説明

濾過された血液成分、特に赤血球、の採取のための方法及び装置

【課題】
【解決手段】赤血球の採取及び濾過のための方法及び装置が提供される。赤血球採取組立体(38)は、赤血球の分離及び採取手順と同時に又はその直後に白血球除去濾過を行う。赤血球が採取された後に、例えばバフィーコート等の不要な血液成分が、赤血球採取ライン(60)に向けて流される。ポンプループ(92)と係合する蠕動ポンプの動作により、所定量のバフィーコートを採取ラインに挿入することが可能である。その結果、バフィーコートは、採取された赤血球を希釈することなく、赤血球をフィルタ(120)から採取バッグ内に押し出すことができる。或いは、重力を使用して、不要な血液成分で赤血球をフィルタから移動させるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、血液成分の採取において特に有用である体外血液処理の方法及び装置の分野に関し、より詳細には、本発明は、フィルタを通した赤血球からの白血球除去、ならびに血液成分を使用する、該フィルタからの赤血球の回収のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の種類の体外血液処理の1つは、血液がドナーから取り出され、血液成分分離装置(例えば遠心分離機)に誘導され、種々の血液成分の種類(例えば、赤血球、白血球、血小板、血漿)に分離される、アフェレーシスシステム及び/又は手順に関与する。これらの血液成分の種類のうちの1つ以上又は全ては、治療目的のために採取及び/又は処理された後に貯蔵又は患者に返還される一方で、残り部分は、単にドナー又は患者に戻される。そのような1つのシステムでは、対象となっている特定の成分、例えば赤血球のみが採取され、他の全ての血液成分の種類はドナーに戻される。
【0003】
性能に関連する要因は、アフェレーシスシステムの商業的実現可能性に影響を及ぼし得る。性能は、アフェレーシスシステムの採取効率の観点から判断され、それは製品の品質に影響を及ぼすかもしくは品質を向上させ得、及び/又は同様に処理時間を削減し、従って操作者の負担を低減し、ドナーの便宜性を高め得る。当然、システムの採取効率は、アフェレーシスシステムを通過するある特定血液成分の種類の量に対して採取された特定の血液成分の種類の量等の、様々な方式で測定することができる。性能はまた、アフェレーシス手順が種々の血液成分の種類に与える影響に基づいて評価されてもよい。例えば、アフェレーシス手順(例えば、血小板活性化の低下)の結果として、血液成分の種類に与える有害な影響を最小限に抑えることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
性能に関連する別の要因は、採取された血液成分の最終品質である。例えば、採取される成分が赤血球である場合、一般に、そのような赤血球は、白血球の除去によって白血球除去(leukoreduced)されることが望ましい。白血球は、採取された血液成分の最終受血者に対して問題を引き起こす場合がある。白血球を含有する輸血製剤は、免疫原性反応及びウイルス性疾患を誘発する可能性がある。従来、採取された血液製剤又は成分から白血球を除去するために、フィルタが使用されてきた。例えば、米国特許第5,954,971号明細書は、採取前に希釈された血液成分を濾過するため、アフェレーシスシステムと共にフィルタの使用を開示している。他の特有の方法もまた使用されてきており、それらは一般に、採取された成分の濾過前の事前冷却及び/又は一晩保存等の特殊な予備ステップを必要としてきた。別の特有の従来の濾過ステップは、濾過手順の最後における空気ベントであり、それは、赤血球フィルタを通して処理される血液成分の残りの部分の実質的な回収のために重要であると見なされてきた。白血球除去のための別の技法は、白血球除去フィルタを通して赤血球を能動的にポンピングする技法である。しかしながら、そのような能動的なポンピングは、細胞の損傷を引き起こし、従って、採取された成分の最終品質に影響を及ぼし得る。
【0005】
アフェレーシス分離と共に赤血球濾過のための装置及び方法もまた、本出願と同じ出願人による米国特許第7,052,606号明細書に開示されており、その開示は、この参照によって、完全に記載されているように本明細書に組み込まれる。アフェレーシス赤血球分離及び採取に関するさらなる背景は、国際公開第WO99/11305号パンフレットに見出すことができ、それもまた、この参照によって本明細書に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、全般に、体外血液処理に関する。本発明の種々の態様の各々は、好ましくはアフェレーシスシステム(例えば、「健康な」細胞もしくは他の血液成分が、後に輸血するためにドナー血液から除去された血液成分の採取のため、又は治療上の「不健康な」血液成分の除去のため)に組み込まれ得るため、本発明は、そのようなアフェレーシスシステムとの好ましい関係において記載される。アフェレーシスは、多くの場合、ある特定の血液成分をドナーに戻すことを意味する。しかしながら、本発明のある特定の態様は、献血された全ての血液成分が保持される体外血液処理用途に好適であり、係る用途も、本発明の範囲内であることが意図される。
【0007】
本発明の1つ以上の態様と共に及び/又はそれらにおいて使用され得るアフェレーシスシステムは、一般に、血液をその種々の血液成分の種類(例えば、赤血球、白血球、血小板、及び/又は血漿)に分離するために必要とされる機構及び/又は力を提供する少なくとも1つの血液成分分離装置(例えば、膜に基づく分離装置、及び/又はロータ及び経路の組み合わせ等の回転遠心分離要素)を含む。好ましい一実施形態において、分離装置は、使い捨ての血液処理容器を受容する遠心分離経路を含む。典型的には、ドナーは、体外管回路によって血液処理容器と流体的に相互接続され、好ましくは、血液処理容器及び体外管回路は共同して、密封された無菌システムを画定する。流体相互接続が確立されると、採取又は治療のいずれかのために、ドナーから血液が抽出され、血液成分のうちの少なくとも1つの種類が該血液から分離及び除去され得るように血液成分分離装置に誘導される。
【0008】
本発明の一態様は、白血球除去赤血球を提供するために使用される体外血液処理装置に関する。一実施形態において、該装置は、血液処理容器に隣接して相互接続される1つ以上の可撓性管ラインを含む使い捨て組立体と、可撓性管ラインのうちの1つに相互接続される採取容器と、分離された赤血球等の選択分離された血液成分の種類を濾過するための濾過装置とを含む。濾過装置は、好ましくは血液処理導管と採取容器との間に配置される。血液処理装置は、ドナーに戻されない所望の成分を採取することができ、また、その大部分が最終的にドナーに戻される所望されない成分を一時的に採取することができる。本発明において、赤血球のような所望の血液成分が濾過装置を通過した後、バフィーコート又は血漿のような所望されない成分がフィルタの入口に導入され、それら所望されない成分を用いて、フィルタ内に残った所望の成分の残渣をフィルタから押し出す。この結果、所望の成分の残渣を採取することができる。このプロセスに関連して、「後で」という副詞修飾語は、分離後のみを意味することが意図され、分離プロセス全体が完了することを必要とするものではない。
