端子と、
前記直流電源の一方の極または他方の極にコンタクタを介して一端が接続された第2ケーブルの他端を、前記擬似漏電回路に接続するための第2端子と、
前記コンタクタの開閉を制御するとともに、当該コンタクタの開閉状態と前記漏電判定部の判定結果とに基づいて、前記コンタクタの溶着の有無を判定する制御手段と、を備え、
前記コンタクタが閉状態にあり、かつ前記スイッチング素子がオン状態にあるときに、前記パルス発生器から、前記カップリングコンデンサ、前記第1端子、前記第1ケーブル、前記コンタクタ、前記第2ケーブル、および前記第2端子を経由して、前記擬似漏電回路へ至る電流経路が形成されることを特徴とする、コンタクタの溶着検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンタクタの溶着検出装置において、
前記制御手段は、
前記コンタクタを開状態にする指令信号を出力し、
前記指令信号を出力している状態で、前記スイッチング素子がオンした場合に、前記漏電判定部が漏電ありと判定したときは、前記コンタクタに溶着が発生したと判定することを特徴とする、コンタクタの溶着検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のコンタクタの溶着検出装置において、
前記制御手段は、
前記コンタクタを開状態または閉状態にする指令信号を出力し、
前記コンタクタを開状態にする指令信号を出力している状態で、前記スイッチング素子がオンした場合に、前記漏電判定部が漏電ありと判定したときは、前記コンタクタに溶着が発生したと判定し、
前記コンタクタを閉状態にする指令信号を出力している状態で、前記スイッチング素子がオンした場合に、前記漏電判定部が漏電なしと判定したときは、前記コンタクタの溶着以外の異常が発生したと判定することを特徴とする、コンタクタの溶着検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンタクタの溶着検出装置において、
前記コンタクタは、前記直流電源の負極に接続される第1コンタクタと、前記直流電源の正極に接続される第2コンタクタとからなり、
前記第1コンタクタと前記第2端子との接続、および前記第2コンタクタと前記第2端子との接続を切り替える切替手段を設けたことを特徴とする、コンタクタの溶着検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−68479(P2013−68479A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206330(P2011−206330)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】