説明

潤滑油添加剤及び潤滑油組成物

【課題】 金属吸着性、せん断安定性及び粘度指数向上能に優れた潤滑油添加剤を提供する。
【解決手段】 量子力学計算ソフトCACheを用いてMM2法で構造最適化後に拡張ヒュッケル法で算出した化合物C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギーの差の絶対値が1.080eV以下である官能基Xを含有する構成単位(a)と、炭素数1〜36のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b)とを必須構成単位とする共重合体(A)を含有する潤滑油添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油添加剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の気運が高まり、自動車の省燃費性がより一層要求されてきている。そのために、潤滑油に求められる性能もより高度なものとなっている。特に潤滑油の低粘度化は粘性抵抗低減による省燃費化の有効な手段の一つである。潤滑油を低粘度化するには低粘度の基油を用いるのが有効な方法である。しかしながら、単純な低粘度化は耐金属疲労性を悪化させるため、低粘度の基油と高粘度の基油をブレンドすることにより耐金属疲労性を改善させる方法が提案されている(特許文献−1参照)。しかし、特許文献−1の方法では耐金属疲労性の改善効果が十分でなく、さらなる改良が必要であった。
【特許文献−1】特開2003−113391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、耐金属疲労性の改善効果を有する金属吸着性に優れ、かつ粘度指数向上能及びせん断安定性にも優れた潤滑油添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構成単位からなる共重合体が、金属吸着性、粘度指数向上能及びせん断安定性に優れることを見いだし、本発明に到達した。即ち本発明は、量子力学計算ソフトCACheを用いてMM2法で構造最適化後に拡張ヒュッケル法で算出した化合物C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギーの差の絶対値が1.080eV以下である官能基Xを含有する構成単位(a)と、炭素数1〜36のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b)とを必須構成単位とする共重合体(A)を含有する潤滑油添加剤及び該潤滑油添加剤を含有する潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の潤滑油添加剤は、金属吸着性、粘度指数向上能及びせん断安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の共重合体(A)は、その必須構成単位(a)に含有される官能基Xが、量子力学計算ソフトCACheを用いてMM2法で構造最適化後に拡張ヒュッケル法で算出した化合物C12H25−XのHOMO(最高被占軌道)とFe(OH)3のLUMO(最低空軌道)のエネルギーの差の絶対値が1.080eV以下となる官能基であり、金属吸着性、粘度指数向上能及びせん断安定性の観点から、好ましくは1.060eV以下であり、更に好ましくは1.040eV以下である。
【0007】
HOMOとLUMOのエネルギーの値は、例えば、富士通株式会社製量子力学計算ソフト「CAChe Worksystem6.1.12.33」を用いて計算できる。具体的には、計算したい分子構造を「Work Space」上で描画し、分子力場法である「MM2 geometry」で構造最適化した後、「Project Leader」上で拡張ヒュッケル法によりHOMO又はLUMOのエネルギーの値を計算することができる。
【0008】
金属と吸着質との吸着は、吸着質のHOMOの電子が金属のLUMOに配位しやすいとき、吸着が起こりやすいと考えられる。そのため、吸着質のHOMOと金属のLUMOのエネルギー差が小さい程、金属に対する吸着質の吸着は起こりやすいと考えられる。
【0009】
計算に用いることのできる官能基Xとしては、例えば、水酸基、アミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基)、リン酸エステル基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基、アミド基、カルボニル基、アルデヒド基、エーテル基、ニトリル基、シアン酸基、イソシアン酸基、ニトロ基、ニトロソ基及びハロゲンが挙げられる。
【0010】
これらの内、金属吸着性の観点から好ましいものとして、水酸基、アミノ基、リン酸エステル基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基及びこれらの併用が挙げられ、以下、これらの好ましい官能基を含有する構成単位と、C1−36(炭素数1〜36を表す場合C1−36と表し、以下同様の表現を用いる)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b)とを必須構成単位とする共重合体(A)について詳述する。
【0011】
水酸基を含有する構成単位を共重合体(A)に導入する方法としては、水酸基含有単量体(a1)を共重合する方法が挙げられる。
【0012】
水酸基含有単量体(a1)としては以下の(a11)〜(a16)が挙げられる。
(a11)水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル:
(a111)一般式(1)で示される(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−(AO)r−H (1)
式中、R1は水素原子又はメチル基、AはC2−4のアルキレン基、rは1〜20(好ましくは1)の整数である。
(a111)としては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略記)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のC2−4ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(a112)3〜8個の水酸基を含有する多価アルコールの(メタ)アクリレート:
多価アルコールとしては、例えばC3−12のアルカンポリオール、その分子内若しくは分子間脱水物及び糖類(例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖及びメチルグルコシド等)等が挙げられ、これらの(メタ)アクリレートとしては、グリセリンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート及び蔗糖(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(a12)C2−12のアルケノール;
ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)及びC3−12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、1−ブテン−4−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノール及び1−ドデセノール等]等。
(a13)C4−12のアルケンジオール:
2−ブテン−1,4−ジオール等。
(a14)C3−12のアルケニル基を有する水酸基含有アルケニルエーテル;
例えばC1−6ヒドロキシアルキルC3−12アルケニルエーテル[例えば2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル並びに(a112)で挙げた多価アルコールのC3−12アルケニルエーテル{トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アリルエーテル及び蔗糖(メタ)アリルエーテル等}]。
