説明

演奏補助情報表示装置及びプログラム

【課題】楽曲の選択に拘わらず、表示させる演奏補助情報をユーザが自由に選べること。
【解決手段】この演奏補助情報表示装置では、演奏される複数の楽曲に対応するソング(制御情報セット)の夫々について所定数のプログラムチェンジ(制御情報)と楽曲演奏上のメモ的なテキスト(演奏補助情報)Txとが設定され、所望の楽曲に対応するソング欄Sc1にあるプログラムチェンジボタン(制御情報読出し手段)Pb1〜Pb5の操作により、所望のソングに設定されたプログラムチェンジが楽音信号生成部に送信され、対応するテキストTxがテキスト領域Taに表示される。ロックボタンLkの操作でロック機能のオン/オフが決定され、ボタンPb1〜Pb5を操作したときに別のソング欄Sc2を選択した場合、ロック機能オンのときは、これまで表示されていたテキストTxの表示が維持され、ロック機能オフのときは別の楽曲に対応するテキストTxが表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子楽器等の演奏に関する所望の演奏補助情報を演奏補助情報表示装置に表示することができる演奏補助情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
キーボーディストがライブ演奏をする際は、ライブ中に使用する複数の音色設定を予め電子楽器に用意しておき、曲中の適切なタイミング或いは曲と曲の切り替りのタイミングで、記憶された音色設定の中から適切なものを呼び出して演奏する。この場合、電子楽器で使用する音色数は膨大であり、どの曲でどの音色を読み出すか、どのタイミングで読み出すか、等を覚えておくのは大変なので、このような演奏の補助に関する種々の情報を書き留めたメモを用意しておき、メモを見ながら設定しなくてはならない。
【0003】
これに対して、メモなどの演奏補助情報を表示すると共にメモや音色設定などを一元管理することができる演奏補助情報表示システムが現れている。例えば、非特許文献1で説明されているセットリスト編集アプリケーションソフトウエアでは、iPad(登録商標)と呼ばれるタブレット型コンピュータにおいて、テキスト領域とプログラムチェンジを送信するための複数のナンバーボタン(プログラムチェンジボタンと呼ばれる)とがタッチパネル上に表示される。ここで、テキスト領域には、曲順や音色の切替えタイミング、各プログラムチェンジボタンにはどんな音色が設定されているか、といった演奏補助的な内容のテキストが演奏補助情報として書かれている。従って、ユーザは、テキストを見ながらプログラムチェンジボタンを操作することにより、電子楽器の音色設定を適切に切り替えることができる。
【0004】
しかしながら、従来技術では、1つのソング(楽曲)毎にテキスト(演奏補助情報)を持ち、ソングを選ぶと、当該ソングに対応付けられたテキストが表示されるという仕組みになっているので、選んだソングによって強制的に表示内容が決まってしまい、表示させるテキストをユーザが自由に選ぶことができず、また、各ソングに対するテキストを個別に用意する必要があり、テキストの作成や管理が面倒である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/emi/japan/synth/set_list_organizer_ja_om_a0.pdf 〔Set List Organizer(バージョン1.2.0)取扱説明書、ヤマハ株式会社〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような事情に鑑み、電子楽器等の演奏に関する演奏補助情報を演奏補助情報表示装置に表示する際、楽曲の選択に拘わらず、表示させる演奏補助情報をユーザが自由に選ぶことができる演奏補助情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の主たる特徴に従うと、楽音を制御するための所定数〔n(例えばn=5)〕の制御情報(Ct1〜Ct5)で構成された制御情報セット(ソングSg:Sg1,Sg2,…)毎に異なる演奏補助情報(Tx)を記憶する記憶手段〔4;図3(2):Dn〕と、制御情報(Ct1〜Ct5)を読み出すための制御情報読出し手段(Pb1〜Pb5)と、演奏補助情報(Tx)を表示する表示器〔6,SC;図3(1)〕と、制御情報セット(Sg1,Sg2,…)が選択されたときに、選択された制御情報セット(Sg1,Sg2,…)に対応した演奏補助情報(Tx)を表示器(6,SC)に表示させるか(L2)、或いは、直前に表示されていた演奏補助情報(Tx)の表示を維持するか(L6)を決定する表示態様決定手段(L1〜L7)と、制御情報読出し手段(Pb1〜Pb5)により制御情報(Ct1〜Ct5)が読み出され、読み出された制御情報(Ct1〜Ct5)に基づき楽音の制御が指示されたときに(P3〜P5)、表示態様決定手段(L1〜L7)により決定された表示態様に応じて(L2/L6)、読み出された制御情報(Ct1〜Ct5)が属する制御情報セット(Sg1,Sg2,…)の演奏補助情報(Tx)、或いは、これまで表示されていた演奏補助情報(Tx)の何れかを表示させるように〔S1=NO→S2/S1=YES→エンド(何もしない)〕、表示器(6,SC)における演奏補助情報(Tx)の表示を制御する表示制御手段(P7=図7)とを具備する演奏補助情報表示装置(ST)〔請求項1〕、並びに、記憶手段(4)と制御情報(Ct1〜Ct5)を読み出すための制御情報読出し手段(Pb1〜Pb5)と表示器(6,SC)とを具備し、演奏補助情報表示装置として機能するコンピュータに、楽音を制御するための所定数〔n(例えばn=5)〕の制御情報(Ct1〜Ct5)で構成された制御情報セット(ソングSg:Sg1,Sg2,…)毎に異なる演奏補助情報(Tx)を記憶手段(4)に記憶させる記憶ステップ〔図3(2):Dn〕と、演奏補助情報(Tx)を表示器(6,SC)に表示させる表示ステップ〔図3(1)〕と、制御情報セット(Sg1,Sg2,…)が選択されたときに、選択された制御情報セット(Sg1,Sg2,…)に対応した演奏補助情報(Tx)を表示器(6,SC)に表示させるか(L2)、或いは、直前に表示されていた演奏補助情報(Tx)の表示を維持するか(L6)を決定する表示態様決定ステップ(L1〜L7)と、制御情報読出し手段(Pb1〜Pb5)により制御情報(Ct1〜Ct5)が読み出され、読み出された制御情報(Ct1〜Ct5)に基づき楽音の制御が指示されたときに(P3〜P5)、表示態様決定ステップ(L1〜L7)で決定された表示態様に応じて(L2/L6)、読み出された制御情報(Ct1〜Ct5)が属する制御情報セット(Sg1,Sg2,…)の演奏補助情報(Tx)、或いは、これまで表示されていた演奏補助情報(Tx)の何れかを表示させるように〔S1=NO→S2/S1=YES→エンド(何もしない)〕、表示器(6,SC)における演奏補助情報(Tx)の表示を制御する表示制御ステップ(P7=図7)とから成る手順を実行させる演奏補助情報表示プログラム〔請求項2〕が提供される。なお、括弧書きは、理解の便のために付記した実施例の参照記号や用語等であり、以下においても同様である。
