濾過媒体、100ナノメートル未満の細繊維および方法
100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を生成するための電気紡糸細繊維製造方法を提供する。また、圧力低下に対する効率が増加した、および/または、細孔サイズ分布が制御された、基体層と電気紡糸細繊維層とを備える濾過媒体複合物が提供される。いくつかの実施の形態によれば、蟻酸および酢酸の組み合わせである溶媒からナイロンが電気紡糸される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例えば高分子溶液から繊維を静電紡糸することによって製造できる高分子細繊維、同繊維に関わる方法、および/または同繊維を組み込んだ新しい濾過媒体複合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
収集電極と紡糸電極との間の電圧差により生じる電界を介して静電紡糸(electrostatic spinning)(「電気紡糸(electro-spinning)」としても知られる)により高分子溶液から細繊維を製造することが知られている。例えば、米国特許第6,743,273号に示されているように、高分子溶液は回転エミッタ形態の紡糸電極に圧送されるが、そこではポンプ溶液がリザーバから圧送されて、エミッタの孔を強制的に通過させられる。通過すると、グリッドとエミッタ間の静電電位により電荷が付与され、液体は薄く細い繊維として「紡糸」され、基体上で効率層として収集される。このプロセスで、溶媒は細繊維から蒸発し、それによりフライト中の繊維の直径が小さくなる。
【0003】
静電紡糸装置の別の例が特許公開US2006/0290031号およびWO2006/131081号に示されている。両出願に開示されている紡糸電極は、いくつかの異なる形態を取り得る設計の回転ドラム体である。ドラムを、高分子溶液リザーバに浸漬するように配置し、収集媒体の経路に対して垂直な軸を中心に回転させる。ドラムを高分子溶液を通して回転させることにより、帯電電極の紡糸表面は高分子溶液で被覆される。ドラム体の様々な変形が両特許公開を通じて示されており、それらには、複数の先端を提供することで細繊維が生成される個別の紡糸位置が設けられるものが含まれる。
【0004】
さらに、濾過媒体のためのより具体的な細繊維に関する米国特許公開第2007/0163217号があり、この出願は、本願と発明者が共通であるため、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。’217公報は、細繊維層と基体層との間に溶媒結合を有する濾過媒体セルロース/ポリアミド複合物を提供する。この公報に開示されているように、セルロース/ポリアミド複合物は、高分子溶液を圧送して小さいノズルに強制通過させ、十分な残留溶媒がある状態でセルロース基体材料上に堆積させて溶媒結合を提供することで、基体と細繊維層との間の層間剥離を防止する。かかる層間剥離、すなわち細繊維層の一部の喪失は、濾過特性を変化させてしまうので望ましくない。この公報における実施例によれば、ポリアミドから製造された細繊維の繊維サイズは、公報に記載された方法により120ナノメートル、300ナノメートル、および700ナノメートルで製造された。’217公報に開示されているポリアミドおよびセルロース濾過媒体複合材料は、この公報に示された細孔サイズ分布ヒストグラムにより示されるように、特定の濾過特性を提供する。本願および本発明は、従来技術の発展および進歩に関する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、個々または組み合わせにより特許性を有する、主張可能ないくつかの態様があり、かかる態様には以下が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0006】
本発明の第1の態様は、透過性媒体の基体層と、基体層に担持される細繊維層であって、細繊維層は、100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を含む、細繊維層とを備える濾過媒体を対象とする。100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維とは、100ナノメートル未満の直径を有する細繊維の百分位数、平均繊維径、および/または中間繊維径などの異なる代替法において定量化可能である。
【0007】
好ましくは、基体層と細繊維層間に溶媒結合を提供することで、細繊維層の層間剥離を、濾過用途での使用に対して十分に防止する。
【0008】
本発明の別の態様は、一つには細繊維層に由来する効率特性の改善を対象とする。本態様によれば、濾過媒体は、透過性媒体の基体層と、基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え、基体層と細繊維層との組み合わせの効率は、他の層は別として、0.75から1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90パーセントである。加えて、これは、細繊維層と基体層との組み合わせを基体層単体と比較した場合、圧力低下の差が15パーセント未満(より好ましくは、それよりはるかに少ない)であることと同時に達成される。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、より制御された細孔サイズ分布に関する。詳細には、細孔サイズ分布が制御された濾過媒体は、透過性媒体の基体層と、基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え、かかる層の組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50パーセントの細孔サイズ分布を有することができる。
【0010】
本発明の別の態様は、高分子を溶媒に溶解させて高分子溶液を形成するステップと、電極から高分子溶液からの細繊維を電気紡糸するステップと、細繊維を基体層上に堆積させるステップと、少なくとも1つの高分子および少なくとも1つの溶媒の選択を含む紡糸パラメータを制御して100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の細繊維を生成するステップとを含む、濾過媒体の形成方法を対象とする。
【0011】
さらなる態様では、表面張力および/または導電性制御剤と組み合わせて溶解剤が利用される。例えば、溶媒の混合物(例えば、ナイロンについての酢酸および蟻酸の溶媒の組み合わせなど)を利用して、より薄い繊維を形成することができる。
【0012】
本発明の他の態様、目的および利点は、添付図面を参照した、以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に組み込まれ、その一部を成す添付図面は、本発明のいくつかの態様を示し、詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。図面は下記の通りである。
【0014】
【図1】本発明の実施の形態による濾過媒体の製造に用いることができる細繊維生成装置の部分側立面略図である。
【0015】
【図2】図1に示す装置の部分平面略図である。
【0016】
【図3】本発明の実施の形態に従う、図1に示す略図に組み込んで用いることができる、複数の高分子溶液槽および電気紡糸電極、ならびにそれらを駆動するための適切な駆動機構の等角図である。
【0017】
【図4】図3に示す装置の一部拡大図である。
【0018】
【図5】駆動ユニットの例をより良好に示す、図3に示す装置の一部の異なる拡大等角図である。
【0019】
【図6】図3に示す装置の個々のユニットの1つの拡大側面図である。
【0020】
【図7】図3に示す電気紡糸セルまたはユニットの1つの断面図である。
【0021】
【図8】動作中に個々のチェーンセグメントの各々の高分子溶液被覆から少なくとも2つの紡糸位置をどのように形成するのが典型的であるかを説明するために用いる、前述の図面において用いられる無端チェーン電極の一部の近接説明図である。
【0022】
【図9】本発明の代替の実施の形態によるサーペンタインベルト電気紡糸装置の斜視図である。
【0023】
【図10】動作中にベルトを高分子溶液で濡らすためのニードル投与位置が単一の、無端ベルトを駆動する2つのガイドホイールプーリを伴う本発明のさらに別の代替の実施の形態を示す。
【0024】
【図11】ドナルドソン・カンパニー(Donaldson Company, Inc.)から市販されている製品による細繊維および基体濾過媒体複合物を含む濾過媒体の、既知の従来例についての細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0025】
【図12】既知の従来例の細繊維被覆の効果を示す、図11で用いた媒体の濾過媒体基体(国際規格EN−779によりサンプルをイソプロピルアルコールに浸漬することにより細繊維層が除去されている)についての細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0026】
【図13】図11および図12についての無被覆媒体と被覆媒体との比較(細繊維層を有する媒体の方が高効率)を提供する分別効率グラフデータを示す。
【0027】
【図14】本発明の実施の形態の実施例において基体濾過媒体として用いられる濾過媒体基体(細繊維層が付加されていない)についての細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0028】
【図15】本発明の実施例および実施の形態に従って細繊維層が付加された濾過媒体基体(図14において用いたもの)を備える濾過媒体複合物の細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0029】
【図16】図14および図15について用いた細繊維で被覆されていない媒体と細繊維で被覆されている媒体との比較(細繊維層を有する媒体の方が高効率)を提供する分別効率グラフデータを示す。
【0030】
【図17】本明細書における分別効率試験に用いたISO試験用微粒ダストの塵埃粒子の濃度を示すグラフ図である。
【0031】
【図18】ドナルドソン・カンパニーの既知の濾過媒体例(例えば、試験結果を図11および図13に示す媒体)の細繊維層を40,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡画像であって、本発明との比較目的で、測定観察値を画像上に示している。
【0032】
【図19】本発明の実施の形態に従って製造された細繊維層例(例えば、試験結果を図15および図16に示すもの)を40,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡画像であって、測定観察値を画像上に示している。
【0033】
本発明は、ある好ましい実施の形態と関連付けて説明されるが、それら実施の形態に限定する意図はない。反対に、意図するところは、全ての代替物、変形、均等物を、添付の特許請求の範囲に定義されているように、本発明の精神と範囲内に含まれるものとしてカバーすることである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示おいて、出願人は、まず、濾過媒体を製造するための好適な細繊維生成装置について開示し、次いで、かかる装置により実現できる新しい細繊維、濾過媒体、および方法について説明する。系統立てて読み易くする目的で、セクションおよびサブセクションに異なる標題を付した。まず、本発明の実施の形態に従って細繊維および濾過媒体を作製可能な細繊維製造装置の実施の形態に着目する。
【0035】
[細繊維製造装置]
【0036】
説明のために、本発明の実施の形態に従って細繊維および濾過媒体を製造する細繊維製造装置の実施例を、濾過媒体製造システム12の一部である細繊維製造装置10としての部分概略形態で、図1および図2に示す。製造システムは、アンワインド装置16上に配置した濾過媒体基体ロール14の形態で示す細繊維収集媒体基体の交換式マスターロール14を含む。連続基体シート18は、細繊維を収集するため濾過媒体基体ロール14から細繊維製造装置を通じて送られ、濾過媒体基体層24および高効率細繊維層26を有する濾過媒体ロール22上にリワインド装置20により巻き取られる。マスター基体ロール14は、空になってから、必要に応じて新しい濾過媒体基体ロールに交換される。
【0037】
図示のように、媒体のシート18は、概ね入口領域32から出口領域34まで細繊維製造装置10を通じて第1方向30に沿って延びている。濾過媒体シートの両方の側部36は、自ずと第1方向30に対して略平行に延びている。
【0038】
細繊維製造装置は、第1および第2電極間に生成される静電界を含む一方、細繊維が生成される1つ以上の紡糸電極40と、細繊維が静電界により提供される力を受けて引き寄せられる収集電極42とを含む。図示のように、通常は細繊維が収集電極42上に堆積せずに濾過媒体シート18上に堆積するように、媒体シート18を紡糸電極40と収集電極42との間に延在させるのが普通である。収集電極42は、好ましくは、スレッド収集位置を最大数にするように相当な表面積を有する導電性多孔板である。多くの小孔46を穿孔板に形成することにより、蒸発した溶媒を施設外などの外部位置に排出するブロワ駆動換気フードシステム48を通じて、蒸発した溶媒を真空吸引(vacuum suction)することが容易になる。(概略的に示すように、収集電極42は、換気フードシステム48と同様に、少なくとも媒体の幅に及ぶとともに、紡糸電極40をひとまとめにした長さに及ぶ。濾過媒体基体層は、収集電極42に接触した状態で延在するとともに、重力に抗する吸引圧力を受けて収集電極42に支持されている。この支持配置は、図示のように平坦で平面状であるのが好ましい。
【0039】
静電界を生成するため、高電圧源が設けられ、かかる高電圧源は、電極40と42の間に10,000〜150,000ボルト以上(濾過媒体用細繊維の製造にとって、より好ましくは75,000〜120,000ボルト)のオーダーの高電圧差を発生させるように、電極40および42の少なくとも一方に接続されるが、他の電圧範囲も可能である。収集電極42は、普通には単純に接地されるが、紡糸電極が接地電位に対して必ずしもかかる高電位を有さなくてもよいように、電圧生成源により収集電極に対して接地電位以外の電位を与えてもよい。いずれの場合も、電圧源は、静電界を通じて高分子溶液から細繊維を紡糸するために十分な電圧差を第1および第2電極間に発生させるように配置される。
【0040】
一実施の形態において、装置は単一紡糸電極40を含む。例えば、図7の単一電極を用いてそれ自体の装置を形成してもよい。その他の図に示すように、複数の紡糸電極40を入口領域32と出口領域との間に設けることができる。1つ以上の紡糸電極を、ユニットとして個々の細繊維製造セル50に組み込んでもよい。例えば、図1〜図3に示すように、入口領域と出口領域との間に複数の細繊維製造セル50を配置することが可能である。細繊維製造セル50の各々は、電線52を介して高電圧源44に結合され、セルの各々は、収集電極42に対して同じ電位差を受ける。
【0041】
個々の製造セル50のさらなる詳細について説明する。図7を参照すると、各セル50は、プラスチック製の有壁箱状の容器構造の形態であってもよい浸漬槽54を含む。浸漬槽54の各壁56は、高電圧源44から槽54に伝えられた電圧の不意の放電を防止するため、プラスチックなどの絶縁材料(ただし、使用予定の溶媒に対して可溶性がないプラスチックまたは他の絶縁材料)から構成される。浸漬槽54は、細繊維の電気紡糸にとって好適な溶媒と好適な高分子との高分子溶液58を含む。
【0042】
プラスチック壁56の1つには、壁56の1つを貫通して延び、電線52を介して高電圧源44に接続される金属の電気端子60が装着されている。端子60は、高分子溶液58と導通することにより、溶液を通じて電位を紡糸電極40に伝えるために溶液を帯電させる。
【0043】
加えて、高分子溶液を周期的に補充するため、一方向チェック弁を含む従来からのクイック接続カップリング62などの流体継手を壁56の1つを貫通して装着することで、かかる溶液のさらなる追加による高分子溶液の周期的な補充が可能になる。流体計量ユニット64およびリザーバ66を含み、槽に高分子溶液をさらに周期的に補充する流体補充システムを接続してもよい。制御弁または個々の計量ユニット(各ユニットを各セルの専用とする)を設けることで、各セルにおける溶液を個々に制御してもよい。
【0044】
図示のように、紡糸電極40は、ストランドの形態を呈してもよいし、実施の形態で示すように、無端チェーン70の形態をした無端ストランドであってもよい。無端チェーン70は金属製または他の導電材料製であるのが好ましく、それにより無端チェーン70は難なく導電性を呈し、かつ高分子溶液58により、およびそれを通じて提供される電気的導通により高電圧源44との間で電気回路を構成する。図8に最良に示すように、無端チェーン70は、複数の個別セグメント72を含むのが好ましい。個別セグメントの各々は、間隙74とスペーサセグメント76とにより、隣接する別のセグメントから離間して接続されている。本実施の形態において、セグメント72はビード付チェーンを形成するビードであり、各ビードは略球状のボール78の形をとる。例えば、ステンレス鋼製のビード付チェーンを紡糸電極とすることができる。
【0045】
無端チェーン70は、浸漬槽54の離間する対向両端にある可動ガイドホイール82の形態をとってもよい2つのガイド周りの無端経路80に沿って装着される。ガイドホイール82は、図示のようにシーブ状構造であってもよく、金属、プラスチック、または他の好適な材料で構成できる。ガイドホイール82は、プラスチック材料の軸などの絶縁軸84に回転可能に装着されることで、浸漬槽54内の電位を絶縁する。軸84は、浸漬槽54の壁56に対して回転可能である。無端チェーン70は、ガイドホイール82に巻き回され、高分子溶液58から露出した直線紡糸経路86を含む。紡糸経路86は、収集電極42に最も近接して対面している。また、無端チェーン70は、無端チェーンのセグメントを周期的に再生させる目的で、(すなわち、チェーンを高分子溶液に浸漬し、通過させることにより)浸漬槽54および高分子溶液58を通して延びる直線戻し経路88を有する。どの時点においても、チェーンの一部は溶液で再生されており、一部は電気紡糸のために露出している。
【0046】
無端チェーン70をガイドホイール82周りの無端経路80に沿って駆動するために、出力軸92上に回転出力部を有する回転モータ90を備えた好適な駆動ユニットが設けられる。出力は、次いで、伝動装置を通じて伝達軸94に伝達され、伝達軸94により、チェーンおよびスプロケット機構96を介して電気絶縁駆動装置98に伝達される。これらの駆動装置98は、永久磁石102を収容する、分離しているが近接して配置されたハウジング100(図6参照)を含み、ハウジング100は、動作時にハウジング100の一方が回転すると、両ハウジング間の永久磁石102の散在した関係およびそれらの永久磁石により生成される反発力または吸引力により他方のハウジング100が回転するように、図示のようなオフセット配置(磁石が互いの間に介在している)に構成されている。駆動ハウジング100の一方を、各浸漬槽セルのガイドホイール82の少なくとも一方に装着されることで、ガイドホイールは、無端チェーン70を無端経路80周りに駆動する駆動ホイールを兼ねるようになっている。勿論、他の適切な駆動ユニットを設けて無端チェーン70を無端経路80周りに駆動してもよい。
【0047】
図1、図2、および図7から分かるように、無端チェーン70の直線紡糸経路86部分は、第1方向30に対して好ましくは横断する(すなわち、垂直または対角もしくは斜めなどその他横方向のいずれかである)第2方向104に沿って移動するため、第1方向に対して横断するように延在する。その結果、媒体のシートが入口領域32から出口領域34まで第1方向30に沿って移動するに従って、無端チェーン70の個々のセグメント72が、対向する側部36の間を基体シートを横切って第2方向に沿って移動する。
【0048】
加えて、図7に最良に示すように、個々のセグメント72が直線紡糸経路86の全体にかけて一端から他端まで移動する際、収集電極42および/または媒体シート18からセグメント72までを一定の離間距離106とすることが可能である。かかる一定の目標距離には、細繊維の製造に大きく影響しない無端チェーンの弛みによる軽微なばらつきがあってもよい。その結果、紡糸目標離間距離106は、厳密に制御可能で、回転ドラムアプリケーションでの場合のように幅広いばらつきが生じることはない。直線紡糸経路86に沿う無端チェーンの望ましくない弛みが存在する限り、経路に沿って中間ガイド支持体(不図示)を設けることが可能で、かかる中間ガイド支持体によって、無端チェーン上の高分子被覆を周期的に再生してもよい。かかる追加の中間支持装置は、はるかに長いスパンにかけての電気紡糸を所望する場合に設けることができる。中間における再生は、高分子溶液をニードルからチェーン上に圧送することにより、および/または、溶液をすくい上げて無端チェーン上に送り込む搬送ホイールを通じて、実現することも可能である。いずれの場合も、紡糸経路に沿う無端チェーンの弛みが軽微である限り、本発明および本明細書に付帯する請求項の意味および文脈における文言上は、一定の離間間隔106を含むと考えられ、紡糸経路86に沿う移動については、本発明および本明細書に付帯する請求項の文脈における文言上は、直線的であると考えられる。
【0049】
上記から明白であるように、直線紡糸経路86および無端チェーン70の移動方向は、収集媒体シート18の移動方向30に対して横断している。好ましくは、および図示のように、この横断配置は垂直であるのが好ましいが、90°以外の角度を含む他の横断配置を用いてもよいことは言うまでもない。従って、本明細書の文脈において、横断とは、垂直を含むがそれを意味するのではなくより広い意味を有し、概ね収集媒体シート18の対向する側部36の間の方向に略横方向に移動する電気紡糸生成のためのストランドも含むことを意図している。
【0050】
動作モードの実施の形態によれば、動作中、濾過媒体収集シート18は、第1方向に沿って連続的に進行するとともに、無端チェーン70は、無端経路80周りを連続的に移動する。しかし、様々な目的のために所望される場合は、いずれも間欠動作とすることが可能であることは言うまでもない。
【0051】
動作中、図7および図8に示すように、直線紡糸経路86に沿う無端チェーン70は、少なくとも1列(図では2列)のアレイ状に直線配列された複数の紡糸位置108を含む。紡糸位置は、間隙74により隔てられ、かかる間隙74は、本実施の形態の場合、紡糸位置108が直線紡糸経路86に沿って均等に離間されるように、均等に離間させた間隙74である。これは、球状ボール78の構成では、細繊維110の形成のための2つの紡糸位置108が生じるのが典型的であるからである。図示のように、紡糸位置108は、球状ボール78の対向側にあり、電気的反発力(例えば、帯電した紡糸スレッドは互いに反発する傾向がある)により直線紡糸経路86に対して垂直な横軸112に沿って離間されている。従って、個々のセグメント72の湾曲形状は、紡糸位置間を所望される間隔とし、各個のセグメント当たり複数の紡糸位置を設けるのに有益であり、それにより、より細い繊維を製造し、細繊維の製造の均一性を制御できる。しかし、紡糸位置を形成するために鋭利な縁部またはセグメント化されていないストランドを提供するなど、他の構成としてもよいことは言うまでもない。
【0052】
水を溶媒として用いる水溶性高分子の場合、装置を、覆っていない状態で用いてもよい。しかし、開示の実施の形態は、浸漬槽の、さもなければ開放された端部118を実質的に覆うように配置された中心カバー116を提供することにより、伝統的な浸漬システムに対して顕著な利点を提供する顕著なオプションの好適な特長を有する。この配置によれば、カバー周りで駆動される無端チェーン電極が、浸漬槽内に収容されカバーにより実質的に浸漬槽に封じ込められた第1部分と、露出され細繊維を生成可能な第2部分とを含むことが分かる。カバー116は、図示のようにバネ電極の異なる部分の間に介在させ、電極の浸漬を実質的に閉じ込めることが可能である。カバー116は、離間する両ガイドホイール82間に実質的に延在し、本実施の形態では、ガイドホイールを受け入れるとともに無端チェーン70が通過できる開口を提供するガイドホイールスロット120を含んでもよい。本実施の形態の場合、セル50当たり2本の無端チェーン70が含まれ、各無端チェーン70に2つのガイドホイール82のみが提供されるため、合計で4つのスロット120を設けることができる。他の支持装置が所望される、または必要とされる場合は、追加のガイドホイールのための追加のスロットを設けてもよい。カバー116は、高分子溶液が揮発性溶媒および/または水以外の溶媒を伴うときに特に有益である。例えば、特定の溶媒材料は、水よりも早く蒸発し得るので、望ましい高分子対溶液比の維持がより困難になる。カバー116により、いずれの瞬間においても外部に露出した溶媒の量が最小化され、それにより溶媒ロスが最小化される。これは、材料の節約および環境的視点からもより有益であろう。
【0053】