【0009】
米国特許第7,052,606号明細書のような従来の装置及び方法は、フィルタを通して赤血球を流す前、及び/又は赤血球の濾過中に、及び/又は白血球除去フィルタを通した赤血球濾過の終了後に、白血球除去フィルタを通して添加剤又は保存液のすすぎ又は洗浄を行うことを開示している。しかしながら、所望されない成分を一次的に保存して、該所望されない成分を用いて、所望の成分の残渣を白血球除去フィルタからすすぎ出す又は流し出すことは、開示されていない。
【0010】
別の態様において、分離された赤血球は、アフェレーシスシステム内で分離された後の状態である高ヘマトクリット状態において濾過されてもよい。ここでもまた、濾過は、全体的なアフェレーシスプロセスの間又は直後に行われてよい。上述のように、この場合の「分離された後」という句は、分離プロセス全体の完了を必要とするものではない。添加剤/保存液が、濾過の前及び/又は濾過中に赤血球に添加されてもよく、また好ましくは添加される。次いで、所望されない成分(例えばバフィーコート)もまた、赤血球が該フィルタを通って濾過された後に、該フィルタを通って流されてもよい。
【0011】
本発明は、ドナーから直近に取り出された分離された赤血球を用意する工程と、前記分離された赤血球を押し流して白血球除去フィルタに通過させる工程と、前記高ヘマトクリット値の赤血球を押し流して白血球除去フィルタに通過させた後に、採取容器に前記赤血球を採取する工程と、所定量の別の血液成分を前記白血球除去フィルタに向けて流して、赤血球を前記フィルタから流し出して採取する工程と、を含む、赤血球の白血球除去のための方法を含んでもよい。
【0012】
該方法はまた、血液処理容器の出口に流体結合される、赤血球以外の血液成分のための血液成分経路を設ける工程と、前記血液成分経路を、保存場所又は赤血球経路に対して選択的に流体結合する工程と、前記所定量の他の血液成分を、前記血液成分経路を通ってフィルタ内に流入させる工程と、をさらに有し、前記血液成分経路は、前記血液処理容器の赤血球出口と前記フィルタとの間で前記赤血球経路に結合されてもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、血液成分を採取するための使い捨てバッグ・管セットであって、血液遠心分離装置のロータに取り付けられるように適合された血液処理容器と、少なくとも1つの赤血球採取バッグと、管を備える赤血球経路であって、前記血液処理容器の出口を前記赤血球採取バッグに結合する赤血球経路と、前記赤血球経路内のフィルタであって、前記血液細胞処理容器の前記出口と前記赤血球採取バッグとの間に介在するフィルタと、赤血球以外の血液成分のための血液成分経路と、を備え、前記血液成分経路は、前記血液処理容器の第2の出口に流体結合され、保存場所又は赤血球経路に選択的に流体結合され、さらに前記血液成分経路は、前記出口と前記フィルタとの間で前記赤血球経路に結合される、使い捨てバッグ・管セットを備えてもよい。
【0014】
さらなる特徴は、血液を分離するための装置であって、遠心ロータと、ロータに取り付けられるように適合された血液処理容器と、少なくとも1つの赤血球採取バッグと、管を備える赤血球経路であって、前記血液処理容器の出口を前記赤血球採取バッグに結合する赤血球経路と、前記赤血球経路内のフィルタであって、前記血液細胞処理容器の前記出口と前記赤血球採取バッグとの間に介在するフィルタと、赤血球以外の血液成分のための血液成分経路と、を備え、前記血液成分経路は、前記血液処理容器の第2の出口と流体結合され、保存場所又は前記赤血球経路に対して選択的に流体結合され、さらに前記血液成分経路は、前記出口と前記フィルタとの間で前記赤血球経路に結合される、装置を含んでもよい。
【0015】
本発明のこれら及びさらなる態様は、以下に簡潔に記載する添付の図面と合わせて提示される好ましい実施形態の以下の説明において、より具体的に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、アフェレーシスシステムの概略図である。
【図2】図2は、本発明に係る、図1のシステムと共に使用するための、体外管回路、カセット組立体、及び採取バッグ組立体を含む管・バッグセットを示す図である。
【図3】図3は、図2のセットにおいて示されるカセット組立体を示す図である。
【図4】図4は、全血単位のバッチ処理のための使い捨てバッグ組立体を示す図である。
【図5】図5は、図4のバッグ組立体において血液を処理するための遠心分離装置及びロータの断面図である。
【図6】不要な血液成分を使用してフィルタから赤血球を流し出すことができるように、組立体から特定のバッグが取り外された図4のバッグ組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、その関連する特徴を例示する補助となる添付の図面に関連して記載される。全般として、本発明の主な態様は、血液アフェレーシスシステムに対する手順及び構造上の改良の両方に関する。しかしながら、任意の血液成分がドナーに直接戻されるか又はそうでないかにかかわらず、これらの改良のいくつかは、他の体外血液処理用途に適用可能であり、それらはまた、本発明の範囲内である。
【0018】
本発明において用いられる、及び/又は本発明と共に用いられる、好ましい血液アフェレーシスシステム2が、図1に概略的に例示される。該システム2は、好ましくは、連続的な血液成分分離プロセスを提供する。一般に、ドナーから全血が採取され、実質的に連続的に血液成分分離装置6に供給され、そこで血液が種々の成分の種類に連続的に分離され、好ましくは、これらの血液成分の種類のうちの少なくとも1つが、装置6から連続的に採取される。次いで、分離された血液成分のうちの1つ以上が、採取された後、輸血を介して他者に使用されるか、又はドナーに戻され得る。ある特定の分離された血液成分を治療処置して、略即時に返送することは、実行可能であるが、あまり一般的な使用法ではない。また、治療処置では、血液は、本発明の原理を用いて、濾過により成分に分離され、以下に説明するように、患者の臨床において該患者に返還され得ることもあると理解される。
【0019】
血液アフェレーシスシステム2において、ドナーから血液が採取され、予め接続されたバッグ・管セット8を通って誘導される。バッグ・管セット8は、体外管回路10及び血液処理容器12を備え、これらにより、密封され消毒された使い捨てシステムが画成される。バッグ・管セット8は、好ましくは、使い捨てであり、血液成分分離装置6の上及び/又は内に取り付けられるように適合される。分離装置6は、好ましくは、体外管回路10と接合するためのポンプ/バルブ/センサ組立体14と、使い捨て血液処理容器12と接合するための導管組立体16とを含む。
【0020】
