説明

演算制御装置及びプログラム

【課題】表示された幾何図形或いは数式と表計算用の表との関連付けを可能とし、幾何図形に係るデータ或いは数式に係るデータの変更・加工等を表上で可能ならしめる、使い勝手の良い演算制御装置を実現すること。
【解決手段】関数電卓は、第1の電子教材プログラム721を解析して、幾何図形の一種である多角形とその幾何学的性質をその数値で表す変数を用いた式とを教材画面501に表示させると共に、表計算用の表を表画面503に表示させる。そして、当該多角形と当該表とを関連付けるリンク操作を検知した場合に、当該多角形の幾何学的性質を表した変数の値を当該表内の行503aに入力・表示させることで、幾何図形に係るデータの加工等を表上で可能ならしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多角形や円に代表される種々の幾何図形を描画するための幾何機能や、微分・積分等の種々の演算を行うための計算機能を備えた関数電卓が存在し、教育現場や企業におけるエンジニアの技術計算等に利用されている。このような関数電卓の1つとして、ユーザーにより入力された関数式や関数式中の変数に対する数値データに応じて各種演算やグラフの作成を行い、グラフの作成に伴って変化する要素(例えば、グラフの交点)と共に表示部に表示させるものが知られている(例えば、特許文献1。)。
【0003】
特に最近では、前述した幾何機能や計算機能等を応用した、関数電卓上で実行可能な学習目的の電子教材プログラム(以下、適宜「電子教材」と呼ぶ。)が開発されている。この電子教材を実行させることにより、ユーザーは関数電卓の表示画面を見ながら操作を行い自分のペースで幾何等の学習を進めることができる。
【0004】
一方で、従来の関数電卓が備える便利な機能の1つに、複数の数値データを元に作表する表計算機能が存在する。この表計算機能は、複数の数値データがユーザーにより入力されると、セル状の領域に数値データをそれぞれ入力した表を作成・表示し、また、作成した表に従って円グラフや帯グラフ等の各種グラフを描画するといった機能である。
【特許文献1】特開平11−184820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の関数電卓が備えた表計算機能は、前述した電子教材により実現される各種機能からは完全に独立したものであり、ユーザーにより入力された数値データに基づいて作表やグラフ描画を行う機能でしかなかった。このため、例えば電子教材において描画された幾何図形の持つデータ(例えば、多角形におけるそれぞれの角度)や、算出されたデータ(例えば、ある関数の微分・積分値)に基づいて、表計算機能で作表・表示を行わせるといった、表計算機能以外で用いたデータを表計算機能に流用するという使い方は不可能であった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、表示された幾何図形或いは数式と表計算用の表との関連付けを可能とし、幾何図形に係るデータ或いは数式に係るデータの変更・加工等を表上で可能ならしめる、使い勝手の良い演算制御装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1記載の演算制御装置は、
図形と該図形の所定部位の幾何学的性質をその数値で表す変数を用いた式とを表示する制御を行う図形表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA13)と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA27)と、
前記図形表示制御手段により表示制御された図形と前記表表示制御手段により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA29)と、
この検知手段による検知に応じて、前記変数の値を前記表示制御された表中に表示する制御を行う変数値表示制御手段(図2のCPU20;図8のステップA31〜A35)と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項7記載のプログラムは、
コンピュータに、
図形と該図形の所定部位の幾何学的性質をその数値で表す変数を用いた式とを表示する制御を行う図形表示制御機能(例えば、図8のステップA13)と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御機能(例えば、図8のステップA27)と、
前記図形表示制御機能により表示制御された図形と前記表表示制御機能により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知機能(例えば、図8のステップA29)と、
この検知機能による検知に応じて、前記変数の値を前記表示制御された表中に表示する制御を行う変数値表示制御機能(例えば、図8のステップA31〜A35)と、
を実現させることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の演算制御装置であって、
前記検知手段は、前記関連付け操作として、前記表示制御された図形を前記表示制御された表中に移動する操作の入力を検知する移動操作検知手段(例えば、CPU20;図8のステップA29)を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の演算制御装置であって、
前記図形表示制御手段により表示制御された前記図形を変形操作に従って変形する図形変形手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA47、A49)と、
この図形変形手段により変形された図形と前記表表示制御手段により表示制御された表とを関連付ける第2の関連付け操作の入力を検知する第2の検知手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA57)と、
この第2の検知手段による検知に応じて、前記図形変形手段により変形された図形の前記所定部位に関する前記変数の値を前記表示制御された表中に追加する制御を行う変数値
追加表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA63、A65)と、
を更に備えることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の演算制御装置であって、
前記図形表示制御手段により表示制御された前記図形を変形操作に従って変形する図形変形手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA47、A49)と、
前記変数値表示制御手段により表示制御された変数の値を変更操作に従って変更する変数値変更手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA37、A39)と、
前記変数値表示制御手段により表示制御された変数の値を、前記図形変形手段により変形された図形の前記所定部位に関する値に更新する制御と、前記図形表示制御手段により表示制御された前記図形を、前記変数値変更手段により変更された変数の値に従って変形して表示を更新する制御を行う相互連動更新制御手段(例えば、図2のCPU20;図8のステップA41〜A45、ステップA59、A61)と、
を更に備えることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の演算制御装置は、