例えば、図1〜図8の開示によるカバーを有する無端ビード付チェーンの実施の形態を、カバーのない構成を有する市販装置、すなわち、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.(El-Marco, s.r.o.)から入手可能なEl−Marco NANOSPIDER型式NS−8A 1450の装置と比較したところ、16時間の試験期間にわたり顕著な溶媒の節約を示した。詳細には、蟻酸1/3および酢酸2/3の溶媒を用いるナイロン6などの12%高分子溶液(高分子対溶液比)から高分子細繊維を紡糸する際、浸漬槽における溶液を12%に維持するため、エル−マルコ装置の覆われていない浸漬槽における局所的な高分子溶液の補充については、蒸発した溶媒のロスにより、大いに希釈された高分子溶液(より多くの溶媒を含む)を浸漬槽に補充することが要求された。具体的には、エル−マルコ装置には、溶媒を多く含む補充溶液である2%溶液が必要であった。一方、実施の形態では、溶媒の蒸発が少ないため、より多くの高分子を含む溶液である7%補充溶液で12%高分子溶液の維持が達成された。この比較では、装置のパラメータのすべてが等しいわけではないことを述べておく(例えば、とりわけ、電極の構成および駆動が異なり、収集媒体流量が異なり、本発明の実施の形態では、ドラム状電極の回転を収容する必要がないため収集媒体の移動方向において浸漬槽をより薄くできることを考慮すると、浸漬槽の容器サイズがより小さい)。
【0054】
蒸発は大部分が利用可能な表面積(ならびに表面攪拌および空気流(例えば電極の浸漬部の入口および出口領域周辺)など)に関することを考慮したとしても、溶媒の節約は、主として、本明細書において開示されている槽および電極を覆う手法によるものである。例えば、図1〜図8の実施の形態では、高分子溶液の表面、および電極浸漬の入口と出口位置(攪拌エリア)も実質的に覆われている。従って、他のパラメータは、蒸発ロスに対して著しく影響しているようには見えない。比較した装置において、溶媒蒸発についての節約は、60%以上に達し得ると算出された。この利点の多くは、浸漬中の電極を覆ったこと、および高分子溶液を実質的に閉じ込めたことによるものと考えられる。従って、好ましくは、十分な覆いを設けることにより、溶媒ロスを少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%削減する。
【0055】
一実施の形態を実装する際、カバー116を浸漬槽54の壁にねじなどで堅固に締結することが可能である。カバーの構成および取付は、電極の構成に依存し得る。他の配置または他の種類の電気紡糸システムも可能である。好ましくは、カバーにより、高分子溶液の溶媒からの蒸発が、無カバー電極紡糸装置と比較して少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%削減される。例えば、上記実施例では、溶媒のおよそ3分の2の節約が実証されている。
【0056】
さらに、図示の実施の形態は、セル50の対向端に、カバー116の上方に延在する壁延長部124に装着された端部カバー122を含み、端部カバー122は、無端チェーン70の対向端の上方に位置してガイドホイール82の上方に配設される。端部カバー122も、溶媒の蒸発を低減し、また、細繊維の製造スパンを制限するシュラウドとしての役も担う。図示のように、対向端部カバーの内縁の間の端部カバースパン126は、対向する側部36の間に定義された対応する媒体シート18の幅とほぼ同じであり、好ましくは媒体シート18の幅よりも少し長い。細繊維製造装置10を通じて延在し得る収集媒体シート18の異なる幅を収容するためスパン126を調整できるように、端部カバー122は、調整可能であり、および/または、他のより長い端部カバーと相互交換可能であってもよい。
【0057】
図9を参照して、本発明の代替の実施の形態を、多くの点において第1の実施の形態と同様の細繊維製造装置140として示す。例えば、本実施の形態は、高分子溶液で濡らされ収集媒体に対して一定間隔の紡糸位置を維持可能なストランドを同様に用いる。さらに、本実施の形態は、紡糸電極を提供する無端経路周りに駆動される無端ストランドも含む。従って、より際立った差違のいくつかについて詳細に説明する。
【0058】
本実施の形態において、細繊維製造装置は、複数のガイドホイール144周りの無端経路で駆動される無端サーペンタインベルト142を含む。サーペンタインベルト142は導電材料製であるのが好ましく、紡糸電極を提供するため図示のように連続的な無端金属バンドの形態を呈してもよい。サーペンタインベルト142は、各々が複数の紡糸位置を提供する、隣接するガイドホイール144の間のいくつかの直線セグメント146を含む。一般に、収集電極に最も近接して配設された縁部148が、紡糸位置を提供する。この縁部148は、複数の個別の均等に離間する鋭利な縁部(不図示)を提供するため鋸歯状とすることが可能であり、および/または、縁部148に沿って局所的な高分子溶液流体リザーバを提供するためポケットその他を構成することができる。好ましくは、ガイドホイールは、ベルト142上の孔152および他の同様の位置決め構造に係合する歯または他の位置決め構造を含み、一定の間隔が望ましい場合は、縁部を一定の間隔に維持することにより一定の離間距離106を維持する。
【0059】
サーペンタインベルト142は、電圧源により静電界を生成し、それにより紡糸電極としての役を担う。ベルト142に沿って高分子溶液を提供するため、本実施の形態は、サーペンタインベルト142の縁部148に隣接して離間する制御オリフィス155を有する1つ以上のニードル154を含む濡れ供給システムを含む。加えて、ニードルは、リザーバ158からの高分子溶液を配給するポンプ156により実現される加圧高分子溶液源に、流体線路に沿って接続される。従って、ストランドの生成は、必ずしも浸漬により行う必要はなく、代替として、本実施の形態に従って他の手段において濡らすことにより行うことができる。加えて、本実施の形態は、浸漬槽において電極を浸漬させる能力も提供可能である。例えば、サーペンタインベルトの柔軟な性質により、サーペンタインベルトの各部分を、水平方向ではなく垂直方向に延在するように配置することが可能である。代替として、収集媒体を水平方向ではなく垂直方向に延在するように配置した状態で、右手部分を、高分子溶液を含む浸漬容器に浸漬させてもよい。
【0060】
図9の実施の形態に大きく類似する細繊維製造装置160である本発明の第3の実施の形態を図10に示す。従って、説明は限定する。本実施の形態は、同様に、ニードル制御オリフィス、ポンプ、および高分子溶液リザーバを備える高分子供給システムを用いることが可能である。本実施の形態も、無端ストランドを用い、かかる無端ストランドは、本実施の形態では、2つのプーリ164周りで駆動されるより単純な金属バンド162の形態を呈する。繊維の生成は、収集媒体(不図示)に最も近接して配設されることを意図する縁部166から得ることができる。また、本実施の形態は、バンド162の両方の直線セグメント168が繊維の製造のために配置され、高分子溶液に浸漬されないという点を除き、第1の実施の形態に大きく類似する。セグメント168の各々を一定の距離に維持する必要がないことに留意すべきである。例えば、収集媒体に対して異なる距離に配置された、異なる繊維生成紡糸電極ストランドを有し、異なる特性の異なる繊維を生成することが有益であるかもしれない。本実施の形態において、プーリ164は、シーブまたは他の位置決め構造の形態を呈することで、収集媒体に対する縁部166の位置決めを維持してもよい。
【0061】
好適な装置を説明してきたので、ここに、上で開示したまたは他の装置により製造可能な新しい濾過媒体、細繊維および方法について述べる。
【0062】
[濾過媒体一般]
【0063】
液体流および気体流(例えば空気流)などの流体ストリームは、流体ストリームに含まれる望ましくない汚染物質であることが多い微粒子を運ぶことが多い。流体ストリームから微粒子の一部またはすべてを除去するためフィルタが一般に用いられる。例えば、幅広い用途で気体ストリームを濾過するために空気濾過システムが用いられる。かかるシステムの例には、より一般的な空気濾過用途のいくつかを挙げると、燃焼機関吸気システム;車両キャブ吸気システム;HVAC(暖房、換気、および空調)システム;クリーンルーム換気システム;フィルタバッグ、バリア布、織布を用いる種々の産業用途;発電システム;ガスタービンシステム;および燃焼炉システムなどがある。同様に、液体濾過も幅広い用途に関わり、より一般的な濾過対象の液体のいくつかを挙げると、水、燃料、冷媒、油、および作動流体などがある。
【0064】
濾過媒体には、典型的には、表面捕集媒体(障壁濾過としても知られる)および深さ媒体の2種類がある。表面捕集媒体は、一般に、媒体の表面上の粒子を濾過ケーキと呼ばれることもある薄層において捕らえる。フィルタケーキ層は、多くの場合、濾過媒体上の薄皮として形成され、通常、比較的軽い機械力で剥離することが可能である。反転パルスアプリケーションなどのいくつかのアプリケーションにおいて、フィルタケーキは、空気の反転パルス噴射(または他の機械力の印加)により濾過媒体の表面から自動的に吹き飛ばされ、廃棄物レセプタクルにおいて収集される。多くの場合、フィルタは、濾過ケーキが十分に蓄積した後に単純に交換される。他方、深さ媒体は、媒体の深さを通じて作用し、粒子を媒体の「深さ」の内部に捕らえる。深さ媒体は、媒体が占める体積すなわち深さの全体を通じて微粒子を捕集する。
【0065】
濾紙は、表面捕集媒体の広く知られる形態である。一般に、濾紙は、流体ストリームに対して略横断するように配向されたセルロース繊維、合成繊維、および/または他の繊維の厚いマットを備える。濾紙は、一般に、(1)流体流に対して透過性を有し、(2)特定のサイズよりも大きい粒子の通過を妨害する十分に細かい細孔サイズを有し、(3)濾過システムまたはアプリケーションの流体要件を満たすために十分な流体の通過を可能にする適切な孔隙率を有する。流体が濾紙を通過する際、濾紙の上流側では拡散および妨害作用が生じ、選択されたサイズの粒子が流体ストリームから捕集され、保持される。
【0066】
濾過媒体の1つの一般的なパラメータ特性には、濾過媒体の「効率」がある。効率とは、微粒子を濾過せずに媒体を通過させてしまうのでなく、微粒子を捕らえる媒体の性質である。別の一般的な特性には、伝統的にしばしば媒体の孔隙率に関連付けられてきた、媒体にまたがる圧力低下である。圧力低下とは、濾過媒体が流体流に対してどれほど制限的であるかに関する。典型的には、細孔サイズが大きいほど、流体流が大きくなるが、より多くの微粒子を通過させてしまうことにもなる。その結果、多くの場合、効率は圧力低下と相反する。詳細には、大量の微粒子を捕らえることが望ましいことが多い一方、かかる高効率を提供するには媒体の制限、すなわち媒体にまたがる圧力低下を増加させるという望ましくない作用が生じることが多かった。
【0067】
効率とは、初期効率、すなわち製造後であって微粒子を捕集する使用前の濾過媒体の効率を意味し、それに言及することが多い。使用中、濾過媒体は、塵埃ケーキとして、および/または、それ以外の方法で、媒体内に微粒子を捕らえ、回収する。これらの濾過除去された微粒子は、媒体における大きい孔を塞ぎ、それによりさらに小さい粒子が通過するための孔を妨げ、それにより時間を経て媒体の効率を初期効率よりも大きい動作効率に増加させてしまう。しかし、流体流経路を塞ぐことにより、かかる濾過除去された微粒子は、また、流体の通路を無効化または部分的に目詰まりさせ、それにより媒体にまたがる圧力低下を増加させ、流体流に対する制限を強めてしまう。
【0068】
通常、フィルタの耐用寿命は、フィルタにまたがる圧力低下により決定される。より多くの粒子が流体流から濾過除去され、濾過媒体により捕らえられるに従って、濾過媒体の流体流に対する制限は強まる。その結果、濾過媒体にまたがる圧力低下は高まる。最終的に、媒体は制限が強すぎるものとなり、所与の用途の流体ニーズに対して不十分な流体流となってしまう。フィルタ交換間隔は、かかる事態(例えば、流体流が不十分な状況に達する前)に概ね一致するように算出されている。また、フィルタ交換間隔は、媒体にまたがる圧力低下負荷を測定するセンサにより決定してもよい。
【0069】
フィルタ業界でしばしば用いられる濾過媒体のための1つの有用なパラメータは、ASHRAE規格52.2による報告MERV(最小効率報告値)特性である。これは、圧力低下抵抗に対する効率の測定値を含む。一般に、MERV値が高いほど濾過媒体のグレードが高いとされ、より高価であるのが普通である。例えば、次表にMERV報告値要件を記載する。
【0070】
表1−最小効率報告値(MERV)パラメータ
【0071】
表面捕集濾過の場合、塵埃ケーキの形成に伴う1つの問題は、塵埃ケーキが速やかに蓄積し、フィルタの耐用寿命に早くに達してしまう点である。そのため、濾紙は、多くの場合、プリーツもしくは溝を設けるか、または他の同様の集積方法で構成することで、所与の体積についての媒体量および媒体表面積を増加させる。このため、本発明の表面捕集の実施の形態による細繊維被覆媒体は、典型的には、プリーツもしくは溝を設けるか、または他の好適な濾過要素構成方法により集積させることで、濾過容量を増加させる。
【0072】
プリーツを設けた形態など媒体表面を集積化することでフィルタ耐用寿命は増加するが、かかる表面捕集フィルタ構成には限界がある。このような理由で(および破裂強度の問題を考慮して)、表面捕集媒体は、主として、濾過媒体の通過速度が比較的低い(多くの場合、毎分約30フィート以下、典型的には毎分約20または10フィート以下)アプリケーションにおいて用いられてきた。例えば、毎分1フィート前後の低流量アプリケーションが存在する。本明細書において用いる用語「速度」とは、媒体を通過する平均速度(すなわち、媒体面積当たりの流量)のことである。
【0073】
多くの濾過媒体アプリケーション、特に高流量のアプリケーションでは、深さ媒体が選択される。典型的な深さ媒体は、比較的厚く絡み合った繊維材料のまとまりを備える。典型的な従来の深さ媒体フィルタは、深く(入口から出口端までを測定)実質的に一定の密度を有する媒体である。具体的には、深さ媒体の密度は、例えば媒体の装着などによる周縁領域の圧縮および/または伸張により生じ得る軽微な密度の変動を除き、その厚さを通じて実質的に一定である。媒体の密度が設計勾配によって変化する勾配密度深さ媒体配置も知られている。異なる媒体密度、孔隙率、効率、および/または他の特性を有する、異なる領域を、深さ媒体の深さおよび体積にわたり設けることができる。
【0074】
深さ媒体は、多くの場合、その孔隙率、密度、および固形物含有率により特徴付けられる。例えば、固形率5%の媒体とは、全体積の約5%が固形物(例えば繊維材料)であり、残りは空気または他の流体が充填された空間である、ということを意味する。別の一般に用いられる深さ媒体の特性には、繊維径がある。一般に、所与の%の固形率については、繊維径が小さいほど効率的な濾過媒体となり、より小さい粒子を捕らえることが可能になる。細かい繊維は太い繊維よりも占める体積が少ないため、より多くの細かい繊維を、全体的な固形率%を増加させることなく詰め込むことが可能である。
【0075】
深さ媒体は、実質的に体積または深さ全体を通じて微粒子を捕集するため、深さ媒体配置は、フィルタの耐用寿命を通じて表面捕集システムと比較してより大きい重量および体積の微粒子を捕集できる。しかし、通常、深さ媒体配置は、効率の点で欠点がある。かかる高捕集容量を可能にするため、低固形率の媒体の使用を選択することがよくある。この結果、細孔サイズが大きくなり、微粒子がより容易に通過できるようになる可能性がある。勾配密度システムおよび/または表面捕集媒体層の追加により、効率特性を改善することが可能である。例えば、表面捕集媒体層を深さ媒体の下流端(または上流面および下流面の間)などに組み合わせて配置することで、効率を増加させることが可能である。この表面捕集媒体層は、ポリッシュ層と呼ばれることがある。
【0076】
少なくとも1980年代以来、深さ媒体および表面捕集媒体についての従来技術による試みにより、高分子細繊維層を濾過媒体配置に用いることが試みられてきた。かかる細繊維は、静電繊維製造(一般に「電気紡糸」として知られる)を通じて製造されるものが開示されている。例えば、細繊維濾過媒体配置が、Barris他の米国特許第4,650,506号、Kahlbaugh他の米国特許第5,672,399号、およびChung他の米国特許第6,743,273号に開示されている。本発明は、これらの特許文献で開示されている濾過媒体配置の1つ以上および/または他のかかる好適な濾過媒体配置に組み込んでもよいため、これらの特許文献の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本明細書において開示されている改善は、これらの先行する特許で開示されている濾過用途に適用可能であり、さらに、それらに開示されている高分子、溶媒、他の作用剤、添加剤、および樹脂などを含む細繊維材料(改善されているとされるいずれの細繊維材料も含む)は、本発明の特定の実施の形態において用いてもよく、かかる場合も本明細書により網羅されることを意図する。
【0077】
これらの上記記録のいくつかにより説明されているように、細繊維は、異なる高分子材料および溶媒から作ることが可能である。それらの例には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、改質ポリスルホン重合体およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、各種ナイロン(ナイロン6、ナイロン6,6、および他のナイロンなどのポリアミド)、PVDC、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、PMMA、PVDFが含まれる。また、入手可能な幅広い溶媒を用いることが可能である。溶媒は、高分子を十分に溶解させるのに適しているべきであるため、選択および使用される溶媒は、所望される高分子に依存する。例えば、一般的なナイロン(例えば、ナイロン6またはナイロン6,6など)を含む多くの高分子には、水を溶媒として用いることはできない。かかる場合、蟻酸などの別の溶媒を一般的なナイロンなどの高分子に選択してもよい。電気紡糸用の高分子溶液を作るための溶媒には、酢酸、蟻酸、m−クレゾール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール塩素系溶媒、アルコール、水、エタノール、イソプロパノール、アセトンおよびN−メチルピロリドン、ならびにメタノールが含まれてもよい。溶媒および高分子は、所与の溶媒における高分子の溶解度が十分であるかに基づいて、適切に用いられるように組み合わせることが可能である。
【0078】
[基体媒体]
【0079】
実施の形態の重要な特徴は、細繊維を濾過要素として用いるため濾過媒体に形成する必要があることである。細繊維材料は、少なくともいくらかの濾過能力を有する濾過媒体基体であるのが好ましい基体上に形成され、接着されるが、スクリムまたは他の非濾過層などの基体とすることも可能である。多くの濾過媒体基体は、少なくとも一部または全体に天然セルロース繊維を含む。天然繊維および合成繊維基体を含む多くの選択肢が存在し、スパンボンド布、合成繊維の不織布、ならびにセルロース材料、合成およびガラス繊維の混紡でできた不織布、ガラス不織布および織布、プラスチック製のスクリーン状材料(押出成形および穿孔されたもの)、ならびに様々な高分子膜が含まれる。これらの材料のすべては、ロール形態で容易に購入可能なシート形態で供給されるのが典型的である。細繊維層を有する基体シートは、浮遊しているまたは運ばれている微粒子をストリームから除去する目的で、空気ストリームまたは液体ストリームを含む流体ストリーム内に配置される濾過構造に形成することが可能である。
【0080】
例えば、上に列挙したタイプの多孔質濾過媒体材料は、ケンタッキー州マディソンビルのオルストーム・エンジン・フィルトレーション,LLC(Ahlstrom Engine Filtration, LLC)およびマサチューセッツ州イースト・ウォルポールのホーリングズワース・アンド・ボス・カンパニー(Hollingsworth & Voss Company)を含むサプライヤから様々な厚さ(通常、0.006〜0.020インチの範囲の厚さ)のものが一般に市販されている。本発明の実施の形態による細繊維は、かかる多孔質濾過媒体に適用可能であり、濾過媒体は、細繊維効率層の基体材料となる。例えば、オルストーム製品番号19N−1もしくは23N−3、AFI 23N−4もしくはAFI 23FW−4などのオルストームにより市販されている製品、または以下の表に記載のものと同様の物理的特性を有する他のフィルタ材料を用いることができる(これらはエンジンの空気濾過で典型的である)。
オルストーム19N−1濾過媒体
セルロース繊維100%
斤量=70ポンド/3000平方フィート
平坦シート状態の厚さ=14.5ミル
溝付きシート状態厚さ=18ミル
Frazier(CFM):11〜19、好ましくは14
SDガーレイ剛性(mg)=3000
オルストーム23N−3濾過媒体
セルロース繊維100%
斤量=55ポンド/3000平方フィート
平坦シート状態の厚さ=13ミル
非溝付きシート
Frazier(CFM):11〜19
SDガーレイ剛性(mg)=1300
オルストームAFI 23N−4
斤量:52〜64ポンド/3000平方フィート
泡立ち点(最初の泡立ち):6.0(最小)IWG
Mullen硬化(Mullen Cured):30(最小)PSI
Frazier:19〜27CFM
キャリパ:0.010〜0.017インチ
SDガーレイ剛性:=1000(最小)MG
オルストームAFI 23FW−4
斤量:70〜80ポンド/3000平方フィート
泡立ち点(最初の泡立ち):6(最小)IWG
Mullen硬化:20(最小)PSI
Frazier:16〜24CFM
キャリパ:0.010〜0.017インチ
SDガーレイ剛性:=1000(最小)MG
【0081】
オルストーム19N−1製品など一部の製品は、汚れ保持能力を改善するため小さな溝を媒体にエンボス加工した状態で入手できる。これらの溝は、濾過媒体のシートおよびロールの長さに沿って延在する。濾過媒体構造に設けられるかかる機械溝および他の構成は、細繊維層製造システムとともに用いることが可能である。従って、本明細書の目的のため文言上「平坦」であるとみなされる媒体基体例の溝付きシートは、完全に平坦である必要はなく、かかるシートには、細繊維の適用前に溝、波形、およびプリーツなどを設けておくことが可能である。
【0082】
本発明の一実施の形態による濾過媒体は、深さ媒体または表面捕集媒体のいずれかであってもよい、透過性を有する粗い繊維媒体であるのが典型的な、第1の基体層を含む。基体層は、設計された濾過アプリケーションに対して相当な濾過容量および効率を有してもよいし、または濾過容量もしくは効率をほとんどもしくはまったく有さなくてもよい。基体層は、細繊維媒体の層を支持および固定可能な表面を提供する。好ましくは、基体層はそれ自体で(すなわち、細繊維層がない状態で)、少なくとも10ミクロンの平均径を有し、約2〜約50ミクロンの平均径を有するのが典型的で好ましい。また、好ましくは、基体層はそれ自体で、約180g/m2以下、好ましくは約5〜約140g/m2程度の斤量を有する。他の典型的な特性として、好ましくは、透過性を有する粗い繊維基体媒体の第1の層は、少なくとも0.0004インチの厚さを有し、約0.005〜約0.05インチの厚さを有するのが典型的で好ましく、概ね約2〜約50ミクロンの細孔サイズ分布を有するのが好ましく、約5〜約70psiのMullen破裂強度を有するのが好ましい。
【0083】
好適な濾過媒体配置において、透過性を有する粗い繊維材料であるのが典型的な基体層は、0.5インチ水位計を用いたFrazier透過性試験により残りの構成とは別に評価した場合、少なくとも0.5cfm(媒体の平方フィート当たり)、典型的には約5〜2000cfm(媒体の平方フィート当たり)の透過性を示す材料を含む。
【0084】
[細繊維、細繊維層、および生成]
【0085】
本明細書に記載の装置を用いて異なるサイズの繊維を生成することが可能であるが、透過性を有する粗い繊維媒体層の第1表面に固定される細繊維材料の層は、好ましくは、本明細書における実施例により例示されるナノ繊維の層であり、かかる繊維は、100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を有するのが好ましい。本文脈における100ナノメートル未満の直径を有する「著しい量」の細繊維とは、以下の少なくとも1つを意味する。(1)平均繊維径が100ナノメートル未満である;(2)中間繊維径が100ナノメートル未満である;および/または(3)細繊維層における繊維の少なくとも25%が100ナノメートル未満の直径を有する。本明細書において開示されている一実施の形態によれば、より好ましくは、細繊維層における繊維の少なくとも50%が100ナノメートル未満の直径を有し、さらに好ましくは、細繊維層における繊維の少なくとも70%が100ナノメートル未満の直径を有する。一実施の形態によれば、繊維の少なくとも70%、典型的には70%〜90%以上が、50〜100ナノメートルの直径を有する。
【0086】
100ナノメートル未満の著しい量の細繊維と組み合わせて、100ナノメートルより大きい他の繊維径を生成および使用することもあり得ることは言うまでもない。
【0087】