導管組立体16は、遠心分離によって血液をその種々の血液成分の種類に分離するために必要とされる力を提供する遠心ロータ組立体20と回転可能に相互接続された導管筐体18を含み得る。血液処理導管12は、導管筐体18内に嵌合し得る。記載されるように接続されると、血液は、ドナーから体外管回路10を通って、回転する血液処理容器12内へ実質的に連続的に流入することができる。次いで、血液処理容器12内の血液は、種々の血液成分の種類に連続的に分離され得、これらの血液成分の種類(血小板、血漿、又は赤血球)のうちの少なくとも1つが、血液処理容器12から好ましくは連続的に取り出される。採取のため又は治療的処置のために保持されない血液成分もまた、好ましくは、血液処理容器12から取り出され、体外管回路10を介してドナーに戻される。血液成分がドナーに戻されるかどうかにかかわらず、又はたとえ戻され得ないとしても、バッチ処理システム(全血の非連続的流入又は分離された血液成分の非連続的流出)又は小規模バッチもしくは連続的RBC/血漿分離システムを含むその他種々のアフェレーシスシステム(図示せず)もまた、本発明を利用することができる。
【0021】
血液成分分離装置6の動作は、血液成分分離装置6に含まれる1つ以上のプロセッサによって制御されることが好ましく、有利には、増え続けるPCユーザ機能(例えば、CD ROM、モデム、オーディオ、ネットワーク及び他の性能)とのインターフェースに対応するための複数の組み込み型コンピュータプロセッサを備え得る。その動作の種々の態様に関してアフェレーシスシステム2の操作者を補助するために、血液成分分離装置6は、インタラクティブタッチスクリーン24を有するグラフィック・インターフェース22を含むことが好ましい。
【0022】
Gambro Trima(登録商標)システム及びTrima(登録商標)Accel(商標)システム(本出願の出願人である米国コロラド州レイクウッドのGambro BCT社より入手可能)等の好ましいアフェレーシスシステムの動作に関するさらなる詳細は、他に多数ある中でも、例えば、国際公開第WO99/11305号パンフレットならびに米国特許第5,653,887号明細書、第5,676,644号明細書、第5,702,357号明細書、第5,720,716号明細書、第5,722,946号明細書、第5,738,644号明細書、第5,750,025号明細書、第5,795,317号明細書、第5,837,150号明細書、第5,919,154号明細書、第5,921,950号明細書、第5,941,842号明細書、及び第6,129,656号明細書を含む複数の刊行物に見出すことができる。その開示は本明細書に組み込まれる。例えば、Baxter CS3000(登録商標)、Amicus(登録商標)、Autopheresis−C(登録商標)、及びAlyx systems、又はHaemonetics MCS(登録商標)及びMCS(登録商標)+、又はFresenius COM.TEC(商標)及びAS−104(商標)等のシステム等の他の既知のアフェレーシスシステムもまた、これにより有用であり得る。
【0023】
使い捨てセット:体外管回路
図2及び図3に例示されるように、カセット組立体26と、そこに相互接続された多数の管/採取組立体28、30、32、34、36、38とを備える、予め接続された体外管回路10が示される。好ましくは、脱血/返血管組立体28は、(2本針の設定もまた使用され得るが)ドナーと管回路10の残りの部分との間にシングルニードル接続を提供する。ドナーからの血液の取り出し及びドナーへの成分の返送のために、少なくとも2つのライン42、44が組立体28に設けられる(図3を参照)。この実施形態は、ドナーが接続される管組立体28と、カセット組立体26と血液処理容器12との間にインターフェースを構成する血液入口/血液成分出口管ラインサブ組立体32との間に相互接続されるカセット組立体26を含む。ライン42は、処理容器12に血液を移送する。処理容器12からの血液及び成分の移送のための3つのライン46、48、50が、図2及び図3に示される。この実施形態では、抗凝血剤管組立体30、血漿採取管・バッグ組立体36、赤血球採取組立体38、及びベントバッグ管ラインサブ組立体34もまた、カセット組立体26に相互接続されている。一回使い切り用のための、密封され且つ予め滅菌された使い捨て組立体を構成するように、体外管回路10及び血液処理容器12は、予め相互接続されることが好ましい。
【0024】
血液入口/血液成分管組立体32のRBC出口配管46は、血液処理容器12から出て、カセット組立体26のカセット54の統合RBC通路52に相互接続される(図2及び図3を参照)。統合RBC通路52は、第1の分岐部52a及び第2の分岐部52bを含む。第1の分岐部52aは、分離されたRBCをドナーに戻すためにRBC返送管ループ56に相互接続される。そのような目的のために、RBC返送管ループ52は、カセット組立体26の返血貯血槽58の上部に相互接続されることが好ましい。本明細書において好まれるように、第2の分岐部52bは、使用の際、RBCを採取するためにRBC採取管組立体38に接続されてもよい(例えば、図2及び図3を参照)。RBC採取管・バッグ組立体38は、分岐部52b、フィルタ120、RBC採取貯留槽又はバッグ62、及び空気除去バッグ64と連通するRBC採取器管ライン60を含むことが好ましい。空気除去バッグ64は、管ライン66によってRBC採取バッグ62に取り付けられる。管ライン66には、任意選択的に、クランプを取り付けてもよい。RBC採取管ライン・容器サブ組立体38は、使い捨て組立体8の予め接続された部品であることが好ましい。
【0025】
カセット組立体26の一部において、血液入口/血液成分管組立体32の血漿管48(図2及び図3を参照)は、カセット組立体26の第1の統合血漿通路74(図3を参照)に相互接続される(これは、好ましくは血漿採取サブシステムであるが、ここで又は同様の配置を用いて、血小板等の他の成分も採取されてもよいことに留意されたい)。カセット組立体26は、第1の統合血漿通路74及び第2の統合血漿通路78を相互接続する、ポンプと係合する血漿管ループ76をさらに含む。第2の統合血漿通路78は、第1及び第2の分岐部78a及び78bを含む。第1の分岐部78aは、管ライン80を介して血漿採取管組立体36に相互接続される。血漿採取管組立体36は、使用中に血漿を採取するために採用されてもよく、血漿採取器管80及び血漿採取バッグ82を含む。血漿採取器管80に摺動クランプが設けられてもよい。第2の統合血漿通路74bの第2の分岐部78bは、ドナー/患者に血漿を戻すために血漿返送管ループ86に相互接続される。そのような目的のために、血漿返送管ループ86は、返血貯血槽58に相互接続される。バルブV3は、選択的にライン80を開放してループ86を閉鎖するか、又は反対にライン80を閉鎖してループ86を開放する。
【0026】
