濾過装置及び濾過システム
本発明は濾過装置に関し、前記装置は:ミクロ壁とミクロ接触を含む1組のミクロ構造を持つ底部壁(111)を含む第1のチャンバ(110)を形成するキャビティを持つ第1のブロック(101)、前記1組のミクロ構造は前記培養チャンバの前記底部壁(111)上にミクロチャンネルとミクロチャンバを定め;第2のチャンバ(120)を持つ第2のブロック(102);及び濾過膜(130)を含み、前記第1のブロック(101)、前記膜(130)及び前記第2のブロック(102)が、前記膜(130)が前記第1のチャンバ(110)と第2のチャンバ(120)との間で、前記第1及び第2のチャンバと隣接して配置され;さらに前記膜(130)により前記第1のチャンバ(110)から分離される前記第2のチャンバ(120)内を第1の流体が通ることを可能とする、第1開口部及び第2開口部を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過現象のインビトロでの再現に関連する。より具体的には、2つのチャンバを分離する膜を含むバイオリアクターのための濾過装置、及び前記濾過装置で1以上の実施例を実行する濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移植は肝臓疾患及び腎臓不全の治療にとって現在でも最も効果的な解決方法である。しかし、ドナー不足により、臓器提供を待つ患者は、最もしばしば合併症の原因となる主要な規則的治療を受けることを強いられている。従って組織工学の最も大きな挑戦の1つは、不全性又は欠失性器官と交換することのできる人工器官を開発することである。このような人工器官により患者の生命状態は改善され、前記治療の費用が削減されると思われる。この目的で、人及び動物の体内の器官のインビトロ現象、特に濾過現象を再現するための多くの研究がなされてきた。
【0003】
このために、利用可能なバイオリアクターが、細胞の発達と組織化に適合する環境を再現できることが必要であり、一方膜が、人又は動物の組織又は器官に類似して、例えば腎臓での糸球体濾過などの濾過現象を再現することができることが必要である。
【0004】
文献、米国特許第6197575号明細書には、インビトロで人工組織又は器官を得るための細胞培養のための装置を開示する。この装置は、濾過膜を含む容器を含み前記膜は前記容器を2つに分離し、前記膜上には細胞培養物を受け入れるためのチャンネルが設けられている。従って、濾過の役割を行う前記膜はまた、培養チャンバ内で細胞培養のための支持体として使用され、前記容器の他の部分は放出チャンバを形成する。これは前記膜がある程度の剛性を持つことを意味する。培養及び放出のための種々の流体の流入/流出の組み合わせが考慮され(米国特許第6197575号明細書の図1〜2cを参照)、それぞれの組み合わせは前記装置の特定の使用に対応する。
【0005】
文献「A MEMS−Based Renal Replacement System」(2004年6月発行)には、連続血液透析での応用のための血液処理用ユニットが記載されている。前記ユニットは二重層装置スタックを含み、それぞれが血液循環及び放出チャンバのためのチャンネルのネットワークを持ち、共にお互いに、限外濾過膜で分離されている(本文件図2参照)。この文献の著者は、人の血管での血液循環を再現するネットワークの形態(モロホロジー)を定めるためのアルゴリズムを用いた。
【0006】
前記開示されたユニットは、血管での血液輸送状態を効果的に模倣する可能性を与える。実際、前記血液は非常に狭い区分を持つチャンネル内に閉じ込められ、これにより前記それぞれの装置による処理される血液流速が制限され、前記チャンネルが目詰まりすることを低減し得る。前記著者は、血液透析を実施するためには、100を超える二重層装置を想定している。
【0007】
米国特許番号第7048856号明細書には、バイオリアクターに使用され得るコンパクトな限外濾過装置が開示されている。前記装置はチャンバを含み、これには限外濾過膜が設けられ、前記膜は前記チャンバを濾過部と放出部に分離し、同様に流体入口、流体出口及び流体放出出口に分離する。前記膜は前記流体を前記入口で受け入れて意図された濾過を実行するように構成される。例えば、前記膜はポアを有し、前記サイズは血液中の尿素を濾過するように選択される。さらに、この文献で示される1つの具体的な実施態様によると、前記装置は分析チャンバを含み、そこで前記濾過流体が分析される。前記膜はまた細胞培養液を受け入れることができる。前記流体入口及び出口は、前記流体を制御するためのポンプ又はバルブが設けられてよく、場合により圧力センサと接続されていてよい。
【0008】
文献国際公開第2004/020590号には、生細胞を培養するためのバイオリアクターが記載され、その中で人の身体条件が人工的に再現されている。身体機構の特定の不全をよりよく理解するために、インビトロで異常組織のミクロ環境を模倣することのできるバイオリアクターを開発することが必要である。前記文献で提案される応用は、2つのサブチャンバに分けられたチャンバを開示しており、これらは第1の型の細胞及び第2の型の細胞をそれぞれ含む。両方のサブチャンバとも、多孔性バリアで分離され、このバリアは細胞を完全に透過させないか、特定の細胞のみ透過させるものである。前記バイオリアクターはまた、入口/出口アクセスを含み、前記サチャンバ内の細胞、流体又は化学物質の循環を可能とする。前記バイオリアクター内に適切な方法で設けられる種々の基板を追加することで、電気化学的及び光学的測定を実行することを可能とする。