【発明の効果】
【0008】
この発明の主たる特徴による演奏補助情報表示システムでは(請求項1,2)、演奏補助情報表示装置(ST)は、電子楽器(EM)等の楽音信号生成部(SP)に対して制御情報(Ct1〜Ct5)を設定すると共にこの設定による演奏時の補助的なメモ(テキスト)である演奏補助情報(Tx)を表示することができる。このために、楽音信号生成部(SP)で生成される楽音(信号)を制御するための所定数〔n(例えばn=5)〕の制御情報(Ct1〜Ct5)で構成された制御情報セット(ソングSg:Sg1,Sg2,…)毎に異なる演奏補助情報(Tx)を記憶手段(4)に記憶され〔図3(2):Dn〕、演奏補助情報(Tx)が表示器(6,SC)に表示される〔図3(1)〕。つまり、データ構造としては1制御情報セット(Sg)について1つの演奏補助情報(テキストTx)が関連付けられており、表示器(6,SC)には、1制御情報セット(Sg)の演奏補助情報(Tx)が表示される〔図3(1)〕。この表示画面はテキスト画面と呼ばれ、テキスト画面では、制御情報セット(Sg1,Sg2,…)が選択されたときに、選択された制御情報セット(Sg1,Sg2,…)に対応した演奏補助情報(Tx)を表示器(6,SC)に表示させるか(L2)、或いは、直前に表示されていた演奏補助情報(Tx)の表示を維持するか(L6)の表示態様を決定することができる(L1〜L7)。例えば、テキスト画面にロック機能を付け、ロック機能のオン/オフにより表示対象をロックするか否かを決定する。そして、制御情報読出し手段(Pb1〜Pb5)により制御情報(Ct1〜Ct5)が読み出され、読み出された制御情報(Ct1〜Ct5)に基づき楽音信号生成部(SP)における楽音の制御が指示されたときに(P3〜P5)、決定された表示態様に応じて(ロック機能:オフL2/オンL6)、表示器(6,SC)における演奏補助情報(Tx)の表示を制御し(P7=図7)、読み出された制御情報(Ct1〜Ct5)が属する制御情報セット(Sg1,Sg2,…)の演奏補助情報(Tx)を表示するか〔ロック機能オフ:S1=NO→S2〕、或いは、これまで表示されていた演奏補助情報(Tx)を表示する〔ロック機能オン:S1=YES→エンド(何もしない)〕。
【0009】
このように、この発明では、データ構造としては1制御情報セット(ソング)毎に1つの演奏補助情報(テキスト)を持っているが、表示対象をロックすべきと決定する(ロック機能をオンにする)と、別の制御情報セット(ソング)を選んでも、現在選ばれている制御情報セット(ソング)に関する演奏補助情報(テキスト)の表示が維持される。
【0010】
従って、この発明によれば、表示させるテキストをユーザが自由に選ぶことができる。例えば、表示させたい演奏補助情報(テキスト)が関連付けられた制御情報セット(ソング)を予め選んでおき、表示対象のロックを決定してから(ロック機能をオンにしてから)別の制御情報セット(ソング)を選ぶことで、選んだ制御情報セット(ソング)に依存せずユーザの見たいテキストを表示させることができる。また、表示対象のロックを決定しておけば(ロック機能をオンにしておけば)1つの演奏補助情報(テキスト)を表示したまま別の制御情報セット(ソング)が選ぶことができることから、複数の制御情報セット(ソング)で1つの演奏補助情報(テキスト)を共有することができ、制御情報セット(ソング)毎に演奏補助情報(テキスト)を用意しなくてもよい。さらに、例えば、各曲の歌詞を記載したテキスト、及び、MC(ライブ中のトーク)で話す内容を記載したテキストを、異なる制御情報セット(ソング)の演奏補助情報(テキスト)として保存しておき、演奏中は常に歌詞が表示されるようロック機能をオンにしておき、トーク中はロック機能をオフにしてトーク内容が記載されたテキストを表示するといったように、シーンに応じて適切な演奏補助情報を選ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施例による演奏補助情報表示装置のハードウエア構成例を示す。
【図2】この発明の一実施例におけるセットリストの構造例を示す。
【図3】この発明の一実施例における表示画面の例を示す。
【図4】この発明の一実施例におけるテキスト画面の操作例を示す。
【図5】この発明の一実施例によるプログラムチェンジボタン処理のフローチャートである。
【図6】この発明の一実施例によるロック機能オンオフ処理のフローチャートである。
【図7】この発明の一実施例によるソング変更処理のフローチャートである。
【図8】この発明の別の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔演奏補助情報表示装置のハードウエア構成〕
図1は、この発明の一実施例による演奏補助情報表示装置のハードウエア構成を示す。この発明の一実施例による演奏補助情報表示システムは、演奏補助情報表示装置STと電子楽器EMとから成り、演奏補助情報表示装置STにはタブレット(タッチパネル)型のモバイル情報処理装置が用いるのが好ましい。この演奏補助情報表示装置STは、ハードウエア構成として、中央処理装置(CPU)1、ランダムアクセスメモリ(RAM)2、読出専用メモリ(ROM)3、記憶装置4、入力操作部5、表示部6、通信インターフェース(通信I/F)7などの要素を備え、これら要素1〜7はバス8を介して互いに接続され、入力操作部5及び表示部6はタッチパネルTPで構成される。
【0013】
演奏補助情報表示装置ST全体を制御するCPU1は、演奏補助情報表示処理プログラムを含む各種制御プログラムに従って各種処理を実行するデータ処理部を構成し、各種制御プログラムに従い種々の処理を実行する。RAM2は、これらの処理に際して必要な各種データを記憶しておいたり一時的に保持するのに用いられ、ROM3には、所定の制御プログラムや制御用データが記憶されている。
【0014】
記憶装置4は、HD(ハードディスク)やフラッシュメモリ等の記憶媒体とその駆動装置を含み、制御プログラムや種々のデータを任意の記憶媒体に記憶することができる。記憶媒体は、この演奏補助情報表示装置STに内蔵されていてもよいし、外付けの各種記憶用メディア(メモリカード、USBメモリ、CD−Rなど)のように着脱可能であってもよい。また、記憶装置4には、演奏補助情報表示プログラムなどのアプリケーションやセットリストデータを記憶しておくことができる。
