演奏操作トレーニング装置および演奏操作トレーニング処理のプログラム
【課題】鍵盤楽器の演奏に必要な各指の運動能力の向上が図れるとともに、脳の活性化にも役立つ演奏トレーニング装置を提供する。
【解決手段】まず演奏者に鍵盤6上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵を全て押鍵させ、この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択し、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミングで離鍵を指示し、この指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する。そして、この指示と離鍵の判別をすべての指の組み合わせについて行い、所定タイミングで離鍵ができなかった指の組み合わせをトレーニングすべき不得意な指の組み合わせとして表示部5に表示させる。また、この不得意な指の組み合わせのいずれか一つの鍵が離鍵し押鍵すると曲を進行させ、楽しみながら不得意な指のトレーニングを行わせる。
【解決手段】まず演奏者に鍵盤6上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵を全て押鍵させ、この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択し、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミングで離鍵を指示し、この指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する。そして、この指示と離鍵の判別をすべての指の組み合わせについて行い、所定タイミングで離鍵ができなかった指の組み合わせをトレーニングすべき不得意な指の組み合わせとして表示部5に表示させる。また、この不得意な指の組み合わせのいずれか一つの鍵が離鍵し押鍵すると曲を進行させ、楽しみながら不得意な指のトレーニングを行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏操作トレーニング装置及び演奏操作トレーニング処理のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵盤楽器の演奏をより効率的に行うさまざまな手法が提案されている。例えば、特許文献1には、各鍵に対応して発光素子を設け、指定された曲を演奏するに際して押鍵すべき鍵に対応する発光素子を押鍵すべきタイミングにあわせて順次点灯させることにより、演奏者にどの鍵をどのタイミングで押鍵すべきかを認識させる構成が開示されている。
このような構成を適用することにより、演奏者は曲を演奏するための押鍵順序及び押鍵タイミングを認識でき、より早く曲の演奏ができるようになる。
【0003】
さらに、特許文献2には、このような押鍵順序及び押鍵タイミングだけでなく、押鍵に用いられる指も合わせて表示できるようにした構成が開示されている。このような構成を用いれば、曲の演奏に必要な運指操作も認識できるようなり、より本格的な演奏の練習がより効率的に行なうことが可能になる。
【特許文献1】特公平01−053469公報
【特許文献2】実開平03−089467公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示されているような構成の演奏トレーニング装置は、演奏練習の課題とし与えられた曲のみを演奏できるようにするのを目的とするならば、きわめて有効である。しかしながら、この課題として与えられた曲が演奏できるようになったとしても、それ以外の押鍵順序、タイミンク及び運指の形態が異なる他の曲が演奏できる、という保証にはならない。
【0005】
特に運指、演奏に必要な指使いについては、演奏者あるいは指定される曲に応じて得意、不得意が分かれる場合が多い。
これは、各指の運動能力に個人差があることに起因する。つまり、ある人は中指を動かすことが非常に不得手であるのに対して、他の人は薬指を動かすことが不得手であったりする。
鍵盤楽器の演奏には、全ての指を自由自在に使って押鍵できるようにしなければならず、特定の指の指使いが不得手であったならば、それを克服しなければ演奏は上達しない。
この不得手な指操作を克服しようとすれば、この不得手となる指のみを動かしてその運動能力を向上させればよい。しかしながら、単に不得手な指のみを単調に意味もなく動かすようにトレーニングを行うことは、苦痛以外何物でもなく、長続きがしない。このため、こうした指のトレーニングであることをあまり意識せずに、運動能力の向上を図れる工夫が望まれていた。
【0006】
また、指を使う鍵盤楽器の演奏は、脳の活性化に非常に有効であることが証明されている。
これは、脳がどの指を動かさねばならないかを認識し、その指に対して動かすことを指令するという一連の動作が、脳に刺激を与えるからであり、さらにこの動作がより複雑かつ早いタイミングで行なえば行なうほど脳に与える刺激が大きくなる。
【0007】
特に、全ての指のうち、ある指はそのままの状態を保持しつつ、それ以外の指のみ指定された動きを行なわせるというような動作は、各指の運動能力の向上に役立つばかりでなく、脳に対して大きな刺激が与えられ、脳の活性化に対して非常に有効であることが知られている。
【0008】
本発明は、鍵盤楽器の演奏に必要な各指の運動能力の向上が図れるとともに、脳の活性化にも役立つ演奏トレーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の演奏トレーニング装置は、鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別手段と、この第1の判別手段により、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から少なくとも2つの鍵を選択する鍵選択手段と、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されている状態で、この鍵指定手段により指定された前記少なくとも2つの鍵のいずれかひとつが押鍵される毎に、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段からイベントを順次読み出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出し手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記演奏操作トレーニング装置はさらに、前記鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵を指示する押鍵指示手段を有し、前記第1の判別手段は、この押鍵指示手段にて指示された複数の鍵全てが押鍵されているか否か判別することが望ましい。
【0011】
また、前記演奏操作トレーニング装置は、前記組み合わせ選択手段により前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、前記指示手段にて指示される前記所定のタイミングを変更して、前記組み合わせ選択手段、前記指示手段、前記第2の判別手段、及び前記選択制御手段に同一の動作を繰り返し行わせる制御手段をさらに有することが望ましい。
【0012】
そして、前記制御手段は、前記繰り返し動作を行わせる毎に、前記所定のタイミングを早くすることが望ましい。
【0013】
また、本発明演奏操作トレーニング処理のプログラムは、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段を有するコンピューターに、
鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別ステップと、この第1の判別ステップにより、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択する組み合わせ選択ステップと、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミング指示する指示ステップと、この指示ステップにより指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する第2の判別ステップと、この第2の判別手段による判別の終了後に、前記組み合わせ選択ステップにより選択された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の2つの鍵の組み合わせを前記組み合わせ選択ステップに選択させる選択制御ステップと、前記組み合わせ選択ステップにより前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、前記第2の判別ステップによる判別結果に基づき、前記指定されたタイミングで離鍵できない前記2つの鍵を特定する特定ステップと、この特定ステップにて特定された前記2つの鍵の少なくとも一方を押鍵する毎に、前記記憶手段に記憶された曲データのイベントを順次読出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出しステップと、を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、まず演奏者に鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵させ、この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択し、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミングで指示し、この指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する。そして、この判別の終了後に、前記選択された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の2つの鍵の組み合わせを選択させ、前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、指定されたタイミングで離鍵できない2つの鍵を特定する。さらに、この特定された前記2つの鍵の少なくとも一方を押鍵する毎に、前記記憶手段に記憶された曲データを構成するイベントを順次読出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する。