バフィーコート抽出ライン50は、白血球、血小板、及び血漿を含むバフィーコートを、分離チャンバ12から統合通路90を通ってポンプ係合ループ92に運ぶ。ポンプループ92は、第1の分岐部94a及び第2の分岐部94bを有する統合通路94に接続する。第1の分岐部94aは、不要なバフィーコートが貯血槽58を通ってドナーに戻されることを可能にする返送ループ96に接続される。第2の分岐部94bは、赤血球採取ライン60に結合された相互接続ループ98と連通する。赤血球バッグ62内に赤血球が採取された後、中継中間ライン60と相互接続ループ98との間に位置するバルブV1によって赤血球ラインが閉鎖されてもよい。バルブV2は、返送ループ96を閉鎖するため及び相互接続ループ98を開放するために回転させられ、それによって不要な血液成分、例えばバフィーコートを赤血球採取ライン60に向ける。ポンプループ92と係合する蠕動ポンプの動作により、所定量のバフィーコートを採取ライン60に挿入することが可能である。その結果、バフィーコートは、採取された赤血球を希釈することなく、フィルタ120から採取バッグ62内に赤血球を押し出すことができる。
【0027】
管組立体28、30、32、36、34、38及びカセット組立体26の大部分は、例えば、使用中に血液/血液成分の目視観察及びモニタリングを可能にし得るポリ塩化ビニル(PVC)管ラインを含むプラスチック部品から作製されることが好ましい。薄壁PVC管が、特にRBC採取器管ライン60のための承認された無菌結合(すなわち、2つの管ラインの直接接続)のために採用されてもよいことに留意されたい。システムの最大の無菌性を確実に維持するために、全ての管ラインは、使い捨て組立体全体の滅菌前に予め接続される。採取バッグサブ組立体38を含む管回路の全ての要素を予め接続することの非常に望ましい利点は、予め完全に組立て、その後に滅菌することにより、後で無菌結合をする必要がないことである(保存液のスパイク添加を除く)。ゆえに、無菌結合のコスト及びリスクが排除される。或いは、厚壁PVC管を、特にRBC採取管ライン60の承認された無菌結合のために採用してもよい。
【0028】
上述のように、図3の実施形態におけるカセット組立体26は、使用の際、血液成分分離装置6のポンプ/バルブ/センサ組立体14に取り付けられ、それと動作可能に接合される。使い捨て組立体8の血液成分分離装置6への装填及び相互作用を含むアフェレーシスシステム構成のさらなる詳細は、特に、上に列挙した特許に見出すことができ、ここで包括的には繰り返さない。
【0029】
体外管回路及び血液成分分離装置の動作
アフェレーシスプロセスのプライミング及び種々の他の動作は、上に列挙した特許に記載されるように実行されることが好ましい。脱血において、全血は、ドナーから脱血/返血管組立体28の管ライン42を通り、次いで、血液成分分離装置6に移送される。抗凝血剤ライン100へと続くポンプ係合ループ98上のポンプの作用によって制御されながら、抗凝血剤(図示せず)が、抗凝血剤管組立体30を通って添加されてもよい。装置6では、血液は、ループ88(図3を参照)を介してポンピングされ、カセット組立体26と血液入口/血液成分管組立体32のライン40とを介して(図2及び図3参照)、処理容器12へ送られる。次いで、容器12において、実質的に連続的に分離処理が行われる。すなわち、血液がその中に流入し、分離され、分離成分としてそこから流出する。容器12での分離処理の後で(分離は連続的に生じているが)、採取されなかった血液成分は、所定レベルに達するまで処理容器12からカセット組立体26を通ってカセット26の貯血槽58(図2及び図3参照)に移送され、そのレベルにおいて、シングルニードル動作の血液成分分離装置6が、(連続的なシステムではその必要はないが)脱血サブモードを停止し、これらの未採取及び/又は処理された成分がドナーに戻される返血サブモードを開始する。そうして、これらの蓄積した成分を、ポンプ係合ループ96を通って脱血/返血管組立体28の血液返送配管44にポンプで送り、ドナーに戻すことができる。シングルニードル血液返送モードにおいては、貯血槽58に蓄積した返血成分が所定レベルに低下するまで取り出されると、血液成分分離装置6が、自動的に返血サブモードを停止する。これはまた、好ましくは、脱血サブモードを再開するか又は継続するように自動的に機能する。次いで、所定量の採取された血液成分が採取されるまで、脱血サブモードと返血サブモードとのサイクルが継続される。当該技術分野において既知であるように、2本針による方式では、血液はドナーから連続的に取り出すことができ、血液成分をドナーに連続的に戻すことができる。例えば、ポンプの制御を含む、そのような動作のための詳細な機構については、本明細書には図示又は詳述しない。
【0030】
また、ある特定の成分が、同時に又は次々に連続して採取されてもよい。一例において、RBCの採取と同時に血漿が採取されてもよい。図1〜図3に示される主な例において、RBCサブ組立体38内のRBC及び組立体36内の血漿の2つの成分が採取されているのが示される。一方又は他方が十分な量採取されると、係る成分のさらに分離された部分は、全ての成分が十分な量採取されるまで、任意の他の採取されなかった成分と共にドナーに戻される。1つ又は2つの選択された成分が採取され、同時に、その他の全ての成分がドナーに戻されてもよい。
【0031】
図2及び図3を特に参照すると、通常動作において、全血は、ドナーから針・脱血管組立体28、カセット組立体26、そして血液入口管ライン46を通って処理容器12へと通される。次いで、導管12内で全血が分離される。また、血小板の流れ又は血漿(バフィーコート)の流れがここで分離されてもよく、採取器組立体36内に採取されるか、又は最終的にドナーに戻すために貯血槽58に向けられてもよい。分離された血漿は、容器82内で血漿を採取するために、処理容器12からライン48を経由し、カセット26を通ってループ76及びライン80を介して流されるか、又は分岐部78b及びライン86を通って貯血槽58に方向転換されてもよい。赤血球バッグ62内に赤血球が採取された後、接合中間ライン60と相互接続ループ98との間に位置するバルブV1によって赤血球ラインが閉鎖されてもよい。バルブV2は、回転させられ、返送ループ96を閉鎖し、相互接続ループ98を開放する。それによって不要な血液成分、例えばバフィーコートを赤血球採取ライン60に方向転換させる。ポンプループ92と係合する蠕動ポンプの動作により、所定量のバフィーコートを採取管60に挿入することが可能である。その結果、バフィーコートは、採取された赤血球を希釈することなく、フィルタ120から採取バッグ62内に赤血球を押し出すことができる。
【0032】
アフェレーシス手続
上述のシステム2を利用して、ドナーに対してアフェレーシス手順を行うために従うべき好ましい1つの手続について、ここでまとめる。最初に、操作者は、血液成分分離装置6内及び/又は血液成分分離装置6上に、使い捨てプラスチック組立体8を装填する。本手続によれば、操作者は、血液成分分離装置6上のフックに種々のバッグを吊るす。1つが使用される場合、操作者は、装置6上にカセット組立体26を装填し、及び/又は装置6の遠心ロータ組立体20に取り付けられる導管筐体18内に血液処理容器12を装填する。