【0015】
入力操作部(設定操作部ともいう)5は、スイッチ等の設定操作子による設定操作を検出し、対応する各種設定情報をデータ処理部に導入する。表示部6は、LCD等の表示器(ディスプレイ)の表示内容をCPU1からの指令に従って制御し、各種設定操作に対する表示援助を行う。なお、タッチパネルTPを使用して設定操作子及び表示器の機能が一体化されている。
【0016】
通信I/F7は、MIDI等の音楽用有線I/F、USB等の汎用ネットワークI/F或いは無線Lan等の汎用近距離無線I/F等を含み、通信媒体CNを通じて電子楽器EMと通信することができる。例えば、MIDIケーブルやUSBケーブルなどで演奏補助情報表示装置STから電子楽器EMへと楽音制御情報(プログラムチェンジ等)を送信することができるが、ワイヤレスでもよいしネットワーク経由で通信してもよい。つまり、電子楽器EMを制御する場合の送信手段は、USBなどの汎用インターフェースでもよいし、ネットワークを介してデータを送受信するものでもよく、また有線/無線を問わない。また、ネットワーク上のサーバーを記憶手段に用いてもよい。
【0017】
演奏補助情報表示装置STからの楽音制御情報(プログラムチェンジ等)を受信する電子楽器EMは、演奏補助情報表示装置STと同様の要素でハードウエアが構成されるが(但し、タッチパネル構成でなくてもよい)、さらに、鍵盤などの演奏操作子による演奏操作を検出する演奏操作部、演奏操作に基づく実演奏データや自動演奏データに従って楽音信号を生成し、音源や効果回路を備えた楽音信号生成部SP、生成された楽音信号を放音させるための楽音出力部などを備える。この演奏補助情報表示システムでは、ユーザが演奏補助情報表示装置ST上でタッチパネルTPを操作することにより、楽音制御情報(プログラムチェンジ等)が電子楽器EMの楽音信号生成部SPに送られ、それによって、電子楽器EMの演奏で生成される楽音信号の音色などを変更することができる。
【0018】
〔セットリストデータ〕
この発明の一実施例による演奏補助情報表示装置の記憶装置には複数のセットリストデータが記憶され、楽音制御情報(プログラムチェンジ)の送信及び演奏補助情報(テキスト)の表示に利用される。図2は、この発明の一実施例におけるセットリストデータの構造例を示す。演奏補助情報表示装置STの記憶装置4内には、複数のセットリストデータ(単にセットリストともいう)St:St1,St2,…,Stm(参照記号「St」は任意のセットリストデータを示す)が記憶される。各セットリストデータStは、当該セットリストデータの名称(セットリストネーム)を含み、1乃至複数のソングデータ(単にソングともいう)Sg(参照記号「Sg」は任意のソングデータを示す)で構成される。つまり、各セットリストStのソング数はユーザにより任意に設定することができ、この例では、セットリスト1(St1)は3つのソング(ソング1〜ソング3)Sg1〜Sg3で構成され、セットリスト2(St2)は6つのソング(ソング4〜ソング9)Sg4〜Sg9で構成されている。
【0019】
ソングデータSg:Sg1,Sg2,…は、1つの楽曲に対応するデータ単位であり、当該ソングデータの名称(ソングネーム)が含まれる。各ソングデータSgには、所定数n(n=5)の楽音制御情報(単に制御情報ともいい、「プログラムチェンジ」と呼ばれる)Ct:Ct1〜Ct5(参照記号「Ct」は任意の楽音制御情報を示す)及び1つのテキスト情報(単にテキストともいう)Txが保存されている。各ソングデータSgは、「制御情報セット」とも呼ばれ、記憶装置4には、制御情報セット毎に異なるテキスト情報Txを記憶することができる。
【0020】
各楽音制御情報Ctは、バンクセレクトMSB・LSB(Mb・Lb)及びプログラムチェンジ番号(Pn)から成り、演奏される楽曲の各部分に対応して楽音信号生成部SPの音源に設定されるべき音色を指定するプログラムチェンジ情報と、このプログラムチェンジ情報を送信するMIDIチャンネル情報(Mn)とを含む。また、複数n(n=5)の楽音制御情報Ct1〜Ct5は、それぞれ、後述するテキスト画面〔図3(1),図4(2)〕及びプログラム編集画面〔図3(2)〕における複数n(n=5)のプログラムチェンジボタン(Pb1〜Pb5)に対応する。テキスト情報Txは、当該楽曲のどのタイミングでどの音色のプログラムチェンジ情報を指定するか等の演奏補助に関する種々のメモ的な情報をテキストで表わした演奏補助情報である。
【0021】
〔表示画面〕
この発明の一実施例による演奏補助情報表示システムでは、演奏補助情報表示装置STから電子楽器EMにプログラムチェンジCtを送ることにより、電子楽器EMの音色を制御することができる。このために、演奏補助情報表示装置STには、プログラムチェンジCtを送るためのボタンや、メモ書き(演奏補助情報)Txを表記したテキスト領域をもつテキスト画面が表示器SCに表示され、ユーザはこのメモ書きTxを見ながら電子楽器EMの音色切替えを行うことができる。また、プログラム編集画面が表示器SCに表示され、各ソングSgに登録するプログラムチェンジCtを編集することができる。図3は、この発明の一実施例における画面例であり、図3(1),(2)は、それぞれ、表示器SCに表示されるテキスト画面及びプログラム編集画面の一例を示している。各図では、セットリスト1データSt1及びソング2データSg2が選択されている(図2参照)。
【0022】
図3(1)のテキスト画面は、タイトル領域Tiやテキスト領域Ta、ソング領域Saを備え、タイトル領域Tiの右側(画面の右上)にロックボタンLkが設けられる。タイトル領域Tiにはセットリストネームが表示され、タイトル領域Tiをタッチ(タップともいう)すると、セットリスト一覧表を表示したセットリスト選択画面(図示せず)がテキスト画面上に開かれ、このセットリスト一覧表から別のセットリストStを選択することができる。セットリスト一覧表の中から、使用したい所望のセットリストStを選びセットリスト選択画面を閉じると、テキスト画面のタイトル領域Tiには、選んだセットリストStの名称(図では「セットリスト1」)が表示される。さらに、ソング領域Saには、当該セットリストSt内の少なくとも先頭のソング1データSg1が表示されて、ソング1データSg1が選択状態となり、ロックボタンLkによるロック機能がオフであれば、当該ソング1データSg1のテキスト情報Txがテキスト領域Taに表示される。
【0023】
テキスト領域Taには、基本的に、現在ソング領域Saで選ばれているソングデータSg(図ではソング2データSg2)のテキストTxが表示される。但し、ロックボタンLkが操作されロック機能をオンにしたときはこの限りではない。テキスト領域Taを上下にフリック操作すると、テキストTxの表示がテキスト領域Ta内でスクロールされる。