(a15)水酸基含有芳香族単量体;
o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン等。
(a16)単量体(a11)〜(a15)の(ポリ)オキシアルキレンエーテル;
(a11)〜(a15)の水酸基の内の少なくとも1個が−O−(AO)r−A−OHで置換された単量体[但し、A及びrは一般式(1)と同じ]。
【0013】
(a1)の内で好ましいのは(a12)、(a14)、(a15)、(a16)及び(a11)、更に好ましいのは、(a111)であり、特に好ましいのは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、とりわけ好ましいのはヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0014】
アミノ基を含有する構成単位を共重合体(A)に導入する方法としては、次の2つの方法が挙げられる。
(1)アミノ基含有単量体(a2)を共重合する方法。
(2)アミノ基に変換しうる官能基を有する前駆体共重合体中の該官能基をアミノ基に変換する方法。
【0015】
前期(1)の方法におけるアミノ基含有単量体(a2)としては、少なくとも1個の1級、2級又は3級アミノ基を含有する以下の(a21)〜(a24)が挙げられる。
(a21)アミノ基含有脂肪族単量体:
(a211)一般式D−NHD1で示されるモノ又はジアルケニルアミン(但し、式中D1は水素原子又はD、DはC2−10、好ましくはC3−6のアルケニル基)[例えば(ジ)(メタ)アリルアミン及び(イソ)クロチルアミン等];
(a112)アミノ基含有アクリル系単量体:
アミノ基含有(メタ)アクリレート[(モノ−C1−4アルキル)アミノC2−6アルキル(メタ)アクリレート{アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ブチルアミノエチル又はメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート}、ジ−C1−4アルキルアミノC2−6アルキル(メタ)アクリレート{ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等}等]及びこれらの(メタ)アクリレートに対応するアミノ基含有(メタ)アクリルアミド等;
(a22)アミノ基含有複素環式単量体:
アミノ基含有複素環式アクリル系単量体[モルホリノ−C2−4アルキル(メタ)アクリレート{モルホリノエチル(メタ)アクリレート等}等]、ビニル置換複素環式アミン[ビニルピリジン(4−又は2−ビニルピリジン等)等]、N−ビニルピロール及びN−ビニルピロリジン等;
(a23)アミノ基含有芳香族単量体:
アミノスチレン類(アミノスチレン等)等。
(a24)(a21)〜(a23)の塩[塩酸塩、リン酸塩及びC1−8のカルボン酸塩]:
【0016】
前記(2)の方法は、アミノ基が1級アミノ基である場合に特に好ましく用いられる方法である。アミノ基が1級アミノ基である場合の具体例としては、官能基としてケチミン基を有する共重合体をアミノ基含有共重合体に変換する方法が挙げられる。
【0017】
官能基としてケチミン基を有する共重合体は、通常はケチミン基含有単量体を共重合成分の1つとして共重合することにより得られる。ケチミン基含有単量体は、比較的疎水性があり、かつ、共重合工程でも安定性が高く、副反応が起こりにくいので好ましく用いられる。
【0018】
ケチミン含有単量体としては、下記一般式(2)で示される単量体が挙げられ、該単量体を使用した場合は、得られた共重合体をアルカリ性又は中性で加水分解することにより、ケチミン基を1級アミノ基に変換することができる。
【0019】
【化1】

【0020】
式中、R2は水素原子又はメチル基、Q1はカルボニル基又はC1−8のアルキレン基、Zは−O−又は−NH−、A1はC2−4のアルキレン基、nは0〜50の整数であり、Q1がカルボニル基のときはnは1〜50の整数である。R3及びR4は、水素原子、C1−8のアルキル基又はR3とR4が相互に結合したC4−12のシクロアルキレン基であり、R3とR4が同時に水素原子になることはない。
【0021】
前記一般式(2)で示される単量体の内、Q1がカルボニル基で、Zが−O−である単量体の製造方法としては以下の方法が挙げられる。例えば1級アミノ基含有アルコール(例えば2−アミノエタノール、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−アミノブタノール、3−アミノブタノール、4−アミノブタノール及び2−(2−アミノエトキシ)エタノール)とケトン(シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジイソプロピルケトン及びジイソブチルケトン等)又はアルデヒド(ベンズアルデヒド及びメトキシベンズアルデヒド等)を必要により水と共沸する溶媒(トルエン、ベンゼン及びキシレン等)を用い100℃又はそれ以上の温度で水を留出させて反応させてケチミン化アルコールを得た後、得られたケチミン化アルコールと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチル等とを脱水エステル化反応又はエステル交換反応させて一般式(2)で示される単量体が合成される。
【0022】
一般式(2)で示される単量体の内で、Q1がアルキレン基の場合は、(メタ)アリルアミン、アミノエチル(メタ)アリルエーテル及びアミノエトキシエチル(メタ)アリルエーテル等と、前述のケトン(アセトン及びメチルイソブチルケトン等)との反応で得られる。
【0023】
一般式(2)で示される単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸とN−イソプロピリデン−2−ヒドロキシエチルアミンとのエステル、(メタ)アクリル酸とN−1−メチルイソペンチリデン−2−ヒドロキシエチルアミンとのエステル、(メタ)アクリル酸とN−ジイソブチリデン−2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンとのエステル、(メタ)アクリル酸とN−イソプロピリデン−2−アミノエチルアミンとのアミド及び(メタ)アクリル酸とN−1−メチルイソペンチリデン−2−アミノエチルアミンとのアミド等が挙げられる。
【0024】
リン酸エステル基を含有する構成単位を共重合体(A)に導入する方法としては、リン酸エステル基含有単量体(a3)を共重合する方法が挙げられる。
【0025】
リン酸エステル基含有単量体(a3)としては、リン酸モノC2−12アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]、(メタ)アクリロイロキシC1−12アルキルリン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシプロピルホスフェート等]、ポリ(n=2〜20)オキシメチレンモノ(メタ)アクリレートエステルのリン酸エステル、リン酸ビニルモノC1−24アルキル(エステル[リン酸ビニルモノメチルエステル及びリン酸ビニルモノエチルエステル等]、リン酸ビニルジC1−24アルキルエステル[リン酸ビニルジメチルエステル及びリン酸ビニルジエステル等]、(メタ)アクリロイロキシC1−12アルキルリン酸エステルのC1−24アルキルエステル[(メタ)アクリロイロキシエチルリン酸エステルのモノメチルエステル等]等が挙げられる。
【0026】
カルボキシル基を含有する構成単位を共重合体(A)に導入する方法としては、カルボキシル基含有単量体(a4)を共重合する方法が挙げられる。
【0027】