数式を表示する制御を行う数式表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB7)と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB21)と、
前記数式表示制御手段により表示制御された数式と前記表表示制御手段により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB23)と、
この検知手段による検知に応じて、前記数式を演算した演算結果を前記表示制御された表中に表示する制御を行う結果表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB27〜B31)と、
前記表示制御された数式に用いられている変数の定義内容を変更する変更手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB37)と、
この変更手段による変更内容に従って、前記表示制御された数式を演算し、その演算結果で前記結果表示制御手段により表示制御された演算結果を更新する制御を行う連動更新制御手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB39〜B45)と、
を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項8記載のプログラムは、
コンピュータに、
数式を表示する制御を行う数式表示制御機能(例えば、図25のステップB7)と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御機能(例えば、図25のステップB21)と、
前記数式表示制御機能により表示制御された数式と前記表表示制御機能により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知機能(例えば、図25のステップB23)と、
この検知機能による検知に応じて、前記数式を演算した演算結果を前記表示制御された表中に表示する制御を行う結果表示制御機能(例えば、図25のステップB27〜B31)と、
前記表示制御された数式に用いられている変数の定義内容を変更する変更機能(例えば、図25のステップB37)と、
この変更機能による変更内容に従って、前記表示制御された数式を演算し、その演算結果で前記結果表示制御機能により表示制御された演算結果を更新する制御を行う連動更新制御機能(例えば、図25のステップB39〜B45)と、
を実現させることを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の演算制御装置であって、
前記数式表示制御手段は、同一の数式であって、当該数式の変数の定義内容が異なる複数の数式を表示する数式複数表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB49、B51)を有し、
前記検知手段は、前記数式複数表示制御手段により表示制御された何れかの数式と前記表示制御された表とを関連付ける数式別関連付け操作の入力を検知する数式別検知手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB25)を有し、
前記結果表示制御手段は、前記数式別検知手段により検知される毎に、検知された数式別関連付け操作により指定された数式の演算結果を、前記表示制御された表中に追加していく制御を行う追加表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図25のステップB33、B35)を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は7記載の発明によれば、表示された図形と表とを関連付ける所定の関連付け操作に応じて、図形の幾何学的性質を表す変数の値を表中に表示させることができる。従って、表示された図形と表との関連付けを可能とし、幾何図形に係るデータの加工等を表上で行うといったことが可能となるため、使い勝手の良い演算制御装置を実現できる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、表示された図形と表とを関連付ける関連付け操作として、表示されている図形を、表示されている表中に移動させるという簡単な操作で実現できる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、表示された図形を変形操作に従って変形した後に、当該図形と表とを関連付ける第2の関連付け操作に応じて、図形の幾何学的性質を表す変数の値を表中に追加して表示させることができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、表示された図形を変形操作に従って変形した場合には表中の変数の値を更新する。また一方、表中の変数の値を変更操作に従って変更した場合には図形を変形する。このため、当該図形と当該表とを相互に連動させることができる。
【0019】
請求項5又は8記載の発明によれば、表示された数式と表とを関連付ける所定の関連付け操作に応じて、数式の演算結果を表中に表示させることができる。また、数式に用いられている変数の定義内容が変更されると、数式を新たに演算し直し、その演算結果で表中の演算結果を更新する。従って、表示された数式に係るデータの変更・加工等を表上で行うといったことが可能となるため、使い勝手の良い演算制御装置を実現できる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、同一の数式であって変数の定義内容が異なる複数の数式を表示させることができる。また、表示された何れかの数式と表とを関連付ける数式別関連付け操作をする毎に、指定した数式の演算結果を表中に追加して表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図37を参照して、演算制御装置の一つである関数電卓に本発明を適用した場合の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
まず、各実施形態に共通する全体の構成を説明する。
図1は、関数電卓1の概観図である。同図が示すように、関数電卓1は、各種操作キーを含むキー群3、ディスプレイ5a、タッチパネル5b、タッチペン7、メモリカードリーダー10及びメモリカードリーダー10に着脱自在に装着される電子教材を格納したメモリカード70を備えて構成されている。
【0023】
キー群3は、ユーザーが関数電卓1にデータを入力したり、処理実行を指示するためのキーを備えており、例えば数字キー群3aと、方向キー3bと、EXEキー3cとを備えている。
【0024】
数字キー群3aは数字を入力するためのキーである。方向キー3bは、カーソルを移動させたり、機能を選択したりする場合等に押下されるキーであり、本実施形態においては、上下左右の方向に指示入力可能に構成されている。また、EXEキー3cは、関数電卓1に対し処理の実行、決定を指示する為のキーである。
【0025】
ディスプレイ5aは、各種キーの押下に応じたデータやグラフが表示される部分であり、CPU20から入力される表示信号に基づいて各種表示を行う。ディスプレイ5aは、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成されており、タッチパネル5bと一体となっている。タッチパネル5bは、タッチペン7のタップ操作を検知し、タップされている位置(座標)をCPU20に出力する。
【0026】