また、細繊維を通じて、および/または、装置における均一性の改善を通じて、達成可能な細繊維濾過媒体特性を検討することも有用である。本明細書に開示されている新しい細繊維生成装置の実施の形態で達成可能な被覆率および繊維生成の均一性の利点を用いて、他のより大きい繊維サイズを生成することが可能である。その結果、本明細書で提供される実施例から明白となるように、細繊維は、必ずしもサイズにより特徴付けられるのではなく、それに加えて、またはその代わりに、濾過媒体層の特性により特徴付けることが可能である。既知の細繊維濾過製品よりも優れた、新しい改善された細繊維濾過層の特性が達成されている。このため、請求項は、複合濾過媒体の特性について作成されている。
【0088】
本発明の実施の形態によれば、1つの強化された特性は、改善された効率である。例えば、細繊維層を通じて高効率を達成しつつ、比較的標準的な低効率すなわち低コストの基体媒体を用いることができる。例えば、他のより効率的な基体を用いることもできるが、基体媒体は、0.75〜1.00ミクロンサイズの粒子(比較的中程度の粒子サイズ)に対しては75%未満(例えば70%前後)の効率を有し;および/または0.237〜0.316ミクロンサイズの粒子(比較的細かい粒子サイズ)に対しては40%未満(例えば、30%前後)の効率を有する表面捕集濾過媒体を備えてもよい。従って、基体は、比較的細かい粒子に対してはあまり効率的でない。本発明の実施の形態によれば、基体層と細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75〜1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90%の効率;0.237〜0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも80%(より好ましくは85%より大きい)の効率を有し得る。これは、圧力低下の実質的な犠牲なく実現可能である。
【0089】
本発明の実施の形態による別の強化された特性は、細孔サイズ分布、より詳細には、従来技術例においては分布がランダムであるかまたはさほど制御されていないのに対して、細孔サイズの分布がより厳密に制御されていることである。本発明の実施の形態によれば、基体層と細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%(より好ましくは少なくとも60%)の細孔サイズ分布;4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%(より好ましくは少なくとも25%)の細孔サイズ分布;および/または2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する。この特性を示す一例が実施例4である(細孔サイズヒストグラム(図15)も参照)。
【0090】
細繊維層の被覆率レベルは、重要性を有する。例えば、被覆率が高すぎると、実質的に流れを制限し圧力低下を増加させてしまう可能性がある、フィルム状の層が作製される。試験方法には、無被覆媒体および被覆媒体の圧力低下を比較し、不必要に効率を犠牲にすることを防止するというものがある。好ましくは、基体単体に対する細繊維と基体との組み合わせの圧力低下における差は、典型的には15%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満であり、特定の例によれば、圧力低下は1%未満であり得る。被覆率のレベルを決定する別の方法には、斤量がある。好ましくは、細繊維層はそれ自体で、好ましくは約0.01〜約1.0g/m2、より好ましくは約0.01〜約0.10g/m2の斤量を有する。
【0091】
本発明のより細い繊維は、クヌーセン数/式(流れの希薄化の尺度)により「スリップフロー」であると考えられるものに関するため、顕著な利点を有する。具体的には、繊維が流体ストリームに与える妨害は、その繊維が占める表面積に直接関係する。これは、圧力低下の制御および流体ストリームにおける濾過による制限の最小化に関して重要である。典型的には、表面積が大きいほど層にまたがる圧力低下が高くなり、意図する流体流が制限されるため濾過の場合は望ましくない。より大きいサイズの濾過媒体繊維については、空気速度が繊維表面の中心において実質的にゼロであり得る。はるかに小さい濾過媒体繊維については、空気速度が繊維表面においてゼロより著しく大きい「スリップフロー」が生じ得る。その結果、スリップフローの作用により、はるかに多くの流体がはるかに小さい繊維を通過して流れる。さらに、はるかに多くの細繊維がより小さい繊維径のエリアを占め、媒体の細孔サイズが減少すると同時に、同じ全体表面エリアを占めず、それにより圧力低下を著しく増加させない。特定の実施の形態による100ナノメートル未満の著しい量の細繊維を含むより細い繊維を利用することにより、圧力低下の実質的な犠牲なく、また、濾過媒体にまたがる制限を不当に増加させることなく、新しい濾過特性における実質的な利点を達成可能である。
【0092】
本発明の実施の形態による独特の細繊維および細繊維濾過層に貢献したと考えられるいくつかのパラメータが存在する。特定の動作パラメータはさほど重要でない一方、他のパラメータはより重要であり得ることは言うまでもない。要因の多くは相互に関連し、それらの間の相乗効果を伴う。従って、本明細書に付帯の請求項において記載されているように、かかる特定のパラメータは、本発明から逸脱することなく変更可能である。本明細書では、所望される細繊維の製造および/または濾過媒体の特性を得るため、どのようにアプローチし、パラメータを調整するかの方法について説明する。
【0093】
[(a)装置電極構成および配置(制御された細繊維分布)]
【0094】
重要な要因は、濾過媒体に十分な細繊維を生成しつつ十分に小さい細繊維を生成するための製造装置である。様々な望ましい装置の特性と、かかる特性を多かれ少なかれ実装する様々な装置とについて、本明細書において説明している。従来の細繊維濾過についての特許では、加圧された高分子溶媒を小さいエミッタ孔を通じて強制噴霧する加圧ポンプエミッタシステム(例えば、Chung他の米国特許第6,743,273号)が強調されていたが、本発明のいくつかの実施の形態によれば、より容易な、より良好な、および/またはより制御された細繊維生成が可能である。高分子溶液を小さいオリフィスに強制通過させる強制システムにおいて繊維を製造できるが、本発明の好適な実施の形態による細繊維の生成では、周期的に濡らされる、より好ましくは高分子溶液に浸漬させることで電極上の薄い高分子溶液被覆が周期的に再生される電極が用いられる。最も好適な電気紡糸電極浸漬配置を図1〜図8に示すが、これは、本明細書のこの細繊維生成装置の説明に従うものである。
【0095】
本発明の実施の形態による濾過媒体の商業ベースの製造のために特に有益であることが見出された他の浸漬装置には、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から入手可能なEl−Marco NONOSPIDER型式NS−8A 1450の装置が含まれる。本発明の実施の形態は、かかる他の装置にも関わり得る。また、他の潜在的に使用可能なエル−マルコ,s.r.o.から入手可能な細繊維生成電極浸漬装置の例が、特許公開WO2006/131081号およびUS2006/0290031号に開示されており、これら出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
電極を周期的に浸漬させることで、細繊維製造における細繊維を制御する上で有利であろう。具体的には、溶媒が電極上で蒸発すると(本明細書において説明するように、溶媒の蒸発は、繊維径を縮小させるために望ましい)、高分子が後に残る。かかる高分子の蓄積は、細繊維製造の均一性を低下させる(従って、孔隙率または効率が不均一になる)ことにより、生成される繊維の直径または特性を変化させることにより、および他の潜在的に望ましくない方法で(例えば、より大きいノズルオリフィスを用いることで、理論的にはより大きい繊維サイズとなり得る)、潜在的に製造装置を目詰まりさせる可能性があり、およびさもなければ潜在的に細繊維の製造を変化させる可能性がある。電極を溶液に浸漬させることにより、電極上の高分子の蓄積が防止される。高分子が電極上に析出または形成しようとしているときに電極を浸漬させると、この高分子を多く含む膜は、溶液中に戻され、硬化または析出高分子膜の蓄積が形成される前に容易に溶解または再構成される。また、電極の周期的な洗浄周期において除去または実質的に削減することで、望まれない高分子の蓄積を除去することも達成可能である。加えて、電極の浸漬により、強制高分子溶液システムに圧力差が生じる可能性(かかる困難は、小さいオリフィスノズル上または周辺の高分子蓄積に関連するさらなる困難に至る可能性がある)が回避される。
【0097】
加えて、基体シートは、好ましくは、周期的に濡らされ浸漬される電極の上方で垂直に延在する。その結果、薄い高分子被覆および膜は、静電放電が生じ細繊維スレッドの紡糸位置(「Taylorコーン」または「紡糸口金」としても知られ、そのように呼ばれる)が形成される電極の上部領域に近付くにつれて、重力を受けて薄くなる傾向がある。スレッドが小さいプールから収集電極における孔を通じて重力に反して、しかしブロアの吸引による対向する力を受けて引き出されることを考えると、細繊維が当初形成される高分子膜領域をより薄く維持することにより、結果的に得られる全体的な細繊維サイズが減少し得る。
【0098】
細繊維生成装置の実施の形態による新しいビード紡糸生成には、主として生成される細繊維の量または体積に関して、他の実施の形態に対するいくつかの利益があり得る。例えば、図1〜図8に示す実施の形態の新しいビード紡糸生成装置は、好適な方法により、濾過媒体のシート幅全体にまたがる紡糸位置の位置にわたって実質的な均一性を制御および維持することが可能である。ランダムにではなく、所定のアレイにより紡糸位置を離間することにより、細繊維紡糸位置の所定の間隔を達成可能である。この結果、効率、細孔サイズ、および細孔サイズ分布がより良好に制御されると考えられる。濾過媒体基体のある領域が他のセクションよりも細繊維の被覆が少ない場合、典型的には、かかる領域は異なる濾過特性となるであろうと疑われる。例えば、図1〜図8の実施の形態では、所定の均等に離間する紡糸位置のアレイを維持することが意図されている。本実施の形態におけるビード付チェーン型の電極を媒体に対して横断するように駆動すると、個々のセグメントおよび紡糸位置が濾過媒体基体を横切って移動する際、対向方向に駆動されたチェーンが時間を経て潜在的な高分子溶液勾配ロスに対して反対に作用する。
【0099】
さらに、電極ストランドを収集電極および媒体に対して一定距離に維持することにより、回転ドラム型電極(例えば、エル−マルコに譲渡された前記特許における回転ドラム電極を参照)における場合のように、目標紡糸距離および電位は変化しない。可変の距離ではなく目標距離を維持することにより、細繊維ホイッピング時間をより大きく制御することが容易になるため、溶媒蒸発時間および細繊維縮小時間がより一定に維持される。
【0100】
このため、適切な細繊維生成装置を選択および/または開発することは、細繊維層の特性において有益であり得る。
【0101】
[(b)静電紡糸の電位および電極/媒体の間隔]
【0102】
相当量の細繊維の生成に関する別の要因は、静電界の電位である。例えば、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から市販されているNANOSPIDER型式NS−8A 1450の装置は、60,000ボルト電力供給により提供される標準的な静電界電位を有する。市販のEl−Marco NANOSPIDER型式NS−8A 1450の装置に関して、追加の電圧生成電力供給を設けることによりこの装置を改造し、60,000ボルトよりも高い静電界を達成することにより、細繊維製造の出力を増加させることができる。電位は、繊維サイズには大きく影響しないが、生成される繊維の量には著しい作用をもたらすことが見出されている。
【0103】
例えば、蟻酸および酢酸の溶媒をベースとする溶液からセルロース濾過媒体基体へのナイロン繊維の生成については、好ましくは少なくとも75,000または80,000ボルト、より好ましくは少なくとも95,000ボルトが、電気紡糸のために提供される。本発明のいくつかの実施の形態によれば、電界電位は、75,000〜130,000ボルト、潜在的にはそれ以上に設定してもよい。しかし、細繊維の製造物の体積がより低い場合はより低い電位で生成することも可能であり、および/または、電圧が通常はさほど重要でないようにより多くのセルを用いてもよい。
【0104】
正および負の両方の電力供給を含む電力供給を用いて、静電界差を生成してもよい。典型的には、収集電極は接地電位を受け、紡糸電極は電圧生成電力供給を受ける。しかし、反対に帯電された電力供給を収集電極に接続し、アースに対するいずれかの電極の電位もさほど高くする必要がないようにしてもよい。また、両方の電極を、アースに対して同じ電荷で、しかしそれらの間に電位差を伴って、昇圧することも可能である。このため、収集電極と放電紡糸電極との間の電圧差の見地からシステムを評価することが最も有用である。
【0105】
細繊維の生成は、一般に、個々の紡糸位置からTaylorコーンにおける細繊維ストランドの蒸発およびホイッピングが可能になるように、十分な距離を経て行われるべきである。好ましくは、濾過媒体基体は電気紡糸電極から、通常は少なくとも3インチおよび通常は約10インチ以下、典型的には4〜7インチだけ離す。例えば、ナイロン6高分子溶液について、目標距離は、非常に小さい繊維径を有する良好な細繊維生成のためには約5〜約6インチであるのが好ましい。好ましくは、収集電極または媒体(目標距離に対してかなり薄いのが典型的である)についての紡糸電極に対する目標距離が実効上または概ね同じであるように、濾過媒体は収集電極に接触した状態で延在する。
【0106】
本明細書における細繊維生成装置の実施の形態において示すものなどの特定の実施の形態によれば、この距離は一定に保つことができ、かかる場合、目標距離は、各電極セグメントが媒体上を並進するため一定に維持される(例えば、系統的に回転することで目標に対して接近および離間しないのが好ましい)。加えて、目標距離は、収集電極の構成にも関わる。例えば、図1および図7に示すように、収集電極は、蒸発した溶媒の吸引および除去を容易にするため多くの小さいオリフィスを有する大きい表面積を有する実質的に中実の多孔板とすることが可能である。表面積が大きいことは、目標距離を維持する助けとなる。(例えば、収集電極上の表面部の間で大きくジャンプすることが回避される)。
【0107】
[(c)高分子の選択]
【0108】
濾過アプリケーションは、湿気および熱(および/または冷たい環境)を伴うことが多い。例えば、車両の燃焼機関のための空気濾過アプリケーションは、高温または低温環境で動作し得るだけでなく、エンジンにより生成される熱、および高い湿気、霧、雨、雪、またはみぞれなど他の条件をも受け、湿気が空気ストリームとともにフィルタ内に容易に引き込まれる可能性がある。液体濾過要素も共存しなければならず、濾過対象の液体に溶解してはならない。また、一貫した品質の濾過媒体を経済的および商業的に大量生産することも、考慮すべき点である。
【0109】
多くの濾過用途についての本発明の好適な実施の形態は、水中においてまたは湿気を受けたときに自ずと溶解せずに、100°C以上までの温度を含む相当な温度の振れに耐える高分子を含む。かかる濾過用途において生じるであろうかかる環境条件に長期間さらされたときも、かかる高分子で構成された細繊維は、その濾過特性のすべてまたは少なくとも相当な部分を保持すべきである。
【0110】
例えば、本発明の特定の実施の形態は、これらの性質を満たすナイロン材料を含み、かかるナイロン材料は、ナイロン6およびナイロン6,6を含むがこれらに限定されない。例えば、ナイロン6材料は、本明細書に記載の実施の形態および実施例による100ナノメートル未満の著しい量の細繊維を含む細繊維に紡糸される。しかし、上で記載したように他の高分子材料も考えられる。
【0111】
[(d)溶媒の選択および高分子溶液の制御]
【0112】
一般に、高分子に対する溶媒分は、細繊維紡糸口金の形成を妨げるまたは妨害しない程度に高いことが所望される。溶液の割合が高すぎると、スレッドの形成よりもむしろ高分子溶媒のスパッタリングを生じさせてしまう可能性がある。しかし、溶媒の割合が大きいほど、一般に、より薄い高分子細繊維製品が得られる。溶媒分が高いと、より多くのスレッド紡糸口金が、紡糸電極から基体材料まで電気防止されているときに蒸発する。従って、制御すべき1つの要因は、溶媒の割合である。
【0113】
溶媒の選択は、また、選択された高分子に部分的に依存する要因である。単一の溶媒を用いてもよいが、導電性および表面張力を制御するため溶媒の組み合わせを用いるのが好ましく、一実施の形態によれば、少なくとも選択された高分子を溶解させるのに好適な高分子溶解剤と、高分子溶液の導電性および表面張力を調整する導電性制御剤とを含むことで、繊維の形成を制御して細繊維を生成する。導電性および表面張力制御剤は、塩、酸、および導電性に影響する他の作用剤を含んでもよい。一実施の形態によれば、導電性制御剤は、導電性および表面張力低減剤(表面張力を低下させ導電性を低下させる作用剤)を含む。表面張力および導電性が低いと、本明細書の実施の形態による著しく薄い繊維の形成に使用可能であることが見出されている。具体的には、導電性および/または表面張力を高くすると、細繊維スレッドが紡糸電極から収集媒体および電極に向けて早くジャンプすると考えられる。その結果、理論的には電気紡糸Taylorコーン状態においてホイッピングに費やされる時間が少なくなり、繊維サイズを引き下げる機械的作用が少なくなる。
【0114】
ナイロン6の実施の形態および実施例などのポリアミドについて、好適な溶媒には、溶解剤としての蟻酸と、主として導電性制御剤および表面張力剤としての酢酸とが含まれる。酢酸が潜在的なポリアミド溶媒として記載されており、酢酸は室温においてナイロンを分解しないためこの記載は厳密には正確でないが、酢酸を用いた場合、熱が要求されるもののナイロンは溶液から析出される。従って、溶媒の組み合わせは、本発明の実施の形態のいくつかによる重要な態様である。本例において、通常、蟻酸に対してより多くの酢酸を用いることが望ましい(例えば、50%を超える酢酸および50%未満の蟻酸)。例えば、約2/3の酢酸および約1/3の蟻酸を有する溶媒により、優れた繊維生成により100ナノメートル未満の望ましい薄さの細繊維が作製されることが見出された(本例における濃度レベルは:88%の蟻酸(すなわち、例えば88%の蟻酸および12%の水);および99.9%の酢酸(氷酢酸として知られる))。具体的には、純粋な蟻酸の溶媒から酢酸および蟻酸の組み合わせに移行した際、ナイロン6については細繊維サイズが大幅に縮小した。8〜20%の高分子を溶媒(すなわち、92〜80%の溶媒)に対して含む溶液が、良好な繊維を形成するために使用可能な範囲の例である。より好ましくは、約12%の高分子を含む溶液により、良好な繊維形成が得られ、望ましい薄い繊維が生成される。
【0115】
[(e)環境の制御]
【0116】
関わるさらに別の要因は、相対湿度および温度である。他の温度を用いてもよいが、工業生産上の理由から、および作業者の快適性の理由から、温度は、典型的な工場の温度範囲に関するのが好ましい。例えば、温度の例は、60°F〜80°Fとすることができ、72°Fが室温として典型的である。
【0117】
相対湿度は、溶媒の蒸発およびフラッシュオフレートに影響するため、より重要な要因である。湿度が高すぎると、十分な溶媒が蒸発せず、より厚い繊維となる。あるいは、湿度が低すぎると、溶媒の蒸発が早すぎる。溶媒の蒸発が早すぎると、繊維は、十分に薄くなることができず(ホイッピング作用を通じた機械力のためと考えられる)、より厚い繊維となり望ましくない(例えば、高分子繊維の析出が速すぎるため、機械的ホイッピング作用により繊維が縮小されない)。従って、湿度の環境制御は重要である。例えば、約40%〜約55%の相対湿度が使用可能な範囲である。ナイロン6の実施の形態に関して、44%前後の相対湿度(例えば、好ましくは42〜46%)を用いると、良好で非常に薄い繊維の形成が得られる。
【0118】
[(f)基体の接着]
【0119】
加えて、濾過用途については、繊維を濾過媒体基体に接着することが望ましい。その結果、および一般的なセルロース系の基体の場合、溶媒の一部が蒸発のため残った状態で細繊維を濾過媒体基体上に堆積させることが、細繊維層の基体に対する、溶媒タイプの結合、および/または、より良好な一体化を実現するために望ましい。接着は、単純に媒体上に指を走らせることによる、および/または、媒体に対する通常の摩耗または取り扱いによる、繊維層の剥離を防止するために十分であるべきである。接着は、少なくとも、Frey他の米国特許公開第2007/0163217号「セルロース/ポリアミド複合物」の開示および教示に従って、手で加えられる剥離力を防止するのに十分であることが好ましく、この出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
別々の細繊維結合/保持システムの利用が提案されているが(例えば、Barris他の米国特許第4,650,506号)、好ましくは、細繊維と濾過媒体基体との間に溶媒タイプの結合を設けることにより、新しく形成された繊維上に残る十分な溶媒を、その上に堆積させたときに濾過媒体基体に接触させるのが好ましい。蟻酸を用いるナイロンの例に関して、’217特許公開に記載のように、優れた溶媒結合を例えばセルロース系の媒体基体との間で生じさせることが可能である。しかし、接着剤、カバー層、およびトラッピング技術を(例えば、層間で)用いてもよい。
【0121】
[試験方法]
【0122】
以下の実施例を説明する前に、細繊維および濾過媒体のパラメータを評価するために有用であり得る試験方法に着目する。
【0123】
本明細書における効率は、大まかにはASHRAE規格52.2、より詳細には以下で説明する方法および装置による分別効率試験方法を用いて測定可能である。
【0124】
本明細書における試験結果について、分別効率方法では、ミネソタ州バーンズビルのパウダー・テクノロジー社(Powder Technology, Inc.)から入手可能な「ISO Fine」試験粉体(品番:ISO1212103−1)を利用した。この粉体は、一度の試験で異なる粒子サイズについての粒子捕捉効率を測定可能なように、段階的な粒子サイズのものを含んでいる。例えば、粒子サイズの濃度および分布を図17のグラフに示す。PALAS MFP2000(ドイツ国カールスルーエのPalas(登録商標)GMBHから入手可能)において、濾過媒体試験サンプル(上記装置で従来から用いられているような100平方センチメートルの円盤状媒体)に、120l/mで70mg/m3の塵埃濃度でISO FINE粉体を適用した。静電荷の読み誤りを防止ぐために、PALAS MFP2000には、塵埃上のいずれの電荷も中和するコロナ放電ユニット(CD2000)を設けた。この試験装置は、装置に内蔵された、圧力低下情報を同時に提供する圧力変換器を介して、圧力低下の読み取りを同時に、すなわち同じ動作パラメータ下で、提供するため、同じ共通の流量パラメータに基づいて圧力低下の測定と比較を行うことができる。
【0125】
細孔サイズ分布データは、規格ASTM−F316による細孔サイズ分布試験を用いて測定可能である。ここで実施した試験では、次の方法および装置により細孔サイズ分布試験を行った:PMI(ニューヨーク州イサカのポラス・マテリアル・インク(Porous Materials, Inc.))ブランドの毛細管流動ポロメータ−型番:CFP−1100AX−U−08182005−1446。
【0126】
本開示および請求項の文脈における細繊維「径(diameter)」とは、図18〜図19に見られるように、個々の繊維部分を走査電子顕微鏡(SEM)により観察および/または測定した繊維の幅または太さを意味し、それに言及するものである。一般に、測定は、横断する繊維または繊維部分の間に延在する繊維部分の中間領域で行うのが典型的である(例えば、図18〜図19のSEM画像の数値を参照)。一般に、繊維ストランドがともに延びる、交わる、または重なるところでは測定しない。本文脈および請求項における「直径(diameter)」とは、繊維が完全に丸形であることを意味するものでも、要求するものでもないが、一部またはすべての繊維は円形であってもよい。繊維の小さいサイズおよび技術上の制約を考慮すると、細繊維の真の断面形状がどのようなものであるかは現時点で未知である。繊維は略円形の断面を有すると想定されている。
【0127】
[試験例および/または製造例]
【0128】
以下の試験例において、最初の2つの例は、ミネソタ州ミネアポリスのドナルドソン・カンパニー・インクから入手可能な、出願日より前に市販されている濾過媒体製品の対照サンプルである。かかる対照サンプルは、比較を目的とするものである。媒体は、Chung他の米国特許第6,743,273号(または同じファミリー中の類似する関連特許)などのドナルドソンに譲渡された細繊維分野における1つ以上の特許出願に記載の方法に従って製造できると考えられる。水および/またはイソプロピルアルコールに溶解する傾向が見られることからして、細繊維は、ポリビニルアルコールの誘導体であると思われ、またはそのように考えられる。
【0129】
実施例3は、実施例4および実施例5に用いられる市販の濾過媒体基体の例である。実施例4は、図1〜図8に関して上で説明したビード付無端チェーンの実施の形態に従って製造されたものであり、実施例5は、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から入手可能なEl−Marco NANOSPIDER型式NS−8A 1450の機械で製造した濾過媒体複合物の実施の形態の観察に関する。