【0009】
このようにインビトロ濾過装置についての多くの種類がこれまでなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6197575号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/020590号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A MEMS−Based Renal Replacement System(2004年6月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の濾過装置に比較して多くの利点を有する新規な濾過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的で、本発明は第1の側面による濾過装置を提供するものであり、前記装置は:
−ミクロ壁とミクロバンプを含む1組のミクロ構造を持つ底部壁を含む第1のチャンネルを形成するキャビティを持つ第1のブロックであり、前記1組のミクロ構造が前記培養チャンバの前記底部壁上に、ミクロチャンバ及びミクロチャンネルを定める、第1のブロックと、
−第2のチャンバを形成するキャビティを持つ第2のブロックと、
−濾過膜を含み、
前記第1のブロック、前記膜及び前記第2のブロックが、前記膜が前記第1及び第2のチャンバとの間に、前記第1及び第2のチャンバに隣接して配置されるように設けられ、かつ
−前記膜により前記第1のチャンバから分離される前記第2のチャンバ内に流体を通すための第1の開口部と第2の開口部を含む。
【0014】
本発明の前記第1の側面による濾過装置は、次の構成を単独で又は全ての技術的に可能な組み合わせにより有利に達成される:
−前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体入口と、前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体出口が含まれ、
前記ミクロチャンネルが、前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続され、かつそれぞれのミクロチャンバが前記流体出口に接続され、前記第1のミクロチャンバ内で流体循環を可能となるように、ネットワークを形成し、
−前記ミクロチャンバが、前記流体の循環方向に関して長さ寸法及び幅寸法を有し、それぞれが500μmと550μmとの間である、
−前記ミクロチャンネルが前記流体の循環方向に関して長さ寸法を持ち、700μmと750μmとの間であり、かつ前記流体の循環方向に関して幅寸法を持ち、200μmと250μmとの間である、
−前記ミクロチャンバが入口領域と出口領域を含み、前記ミクロ壁が、少なくとも1つのチャンバの前記入口領域及び前記出口領域のいずれかの側に傾斜領域を含み、前記傾斜領域が前記流体の循環方向に関して幅寸法を有し、100μmと120μmとの間であり、前記チャンバの前記入口領域のいずれかの側に部分的保護領域を定める、
−前記第1のチャンバが、前記底部壁の全表面積とある比で培養表面積を持ち、90%と110%との間である、
−前記第1のチャンバが、前記第1のチャンバの全利用可能な容積とある比で培養表面積を持ち、4/mmと6/mmとの間である、
−前記第2のチャンバが、前記第1のチャンバの前記底部壁と同じ1組のミクロ構造を持つ上部壁を持つ、
−前記膜がフレキシブル材料である、
−前記膜が疎水性材料である、
−前記膜が親水性材料である、
−前記膜がバリア性材料である、
−前記膜が、前記膜上で細胞の成長を可能とする適切な材料である、及び
−保持手段を含み、前記保持手段が、
一方で前記第1のブロックと前記膜とを共に確実に保持し、他方で前記膜と前記第2のブロックとを共に確実に保持するロック構成と、
前記1のブロックと前記膜をお互いに分離可能とし及び/又は前記膜と前記第2のブロックはお互いに分離可能とされ得るアンロック機構を含み、
前記保持手段が前記ロック構成から前記アンロック構成へ、又はその逆へ切り替え可能とする、保持手段が含まれる。
【0015】
本発明はまた、第2の側面による濾過システムを提供し、前記システムは:
−本発明の前記第1の側面による濾過装置と、
−循環手段が設けられ及び前記第2のチャンバの前記第1及び第2の開口部に接続される循環パイプを含む流体回路とを含む。
【0016】
本発明の前記第2の側面による前記濾過システムは、有利には次の構成を単独で、又はそれらの技術的に可能な組み合わせによる:
−前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体入口と、前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体出口が含まれ、