【0015】
これによって演奏者はどの指の運動能力の向上が必要であるかを認識でき、かつこの一連の動作を繰り返し行なうことにより、不得手な指の運動能力の向上が図れる。そして、この不得手な指の運動能力に最も適した曲を演奏するだけで、不得手な指の運等能力向上を特別に意識することなくトレーニングが行えるため、演奏者の心理的負担が大幅に低減する。
【0016】
さらに、全ての指のうち、ある指は押鍵状態を保持しつつ、それ以外の指のみ離鍵を行なわせる、というような一連動作を繰り返し行なわせることにより、脳に刺激をあたえることができ、脳の活性化を促すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の演奏トレーニング装置を適用した鍵盤楽器の内部構成を示したブロック図である。
【0019】
図1において、CPU1、プログラムROM2、ワークRAM3、曲データROM4、表示部5、鍵盤6、LED群7、SW部8及び音源9は共通のバスラインで接続されている。CPU1は、プログラムROM2に記憶されたプログラムに基づいて鍵盤楽器全体の処理を行なうものである。またこのプログラムROM2には、CPU1で行なわれる処理を制御するプログラムの他に、最初に全ての指で押鍵すべき鍵を示すための鍵番号もあわせて記憶されている。
【0020】
ワークRAM3は、CPU1により行なわれる処理に必要なデータ等を一時的に記憶するものであり、そのデータ構成は図2に示すように、初期指位置データF(1)〜F(5)、タイマー時間データT(1)〜T(a)、さらにはエリアデータAREA(1)〜AREA(a)が記憶される領域を有する。
【0021】
初期指位置データF(1)〜F(5)は、最初に鍵盤上に右手指全てを用いて押鍵する際、各指が押鍵すべき鍵の番号が記憶されるものであり、プログラムROM2から転送されてくるものである。
この1〜5は指番号を表わすものであり、本実施形態においては、右手親指は1、右手人指し指は2、右手中指は3、右手薬指は4、及び右手小指は5を示している。
【0022】
タイマー時間データT(1)〜T(a)は、本発明では右手指全てで押鍵している最中にいずれか2つの指を順次離鍵操作させるために指示を行なうが、その離鍵操作のタイミング記憶するエリアである。
本実施形態においては、この離鍵操作をタイミングを早めながら複数回行なわせるように構成されているため、このタイマー時間データは複数種用意されている。
【0023】
エリアデータAREA(1)〜AREA(a)は、上述のタイマー時間データのエリア夫々に対応して設けられ、離鍵操作が指示されたタイミングで行なえなかった場合、この2つの指で押鍵されている鍵番号の組み合わせを記憶するエリアである。
【0024】
曲データROM4は、演奏練習の対象となる複数の曲データ(1)〜(M)が記憶されている。
図3は、この曲データROM4のデータ構成を示した図である。記憶されている曲データは、押鍵(ノートオン)を示すイベントと、各イベント間の発生タイミングを表わすタイムの組み合わせからなる。
各イベントは、イベントの種類(押鍵、離鍵)を識別するイベント種、押鍵又は離鍵される鍵を示すノート番号(鍵番号)、及びベロシテイからなる。
【0025】
図1に戻り、表示部5は、液晶等の表示素子からなるものであり、本実施形態では、指示どおりに離鍵操作のできなかった2つの鍵に対応する指を表示するものである。
【0026】
鍵盤6は、演奏操作に用いられるものであり、この鍵盤6の各鍵には、LED群7の各LEDが夫々対応して配置されている。このLEDを点灯させることにより、当該点灯しているLEDが配置された鍵の押鍵を演奏者に促し、またLEDを消灯させることにより、離鍵を促す。
【0027】
SW部8は、鍵盤楽器の動作モードを切り替えるスイッチ等から構成され、音源9は、鍵盤6の押鍵・離鍵により生成されるノートオン・ノートオフのイベントに基づいて楽音信号を生成・停止するものであり、生成された楽音信号は発音回路10に供給されて楽音を発生する。
【0028】
次に図4〜図11のCPU1のフローチャートを用いて本装置の動作を説明する。
図4は、全体のフローチャートである。まず電源が投入されると、イニシャライズ処理が行なわれ、CPU1内のレジスタ、ワークRAM3の内容が初期化される(ステップS401)。次にステップS402に移行し、現在のモードが通常モードであるか否か判断され、通常モードであるなら通常モード処理(ステップS403)が実行される。
【0029】
通常モードでない場合は、トレーニングモードであるか否か判断され(ステップS404)、トレーニングモードであるならトレーニングモード処理(ステップS405)が実行される。
トレーニングモードでない場合は、ガイドモードであるか否か判断され(ステップS406)、トレーニングモードであるならガイドモード処理(ステップS407)が実行される。
ガイドモードでない場合、通常モード処理(ステップS403)、トレーニングモード処理(ステップS405)及びガイドモード処理(ステップS407)の実行終了後には、再びステップS402に戻る。
【0030】
図5は、図4の通常モード処理(ステップS403)のサブルーチンである。
まず、鍵盤6上のいずれかの鍵に変化があったか否か判別する(S501)。鍵変化がオン(押鍵)である場合は、ステップS502に移行し、押鍵された鍵の鍵番号、押鍵強度(ベロシテイ)等に基づいてノートオンイベントを生成し、ステップS503に進んで音源9に送付する。
また、鍵変化がオフ(離鍵)である場合は、ステップS504に移行し、押鍵された鍵の鍵番号等に基づいてノートオフイベントを生成し、ステップS503に進んで音源9に送付する。
音源9は送付されたイベントに基づいて楽音信号の生成を開始あるいは停止する。
【0031】
このステップS503の処理の後、あるいはステップS501で鍵変化なしと判断された場合、SW部8の操作など、モード変更の指示があつたかどうか判断する(ステップS505)。もしモード変更の指示があったなら、その指示に対応したモード変更処理を行い(ステップS506)、この処理を抜ける。またモード変更の指示がなければ、そのままこの処理を抜ける。
【0032】
図6〜図9は、図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンを示す。
まず、ワークRAM3内のAREA()内をクリアする(ステップS601)。次いでクリアフラグCLF1及びCLF2を0にセットし(ステップS602)し、ポインタaに1をセットする(ステップS603)。
【0033】
そして、ワークRAM3内のF(1)〜F(5)の各エリアに、プログラムROM2に記憶された初期指位置データをストアさせる(ステップS604)。
本実施形態では最初に右手指全てで鍵盤の鍵を押鍵させるように構成される。このため初期指位置データは、この押鍵すべき5個の鍵の鍵番号から成る。
次にこのワークRAM3内のF(1)〜F(5)に夫々ストアされた鍵番号の鍵に対応するLED群7のLEDを点灯させる(ステップS605)。
【0034】
そしてこのLEDの点灯によって指示された鍵が全て押鍵された状態になったか否か判別する(ステップS606)。ここで全て押鍵状態になったと判断された場合は、ステップS607に進み、ポインタnの値を1にセットする。次いでポインタmの値として1をセットする(ステップS608)。
【0035】
次に図7のステップS609に進み、F(n)にストアされた鍵番号の鍵に対応するLEDを消灯させ、CPU1内のタイマーのカウントを開始させる(ステップS610)。
【0036】
この後、タイマーでカウントされた時間がポインタaを引数として指定されるワークRAM3に記憶されたタイマー時間(a)を経過したか否か判断する(ステップS611)。経過していないと判断された場合は、F(n)にストアされた鍵番号の鍵が離鍵されたか否か判断し(ステップS612)、離鍵されたと判断された場合は、このF(n)に対応する鍵以外で押鍵されている鍵が離鍵されずに押鍵の状態を保っているか否か判断する(ステップS613)。ここで押鍵の状態を保っているなら、つまり、LEDの消灯した鍵が離鍵され、それ以外の押鍵された鍵がそのまま押鍵状態を保っているなら、フラグCLF1を0から1に変更する(ステップS614)。
一方LEDの消灯した鍵が離鍵されず、あるいは離鍵されたとしても、それに連動して他の押鍵中の鍵も離鍵されてしまった場合はステップS611の処理に戻る。
【0037】
ステップS611において、タイマーでカウントされた時間が、タイマー時間(a)を経過したと判断された場合は、対応するLEDが消灯しているF(n)の鍵に対応する対応するLEDを再び点灯させる(ステップS615)。続いてステップS616に進み、今度はF(m)にストアされた鍵番号の鍵に対応するLEDを消灯させ、そしてタイマーをクリアしてスタートさせる(ステップS617)。
【0038】