【0033】
体外管回路10及び血液処理導管12が記載する様式で装填されると、次いで、針/管組立体28のアクセス針をドナーに挿入することによって、ドナーを体外管回路10と流体的に相互接続することができる。さらに、抗凝血剤管組立体30(図2を参照)がプライミングされ、脱血/返血管組立体28が、好ましくはドナーからの血液でプライミングされる。血液処理容器12もまた、アフェレーシス手順のためにプライミングされる。一実施形態において、血液によるプライミングは、血液が血液処理容器12内に導入される最初の液体となるように用いられる。プライミング手順の間、及びアフェレーシス手順の残り全体を通して、血液は容器12に流れ込み、血液成分は互いに分離され、1つ以上の成分が血液処理容器12から取り出される。
【0034】
好ましい血液アフェレーシスシステム2は、血液処理の間に、赤血球(RBC)と血漿の分離を含む複数の血液成分の同時分離を提供する。係る分離された血液成分は、対応する保存貯血槽に選択的に採取されるか、又はそれぞれの返血サブモード中に即時にもしくはわずかに遅れて(又は2本針構成においては実質的に定常的に)、ドナーに戻されてもよい。血液の血漿(及び/又は血小板)、RBC等の1つより多くの血液成分が採取される1つの手法において、赤血球の採取とは別の期間の間、血漿(及び/又は所望される場合には分離された血小板)を採取するために血液アフェレーシスシステム2が使用されてもよい。これらの成分はまた、同時に採取されてもよい。
【0035】
RBC採取段階を開始するために、血液成分分離装置6は、RBC方向バルブ組立体V1に適切な制御信号を提供して、ライン46を介して血液処理容器12から取り出された分離RBCの流出を、管ライン60及びフィルタ120を通って採取容器62内に入るようRBC採取システム38に誘導する。分離されたRBCは、採取のために容器12からポンプで送出されるのではなく、代わりに、容器12への血液入口流の圧力によって容器12から出て体外管回路10を通って流れることが好ましい。入口血液は、カセット26のループ88を介してポンプで容器12に送入される。従って、採取されたRBCに対する外傷が最小限に抑えられる。
【0036】
所望の量の赤血球の分離及び採取に続いて、血液分離装置6は、次いで、RBC方向組立体に制御信号を提供して、さらなるRBCの流れを、ループ56、貯血槽58、及び返送ライン44を介してドナーに戻るように方向転換させもよい。赤血球バッグ62内に赤血球が採取された後、接合中間ライン60と相互接続ループ98との間に位置するバルブV1によって赤血球ラインが閉鎖されてもよい。バルブV2は、返送ループ96を閉鎖するため及び相互接続ループ98を開放するために回転させられ、それによって不要な血液成分、例えばバフィーコート、を赤血球採取ライン60に方向転換させる。ポンプループ92と係合する蠕動ポンプの動作により、所定量のバフィーコートを採取管60に挿入することが可能である。その結果、バフィーコートは、採取された赤血球を希釈することなく、フィルタ120から採取バッグ62内に赤血球を押し出すことができる。また、さらなる血液処理が所望されない場合には、すすぎ戻し手順を行ってもよい。
【0037】
バッグ62からのあらゆる空気、又は流入するRBCとバッグ62との間の空気は、最終的には管ライン接続部66を通って空気除去バッグ64に取り出される。空気は、流入するRBCの流れの前に空気除去バッグ64に排出されるか、又は流入するRBCの流れによって排出される。空気はまた、最初にアフェレーシスシステムの返送ポンプ(図示せず)を稼動させることによって、分離プロセスの前にベントすることもできる。空気の除去はまた、例えば、疎水性ベント及び/又はバイパスラインを含む他の既知の方法(本明細書ではあまり望ましくはないが)によっても達成され得る。
【0038】
貯血槽58は、分離されたRBC血液成分の存在及び量を検出するために、従来使用されてきた液面センサ及び光センサに連結される。また、血漿が貯血槽58にポンプで送入される場合、貯血槽内の血漿の存在及び量は、同じセンサを通して分離装置6によって検出され得る。血漿は、返血管ループ96と係合する蠕動ポンプによって貯血槽58からポンプで送出することができる。
【0039】
バフィーコートでの追跡が終了すると、採取バッグ62がセット8の残りの部分から分離されてもよい。分離は、クランプによって又は管ライン60をRFシールすることによって行われてもよく、次いで、管ラインのRFシールされた部分に沿って、米国特許第5,345,070号明細書及び第5,520,218号明細書に従って分離される。管ラインを閉鎖し、次いで使い捨て組立体8の残りの部分からRBC採取システム38を分離するために、他の周知の方法も使用することができる。
【0040】
本発明の方法の他の実施形態は、Orbisac(商標)血液処理システム又はAtreus(商標)血液処理システム(どちらも本出願の出願人CaridianBCT, Inc.より入手可能)等の装置を用いて、又は米国仮出願第61/267,484号に記載される装置のような、複数単位の採取全血を同時に処理するための装置を用いて実施されてもよい。方法の実施は、米国仮出願第61/267,484号の装置と関連して記載される。
【0041】
図4は、複合液(例えば全血)を、少なくとも1つの成分(例えば、血漿、血小板、又は両方)と第2の成分(例えば赤血球)とに分離するために使用されるように適合されたバッグのセット210の例を示す。このバッグセットは、可撓性の一次分離バッグ212と、そこに接続された2つの可撓性成分バッグ214、216とを備える。
【0042】
複合液が全血である場合、分離バッグ212は2つの目的すなわち、採取バッグとして、また分離バッグとして連続的に使用される。分離バッグ12は、最初に、ドナーからの全血から分離された体積(通常は約500ml)を受容するために用いられ、その後に、分離装置内の分離チャンバとして使用されることが意図される。分離バッグ212は、平坦であり、一般に矩形である。分離バッグ12は、プラスチック材料の2枚のシートを相互に溶接することによって作製され、これにより、シート間に三角形状の近位部につながる主矩形部を有する内部空間が形成される。第1の管218は、三角形状部の近位端に接続され、第2の管220及び第3の管222は、第1の管218近傍の両側部に接続される。これら3つの管218、220、222の近位端は、2枚のプラスチック材料シート間において平行になるように埋設される。さらに、分離バッグ212は、3つの管218、220、222近傍の2つの近位角部の各々に、孔部224をさらに備える。孔部224は、分離バッグを血液遠心分離装置の分離セルに固定するために使用されてもよい。
【0043】