前記ミクロチャンネルが、前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続され、かつそれぞれのミクロチャンバが前記流体出口に接続され、前記第1のミクロチャンバ内で流体循環を可能となるように、ネットワークを形成し、
前記装置はさらに循環手段が設けられた循環パイプを含み、かつ前記第1のチャンバ内の前記流体入口及び出口に接続され、
−前記第1の回路は、前記第1のチャンバ内の流体圧力を制御するための制御手段を含み、及び
−前記第2の回路が前記第2のチャンバ内の流体圧力を制御するための制御手段を含む。
【0017】
本発明の他の構成、課題及び効果については、純粋に説明の目的であって一切制限する目的ではない、以下の説明を添付図面を参照することで明確となる。図中、類似の要素等には類似の符号が付される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置の模式的正面断面図を示す。
【図2】図2は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置の模式的側面断面図を示す。
【図3】図3は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様によるミクロ構造の3次元斜視図を示す。
【図4】図4は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置であり、前記第1のチャンバに流体入口及び出口が設けられているものの側面断面図を示す。
【図6】図6は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置であり、前記第1のチャンバに流体入口ネットワーク及び出口ネットワークが設けられるものを、模式的に示す。
【図7】図7は、前記第1のチャンバの底部壁のミクロ構造の模式的上面図を示し、同様に本発明の第1の側面によるこれらのミクロ構造の寸法を示す。
【図8a】図8aは、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による、異なる多孔度の膜の電子顕微鏡画像を示す。
【図8b】図8bは、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による、異なる多孔度の膜の電子顕微鏡画像を示す。
【図9】図9は、本発明の前記第2の側面による実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図10】図10は、本発明の前記第2の側面による実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図11】図11は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様によるシステムを用いる実験の際の、前記第2のチャンバ内の、濃度−対−初期濃度比の時間依存変化を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様によるシステムを用いる実験の際の、前記第2のチャンバ内の、濃度−対−初期濃度比の時間依存変化を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の前記第2の側面の可能な実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図14】図14は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様によるシステムを適用する膜の水勾配を特徴付けるための実験を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般的説明
図1及び2を参照して、本発明の前記第1の側面による濾過装置100は、第1のチャンバ110を形成するキャビティを持つ第1のブロック101、また第2のチャンバ120を形成するキャビティを持つ第2のブロック102を含み、同様に前記第1のチャンバ110及び第2のチャンバ120との間に位置しかつ前記第1及び第2のチャンバ110,120のそれぞれに隣接する濾過膜130を含む。
【0020】
これらのチャンバの両方共、濾過される流体又は操作流体を受け入れることができる。これは以下説明されるように、前記膜130は、物質を、1つの流体から前記他の流体へ、前記第1のチャンバ及び第2のチャンバ間での濃度差又は圧力差に基づき、又は当業者に知られるその他の全ての濾過原因に基づき移動させることを可能にする。
【0021】
1つの非限定的例示として、前記第1及び第2のブロック101,102は、ガラス、シリカ又は有利にはポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリジメチルシロキサン(PDMS)又はそれらの混合物などのポリマーからなる。PDMSは酸素に対して多孔性であることから有利である。両方のブロックが同じ材料又は異なる材料からなるものであってよい。