この後、タイマーでカウントされた時間がタイマー時間(a)を経過したか否か判断する(ステップS618)。経過していないと判断された場合は、F(m)にストアされた鍵番号の鍵が離鍵されたか否か判断し(ステップS619)、離鍵されたと判断された場合は、このF(m)に対応する鍵以外で押鍵されている鍵が離鍵されずに押鍵の状態を保っているか否か判断する(ステップS620)。ここで押鍵の状態を保っているなら、つまり、LEDの消灯した鍵が離鍵され、それ以外の押鍵された鍵がそのまま押鍵状態を保っているなら、フラグCLF2を0から1に変更する(ステップS621)。
そして、タイマーでカウントされた時間がタイマー時間(a)を経過していない状態で、LEDの消灯した鍵が離鍵されず、あるいは離鍵されたとしても、それに連動して他の押鍵中の鍵も離鍵されてしまった場合はステップS618の処理に戻る。
【0039】
一方、タイマーでカウントされた時間がタイマー時間(a)を経過した場合はF(m)の鍵に対応するLEDを再び点灯し(ステップS622)、フラグCLF1あるいはCLF2の少なくとも一方が0であるかどうか判断する(ステップS623)。もし0であるならば、ステップS624に進み、ポインタaを引数として指定されるワークRAM3内のAREA(a)の領域に、F(n)及びF(m)をストアする。そしてCLF1及びCLF2を0に戻す(ステップS625)。
【0040】
この後、ポインタmをインクリメントし(ステップS626)、このmの値がnの値と一致していないか否か判断する(ステップS627)。一致していれば、ステップS626に戻り、また、一致していなければこのmの値が5を超えたか否か判断する(ステップS628)。そして超えていなければステップS609に戻り、ステップS609〜S628までの処理を繰り返す。
mの値が5を超えた場合は、ポインタnをインクリメントし(ステップS629)、このnの値がmの値と一致していないか否か判断する(ステップS630)。一致していれば、ステップS629に戻り、また、一致していなければこのnの値が5を超えたか否か判断する(ステップS631)。そして超えていなければステップS608に戻り、ステップS608〜S631までの処理を繰り返す。
【0041】
この上述の処理を繰り返すことにより、つまり最初のn=1及びm=1の場合は、親指→親指の組み合わせ、次にn=1及びm=2の場合は、親指→人指し指の組み合わせ、さらにn=1及びm=3、の場合は親指→中指の組み合わせが順次判断される。このように2種類の指の組み合わせの離鍵動作が所定のタイミングで行なわれたどうかが判断される。
つまり、押鍵に用いている右手指の2つの指の組み合わせ全てに対する離鍵動作が所定のタイミングで行なわれたどうかが判断され、行なうことができなかった指の組み合わせがAREA(a)にストアされる。
【0042】
そして、ステップS631において、nの値が5を超えたと判断された場合は、ポインタaの値をインクリメントし(ステップS632)、このインクリメントされたaの値が所定数、つまりワークRAM3に記憶されているタイマー時間T(a)の数を越えたか否か判断し(ステップS633)、超えない場合はS607に戻り、S607〜S633までの処理を繰り返す。つまり、タイマー時間を記憶されている別のタイマー時間に変更して前述の処理を繰り返し行なう。ワークRAM3に記憶されているタイマー時間T(a)は、aの値が大きくなればなるほど、短い時間が記憶されており、離鍵のタイミング指示はより短く早くなって、その操作は難易度が増すように構成されている。
【0043】
aの値がワークRAM3に記憶されているタイマー時間T(a)の数を越えたと判断されると、F(1)〜F(5)の鍵に対応するLEDは全て消灯され(ステップS634)、この演奏トレーニングは終了したことを演奏者に知らせる。
【0044】
そしてこの後、ポインタaに1をセットし(ステップS635)、このポインタaを引数としたワークRAM3のAREA(a)内にこの時点でのn、mのデータが存在するか否かを判別する(ステップS636)。もしデータが存在していなければaの値をインクリメントし(ステップS637)し、aの値が所定数、つまりワークRAM3に記憶されているAREA(a)の数を越えたか否か判断し(ステップS638)、超えてなければ、再びS636に戻る。
【0045】
こうして、AREA(a)にデータが存在しているなら、そのデータであるn及びmを表示部5に表示させる(ステップS639)。
このデータは、離鍵のタイミングが最もゆっくりで演奏の難易度が低い状態で離鍵操作ができなかった2つの指の組み合わせを示しており、言い換えれば、演奏者にとってはこの2つの指の組み合わせの操作が、最も苦手でトレーニングを必要とすることが明白に認識できるようになる。
尚、本実施例では離鍵のタイミングを見ているが、LEDでの離鍵指示後から押鍵指示を行い、演奏者の離鍵から押鍵までの反応時間をカウントし、その時間が所定時間より大きいものを苦手な組み合わせとする方法をもちいてもよい。
【0046】
図13は、表示部5の表示の一例を示す図である。
図においては、n=1、m=3の場合を示し、n=1に対応して親指、m=3に対応して中指が識別表示されている。矢印表示は、親指→中指の順番の操作であることを示す。
【0047】
再び図9に戻り、ステップS628においてAREA(a)のエリアにデータが存在していない、と判断された場合は、データがない旨を表示部5に表示させる(ステップS640)。
これら表示がなされた後、SW部8によりもう一度処理を再開するスイッチ操作が行われたか否か判断し(ステップS641)、操作が行われていると判断されたなら、ステップS601に戻り処理を再開する。
また、再開するスイッチ操作が行われていないと判断された場合は、モード変更の指示があつたかどうか判断する(ステップS642)。もしモード変更の指示があったなら、その指示に対応したモード変更処理を行い(ステップS643)、この処理を抜ける。またモード変更の指示がなければ、S641の処理に戻る。
【0048】
図10〜図12は、図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。このフローでは、主に演奏者が苦手な指の組み合わせの動きを楽しくトレーニングさせるために、曲データROM4の中から演奏者の苦手な指の組み合わせを多数含む曲を検索し練習させるということを行なう。演奏者には、この苦手な指の動きを含む曲を、後述する擬似的なワンキープレーで演奏させたり、もしくはその曲で本来用いるべき運指で演奏させることにより、不得意な指の組み合わせを楽しみながら高い頻度で集中させながらトレーニングできるようにしている。
図10において、まず、SW部8により曲選択操作がなされた否か判断される(ステップS1001)。曲選択操作がなされていると判断された場合は、SW部8により入力された曲番号をレジスタMにストアする(ステップS1002)。
【0049】
曲選択操作がなされないと判断された場合はステップS1003に進み、曲検索操作がなされたか否か判断する。検索操作が為されたと判断された場合は、まずポインタaに1をセットする(ステップS1004)。次にこのaを引数として指定されるワークRAM3のAERA(a)内にデータn及びm、つまりトレーニングの必要とする指の番号が存在するか否か判断する(ステップS1005)。もし、存在しないと判断された場合は、aをインクリメントする(ステップS1006)。そしてそのaの値が所定数、つまりAREA()の数を超えないかどうか判断し(ステップS1007)、超えていなければステップS1005の処理に戻る。
【0050】
こうして、AERA(a)内にデータn及びm、つまりトレーニングの必要とする指の番号が存在する判断された場合、ステップS1008に進み、今度はこの指番号の組み合わせが、AERA(a)内に複数存在するか否か判断する。ここで複数存在すると判断された場合はステップS1009において任意のひとつを選択して、複数存在しない場合はそのままステップS1010に進む。
【0051】
ステップS1010においては、曲データROM4に記憶されている曲データの中から、AREA(a)内から選択された指番号の組み合わせを最も多く有する曲を選択する。
この記憶されている曲データを構成する各イベントは、図3に示すように、指番号を含んでいる。従って各イベントに含まれる指番号とその次に続くイベントに含まれる指番号との組み合わせが、AREA(a)内から選択された指番号の組み合わせと同じものであるか判断し、同じ組み合わせが曲データ内にいくつ存在するか数えれば、最もこの組み合わせ数の多い曲データを検索することが可能となる。
こうして検索された曲の曲番号をレジスタMにストアする(ステップS1011)。
【0052】
一方、ステップS1003において、曲検索操作がなされなかったと判断された場合、あるいはステップS1007において、ポインタaの値が所定数を超えた場合は、モード変更の指示があつたかどうか判断する(ステップS1012)。もしモード変更の指示があったなら、その指示に対応したモード変更処理を行い(ステップS1013)、この処理を抜ける。またモード変更の指示がなければ、S1001の処理に戻る。
【0053】
ステップS1002あるいはS1011において、レジスタMに曲番号がストアされた後、図11のステップS1014に進み、ワークRAM3内のF(1)〜F(5)の各エリアに、プログラムROM2に記憶された初期指位置データをストアさせる。
次にこのワークRAM3内のF(1)〜F(5)に夫々ストアされた鍵番号の鍵に対応するLED群7のLEDを点灯させる(ステップS1015)。
【0054】
そしてこのLEDの点灯によって指示された鍵が全て押鍵された状態になったか否か判別する(ステップS1016)。ここで演奏者が右手の指を全て使って押鍵して、指示された鍵が全て押鍵された状態になったと判断された場合は、ステップS1017に進み、いったんF(1)〜F(5)に夫々ストアされた鍵番号の鍵に対応するLEDを消灯させる。さらに、曲データROM5のデータを読み出すためのアドレスポインタADに、曲番号Mにて指定される曲データの先頭アドレスをセットする(ステップS1018)。