【0024】
ソング領域Saには、1乃至複数のソング欄Sc:Sc1,Sc2,…(参照記号「Sc」は任意のソング欄を示す)が表示される。各ソング欄Scには、選ばれたセットリストデータSt内の各ソングデータSgに対応して、左端部にソングネームSnが表記され、その右側に、所定数n(n=5)のプログラムチェンジボタンPb:Pb1〜Pb5(参照記号「Pb」は任意のプログラムチェンジボタンを示す)及びプログラムボタンPeが順次表示され、各プログラムチェンジボタンPb1〜Pb5には、図示のように、番号「1」〜「5」が表記される。
【0025】
ソング領域Saを上下にフリックするとソング欄Scがスクロールされ、ソング領域Saの中央に表示されたソング欄Scが選択状態となり、また、ソング欄Sc内の任意の箇所にタッチした場合も、当該ソング欄Scが選択状態となり、中央に表示される。選択状態のソング欄Sc(図ではSc2)は、太枠で囲む等によりハイライト表示され、当該ソング欄Scに対応するソングデータSg(図ではSg2)が選択される。一方、非選択状態の他のソング欄Sc(図ではSc1,Sc3)はグレーアウトされた表示とされる。
【0026】
各ソング欄Sc内の5つのプログラムチェンジボタンPb1〜Pb5は、当該ソング欄Scに対応するソングデータSg内の5つの楽音制御情報Ct1〜Ct5に対応しており、ソング領域Saで選択状態になっているソング欄Sc(図ではSc2)のプログラムチェンジボタンPbを押す(タップする)と、そのボタンPbに予め設定された制御情報(プログラムチェンジ)Ctが、通信I/F7(図1参照)を通じて接続先の電子楽器EMへと送信される。
【0027】
現在選択されていないソング欄ScにあるプログラムチェンジボタンPbについても操作可能である。例えば、図のソング欄Sc3にある何れかのプログラムチェンジボタンPbを押すと、ソング欄Sc3が選択状態となってソング領域Saの中央に移動する。これに伴い、ロックボタンLkによるロック機能がオフであれば、テキスト領域Taにはソング3データSg3のテキスト情報Txが表示される。
【0028】
なお、各ソングデータSg内の5つの楽音制御情報Ct1〜Ct5のうち任意の楽音制御情報Ctを電子楽器EMに送信しないように設定することができ、送信しないように設定された楽音制御情報Ctに対応する各ソング欄Sc内のプログラムチェンジボタンPbは、操作不能でボタン自体がグレー表示されており、タップしても何も起らない。
【0029】
各ソング欄ScのプログラムボタンPeを押すと、図3(2)に示すプログラム編集画面が開き表示器SCに表示され、プログラムボタンPeが押されたソング欄ScのプログラムチェンジボタンPb1〜Pb5に割り当てられる楽音制御情報Ct1〜Ct5を編集し設定することができる。
【0030】
ソング領域Saの下部には他のボタンBt1〜Bt6が設けられ、次のような様々な設定や操作を行うことができる:テキスト編集ボタンBt1をタップすると、選択されているソングデータSgのテキスト編集画面が開き、当該ソングデータSgに関してテキスト領域Taに表示されるテキスト(演奏補助情報)Txの内容を編集することができる。リスト編集ボタンBt2をタップするとセットリスト編集画面が開き、選択されているセットリストStについてソングデータSgの登録/削除やリネームを行うことができる。テキストボタンBt3は、テキスト画面では点灯して現在テキスト画面が表示されていることを示す。曲順ボタンBt4をタップすると、曲順画面が開き、ソング領域Saと同様の表示形式で、曲順即ちソング欄Scの一覧を表示する。アップ或いはダウンボタンBt5,Bt6をタップすると、前或いは次のソング欄Scを選択することができる。
【0031】
図3(2)のプログラム編集画面は、画面の上部のタイトル領域に現在編集中のソングSgの名称(ソングネーム)が表示され、タイトル領域Tiの右側(画面の右上)に設けられた終了ボタンDnにタッチすると、このプログラム編集画面で設定した内容を楽音制御情報Ct1〜Ct5として保存し、図3(1)のテキスト画面に戻る。
【0032】
プログラム編集画面の主表示領域の左側には、5つのプログラムチェンジボタンPbが,上からプログラムチェンジ1ボタンPb1、プログラムチェンジ2ボタンPb2、…、プログラムチェンジ5ボタンPb5の順に設けられ、各ボタンPb1〜Pb5について、左から順に、リンクインジケータLi:Li1〜Li5(参照記号「Li」は任意のリンクインジケータを示す)、MIDIチャンネル設定ボタンMn、バンクセレクトMSBボタンMb、バンクセレクトLSBボタンLb及びプログラムチェンジ番号ボタンPnが設けられる。各プログラムチェンジボタンPb:Pb1〜Pb5は、テキスト画面のプログラムチェンジボタンと同じプログラムチェンジ送信機能を有している。
【0033】
リンクインジケータLiは、複数のプログラムチェンジボタンPbについて、リンク機能を設定すると共にリンク機能の設定(リンク設定という)状態を報知するのに用いられる。インジケータLiにタッチすることで、複数のボタンPbにリンク機能を設定することができ、リンク機能が設定された複数のプログラムチェンジボタンPbの何れか1つのプログラムチェンジボタンPbにタッチすると、リンク機能が設定された全てのプログラムチェンジボタンPbが同時にタッチされたとみなし、各プログラムチェンジボタンPbに割り当てられたプログラムチェンジCtを全て送信する。
【0034】
例えば、プログラムチェンジCt4,Ct5をまとめて送信したい場合、プログラムチェンジCt4,Ct5が割り当てられたプログラムチェンジボタンPb4,Pb5のリンクインジケータLi4,Li5にタッチすると、これらのボタンPb4,Pb5がリンク設定されて、図示のように、これらのリンクインジケータLi4,Li5が点灯し(併せて、図示のように縦横の連結バーをも点灯させるのが好ましい)、両ボタンPb4,Pb5がリンク設定されていることをユーザに知らせる。ユーザが、点灯しているリンクインジケータLi4,Li5に対応する何れかのプログラムチェンジボタン(例えばPb4)にタッチすると、インジケータLiが点灯している他のプログラムチェンジボタン(例えばPb5)のプログラムチェンジCt5も、ボタンPb4のプログラムチェンジCt4と一緒に電子楽器EMに送信される。従って、複数のプログラムチェンジボタンPb4,Pb5に異なるMIDIチャンネルを設定しておけば、1つのプログラムチェンジボタンを押すだけで複数パートの音色を同時に切り替えることができる。
【0035】