【0130】
[実施例1]
【0131】
ミネソタ州ミネアポリスのドナルドソン・カンパニー・インクから市販されている濾過媒体複合物製品に対して試験を行った。媒体はカートリッジに収容されていたので、試験のため濾過媒体サンプルをカートリッジから慎重に取り外した。観察したところ、濾過媒体複合物は、粗い濾過媒体基体材料と、その上に堆積させた細繊維層とを含んでいた。図18の走査電子顕微鏡画像に示すように、細繊維層中の細繊維の繊維径は100ナノメートル超が典型的であることが観察され、直径が100ナノメートル未満の細繊維は著しい量ではなかった。
【0132】
複合媒体は、斤量が71.03lb/3000ft2;Frazier透過性が13.5(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.3ミルであった。試験結果によれば、濾過媒体はMERV 14(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は362.87Paであった。
【0133】
実施例1についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図11および図13に示す。
【0134】
表2−細孔サイズ(μm)
【0135】
表3−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0136】
表4−分別効率(E)結果
【0137】
[実施例2]
【0138】
細繊維層の濾過特性をより良好に評価する目的で、実施例1の基体濾過媒体を試験した。具体的には、まず、ミネソタ州ミネアポリスのドナルドソン・カンパニー・インクから市販されている濾過媒体複合物製品のサンプルをイソプロピルアルコールに浸漬して、細繊維層を溶解し、これを除去した。細繊維は、イソプロピルアルコールに完全に溶解したようであったが、イソプロピルアルコールを溶媒として選択したのはこれが理由である。次いで、サンプルを乾燥させてイソプロピル溶媒を蒸発させ、その後、サンプルに試験を行った。
【0139】
基体媒体は、斤量が71.27lb/3000ft2;Frazier透過性が15.3(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.3ミルであった。試験結果によれば、濾過媒体はMERV 13(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は378.13Paであった。
【0140】
実施例2についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図12および図13に示す。
【0141】
表5−細孔サイズ(μm)
【0142】
表6−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0143】
表7−分別効率(E)結果
【0144】
[実施例3]
【0145】
実施例4の細繊維濾過媒体複合物のための基体材料として用いられた、無被覆で比較的低グレードのセルロース繊維材料基体濾過媒体に試験を行った。基体濾過媒体は、AFI−23N−4のブランド/モデル指定でオルストームから購入した。従って、実施例2で行ったようにイソプロピルアルコールに浸漬してサンプルを作成する必要はなかった。
【0146】
基体媒体は、斤量が59.8lb/3000ft2;Frazier透過性が23.4(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.4ミルであった。試験結果によれば、濾過媒体はMERV 12(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は242.63Paであった。
【0147】
実施例3についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図14および図16に示す。
表8−細孔サイズ(μm)
【0148】
表9−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0149】
表10−分別効率(E)結果
【0150】
[実施例4]
【0151】
セルロース系の基体層とナイロン6の細繊維層とを有する濾過媒体複合物を、実施例3の基体媒体を用いて製造した。複合媒体は、図1〜図8に関して上で説明したように、金属ビード付無端チェーン電極(1つのビード付チェーンセルを用いた実施の形態)で製造した。環境条件は、室温(例えば72°F)および相対湿度44%であった。細繊維は、氷酢酸2/3および蟻酸1/3の溶液(用いた蟻酸の濃度88%、酢酸の濃度レベル99.9%)にナイロン6を溶解させた12%ナイロン6溶液から製造した。
【0152】
95,000ボルトの電位を与えた。ビード付金属チェーン電極は、負の45,000ボルトの電源と電気的に結合し、収集電極は、正の50,000ボルトの電源に結合した。目標の間隔は、基体媒体が収集電極に接触して延びた状態で、ビード付金属チェーン電極と収集電極との間を5と1/2インチに維持した。
【0153】
図19の走査電子顕微鏡画像に示すように、細繊維層中の細繊維の繊維径は100ナノメートル未満が典型的であり、直径が100ナノメートル未満である著しい量の細繊維があることが観察された。何回かの試行および/またはいくつかの観察位置について、SEMによる観察によれば、約80〜90%の細繊維の直径は、50ナノメートル〜100ナノメートルであるのが典型的であった。
【0154】
複合媒体は、斤量が61.05lb/3000ft2;Frazier透過性が22.9(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.5ミルであった。試験結果によれば、複合濾過媒体はMERV 15(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は243.63Pa(例えば、実施例3の無被覆媒体に対して1%未満の差)であった。
【0155】
実施例4についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図15および図16に示す。
【0156】
表11−細孔サイズ(μm)
【0157】
表12−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0158】
表13−分別効率(E)結果
【0159】
[実施例5]
【0160】
セルロース系基体層とナイロン6の細繊維層とを有する濾過媒体複合物を、実施例3の基体媒体を用いて実施例4のパラメータにより製造した。ただし、異なる装置、すなわち、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から入手可能なEl−Marco Nanospiderの型式NS−8A 1450の機械を利用し、細繊維の製造量を増加させるために供給電圧を95,000ボルトに増加させる改造を施した。環境条件は、室温(例えば72°F)および相対湿度44%であった。細繊維は、酢酸2/3および蟻酸1/3の溶液(用いた蟻酸の濃度88%、酢酸の濃度レベル99.9%)にナイロン6を溶解させた12%ナイロン6溶液から製造した。電圧差95,000の静電界を与えた。紡糸電極と収集電極との間の目標の間隔を5と1/2インチとした(最も近接した点で測定)。何回かの試行および/またはいくつかの観察位置について、SEMによる観察によれば、約80%〜90%の細繊維の直径は50ナノメートル〜100ナノメートルが典型的であった。
【0161】
本明細書中で引用する公報、特許出願および特許を含むすべての文献は、各文献を個々に、具体的に示し、引用して組み込むかのように、また、その全体を本明細書に記載するかのように、引用して組み込まれる。
【0162】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本発明の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0163】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを予期しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例えば高分子溶液から繊維を静電紡糸することによって製造できる高分子細繊維、同繊維に関わる方法、および/または同繊維を組み込んだ新しい濾過媒体複合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
収集電極と紡糸電極との間の電圧差により生じる電界を介して静電紡糸(electrostatic spinning)(「電気紡糸(electro-spinning)」としても知られる)により高分子溶液から細繊維を製造することが知られている。例えば、米国特許第6,743,273号に示されているように、高分子溶液は回転エミッタ形態の紡糸電極に圧送されるが、そこではポンプ溶液がリザーバから圧送されて、エミッタの孔を強制的に通過させられる。通過すると、グリッドとエミッタ間の静電電位により電荷が付与され、液体は薄く細い繊維として「紡糸」され、基体上で効率層として収集される。このプロセスで、溶媒は細繊維から蒸発し、それによりフライト中の繊維の直径が小さくなる。
【0003】
静電紡糸装置の別の例が特許公開US2006/0290031号およびWO2006/131081号に示されている。両出願に開示されている紡糸電極は、いくつかの異なる形態を取り得る設計の回転ドラム体である。ドラムを、高分子溶液リザーバに浸漬するように配置し、収集媒体の経路に対して垂直な軸を中心に回転させる。ドラムを高分子溶液を通して回転させることにより、帯電電極の紡糸表面は高分子溶液で被覆される。ドラム体の様々な変形が両特許公開を通じて示されており、それらには、複数の先端を提供することで細繊維が生成される個別の紡糸位置が設けられるものが含まれる。
【0004】
さらに、濾過媒体のためのより具体的な細繊維に関する米国特許公開第2007/0163217号があり、この出願は、本願と発明者が共通であるため、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。’217公報は、細繊維層と基体層との間に溶媒結合を有する濾過媒体セルロース/ポリアミド複合物を提供する。この公報に開示されているように、セルロース/ポリアミド複合物は、高分子溶液を圧送して小さいノズルに強制通過させ、十分な残留溶媒がある状態でセルロース基体材料上に堆積させて溶媒結合を提供することで、基体と細繊維層との間の層間剥離を防止する。かかる層間剥離、すなわち細繊維層の一部の喪失は、濾過特性を変化させてしまうので望ましくない。この公報における実施例によれば、ポリアミドから製造された細繊維の繊維サイズは、公報に記載された方法により120ナノメートル、300ナノメートル、および700ナノメートルで製造された。’217公報に開示されているポリアミドおよびセルロース濾過媒体複合材料は、この公報に示された細孔サイズ分布ヒストグラムにより示されるように、特定の濾過特性を提供する。本願および本発明は、従来技術の発展および進歩に関する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、個々または組み合わせにより特許性を有する、主張可能ないくつかの態様があり、かかる態様には以下が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0006】
本発明の第1の態様は、透過性媒体の基体層と、基体層に担持される細繊維層であって、細繊維層は、100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を含む、細繊維層とを備える濾過媒体を対象とする。100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維とは、100ナノメートル未満の直径を有する細繊維の百分位数、平均繊維径、および/または中間繊維径などの異なる代替法において定量化可能である。
【0007】
好ましくは、基体層と細繊維層間に溶媒結合を提供することで、細繊維層の層間剥離を、濾過用途での使用に対して十分に防止する。
【0008】
本発明の別の態様は、一つには細繊維層に由来する効率特性の改善を対象とする。本態様によれば、濾過媒体は、透過性媒体の基体層と、基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え、基体層と細繊維層との組み合わせの効率は、他の層は別として、0.75から1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90パーセントである。加えて、これは、細繊維層と基体層との組み合わせを基体層単体と比較した場合、圧力低下の差が15パーセント未満(より好ましくは、それよりはるかに少ない)であることと同時に達成される。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、より制御された細孔サイズ分布に関する。詳細には、細孔サイズ分布が制御された濾過媒体は、透過性媒体の基体層と、基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え、かかる層の組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50パーセントの細孔サイズ分布を有することができる。
【0010】
本発明の別の態様は、高分子を溶媒に溶解させて高分子溶液を形成するステップと、電極から高分子溶液からの細繊維を電気紡糸するステップと、細繊維を基体層上に堆積させるステップと、少なくとも1つの高分子および少なくとも1つの溶媒の選択を含む紡糸パラメータを制御して100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の細繊維を生成するステップとを含む、濾過媒体の形成方法を対象とする。
【0011】
さらなる態様では、表面張力および/または導電性制御剤と組み合わせて溶解剤が利用される。例えば、溶媒の混合物(例えば、ナイロンについての酢酸および蟻酸の溶媒の組み合わせなど)を利用して、より薄い繊維を形成することができる。
【0012】
本発明の他の態様、目的および利点は、添付図面を参照した、以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に組み込まれ、その一部を成す添付図面は、本発明のいくつかの態様を示し、詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。図面は下記の通りである。
【0014】
【図1】本発明の実施の形態による濾過媒体の製造に用いることができる細繊維生成装置の部分側立面略図である。
【0015】
【図2】図1に示す装置の部分平面略図である。
【0016】
【図3】本発明の実施の形態に従う、図1に示す略図に組み込んで用いることができる、複数の高分子溶液槽および電気紡糸電極、ならびにそれらを駆動するための適切な駆動機構の等角図である。
【0017】
【図4】図3に示す装置の一部拡大図である。
【0018】
【図5】駆動ユニットの例をより良好に示す、図3に示す装置の一部の異なる拡大等角図である。
【0019】
【図6】図3に示す装置の個々のユニットの1つの拡大側面図である。
【0020】
【図7】図3に示す電気紡糸セルまたはユニットの1つの断面図である。
【0021】
【図8】動作中に個々のチェーンセグメントの各々の高分子溶液被覆から少なくとも2つの紡糸位置をどのように形成するのが典型的であるかを説明するために用いる、前述の図面において用いられる無端チェーン電極の一部の近接説明図である。
【0022】
【図9】本発明の代替の実施の形態によるサーペンタインベルト電気紡糸装置の斜視図である。
【0023】
【図10】動作中にベルトを高分子溶液で濡らすためのニードル投与位置が単一の、無端ベルトを駆動する2つのガイドホイールプーリを伴う本発明のさらに別の代替の実施の形態を示す。
【0024】
【図11】ドナルドソン・カンパニー(Donaldson Company, Inc.)から市販されている製品による細繊維および基体濾過媒体複合物を含む濾過媒体の、既知の従来例についての細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0025】
【図12】既知の従来例の細繊維被覆の効果を示す、図11で用いた媒体の濾過媒体基体(国際規格EN−779によりサンプルをイソプロピルアルコールに浸漬することにより細繊維層が除去されている)についての細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0026】
【図13】図11および図12についての無被覆媒体と被覆媒体との比較(細繊維層を有する媒体の方が高効率)を提供する分別効率グラフデータを示す。
【0027】
【図14】本発明の実施の形態の実施例において基体濾過媒体として用いられる濾過媒体基体(細繊維層が付加されていない)についての細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0028】
【図15】本発明の実施例および実施の形態に従って細繊維層が付加された濾過媒体基体(図14において用いたもの)を備える濾過媒体複合物の細孔サイズ分布ヒストグラムである。
【0029】
【図16】図14および図15について用いた細繊維で被覆されていない媒体と細繊維で被覆されている媒体との比較(細繊維層を有する媒体の方が高効率)を提供する分別効率グラフデータを示す。
【0030】
【図17】本明細書における分別効率試験に用いたISO試験用微粒ダストの塵埃粒子の濃度を示すグラフ図である。
【0031】
【図18】ドナルドソン・カンパニーの既知の濾過媒体例(例えば、試験結果を図11および図13に示す媒体)の細繊維層を40,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡画像であって、本発明との比較目的で、測定観察値を画像上に示している。
【0032】
【図19】本発明の実施の形態に従って製造された細繊維層例(例えば、試験結果を図15および図16に示すもの)を40,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡画像であって、測定観察値を画像上に示している。
【0033】
本発明は、ある好ましい実施の形態と関連付けて説明されるが、それら実施の形態に限定する意図はない。反対に、意図するところは、全ての代替物、変形、均等物を、添付の特許請求の範囲に定義されているように、本発明の精神と範囲内に含まれるものとしてカバーすることである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示おいて、出願人は、まず、濾過媒体を製造するための好適な細繊維生成装置について開示し、次いで、かかる装置により実現できる新しい細繊維、濾過媒体、および方法について説明する。系統立てて読み易くする目的で、セクションおよびサブセクションに異なる標題を付した。まず、本発明の実施の形態に従って細繊維および濾過媒体を作製可能な細繊維製造装置の実施の形態に着目する。
【0035】
[細繊維製造装置]
【0036】
説明のために、本発明の実施の形態に従って細繊維および濾過媒体を製造する細繊維製造装置の実施例を、濾過媒体製造システム12の一部である細繊維製造装置10としての部分概略形態で、図1および図2に示す。製造システムは、アンワインド装置16上に配置した濾過媒体基体ロール14の形態で示す細繊維収集媒体基体の交換式マスターロール14を含む。連続基体シート18は、細繊維を収集するため濾過媒体基体ロール14から細繊維製造装置を通じて送られ、濾過媒体基体層24および高効率細繊維層26を有する濾過媒体ロール22上にリワインド装置20により巻き取られる。マスター基体ロール14は、空になってから、必要に応じて新しい濾過媒体基体ロールに交換される。
【0037】
図示のように、媒体のシート18は、概ね入口領域32から出口領域34まで細繊維製造装置10を通じて第1方向30に沿って延びている。濾過媒体シートの両方の側部36は、自ずと第1方向30に対して略平行に延びている。
【0038】
細繊維製造装置は、第1および第2電極間に生成される静電界を含む一方、細繊維が生成される1つ以上の紡糸電極40と、細繊維が静電界により提供される力を受けて引き寄せられる収集電極42とを含む。図示のように、通常は細繊維が収集電極42上に堆積せずに濾過媒体シート18上に堆積するように、媒体シート18を紡糸電極40と収集電極42との間に延在させるのが普通である。収集電極42は、好ましくは、スレッド収集位置を最大数にするように相当な表面積を有する導電性多孔板である。多くの小孔46を穿孔板に形成することにより、蒸発した溶媒を施設外などの外部位置に排出するブロワ駆動換気フードシステム48を通じて、蒸発した溶媒を真空吸引(vacuum suction)することが容易になる。(概略的に示すように、収集電極42は、換気フードシステム48と同様に、少なくとも媒体の幅に及ぶとともに、紡糸電極40をひとまとめにした長さに及ぶ。濾過媒体基体層は、収集電極42に接触した状態で延在するとともに、重力に抗する吸引圧力を受けて収集電極42に支持されている。この支持配置は、図示のように平坦で平面状であるのが好ましい。
【0039】
静電界を生成するため、高電圧源が設けられ、かかる高電圧源は、電極40と42の間に10,000〜150,000ボルト以上(濾過媒体用細繊維の製造にとって、より好ましくは75,000〜120,000ボルト)のオーダーの高電圧差を発生させるように、電極40および42の少なくとも一方に接続されるが、他の電圧範囲も可能である。収集電極42は、普通には単純に接地されるが、紡糸電極が接地電位に対して必ずしもかかる高電位を有さなくてもよいように、電圧生成源により収集電極に対して接地電位以外の電位を与えてもよい。いずれの場合も、電圧源は、静電界を通じて高分子溶液から細繊維を紡糸するために十分な電圧差を第1および第2電極間に発生させるように配置される。
【0040】
一実施の形態において、装置は単一紡糸電極40を含む。例えば、図7の単一電極を用いてそれ自体の装置を形成してもよい。その他の図に示すように、複数の紡糸電極40を入口領域32と出口領域との間に設けることができる。1つ以上の紡糸電極を、ユニットとして個々の細繊維製造セル50に組み込んでもよい。例えば、図1〜図3に示すように、入口領域と出口領域との間に複数の細繊維製造セル50を配置することが可能である。細繊維製造セル50の各々は、電線52を介して高電圧源44に結合され、セルの各々は、収集電極42に対して同じ電位差を受ける。
【0041】
個々の製造セル50のさらなる詳細について説明する。図7を参照すると、各セル50は、プラスチック製の有壁箱状の容器構造の形態であってもよい浸漬槽54を含む。浸漬槽54の各壁56は、高電圧源44から槽54に伝えられた電圧の不意の放電を防止するため、プラスチックなどの絶縁材料(ただし、使用予定の溶媒に対して可溶性がないプラスチックまたは他の絶縁材料)から構成される。浸漬槽54は、細繊維の電気紡糸にとって好適な溶媒と好適な高分子との高分子溶液58を含む。
【0042】
プラスチック壁56の1つには、壁56の1つを貫通して延び、電線52を介して高電圧源44に接続される金属の電気端子60が装着されている。端子60は、高分子溶液58と導通することにより、溶液を通じて電位を紡糸電極40に伝えるために溶液を帯電させる。
【0043】
加えて、高分子溶液を周期的に補充するため、一方向チェック弁を含む従来からのクイック接続カップリング62などの流体継手を壁56の1つを貫通して装着することで、かかる溶液のさらなる追加による高分子溶液の周期的な補充が可能になる。流体計量ユニット64およびリザーバ66を含み、槽に高分子溶液をさらに周期的に補充する流体補充システムを接続してもよい。制御弁または個々の計量ユニット(各ユニットを各セルの専用とする)を設けることで、各セルにおける溶液を個々に制御してもよい。
【0044】
図示のように、紡糸電極40は、ストランドの形態を呈してもよいし、実施の形態で示すように、無端チェーン70の形態をした無端ストランドであってもよい。無端チェーン70は金属製または他の導電材料製であるのが好ましく、それにより無端チェーン70は難なく導電性を呈し、かつ高分子溶液58により、およびそれを通じて提供される電気的導通により高電圧源44との間で電気回路を構成する。図8に最良に示すように、無端チェーン70は、複数の個別セグメント72を含むのが好ましい。個別セグメントの各々は、間隙74とスペーサセグメント76とにより、隣接する別のセグメントから離間して接続されている。本実施の形態において、セグメント72はビード付チェーンを形成するビードであり、各ビードは略球状のボール78の形をとる。例えば、ステンレス鋼製のビード付チェーンを紡糸電極とすることができる。
【0045】