【0055】
続いて、0あるいは1を表わすデータをランダムに発生する(ステップS1019)。ここで、このランダムに発生したデータが0であるか判断し(ステップS1020)、0であればF(n)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1021)。そして、この後演奏者が鍵盤に対して押鍵を行ない、かつその押鍵がF(n)の鍵に対するものであるかどうか判断する(ステップS1022、S1023)。この押鍵が行なわれたと判断すると、F(n)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1024)。そうでない場合は、ステップS1022、S1023の処理を繰り返す。
【0056】
一方、ランダムに発生したデータが1である場合は、F(m)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1025)。そして、この後演奏者が鍵盤に対して押鍵を行ない、かつその押鍵がF(n)の鍵に対するものであるかどうか判断する(ステップS1026、S1027)。この押鍵が行なわれたと判断すると、F(n)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1028)。そうでない場合は、ステップS1026、S1027の処理を繰り返す。尚、LED点灯にランダムデータを用いた狙いは、演奏者が次にどの指を押せばよいのか予測不可能にさせ、鍵盤操作に対する集中度合いが高まることにより脳を活性化させて効果的なトレーニングをさせるためである。
【0057】
このように、LEDの点灯により指示されたF(n)又はF(m)の鍵が押鍵されると、アドレスポインタADを進め(ステップS1029)、このADにより曲データROM5から読み出された曲データが、何であるか判断する(ステップS1030)。もし読み出されたデータがタイムであるなら、ステップS1029の処理に戻り、再びADを進める。イベントであれば、ステップS1031に進み、この読み出されたイベントデータを音源9に送付してステップS1014の処理に戻る。
一方、読み出されたデータが終了を表わすENDであれば、これは曲データの読出しが全て終了したことを意味し、再びS1001の処理に戻る。
【0058】
ここにおいて、n、mは運動能力向上が必要な指番号であり、F(n)及びF(m)は、n、mの指番号を有する指にて押鍵すべき鍵である。そして、このF(n)あるいはF(m)を指示されたとおりに押鍵する毎に、選択された曲データに含まれるイベントを順次読み出して発音される。
つまり、運動能力向上が必要と判断された指を指示されたように動かすことによってトレーニングがなされると同時に、この不得手な指を用いて、いわゆるワンキープレイのような単純な奏法で曲の演奏が行われる。
【0059】
このように、本実施形態においては、まず演奏者に鍵盤6上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵させ、この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択し、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミングで指示し、この指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する。そして、この判別の終了後に、前記選択された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の2つの鍵の組み合わせを選択させ、前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、判別結果を表示部5に表示させる。
【0060】
これによって演奏者はどの指の運動能力の向上が必要であるかを認識でき、かつこの一連の動作を繰り返し行なうことにより、不得手な指の運動能力の向上が図れる。さらに、全ての指のうち、ある指は押鍵状態を保持しつつ、それ以外の指のみ離鍵を行なわせる、というような一連動作を繰り返し行なわせることにより、脳に刺激をあたえることができ、脳の活性化を促すことが可能となる。
【0061】
また、本実施形態においては、操作が不得手と判断された指の運動能力を向上させるために、予め用意された複数の曲データの中から、この不得手な指操作の組み合わせを最も多く含む曲データを検索し、この検索された曲を、あたかもワンキープレイのような奏法を行なう感覚で演奏することで、不得手な指の運等能力向上のトレーニングが可能となる。
これによって、検索された曲を演奏するだけで、不得手な指の運等能力向上を特別に意識することなくトレーニングが行えるため、演奏者の心理的負担が大幅に低減する。
【0062】
一方、本実施形態においては、右手指のみのトレーニングを行う構成であるが、左手指のトレーニングに適用することも可能であり、さらには両手の全ての指のトレーニングに適用することも、もちろん可能である。
【0063】
さらには、本実施形態においては、2種類の指の組み合わせを選択しているが、当然3種類以上の指の組み合わせや和音の組み合わせとしもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の演奏トレーニング装置を適用した鍵盤楽器の内部構成を示したブロック図である。
【図2】図1のワークRAM3のデータ構成を示した図である。
【図3】図1の曲データROM4のデータ構成を示した図である。
【図4】図1のCPU1の処理を示す全体のフローチャートである。
【図5】図4の通常モード処理(ステップS403)のサブルーチンである。
【図6】図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図7】図6に続く図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図8】図7に続く図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図9】図8に続く図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図10】図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。
【図11】図10に続く図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。
【図12】図11に続く図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。
【図13】表示部5の表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 CPU
2 プログラムROM
3 ワークRAM
4 曲データROM
5 表示部
6 鍵盤
7 LED群
8 SW部
9 音源
10 発音回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏操作トレーニング装置及び演奏操作トレーニング処理のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵盤楽器の演奏をより効率的に行うさまざまな手法が提案されている。例えば、特許文献1には、各鍵に対応して発光素子を設け、指定された曲を演奏するに際して押鍵すべき鍵に対応する発光素子を押鍵すべきタイミングにあわせて順次点灯させることにより、演奏者にどの鍵をどのタイミングで押鍵すべきかを認識させる構成が開示されている。
このような構成を適用することにより、演奏者は曲を演奏するための押鍵順序及び押鍵タイミングを認識でき、より早く曲の演奏ができるようになる。
【0003】
さらに、特許文献2には、このような押鍵順序及び押鍵タイミングだけでなく、押鍵に用いられる指も合わせて表示できるようにした構成が開示されている。このような構成を用いれば、曲の演奏に必要な運指操作も認識できるようなり、より本格的な演奏の練習がより効率的に行なうことが可能になる。
【特許文献1】特公平01−053469公報
【特許文献2】実開平03−089467公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示されているような構成の演奏トレーニング装置は、演奏練習の課題とし与えられた曲のみを演奏できるようにするのを目的とするならば、きわめて有効である。しかしながら、この課題として与えられた曲が演奏できるようになったとしても、それ以外の押鍵順序、タイミンク及び運指の形態が異なる他の曲が演奏できる、という保証にはならない。
【0005】
特に運指、演奏に必要な指使いについては、演奏者あるいは指定される曲に応じて得意、不得意が分かれる場合が多い。
これは、各指の運動能力に個人差があることに起因する。つまり、ある人は中指を動かすことが非常に不得手であるのに対して、他の人は薬指を動かすことが不得手であったりする。
鍵盤楽器の演奏には、全ての指を自由自在に使って押鍵できるようにしなければならず、特定の指の指使いが不得手であったならば、それを克服しなければ演奏は上達しない。
この不得手な指操作を克服しようとすれば、この不得手となる指のみを動かしてその運動能力を向上させればよい。しかしながら、単に不得手な指のみを単調に意味もなく動かすようにトレーニングを行うことは、苦痛以外何物でもなく、長続きがしない。このため、こうした指のトレーニングであることをあまり意識せずに、運動能力の向上を図れる工夫が望まれていた。
【0006】
また、指を使う鍵盤楽器の演奏は、脳の活性化に非常に有効であることが証明されている。
これは、脳がどの指を動かさねばならないかを認識し、その指に対して動かすことを指令するという一連の動作が、脳に刺激を与えるからであり、さらにこの動作がより複雑かつ早いタイミングで行なえば行なうほど脳に与える刺激が大きくなる。