MIDIチャンネル設定ボタンMnは、対応するプログラムチェンジボタンPbに割り当てられたプログラムチェンジCtを送信するMIDIチャンネルを設定するのに用いられ、バンクセレクトMSBボタンMb、バンクセレクトLSBボタンLb及びプログラムチェンジ番号ボタンPnは、送信するプログラムチェンジCtを設定するのに用いられる。各ボタンMn,Mb,Lb,Pnにタッチすると、数値を変更する画面(図示せず)がポップアップ表示されるので、これらの画面を用いて、所望のMIDIチャンネルの値を設定し、また、バンクセレクトMSB・LSB及びプログラムチェンジ番号の数値を決定して所望のプログラムチェンジCtを設定することができる。
【0036】
〔テキスト画面の操作〕
この発明の一実施例による演奏補助情報表示システムでは、演奏補助情報表示装置STに表示されるテキスト画面を操作することにより、テキスト領域Taの表示を制御することができる。図4は、この発明の一実施例におけるテキスト画面の操作例を説明するための図であり、図4(1)は、テキスト画面のテキスト領域Taに表示させるテキスト(演奏補助情報)Txの例を示し、図4(2)は、図4(1)のテキストTxをテキスト領域Taに表示した場合のテキスト画面の表示及び操作例を示す。
【0037】
図4(1)のテキストTxは、ソング1データSg1の楽曲に関する演奏メモ及びソング2データSg2の楽曲に関する演奏メモが、ソング1データSg1のテキスト情報Txとして記憶装置4に保存されている。このテキストTxには、演奏の曲順に従って、演奏する曲順及び曲目(曲名):「1曲目:はじまりのうた(ソング1)」,「2曲目:Ready,Set,Go!(ソング2)」、曲の構成:「イントロ」,「サビ1」,「間奏」,「サビ2」,「エンディング」、各構成で使用する音色:「Concert Grand」,「Strings ensemble 1」,…などの情報が記載されている。なお、テキストTxには、この外に、音色を切り替えるタイミング、歌詞や振り付けに関するメモ等、演奏中に見たい内容を何でも記入しておくのがよい。
【0038】
ところで、この演奏補助情報表示装置STは、前述のとおりソング毎にテキストTxを持つデータ構造であるが、各ソングに対応させて複数のテキストを作成する場合には、テキスト編集ボタンBt1を押してテキスト編集画面を開きテキストの作成(或いは編集)をし、終ったらテキスト編集画面を閉じてまた別のソングのテキストを作成する、といった作業を何度も繰り返さなくてはならず、テキスト作成の手間がかかる。そこで、この演奏補助情報表示装置STでは、ソング2データSg2のテキストを個別に作成するのではなく、ソング1データSg1のテキスト情報Txの中にソング2データSg2に関するメモ書きも含めることで、作成しなくてはならないテキストの数を減らしている。
【0039】
このテキストTxには、ソング1データSg1の楽曲「はじまりのうた」だけでなく、ソング2データSg2の楽曲「Ready,Set,Go!」に関する演奏メモ情報も記載されている。従って、ソング2データSg2が選ばれたときにも、このテキストTxを表示したままにしたいが、前述のとおりロックボタンLkによるロック機能がオフであるときは、ソングをSg1からSg2に切り替えるとテキスト領域Taの表示もソング2データのテキストTxに切り替わってしまう。そこで、テキスト画面において、ソング1データSg1が選ばれているときにロックボタンLkによるロック機能をオンにしておくと、ソング2データSg2が選ばれたときにもこのテキストTxが表示されるので、ユーザは、選んだ楽曲(ソング)に依存せず、見たいテキストを表示させることができる。
【0040】
図4(2)のテキスト画面は、ソング欄Sc1が選択され、対応するソング1データSg1が選ばれて図4(1)のテキストTxがテキスト領域Taに表示された状態を示している。テキスト領域TaはHTMLブラウザとなっており、テキストTxはHTML形式のデータである。テキスト画面において、ソング欄Sc1のプログラムチェンジボタンPbをテキスト領域Taにドラッグ&ドロップすると、テキストTxを表わすHTMLデータ中のドロップした任意の所望位置(マーカー位置という)に、ドラッグしたプログラムチェンジボタンPbの画像を表わすタグが挿入され、HTMLブラウザであるテキスト領域Ta上には、ドラッグしたプログラムチェンジボタンPbの画像を表わすボタン画像(ボタンアイコンともいう)Bi:Bi1,Bi2,…(参照記号「Bi」は任意のボタン画像を示す)が表示される。これにより、ドロップした位置にマーカーが設定(入力)されたことを示す。図4(2)では、テキストTxの「イントロ」、「サビ1」及び「間奏」の位置が、それぞれ、プログラムチェンジボタンPb1〜Pb3に対応するプログラムチェンジCt1〜Ct3に関連付けられ、ボタン画像Bi1〜Bi3が貼付・表示されている。また、内部的な処理についても、ドラッグ&ドロップされたプログラムチェンジボタンPbに対して、制御情報と共に、HTML内の画像挿入位置をテキスト領域Taに呼び出すコマンドが付加的に記憶装置4に記録され、プログラムチェンジボタンPbを押すことでテキストTx中のマーカー位置がテキスト領域Taに表示されるようになる。
【0041】
これにより、プログラムチェンジ送信のために、マーカー位置情報が設定されているプログラムチェンジボタンPbが押されると、マーカー位置情報に従ってテキストTxの表示をテキスト領域Ta内で上下方向にスクロール制御し、マーカー位置に相当するテキスト部分をテキスト領域Ta内の視認し易い所定の位置(例えば、領域Taの一番上或いは中央)に表示させることができる。なお、テキスト領域Ta中のボタン画像Biを長押し(一定時間以上のタッチ操作)すると、削除ボタン(図示せず)がポップアップ表示されるので、この削除ボタンを押すと、当該ボタン画像Biはテキスト領域Taから消去され、対応するマーカーは削除され、当該マーカー位置情報が削除される。
【0042】
また、テキスト画面の右上にあるロックボタンLkを操作してロック機能をオンにしておくと、別のソング欄Scを選んでも、そのときにテキスト領域Taに表示されているテキストが表示されたままとなる。従って、ロック機能をオンにしておくことにより、例えば、テキスト領域Taに表示されたソング1データSg1のテキストTx内に、ソング2データSg2やソング3データSg3に対応するソング欄Sc2,Sc3のプログラムチェンジボタンPbをドラッグしてマーカーを設定(入力)することもできる。この場合、ロック機能をオフにしておくと、例えば、ソング欄Sc2のプログラムチェンジボタンPbにタッチした瞬間に、テキスト領域Taの表示はソング2データSg2のテキストTxに切り替わってしまうため、別のソングデータSgのテキストTxにマーカーを設定(入力)するにはロック機能をオンにしておかなくてはならない。1つのテキスト内に複数のソングに関するメモを記載すると、テキスト量が大きくなるためにスクロールを何度もしなくてはならなくなるが、ロック機能をオンにしておくと、別のソングのプログラムチェンジボタンPbもテキストTx内にドラッグしてマーカー位置を設定することができるので、テキスト量が多くても手動でスクロールする必要がなくなる。