カルボキシル基含有単量体(a4)としては、不飽和モノカルボン酸[メタクリル酸、アクリル酸、(イソ)クロトン酸及びシンナミック酸等]、不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等]並びに不飽和ジカルボン酸のモノC1−8アルキルエステル[モノアルキルマレート、モノアルキルフマレート及びモノアルキルイタコネート等]が挙げられる。
【0028】
チオール基を含有する構成単位を共重合体(A)に導入する方法としては、以下の2つの方法が挙げられる。
(1)チオール基含有単量体(a5)を共重合する方法。
(2)チオール基に誘導しうる官能基を有する前駆体共重合体中の該官能基をチオール基に誘導する方法。
(1)及び(2)の内で好ましいのは、製造工程中の安定性の観点から(2)の方法である。
【0029】
前記(1)の方法におけるチオール基含有単量体(a5)としては、アリルメルカプタン及び2−メルカプトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
前記(2)の方法におけるチオール基に誘導しうる官能基としては、1級アミノ基、水酸基及びカルボキシル基が挙げられる。これらの官能基の内、反応性の観点から好ましいのは1級アミノ基及び水酸基、特に1級アミノ基である。前記(2)の方法における前駆体共重合体は、1級アミノ基含有単量体、水酸基含有単量体若しくはカルボキシル基含有有単量体を含む単量体を共重合する方法、又は、1級アミノ基の場合は前述のケチミン基含有共重合体のケチミン基を加水分解する方法によって得られる。その後、得られた共重合体中の1級アミノ基、水酸基又はカルボキシル基と反応してチオール基を生成する化合物とを反応させることによって、目的とするチオール基含有構成単位を含む油溶性共重合体が得られる。
【0031】
1級アミノ基含有単量体としては、前記アミノ基含有単量体(a2)の内の1級アミノ基含有単量体が挙げられる。
水酸基含有単量体としては、前記水酸基含有単量体(a1)が挙げられる。
カルボキシル基含有単量体としては、前記カルボキシル基含有単量体(a4)が挙げられる。
【0032】
1級アミノ基、水酸基又はカルボキシル基と反応してチオール基を生成する化合物としては、例えばチオール基含有カルボン酸(チオグリコール酸及び3−メルカプトプロピオン酸等)、チオール基含有カルボン酸エステル(チオグリコール酸メチル及び3−メルカプトプロピオン酸メチル等)、エチレンスルフィド及びジチオエステル基又はトリチオエステル基を有する環状化合物(例えばエチレンジチオカルボナート、エチレントリチオカルボナート、C3−22のメルカプトカルボン酸の分子内環状エステル及びC3−22のメルカプトチオンカルボン酸の分子内環状エステル)が挙げられ、副反応が起こりにくさの観点から、好ましいのはエチレンスルフィド及びジチオエステル基又はトリチオエステル基を有する環状化合物である。
【0033】
スルホン酸基を含有する構成単位を共重合体(A)に導入する方法としては、スルホン酸基含有単量体(a6)を共重合する方法が挙げられる。
【0034】
スルホン酸基含有有単量体(a6)としてはC2〜6のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸及び(メタ)アリルスルホン酸等]、C6〜12のビニル基含有芳香族スルホン酸[p−スチレンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体[スルホプロピル(メタ)アクリレート及びスルホエチル(メタ)アクリレート等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体[2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等]、スルホン酸基と水酸基を含有するビニル単量体[3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及び3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等]及びアルキル(C3−18)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[ドデシルアリルスルホコハク酸エステル等]等が挙げられる。
【0035】
構成単位(a)として、金属吸着性の観点から更に好ましいものは、水酸基を含有する構成単位及びリン酸エステル基を含有する構成単位であり、特に好ましいものは、水酸基を含有する構成単位である。
【0036】
本発明における構成単位(a)としては、金属腐食性の観点から、酸解離定数(pKa)が5以上のものが好ましい。pKaが5以上の構成単位(a)としては、水酸基を含有する構成単位及びアミノ基を含有する構成単位が挙げられる。
【0037】
共重合体(A)の必須構成構成単位であるC1−36のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b)の内、金属吸着性及び粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、C1−4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b1)、C8−18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b2)、C18−24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b3)、C16−36の分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b4)及びこれらの併用である。
【0038】
C1−4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b1)としては、メチル、エチル、n−又はイソ−プロピル及びn−、イソ−、sec−又はtert−ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの内、金属吸着性と粘度指数向上の観点からメチルメタクリレート(以下、MMAと略記)が好ましい。
【0039】
C8−18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b2)としては、直鎖のC8−18アルキル(メタ)アクリレート及び分岐のC8−17アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
直鎖のC8−18アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばn−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル又はn−オクタデシル(メタ)アクリレート及びn−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−トリデシル又はn−ペンタデシル(メタ)アクリレート並びにチーグラーアルコールの(メタ)アクリレートが挙げられる。
分岐のC8−18アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばイソオクチル、2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシル、イソドデシル、2−メチルウンデシル、イソトリデシル、2−メチルドデシル、イソテトラデシル、2−メチルトリデシル、イソペンタデシル又は2−メチルテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(b2)としては更に、直鎖C8−18アルコール及び分岐C8−18アルコールの混合物の(メタ)アクリレート[例えば「ネオドール23」及び「ネオドール45」(シェル化学株式会社製)並びに「オキソコール1213」及び「オキソコール1415」(日産化学株式会社製)等のオキソアルコールの(メタ)アクリレート]が挙げられる。