【0007】
特に、全ての指のうち、ある指はそのままの状態を保持しつつ、それ以外の指のみ指定された動きを行なわせるというような動作は、各指の運動能力の向上に役立つばかりでなく、脳に対して大きな刺激が与えられ、脳の活性化に対して非常に有効であることが知られている。
【0008】
本発明は、鍵盤楽器の演奏に必要な各指の運動能力の向上が図れるとともに、脳の活性化にも役立つ演奏トレーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の演奏トレーニング装置は、鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別手段と、この第1の判別手段により、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から少なくとも2つの鍵を選択する鍵選択手段と、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されている状態で、この鍵指定手段により指定された前記少なくとも2つの鍵のいずれかひとつが押鍵される毎に、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段からイベントを順次読み出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出し手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記演奏操作トレーニング装置はさらに、前記鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵を指示する押鍵指示手段を有し、前記第1の判別手段は、この押鍵指示手段にて指示された複数の鍵全てが押鍵されているか否か判別することが望ましい。
【0011】
また、前記演奏操作トレーニング装置は、前記組み合わせ選択手段により前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、前記指示手段にて指示される前記所定のタイミングを変更して、前記組み合わせ選択手段、前記指示手段、前記第2の判別手段、及び前記選択制御手段に同一の動作を繰り返し行わせる制御手段をさらに有することが望ましい。
【0012】
そして、前記制御手段は、前記繰り返し動作を行わせる毎に、前記所定のタイミングを早くすることが望ましい。
【0013】
また、本発明演奏操作トレーニング処理のプログラムは、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段を有するコンピューターに、
鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別ステップと、この第1の判別ステップにより、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択する組み合わせ選択ステップと、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミング指示する指示ステップと、この指示ステップにより指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する第2の判別ステップと、この第2の判別手段による判別の終了後に、前記組み合わせ選択ステップにより選択された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の2つの鍵の組み合わせを前記組み合わせ選択ステップに選択させる選択制御ステップと、前記組み合わせ選択ステップにより前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、前記第2の判別ステップによる判別結果に基づき、前記指定されたタイミングで離鍵できない前記2つの鍵を特定する特定ステップと、この特定ステップにて特定された前記2つの鍵の少なくとも一方を押鍵する毎に、前記記憶手段に記憶された曲データのイベントを順次読出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出しステップと、を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、まず演奏者に鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵させ、この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択し、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミングで指示し、この指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する。そして、この判別の終了後に、前記選択された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の2つの鍵の組み合わせを選択させ、前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、指定されたタイミングで離鍵できない2つの鍵を特定する。さらに、この特定された前記2つの鍵の少なくとも一方を押鍵する毎に、前記記憶手段に記憶された曲データを構成するイベントを順次読出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する。
【0015】
これによって演奏者はどの指の運動能力の向上が必要であるかを認識でき、かつこの一連の動作を繰り返し行なうことにより、不得手な指の運動能力の向上が図れる。そして、この不得手な指の運動能力に最も適した曲を演奏するだけで、不得手な指の運等能力向上を特別に意識することなくトレーニングが行えるため、演奏者の心理的負担が大幅に低減する。
【0016】
さらに、全ての指のうち、ある指は押鍵状態を保持しつつ、それ以外の指のみ離鍵を行なわせる、というような一連動作を繰り返し行なわせることにより、脳に刺激をあたえることができ、脳の活性化を促すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の演奏トレーニング装置を適用した鍵盤楽器の内部構成を示したブロック図である。
【0019】
図1において、CPU1、プログラムROM2、ワークRAM3、曲データROM4、表示部5、鍵盤6、LED群7、SW部8及び音源9は共通のバスラインで接続されている。CPU1は、プログラムROM2に記憶されたプログラムに基づいて鍵盤楽器全体の処理を行なうものである。またこのプログラムROM2には、CPU1で行なわれる処理を制御するプログラムの他に、最初に全ての指で押鍵すべき鍵を示すための鍵番号もあわせて記憶されている。
【0020】
ワークRAM3は、CPU1により行なわれる処理に必要なデータ等を一時的に記憶するものであり、そのデータ構成は図2に示すように、初期指位置データF(1)〜F(5)、タイマー時間データT(1)〜T(a)、さらにはエリアデータAREA(1)〜AREA(a)が記憶される領域を有する。
【0021】
初期指位置データF(1)〜F(5)は、最初に鍵盤上に右手指全てを用いて押鍵する際、各指が押鍵すべき鍵の番号が記憶されるものであり、プログラムROM2から転送されてくるものである。
この1〜5は指番号を表わすものであり、本実施形態においては、右手親指は1、右手人指し指は2、右手中指は3、右手薬指は4、及び右手小指は5を示している。
【0022】
タイマー時間データT(1)〜T(a)は、本発明では右手指全てで押鍵している最中にいずれか2つの指を順次離鍵操作させるために指示を行なうが、その離鍵操作のタイミング記憶するエリアである。
本実施形態においては、この離鍵操作をタイミングを早めながら複数回行なわせるように構成されているため、このタイマー時間データは複数種用意されている。
【0023】
エリアデータAREA(1)〜AREA(a)は、上述のタイマー時間データのエリア夫々に対応して設けられ、離鍵操作が指示されたタイミングで行なえなかった場合、この2つの指で押鍵されている鍵番号の組み合わせを記憶するエリアである。
【0024】
曲データROM4は、演奏練習の対象となる複数の曲データ(1)〜(M)が記憶されている。
図3は、この曲データROM4のデータ構成を示した図である。記憶されている曲データは、押鍵(ノートオン)を示すイベントと、各イベント間の発生タイミングを表わすタイムの組み合わせからなる。
各イベントは、イベントの種類(押鍵、離鍵)を識別するイベント種、押鍵又は離鍵される鍵を示すノート番号(鍵番号)、及びベロシテイからなる。
【0025】
図1に戻り、表示部5は、液晶等の表示素子からなるものであり、本実施形態では、指示どおりに離鍵操作のできなかった2つの鍵に対応する指を表示するものである。
【0026】
鍵盤6は、演奏操作に用いられるものであり、この鍵盤6の各鍵には、LED群7の各LEDが夫々対応して配置されている。このLEDを点灯させることにより、当該点灯しているLEDが配置された鍵の押鍵を演奏者に促し、またLEDを消灯させることにより、離鍵を促す。
【0027】
SW部8は、鍵盤楽器の動作モードを切り替えるスイッチ等から構成され、音源9は、鍵盤6の押鍵・離鍵により生成されるノートオン・ノートオフのイベントに基づいて楽音信号を生成・停止するものであり、生成された楽音信号は発音回路10に供給されて楽音を発生する。
【0028】
次に図4〜図11のCPU1のフローチャートを用いて本装置の動作を説明する。