【0043】
以上のように、この演奏補助情報表示システムでは、演奏補助情報表示装置STは、電子楽器EM等における楽音信号生成部SPに対して、演奏される楽曲毎に、所定数n(=5)のプログラムチェンジ(楽音制御情報)Ct1〜Ct5を設定し、この設定による各楽曲演奏上のメモ(覚え書き)をテキスト(演奏補助情報)Txとして、これらをセット(制御情報セットと呼ばれる)Sgにして記憶手段4に記憶しており、テキスト(演奏補助情報)Txをテキスト画面〔図3(1),図4(2)〕のテキスト領域Taに表示することができる。各制御情報セットSgのプログラムチェンジ(楽音制御情報)Ct1〜Ct5は、プログラム編集画面〔図3(2)〕を利用して、テキスト画面のソング領域Saに設けられた各ソング欄Scの所定数nのプログラムチェンジボタン(制御情報読出し手段)Pb1〜Pb5に割り当てることができる。所望の楽曲に対応するソング欄Sc1のボタンPb1〜Pb5が操作されると、当該ボタンPb1〜Pb5に割り当てられたプログラムチェンジCt1〜Ct5を通信手段即ち通信I/F7を介して楽音信号生成部SPに送信し、当該プログラムチェンジCt1〜Ct5に基づく楽音制御を指示する。
【0044】
このシステムのテキスト表示上の一つの特徴によると、プログラムチェンジボタン(制御情報読出し手段)Pb1,Pb2,…が、テキスト領域Ta内に表示されたテキストTx上にドラッグ&ドロップされると、ドロップされた任意の位置(マーカー位置)にボタン画像Bi1,Bi2,…を貼付し、当該ボタンに対応するプログラムチェンジ(楽音制御情報)Ct1〜Ct5とテキスト(演奏補助情報)Tx上のマーカー位置とを関連付ける。そして、プログラムチェンジCt1,Ct2,…を送信すべくボタンPb1,Pb2,…が操作されたときは、テキスト領域TaにおけるテキストTxの表示をスクロール制御し、自動的に、当該ボタンPb1,Pb2,…に対応するプログラムチェンジCt1,Ct2,…に関連付けられたマーカー位置のテキスト部分をテキスト領域Ta内の視認し易い所定の位置に表示させる。つまり、テキスト表示を進めたいのは、曲の音楽的な区切り位置など、音色を切り替える必要のあるタイミングであることが多いという事情に合わせて、プログラムチェンジボタンPbの操作による音色切替えに連動して自動的に最適な位置のテキストを表示することができる。
【0045】
また、別の特徴によると、テキスト画面にあるロックボタンLkの操作により、ロック機能のオン/オフつまり表示対象をロックするか否かを決定することができる。そして、プログラムチェンジボタン(制御情報読出し手段)Pb1〜Pb5が操作されたときに別のソング欄Sc2に対応する制御情報セット(ソング)Sg2が選択された場合、決定されたロック機能のオン/オフに応じてテキスト領域Taにおけるテキスト(演奏補助情報)Txの表示を制御し、ロック機能オンのときは、これまで表示されていたテキストTxの表示を維持し、ロック機能オフのときには、新たに選択された制御情報セットSg2のテキストTxを表示する。つまり、基本的には、制御情報セット(ソング)Sgの選択に応じて当該制御情報セット(ソング)Sgに対応付けられたテキストTxを表示するが、ロック機能により現在の表示を維持したままにもできる。
【0046】
〔動作例〕
図5〜図7は、この発明の一実施例による演奏補助情報表示処理の動作を説明するためのフローチャートであり、図5は、プログラムチェンジボタン処理のフローチャートを示し、図6は、ロック機能オンオフ処理のフローチャートを示し、図7は、ソング変更処理のフローチャートを示す。
【0047】
まず、図5のプログラムチェンジボタン処理は、ユーザが、テキスト画面〔図3(1),図4(2)〕上でプログラムチェンジボタンPb:Pb1〜Pb5にタッチしたときに起動(スタート)し、CPU1は、最初のステップP1で、ボタンPbへのタッチがテキスト領域Taへのドラッグ操作であるか否かを判定する。つまり、プログラムチェンジボタンPbをタッチした後、テキスト領域Taへドラッグ操作してから指をリリースしたか(YES)、プログラムチェンジボタンPbにタッチして直ぐに(ドラッグせずに)リリースしたか(NO)を判断する。ここで、テキスト領域へのドラッグ操作であれば(P1=YES)、ステップP2のマーカー設定(入力)処理に進み、ドラッグ操作でドロップした位置にマーカーを設定し(プログラムチェンジは送信されない)、その後、このプログラムチェンジボタン処理を終了する。
【0048】
なお、プログラムチェンジボタンPbをタッチした後、テキスト領域Ta以外の場所(タイトル領域Tiや画面下部のテキスト編集ボタンBt1など)へドラッグ操作してからリリースした場合は、プログラムチェンジボタン操作のキャンセルとみなして何も処理を行なわずに終了するとよい。
【0049】
ステップP1で、テキスト領域へのドラッグ操作ではない〔つまり、タップ(押し)操作である〕と判定したときは(P1=NO)、まず、ステップP3で、押されたボタンにリンク機能が設定されているか否かを判定する。ここで、リンク設定がなされていないときは(P3=NO)、ステップP4で、押されたボタンPbに対応して設定されているプログラムチェンジCtのみを電子楽器EMにおける楽音信号生成部SPの音源に送信する。また、リンク設定がなされているときには(P3=YES)、ステップP5にて、リンク設定された全てのボタンに対応するプログラムチェンジを楽音信号生成部SPの音源に送信する。この場合、プログラムチェンジボタンPbの番号が若いものから順に送信する。そして、ステップP4,P5の送信処理の後はステップP6に進む。
【0050】
ステップP6では、ソングが変更されたか否か、即ち、新たにプログラムチェンジボタンPbを押す直前までに選ばれていたソング欄Scと、新たに押したボタンPbが含まれるソング欄Scとが異なるか(YES)同じであるか(NO)を判定する。図3(1)のテキスト画面を例にすると、この画面が表示されている状態で、第2のソング欄Sc2内のボタンPbが押された場合はソングは変更されていない(NO)と判断し、第3のソング欄Sc3内のボタンが押された場合はソングが変更された(YES)と判断する。ここで、ソングが変更された場合は(P6=YES)、ステップP7に進んで、後述する図7のソング変更処理を行い、ロック機能のオン/オフ状態に応じてテキスト領域TaにおけるテキストTxの表示を維持/変更する。
【0051】