初期においては、分離バッグは、ある体積の抗凝血液(典型的には、約450mlの献血につき、約63mlのクエン酸・リン酸・ブドウ糖溶液)を収容する。第1及び第3の管218、222の近位端には、破壊可能なストッパ226、228がそれぞれ取り付けられ、これにより、そこを通る液体の流れが阻止される。破壊可能なストッパは、時に「破砕性(frangible)」とも呼ばれる。第2の管220は、採血管であり、その遠位端に針230が接続されている。献血開始時において、針230がドナーの静脈に挿入され、血液が分離バッグ212に流入する。所望の体積の血液が分離バッグ212内に採血された後、採取管220がシール及び切断され、バッグセット210から針を離脱させる。或いは、以前に採取された血液が、採取管220を通って分離バッグ212に移送されてもよく、その際、針230は用いても用いなくてもよい。
【0044】
第1の成分バッグ214は、血漿成分を受容することが意図される。バッグ214は、平坦であり、略矩形である。バッグ214は、血漿採取管232及び非対称マニホルド34を通って第1の管218に接続される。第2の成分バッグ216は、血小板成分を受容することが意図される。第2の成分バッグ216もまた、平坦であり、略矩形である。バッグ216は、血小板採取管236及び非対称マニホルド234を通って第1の管218に接続される。第3の成分バッグ238は、一次バッグ12から赤血球成分(洗浄されていてもよい)を受容することが意図される。赤血球は、フィルタ240を含み得る管222を通って第3の成分バッグ238内に排出されてもよい。破壊式ストッパ422すなわち管222内の破砕性によって、第3の成分バッグ238内への早いタイミングでの赤血球の流入が防止される。
【0045】
白血球を受容するために、老廃物バッグ244が設けられてもよい。この血液成分はまた、「バフィーコート」、「ロイコパック」又は「廃物」とも呼ばれ、血小板又は血漿よりも密度が高いが、赤血球よりは密度が低い。白血球は、非対称マニホルド234及び老廃物バッグ管246を通過し、老廃物バッグ244内に一時的に保存される。
【0046】
図5は、4つの体積に分けられた複合液を、遠心分離によって同時に分離するための装置260の実施形態を示す。該装置は、図4に示される4つのバッグセット210を受容するように適合された遠心分離機262、成分移送手段を備え、4つの体積に分けられた複合液は、4つの一次分離バッグ212に収容される。成分移送手段は、各々の分離バッグからの少なくとも1つの分離された成分を、成分移送手段に接続された成分バッグへと移動させるためのものである。装置260は、残留高ヘマトクリット値の赤血球成分を洗浄するための手段をさらに備えてもよい。
【0047】
遠心分離機262は、ベアリング組立体267によって支持されるロータ264を備え、ベアリング組立体267によって、ロータ264は回転軸268を中心として回転可能となる。ロータは、滑車272が接続された円筒状のロータシャフト270と、成分バッグを収容するための中央円筒容器274を備える格納手段を備える。容器274は、ロータシャフト270の縦軸及び容器274の縦軸が回転軸268と一致するように、その上端部でロータシャフト270に接続される。4つの同一の分離セル278は、回転軸268に対して対称な配置を形成するように中央容器274に連結される。遠心分離機は、モータ280をさらに備える。モータ280は、回転軸268を中心としてロータが回転するように、滑車272の溝と係合するベルト282によってロータに連結される。
【0048】
各分離セル278は、直方体の全体形状を有する容器284を備える。分離セル278は、分離セル278の各々の中央縦軸286が回転軸268と交差するように、中央容器274に取り付けられ、そうすることで、分離セル278は回転軸268から略同じ距離に配置され、また、中央縦軸286間の角度は、略同じ(すなわち90度)になる。分離セル278の中央軸286は、回転軸268に垂直な平面に対して下向きに傾斜している。
【0049】
各容器284は、図3に示されるように、液体で充填された分離バッグ212を緩やかに収容するように形状決定及び寸法決定されたキャビティ288を備える。キャビティ288(以下では「分離区画」とも呼ぶ)は、回転軸268から最も遠い位置にある底壁と、容器274に最も近い下部壁と、下部壁に対向する上部壁と、2つの横壁とによって画定される。キャビティ288は、主部と、上部又は近位部とを備える。主部は、底壁から延在し、角及び縁部が丸みを帯びた、略直方体形状である。上部又は近位部は、収束三角形状の基部を有する略角柱形状である。換言すると、キャビティ288の上部は、容器284の中心中央軸286に向かって収束する2組の対向する壁によって画定される。この設計の1つの興味深い特徴は、遠心分離による分離後に、複合流体の微量成分(例えば、全血中の血小板)の薄層の半径方向への膨張が引き起こされ、該層が分離バッグの上部において、より容易に検出できるようになることである。これはまた、管内への移送が漏斗的に徐々に行われることによって、成分層間での混合が低減される。分離セル78の上部の2組の対向する壁は、3つの円筒状平行チャネル(図示せず)に向かって収束し、容器284の上部で開口し、分離バッグ212が容器284内に設定される際、3つの管218、220、222が該開口を通じて、延在する。
【0050】
容器284はまた、容器284の外壁部の上方部分から構成される蝶番式の横蓋296を備える。蓋296は、開いた時に、液体で充填された分離バッグ212を分離セル278内に容易に装填することを可能にするように寸法設定される。容器284は、ロック手段(図示せず)を備え、それによって容器284の残りの部分に蓋296をロックすることができる。容器284はまた、分離バッグ212を分離セル278内に固定又は位置付けるための固定又は位置付け手段も備える。バッグ固定又は位置付け手段は、分離セル278の上部近くの蓋296の内部表面上で突出する2つのピン(図示せず)と、容器284の上部に設けられた2つの対応する凹部とを備える。2つのピンは、分離バッグ212の上部角にある2つの孔部224に嵌合するように離間され及び寸法設定される。
【0051】
分離装置は、成分移送手段をさらに備える。成分移送手段は、少なくとも1つの分離された成分を、各分離バッグから、該成分移送手段に接続された成分バッグ内に移送する。成分移送手段は、搾出システムを有する。搾出システムは、分離区画288内の分離バッグ212を圧搾し、分離された成分を成分バッグ214、216内に移送させるためのものである。搾出システムは、可撓性ダイヤフラム298を有する。ダイヤフラム98は、そのキャビティ内において拡張可能チャンバ300を画定するように、各容器284に固定される。より具体的には、ダイヤフラム298は、キャビティ288の底壁及びキャビティ288の下部壁の大部分の内側を覆うように寸法設定される。搾出システムは、環形状を形成する周辺環状マニホルド302をさらに備える。各拡張可能チャンバ300は、それぞれの容器284の底部近くの壁を通って延在する供給チャネル304によってマニホルド302に接続される。搾出システムは、分離セル278内の拡張可能チャンバ300に作動液をポンプで送入及び送出するための液圧ポンプ設備306をさらに備える。作動液は、分離される複合液中の成分の最も密度が高いもの(例えば、複合液が血液である場合は赤血球)の密度よりもわずかに高い密度を有するように選択される。