図2は、関数電卓1の構成を示すブロック図である。同図において、関数電卓1は、CPU(Central Processing Unit)20、入力部30、タッチパネル40、表示部50、ROM(Read Only Memory)60、メモリカードリーダー10、メモリカード70、RAM(Random Access Memory)80を備え、メモリカード70を除く各部はバス90で相互にデータ通信可能に接続されて構成されている。
【0027】
CPU20は、入力部30を介して入力される指示に基づいて、ROM60或いはメモリカード70から所定のプログラムを読み出して当該プログラムをRAM80に一時格納し、当該プログラムに従って教材連動処理や電子教材単体での実行処理等の各種処理を実行した後、その処理結果を表示部50に表示させる。すなわちCPU20は、関数電卓1の各部を統括的に制御する役割を担っている。
【0028】
入力部30は、数字キーや方向キー等のキー群を備えた入力装置であり、押下されたキーの信号をCPU20に出力する。この入力部30におけるキー入力により、データの入力、処理実行の指示等の入力手段が実現される。なお、この入力部30は、図1に示すキー群3に対応する。
【0029】
タッチパネル40は、表示部50に感圧式や静電式の透明センサを取り付ける等して構成されており、タッチペン7等により画面を押さえる操作(タップ操作)を行うことにより、選択された座標信号をCPU20に出力する。なお、このタッチパネル40は、図1のタッチパネル5bに対応する。
【0030】
表示部50は、CPU20から入力される各種信号に基づいて各種画面を表示するものであり、図1に示すディスプレイ5aに対応する。
【0031】
ROM60は、電源がON状態にされた際に関数電卓1を初期状態に設定するためのプログラムの他、後述する各実施形態において各種電子教材と他の機能とを連動させるための教材連動プログラム等を格納している。ROM60は、第1実施形態ではROM61とし、第2実施形態ではROM63として説明する。
【0032】
メモリカードリーダー10は、メモリカード70の読み書きを行うための機器であり、関数電卓1に内蔵されている。メモリカード70は、フラッシュROM等によって構成されており、電子教材プログラムや、電子教材内で必要となる教材内データを電子教材として格納している。メモリカード70は、第1実施形態ではメモリカード71とし、第2実施形態では、メモリカード73として説明する。
【0033】
RAM80は、CPU20の作業領域として各種データを一時的に記憶するための記憶領域である。RAM80は、第1実施形態ではRAM81とし、第2実施形態ではRAM83として説明する。
【0034】
〔第1実施形態〕
図3〜図19を参照して、第1実施形態について説明する。
【0035】
まず、構成を説明する。
図3は、第1実施形態に係る関数電卓1が図2のROM60の代わりに備えるROM61の構成を示す図である。ROM61は、CPU20によって読み出され、第1の教材連動処理(図8参照)として実行される第1の教材連動プログラム611を格納している。
【0036】
第1の教材連動処理とは、第1の電子教材プログラム721を解析して、幾何図形の一種である多角形とその幾何学的性質をその数値で表す変数を用いた式とを表示させると共に、表計算用の表を表示させ、当該多角形と当該表とを関連付けるリンク操作を検知した場合に、その変数の値を当該表内に表示させる処理である。
【0037】
更に、表示させた多角形と表とを相互に連動させ、当該多角形を変形する操作がなされた場合には当該表の変数の値を更新し、当該表の変数の値を変更する操作がなされた場合には当該多角形を変形して表示を更新する。また、当該多角形を変形する操作がなされた上で、当該多角形と当該表とを関連付ける第2のリンク操作を検知した場合には、当該多角形の変数の値を当該表内に追加して表示させる。この第1の教材連動処理の動作については詳細に後述する。
【0038】
図4は、第1実施形態に係る関数電卓1が図2のメモリカード70の代わりに備えるメモリカード71の構成を示す図である。メモリカード71は、第1の電子教材72を記憶している。第1の電子教材72には、第1の電子教材プログラム721及び第1の教材内初期設定データ723が含まれている。
【0039】
第1の電子教材プログラム721(以下、適宜「第1の電子教材」と呼ぶ。)は、多角形の一種である鋭角三角形の幾何学的性質についての教材としてのプログラムである。CPU20は、この第1の電子教材プログラム721を単体で実行することにより、第1の電子教材単体としての処理を行う。第1の電子教材としての処理は、概ね図8の破線部分(ステップA3〜A23)の処理と同様である。
【0040】
第1の教材内初期設定データ723は、鋭角三角形としての幾何学的性質を示す図形部分とその特徴値を表す変数との対応付けや、幾何学的性質を表した式とその式の値を表す変数との対応付けが定義されたデータである。
【0041】
図5は、図2のRAM80に相当する第1実施形態に係るRAM81の構成を示す図である。RAM81は、第1の教材内データ格納領域811と、第1のリンクデータ格納領域813とを備えている。
【0042】
第1の教材内データ格納領域811は、第1の教材内初期設定データ723に定義された対応付けと、定義された変数の値とからなる教材内データを格納するための領域であり、図6に示すように変数を格納する列811a、その変数に対応付けられた対応図形部分を格納する列811b、式を格納する列811c及び値を格納する列811dを備えている。図6においては、変数として「A」、「B」、「C」、「D」、「E」の5つが格納されており、例えば変数「A」の対応図形部分は「∠A」であり、対応する式は存在せず、対応する値は‘80’である。
【0043】
この第1の教材内データ格納領域811に格納される教材内データは、第1の教材連動処理においてCPU20によって作成されるデータである。また、教材内データの内、列811dに格納される値は、第1の教材連動処理においてCPU20によって適宜更新される。
【0044】
第1のリンクデータ格納領域813は、第1の教材内データ格納領域811の列811aに格納された変数と811dに格納された値とをリンクデータとして格納するための領域であり、図7に示すように、変数を格納する行813a及びその値を格納する行813b(813b−1、813b−2、・・・。包括的に符号「813b」で表す。)を備えている。図7においては、変数として「A」、「B」、「C」、「D」、「E」の5つが格納されており、それぞれの変数に対応する値として‘80’、‘70’、‘30’、‘180’、‘−20’が格納されている。
【0045】
リンクデータは、第1の教材連動処理において、幾何図形と表とを関連付ける関連付け操作がなされた場合にCPU20によって作成され、また、リンクデータの内、行813bに格納される値は、教材内データの値と連動して更新される。
【0046】
次に、動作を説明する。
図8は、CPU20により第1の教材連動プログラム611が読み出されて実行されることにより関数電卓1において実行される第1の教材連動処理の流れを示すフローチャートである。上述した通り、同図中、破線で示した範囲は、第1の電子教材プログラム721を単体で動作させた処理と略同一の処理を表している。
【0047】
先ず、CPU20は、ユーザーがメニューを選択するためのメニューバーを表示部に表示させて(ステップA1)、第1の電子教材の解析を開始する(ステップA3)。そして、解析した第1の電子教材に基づいて幾何図形の種類を判別すると共に(ステップA5)、その幾何図形である多角形の種類を判別する(ステップA7)。
【0048】
次いで、CPU20は、第1の電子教材に予め設定されている初期値に基づいて、初期状態における幾何図形が有する特徴部分の角度を計測し(ステップA9)、幾何図形の変数や計測した特徴部分の角度等の情報に基づいて教材内データを作成し(ステップA11)第1の教材内データ格納領域811に格納する。そして、教材画面を表示部に表示させる(ステップA13)。