(b2)の内で好ましいのは、粘度指数の観点から、C12−18(更にC12−15)アルキル(メタ)アクリレートであり、特に好ましいのは、直鎖C12−18(更にC12−15)アルキル(メタ)アクリレートである。
【0040】
C18−24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b3)としては、例えばn−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ノナデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシルメタクリレート、n−エイコシルアクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレート及びn−テトラコシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの内、粘度指数向上の観点から好ましいのは、n−オクタデシル(メタ)アクリレートである。
【0041】
C16−36の分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b4)のアルキル基としては、以下の基が挙げられる。
1)C16−16のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−C2−18アルキル−ヘプタデシル基(例えば1−オクチルヘプタデシル基)及び2−C1−16アルキル−オクタデシル基(例えば2−エチルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル及び2−ヘキサデシルオクタデシル基);
2)C13−14のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−C4−20アルキル−ペンタデシル基(例えば1−ヘキシルペンタデシル、1−デシルペンタデシル及び1−ウンデシルペンタデシル基)及び2−C2−18アルキル−ヘキサデシル基(例えば2−エチルヘキサデシル及び2−ドデシルヘキサデシル基);
3)C10−12のポリメチレン基を有する基:
例えば1−C6−22アルキル−ドデシル基(例えば1−オクチルドデシル基)、2−C6−22アルキル−トリデシル基(例えば2−ヘキシルトリデシル及び2−オクチルトリデシル基)並びに2−C4−20アルキル−テトラデシル基(例えば2−ヘキシルテトラデシル及び2−デシルテトラデシル基);
4)C6−9のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−C8−24アルキル−デシル基(例えば2−オクチルデシル基)及び2,4−ジC4−23アルキル−ウンデシル基(例えば2,4−ジブチル−ウンデシル基);
5)C2−5のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−(3−メチルヘキシル)−7−メチル−デシル及び2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル−オクチル基;
6)分岐アルキル基の2個又はそれ以上の混合物:
例えば、プロピレンオリゴマー(6〜11量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(モル比16/1〜1/11)、イソブテンオリゴマー(5〜8量体)及びC5−17のα−オレフィンオリゴマー(2〜6量体)等に対応するオキソアルコールのアルキル残基。2−イソオクチルイソドデシル基(日産化学工業製「ファインオキソコール2000」の水酸基を除いた残基)、2−イソウンデシルイソペンタデシル基(日産化学工業製「ファインオキソコール2600」の水酸基を除いた残基)。
これらのアルキル基の内で好ましいのは、2−直鎖C8−10アルキル−直鎖C12−14アルキル基である。
【0042】
(b4)の好ましい具体例としては、たとえば2−オクチルドデシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、1−オクチルドデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルテトラデシル(メタ)アクリレート、1−ヘキシルテトラデシル(メタ)アクリレート、1−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、1−ウンデシルトリデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキサデシル(メタ)アクリレート及び2−ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの内で好ましいのは2−オクチルドデシルアクリレート及び2−デシルテトラデシルアクリレート、2−オクチルドデシルメタクリレート及び2−デシルテトラデシルメタクリレート(以下D−TMと略記)、特に好ましくは、2−オクチルドデシルメタクリレート及び2−デシルテトラデシルアクリレート、とりわけ好ましくは2−デシルテトラデシルアクリレートである。
【0043】
本発明における共重合体(A)は構成単位(a)及び構成単位(b)以外に、更に1種以上のその他の構成単位を含有してもよい。その他の構成単位としては、以下の単量体(c1)〜(h1)を共重合させることにより得られる構成単位(c)〜(h)からなる群から選ばれる1種以上の構成単位が挙げられる。
【0044】
単量体(c1):C2−20の不飽和炭化水素[例えば不飽和脂肪族C2−20炭化水素{C2−20アルケン(エチレン、プロピレン、イソブテン、ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン)及びC4−12アルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン及び1,7−オクタジエン)等};不飽和脂環式C5−20炭化水素{シクロアルケン(シクロヘキセン等)、ジシクロアルカジエン(シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエン等)、環式テルペン(ピネン及びリモネン等)、ビニル(ジ)シクロアルケン(ビニルシクロヘキセン等)、エチリデン(ジ)シクロアルケン(エチリデンビシクロヘプテン及びエチリデンノルボルネン等)及び芳香環含有シクロアルケン(インデン等)等};不飽和芳香族炭化水素{スチレン及びその誘導体、例えばC1−20ハイドロカルビル置換スチレン(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン及び4−クロチルベンゼン等)及びC2−10アルケニルナフタレン(2−ビニルナフタレン等)等}]。
【0045】
単量体(d1):ビニルケトン[C1−10アルキル又はC6−8アリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)]。
【0046】
単量体(e1):エポキシ基含有不飽和単量体[エポキシ基含有アクリル系単量体{グリシジル(メタ)アクリレート等}及びエポキシ基含有C2−10アルケニル(好ましくはC3−6アルケニル)エーテル{グリシジル(メタ)アリルエーテル等}等]。
【0047】
単量体(f1):ハロゲン原子含有不飽和単量体[ビニル又はビニリデンハロゲン化物(塩化ビニル、臭化ビニル及び塩化ビニリデン等)、C3−6アルケニルハロゲン化物{塩化(メタ)アリル等}及びハロゲン置換スチレン{(ジ)クロロスチレン等}等]。
【0048】
単量体(g1):アルキルアルケニルエーテル[C1−10アルキルC2−10アルケニルエーテル{アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル及びエチルビニルエーテル等)、アルキル(メタ)アリルエーテル(メチルアリルエーテル及びエチルアリルエーテル)及びプロペニルエーテル等}];
【0049】