図4は、全体のフローチャートである。まず電源が投入されると、イニシャライズ処理が行なわれ、CPU1内のレジスタ、ワークRAM3の内容が初期化される(ステップS401)。次にステップS402に移行し、現在のモードが通常モードであるか否か判断され、通常モードであるなら通常モード処理(ステップS403)が実行される。
【0029】
通常モードでない場合は、トレーニングモードであるか否か判断され(ステップS404)、トレーニングモードであるならトレーニングモード処理(ステップS405)が実行される。
トレーニングモードでない場合は、ガイドモードであるか否か判断され(ステップS406)、トレーニングモードであるならガイドモード処理(ステップS407)が実行される。
ガイドモードでない場合、通常モード処理(ステップS403)、トレーニングモード処理(ステップS405)及びガイドモード処理(ステップS407)の実行終了後には、再びステップS402に戻る。
【0030】
図5は、図4の通常モード処理(ステップS403)のサブルーチンである。
まず、鍵盤6上のいずれかの鍵に変化があったか否か判別する(S501)。鍵変化がオン(押鍵)である場合は、ステップS502に移行し、押鍵された鍵の鍵番号、押鍵強度(ベロシテイ)等に基づいてノートオンイベントを生成し、ステップS503に進んで音源9に送付する。
また、鍵変化がオフ(離鍵)である場合は、ステップS504に移行し、押鍵された鍵の鍵番号等に基づいてノートオフイベントを生成し、ステップS503に進んで音源9に送付する。
音源9は送付されたイベントに基づいて楽音信号の生成を開始あるいは停止する。
【0031】
このステップS503の処理の後、あるいはステップS501で鍵変化なしと判断された場合、SW部8の操作など、モード変更の指示があつたかどうか判断する(ステップS505)。もしモード変更の指示があったなら、その指示に対応したモード変更処理を行い(ステップS506)、この処理を抜ける。またモード変更の指示がなければ、そのままこの処理を抜ける。
【0032】
図6〜図9は、図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンを示す。
まず、ワークRAM3内のAREA()内をクリアする(ステップS601)。次いでクリアフラグCLF1及びCLF2を0にセットし(ステップS602)し、ポインタaに1をセットする(ステップS603)。
【0033】
そして、ワークRAM3内のF(1)〜F(5)の各エリアに、プログラムROM2に記憶された初期指位置データをストアさせる(ステップS604)。
本実施形態では最初に右手指全てで鍵盤の鍵を押鍵させるように構成される。このため初期指位置データは、この押鍵すべき5個の鍵の鍵番号から成る。
次にこのワークRAM3内のF(1)〜F(5)に夫々ストアされた鍵番号の鍵に対応するLED群7のLEDを点灯させる(ステップS605)。
【0034】
そしてこのLEDの点灯によって指示された鍵が全て押鍵された状態になったか否か判別する(ステップS606)。ここで全て押鍵状態になったと判断された場合は、ステップS607に進み、ポインタnの値を1にセットする。次いでポインタmの値として1をセットする(ステップS608)。
【0035】
次に図7のステップS609に進み、F(n)にストアされた鍵番号の鍵に対応するLEDを消灯させ、CPU1内のタイマーのカウントを開始させる(ステップS610)。
【0036】
この後、タイマーでカウントされた時間がポインタaを引数として指定されるワークRAM3に記憶されたタイマー時間(a)を経過したか否か判断する(ステップS611)。経過していないと判断された場合は、F(n)にストアされた鍵番号の鍵が離鍵されたか否か判断し(ステップS612)、離鍵されたと判断された場合は、このF(n)に対応する鍵以外で押鍵されている鍵が離鍵されずに押鍵の状態を保っているか否か判断する(ステップS613)。ここで押鍵の状態を保っているなら、つまり、LEDの消灯した鍵が離鍵され、それ以外の押鍵された鍵がそのまま押鍵状態を保っているなら、フラグCLF1を0から1に変更する(ステップS614)。
一方LEDの消灯した鍵が離鍵されず、あるいは離鍵されたとしても、それに連動して他の押鍵中の鍵も離鍵されてしまった場合はステップS611の処理に戻る。
【0037】
ステップS611において、タイマーでカウントされた時間が、タイマー時間(a)を経過したと判断された場合は、対応するLEDが消灯しているF(n)の鍵に対応する対応するLEDを再び点灯させる(ステップS615)。続いてステップS616に進み、今度はF(m)にストアされた鍵番号の鍵に対応するLEDを消灯させ、そしてタイマーをクリアしてスタートさせる(ステップS617)。
【0038】
この後、タイマーでカウントされた時間がタイマー時間(a)を経過したか否か判断する(ステップS618)。経過していないと判断された場合は、F(m)にストアされた鍵番号の鍵が離鍵されたか否か判断し(ステップS619)、離鍵されたと判断された場合は、このF(m)に対応する鍵以外で押鍵されている鍵が離鍵されずに押鍵の状態を保っているか否か判断する(ステップS620)。ここで押鍵の状態を保っているなら、つまり、LEDの消灯した鍵が離鍵され、それ以外の押鍵された鍵がそのまま押鍵状態を保っているなら、フラグCLF2を0から1に変更する(ステップS621)。
そして、タイマーでカウントされた時間がタイマー時間(a)を経過していない状態で、LEDの消灯した鍵が離鍵されず、あるいは離鍵されたとしても、それに連動して他の押鍵中の鍵も離鍵されてしまった場合はステップS618の処理に戻る。
【0039】
一方、タイマーでカウントされた時間がタイマー時間(a)を経過した場合はF(m)の鍵に対応するLEDを再び点灯し(ステップS622)、フラグCLF1あるいはCLF2の少なくとも一方が0であるかどうか判断する(ステップS623)。もし0であるならば、ステップS624に進み、ポインタaを引数として指定されるワークRAM3内のAREA(a)の領域に、F(n)及びF(m)をストアする。そしてCLF1及びCLF2を0に戻す(ステップS625)。
【0040】
この後、ポインタmをインクリメントし(ステップS626)、このmの値がnの値と一致していないか否か判断する(ステップS627)。一致していれば、ステップS626に戻り、また、一致していなければこのmの値が5を超えたか否か判断する(ステップS628)。そして超えていなければステップS609に戻り、ステップS609〜S628までの処理を繰り返す。
mの値が5を超えた場合は、ポインタnをインクリメントし(ステップS629)、このnの値がmの値と一致していないか否か判断する(ステップS630)。一致していれば、ステップS629に戻り、また、一致していなければこのnの値が5を超えたか否か判断する(ステップS631)。そして超えていなければステップS608に戻り、ステップS608〜S631までの処理を繰り返す。
【0041】
この上述の処理を繰り返すことにより、つまり最初のn=1及びm=1の場合は、親指→親指の組み合わせ、次にn=1及びm=2の場合は、親指→人指し指の組み合わせ、さらにn=1及びm=3、の場合は親指→中指の組み合わせが順次判断される。このように2種類の指の組み合わせの離鍵動作が所定のタイミングで行なわれたどうかが判断される。
つまり、押鍵に用いている右手指の2つの指の組み合わせ全てに対する離鍵動作が所定のタイミングで行なわれたどうかが判断され、行なうことができなかった指の組み合わせがAREA(a)にストアされる。
【0042】
そして、ステップS631において、nの値が5を超えたと判断された場合は、ポインタaの値をインクリメントし(ステップS632)、このインクリメントされたaの値が所定数、つまりワークRAM3に記憶されているタイマー時間T(a)の数を越えたか否か判断し(ステップS633)、超えない場合はS607に戻り、S607〜S633までの処理を繰り返す。つまり、タイマー時間を記憶されている別のタイマー時間に変更して前述の処理を繰り返し行なう。ワークRAM3に記憶されているタイマー時間T(a)は、aの値が大きくなればなるほど、短い時間が記憶されており、離鍵のタイミング指示はより短く早くなって、その操作は難易度が増すように構成されている。
【0043】
aの値がワークRAM3に記憶されているタイマー時間T(a)の数を越えたと判断されると、F(1)〜F(5)の鍵に対応するLEDは全て消灯され(ステップS634)、この演奏トレーニングは終了したことを演奏者に知らせる。
【0044】
そしてこの後、ポインタaに1をセットし(ステップS635)、このポインタaを引数としたワークRAM3のAREA(a)内にこの時点でのn、mのデータが存在するか否かを判別する(ステップS636)。もしデータが存在していなければaの値をインクリメントし(ステップS637)し、aの値が所定数、つまりワークRAM3に記憶されているAREA(a)の数を越えたか否か判断し(ステップS638)、超えてなければ、再びS636に戻る。
【0045】
こうして、AREA(a)にデータが存在しているなら、そのデータであるn及びmを表示部5に表示させる(ステップS639)。
このデータは、離鍵のタイミングが最もゆっくりで演奏の難易度が低い状態で離鍵操作ができなかった2つの指の組み合わせを示しており、言い換えれば、演奏者にとってはこの2つの指の組み合わせの操作が、最も苦手でトレーニングを必要とすることが明白に認識できるようになる。
尚、本実施例では離鍵のタイミングを見ているが、LEDでの離鍵指示後から押鍵指示を行い、演奏者の離鍵から押鍵までの反応時間をカウントし、その時間が所定時間より大きいものを苦手な組み合わせとする方法をもちいてもよい。
【0046】
図13は、表示部5の表示の一例を示す図である。
図においては、n=1、m=3の場合を示し、n=1に対応して親指、m=3に対応して中指が識別表示されている。矢印表示は、親指→中指の順番の操作であることを示す。