無端チェーン70は、浸漬槽54の離間する対向両端にある可動ガイドホイール82の形態をとってもよい2つのガイド周りの無端経路80に沿って装着される。ガイドホイール82は、図示のようにシーブ状構造であってもよく、金属、プラスチック、または他の好適な材料で構成できる。ガイドホイール82は、プラスチック材料の軸などの絶縁軸84に回転可能に装着されることで、浸漬槽54内の電位を絶縁する。軸84は、浸漬槽54の壁56に対して回転可能である。無端チェーン70は、ガイドホイール82に巻き回され、高分子溶液58から露出した直線紡糸経路86を含む。紡糸経路86は、収集電極42に最も近接して対面している。また、無端チェーン70は、無端チェーンのセグメントを周期的に再生させる目的で、(すなわち、チェーンを高分子溶液に浸漬し、通過させることにより)浸漬槽54および高分子溶液58を通して延びる直線戻し経路88を有する。どの時点においても、チェーンの一部は溶液で再生されており、一部は電気紡糸のために露出している。
【0046】
無端チェーン70をガイドホイール82周りの無端経路80に沿って駆動するために、出力軸92上に回転出力部を有する回転モータ90を備えた好適な駆動ユニットが設けられる。出力は、次いで、伝動装置を通じて伝達軸94に伝達され、伝達軸94により、チェーンおよびスプロケット機構96を介して電気絶縁駆動装置98に伝達される。これらの駆動装置98は、永久磁石102を収容する、分離しているが近接して配置されたハウジング100(図6参照)を含み、ハウジング100は、動作時にハウジング100の一方が回転すると、両ハウジング間の永久磁石102の散在した関係およびそれらの永久磁石により生成される反発力または吸引力により他方のハウジング100が回転するように、図示のようなオフセット配置(磁石が互いの間に介在している)に構成されている。駆動ハウジング100の一方を、各浸漬槽セルのガイドホイール82の少なくとも一方に装着されることで、ガイドホイールは、無端チェーン70を無端経路80周りに駆動する駆動ホイールを兼ねるようになっている。勿論、他の適切な駆動ユニットを設けて無端チェーン70を無端経路80周りに駆動してもよい。
【0047】
図1、図2、および図7から分かるように、無端チェーン70の直線紡糸経路86部分は、第1方向30に対して好ましくは横断する(すなわち、垂直または対角もしくは斜めなどその他横方向のいずれかである)第2方向104に沿って移動するため、第1方向に対して横断するように延在する。その結果、媒体のシートが入口領域32から出口領域34まで第1方向30に沿って移動するに従って、無端チェーン70の個々のセグメント72が、対向する側部36の間を基体シートを横切って第2方向に沿って移動する。
【0048】
加えて、図7に最良に示すように、個々のセグメント72が直線紡糸経路86の全体にかけて一端から他端まで移動する際、収集電極42および/または媒体シート18からセグメント72までを一定の離間距離106とすることが可能である。かかる一定の目標距離には、細繊維の製造に大きく影響しない無端チェーンの弛みによる軽微なばらつきがあってもよい。その結果、紡糸目標離間距離106は、厳密に制御可能で、回転ドラムアプリケーションでの場合のように幅広いばらつきが生じることはない。直線紡糸経路86に沿う無端チェーンの望ましくない弛みが存在する限り、経路に沿って中間ガイド支持体(不図示)を設けることが可能で、かかる中間ガイド支持体によって、無端チェーン上の高分子被覆を周期的に再生してもよい。かかる追加の中間支持装置は、はるかに長いスパンにかけての電気紡糸を所望する場合に設けることができる。中間における再生は、高分子溶液をニードルからチェーン上に圧送することにより、および/または、溶液をすくい上げて無端チェーン上に送り込む搬送ホイールを通じて、実現することも可能である。いずれの場合も、紡糸経路に沿う無端チェーンの弛みが軽微である限り、本発明および本明細書に付帯する請求項の意味および文脈における文言上は、一定の離間間隔106を含むと考えられ、紡糸経路86に沿う移動については、本発明および本明細書に付帯する請求項の文脈における文言上は、直線的であると考えられる。
【0049】
上記から明白であるように、直線紡糸経路86および無端チェーン70の移動方向は、収集媒体シート18の移動方向30に対して横断している。好ましくは、および図示のように、この横断配置は垂直であるのが好ましいが、90°以外の角度を含む他の横断配置を用いてもよいことは言うまでもない。従って、本明細書の文脈において、横断とは、垂直を含むがそれを意味するのではなくより広い意味を有し、概ね収集媒体シート18の対向する側部36の間の方向に略横方向に移動する電気紡糸生成のためのストランドも含むことを意図している。
【0050】
動作モードの実施の形態によれば、動作中、濾過媒体収集シート18は、第1方向に沿って連続的に進行するとともに、無端チェーン70は、無端経路80周りを連続的に移動する。しかし、様々な目的のために所望される場合は、いずれも間欠動作とすることが可能であることは言うまでもない。
【0051】
動作中、図7および図8に示すように、直線紡糸経路86に沿う無端チェーン70は、少なくとも1列(図では2列)のアレイ状に直線配列された複数の紡糸位置108を含む。紡糸位置は、間隙74により隔てられ、かかる間隙74は、本実施の形態の場合、紡糸位置108が直線紡糸経路86に沿って均等に離間されるように、均等に離間させた間隙74である。これは、球状ボール78の構成では、細繊維110の形成のための2つの紡糸位置108が生じるのが典型的であるからである。図示のように、紡糸位置108は、球状ボール78の対向側にあり、電気的反発力(例えば、帯電した紡糸スレッドは互いに反発する傾向がある)により直線紡糸経路86に対して垂直な横軸112に沿って離間されている。従って、個々のセグメント72の湾曲形状は、紡糸位置間を所望される間隔とし、各個のセグメント当たり複数の紡糸位置を設けるのに有益であり、それにより、より細い繊維を製造し、細繊維の製造の均一性を制御できる。しかし、紡糸位置を形成するために鋭利な縁部またはセグメント化されていないストランドを提供するなど、他の構成としてもよいことは言うまでもない。
【0052】
水を溶媒として用いる水溶性高分子の場合、装置を、覆っていない状態で用いてもよい。しかし、開示の実施の形態は、浸漬槽の、さもなければ開放された端部118を実質的に覆うように配置された中心カバー116を提供することにより、伝統的な浸漬システムに対して顕著な利点を提供する顕著なオプションの好適な特長を有する。この配置によれば、カバー周りで駆動される無端チェーン電極が、浸漬槽内に収容されカバーにより実質的に浸漬槽に封じ込められた第1部分と、露出され細繊維を生成可能な第2部分とを含むことが分かる。カバー116は、図示のようにバネ電極の異なる部分の間に介在させ、電極の浸漬を実質的に閉じ込めることが可能である。カバー116は、離間する両ガイドホイール82間に実質的に延在し、本実施の形態では、ガイドホイールを受け入れるとともに無端チェーン70が通過できる開口を提供するガイドホイールスロット120を含んでもよい。本実施の形態の場合、セル50当たり2本の無端チェーン70が含まれ、各無端チェーン70に2つのガイドホイール82のみが提供されるため、合計で4つのスロット120を設けることができる。他の支持装置が所望される、または必要とされる場合は、追加のガイドホイールのための追加のスロットを設けてもよい。カバー116は、高分子溶液が揮発性溶媒および/または水以外の溶媒を伴うときに特に有益である。例えば、特定の溶媒材料は、水よりも早く蒸発し得るので、望ましい高分子対溶液比の維持がより困難になる。カバー116により、いずれの瞬間においても外部に露出した溶媒の量が最小化され、それにより溶媒ロスが最小化される。これは、材料の節約および環境的視点からもより有益であろう。
【0053】
例えば、図1〜図8の開示によるカバーを有する無端ビード付チェーンの実施の形態を、カバーのない構成を有する市販装置、すなわち、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.(El-Marco, s.r.o.)から入手可能なEl−Marco NANOSPIDER型式NS−8A 1450の装置と比較したところ、16時間の試験期間にわたり顕著な溶媒の節約を示した。詳細には、蟻酸1/3および酢酸2/3の溶媒を用いるナイロン6などの12%高分子溶液(高分子対溶液比)から高分子細繊維を紡糸する際、浸漬槽における溶液を12%に維持するため、エル−マルコ装置の覆われていない浸漬槽における局所的な高分子溶液の補充については、蒸発した溶媒のロスにより、大いに希釈された高分子溶液(より多くの溶媒を含む)を浸漬槽に補充することが要求された。具体的には、エル−マルコ装置には、溶媒を多く含む補充溶液である2%溶液が必要であった。一方、実施の形態では、溶媒の蒸発が少ないため、より多くの高分子を含む溶液である7%補充溶液で12%高分子溶液の維持が達成された。この比較では、装置のパラメータのすべてが等しいわけではないことを述べておく(例えば、とりわけ、電極の構成および駆動が異なり、収集媒体流量が異なり、本発明の実施の形態では、ドラム状電極の回転を収容する必要がないため収集媒体の移動方向において浸漬槽をより薄くできることを考慮すると、浸漬槽の容器サイズがより小さい)。
【0054】
蒸発は大部分が利用可能な表面積(ならびに表面攪拌および空気流(例えば電極の浸漬部の入口および出口領域周辺)など)に関することを考慮したとしても、溶媒の節約は、主として、本明細書において開示されている槽および電極を覆う手法によるものである。例えば、図1〜図8の実施の形態では、高分子溶液の表面、および電極浸漬の入口と出口位置(攪拌エリア)も実質的に覆われている。従って、他のパラメータは、蒸発ロスに対して著しく影響しているようには見えない。比較した装置において、溶媒蒸発についての節約は、60%以上に達し得ると算出された。この利点の多くは、浸漬中の電極を覆ったこと、および高分子溶液を実質的に閉じ込めたことによるものと考えられる。従って、好ましくは、十分な覆いを設けることにより、溶媒ロスを少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%削減する。
【0055】
一実施の形態を実装する際、カバー116を浸漬槽54の壁にねじなどで堅固に締結することが可能である。カバーの構成および取付は、電極の構成に依存し得る。他の配置または他の種類の電気紡糸システムも可能である。好ましくは、カバーにより、高分子溶液の溶媒からの蒸発が、無カバー電極紡糸装置と比較して少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%削減される。例えば、上記実施例では、溶媒のおよそ3分の2の節約が実証されている。
【0056】
さらに、図示の実施の形態は、セル50の対向端に、カバー116の上方に延在する壁延長部124に装着された端部カバー122を含み、端部カバー122は、無端チェーン70の対向端の上方に位置してガイドホイール82の上方に配設される。端部カバー122も、溶媒の蒸発を低減し、また、細繊維の製造スパンを制限するシュラウドとしての役も担う。図示のように、対向端部カバーの内縁の間の端部カバースパン126は、対向する側部36の間に定義された対応する媒体シート18の幅とほぼ同じであり、好ましくは媒体シート18の幅よりも少し長い。細繊維製造装置10を通じて延在し得る収集媒体シート18の異なる幅を収容するためスパン126を調整できるように、端部カバー122は、調整可能であり、および/または、他のより長い端部カバーと相互交換可能であってもよい。
【0057】
図9を参照して、本発明の代替の実施の形態を、多くの点において第1の実施の形態と同様の細繊維製造装置140として示す。例えば、本実施の形態は、高分子溶液で濡らされ収集媒体に対して一定間隔の紡糸位置を維持可能なストランドを同様に用いる。さらに、本実施の形態は、紡糸電極を提供する無端経路周りに駆動される無端ストランドも含む。従って、より際立った差違のいくつかについて詳細に説明する。
【0058】
本実施の形態において、細繊維製造装置は、複数のガイドホイール144周りの無端経路で駆動される無端サーペンタインベルト142を含む。サーペンタインベルト142は導電材料製であるのが好ましく、紡糸電極を提供するため図示のように連続的な無端金属バンドの形態を呈してもよい。サーペンタインベルト142は、各々が複数の紡糸位置を提供する、隣接するガイドホイール144の間のいくつかの直線セグメント146を含む。一般に、収集電極に最も近接して配設された縁部148が、紡糸位置を提供する。この縁部148は、複数の個別の均等に離間する鋭利な縁部(不図示)を提供するため鋸歯状とすることが可能であり、および/または、縁部148に沿って局所的な高分子溶液流体リザーバを提供するためポケットその他を構成することができる。好ましくは、ガイドホイールは、ベルト142上の孔152および他の同様の位置決め構造に係合する歯または他の位置決め構造を含み、一定の間隔が望ましい場合は、縁部を一定の間隔に維持することにより一定の離間距離106を維持する。
【0059】
サーペンタインベルト142は、電圧源により静電界を生成し、それにより紡糸電極としての役を担う。ベルト142に沿って高分子溶液を提供するため、本実施の形態は、サーペンタインベルト142の縁部148に隣接して離間する制御オリフィス155を有する1つ以上のニードル154を含む濡れ供給システムを含む。加えて、ニードルは、リザーバ158からの高分子溶液を配給するポンプ156により実現される加圧高分子溶液源に、流体線路に沿って接続される。従って、ストランドの生成は、必ずしも浸漬により行う必要はなく、代替として、本実施の形態に従って他の手段において濡らすことにより行うことができる。加えて、本実施の形態は、浸漬槽において電極を浸漬させる能力も提供可能である。例えば、サーペンタインベルトの柔軟な性質により、サーペンタインベルトの各部分を、水平方向ではなく垂直方向に延在するように配置することが可能である。代替として、収集媒体を水平方向ではなく垂直方向に延在するように配置した状態で、右手部分を、高分子溶液を含む浸漬容器に浸漬させてもよい。
【0060】
図9の実施の形態に大きく類似する細繊維製造装置160である本発明の第3の実施の形態を図10に示す。従って、説明は限定する。本実施の形態は、同様に、ニードル制御オリフィス、ポンプ、および高分子溶液リザーバを備える高分子供給システムを用いることが可能である。本実施の形態も、無端ストランドを用い、かかる無端ストランドは、本実施の形態では、2つのプーリ164周りで駆動されるより単純な金属バンド162の形態を呈する。繊維の生成は、収集媒体(不図示)に最も近接して配設されることを意図する縁部166から得ることができる。また、本実施の形態は、バンド162の両方の直線セグメント168が繊維の製造のために配置され、高分子溶液に浸漬されないという点を除き、第1の実施の形態に大きく類似する。セグメント168の各々を一定の距離に維持する必要がないことに留意すべきである。例えば、収集媒体に対して異なる距離に配置された、異なる繊維生成紡糸電極ストランドを有し、異なる特性の異なる繊維を生成することが有益であるかもしれない。本実施の形態において、プーリ164は、シーブまたは他の位置決め構造の形態を呈することで、収集媒体に対する縁部166の位置決めを維持してもよい。
【0061】
好適な装置を説明してきたので、ここに、上で開示したまたは他の装置により製造可能な新しい濾過媒体、細繊維および方法について述べる。
【0062】
[濾過媒体一般]
【0063】
液体流および気体流(例えば空気流)などの流体ストリームは、流体ストリームに含まれる望ましくない汚染物質であることが多い微粒子を運ぶことが多い。流体ストリームから微粒子の一部またはすべてを除去するためフィルタが一般に用いられる。例えば、幅広い用途で気体ストリームを濾過するために空気濾過システムが用いられる。かかるシステムの例には、より一般的な空気濾過用途のいくつかを挙げると、燃焼機関吸気システム;車両キャブ吸気システム;HVAC(暖房、換気、および空調)システム;クリーンルーム換気システム;フィルタバッグ、バリア布、織布を用いる種々の産業用途;発電システム;ガスタービンシステム;および燃焼炉システムなどがある。同様に、液体濾過も幅広い用途に関わり、より一般的な濾過対象の液体のいくつかを挙げると、水、燃料、冷媒、油、および作動流体などがある。
【0064】
濾過媒体には、典型的には、表面捕集媒体(障壁濾過としても知られる)および深さ媒体の2種類がある。表面捕集媒体は、一般に、媒体の表面上の粒子を濾過ケーキと呼ばれることもある薄層において捕らえる。フィルタケーキ層は、多くの場合、濾過媒体上の薄皮として形成され、通常、比較的軽い機械力で剥離することが可能である。反転パルスアプリケーションなどのいくつかのアプリケーションにおいて、フィルタケーキは、空気の反転パルス噴射(または他の機械力の印加)により濾過媒体の表面から自動的に吹き飛ばされ、廃棄物レセプタクルにおいて収集される。多くの場合、フィルタは、濾過ケーキが十分に蓄積した後に単純に交換される。他方、深さ媒体は、媒体の深さを通じて作用し、粒子を媒体の「深さ」の内部に捕らえる。深さ媒体は、媒体が占める体積すなわち深さの全体を通じて微粒子を捕集する。
【0065】
濾紙は、表面捕集媒体の広く知られる形態である。一般に、濾紙は、流体ストリームに対して略横断するように配向されたセルロース繊維、合成繊維、および/または他の繊維の厚いマットを備える。濾紙は、一般に、(1)流体流に対して透過性を有し、(2)特定のサイズよりも大きい粒子の通過を妨害する十分に細かい細孔サイズを有し、(3)濾過システムまたはアプリケーションの流体要件を満たすために十分な流体の通過を可能にする適切な孔隙率を有する。流体が濾紙を通過する際、濾紙の上流側では拡散および妨害作用が生じ、選択されたサイズの粒子が流体ストリームから捕集され、保持される。
【0066】
濾過媒体の1つの一般的なパラメータ特性には、濾過媒体の「効率」がある。効率とは、微粒子を濾過せずに媒体を通過させてしまうのでなく、微粒子を捕らえる媒体の性質である。別の一般的な特性には、伝統的にしばしば媒体の孔隙率に関連付けられてきた、媒体にまたがる圧力低下である。圧力低下とは、濾過媒体が流体流に対してどれほど制限的であるかに関する。典型的には、細孔サイズが大きいほど、流体流が大きくなるが、より多くの微粒子を通過させてしまうことにもなる。その結果、多くの場合、効率は圧力低下と相反する。詳細には、大量の微粒子を捕らえることが望ましいことが多い一方、かかる高効率を提供するには媒体の制限、すなわち媒体にまたがる圧力低下を増加させるという望ましくない作用が生じることが多かった。
【0067】
効率とは、初期効率、すなわち製造後であって微粒子を捕集する使用前の濾過媒体の効率を意味し、それに言及することが多い。使用中、濾過媒体は、塵埃ケーキとして、および/または、それ以外の方法で、媒体内に微粒子を捕らえ、回収する。これらの濾過除去された微粒子は、媒体における大きい孔を塞ぎ、それによりさらに小さい粒子が通過するための孔を妨げ、それにより時間を経て媒体の効率を初期効率よりも大きい動作効率に増加させてしまう。しかし、流体流経路を塞ぐことにより、かかる濾過除去された微粒子は、また、流体の通路を無効化または部分的に目詰まりさせ、それにより媒体にまたがる圧力低下を増加させ、流体流に対する制限を強めてしまう。
【0068】
通常、フィルタの耐用寿命は、フィルタにまたがる圧力低下により決定される。より多くの粒子が流体流から濾過除去され、濾過媒体により捕らえられるに従って、濾過媒体の流体流に対する制限は強まる。その結果、濾過媒体にまたがる圧力低下は高まる。最終的に、媒体は制限が強すぎるものとなり、所与の用途の流体ニーズに対して不十分な流体流となってしまう。フィルタ交換間隔は、かかる事態(例えば、流体流が不十分な状況に達する前)に概ね一致するように算出されている。また、フィルタ交換間隔は、媒体にまたがる圧力低下負荷を測定するセンサにより決定してもよい。
【0069】
フィルタ業界でしばしば用いられる濾過媒体のための1つの有用なパラメータは、ASHRAE規格52.2による報告MERV(最小効率報告値)特性である。これは、圧力低下抵抗に対する効率の測定値を含む。一般に、MERV値が高いほど濾過媒体のグレードが高いとされ、より高価であるのが普通である。例えば、次表にMERV報告値要件を記載する。
【0070】
表1−最小効率報告値(MERV)パラメータ
【0071】
表面捕集濾過の場合、塵埃ケーキの形成に伴う1つの問題は、塵埃ケーキが速やかに蓄積し、フィルタの耐用寿命に早くに達してしまう点である。そのため、濾紙は、多くの場合、プリーツもしくは溝を設けるか、または他の同様の集積方法で構成することで、所与の体積についての媒体量および媒体表面積を増加させる。このため、本発明の表面捕集の実施の形態による細繊維被覆媒体は、典型的には、プリーツもしくは溝を設けるか、または他の好適な濾過要素構成方法により集積させることで、濾過容量を増加させる。
【0072】
プリーツを設けた形態など媒体表面を集積化することでフィルタ耐用寿命は増加するが、かかる表面捕集フィルタ構成には限界がある。このような理由で(および破裂強度の問題を考慮して)、表面捕集媒体は、主として、濾過媒体の通過速度が比較的低い(多くの場合、毎分約30フィート以下、典型的には毎分約20または10フィート以下)アプリケーションにおいて用いられてきた。例えば、毎分1フィート前後の低流量アプリケーションが存在する。本明細書において用いる用語「速度」とは、媒体を通過する平均速度(すなわち、媒体面積当たりの流量)のことである。
【0073】
多くの濾過媒体アプリケーション、特に高流量のアプリケーションでは、深さ媒体が選択される。典型的な深さ媒体は、比較的厚く絡み合った繊維材料のまとまりを備える。典型的な従来の深さ媒体フィルタは、深く(入口から出口端までを測定)実質的に一定の密度を有する媒体である。具体的には、深さ媒体の密度は、例えば媒体の装着などによる周縁領域の圧縮および/または伸張により生じ得る軽微な密度の変動を除き、その厚さを通じて実質的に一定である。媒体の密度が設計勾配によって変化する勾配密度深さ媒体配置も知られている。異なる媒体密度、孔隙率、効率、および/または他の特性を有する、異なる領域を、深さ媒体の深さおよび体積にわたり設けることができる。
【0074】
深さ媒体は、多くの場合、その孔隙率、密度、および固形物含有率により特徴付けられる。例えば、固形率5%の媒体とは、全体積の約5%が固形物(例えば繊維材料)であり、残りは空気または他の流体が充填された空間である、ということを意味する。別の一般に用いられる深さ媒体の特性には、繊維径がある。一般に、所与の%の固形率については、繊維径が小さいほど効率的な濾過媒体となり、より小さい粒子を捕らえることが可能になる。細かい繊維は太い繊維よりも占める体積が少ないため、より多くの細かい繊維を、全体的な固形率%を増加させることなく詰め込むことが可能である。
【0075】
深さ媒体は、実質的に体積または深さ全体を通じて微粒子を捕集するため、深さ媒体配置は、フィルタの耐用寿命を通じて表面捕集システムと比較してより大きい重量および体積の微粒子を捕集できる。しかし、通常、深さ媒体配置は、効率の点で欠点がある。かかる高捕集容量を可能にするため、低固形率の媒体の使用を選択することがよくある。この結果、細孔サイズが大きくなり、微粒子がより容易に通過できるようになる可能性がある。勾配密度システムおよび/または表面捕集媒体層の追加により、効率特性を改善することが可能である。例えば、表面捕集媒体層を深さ媒体の下流端(または上流面および下流面の間)などに組み合わせて配置することで、効率を増加させることが可能である。この表面捕集媒体層は、ポリッシュ層と呼ばれることがある。
【0076】
少なくとも1980年代以来、深さ媒体および表面捕集媒体についての従来技術による試みにより、高分子細繊維層を濾過媒体配置に用いることが試みられてきた。かかる細繊維は、静電繊維製造(一般に「電気紡糸」として知られる)を通じて製造されるものが開示されている。例えば、細繊維濾過媒体配置が、Barris他の米国特許第4,650,506号、Kahlbaugh他の米国特許第5,672,399号、およびChung他の米国特許第6,743,273号に開示されている。本発明は、これらの特許文献で開示されている濾過媒体配置の1つ以上および/または他のかかる好適な濾過媒体配置に組み込んでもよいため、これらの特許文献の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本明細書において開示されている改善は、これらの先行する特許で開示されている濾過用途に適用可能であり、さらに、それらに開示されている高分子、溶媒、他の作用剤、添加剤、および樹脂などを含む細繊維材料(改善されているとされるいずれの細繊維材料も含む)は、本発明の特定の実施の形態において用いてもよく、かかる場合も本明細書により網羅されることを意図する。
【0077】
これらの上記記録のいくつかにより説明されているように、細繊維は、異なる高分子材料および溶媒から作ることが可能である。それらの例には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、改質ポリスルホン重合体およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、各種ナイロン(ナイロン6、ナイロン6,6、および他のナイロンなどのポリアミド)、PVDC、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、PMMA、PVDFが含まれる。また、入手可能な幅広い溶媒を用いることが可能である。溶媒は、高分子を十分に溶解させるのに適しているべきであるため、選択および使用される溶媒は、所望される高分子に依存する。例えば、一般的なナイロン(例えば、ナイロン6またはナイロン6,6など)を含む多くの高分子には、水を溶媒として用いることはできない。かかる場合、蟻酸などの別の溶媒を一般的なナイロンなどの高分子に選択してもよい。電気紡糸用の高分子溶液を作るための溶媒には、酢酸、蟻酸、m−クレゾール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール塩素系溶媒、アルコール、水、エタノール、イソプロパノール、アセトンおよびN−メチルピロリドン、ならびにメタノールが含まれてもよい。溶媒および高分子は、所与の溶媒における高分子の溶解度が十分であるかに基づいて、適切に用いられるように組み合わせることが可能である。