単量体(h1):アルケニルカルボキシレート[C2−10アルケニルC1−20カルボキシレート{酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル及びn−オクタン酸ビニル等(好ましくは、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)}等]。
【0050】
共重合体(A)は、粘度指数及びせん断安定性の観点から、(A)の重量に基づいて、下記表1に示す重量%の構成単位を含有する。以下において、特に規定しない限り、%は重量%を表す。
【0051】
【表1】

【0052】
共重合体(A)は、油溶性である。本発明における油溶性とは、25℃の鉱物油100部(「YUBASE2」SKコーポレーション製)に、少なくとも0.5部が透明に溶解することをいう。共重合体(A)は、上記鉱物油に少なくとも2部溶解することが好ましく、少なくとも30部溶解することが更に好ましい。
【0053】
共重合体(A)は、酸化鉄への吸着試験における、下記式(1)で定義される吸着INDEXが通常1.5以上、好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上である。吸着INDEXが1.5未満であると、金属吸着性に乏しい。吸着INDEXとは酸化鉄への吸着性を表しており、共重合体(A)が高分子であることから、吸着前後の共重合体溶液の粘度変化によって金属表面に吸着された共重合体の量の尺度とすることができると考えられ、吸着INDEXが大きいほど金属吸着性が優れると考えられる。
【0054】
【数1】

【0055】
吸着試験前後の40℃動粘度は、次の方法で測定したものである。
(1)基油(「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製、100℃動粘度:2.3mm2/s。40℃動粘度:8.06mm2/s)180部に、共重合体20部を添加し、80℃で1時間撹拌して溶解させて評価油を調製する。
(2)評価油の40℃の動粘度(吸着試験前40℃動粘度)をJIS−K−2283の方法で測定する。
(3)評価油100部に酸化鉄(2価及び3価の混合物)(アルドリッチ社製の試薬、粒径:5ミクロン以下)10部を加え、25℃で、2時間撹拌後、濾紙でろ過し、ろ液の40℃の動粘度(吸着試験後40℃動粘度)を測定する。
(4)上記計算式にて吸着INDEXを小数点以下1桁まで求める。
【0056】
<計算例>
吸着前40℃動粘度=10.68mm2/s、
吸着後40℃動粘度=10.61mm2/s、
基油(「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製の40℃動粘度=8.06mm2/s;
【0057】
【数2】

【0058】
尚、吸着INDEXは、共重合体の構成単位(a)及び/又は構成単位(b1)の比率を増やすことにより上げることができ、比率を減らすことにより下げることができる。
【0059】
共重合体(A)の重量平均分子量は(以下Mwと略す)通常3,000〜1,000,000である。Mwが3,000未満では、粘度指数向上能に乏しい。1,000,000を超えるとせん断安定性に乏しくなる。尚、Mwは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによって測定されるものであり、ポリスチレンに換算して求めたものである。
【0060】
(A)のMwの好ましい範囲は、潤滑油組成物の用途によって異なるが、粘度指数向上能とせん断安定性の観点から、表2に記載の範囲である。(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量及び連鎖移動剤の量等により調整できる。
【0061】
【表2】

【0062】
(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合し、必要により前駆体共重合体中の官能基を所望の官能基に変換又は誘導することにより得られる。
【0063】
重合用の溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン及びC9−10のアルキルベンゼン等の芳香族溶剤、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びオクタン等の脂肪族C6−18炭化水素、2−プロパノール、1−ブタノール及び2−ブタノール等のC3−8のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤並びに鉱物油等が使用できる。好ましいのは鉱物油である。重合触媒としては、アゾ系触媒[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、ADVNと略記)及びジメチル2,2−アゾビスイソブチレート]並びに過酸化物系触媒[例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド及びラウリルパーオキシド]等が使用できる。更に、必要により連鎖移動剤(例えば、C2−20のアルキルメルカプタン)を使用することもできる。連鎖移動剤の使用量は、全単量体の重量に基づいて好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。反応温度としては、50〜140℃、好ましくは60〜120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により得ることもできる。更に、共重合体の重合様式としては、ランダム付加重合又は交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合又はブロック共重合のいずれでもよい。
【0064】
本発明の潤滑油添加剤は、通常共重合体(A)のみからなるが、更に希釈溶剤を含有していてもよい。共重合体(A)のみでは粘稠であっても、希釈溶剤を含有させることによって、基油に添加する際に容易に溶解できる点で好ましい。潤滑油添加剤が希釈溶剤を含む場合、希釈溶剤の含有量は、潤滑油添加剤の重量に基づいて好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、特に好ましくは10〜60%である。希釈溶剤の比率が高いほうが基油に容易に溶解する点で好ましいが、あまり多いのは経済的ではない。希釈溶剤としては、前述の重合工程で使用できる溶剤をそのまま使用してもよく、新たに加えてもよい。希釈溶剤としては、脂肪族溶剤[C6−18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン及び灯油等)]、芳香族溶剤{C7−15の芳香族溶剤[トルエン、キシレン、エチルベンゼン、C9の芳香族混合溶剤(トリメチルベンゼン、エチルトルエン等の混合物)及びC10−11の芳香族混合溶剤等]、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油又は水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油]、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]等が挙げられ、これらの内好ましいものは鉱物油である。
【0065】
希釈溶剤として好ましいのは120℃以上、更に好ましくは130℃以上、特に好ましくは150℃以上、とりわけ好ましくは160℃以上の引火点を有する希釈溶剤である。希釈溶剤の引火点が120℃以上であると、希釈溶剤を含む粘度指数向上剤を高温でも安全に取り扱うことができる。引火点が120℃以上の希釈溶剤としては、SK Corporation製「YUBASE 2」(引火点:160℃)、SK Corporation製;「YUBASE3」(引火点:194℃)及びSK Corporation製「YUBASE 4」(引火点:230℃)等が挙げられる。
【0066】
本発明の潤滑油組成物は、上記の潤滑油添加剤と基油からなる。
【0067】