【0047】
再び図9に戻り、ステップS628においてAREA(a)のエリアにデータが存在していない、と判断された場合は、データがない旨を表示部5に表示させる(ステップS640)。
これら表示がなされた後、SW部8によりもう一度処理を再開するスイッチ操作が行われたか否か判断し(ステップS641)、操作が行われていると判断されたなら、ステップS601に戻り処理を再開する。
また、再開するスイッチ操作が行われていないと判断された場合は、モード変更の指示があつたかどうか判断する(ステップS642)。もしモード変更の指示があったなら、その指示に対応したモード変更処理を行い(ステップS643)、この処理を抜ける。またモード変更の指示がなければ、S641の処理に戻る。
【0048】
図10〜図12は、図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。このフローでは、主に演奏者が苦手な指の組み合わせの動きを楽しくトレーニングさせるために、曲データROM4の中から演奏者の苦手な指の組み合わせを多数含む曲を検索し練習させるということを行なう。演奏者には、この苦手な指の動きを含む曲を、後述する擬似的なワンキープレーで演奏させたり、もしくはその曲で本来用いるべき運指で演奏させることにより、不得意な指の組み合わせを楽しみながら高い頻度で集中させながらトレーニングできるようにしている。
図10において、まず、SW部8により曲選択操作がなされた否か判断される(ステップS1001)。曲選択操作がなされていると判断された場合は、SW部8により入力された曲番号をレジスタMにストアする(ステップS1002)。
【0049】
曲選択操作がなされないと判断された場合はステップS1003に進み、曲検索操作がなされたか否か判断する。検索操作が為されたと判断された場合は、まずポインタaに1をセットする(ステップS1004)。次にこのaを引数として指定されるワークRAM3のAERA(a)内にデータn及びm、つまりトレーニングの必要とする指の番号が存在するか否か判断する(ステップS1005)。もし、存在しないと判断された場合は、aをインクリメントする(ステップS1006)。そしてそのaの値が所定数、つまりAREA()の数を超えないかどうか判断し(ステップS1007)、超えていなければステップS1005の処理に戻る。
【0050】
こうして、AERA(a)内にデータn及びm、つまりトレーニングの必要とする指の番号が存在する判断された場合、ステップS1008に進み、今度はこの指番号の組み合わせが、AERA(a)内に複数存在するか否か判断する。ここで複数存在すると判断された場合はステップS1009において任意のひとつを選択して、複数存在しない場合はそのままステップS1010に進む。
【0051】
ステップS1010においては、曲データROM4に記憶されている曲データの中から、AREA(a)内から選択された指番号の組み合わせを最も多く有する曲を選択する。
この記憶されている曲データを構成する各イベントは、図3に示すように、指番号を含んでいる。従って各イベントに含まれる指番号とその次に続くイベントに含まれる指番号との組み合わせが、AREA(a)内から選択された指番号の組み合わせと同じものであるか判断し、同じ組み合わせが曲データ内にいくつ存在するか数えれば、最もこの組み合わせ数の多い曲データを検索することが可能となる。
こうして検索された曲の曲番号をレジスタMにストアする(ステップS1011)。
【0052】
一方、ステップS1003において、曲検索操作がなされなかったと判断された場合、あるいはステップS1007において、ポインタaの値が所定数を超えた場合は、モード変更の指示があつたかどうか判断する(ステップS1012)。もしモード変更の指示があったなら、その指示に対応したモード変更処理を行い(ステップS1013)、この処理を抜ける。またモード変更の指示がなければ、S1001の処理に戻る。
【0053】
ステップS1002あるいはS1011において、レジスタMに曲番号がストアされた後、図11のステップS1014に進み、ワークRAM3内のF(1)〜F(5)の各エリアに、プログラムROM2に記憶された初期指位置データをストアさせる。
次にこのワークRAM3内のF(1)〜F(5)に夫々ストアされた鍵番号の鍵に対応するLED群7のLEDを点灯させる(ステップS1015)。
【0054】
そしてこのLEDの点灯によって指示された鍵が全て押鍵された状態になったか否か判別する(ステップS1016)。ここで演奏者が右手の指を全て使って押鍵して、指示された鍵が全て押鍵された状態になったと判断された場合は、ステップS1017に進み、いったんF(1)〜F(5)に夫々ストアされた鍵番号の鍵に対応するLEDを消灯させる。さらに、曲データROM5のデータを読み出すためのアドレスポインタADに、曲番号Mにて指定される曲データの先頭アドレスをセットする(ステップS1018)。
【0055】
続いて、0あるいは1を表わすデータをランダムに発生する(ステップS1019)。ここで、このランダムに発生したデータが0であるか判断し(ステップS1020)、0であればF(n)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1021)。そして、この後演奏者が鍵盤に対して押鍵を行ない、かつその押鍵がF(n)の鍵に対するものであるかどうか判断する(ステップS1022、S1023)。この押鍵が行なわれたと判断すると、F(n)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1024)。そうでない場合は、ステップS1022、S1023の処理を繰り返す。
【0056】
一方、ランダムに発生したデータが1である場合は、F(m)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1025)。そして、この後演奏者が鍵盤に対して押鍵を行ない、かつその押鍵がF(n)の鍵に対するものであるかどうか判断する(ステップS1026、S1027)。この押鍵が行なわれたと判断すると、F(n)の鍵番号を有する鍵のLEDを点灯させる(ステップS1028)。そうでない場合は、ステップS1026、S1027の処理を繰り返す。尚、LED点灯にランダムデータを用いた狙いは、演奏者が次にどの指を押せばよいのか予測不可能にさせ、鍵盤操作に対する集中度合いが高まることにより脳を活性化させて効果的なトレーニングをさせるためである。
【0057】
このように、LEDの点灯により指示されたF(n)又はF(m)の鍵が押鍵されると、アドレスポインタADを進め(ステップS1029)、このADにより曲データROM5から読み出された曲データが、何であるか判断する(ステップS1030)。もし読み出されたデータがタイムであるなら、ステップS1029の処理に戻り、再びADを進める。イベントであれば、ステップS1031に進み、この読み出されたイベントデータを音源9に送付してステップS1014の処理に戻る。
一方、読み出されたデータが終了を表わすENDであれば、これは曲データの読出しが全て終了したことを意味し、再びS1001の処理に戻る。
【0058】
ここにおいて、n、mは運動能力向上が必要な指番号であり、F(n)及びF(m)は、n、mの指番号を有する指にて押鍵すべき鍵である。そして、このF(n)あるいはF(m)を指示されたとおりに押鍵する毎に、選択された曲データに含まれるイベントを順次読み出して発音される。
つまり、運動能力向上が必要と判断された指を指示されたように動かすことによってトレーニングがなされると同時に、この不得手な指を用いて、いわゆるワンキープレイのような単純な奏法で曲の演奏が行われる。
【0059】
このように、本実施形態においては、まず演奏者に鍵盤6上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵させ、この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から2つの鍵の組み合わせを選択し、この選択された2つの鍵夫々を所定のタイミングで指示し、この指示された2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する。そして、この判別の終了後に、前記選択された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の2つの鍵の組み合わせを選択させ、前記2つの鍵の組み合わせの全てを選択した後に、判別結果を表示部5に表示させる。
【0060】
これによって演奏者はどの指の運動能力の向上が必要であるかを認識でき、かつこの一連の動作を繰り返し行なうことにより、不得手な指の運動能力の向上が図れる。さらに、全ての指のうち、ある指は押鍵状態を保持しつつ、それ以外の指のみ離鍵を行なわせる、というような一連動作を繰り返し行なわせることにより、脳に刺激をあたえることができ、脳の活性化を促すことが可能となる。
【0061】
また、本実施形態においては、操作が不得手と判断された指の運動能力を向上させるために、予め用意された複数の曲データの中から、この不得手な指操作の組み合わせを最も多く含む曲データを検索し、この検索された曲を、あたかもワンキープレイのような奏法を行なう感覚で演奏することで、不得手な指の運等能力向上のトレーニングが可能となる。
これによって、検索された曲を演奏するだけで、不得手な指の運等能力向上を特別に意識することなくトレーニングが行えるため、演奏者の心理的負担が大幅に低減する。
【0062】
一方、本実施形態においては、右手指のみのトレーニングを行う構成であるが、左手指のトレーニングに適用することも可能であり、さらには両手の全ての指のトレーニングに適用することも、もちろん可能である。
【0063】