【0078】
[基体媒体]
【0079】
実施の形態の重要な特徴は、細繊維を濾過要素として用いるため濾過媒体に形成する必要があることである。細繊維材料は、少なくともいくらかの濾過能力を有する濾過媒体基体であるのが好ましい基体上に形成され、接着されるが、スクリムまたは他の非濾過層などの基体とすることも可能である。多くの濾過媒体基体は、少なくとも一部または全体に天然セルロース繊維を含む。天然繊維および合成繊維基体を含む多くの選択肢が存在し、スパンボンド布、合成繊維の不織布、ならびにセルロース材料、合成およびガラス繊維の混紡でできた不織布、ガラス不織布および織布、プラスチック製のスクリーン状材料(押出成形および穿孔されたもの)、ならびに様々な高分子膜が含まれる。これらの材料のすべては、ロール形態で容易に購入可能なシート形態で供給されるのが典型的である。細繊維層を有する基体シートは、浮遊しているまたは運ばれている微粒子をストリームから除去する目的で、空気ストリームまたは液体ストリームを含む流体ストリーム内に配置される濾過構造に形成することが可能である。
【0080】
例えば、上に列挙したタイプの多孔質濾過媒体材料は、ケンタッキー州マディソンビルのオルストーム・エンジン・フィルトレーション,LLC(Ahlstrom Engine Filtration, LLC)およびマサチューセッツ州イースト・ウォルポールのホーリングズワース・アンド・ボス・カンパニー(Hollingsworth & Voss Company)を含むサプライヤから様々な厚さ(通常、0.006〜0.020インチの範囲の厚さ)のものが一般に市販されている。本発明の実施の形態による細繊維は、かかる多孔質濾過媒体に適用可能であり、濾過媒体は、細繊維効率層の基体材料となる。例えば、オルストーム製品番号19N−1もしくは23N−3、AFI 23N−4もしくはAFI 23FW−4などのオルストームにより市販されている製品、または以下の表に記載のものと同様の物理的特性を有する他のフィルタ材料を用いることができる(これらはエンジンの空気濾過で典型的である)。
オルストーム19N−1濾過媒体
セルロース繊維100%
斤量=70ポンド/3000平方フィート
平坦シート状態の厚さ=14.5ミル
溝付きシート状態厚さ=18ミル
Frazier(CFM):11〜19、好ましくは14
SDガーレイ剛性(mg)=3000
オルストーム23N−3濾過媒体
セルロース繊維100%
斤量=55ポンド/3000平方フィート
平坦シート状態の厚さ=13ミル
非溝付きシート
Frazier(CFM):11〜19
SDガーレイ剛性(mg)=1300
オルストームAFI 23N−4
斤量:52〜64ポンド/3000平方フィート
泡立ち点(最初の泡立ち):6.0(最小)IWG
Mullen硬化(Mullen Cured):30(最小)PSI
Frazier:19〜27CFM
キャリパ:0.010〜0.017インチ
SDガーレイ剛性:=1000(最小)MG
オルストームAFI 23FW−4
斤量:70〜80ポンド/3000平方フィート
泡立ち点(最初の泡立ち):6(最小)IWG
Mullen硬化:20(最小)PSI
Frazier:16〜24CFM
キャリパ:0.010〜0.017インチ
SDガーレイ剛性:=1000(最小)MG
【0081】
オルストーム19N−1製品など一部の製品は、汚れ保持能力を改善するため小さな溝を媒体にエンボス加工した状態で入手できる。これらの溝は、濾過媒体のシートおよびロールの長さに沿って延在する。濾過媒体構造に設けられるかかる機械溝および他の構成は、細繊維層製造システムとともに用いることが可能である。従って、本明細書の目的のため文言上「平坦」であるとみなされる媒体基体例の溝付きシートは、完全に平坦である必要はなく、かかるシートには、細繊維の適用前に溝、波形、およびプリーツなどを設けておくことが可能である。
【0082】
本発明の一実施の形態による濾過媒体は、深さ媒体または表面捕集媒体のいずれかであってもよい、透過性を有する粗い繊維媒体であるのが典型的な、第1の基体層を含む。基体層は、設計された濾過アプリケーションに対して相当な濾過容量および効率を有してもよいし、または濾過容量もしくは効率をほとんどもしくはまったく有さなくてもよい。基体層は、細繊維媒体の層を支持および固定可能な表面を提供する。好ましくは、基体層はそれ自体で(すなわち、細繊維層がない状態で)、少なくとも10ミクロンの平均径を有し、約2〜約50ミクロンの平均径を有するのが典型的で好ましい。また、好ましくは、基体層はそれ自体で、約180g/m2以下、好ましくは約5〜約140g/m2程度の斤量を有する。他の典型的な特性として、好ましくは、透過性を有する粗い繊維基体媒体の第1の層は、少なくとも0.0004インチの厚さを有し、約0.005〜約0.05インチの厚さを有するのが典型的で好ましく、概ね約2〜約50ミクロンの細孔サイズ分布を有するのが好ましく、約5〜約70psiのMullen破裂強度を有するのが好ましい。
【0083】
好適な濾過媒体配置において、透過性を有する粗い繊維材料であるのが典型的な基体層は、0.5インチ水位計を用いたFrazier透過性試験により残りの構成とは別に評価した場合、少なくとも0.5cfm(媒体の平方フィート当たり)、典型的には約5〜2000cfm(媒体の平方フィート当たり)の透過性を示す材料を含む。
【0084】
[細繊維、細繊維層、および生成]
【0085】
本明細書に記載の装置を用いて異なるサイズの繊維を生成することが可能であるが、透過性を有する粗い繊維媒体層の第1表面に固定される細繊維材料の層は、好ましくは、本明細書における実施例により例示されるナノ繊維の層であり、かかる繊維は、100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を有するのが好ましい。本文脈における100ナノメートル未満の直径を有する「著しい量」の細繊維とは、以下の少なくとも1つを意味する。(1)平均繊維径が100ナノメートル未満である;(2)中間繊維径が100ナノメートル未満である;および/または(3)細繊維層における繊維の少なくとも25%が100ナノメートル未満の直径を有する。本明細書において開示されている一実施の形態によれば、より好ましくは、細繊維層における繊維の少なくとも50%が100ナノメートル未満の直径を有し、さらに好ましくは、細繊維層における繊維の少なくとも70%が100ナノメートル未満の直径を有する。一実施の形態によれば、繊維の少なくとも70%、典型的には70%〜90%以上が、50〜100ナノメートルの直径を有する。
【0086】
100ナノメートル未満の著しい量の細繊維と組み合わせて、100ナノメートルより大きい他の繊維径を生成および使用することもあり得ることは言うまでもない。
【0087】
また、細繊維を通じて、および/または、装置における均一性の改善を通じて、達成可能な細繊維濾過媒体特性を検討することも有用である。本明細書に開示されている新しい細繊維生成装置の実施の形態で達成可能な被覆率および繊維生成の均一性の利点を用いて、他のより大きい繊維サイズを生成することが可能である。その結果、本明細書で提供される実施例から明白となるように、細繊維は、必ずしもサイズにより特徴付けられるのではなく、それに加えて、またはその代わりに、濾過媒体層の特性により特徴付けることが可能である。既知の細繊維濾過製品よりも優れた、新しい改善された細繊維濾過層の特性が達成されている。このため、請求項は、複合濾過媒体の特性について作成されている。
【0088】
本発明の実施の形態によれば、1つの強化された特性は、改善された効率である。例えば、細繊維層を通じて高効率を達成しつつ、比較的標準的な低効率すなわち低コストの基体媒体を用いることができる。例えば、他のより効率的な基体を用いることもできるが、基体媒体は、0.75〜1.00ミクロンサイズの粒子(比較的中程度の粒子サイズ)に対しては75%未満(例えば70%前後)の効率を有し;および/または0.237〜0.316ミクロンサイズの粒子(比較的細かい粒子サイズ)に対しては40%未満(例えば、30%前後)の効率を有する表面捕集濾過媒体を備えてもよい。従って、基体は、比較的細かい粒子に対してはあまり効率的でない。本発明の実施の形態によれば、基体層と細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75〜1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90%の効率;0.237〜0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも80%(より好ましくは85%より大きい)の効率を有し得る。これは、圧力低下の実質的な犠牲なく実現可能である。
【0089】
本発明の実施の形態による別の強化された特性は、細孔サイズ分布、より詳細には、従来技術例においては分布がランダムであるかまたはさほど制御されていないのに対して、細孔サイズの分布がより厳密に制御されていることである。本発明の実施の形態によれば、基体層と細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%(より好ましくは少なくとも60%)の細孔サイズ分布;4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%(より好ましくは少なくとも25%)の細孔サイズ分布;および/または2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する。この特性を示す一例が実施例4である(細孔サイズヒストグラム(図15)も参照)。
【0090】
細繊維層の被覆率レベルは、重要性を有する。例えば、被覆率が高すぎると、実質的に流れを制限し圧力低下を増加させてしまう可能性がある、フィルム状の層が作製される。試験方法には、無被覆媒体および被覆媒体の圧力低下を比較し、不必要に効率を犠牲にすることを防止するというものがある。好ましくは、基体単体に対する細繊維と基体との組み合わせの圧力低下における差は、典型的には15%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満であり、特定の例によれば、圧力低下は1%未満であり得る。被覆率のレベルを決定する別の方法には、斤量がある。好ましくは、細繊維層はそれ自体で、好ましくは約0.01〜約1.0g/m2、より好ましくは約0.01〜約0.10g/m2の斤量を有する。
【0091】
本発明のより細い繊維は、クヌーセン数/式(流れの希薄化の尺度)により「スリップフロー」であると考えられるものに関するため、顕著な利点を有する。具体的には、繊維が流体ストリームに与える妨害は、その繊維が占める表面積に直接関係する。これは、圧力低下の制御および流体ストリームにおける濾過による制限の最小化に関して重要である。典型的には、表面積が大きいほど層にまたがる圧力低下が高くなり、意図する流体流が制限されるため濾過の場合は望ましくない。より大きいサイズの濾過媒体繊維については、空気速度が繊維表面の中心において実質的にゼロであり得る。はるかに小さい濾過媒体繊維については、空気速度が繊維表面においてゼロより著しく大きい「スリップフロー」が生じ得る。その結果、スリップフローの作用により、はるかに多くの流体がはるかに小さい繊維を通過して流れる。さらに、はるかに多くの細繊維がより小さい繊維径のエリアを占め、媒体の細孔サイズが減少すると同時に、同じ全体表面エリアを占めず、それにより圧力低下を著しく増加させない。特定の実施の形態による100ナノメートル未満の著しい量の細繊維を含むより細い繊維を利用することにより、圧力低下の実質的な犠牲なく、また、濾過媒体にまたがる制限を不当に増加させることなく、新しい濾過特性における実質的な利点を達成可能である。
【0092】
本発明の実施の形態による独特の細繊維および細繊維濾過層に貢献したと考えられるいくつかのパラメータが存在する。特定の動作パラメータはさほど重要でない一方、他のパラメータはより重要であり得ることは言うまでもない。要因の多くは相互に関連し、それらの間の相乗効果を伴う。従って、本明細書に付帯の請求項において記載されているように、かかる特定のパラメータは、本発明から逸脱することなく変更可能である。本明細書では、所望される細繊維の製造および/または濾過媒体の特性を得るため、どのようにアプローチし、パラメータを調整するかの方法について説明する。
【0093】
[(a)装置電極構成および配置(制御された細繊維分布)]
【0094】
重要な要因は、濾過媒体に十分な細繊維を生成しつつ十分に小さい細繊維を生成するための製造装置である。様々な望ましい装置の特性と、かかる特性を多かれ少なかれ実装する様々な装置とについて、本明細書において説明している。従来の細繊維濾過についての特許では、加圧された高分子溶媒を小さいエミッタ孔を通じて強制噴霧する加圧ポンプエミッタシステム(例えば、Chung他の米国特許第6,743,273号)が強調されていたが、本発明のいくつかの実施の形態によれば、より容易な、より良好な、および/またはより制御された細繊維生成が可能である。高分子溶液を小さいオリフィスに強制通過させる強制システムにおいて繊維を製造できるが、本発明の好適な実施の形態による細繊維の生成では、周期的に濡らされる、より好ましくは高分子溶液に浸漬させることで電極上の薄い高分子溶液被覆が周期的に再生される電極が用いられる。最も好適な電気紡糸電極浸漬配置を図1〜図8に示すが、これは、本明細書のこの細繊維生成装置の説明に従うものである。
【0095】
本発明の実施の形態による濾過媒体の商業ベースの製造のために特に有益であることが見出された他の浸漬装置には、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から入手可能なEl−Marco NONOSPIDER型式NS−8A 1450の装置が含まれる。本発明の実施の形態は、かかる他の装置にも関わり得る。また、他の潜在的に使用可能なエル−マルコ,s.r.o.から入手可能な細繊維生成電極浸漬装置の例が、特許公開WO2006/131081号およびUS2006/0290031号に開示されており、これら出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
電極を周期的に浸漬させることで、細繊維製造における細繊維を制御する上で有利であろう。具体的には、溶媒が電極上で蒸発すると(本明細書において説明するように、溶媒の蒸発は、繊維径を縮小させるために望ましい)、高分子が後に残る。かかる高分子の蓄積は、細繊維製造の均一性を低下させる(従って、孔隙率または効率が不均一になる)ことにより、生成される繊維の直径または特性を変化させることにより、および他の潜在的に望ましくない方法で(例えば、より大きいノズルオリフィスを用いることで、理論的にはより大きい繊維サイズとなり得る)、潜在的に製造装置を目詰まりさせる可能性があり、およびさもなければ潜在的に細繊維の製造を変化させる可能性がある。電極を溶液に浸漬させることにより、電極上の高分子の蓄積が防止される。高分子が電極上に析出または形成しようとしているときに電極を浸漬させると、この高分子を多く含む膜は、溶液中に戻され、硬化または析出高分子膜の蓄積が形成される前に容易に溶解または再構成される。また、電極の周期的な洗浄周期において除去または実質的に削減することで、望まれない高分子の蓄積を除去することも達成可能である。加えて、電極の浸漬により、強制高分子溶液システムに圧力差が生じる可能性(かかる困難は、小さいオリフィスノズル上または周辺の高分子蓄積に関連するさらなる困難に至る可能性がある)が回避される。
【0097】
加えて、基体シートは、好ましくは、周期的に濡らされ浸漬される電極の上方で垂直に延在する。その結果、薄い高分子被覆および膜は、静電放電が生じ細繊維スレッドの紡糸位置(「Taylorコーン」または「紡糸口金」としても知られ、そのように呼ばれる)が形成される電極の上部領域に近付くにつれて、重力を受けて薄くなる傾向がある。スレッドが小さいプールから収集電極における孔を通じて重力に反して、しかしブロアの吸引による対向する力を受けて引き出されることを考えると、細繊維が当初形成される高分子膜領域をより薄く維持することにより、結果的に得られる全体的な細繊維サイズが減少し得る。
【0098】
細繊維生成装置の実施の形態による新しいビード紡糸生成には、主として生成される細繊維の量または体積に関して、他の実施の形態に対するいくつかの利益があり得る。例えば、図1〜図8に示す実施の形態の新しいビード紡糸生成装置は、好適な方法により、濾過媒体のシート幅全体にまたがる紡糸位置の位置にわたって実質的な均一性を制御および維持することが可能である。ランダムにではなく、所定のアレイにより紡糸位置を離間することにより、細繊維紡糸位置の所定の間隔を達成可能である。この結果、効率、細孔サイズ、および細孔サイズ分布がより良好に制御されると考えられる。濾過媒体基体のある領域が他のセクションよりも細繊維の被覆が少ない場合、典型的には、かかる領域は異なる濾過特性となるであろうと疑われる。例えば、図1〜図8の実施の形態では、所定の均等に離間する紡糸位置のアレイを維持することが意図されている。本実施の形態におけるビード付チェーン型の電極を媒体に対して横断するように駆動すると、個々のセグメントおよび紡糸位置が濾過媒体基体を横切って移動する際、対向方向に駆動されたチェーンが時間を経て潜在的な高分子溶液勾配ロスに対して反対に作用する。
【0099】
さらに、電極ストランドを収集電極および媒体に対して一定距離に維持することにより、回転ドラム型電極(例えば、エル−マルコに譲渡された前記特許における回転ドラム電極を参照)における場合のように、目標紡糸距離および電位は変化しない。可変の距離ではなく目標距離を維持することにより、細繊維ホイッピング時間をより大きく制御することが容易になるため、溶媒蒸発時間および細繊維縮小時間がより一定に維持される。
【0100】
このため、適切な細繊維生成装置を選択および/または開発することは、細繊維層の特性において有益であり得る。
【0101】
[(b)静電紡糸の電位および電極/媒体の間隔]
【0102】
相当量の細繊維の生成に関する別の要因は、静電界の電位である。例えば、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から市販されているNANOSPIDER型式NS−8A 1450の装置は、60,000ボルト電力供給により提供される標準的な静電界電位を有する。市販のEl−Marco NANOSPIDER型式NS−8A 1450の装置に関して、追加の電圧生成電力供給を設けることによりこの装置を改造し、60,000ボルトよりも高い静電界を達成することにより、細繊維製造の出力を増加させることができる。電位は、繊維サイズには大きく影響しないが、生成される繊維の量には著しい作用をもたらすことが見出されている。
【0103】
例えば、蟻酸および酢酸の溶媒をベースとする溶液からセルロース濾過媒体基体へのナイロン繊維の生成については、好ましくは少なくとも75,000または80,000ボルト、より好ましくは少なくとも95,000ボルトが、電気紡糸のために提供される。本発明のいくつかの実施の形態によれば、電界電位は、75,000〜130,000ボルト、潜在的にはそれ以上に設定してもよい。しかし、細繊維の製造物の体積がより低い場合はより低い電位で生成することも可能であり、および/または、電圧が通常はさほど重要でないようにより多くのセルを用いてもよい。
【0104】
正および負の両方の電力供給を含む電力供給を用いて、静電界差を生成してもよい。典型的には、収集電極は接地電位を受け、紡糸電極は電圧生成電力供給を受ける。しかし、反対に帯電された電力供給を収集電極に接続し、アースに対するいずれかの電極の電位もさほど高くする必要がないようにしてもよい。また、両方の電極を、アースに対して同じ電荷で、しかしそれらの間に電位差を伴って、昇圧することも可能である。このため、収集電極と放電紡糸電極との間の電圧差の見地からシステムを評価することが最も有用である。
【0105】
細繊維の生成は、一般に、個々の紡糸位置からTaylorコーンにおける細繊維ストランドの蒸発およびホイッピングが可能になるように、十分な距離を経て行われるべきである。好ましくは、濾過媒体基体は電気紡糸電極から、通常は少なくとも3インチおよび通常は約10インチ以下、典型的には4〜7インチだけ離す。例えば、ナイロン6高分子溶液について、目標距離は、非常に小さい繊維径を有する良好な細繊維生成のためには約5〜約6インチであるのが好ましい。好ましくは、収集電極または媒体(目標距離に対してかなり薄いのが典型的である)についての紡糸電極に対する目標距離が実効上または概ね同じであるように、濾過媒体は収集電極に接触した状態で延在する。
【0106】
本明細書における細繊維生成装置の実施の形態において示すものなどの特定の実施の形態によれば、この距離は一定に保つことができ、かかる場合、目標距離は、各電極セグメントが媒体上を並進するため一定に維持される(例えば、系統的に回転することで目標に対して接近および離間しないのが好ましい)。加えて、目標距離は、収集電極の構成にも関わる。例えば、図1および図7に示すように、収集電極は、蒸発した溶媒の吸引および除去を容易にするため多くの小さいオリフィスを有する大きい表面積を有する実質的に中実の多孔板とすることが可能である。表面積が大きいことは、目標距離を維持する助けとなる。(例えば、収集電極上の表面部の間で大きくジャンプすることが回避される)。
【0107】
[(c)高分子の選択]
【0108】
濾過アプリケーションは、湿気および熱(および/または冷たい環境)を伴うことが多い。例えば、車両の燃焼機関のための空気濾過アプリケーションは、高温または低温環境で動作し得るだけでなく、エンジンにより生成される熱、および高い湿気、霧、雨、雪、またはみぞれなど他の条件をも受け、湿気が空気ストリームとともにフィルタ内に容易に引き込まれる可能性がある。液体濾過要素も共存しなければならず、濾過対象の液体に溶解してはならない。また、一貫した品質の濾過媒体を経済的および商業的に大量生産することも、考慮すべき点である。
【0109】
多くの濾過用途についての本発明の好適な実施の形態は、水中においてまたは湿気を受けたときに自ずと溶解せずに、100°C以上までの温度を含む相当な温度の振れに耐える高分子を含む。かかる濾過用途において生じるであろうかかる環境条件に長期間さらされたときも、かかる高分子で構成された細繊維は、その濾過特性のすべてまたは少なくとも相当な部分を保持すべきである。
【0110】
例えば、本発明の特定の実施の形態は、これらの性質を満たすナイロン材料を含み、かかるナイロン材料は、ナイロン6およびナイロン6,6を含むがこれらに限定されない。例えば、ナイロン6材料は、本明細書に記載の実施の形態および実施例による100ナノメートル未満の著しい量の細繊維を含む細繊維に紡糸される。しかし、上で記載したように他の高分子材料も考えられる。
【0111】
[(d)溶媒の選択および高分子溶液の制御]
【0112】
一般に、高分子に対する溶媒分は、細繊維紡糸口金の形成を妨げるまたは妨害しない程度に高いことが所望される。溶液の割合が高すぎると、スレッドの形成よりもむしろ高分子溶媒のスパッタリングを生じさせてしまう可能性がある。しかし、溶媒の割合が大きいほど、一般に、より薄い高分子細繊維製品が得られる。溶媒分が高いと、より多くのスレッド紡糸口金が、紡糸電極から基体材料まで電気防止されているときに蒸発する。従って、制御すべき1つの要因は、溶媒の割合である。
【0113】
溶媒の選択は、また、選択された高分子に部分的に依存する要因である。単一の溶媒を用いてもよいが、導電性および表面張力を制御するため溶媒の組み合わせを用いるのが好ましく、一実施の形態によれば、少なくとも選択された高分子を溶解させるのに好適な高分子溶解剤と、高分子溶液の導電性および表面張力を調整する導電性制御剤とを含むことで、繊維の形成を制御して細繊維を生成する。導電性および表面張力制御剤は、塩、酸、および導電性に影響する他の作用剤を含んでもよい。一実施の形態によれば、導電性制御剤は、導電性および表面張力低減剤(表面張力を低下させ導電性を低下させる作用剤)を含む。表面張力および導電性が低いと、本明細書の実施の形態による著しく薄い繊維の形成に使用可能であることが見出されている。具体的には、導電性および/または表面張力を高くすると、細繊維スレッドが紡糸電極から収集媒体および電極に向けて早くジャンプすると考えられる。その結果、理論的には電気紡糸Taylorコーン状態においてホイッピングに費やされる時間が少なくなり、繊維サイズを引き下げる機械的作用が少なくなる。
【0114】