基油としては前述の鉱物油及び合成潤滑油等が挙げられる。これらの鉱物油の内、好ましいものは、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、水素化分解による高粘度指数油、ポリα−オレフィン系合成潤滑油及びエステル系合成潤滑油である。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0068】
基油の100℃での動粘度は、潤滑油組成物の用途に応じて異なるが、好ましくは2〜5mm2 /sである。基油の動粘度が2mm2/s未満であると油膜切れを生じて焼きつけを起こし易い。また5mm2/sを超えると粘度指数の低下と粘性抵抗が増加する。
また、基油の引火点は、通常160℃以上、好ましくは180℃以上、更に好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上である。引火点が160℃未満の基油を使用すると、潤滑油組成物の引火点が低くなり、火災の危険性が高く、安全に使用できない。
【0069】
基油の粘度指数は好ましくは80以上、更に好ましくは100以上、特に好ましくは105〜180、とりわけ好ましくは120〜180である。このような基油を使用すると、粘度指数が更に高くなり省燃費性が更に良好となる。
【0070】
基油の曇点(JIS K2269−1993年)は−5℃以下が好ましい。更に好ましくは−15℃〜−60℃である。基油の曇点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好である。
【0071】
潤滑油組成物の重量に基づく共重合体(A)の含有量は、潤滑油組成物の用途に応じて表3に示した好ましい範囲がある。
【0072】
【表3】

【0073】
本発明の潤滑油組成物は、更に一般式(3)〜(6)のいずれかで示される有機リン化合物(P)の1種以上を含有していてもよい。
O=P(OR5)a(OH)3−a (3)
式中、aは1〜3の整数、R5は各々C4−24のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキル置換アリール基であり、a個のR5は同一でも異なっていてもよい。
一般式(3)で示される有機リン化合物としては、たとえばモノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、トリアルキルホスフェート及びこれらに相当するアリールエステルが挙げられる。
【0074】
O=P(OR6)b(OH)3−b・NHcR73−c (4)
式中、b及びcは各々1又は2の整数、R6及びR7は各々C4以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキル置換アリール基であり、R6及びR7は同一でも相異なったものでもよい。
一般式(4)で示される有機リン化合物としては、例えばモノアルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアルキルホスフェート及びジアリールホスフェート等と、モノアルキルアミン又はジアルキルアミンとの塩が挙げられる。
【0075】
P(OR8)a(OH)3−a (5)
式中、aは1〜3の整数、R8は各々C4以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキル置換アリール基である。
一般式(5)で示される有機リン化合物としては、例えばモノアルキルホスファイト、ジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイト及びこれらに相当するアリールホスファイト等がある。
【0076】
P(OR9)b(OH)3−b・NHcR103−c (6)
式中、b及びcは各々1又は2の整数、R9及びR10は各々C4以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキル置換アリール基であり、R9及びR10は同一でも相異なったものでもよい。
一般式(6)で示される有機リン化合物としては、例えばモノアルキルホスファイト、モノアリールホスファイト、ジアルキルホスファイト及びジアリルアリールホスファイト等と、モノアルキルアミン又はジアルキルアミンとの塩が挙げられる。
【0077】
一般式(3)〜(6)におけるR5〜R10で示される基の具体例としては、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル基及びオレイル基等のC4−30又はそれ以上、好ましくはC4−20のアルキル基若しくはアルケニル基;フェニル等のアリール基;及びトルイル基等のアルキル置換アリール基が挙げられる。
有機燐化合物(P)として例示したものの内で好ましいものは一般式(4)で示されるものの内のC4−18のアルキルホスフェートである。
【0078】
これらの有機燐化合物(P)の含有量は、潤滑油組成物の重量に基づいて、好ましくは0.01〜5%、更に好ましくは0.1〜3%である。
【0079】
本発明の潤滑油組成物は、更に、前述の共重合体(A)以外のアルキル(メタ)アクリレート系共重合体(B)を含有してもよい。(B)は前記単量体(b11)、(b21)、(b31)及び(c1)〜(h1)からなる群から選ばれる2種以上の単量体を重合して得られる共重合体である。
【0080】
(B)のMwは、好ましくは10,000〜500,000、更に好ましくは15,000〜370,000である。
【0081】
(B)の添加量は潤滑油組成物の重量に基づいて、好ましくは0〜20%、更に好ましくは0.1〜5%、特に好ましくは0.1〜1%である。
(B)は上記の(A)と同様の方法で製造できる。
【0082】
本発明の潤滑油組成物は更に従来から公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、以下のものが使用できる。
【0083】
分散剤(D):ポリアルケニルコハク酸イミド(ビス−又はモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)及びマンニッヒ縮合物及びボレート類等;
清浄剤(E):塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物等;
酸化防止剤(F):ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
消泡剤(G):シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
油性向上剤(H):長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びこれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
摩擦摩耗調整剤(I):モリブデン系又は亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
極圧剤(J):硫黄系化合物(モノ−又はジ−スルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物等)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
抗乳化剤(K):第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油、フォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
腐食防止剤(L):窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0084】
これらの添加剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、表4に記載の量(重量%、但し消泡剤はppm)を使用することができる。
【0085】
【表4】

【0086】
添加剤合計の添加量は潤滑油組成物の重量に基づいて、30重量%以下、好ましくは10〜20重