【0049】
ここで、教材画面とは、ユーザーが学習を行うための第1の電子教材に係る画面のことであり、例えば図10の教材画面501がそれである。
【0050】
次いで、CPU20は、教材画面に表示された幾何図形を変形する変形操作がユーザーによりなされたかどうかを判定し(ステップA15)、変形操作がなされたと判定した場合には(ステップA15;Yes)、幾何図形を変形してその表示を更新し(ステップA17)、幾何図形が有する特徴部分の角度を再度計測する(ステップA19)。
【0051】
そして、CPU20は、ステップA19において計測した特徴部分の角度に基づいて教材内データを更新し(ステップA21)、表示されている教材画面の表示を更新して(ステップA23)、ステップA15に戻る。
【0052】
ステップA15において、変形操作がなされなかったと判定した場合には(ステップA15;No)、CPU20は、ユーザーにより表計算機能の呼び出し実行の指示入力がなされたかどうかを判定する(ステップA25)。
【0053】
ステップA25において表計算機能の実行指示がなされなかったと判定した場合には(ステップA25;No)、ステップA15に戻り、なされたと判定した場合には(ステップA25;Yes)、表計算用の表画面を表示部に表示させる(ステップA27)。
【0054】
そして、CPU20は、教材画面に表示された幾何図形から表へとリンク操作がさなれたかどうかを判定することで、そのリンク操作を検知する(ステップA29)。ここで、リンク操作とは、幾何図形と表とを関連付けるための関連付け操作のことを指し、後述するタッチペン7を用いたドラッグ&ドロップ操作等により実現される。
【0055】
ステップA29において、リンク操作がなされなかったと判定した場合には(ステップA29;No)、CPU20は、他処理へと処理を移行し、なされたと判定した場合には(ステップA29;Yes)、幾何図形の各特徴部分の角度に対応付けられている変数とその値とをリンクデータとして第1のリンクデータ格納領域813に格納する(ステップA31)。そして、格納された変数及びその値に基づいて表を作成して(ステップA33)、表示部に表示させる(ステップA35)。
【0056】
次いで、CPU20は、ステップA35において表示された表内の角度を変更する変更操作がユーザーによりなされたかどうかを判定し(ステップA37)、変更操作がなされたと判定した場合には(ステップA37;Yes)、第1のリンクデータ格納領域813に格納されているリンクデータを更新し(ステップA39)、第1の教材内データ格納領域811に格納されている教材内データを更新する(ステップA41)。
【0057】
そして、CPU20は、ステップA41において更新された教材内データに従って、教材画面に表示されている幾何図形を変形してその表示を更新し(ステップA43)、教材画面の表示を更新して(ステップA45)、ステップA37に戻る。
【0058】
ステップA37において、変更操作がなされなかったと判定した場合には(ステップA37;No)、CPU20は、教材画面に表示されている幾何図形を変形する変形操作がユーザーによりなされたかどうかを判定し(ステップA47)、変形操作がなされなかったと判定した場合には(ステップA47;No)、第1の教材連動処理を終了する。
【0059】
ステップA47において変形操作がなされたと判定した場合には(ステップA47;Yes)、CPU20は、教材画面に表示されている幾何図形を変形してその表示を更新し(ステップA49)、変形された幾何図形の特徴部分のそれぞれの角度を再度計測する(ステップA51)。そして、計測した角度に基づいて教材内データを更新して(ステップA53)、教材画面の表示を更新する(ステップA55)。
【0060】
次いで、CPU20は、変形された幾何図形から表への第2のリンク操作がユーザーによりなされたかどうかを判定することで、第2のリンク操作を検知し(ステップA57)、なされなかったと判定した場合には(ステップA57;No)、第1のリンクデータ格納領域813に格納されているリンクデータを更新し(ステップA59)、更新されたリンクデータに基づいて表示されている表を更新して(ステップA61)、ステップA37に戻る。
【0061】
ここで、第2のリンク操作とは、変形された幾何図形と表とを新たに関連付けるための第2の関連付け操作のことを指し、後述するタッチペン7を用いたドラッグ&ドロップ操作等により実現される。
【0062】
ステップA57において、第2のリンク操作がなされたと判定した場合には(ステップA57;Yes)、CPU20は、変形された幾何図形の新規の値を第1のリンクデータ格納領域813に追加して格納し(ステップA63)、新規の値を表に追加することで表の表示を更新して(ステップA65)、ステップA37に戻る。
【0063】
次にこれまでの処理について、表示画面例を参照しつつ、より具体的に説明する。
図9は、第1の電子教材721として設定されている内容を示す図である。ここでは、鋭角三角形ABCとその幾何学的性質(特徴部分)を表す変数「A」、「B」、「C」と式「D=A+B+C」、「E=A−(B+C)」等が定義されている。これらの定義内容は、第1の教材内初期設定データ723に格納されている。
【0064】
図形表示領域7211には鋭角三角形ABCが描画されることとして定義され、鋭角三角形ABCの各頂点に重畳表示されている黒色矩形の変形マーク7211a、7211b、7211cは、鋭角三角形ABCを変形させるためのグリッドを表すマークである。ユーザーは、タッチペン7を用いてこの変形マーク7211a、7211b、7211cを移動させることで、鋭角三角形ABCを変形させることができる。
【0065】
また、リンクマーク7213(7213a、7213b及び7213c)は、数値ボックス7215、7217及び7219にそれぞれ入力される変数「A」、「B」、「C」の値が、教材画面501中の鋭角三角形ABCの∠A、∠B、∠Cに対応し、一方が変更された場合に他方が自動的に変更される連動関係にあることを示すマークである。
【0066】
図10は、表示部50に表示される教材画面501の一例を示したものである(図8のステップA13)。ここでは第1の電子教材721に従って、図形表示領域5011に鋭角三角形ABCが描画され、各頂点には変形マーク5011a、5011b、5011cが表示されている。ユーザーは、この変形マークをタッチペン7を用いて移動させることで、鋭角三角形ABCを変形させることができる。
【0067】
また、計測された(図8のステップA9)鋭角三角形ABCのそれぞれの角度の値は数値ボックス5015、5017及び5019内に示されており、図10においては、角度Aの値は‘80’、角度Bの値は‘70’、角度Cの値は‘30’である。
【0068】
更に、教材画面501の上方には、ユーザーがメニューを選択するためのメニューバーが表示されている(図8のステップA1)。この中のFunctionメニュー502は、ユーザーが関数電卓1における他の機能を選択し、一時的にその機能を呼び出して実行することを可能にするためのものである。
【0069】
図11は、Functionメニュー502の中から表計算機能が選択された場合の表示画面例を示したものである。図11に示すようにFunctionメニュー502を選択することで表示されるFunctionメニュー項目502aの中から、「表」と表示された表計算機能502bがタップ操作等により選択されたかどうかで、CPU20は、表計算機能の実行が指示入力されかどうかを判定する(図8のステップA25)。
【0070】