その結果、遠心分離中、拡張可能チャンバ300内の作動液が、その体積にかかわらず、通常、分離セル278の最外部分に残留する。ポンプ設備306は、ダクト310によって回転シール308を通って拡張可能チャンバ300に接続される。該ダクト310は、ロータシャフト270を通って、中央容器274の底壁及び側壁を通って、半径方向に外向きに延在し、そこでマニホルド302に接続する。ポンプ設備306は、回転シール又は流体連結部308を介してロータダクト310に流体的に接続された液圧シリンダ314内で可動であるピストン312を有するピストンポンプを備える。ピストン312は、ピストンロッドに連結された送りねじ318を移動させるブラシレスDCモータ316によって作動される。液圧シリンダ314はまた、作動液貯留槽320にも接続される。作動液貯留槽320は、2つのバルブ322a、322bによって制御されるアクセス経路を有し、これにより、液圧シリンダ314、回転ダクト310、及び拡張可能液圧チャンバ300を含む往復式液圧回路内に対する作動液の導入又は排出を選択的に行うことが可能になる。圧力ゲージ324は、内部の液圧を測定するための液圧回路に接続される。
【0052】
分離装置は、中央容器274の開口部周囲でロータに取り付けられた3つのピンチバルブ328、330、332を1組とする4組のピンチ弁をさらに備える。ピンチバルブ328、330、332の各組は、それと関連づけられた1つの分離セル78と向き合う。ピンチバルブ328、330、332は、可撓性プラスチック管を通る液体の流れを選択的に阻止又は許容し、且つプラスチック管を選択的に密閉及び切断できるように設計される。各ピンチバルブ328、330、332は、長尺な円筒体334と、顎部338を有する頭部336とを備える。顎部138は、静止下部プレート又はアンビル340によって画定される空隙を形成する。該顎部338は、「装填」位置と、「開放」位置と、「閉鎖」位置との間で移動することができる。空隙は、顎部が開放位置にある時に、図4に示されるバッグセットの管118、132、136、146のうちの1つがその中で隙間なく係合できるよう寸法設定される。該長尺体は、顎部を移動させるための機構を含み、プラスチック管をシールして切断するために必要なエネルギを供給する高周波発生器に接続される。ピンチバルブ328、330、332は、中心容器74の内部で、その内部表面に隣接して取り付けられ、そうすることで、それらの縦軸が回転軸68に平行であり、且つそれらの頭部が容器274の周縁部の上方に突出する。分離バッグ212を、1組のピンチバルブ328、330、332に関連づけられた分離セル278内に載置する場合の、分離バッグ212及び該分離バッグ212に接続された管232、236、246に対する該1組のピンチバルブ328、330、332の位置を図4に破線によって示す。電力は、ロータシャフト270の下部部分の周囲に取り付けられたスリップリングアレイ266を通ってピンチバルブ328、330、332に供給される。
【0053】
マルチユニット血液分離機に複数のバッグセット210を装填する作業は、時間がかかり、また繰り返し行われる可能性がある。「装填」位置において、バルブ顎部は回転して、管を受容するように適合された軌道又は溝から完全に離間しているため、管(例えば、管218、232、236、246)をより迅速に配置することが可能となる。また、非対称マニホルド234の使用によって、管を高精度に配置することが可能となる。マニホルドは、比較的剛性のプラスチックで構成され、少なくとも3つ、好ましくは4つの可撓性管の接合部を形成する。管の接続部は、マニホルドの周囲において非対称的に離間配置される。図4に示されるように、非対称マニホルド234の一実施形態は、「E」字型の構成を含む。「E」字型構成は、管232、218、236にそれぞれ接続された3つのスタブ368、371、及び373を有する中心剛性管366を備える。3つのスタブの反対側には、第4のスタブ375が管246に接続し、そこから補助バッグ244に接続する。第4のスタブ375は、管366に沿って非対称的に配置される。マニホルドの非対称な形状のために、マニホルドは、中心コア350に成形された凹部内に一方向のみにおいて取り付けることができる。その結果、バッグセット210の管218、232、236、246の各々が、適切なバルブ328、330、332又はセンサ(図示せず)に確実に取り付けられる。
【0054】
分離装置はまた、コントローラ357を備える。該コントローラ357は、制御ユニット(例えばマイクロプロセッサ)と、メモリユニットとを含む。メモリユニットは、種々の分離プロトコル(例えば、血漿成分及び血球成分の分離のためのプロトコル、又は血漿成分、血小板成分、及び赤血球成分の分離のためのプロトコル)と、このような分離プロトコルに従った装置の動作とに関する情報及びプログラムされた命令をマイクロプロセッサに提供する。特に、マイクロプロセッサは、分離プロセスの種々の段階(例えば、成分分離段階、血漿成分発現段階、血漿分画における血小板の懸濁段階、血小板成分発現段階等)においてロータを回転させる遠心分離速度に関する情報と、分離された成分を分離バッグ212から成分バッグ214、216内に移送させるための種々の移送流量に関する情報とを受信するようにプログラムされる。種々の移送流量に関する情報は、例えば、液圧回路の作動液流量として、又は液圧ポンプ設備306のブラシレスDCモータ316の回転速度として表すことができる。マイクロプロセッサは、圧力ゲージ324からの情報及び4対のフォトセルセンサ(図示せず)からの情報を直接又はメモリを通して受信し、また、遠心分離機モータ880、ポンプステーション306のブラシレスDCモータ316、及び4組のピンチバルブ328、330、332を制御するようにプログラムされ、これにより、選択された分離プロトコルに沿って分離装置を動作させる。
【0055】
第1のバランス手段は、分離セル278内に収容された4つの分離バッグ212の重量が異なる場合、最初にロータをバランスさせる。第1のバランス手段は、実質的に、上述の成分移送手段の要素と同一の構造要素を備える、すなわち、周辺環状マニホルド302によって相互接続された4つの拡張可能な液圧チャンバ300と、ロータダクト310を通って液圧式チャンバ300内に作動液をポンプで送入するための、環状マニホルド302に接続された作動液ポンプ設備306とである。遠心力下において、作動液は、分離バッグ212の重量の差に応じて4つの分離セル278で不均等に分配され、ロータをバランスさせる。
【0056】