量%である。
【0087】
本発明の潤滑油組成物の100℃での動粘度及び40℃での動粘度は、通常それぞれ2〜10mm2/s及び13〜45mm2/sであることが好ましいが、潤滑油組成物の用途に応じて表5に示した好ましい範囲がある。潤滑油組成物の動粘度が下限以上であれば、漏れや焼き付きを起こしにくくなり、上限以下であれば、粘性抵抗が少なくなり、エネルギーロスを起こしにくい。本発明の潤滑油組成物は従来の潤滑油組成物に比べ、低い動粘度であるため、省燃費性に優れる。
【0088】
【表5】

【0089】
本発明の潤滑油組成物は、ギア油[デファレンシャル油及びマニュアルトランスミッション油(以下、MTFと略記)]、オートマチックトランスミッション油(以下、ATFと略記)、ベルト−CVTF及びトロイダルCVT油等の駆動系潤滑油、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、建設機械用作動油及び工業用作動油等の作動油、トラクション油並びにエンジン油等に好適に用いられる。これらの内、好ましいのはデファレンシャル油、MTF、ATF、ベルト−CVTF及びエンジン油であり、更に好ましくはMTF、ATF及びベルト−CVTF、特に好ましくはMTF及びATFである。
【実施例】
【0090】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、以下において部は重量部を表す。
(GPCによる重量平均分子量の測定法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5%のテトラヒドロフラン(以下、THFと略記)溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0091】
(動粘度及び粘度指数の試験方法)
JIS−K−2283の方法で行った。
(せん断安定性の試験方法)
CEC L45−45−A−99の方法に従い試験時間を20時間とした。
【0092】
<実施例1>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート及び窒素吹き込み管を備えた反応容器に、重合溶剤として2−プロパノール25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、HEMA4部、MMA35部、D−TM61部、ドデシルメルカプタン(以下、DMと略記)1.9部及びラジカル重合開始剤としてのADVN0.5部を仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に密閉下で系内温度を85℃に保ちながら3時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から4時間、85℃で熟成した後、130℃、3時間、減圧下(減圧度6mmHg)で揮発性モノマーと2−プロパノールを除去して共重合体(A−1)を得た。更に「SpectraSyn4」(ポリアルファオレフィン、Exxon Mobile Chemical製)を53.8部加えて、1時間撹拌し均一に溶解して、共重合体(A−1)の65重量%溶液を得た。
(A−1)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−1)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−1)のMwを表6に示す。
【0093】
<実施例2>
実施例1と同様の反応容器にトルエン90部、メチルイソブチルケトン141部及び2−アミノエタノール29部を仕込み、120℃で4時間、還流させながら反応させた後、減圧度6mmHgでトルエン及び未反応のメチルイソブチルケトンを除去した。30℃に冷却後、メタクリル酸メチル75部、ナトリウムメトキシド2.0部、フェノチアジン2.5部及びトルエン200部を仕込み、80℃で6時間、減圧度500mmHgで還流させながら反応させた後、減圧度6mmHgでトルエン及びメタクリル酸メチルを除去して、下記構造式のメタクリル酸とN−1−メチルイソペンチリデン−2−ヒドロキシエチルアミンとのエステル(以下、IPHAMAと略記)を得た。
【0094】
【化2】

【0095】
実施例1と同様の反応容器に、トルエン25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、前記IPHAMA4部、MMA35.5部、D−TM62部、DM1.9部及びADVN0.5部を仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に密閉下系内温度を85℃に保ちながら4時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、水25部とTHF25部を加え85℃で2時間加水分解した。次いで120℃に昇温し、減圧度6mmHgで減圧下に水及び溶媒を留去し、得られたポリマーをメタノール500部で再沈殿し、メタノール200部で2回洗浄後、100℃で4時間、減圧度6mmHgで減圧乾燥して、共重合体(A−2)を得た。撹拌装置付きの容器に(A−2)65部及び「SpectraSyn4」(ポリアルファオレフィン、Exxon Mobile Chemical製)35部を仕込み、1時間撹拌して均一に溶解後、共重合体(A−2)の65重量%溶液を得た。
(A−2)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−2)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−2)のMwを表6に示す。
【0096】
<実施例3>
HEMAをリン酸ビニルに代える以外は、実施例1と同様にして、共重合体(A−3)の65重量%溶液を得た。
(A−3)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−3)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−3)のMwを表6に示す。
【0097】
<実施例4>
HEMA4部をメタクリル酸7部に、MMAの部数35部を30部に、D−TMの部数61部を63部に代える以外は、実施例1と同様にして、共重合体(A−4)の65重量%溶液を得た。
(A−4)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−4)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−4)のMwを表6に示す。
【0098】
<実施例5>
実施例1と同様の反応容器に、実施例2で製造した(A−2)100部、エチレンスルフィド5部及びTHFを500部仕込み、85℃で2時間還流させながら加熱撹拌を行い、開環反応させた。その後、85℃、減圧度6mmHgでTHFを除去した。次にメタノール500部で再沈殿し、メタノール200部で2回洗浄後、100℃で4時間、減圧度6mmHgで減圧乾燥して、共重合体(A−5)を得た。撹拌装置付きの容器に(A−5)65部及び「SpectraSyn4」(ポリアルファオレフィン、Exxon Mobile Chemical製)35部を仕込み、1時間撹拌して均一に溶解後、共重合体(A−5)の65重量%溶液を得た。
(A−5)における各構成単位の含有量(%)、(A−5)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−5)のMwを表6に示す。
【0099】
<実施例6>
HEMA4部、MMA35部及びD−TM61部を、p−スチレンスルホン酸10部、MMA25部、n−オクタデシルメタクリレート5部及びD−TM60部に代える以外は、実施例1と同様にして、共重合体(A−6)の65重量%溶液を得た。
(A−6)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−6)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−6)のMwを表6に示す。