図12は、表計算機能502bが選択された場合に(図8のステップA25;Yes)表示される表画面503(図8のステップA27)の一例を示したものである。ここでは、教材画面501の下方に、テーブル形式の表を備えた表画面503が表示されている。
【0071】
図13は、ユーザーにより教材画面の幾何図形から表画面の表に対してリンク操作がなされた場合の操作例を示したものである。図形表示領域5011に表示された鋭角三角形ABCを、タッチペン7を用いて表画面503に移動することでリンクが成立する。尚、ここでは、移動操作としてドラッグ&ドロップ操作を行っている。CPU20は、このドラッグ&ドロップ操作を検知することによりリンク操作を検知する(図8のステップA29)。
【0072】
ここで、ドラッグ操作とは、画面上の所望の図形、データ等に対してタッチペン7を当接させる操作の後、当接状態を維持したまま所望の位置まで移動する摺動操作のことを指し、ドロップ操作とは、ドラッグ操作に引き続き所定の位置においてタッチペン7を画面から離す操作のことを指す。
【0073】
図14は、リンク操作がなされた場合に(図8のステップA29;Yes)、表画面503に表示される表の一例を示したものである(図8のステップA33、A35)。鋭角三角形ABCに対応付けられた角度A〜Eの値‘80’、‘70’、‘30’、‘180’、‘−20’が、表の1行目の行503aに入力・表示されている。尚、D及びEの値については、図9に示した第1の電子教材721において定義された式「D=A+B+C」、「E=A−(B+C)」に従って数値が演算され表示されている。
【0074】
図15は、表画面503における表内の値を変更する操作がユーザーによりなされた場合の表示画面例を示したものである。ここでは、鋭角三角形ABCに対応付けられた角度A〜Cの内、A及びBの値が変更され(503b、503c)、A及びBの値に応じてEの値が変更されている(503d)。変更されたAの値は‘70’、Bの値は‘80’、Eの値は‘−40’である。
【0075】
図16は、図15のような表内の値を変更する操作がユーザーによりなされた場合に(図8のステップ37;Yes)、更新表示される鋭角三角形ABCを示したものである(図8のステップA43)。図形表示領域5011を見ると、図15において変更された表内の角度A及びBの値に従って鋭角三角形ABCの形状が変形され、図形表示が更新されていることが確認できる。
【0076】
図17は、鋭角三角形ABCの形状を変形する操作がユーザーにより行われた場合の操作例を示したものである。図形表示領域5011において、鋭角三角形ABCにおける頂点Aの位置が、タッチペン7を用いたドラッグ操作により移動され、鋭角三角形ABCが変形されている。
【0077】
図18は、ユーザーにより幾何図形から表に対して第2のリンク操作がなされた場合の操作例を示したものである。図形表示領域5011において変形された鋭角三角形ABCが、表画面503上に再度ドラッグ&ドロップ操作されることで第2のリンクが成立する。つまり、CPU20は、この再度のドラッグ&ドロップ操作を検知することで第2のリンク操作を検知する(図8のステップA57)。
【0078】
図19は、第2のリンク操作がなされたと判定した場合に(図8のステップA57;Yes)、更新表示された表画面503の表の一例を示したものである(図8のステップA65)。図19において、変形された鋭角三角形ABCに対応付けられた角度A〜C、及び式D、Eの値‘60’、‘40’、‘80’、‘180’、‘−60’が、表の2行目の行503eに追加して表示されている(図8のステップA63、65)。
【0079】
以上の通りに、第1実施形態によれば、幾何図形の一種である多角形と表とを関連付けるリンク操作を検知した場合に、当該多角形の幾何学的性質を表した変数の値を当該表内に表示させ、更に、当該多角形と当該表とを相互に連動させることができる。また、当該多角形と当該表とを関連付ける第2のリンク操作を検知した場合には、当該多角形の幾何学的性質を表した変数の値を当該表内に追加して表示させることができる。従って、表示された幾何図形と表計算用の表との関連付けを可能とし、幾何図形に係るデータの変更・加工等を表上で可能ならしめる、使い勝手の良い演算制御装置が実現できる。
【0080】
尚、ユーザーによるリンク操作はタッチペン7を用いたドラッグ&ドロップ操作であるものとして説明したが、これに限られるわけではなく、例えばタッチペン7の代わりに方向キー3bとEXEキー3cとを用いて実現することにしても勿論良い。
【0081】
〔第2実施形態〕
図20〜図37を参照して、第2実施形態について説明する。
【0082】
まず、構成を説明する。
図20は、第2実施形態に係る関数電卓1が図2のROM60の代わりに備えるROM63の構成を示す図である。ROM63は、CPU20によって読み出され、第2の教材連動処理(図25参照)として実行される第2の教材連動プログラム631を格納している。
【0083】
第2の教材連動処理とは、第2の電子教材プログラム741を解析して、数式を表示させると共に、表計算用の表を表示部に表示させ、当該数式と当該表とを関連付けるリンク操作を検知した場合に、当該数式の演算結果を当該表内に表示させる処理である。
【0084】
更に、表示された数式に用いられている変数の内容を数式で定義した式(以下、「定義式」と呼ぶ。)を変更する操作がなされた場合に、変更された定義式を変数に代入して数式を再度演算し、得られた演算結果で当該表内に表示されている演算結果を更新する。また、表示された数式と当該表とを関連付けるリンク操作を検知する毎に、当該数式の演算結果を当該表内に新たに追加して表示させる。この第2の教材連動処理の動作については詳細に後述する。
【0085】
図21は、第2実施形態に係る関数電卓1が図2のメモリカード70の代わりに備えるメモリカード73の構成を示す図である。メモリカード73は、第2の電子教材74を記憶している。第2の電子教材74には、第2の電子教材プログラム741及び第2の教材内初期設定データ743が含まれている。
【0086】
第2の電子教材プログラム741(以下、適宜「第2の電子教材」と呼ぶ。)は、微分・積分演算に関する数式処理についての学習教材としてのプログラムである。CPU20は、この第2の電子教材プログラム741を単体で実行することにより、第2の電子教材単体としての処理を行う。第2の電子教材としての処理は、概ね図25の破線部分(ステップB3〜B17)の処理と同様である。数式処理とは、数式を代数式として扱い、その代数式のまま演算する処理のことである。
【0087】
第2の教材内初期設定データ743は、第2の電子教材における数式処理で用いられる数式が定義されているデータである。例えば、図23の「y」、「diff(y,x)」及び「∫(y,x)」がそれである。尚、数式「diff(y,x)」はyをxで微分、「∫(y,x)」はyをxで積分する処理を示す数式である。
【0088】
図22は、図2のRAM80に相当する第2実施形態に係るRAM83の構成を示す図である。RAM83は、第2の教材内データ格納領域831と、第2のリンクデータ格納領域833とを備えている。
【0089】
第2の教材内データ格納領域831は、第2の教材内初期設定データ743に定義された数式と、その数式と等価な数式(以下、「等価式」と呼ぶ。)とを教材内データとして格納するための領域であり、第2の教材連動処理においてCPU20によって格納される。等価式としては、ある変数の内容を定義した定義式や、ある数式を代数式として演算処理(数式処理)した演算結果の式等がある。
【0090】