製剤が成分バッグ214、216と老廃物バッグ244とに分離された後、遠心分離機が停止され、バッグセット210が遠心分離機から取り外される。好ましくは、バルブ330、332を介した高周波エネルギの適用により管232及び236がシールされ、バッグセット210から取り外される。老廃物バッグ244への管246を閉鎖するためにクランプ340が使用される。赤血球を収容する分離バッグ212が吊り下げられ、重力作用によってフィルタ240を通して赤血球が排出される。白血球が除去された赤血球が赤血球採取バッグ238内に採取される。分離バッグ212から略全ての赤血球が出されると、ライン246からクランプ340が取り外され、老廃物バッグが分離バッグの上方に吊り下げられ、それによって老廃物、例えば白血球がフィルタ240内に排出されることを可能にし、それによって残りの量の赤血球を採取のためにフィルタから押し出す。老廃物(白血球)の体積は少ないため、またフィルタは、通常、白血球のサイズの粒子の流れを妨げるように選択されるため、老廃物は、フィルタを通り抜けない。従って、赤血球のフィルタをパージするために白血球老廃物を使用することによって、より多くの体積の精製された赤血球が採取される。
【0057】
上述の本発明の記載は、例示及び説明の目的のために提示されたものである。さらに、この記載は、本発明を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。従って、上記教示ならびに関連技術の技能及び知識に相応する変形及び修正は、本発明の範囲内である。本明細書において上述した実施形態は、本発明を実施する上で知られる最良の形態を説明すること、及びそのような又は他の実施形態において、また本発明の特定の用途(複数可)もしくは使用法(複数可)に必要とされる種々の修正を用いて、当業者が本発明を利用することができることをさらに意図するものである。添付の特許請求の範囲は、先行技術によって許容される範囲まで代替の実施形態を含むと解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球の白血球除去のための方法であって、
ドナーから直近に取り出された分離された赤血球を用意する工程と、
前記分離された赤血球を押し流して白血球除去フィルタに通過させる工程と、
前記高ヘマトクリット値の赤血球を押し流して白血球除去フィルタに通過させる前記工程の後に、採取容器に前記赤血球を採取する工程と、
前記採取工程の後に、所定量の別の血液成分を前記白血球除去フィルタに向けて流して、赤血球を前記フィルタから流し出して採取する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
血液処理容器の出口に流体結合される、赤血球以外の血液成分のための血液成分経路を設ける工程と、
前記血液成分経路を、保存場所又は赤血球経路に対して選択的に流体結合する工程と、
前記所定量の他の血液成分を、前記血液成分経路を通って前記フィルタ内に流入させる工程と、
をさらに有し、
前記血液成分経路は、前記血液処理容器の赤血球出口と前記フィルタとの間で前記赤血球経路に結合されることを特徴とする方法。
【請求項3】
血液成分を採取するための使い捨てバッグ・管セットであって、
血液遠心分離装置のロータに取り付けられるように適合された血液処理容器と、
少なくとも1つの赤血球採取バッグと、
管を備える赤血球経路であって、前記血液処理容器の出口を前記赤血球採取バッグに結合する赤血球経路と、
前記赤血球経路内のフィルタであって、前記血液細胞処理容器の前記出口と前記赤血球採取バッグとの間に介在するフィルタと、
赤血球以外の血液成分のための血液成分経路と、
を備え、
前記血液成分経路は、前記血液処理容器の第2の出口に流体結合され、また保存場所又は前記赤血球経路に選択的に流体結合され、さらに前記血液成分経路は、前記出口と前記フィルタとの間で前記赤血球経路に結合されることを特徴とする使い捨てバッグ・管セット。
【請求項4】
請求項3記載の使い捨てバッグ・管セットにおいて、前記保存場所は、流体をドナーに戻すための手段に流体接続されることを特徴とする使い捨てバッグ・管セット。
【請求項5】
請求項3記載の使い捨てバッグ・管セットにおいて、前記保存場所は、成分採取バッグを含むことを特徴とする使い捨てバッグ・管セット。
【請求項6】
血液を分離するための装置であって、
遠心ロータと、
前記ロータに取り付けられるように適合された血液処理容器と、
少なくとも1つの赤血球採取バッグと、
管を備える赤血球経路であって、前記血液処理容器の出口を前記赤血球採取バッグに結合する赤血球経路と、
前記赤血球経路内のフィルタであって、前記血液細胞処理容器の前記出口と前記赤血球採取バッグとの間に介在するフィルタと、
赤血球以外の血液成分のための血液成分経路と、
を備え、
前記血液成分経路は、前記血液処理容器の第2の出口に流体結合され、保存場所又は前記赤血球経路に選択的に流体結合され、さらに前記血液成分経路は、前記出口と前記フィルタとの間で前記赤血球経路に結合されることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、前記保存場所は、ドナーに流体を戻すための手段に流体接続されることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、前記保存場所は、成分採取バッグを含むことを特徴とする装置。
【請求項9】
赤血球を採取するための方法であって、
ある量の全血を赤血球と少なくとも1つの他の成分とに遠心分離する工程と、
前記他の成分を採取バッグに少なくとも一時的に採取する工程と、
前記分離工程の間に前記赤血球をフィルタに通過させる工程と、
濾過された赤血球を赤血球採取バッグに採取する工程と、
前記他の成分を前記フィルタに流入させ、赤血球を前記フィルタから前記採取バッグに移動させる工程と、
を含む方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、
前記赤血球と、前記他の成分と、少なくとも1つのさらなる血液成分とを、流体的に相互接続された1組の採取バッグに採取する工程と、
前記他の成分を前記フィルタに流入させる前に、前記1組の採取バッグから、前記さらなる成分を収容するバッグを取り外す工程と、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記他の成分の採取バッグを前記フィルタ及び前記赤血球採取バッグの上方に吊るして、前記フィルタから前記赤血球を押し流す工程をさらに含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−514862(P2013−514862A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546005(P2012−546005)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059437
【国際公開番号】WO2011/087631
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(507114521)テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド (39)
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
【Fターム(参考)】