【0100】
<実施例7>
HEMAの部数4部を20部に、D−TMの部数61部を45部に代える以外は、実施例1と同様にして、共重合体(A−7)の65重量%溶液を得た。
(A−7)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−7)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−7)のMwを表6に示す。
【0101】
<実施例8>
MMA35.5部及びD−TM62部を、MMA60部、n−オクタデシルメタクリレート17.5部及びD−TM20部に代える以外は、実施例2と同様にして、共重合体(A−8)の65重量%溶液を得た。
(A−8)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−8)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−8)のMwを表6に示す。
【0102】
<実施例9>
HEMA4部、MMA35部及びD−TM61部を、リン酸ビニル4部、MMA20部、n−オクタデシルメタクリレート40部及びD−TM36部に代える以外は、実施例1と同様にして、共重合体(A−9)の65重量%溶液を得た。
(A−9)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−9)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−9)のMwを表6に示す。
【0103】
<実施例10>
HEMA4部、MMA35部及びD−TM61部を、p−スチレンスルホン酸10部、MMA25部、n−ドデシルメタクリレート5部及びD−TM60部に代える以外は、実施例1と同様にして、共重合体(A−10)の65重量%溶液を得た。
(A−10)における各構成単位の含有量(重量%)、(A−10)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(A−10)のMwを表6に示す。
【0104】
<比較例1>
HEMAをアクリルアミドに代える以外は、実施例1と同様にして、比較の共重合体(X−1)の65%溶液を得た。
(X−1)における各構成単位の含有量(%)、(X−1)が含有する官能基の種類、C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギー差の絶対値及び(X−1)のMwを表6に示す。
【0105】
表6の(a)及び(b)の各構成単位は以下の通りである。
(a1):2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)
(a2):メタクリル酸と2−ヒドロキシエチルアミンとのエステル
(a3):リン酸ビニル
(a4):メタクリル酸
(a5):メタクリル酸と2−ヒドロキシエチル−2−メルカプトエチルアミンとのエステル
(a6):p−スチレンスルホン酸
(b1):メチルメタクリレート(MMA)
(b2):n−ドデシルメタクリレート
(b3):n−オクタデシルメタクリレート
(b4):2−デシルテトラデシルメタクリレート(D−TM)
【0106】
【表6】

【0107】
実施例11〜20及び比較例2(潤滑油組成物の製造と評価)
撹拌装置の付いたステンレス製容器に、実施例1〜4及び比較例1で得られた共重合体(A−1)〜(A−10)及び(X−1)の65%溶液それぞれ10部並びにSpectraSyn4(100℃動粘度:4.153mm2/s、40℃動粘度:18.55mm2/s、粘度指数:128)それぞれ90部を仕込み、混合溶解し、実施例11〜20及び比較例2の潤滑油組成物を得た。得られた潤滑油組成物の100℃での動粘度、40℃での動粘度、粘度指数、せん断安定性及び吸着INDEXの測定結果を表7に示す。
【0108】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の潤滑油添加剤は金属吸着性、粘度指数向上能及びせん断安定性だけでなく、金属微粒子及びスラッジ分散性にも優れるため、、輸送用機器の駆動系潤滑油[ギア油(デファレンシャル油及びMTF等)、自動変速機油(ATF、ベルト−CVTF及びトロイダルCVT油等)]、作動油[ショックアブソーバー油、パワーステアリング油及び建設機械の作動油等]、トラクション油、エンジン油[ガソリン用及びディーゼル用等]に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子力学計算ソフトCACheを用いてMM2法で構造最適化後に拡張ヒュッケル法で算出した化合物C12H25−XのHOMOとFe(OH)3のLUMOのエネルギーの差の絶対値が1.080eV以下である官能基Xを含有する構成単位(a)と炭素数1〜36のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b)とを必須構成単位とする共重合体(A)を含有する潤滑油添加剤。
【請求項2】
前記構成単位(b)が、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b1)、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b2)、炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b3)及び炭素数16〜36の分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートからなる構成単位(b4)からなる群から選ばれる1種以上の構成単位からなる請求項1記載の潤滑油添加剤。
【請求項3】
前記官能基Xが、水酸基、アミノ基、リン酸エステル基、カルボキシル基、チオール基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる1種以上の官能基である請求項1又は2記載の潤滑油添加剤。
【請求項4】
前記共重合体(A)が油溶性である請求項1〜3のいずれか記載の潤滑油添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の潤滑油添加剤及び基油を含有し、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を1〜30重量%含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項6】
基油の100℃での動粘度が2〜5mm2/sである請求項5記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
100℃での動粘度が2〜10mm2/sであり、かつ40℃での動粘度が13〜45mm2/sである請求項5又は6記載の潤滑油組成物
【請求項8】
更に、一般式(3)〜(6)のいずれかで示される有機燐化合物(P)の1種以上を含有する請求項5〜8のいずれか記載の潤滑油組成物。
O=P(OR5)a(OH)3−a (3)
O=P(OR6)b(OH)3−b・NHcR73−c (4)
P(OR8)a(OH)3−a (5)
P(OR9)b(OH)3−b・NHcR103−c (6)
[式中、aは1〜3の整数、b及びcは各々1又は2の整数、R5〜R10は各々炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキル置換アリール基であり、R5〜R10は同一でも相異なったものでもよい。]

【公開番号】特開2009−173921(P2009−173921A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333275(P2008−333275)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】