図23に、第2の教材内データ格納領域831の構造を示す。図23に示すように、第2の教材内データ格納領域831は、数式を格納する列831aと、等価式を格納する列831bとを備えている。また、等価式として数式(この場合、変数)「y」の定義式「x2」が、数式「diff(y,x)」の演算結果の式「2x」が、数式「∫(y,x)」の演算結果の式「x3/3」が格納されている。
【0091】
第2のリンクデータ格納領域833は、第2の教材内データ格納領域831に格納された数式と、その等価式とをリンクデータとして格納するための領域であり、図24に示すように、数式を格納する行833aと、その等価式を格納する行833b(833b−1、833b−2、・・・。包括的に符号「833b」で表す。)とを備えている。図24においては、数式として「y」、「diff(y,x)」、「∫(y,x)」が格納されており、その等価式として「x2」、「2x」、「x3/3」がそれぞれ格納されている。
【0092】
リンクデータは、第2の教材連動処理において、数式と表とを関連付ける関連付け操作がなされた場合にCPU20によって作成される。また、リンクデータの内、行833bに格納される等価式は、教材内データの等価式と連動して更新される。
【0093】
次に、動作を説明する。
図25は、CPU20により第2の教材連動プログラム631が読み出されて実行されることにより関数電卓1において実行される第2の教材連動処理の流れを示すフローチャートである。上述した通り、同図中、破線で示した範囲は、第2の電子教材プログラム741を単体で動作させた処理と略同一の処理を表している。
【0094】
先ず、CPU20は、ユーザーがメニューを選択するためのメニューバーを表示部に表示させて(ステップB1)、第2の電子教材の解析を開始し(ステップB3)、教材画面を表示部に表示させる(ステップB5)。
【0095】
次いで、CPU20は、小画面を教材画面中に表示させ(ステップB7)、保存・新規ボタンを教材画面中に表示させる(ステップB9)。
【0096】
ここで、教材画面とは、ユーザーが学習を行うための第2の電子教材に係る画面のことであり、例えば図27の教材画面505がそれである。小画面とは、第2の教材内初期設定データ743として設定されている数式及びその等価式を表示する画面であり、例えば図27の小画面5051がそれである。保存・新規ボタンとは、後述する保存・新規実行操作を行う場合に押下されるボタンであり、例えば図27の保存・新規ボタン5053がそれである。また、等価式のうち、定義式が入力可能な数値ボックスを小画面5051内に表示する。同図においては、数値ボックス5051aがそれである。
【0097】
次いで、CPU20は、教材画面中の小画面における数値ボックスに定義式を入力する入力操作がユーザーによりなされたかどうかを判定し(ステップB11)、入力操作がなされなかったと判定した場合には(ステップB11;No)、他処理へと処理を移行する。入力操作がなされたと判定した場合には(ステップB11;Yes)、CPU20は、入力された定義式に基づいて小画面に表示した各数式を代数式として演算し、演算結果の式を得る(ステップB13)。
【0098】
そして、CPU20は、ステップB11で入力された定義式と、ステップB13で得られた演算結果の式とに基づいて教材内データを作成し(ステップB15)、第2の教材内データ格納領域831に格納する。また、CPU20は、教材画面中の小画面の表示を更新する(ステップB17)。
【0099】
次いで、CPU20は、ユーザーにより表計算機能の呼び出し実行の指示入力がなされたどうかを判定し(ステップB19)、なされなかったと判定した場合には(ステップB19;No)、ステップB11に戻り、なされたと判定した場合には(ステップB19;Yes)、表計算用の表画面を表示部に表示させる(ステップB21)。
【0100】
次いで、CPU20は、小画面に表示された数式から表へとリンク操作がなされたかどうかを判定することで、そのリンク操作を検知する(ステップB23)。ここで、リンク操作とは、数式と表とを関連付けるための関連付け操作のことを指し、後述するタッチペン7を用いたドラッグ&ドロップ操作等により実現される。
【0101】
ステップB23において、リンク操作がなされなかったと判定した場合には(ステップB23;No)、CPU20は、他処理へと処理を移行し、なされたと判定した場合には(ステップB23;Yes)、そのリンク操作が初回のリンク操作であったかどうかを判定する(ステップB25)。
【0102】
ステップB25において初回のリンク操作であったと判定した場合には(ステップB25;Yes)、CPU20は、小画面に表示されている数式と、各数式の等価式とをリンクデータとして第2のリンクデータ格納領域833に格納する(ステップB27)。また、CPU20は、格納された数式と、その等価式とに基づいて表を作成して(ステップB29)、表示部に表示させる(ステップB31)。
【0103】
次いで、CPU20は、小画面中の数値ボックスに表示された定義式を変更する変更操作がユーザーによりなされたかどうかを判定し(ステップB37)、変更操作がなされたと判定した場合には(ステップB37;Yes)、入力された定義式に基づいて各数式を新たに演算し、演算結果の式を得る(ステップB38)。そして、第2の教材内データ格納領域831に格納されている教材内データを更新し(ステップB39)、教材画面中の小画面の表示を更新する(ステップB41)。
【0104】
また、CPU20は、第2のリンクデータ格納領域833に格納されているリンクデータを更新し(ステップB43)、更新されたリンクデータに基づいて表の表示を更新して(ステップB45)、ステップB37に戻る。
【0105】
ステップB37において変更操作がなされなかったと判定した場合には(ステップB37;No)、CPU20は、保存・新規実行操作がユーザーによりなされたかどうかを判定し(ステップB47)、なされなかったと判定した場合には(ステップB47;No)、第2の教材連動処理を終了する。
【0106】
ステップB47において、保存・新規実行操作がなされたと判定した場合には(ステップB47;Yes)、CPU20は、教材画面に新規の小画面を追加表示し(ステップB49)、教材画面の表示を更新する(ステップB51)。そして、第2の教材内データ格納領域831に格納されている教材内データの等価式をリセットして(ステップB53)、ステップB37に戻る。
【0107】
ここで、新規の小画面とは、同一演算内容の数式であって、定義式が異なる数式を表示するための画面であり、例えば、図35の小画面5055がそれである。
【0108】
ステップB25において、今回のリンク操作が初回のリンク操作でなかったと判定した場合には(ステップB25;No)、CPU20は、第2のリンクデータ格納領域833に新規の等価式を追加して格納し(ステップB33)、表の表示を更新して(ステップB35)、ステップB37へと処理を移行する。
【0109】
次にこれまでの処理について、表示画面例を参照しつつ、より具体的に説明する。
図26は、第2の電子教材741として設定されている内容を示す図である。小画面7411には、数式「diff(y,x)」、「∫(y,x)」が、それらの数式の変数7411b、7411dとしての数式「y」と共に定義されている。
【0110】
また、数値ボックス7411aが表示されており、「y」に対する定義式が入力可能となっている。また、小画面7411の右下方には、保存・新規ボタン7413が表示されている。
【0111】
図27は、表示部50に表示される教材画面505の一例を示したものである(図25のステップB5)。ここでは、第2の電子教材741に従って小画面5051が表示され、数値ボックス5051aには、定義式「x2」が入力されている。また、これにより、定義された数式「diff(y,x)」、「∫(y,x)」における変数としての数式「y」が、5051b、5051dとして定義式「x2」に置換され表示されている。そして、演算結果の式5051c及び5051eとして、それぞれ「2x」、「x3/3」が表示されている。