ナイロン6の実施の形態および実施例などのポリアミドについて、好適な溶媒には、溶解剤としての蟻酸と、主として導電性制御剤および表面張力剤としての酢酸とが含まれる。酢酸が潜在的なポリアミド溶媒として記載されており、酢酸は室温においてナイロンを分解しないためこの記載は厳密には正確でないが、酢酸を用いた場合、熱が要求されるもののナイロンは溶液から析出される。従って、溶媒の組み合わせは、本発明の実施の形態のいくつかによる重要な態様である。本例において、通常、蟻酸に対してより多くの酢酸を用いることが望ましい(例えば、50%を超える酢酸および50%未満の蟻酸)。例えば、約2/3の酢酸および約1/3の蟻酸を有する溶媒により、優れた繊維生成により100ナノメートル未満の望ましい薄さの細繊維が作製されることが見出された(本例における濃度レベルは:88%の蟻酸(すなわち、例えば88%の蟻酸および12%の水);および99.9%の酢酸(氷酢酸として知られる))。具体的には、純粋な蟻酸の溶媒から酢酸および蟻酸の組み合わせに移行した際、ナイロン6については細繊維サイズが大幅に縮小した。8〜20%の高分子を溶媒(すなわち、92〜80%の溶媒)に対して含む溶液が、良好な繊維を形成するために使用可能な範囲の例である。より好ましくは、約12%の高分子を含む溶液により、良好な繊維形成が得られ、望ましい薄い繊維が生成される。
【0115】
[(e)環境の制御]
【0116】
関わるさらに別の要因は、相対湿度および温度である。他の温度を用いてもよいが、工業生産上の理由から、および作業者の快適性の理由から、温度は、典型的な工場の温度範囲に関するのが好ましい。例えば、温度の例は、60°F〜80°Fとすることができ、72°Fが室温として典型的である。
【0117】
相対湿度は、溶媒の蒸発およびフラッシュオフレートに影響するため、より重要な要因である。湿度が高すぎると、十分な溶媒が蒸発せず、より厚い繊維となる。あるいは、湿度が低すぎると、溶媒の蒸発が早すぎる。溶媒の蒸発が早すぎると、繊維は、十分に薄くなることができず(ホイッピング作用を通じた機械力のためと考えられる)、より厚い繊維となり望ましくない(例えば、高分子繊維の析出が速すぎるため、機械的ホイッピング作用により繊維が縮小されない)。従って、湿度の環境制御は重要である。例えば、約40%〜約55%の相対湿度が使用可能な範囲である。ナイロン6の実施の形態に関して、44%前後の相対湿度(例えば、好ましくは42〜46%)を用いると、良好で非常に薄い繊維の形成が得られる。
【0118】
[(f)基体の接着]
【0119】
加えて、濾過用途については、繊維を濾過媒体基体に接着することが望ましい。その結果、および一般的なセルロース系の基体の場合、溶媒の一部が蒸発のため残った状態で細繊維を濾過媒体基体上に堆積させることが、細繊維層の基体に対する、溶媒タイプの結合、および/または、より良好な一体化を実現するために望ましい。接着は、単純に媒体上に指を走らせることによる、および/または、媒体に対する通常の摩耗または取り扱いによる、繊維層の剥離を防止するために十分であるべきである。接着は、少なくとも、Frey他の米国特許公開第2007/0163217号「セルロース/ポリアミド複合物」の開示および教示に従って、手で加えられる剥離力を防止するのに十分であることが好ましく、この出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
別々の細繊維結合/保持システムの利用が提案されているが(例えば、Barris他の米国特許第4,650,506号)、好ましくは、細繊維と濾過媒体基体との間に溶媒タイプの結合を設けることにより、新しく形成された繊維上に残る十分な溶媒を、その上に堆積させたときに濾過媒体基体に接触させるのが好ましい。蟻酸を用いるナイロンの例に関して、’217特許公開に記載のように、優れた溶媒結合を例えばセルロース系の媒体基体との間で生じさせることが可能である。しかし、接着剤、カバー層、およびトラッピング技術を(例えば、層間で)用いてもよい。
【0121】
[試験方法]
【0122】
以下の実施例を説明する前に、細繊維および濾過媒体のパラメータを評価するために有用であり得る試験方法に着目する。
【0123】
本明細書における効率は、大まかにはASHRAE規格52.2、より詳細には以下で説明する方法および装置による分別効率試験方法を用いて測定可能である。
【0124】
本明細書における試験結果について、分別効率方法では、ミネソタ州バーンズビルのパウダー・テクノロジー社(Powder Technology, Inc.)から入手可能な「ISO Fine」試験粉体(品番:ISO1212103−1)を利用した。この粉体は、一度の試験で異なる粒子サイズについての粒子捕捉効率を測定可能なように、段階的な粒子サイズのものを含んでいる。例えば、粒子サイズの濃度および分布を図17のグラフに示す。PALAS MFP2000(ドイツ国カールスルーエのPalas(登録商標)GMBHから入手可能)において、濾過媒体試験サンプル(上記装置で従来から用いられているような100平方センチメートルの円盤状媒体)に、120l/mで70mg/m3の塵埃濃度でISO FINE粉体を適用した。静電荷の読み誤りを防止ぐために、PALAS MFP2000には、塵埃上のいずれの電荷も中和するコロナ放電ユニット(CD2000)を設けた。この試験装置は、装置に内蔵された、圧力低下情報を同時に提供する圧力変換器を介して、圧力低下の読み取りを同時に、すなわち同じ動作パラメータ下で、提供するため、同じ共通の流量パラメータに基づいて圧力低下の測定と比較を行うことができる。
【0125】
細孔サイズ分布データは、規格ASTM−F316による細孔サイズ分布試験を用いて測定可能である。ここで実施した試験では、次の方法および装置により細孔サイズ分布試験を行った:PMI(ニューヨーク州イサカのポラス・マテリアル・インク(Porous Materials, Inc.))ブランドの毛細管流動ポロメータ−型番:CFP−1100AX−U−08182005−1446。
【0126】
本開示および請求項の文脈における細繊維「径(diameter)」とは、図18〜図19に見られるように、個々の繊維部分を走査電子顕微鏡(SEM)により観察および/または測定した繊維の幅または太さを意味し、それに言及するものである。一般に、測定は、横断する繊維または繊維部分の間に延在する繊維部分の中間領域で行うのが典型的である(例えば、図18〜図19のSEM画像の数値を参照)。一般に、繊維ストランドがともに延びる、交わる、または重なるところでは測定しない。本文脈および請求項における「直径(diameter)」とは、繊維が完全に丸形であることを意味するものでも、要求するものでもないが、一部またはすべての繊維は円形であってもよい。繊維の小さいサイズおよび技術上の制約を考慮すると、細繊維の真の断面形状がどのようなものであるかは現時点で未知である。繊維は略円形の断面を有すると想定されている。
【0127】
[試験例および/または製造例]
【0128】
以下の試験例において、最初の2つの例は、ミネソタ州ミネアポリスのドナルドソン・カンパニー・インクから入手可能な、出願日より前に市販されている濾過媒体製品の対照サンプルである。かかる対照サンプルは、比較を目的とするものである。媒体は、Chung他の米国特許第6,743,273号(または同じファミリー中の類似する関連特許)などのドナルドソンに譲渡された細繊維分野における1つ以上の特許出願に記載の方法に従って製造できると考えられる。水および/またはイソプロピルアルコールに溶解する傾向が見られることからして、細繊維は、ポリビニルアルコールの誘導体であると思われ、またはそのように考えられる。
【0129】
実施例3は、実施例4および実施例5に用いられる市販の濾過媒体基体の例である。実施例4は、図1〜図8に関して上で説明したビード付無端チェーンの実施の形態に従って製造されたものであり、実施例5は、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から入手可能なEl−Marco NANOSPIDER型式NS−8A 1450の機械で製造した濾過媒体複合物の実施の形態の観察に関する。
【0130】
[実施例1]
【0131】
ミネソタ州ミネアポリスのドナルドソン・カンパニー・インクから市販されている濾過媒体複合物製品に対して試験を行った。媒体はカートリッジに収容されていたので、試験のため濾過媒体サンプルをカートリッジから慎重に取り外した。観察したところ、濾過媒体複合物は、粗い濾過媒体基体材料と、その上に堆積させた細繊維層とを含んでいた。図18の走査電子顕微鏡画像に示すように、細繊維層中の細繊維の繊維径は100ナノメートル超が典型的であることが観察され、直径が100ナノメートル未満の細繊維は著しい量ではなかった。
【0132】
複合媒体は、斤量が71.03lb/3000ft2;Frazier透過性が13.5(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.3ミルであった。試験結果によれば、濾過媒体はMERV 14(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は362.87Paであった。
【0133】
実施例1についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図11および図13に示す。
【0134】
表2−細孔サイズ(μm)
【0135】
表3−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0136】
表4−分別効率(E)結果
【0137】
[実施例2]
【0138】
細繊維層の濾過特性をより良好に評価する目的で、実施例1の基体濾過媒体を試験した。具体的には、まず、ミネソタ州ミネアポリスのドナルドソン・カンパニー・インクから市販されている濾過媒体複合物製品のサンプルをイソプロピルアルコールに浸漬して、細繊維層を溶解し、これを除去した。細繊維は、イソプロピルアルコールに完全に溶解したようであったが、イソプロピルアルコールを溶媒として選択したのはこれが理由である。次いで、サンプルを乾燥させてイソプロピル溶媒を蒸発させ、その後、サンプルに試験を行った。
【0139】
基体媒体は、斤量が71.27lb/3000ft2;Frazier透過性が15.3(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.3ミルであった。試験結果によれば、濾過媒体はMERV 13(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は378.13Paであった。
【0140】
実施例2についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図12および図13に示す。
【0141】
表5−細孔サイズ(μm)
【0142】
表6−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0143】
表7−分別効率(E)結果
【0144】
[実施例3]
【0145】
実施例4の細繊維濾過媒体複合物のための基体材料として用いられた、無被覆で比較的低グレードのセルロース繊維材料基体濾過媒体に試験を行った。基体濾過媒体は、AFI−23N−4のブランド/モデル指定でオルストームから購入した。従って、実施例2で行ったようにイソプロピルアルコールに浸漬してサンプルを作成する必要はなかった。
【0146】
基体媒体は、斤量が59.8lb/3000ft2;Frazier透過性が23.4(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.4ミルであった。試験結果によれば、濾過媒体はMERV 12(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は242.63Paであった。
【0147】
実施例3についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図14および図16に示す。
表8−細孔サイズ(μm)
【0148】
表9−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0149】
表10−分別効率(E)結果
【0150】
[実施例4]
【0151】
セルロース系の基体層とナイロン6の細繊維層とを有する濾過媒体複合物を、実施例3の基体媒体を用いて製造した。複合媒体は、図1〜図8に関して上で説明したように、金属ビード付無端チェーン電極(1つのビード付チェーンセルを用いた実施の形態)で製造した。環境条件は、室温(例えば72°F)および相対湿度44%であった。細繊維は、氷酢酸2/3および蟻酸1/3の溶液(用いた蟻酸の濃度88%、酢酸の濃度レベル99.9%)にナイロン6を溶解させた12%ナイロン6溶液から製造した。
【0152】
95,000ボルトの電位を与えた。ビード付金属チェーン電極は、負の45,000ボルトの電源と電気的に結合し、収集電極は、正の50,000ボルトの電源に結合した。目標の間隔は、基体媒体が収集電極に接触して延びた状態で、ビード付金属チェーン電極と収集電極との間を5と1/2インチに維持した。
【0153】
図19の走査電子顕微鏡画像に示すように、細繊維層中の細繊維の繊維径は100ナノメートル未満が典型的であり、直径が100ナノメートル未満である著しい量の細繊維があることが観察された。何回かの試行および/またはいくつかの観察位置について、SEMによる観察によれば、約80〜90%の細繊維の直径は、50ナノメートル〜100ナノメートルであるのが典型的であった。
【0154】
複合媒体は、斤量が61.05lb/3000ft2;Frazier透過性が22.9(CFM@0.5”WG);およびキャリパ厚が0.5ミルであった。試験結果によれば、複合濾過媒体はMERV 15(分別効率データに基づく)に適合し、初期圧力低下は243.63Pa(例えば、実施例3の無被覆媒体に対して1%未満の差)であった。
【0155】
実施例4についての細孔サイズおよび分別効率試験データは下記の通りであり、および/または、図15および図16に示す。
【0156】
表11−細孔サイズ(μm)
【0157】
表12−累積フィルタ流、細孔サイズ(μm)
【0158】
表13−分別効率(E)結果
【0159】
[実施例5]
【0160】
セルロース系基体層とナイロン6の細繊維層とを有する濾過媒体複合物を、実施例3の基体媒体を用いて実施例4のパラメータにより製造した。ただし、異なる装置、すなわち、チェコ共和国リベレツ州のエル−マルコ,s.r.o.から入手可能なEl−Marco Nanospiderの型式NS−8A 1450の機械を利用し、細繊維の製造量を増加させるために供給電圧を95,000ボルトに増加させる改造を施した。環境条件は、室温(例えば72°F)および相対湿度44%であった。細繊維は、酢酸2/3および蟻酸1/3の溶液(用いた蟻酸の濃度88%、酢酸の濃度レベル99.9%)にナイロン6を溶解させた12%ナイロン6溶液から製造した。電圧差95,000の静電界を与えた。紡糸電極と収集電極との間の目標の間隔を5と1/2インチとした(最も近接した点で測定)。何回かの試行および/またはいくつかの観察位置について、SEMによる観察によれば、約80%〜90%の細繊維の直径は50ナノメートル〜100ナノメートルが典型的であった。
【0161】
本明細書中で引用する公報、特許出願および特許を含むすべての文献は、各文献を個々に、具体的に示し、引用して組み込むかのように、また、その全体を本明細書に記載するかのように、引用して組み込まれる。
【0162】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本発明の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0163】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを予期しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層により担持される細繊維層であって、前記細繊維層は、直径が100ナノメートル未満である著しい量の繊維を含む、細繊維層とを備える;
濾過媒体。
【請求項2】
前記細繊維層は、前記基体層に溶媒結合されている、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項3】
前記著しい量とは、前記細繊維層が100ナノメートル未満の平均繊維径を有することを意味する、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項4】
前記著しい量とは、100ナノメートル未満の中間繊維径を意味する、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項5】
前記著しい量とは、前記細繊維層における前記繊維の少なくとも25%が100ナノメートル未満の直径を有することを意味する、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項6】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項7】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも70%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項8】
前記繊維の少なくとも70%が、50乃至100ナノメートルの直径を有する、
請求項6に記載の濾過媒体。
【請求項9】
前記細繊維は、本質的に疎水性であるとともに水溶性でない高分子を含む、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項10】
前記高分子は、ナイロンを含む、
請求項9に記載の濾過媒体。
【請求項11】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90%の効率を有し、前記基体層単体に対する圧力低下における差が15%未満である、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項12】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも80%の効率を有する、
請求項11に記載の濾過媒体。
【請求項13】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも85%の効率を有する、
請求項12に記載の濾過媒体。
【請求項14】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
請求項12に記載の濾過媒体。
【請求項15】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項14に記載の濾過媒体。
【請求項16】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項15に記載の濾過媒体。
【請求項17】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項16に記載の濾過媒体。
【請求項18】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項17に記載の濾過媒体。
【請求項19】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては75%未満の効率を有する、
請求項11に記載の濾過媒体。
【請求項20】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては40%未満の効率を有する、
請求項12に記載の濾過媒体。
【請求項21】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項20に記載の濾過媒体。
【請求項22】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、10%未満である、
請求項21に記載の濾過媒体。
【請求項23】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、5%未満である、
請求項21に記載の濾過媒体。
【請求項24】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、1%未満である、
請求項21に記載の濾過媒体。
【請求項25】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え;
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対して少なくとも90%の効率を有し、前記細繊維層と前記基体層との組み合わせは、前記基体層単体に対する圧力低下における差が15%未満である、
濾過媒体。
【請求項26】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも80%の効率を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項27】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも85%の効率を有する、
請求項26に記載の濾過媒体。
【請求項28】
前記基体は、前記細繊維層がない状態で、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては40%未満の効率を有する、
請求項27に記載の濾過媒体。
【請求項29】
前記基体は、前記細繊維層がない状態で、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては75%未満の効率を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項30】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項31】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、5%未満である、
請求項30に記載の濾過媒体。
【請求項32】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、1%未満である、
請求項31に記載の濾過媒体。
【請求項33】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項31に記載の濾過媒体。
【請求項34】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項35】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項36】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項37】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項36に記載の濾過媒体。
【請求項38】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項39】
細孔サイズ分布が制御された濾過媒体であって、
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え;
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
濾過媒体。
【請求項40】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項39に記載の濾過媒体。
【請求項41】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項39に記載の濾過媒体。
【請求項42】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項41に記載の濾過媒体。
【請求項43】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項41に記載の濾過媒体。
【請求項44】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項39に記載の濾過媒体。
【請求項45】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、10%未満である、
請求項44に記載の濾過媒体。
【請求項46】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項45に記載の濾過媒体。
【請求項47】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、5%未満である、
請求項46に記載の濾過媒体。
【請求項48】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、1%未満である、
請求項46に記載の濾過媒体。
【請求項49】
高分子を溶媒に溶解させて高分子溶液を形成するステップと;
静電界下で電極から前記高分子溶媒から細繊維を電気紡糸するステップと;
前記細繊維を基体層上に堆積させるステップと;
少なくとも1つの溶媒および少なくとも1つの高分子を選択して100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を生成するステップとを備える;
濾過媒体の形成方法。
【請求項50】