ステップP6でソングは変更されていないと判定したとき(P6=NO)、或いは、ステップP7のソング変更処理を終えた後は、ステップP8で、現在テキスト領域Taに表示されているテキストTx内に、押されたプログラムチェンジボタンPbに対応するマーカーが存在するかどうか(設定されているか否か)を判定する。つまり、「ソングに対応するテキスト」ではなく、「表示中のテキスト」にマーカーがあるかどうかを判断する。
ここで、マーカーが存在するなら(P8=YES)、ステップP9で、マーカー位置のテキスト部分が表示されるように、テキスト領域Taをスクロールする。この場合、マーカー位置がテキスト領域Taの一番上になるようにスクロールしてもよいし、マーカー位置がテキスト領域Taの中央に来るようにスクロールしてもよい。このスクロール処理の後は、このプログラムチェンジボタン処理を終了する。また、マーカーが存在しないときは(P8=NO)、何もせずに、このプログラムチェンジボタン処理を終了する。
【0052】
次に、図6のロック機能オンオフ処理は、ユーザによりロックボタンLkが押されたときに起動(スタート)し、CPU1は、最初のステップL1で、ロック機能の設定状態を示すロック機能フラグがオンになっているかどうかを判定する。ここで、ロック機能フラグがオンを示していると(L1=YES)、まず、ステップL2で、ロック機能フラグをオフにし、次のステップL3で、ロックボタンLkの表示態様を暗い色調のオフ状態に変更し、更にステップL4に進む。つまり、ロック機能がオンのときは(L1=YES)、今回のロックボタンLk操作により、ロック機能の設定状態をオフに切り替え(L2)、ロックボタンLkをオフの表示態様に変更してから(L3)、ステップL4以降に進む。
【0053】
ステップL4では、現在のソングと表示テキストが一致するか否か、即ち、現在ソング領域Saで選択されているソング欄ScのソングデータSgaと、現在テキスト領域Taに表示されているテキストTxが書かれたソングデータSgbとが一致するかどうかを判定する。ここで、一致しないときは(L4=NO)、ステップL5に進んでテキスト領域変更処理を行い、現在選択されているソング欄Scに合わせて、同ソング欄ScのソングデータSgaに書かれたテキストTxをテキスト領域Taに表示し、テキスト領域変更処理の後、このロック機能オンオフ処理を終了する。つまり、これまでロック機能がオンであったことから(L1=YES)、テキスト領域Taに表示されているテキストTxのソングSgbと、選択されているソング欄ScのソングSgaとが異なっている可能性があり、異なっている場合は、選択中のソング欄ScのソングSgaに合わせてテキスト領域の表示を変更する必要がある。そこで、両ソングSga,Sgbが一致しているか異なっているかを判断し(L4)、異なっているなら(NO)、テキスト領域変更処理(L5)で、現在選択中のソングSgaのテキストTxをテキスト領域Taに表示する。
【0054】
一方、両ソングSga,Sgbが一致している場合には(L4=YES)、テキスト領域変更処理は行わず、直ちに、このロック機能オンオフ処理を終了する。
【0055】
これに対して、ステップL1でロック機能フラグがオフであると判定したときは(L1=NO)、まず、ステップL6で、ロック機能フラグをオンにし、次のステップL7で、ロックボタンLkの表示態様を明るい色調のオン状態に変更した後、このロック機能オンオフ処理を終了する。
【0056】
図7のソング変更処理は、ソングが変更されたときにテキストの表示を制御するものであり、図5のプログラムチェンジボタン処理においてプログラムチェンジボタンPbの操作によってソングが変更されたとき(P6=YES)に起動し、また、ソング領域Saで他のソング変更操作(上下フリックや他のソング欄Scへのタッチなど)がなされたときにも起動する。
【0057】
このソング変更処理が起動すると、CPU1は、ステップS1で、ロック機能フラグがオンであるか否かを判定し、オフであれば(S1=NO)、ステップS2で、変更後のソングSgに対応するテキストTxをテキスト領域Taに表示する。一方、ロック機能フラグがオンであれば(S1=YES)、何もしないで、直ちに、この処理を終了する〔プログラムチェンジボタン処理(図5)中の場合はステップP8にリターンする〕。つまり、ロック機能オンのときは、テキスト表示は直前の状態を維持するので、選択されたソングに合わせて表示を変更する処理は行わない。
【0058】
〔別の実施形態〕
以上の実施例では、演奏補助情報表示装置STを電子楽器EMと別設した例につき説明したが、演奏補助情報表示装置STの機能を電子楽器EMの入力操作部及び表示部にもたせるようにしてもよい。図8は、この発明の別の実施形態を説明するための図である。この実施形態では、電子楽器自体が演奏補助情報表示装置の機能を備え、端的に云うと、図1〜図7で説明した演奏補助情報表示装置STの機能を電子楽器のレジストレーションメモリ機能に応用したものである。この実施形態における電子楽器のパネル上には、図8に示すように、ディスプレイSCや種々の設定操作子Rb1〜Rb6,Dd,Dk,Mbなどが設けられる。
【0059】
<基本機能>この電子楽器のレジストレーションメモリには、レジストレーションメモリボタンRb:Rb1〜Rb6(参照記号「Rb」は任意のレジストレーションメモリボタンを示す)に対応して、音色などの各種設定情報が記憶されると共に、楽曲演奏上の補助となるテキストや画像を含む表示情報が演奏補助情報として保存される。レジストレーションメモリボタンRbの何れかを押すと、そのボタンRbに対応して記憶された音色などの設定情報が呼び出されると共に、ディスプレイSCには、そのボタンに対応して記憶された表示情報が表示される。つまり、図1〜図7で説明した実施例では1つのソングに5つの制御情報と1つのテキストが保存されていたが、図8に示す実施形態では、レジストレーションメモリボタンの各々を1つのソングであるとみなし、1つのソングに1つの制御情報と1つのテキストが保存されている状態と言うことができる。
【0060】
<表示のロック>表示ロックボタンDkをオンにすると、このボタンDkの傍に設けられたLEDランプLeが点灯し、レジストレーションメモリボタンRbを押しても、当該レジストレーションメモリボタンRbに対応して記憶された設定情報が楽音信号生成部の音源に呼び出されるだけで、ディスプレイSCの表示は変わらなくなる。
【0061】
<マーカー入力>ユーザは、データダイアルDdを操作することにより、ディスプレイ画面SC上でマーカーを入力したい位置として、ディスプレイSC上の任意の垂直位置を選ぶ。なお、タッチパネルの場合は、マーカーを入力したい位置を直接タッチして指定する。マーカーを入力したい位置Aが選ばれた状態で、マーカーボタンMbを押しながら任意のレジストレーションメモリボタンRbを押すと、ディスプレイ画面SC上の選択位置Aに当該ボタンRbのマーカーが入力され、当該マーカー位置が登録(設定)される。このとき、登録されたマーカー位置にアイコンを表示し、マーカー位置を画面上で視認することができるようにするとよい。