【0112】
そして、小画面5051の右下方には保存・新規ボタン5053が表示されている(図25のステップB9)。この保存・新規ボタン5053は、定義式のみを変更して同じ数式処理を行わせる保存・新規実行操作を行う場合に用いられるボタンである。
【0113】
教材画面505の上方には、ユーザーがメニューを選択するためのメニューバーが表示されている(図25のステップB1)。この中のFunctionメニュー506の役割は、第1実施形態において図10で説明したFunctionメニュー502と同様であるので説明を省略する。
【0114】
図28は、Functionメニュー506の中から表計算機能が選択された場合の表示画面例を示したものである。図28に示すようにFunctionメニュー506を選択することで表示されるFunctionメニュー項目506aの中から、「表」と表示された表計算機能506bがタップ操作等により選択されたかどうかで、CPU20は、表計算機能の実行が指示入力されたかどうかを判定する(図25のステップB19)。
【0115】
図29は、図28において表計算機能506bが選択された場合に(図25のステップB19;Yes)、表示される表画面507(図25のステップB21)の一例を示したものである。ここでは、教材画面505の下方に、テーブル形式の表を備えた表画面507が表示されている。
【0116】
図30は、ユーザーにより小画面5051における数式から表に対してリンク操作がなされた場合の操作例を示したものである。小画面5051に表示された数式を、表画面507に移動することでリンクが成立する。尚、ここでは移動操作としてドラッグ&ドロップ操作を行っている。CPU20は、このドラッグ&ドロップ操作を検知することによりリンク操作を検知する(図25のステップB23)。
【0117】
図31は、リンク操作がなされた場合に(図25のステップB23;Yes)、表画面507に表示される表の一例を示したものである(図25のステップB29、B31)。図31において、小画面5051におけるそれぞれの数式が表の1行目の行507aに入力・表示されている(但し、表示の都合上、数式「diff(x2,x)」、「∫(x2,x)」については、その演算子を表す「diff」、「∫」のみを示した。)。また、等価式は、表の2行目の行507bに入力・表示されている。
【0118】
図32は、小画面5051における定義式を変更する操作がユーザーによりなされる場合の操作例を示したものである。ユーザーは、数値ボックス5051aをタップ操作により指定し、再度定義式を入力すればよい(図25のステップB37)。
【0119】
図33は、図32の小画面5051において定義式が変更された場合の表示画面例を示したものである(図25のステップB37;Yes)。小画面5051において、定義式が「x」に変更され、数値ボックス5051fに入力されている。また、5051g、5051iの「x」は、「y」の定義式の変更操作により自動的に更新・表示されたものである。また、演算結果の式5051h及び5051jとして、それぞれ「1」、「x2/2」が表示されている。
【0120】
また図33において、定義式を変更する操作がなされたことで、表画面507における表の2行目の等価式が更新され、「x」、「1」、「x2/2」とされている(図25のステップB45)。
【0121】
図34は、保存・新規ボタン5053のユーザーによる操作例を示したものである。ユーザーは、保存・新規実行操作を入力する際、タッチペン7を用いて保存・新規ボタン5053をタップ操作すればよい。
【0122】
図35は、図34のような保存・新規実行操作がユーザーによりなされた場合に(図25のステップB47;Yes)、追加して表示される新規の小画面5055(図25のステップB49)の一例を示したものである。図35では、小画面5051の下方に小画面5055が新規に追加して表示されている。
【0123】
小画面5055においては、定義式「x3」が数値ボックス5055aに新たに入力されており、5055b及び5055dの「x3」は、「y」の定義式の入力操作により自動的に表示されたものである。また、演算結果の式5055c及び5055eとして、それぞれ「3x2」、「x4/4」が表示されている。
【0124】
図36は、小画面5055における数式から表に対してユーザーにより2度目のリンク操作がなされた場合の操作例を示したものである。小画面5055に表示された数式を、表画面507上にドラッグ&ドロップ操作することで2度目のリンクが成立する。
【0125】
図37は、2度目のリンク操作がなされた(初回のリンク操作ではなかった)場合に(図25のステップB25;No)、更新して表示される表画面507の表の一例を示したものである(図25のステップB35)。等価式「x3」、「3x2」及び「x4/4」が3行目の行507dに追加され表示されている(図25のステップB33、B35)。
【0126】
以上の通りに、第2実施形態によれば、表示された数式と表とを関連付けるリンク操作を検知した場合に、当該数式の演算結果を当該表内に表示させることができる。また、定義式の変更に応じて数式を再演算し、当該表内に表示されている演算結果を更新する。また、表示した数式と表とを関連付けるリンク操作を検知する毎に、当該数式の演算結果を当該表内に新たに追加して表示させることができる。従って、表示された数式と表計算用の表との関連付けを可能とし、数式に係るデータの変更・加工等を表上で可能ならしめる、使い勝手の良い演算制御装置が実現できる。
【0127】
尚、ユーザーによるリンク操作はタッチペン7を用いたドラッグ&ドロップ操作であるものとして説明したが、これに限られるわけではなく、例えばタッチペン7の代わりに方向キー3bとEXEキー3cとを用いて実現することにしても勿論良い。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明を適用した関数電卓の概観図。
【図2】本発明を適用した関数電卓の内部構成を示すブロック図。
【図3】第1実施形態におけるROMのデータ構成を示す図。
【図4】第1実施形態におけるメモリカードのデータ構成を示す図。
【図5】第1実施形態におけるRAMのデータ構成を示す図。
【図6】第1の教材内データ格納領域を示す図。
【図7】第1のリンクデータ格納領域を示す図。
【図8】第1の教材連動処理の流れを示すフローチャート。
【図9】第1の電子教材として設定されている内容を示す図。
【図10】第1の教材連動処理により表示される教材画面の一例を示す図。
【図11】表計算機能が選択された場合の表示画面の一例を示す図。
【図12】表計算機能が選択されたことで表示される表画面の一例を示す図。
【図13】教材画面の幾何図形から表画面の表へのリンク操作例を示す図。
【図14】リンク操作により作成・表示される表画面の表の一例を示す図。
【図15】表内の値を変更する操作がなされた場合の表示画面の一例を示す図。
【図16】表内の値を変更する操作により表示が更新された幾何図形を示す図。
【図17】教材画面の幾何図形を変形する場合の操作例を示す図。
【図18】教材画面の幾何図形から表画面の表への第2のリンク操作例を示す図。
【図19】第2のリンク操作により表示更新された表画面の表の一例を示す図。
【図20】第2実施形態におけるROMのデータ構成を示す図。
【図21】第2実施形態におけるメモリカードのデータ構成を示す図。
【図22】第2実施形態におけるRAMのデータ構成を示す図。