少なくとも1つの溶媒を選択するステップは、前記高分子のための溶解剤を選択するステップと、制御剤を用いて導電性および表面張力の少なくとも一方を調整するステップとを含む、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記制御剤は、前記溶解剤と異なる溶媒である、
請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記方法は:
前記高分子溶液をレセプタクルに収容するステップと;
前記電極を前記高分子溶液に浸漬させ、スパンにわたり前記電極からいくつかの紡糸位置において繊維を放出するステップと;
前記基体を前記スパンに対して横断するように進行させて、前記放出された繊維を収集するステップとを備える;
請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記細繊維層を前記基体層に溶媒結合するステップをさらに備える;
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記紡糸位置は、前記電極の縁部に沿って前記電極にまたがる略直線アレイ内である、
請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記直線アレイは複数列の紡糸位置を含む、
請求項54に記載の方法。
【請求項56】
複数の電極が、それぞれのスパンが前記基体の進行に対して横断するように配置され、前記電極は、紡糸領域の入口端部および出口端部の間で離間され、前記基体は、前記入口端部から前記出口端部まで進行する、
請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記基体層を前記電極から約4乃至約10インチ離間するステップと;
相対湿度を約30%乃至50%に制御するステップとをさらに備える;
請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記高分子はナイロンを含み、前記少なくとも1つの溶媒は酸を含み、高分子対溶媒の溶媒比は約8%乃至約20%に制御される、
請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つの溶媒は、酢酸と蟻酸との組み合わせを含む、
請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの溶媒は、蟻酸よりも酢酸の割合が大きい、
請求項59に記載の方法。
【請求項61】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸高分子を含む細繊維層とを備え;
前記細繊維層は、100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を含む、
請求項49に記載の方法により作られた、
濾過媒体。
【請求項62】
前記著しい量とは、前記細繊維層が100ナノメートル未満の平均繊維径を有することを意味する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項63】
前記著しい量とは、100ナノメートル未満の中間繊維径を意味する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項64】
前記著しい量とは、前記細繊維層における前記繊維の少なくとも25%が100ナノメートル未満の直径を有することを意味する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項65】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項66】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも70%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項67】
前記繊維の少なくとも80%が、50乃至100ナノメートルの直径を有する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項68】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸高分子を含む細繊維層とを備え;
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90%の効率を有し、前記細繊維層と前記基体層との組み合わせは、前記基体層単体に対する圧力低下における差が10%未満である、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項69】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対して少なくとも80%の効率を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項70】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対して少なくとも85%の効率を有する、
請求項69に記載の濾過媒体。
【請求項71】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては40%未満の効率を有する、
請求項70に記載の濾過媒体。
【請求項72】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては75%未満の効率を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項73】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項74】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項75】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項76】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項77】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項76に記載の濾過媒体。
【請求項78】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項77に記載の濾過媒体。
【請求項1】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層により担持される細繊維層であって、前記細繊維層は、直径が100ナノメートル未満である著しい量の繊維を含む、細繊維層とを備える;
濾過媒体。
【請求項2】
前記細繊維層は、前記基体層に溶媒結合されている、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項3】
前記著しい量とは、前記細繊維層が100ナノメートル未満の平均繊維径を有することを意味する、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項4】
前記著しい量とは、100ナノメートル未満の中間繊維径を意味する、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項5】
前記著しい量とは、前記細繊維層における前記繊維の少なくとも25%が100ナノメートル未満の直径を有することを意味する、
請求項1に記載の濾過媒体。
【請求項6】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項7】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも70%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項8】
前記繊維の少なくとも70%が、50乃至100ナノメートルの直径を有する、
請求項6に記載の濾過媒体。
【請求項9】
前記細繊維は、本質的に疎水性であるとともに水溶性でない高分子を含む、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項10】
前記高分子は、ナイロンを含む、
請求項9に記載の濾過媒体。
【請求項11】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90%の効率を有し、前記基体層単体に対する圧力低下における差が15%未満である、
請求項5に記載の濾過媒体。
【請求項12】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも80%の効率を有する、
請求項11に記載の濾過媒体。
【請求項13】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも85%の効率を有する、
請求項12に記載の濾過媒体。
【請求項14】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
請求項12に記載の濾過媒体。
【請求項15】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項14に記載の濾過媒体。
【請求項16】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項15に記載の濾過媒体。
【請求項17】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項16に記載の濾過媒体。
【請求項18】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項17に記載の濾過媒体。
【請求項19】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては75%未満の効率を有する、
請求項11に記載の濾過媒体。
【請求項20】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては40%未満の効率を有する、
請求項12に記載の濾過媒体。
【請求項21】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項20に記載の濾過媒体。
【請求項22】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、10%未満である、
請求項21に記載の濾過媒体。
【請求項23】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、5%未満である、
請求項21に記載の濾過媒体。
【請求項24】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、1%未満である、
請求項21に記載の濾過媒体。
【請求項25】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え;
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対して少なくとも90%の効率を有し、前記細繊維層と前記基体層との組み合わせは、前記基体層単体に対する圧力低下における差が15%未満である、
濾過媒体。
【請求項26】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも80%の効率を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項27】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも85%の効率を有する、
請求項26に記載の濾過媒体。
【請求項28】
前記基体は、前記細繊維層がない状態で、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては40%未満の効率を有する、
請求項27に記載の濾過媒体。
【請求項29】
前記基体は、前記細繊維層がない状態で、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては75%未満の効率を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項30】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項31】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、5%未満である、
請求項30に記載の濾過媒体。
【請求項32】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、1%未満である、
請求項31に記載の濾過媒体。
【請求項33】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項31に記載の濾過媒体。
【請求項34】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項35】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項36】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項37】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項36に記載の濾過媒体。
【請求項38】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項25に記載の濾過媒体。
【請求項39】
細孔サイズ分布が制御された濾過媒体であって、
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸細繊維層とを備え;
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
濾過媒体。
【請求項40】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項39に記載の濾過媒体。
【請求項41】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項39に記載の濾過媒体。
【請求項42】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項41に記載の濾過媒体。
【請求項43】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項41に記載の濾過媒体。
【請求項44】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項39に記載の濾過媒体。
【請求項45】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、10%未満である、
請求項44に記載の濾過媒体。
【請求項46】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項45に記載の濾過媒体。
【請求項47】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、5%未満である、
請求項46に記載の濾過媒体。
【請求項48】
前記細繊維層が前記基体層にまたがる圧力低下に与える変化は、1%未満である、
請求項46に記載の濾過媒体。
【請求項49】
高分子を溶媒に溶解させて高分子溶液を形成するステップと;
静電界下で電極から前記高分子溶媒から細繊維を電気紡糸するステップと;
前記細繊維を基体層上に堆積させるステップと;
少なくとも1つの溶媒および少なくとも1つの高分子を選択して100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を生成するステップとを備える;
濾過媒体の形成方法。
【請求項50】
少なくとも1つの溶媒を選択するステップは、前記高分子のための溶解剤を選択するステップと、制御剤を用いて導電性および表面張力の少なくとも一方を調整するステップとを含む、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記制御剤は、前記溶解剤と異なる溶媒である、
請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記方法は:
前記高分子溶液をレセプタクルに収容するステップと;
前記電極を前記高分子溶液に浸漬させ、スパンにわたり前記電極からいくつかの紡糸位置において繊維を放出するステップと;
前記基体を前記スパンに対して横断するように進行させて、前記放出された繊維を収集するステップとを備える;
請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記細繊維層を前記基体層に溶媒結合するステップをさらに備える;
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記紡糸位置は、前記電極の縁部に沿って前記電極にまたがる略直線アレイ内である、
請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記直線アレイは複数列の紡糸位置を含む、
請求項54に記載の方法。
【請求項56】
複数の電極が、それぞれのスパンが前記基体の進行に対して横断するように配置され、前記電極は、紡糸領域の入口端部および出口端部の間で離間され、前記基体は、前記入口端部から前記出口端部まで進行する、
請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記基体層を前記電極から約4乃至約10インチ離間するステップと;
相対湿度を約30%乃至50%に制御するステップとをさらに備える;
請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記高分子はナイロンを含み、前記少なくとも1つの溶媒は酸を含み、高分子対溶媒の溶媒比は約8%乃至約20%に制御される、
請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つの溶媒は、酢酸と蟻酸との組み合わせを含む、
請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの溶媒は、蟻酸よりも酢酸の割合が大きい、
請求項59に記載の方法。
【請求項61】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸高分子を含む細繊維層とを備え;
前記細繊維層は、100ナノメートル未満の直径を有する著しい量の繊維を含む、
請求項49に記載の方法により作られた、
濾過媒体。
【請求項62】
前記著しい量とは、前記細繊維層が100ナノメートル未満の平均繊維径を有することを意味する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項63】
前記著しい量とは、100ナノメートル未満の中間繊維径を意味する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項64】
前記著しい量とは、前記細繊維層における前記繊維の少なくとも25%が100ナノメートル未満の直径を有することを意味する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項65】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも50%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項66】
前記細繊維層における前記繊維の少なくとも70%が、100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項67】
前記繊維の少なくとも80%が、50乃至100ナノメートルの直径を有する、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項68】
透過性媒体の基体層と;
前記基体層に担持される電気紡糸高分子を含む細繊維層とを備え;
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては少なくとも90%の効率を有し、前記細繊維層と前記基体層との組み合わせは、前記基体層単体に対する圧力低下における差が10%未満である、
請求項61に記載の濾過媒体。
【請求項69】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対して少なくとも80%の効率を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項70】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対して少なくとも85%の効率を有する、
請求項69に記載の濾過媒体。
【請求項71】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.237乃至0.316ミクロンサイズの粒子に対しては40%未満の効率を有する、
請求項70に記載の濾過媒体。
【請求項72】
前記基体層は、前記細繊維層がない状態で、0.75乃至1.00ミクロンサイズの粒子に対しては75%未満の効率を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項73】
前記基体層は、セルロース系の多孔質濾過媒体を備え、前記セルロース繊維ベースの多孔質濾過媒体は下記特性:
(a)約1乃至約400CFM@.5”WGのFrazier透過性と;
(b)約2乃至約50ミクロンの平均繊維径と;
(c)約30乃至約200lb/3000ft2の斤量と;
(d)概ね約2乃至約50ミクロンの細孔サイズ分布と;
(e)約5乃至約70psiのMullen破裂強度とを有する;
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項74】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも50%の細孔サイズ分布を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項75】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、6ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも60%の細孔サイズ分布を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項76】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも40%の細孔サイズ分布を有する、
請求項68に記載の濾過媒体。
【請求項77】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、4ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも45%の細孔サイズ分布を有する、
請求項76に記載の濾過媒体。
【請求項78】
前記基体層と前記細繊維層との組み合わせは、他の層がある場合それらは別として、2ミクロンの分離範囲に対しては少なくとも25%の細孔サイズ分布を有する、
請求項77に記載の濾過媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2011−504138(P2011−504138A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534138(P2010−534138)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/083206
【国際公開番号】WO2009/067365
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(510135935)クラーコア インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】CLARCOR Inc.
【住所又は居所原語表記】840 Crescent Drive,Suite 600,Franklin,Tennessee 37067 United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/083206
【国際公開番号】WO2009/067365
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(510135935)クラーコア インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】CLARCOR Inc.
【住所又は居所原語表記】840 Crescent Drive,Suite 600,Franklin,Tennessee 37067 United States of America
【Fターム(参考)】
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