【0062】
<操作例>レジストレーションメモリボタンRb1に対応して記憶されたテキスト内に、レジストレーションメモリボタンRb2〜Rb6のマーカーを入力(設定)しておく。そして、ボタンRb1のテキストを表示し表示ロックボタンDkをオンにした状態で、ボタンRb2,Rb3,…を押すと、テキスト表示が、登録されたマーカー位置に応じてスクロールする。この機能により、ディスプレイ画面SCに歌詞を表示させておき、レジストレーションの切替えタイミングにあわせて表示を更新することで、スムーズに弾き語りができる。また、歌詞の代わりにコード譜や楽譜を表示させてもよい。
【0063】
〔種々の実施態様及び補足事項〕
以上、図面を参照しつつこの発明に関する演奏補助情報表示システムの具体例を説明したが、これに限らず、種々の変更が可能である。例えば、制御情報は、音色の切替え以外にも、音量、パン、リバーブなど、音色を変化させるさまざまなパラメータを含んでもよく、さらに、伴奏スタイルの選択や自動演奏の開始/停止指示などを含んでもよい。
【0064】
演奏補助情報は、テキストのほか、画像や動画などでもよい。また、プログラムチェンジボタン等の各種入力操作子は、実施例のようにタッチパネル上の仮想的な操作子でなく、図8で説明したような物理的なボタンやダイアルでもよい。
【0065】
実施例では、制御情報読み出し手段としてプログラムチェンジボタンを用いたが、以下のような手段を用いてもよい:
・カーソルボタン([←][→])やダイアルなどを操作することで、複数記憶された制御情報を順番に読み出すようにしたもの、
・曲データ(MIDI)の中に制御情報を読み出すタイミングをプログラムしておき、曲データの再生にあわせて所定のタイミングで制御情報を読み出すようにしたもの、
・音声やジェスチャーなどに反応して制御情報が読み出されるようにしたもの、等々。
【0066】
実施例では、テキスト内の位置をマーキングする仕組みをHTMLで説明したが、次のようにしてもよい:テキストのデータ形式は、「シンプルテキスト(TXT)+背景画像(JPGなど)」をセットにしたものとし、テキスト領域Taでは、背景画像の上にシンプルテキストの内容を重ねた状態で表示する。プログラムチェンジボタンがドラッグ&ドロップされると、背景画像(JPG)上のドロップ位置に、ボタンアイコンである画像データを貼り付け、貼り付けた位置情報(背景画像上の座標情報)をマーカー位置情報として記録し、ドラッグしたプログラムチェンジボタンに対応して、制御情報と共に、背景画像上の位置情報を保存する。
【0067】
実施例では、テキストTXはページの概念がないもの(HTMLファイル)を想定したが、これに限らず、ページの概念があるもの(たとえばPDFファイル)でもよい。この場合、制御情報に関連付けて記憶する位置情報はテキストのページ数となり、操作子が操作された際には、記憶されたページが表示される。また、ページとページ内の位置の両方を記憶してもよく、その場合は、記憶したページの記憶した位置が表示器に表示される。
【0068】
実施例では、外部機器(電子楽器)へと制御情報(MIDI信号)を送信する構成を説明したが、音源や効果回路を含む楽音信号生成部を演奏補助情報表示装置自身に設け、楽音信号生成部で生成される楽音信号をコントロールするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
ST;EM 演奏補助情報表示装置及び電子楽器、
St:St1〜Stm セットリスト[データ]、
Sg:Sg1,Sg2,… ソング[データ](制御情報セット)、
Ct:Ct1〜Ct5 [楽音]制御情報(プログラムチェンジ[情報])、
Tx;Ta 演奏補助情報(テキスト[情報])及びテキスト領域、
Lk ロックボタン、
Sa;Sc:Sc1,Sc2,… ソング領域及びソング欄、
Pb:Pb1〜Pb5 プログラムチェンジボタン(制御情報読出し手段)、
Li リンクインジケータ、
Bi:Bi1,Bi2,… ボタン画像又はボタンアイコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽音を制御するための所定数の制御情報で構成された制御情報セット毎に異なる演奏補助情報を記憶する記憶手段と、
制御情報を読み出すための制御情報読出し手段と、
演奏補助情報を表示する表示器と、
制御情報セットが選択されたときに、選択された制御情報セットに対応した演奏補助情報を表示器に表示させるか、或いは、直前に表示されていた演奏補助情報の表示を維持するかを決定する表示態様決定手段と、
制御情報読出し手段により制御情報が読み出され、読み出された制御情報に基づき楽音の制御が指示されたときに、表示態様決定手段により決定された表示態様に応じて、読み出された制御情報が属する制御情報セットの演奏補助情報、或いは、これまで表示されていた演奏補助情報の何れかを表示させるように、表示器における演奏補助情報の表示を制御する表示制御手段と
を具備することを特徴とする演奏補助情報表示装置。
【請求項2】
記憶手段と制御情報を読み出すための制御情報読出し手段と表示器とを具備し、演奏補助情報表示装置として機能するコンピュータに、
楽音を制御するための所定数の制御情報で構成された制御情報セット毎に異なる演奏補助情報を記憶手段に記憶させる記憶ステップと、
演奏補助情報を表示器に表示させる表示ステップと、
制御情報セットが選択されたときに、選択された制御情報セットに対応した演奏補助情報を表示器に表示させるか、或いは、直前に表示されていた演奏補助情報の表示を維持するかを決定する表示態様決定ステップと、
制御情報読出し手段により制御情報が読み出され、読み出された制御情報に基づき楽音の制御が指示されたときに、表示態様決定ステップで決定された表示態様に応じて、読み出された制御情報が属する制御情報セットの演奏補助情報、或いは、これまで表示されていた演奏補助情報の何れかを表示させるように、表示器における演奏補助情報の表示を制御する表示制御ステップと
から成る手順を実行させる演奏補助情報表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54205(P2013−54205A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192195(P2011−192195)
【出願日】平成23年9月4日(2011.9.4)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】