【図23】第2の教材内データ格納領域を示す図。
【図24】第2のリンクデータ格納領域を示す図。
【図25】第2の教材連動処理の流れを示すフローチャート。
【図26】第2の電子教材として設定されている内容を示す図。
【図27】第2の教材連動処理により表示される表示画面の一例を示す図。
【図28】表計算機能が選択される場合の表示画面の一例を示す図。
【図29】表計算機能が選択されることで表示される表画面の一例を示す図。
【図30】小画面の数式から表画面の表へのリンク操作例を示す図。
【図31】リンク操作により作成・表示される表画面の表の一例を示す図。
【図32】小画面の定義式を変更する操作例を示す図。
【図33】定義式を変更する操作により表示される表示画面の一例を示す図。
【図34】保存・新規実行操作例を示す図。
【図35】保存・新規実行操作により追加して表示される小画面の一例を示す図。
【図36】追加して表示された小画面の数式から表画面の表へのリンク操作例を示す図。
【図37】追加して表示された小画面の数式から表画面の表へのリンク操作により表示更新された表画面の表の一例を示す図。
【符号の説明】
【0129】
1 関数電卓
3 キー群
3a 数字キー群
3b 方向キー
3c EXEキー
5a ディスプレイ
5b タッチパネル
7 タッチペン
10 メモリカードリーダー
20 CPU
30 入力部
40 タッチパネル
50 表示部
60 ROM
611 第1の教材連動プログラム
631 第2の教材連動プログラム
70 メモリカード
72 第1の電子教材
721 第1の電子教材プログラム
723 第1の教材内初期設定データ
74 第2の電子教材
741 第2の電子教材プログラム
743 第2の教材内初期設定データ
80 RAM
811 第1の教材内データ格納領域
813 第1のリンクデータ格納領域
831 第2の教材内データ格納領域
833 第2のリンクデータ格納領域
90 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図形と該図形の所定部位の幾何学的性質をその数値で表す変数を用いた式とを表示する制御を行う図形表示制御手段と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御手段と、
前記図形表示制御手段により表示制御された図形と前記表表示制御手段により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知手段と、
この検知手段による検知に応じて、前記変数の値を前記表示制御された表中に表示する制御を行う変数値表示制御手段と、
を備えることを特徴とする演算制御装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記関連付け操作として、前記表示制御された図形を前記表示制御された表中に移動する操作の入力を検知する移動操作検知手段を有することを特徴とする請求項1に記載の演算制御装置。
【請求項3】
前記図形表示制御手段により表示制御された前記図形を変形操作に従って変形する図形変形手段と、
この図形変形手段により変形された図形と前記表表示制御手段により表示制御された表とを関連付ける第2の関連付け操作の入力を検知する第2の検知手段と、
この第2の検知手段による検知に応じて、前記図形変形手段により変形された図形の前記所定部位に関する前記変数の値を前記表示制御された表中に追加する制御を行う変数値
追加表示制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の演算制御装置。
【請求項4】
前記図形表示制御手段により表示制御された前記図形を変形操作に従って変形する図形変形手段と、
前記変数値表示制御手段により表示制御された変数の値を変更操作に従って変更する変数値変更手段と、
前記変数値表示制御手段により表示制御された変数の値を、前記図形変形手段により変形された図形の前記所定部位に関する値に更新する制御と、前記図形表示制御手段により表示制御された前記図形を、前記変数値変更手段により変更された変数の値に従って変形して表示を更新する制御を行う相互連動更新制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の演算制御装置。
【請求項5】
数式を表示する制御を行う数式表示制御手段と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御手段と、
前記数式表示制御手段により表示制御された数式と前記表表示制御手段により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知手段と、
この検知手段による検知に応じて、前記数式を演算した演算結果を前記表示制御された表中に表示する制御を行う結果表示制御手段と、
前記表示制御された数式に用いられている変数の定義内容を変更する変更手段と、
この変更手段による変更内容に従って、前記表示制御された数式を演算し、その演算結果で前記結果表示制御手段により表示制御された演算結果を更新する制御を行う連動更新制御手段と、
を備えることを特徴とする演算制御装置。
【請求項6】
前記数式表示制御手段は、同一の数式であって、当該数式の変数の定義内容が異なる複数の数式を表示する数式複数表示制御手段を有し、
前記検知手段は、前記数式複数表示制御手段により表示制御された何れかの数式と前記表示制御された表とを関連付ける数式別関連付け操作の入力を検知する数式別検知手段を有し、
前記結果表示制御手段は、前記数式別検知手段により検知される毎に、検知された数式別関連付け操作により指定された数式の演算結果を、前記表示制御された表中に追加していく制御を行う追加表示制御手段を有することを特徴とする請求項5に記載の演算制御装置。
【請求項7】
コンピュータに、
図形と該図形の所定部位の幾何学的性質をその数値で表す変数を用いた式とを表示する制御を行う図形表示制御機能と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御機能と、
前記図形表示制御機能により表示制御された図形と前記表表示制御機能により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知機能と、
この検知機能による検知に応じて、前記変数の値を前記表示制御された表中に表示する制御を行う変数値表示制御機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
数式を表示する制御を行う数式表示制御機能と、
表計算用の表を表示制御する表表示制御機能と、
前記数式表示制御機能により表示制御された数式と前記表表示制御機能により表示制御された表とを関連付ける所定の関連付け操作の入力を検知する検知機能と、
この検知機能による検知に応じて、前記数式を演算した演算結果を前記表示制御された表中に表示する制御を行う結果表示制御機能と、
前記表示制御された数式に用いられている変数の定義内容を変更する変更機能と、
この変更機能による変更内容に従って、前記表示制御された数式を演算し、その演算結果で前記結果表示制御機能により表示制御された演算結果を更新する制御を行う連動更新制御機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate


【公開番号】特開2006−48110(P2006−48110A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223835(P2004−223835)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】