さらには、本実施形態においては、2種類の指の組み合わせを選択しているが、当然3種類以上の指の組み合わせや和音の組み合わせとしもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の演奏トレーニング装置を適用した鍵盤楽器の内部構成を示したブロック図である。
【図2】図1のワークRAM3のデータ構成を示した図である。
【図3】図1の曲データROM4のデータ構成を示した図である。
【図4】図1のCPU1の処理を示す全体のフローチャートである。
【図5】図4の通常モード処理(ステップS403)のサブルーチンである。
【図6】図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図7】図6に続く図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図8】図7に続く図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図9】図8に続く図4のトレーニングモード処理(ステップS405)のサブルーチンの一部である。
【図10】図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。
【図11】図10に続く図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。
【図12】図11に続く図4の曲ガイドモード処理(ステップS407)のサブルーチンである。
【図13】表示部5の表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 CPU
2 プログラムROM
3 ワークRAM
4 曲データROM
5 表示部
6 鍵盤
7 LED群
8 SW部
9 音源
10 発音回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別手段と、
この第1の判別手段により、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後に、当該複数の鍵の中から少なくとも2つの鍵を選択する鍵選択手段と、
前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されている状態で、この鍵指定手段により指定された前記少なくとも2つの鍵のいずれかひとつのみが離鍵して押鍵される毎に、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段からイベントを順次読み出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出し手段と、
を有することを特徴する演奏操作トレーニング装置。
【請求項2】
前記鍵選択手段は、
前記押鍵されている鍵から少なくとも2つの鍵の組み合わせを指定し、この指定された2つの鍵夫々を所定のタイミングで指示する指示手段と、
この指示手段により指示された少なくとも2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する第2の判別手段と、
この第2の判別手段による判別の終了後に、前記指示された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の少なくとも2つの鍵の組み合わせを前記指示手段に指示させる指示制御手段と、
前記指示手段により前記少なくとも2つの鍵の組み合わせの全てを指示した後に、前記第2の判別手段による判別結果に基づき、前記指定されたタイミングで離鍵できない前記2つの鍵の組み合わせを特定する特定手段と、
を有する請求項1記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項3】
前記演奏操作トレーニング装置はさらに、前記鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵を指示する押鍵指示手段を有し、
前記第1の判別手段は、この押鍵指示手段にて指示された複数の鍵全てが押鍵されているか否か判別する請求項1記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項4】
前記演奏操作トレーニング装置は、前記指示手段により前記2つの鍵の組み合わせの全てを指示した後に、当該指示手段にて指示される前記所定のタイミングを変更して、前記指示手段、前記第2の判別手段、及び前記指示制御手段に同一の動作を繰り返し行わせる制御手段をさらに有する請求項2記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記繰り返し動作を行わせる毎に、前記所定のタイミングを早くする請求項3記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項6】
コンピューターに、
鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別ステップと、
この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から少なくとも2つの鍵を選択する鍵選択ステップと、
前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されている状態で、この指定された前記少なくとも2つの鍵のいずれかひとつが押鍵される毎に、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段からイベントを順次読み出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出しステップと、
を実行させる演奏操作トレーニング処理のプログラム。
【請求項1】
鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別手段と、
この第1の判別手段により、前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後に、当該複数の鍵の中から少なくとも2つの鍵を選択する鍵選択手段と、
前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されている状態で、この鍵指定手段により指定された前記少なくとも2つの鍵のいずれかひとつのみが離鍵して押鍵される毎に、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段からイベントを順次読み出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出し手段と、
を有することを特徴する演奏操作トレーニング装置。
【請求項2】
前記鍵選択手段は、
前記押鍵されている鍵から少なくとも2つの鍵の組み合わせを指定し、この指定された2つの鍵夫々を所定のタイミングで指示する指示手段と、
この指示手段により指示された少なくとも2つの鍵夫々を前記指定されたタイミングで離鍵したか否かを判別する第2の判別手段と、
この第2の判別手段による判別の終了後に、前記指示された前記2つの鍵の組み合わせ以外の別の少なくとも2つの鍵の組み合わせを前記指示手段に指示させる指示制御手段と、
前記指示手段により前記少なくとも2つの鍵の組み合わせの全てを指示した後に、前記第2の判別手段による判別結果に基づき、前記指定されたタイミングで離鍵できない前記2つの鍵の組み合わせを特定する特定手段と、
を有する請求項1記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項3】
前記演奏操作トレーニング装置はさらに、前記鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵を指示する押鍵指示手段を有し、
前記第1の判別手段は、この押鍵指示手段にて指示された複数の鍵全てが押鍵されているか否か判別する請求項1記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項4】
前記演奏操作トレーニング装置は、前記指示手段により前記2つの鍵の組み合わせの全てを指示した後に、当該指示手段にて指示される前記所定のタイミングを変更して、前記指示手段、前記第2の判別手段、及び前記指示制御手段に同一の動作を繰り返し行わせる制御手段をさらに有する請求項2記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記繰り返し動作を行わせる毎に、前記所定のタイミングを早くする請求項3記載の演奏操作トレーニング装置。
【請求項6】
コンピューターに、
鍵盤上で、指夫々に対応して予め定められた複数の鍵が全て押鍵されているか否か判別する第1の判別ステップと、
この予め定められた複数の鍵が全て押鍵されていると判別された後、当該複数の鍵の中から少なくとも2つの鍵を選択する鍵選択ステップと、
前記予め定められた複数の鍵が全て押鍵されている状態で、この指定された前記少なくとも2つの鍵のいずれかひとつが押鍵される毎に、発音を指示するイベントの羅列からなる曲データを記憶する記憶手段からイベントを順次読み出し、当該読み出されたイベントを接続された音源手段に送付する読出しステップと、
を実行させる演奏操作トレーニング処理のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−58556(P2009−58556A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223483(P2007−223483)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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