【0022】
前記第2のチャンバ120は、循環流体を受け入れることが意図される。この目的で前記装置100は、第1の開口部122及び第2の開口部123を流体を通過させるために含む。これはさらに上部壁121を含む。
【0023】
ここで「膜」とは2つの媒体を分離する壁を意味する。膜はそのポアのサイズに依存して多孔度(porocity)を持つ。
この意味で、本発明の前記第1の側面によると、前記膜は前記第1のチャンバ110及び第2のチャンバ120を分離し、これらのチャンバ110、120のそれぞれお互いに相補する単一の閉鎖空間を定める。特に、チャンバ110、120間に圧力差がない場合、前記膜は前記第1のチャンバ110の底部壁111にも前記第2のチャンバ120の前記上部壁121にも接触する点を持たない。
【0024】
以下詳細に記載されるように、チャンバ120に設けられる前記流体の方向に依存して、前記第1の開口部122(前記第2の開口部もそれぞれ同様)は前記第2のチャンバ120の流体入口(前記第2のチャンバ120の流体出口もそれぞれ同様)又は前記第2のチャンバ120の流体出口(前記第2のチャンバ120の流体入口もそれぞれ同様)であり得る。
【0025】
前記第1のチャンバ110は底部壁111を持ち、好ましくは長さと幅が定められる実質的に長方形状である。
【0026】
非限定的例示として、前記底部壁の長さ及び幅は、それぞれ13.25mm及び11.23mmである。
【0027】
以下、水平とは、前記底部壁111に平行であることを意味し、垂直とは前記壁111に直行し、前記壁111から前記膜130へ向かうことを意味する。従って、前記底部壁111は膜130に平行であり膜130の下に位置され、膜自体は前記上部壁121の下に位置される、ということができる。さらに、前記底部壁111の長手方向はd1で示される。
【0028】
これらの定義は、本明細書記載の内容を明確にするためだけのものであり、いかなる座標システムにおいても本発明の前記第1の側面による装置の使用の位置について制限するものと解釈されるべきではない。
【0029】
細胞を培養するためのミクロ構造
前記第1のチャンバ110は細胞培養液を受け入れるように意図される。この目的で、前記底部壁111は図3で3次元で示される1組のミクロ構造を持つ。これらのミクロ構造は出願人により開発されたものであり、論文「Developpement et caracterisation d’une puce a cellules pour le criblage d’agents toxiques(Development and characterization of cell chip for screening toxic agents)」の対象となっているものである。
【0030】
さらに、前記出願人は2009年6月23日に仏国特許出願番号0954288を行い、ここで特に肝臓細胞培養への応用に照らしてこれらのミクロ構造の有利な寸法を請求するものである。
【0031】
1組のミクロ構造は:
−以下で「ミクロバンプ」とされるミクロ寸法を持つバンプ111.4と、
−以下で「ミクロ壁」とされるミクロ寸法を持つ壁111.3を含む。
【0032】
前記底部壁111の「全表面積」とは、前記底部壁111が、前記ミクロ構造が垂直方向に前記壁111上に投影された場合に有するであろう表面積を意味する。
【0033】
前記ミクロ壁111.3は矢印形状部分と直線部分を持ち、前記底部壁111の全長上に伸びている。
【0034】
図2に示されるように、ミクロ壁111.3は、他のミクロ壁111.3と共に相補的にその矢印形状でミクロチャンバ111.0を定め、かつミクロバンプ111.4と相補的にその直線部でミクロチャンネル111.2を定める。
【0035】
それぞれのミクロバンプ111.4は前記ミクロバンプのいずれかの側に位置するミクロ壁と相補的にそれぞれ2つのミクロチャンネルを定める。
【0036】
前記第1のチャンバ110の前記底部壁111は従って、その長手方向d1にその幅全体にわたり周期的ラインを含む。それぞれのラインはミクロ壁111.3で交互に分離された、ミクロチャンバ111.0とミクロチャンネル111.2を含む。
【0037】
非制限的例示として、それぞれのラインは、9個のミクロチャンバ111.0及び8個のバンプ111.4−それぞれが2つのミクロチャンバ111.2に対応する−を交互に含み、前記底部壁111は合計15のラインを含む。
【0038】
かかる装置は、特にペトリ皿などの平面培養装置に比較して前記底部壁111上に細胞発達に好適な形状を持つ。このミクロ構造は、前記細胞の発達のために必要な要素、例えば酸素やグルコースを含む栄養流体を供給される場合には細胞が3次元に組織化することを可能とする。
【0039】
滞留性流体中での細胞培養
この目的で、本発明の前記第1の側面による装置は、前記第1のチャンバ内で必要な栄養物を循環することなく前記細胞への栄養供給を可能とする。実際に、前記細胞が培養される前記第1のチャンバ内に滞留性流体を配置し、前記第2のチャンバ内で栄養流体を循環させることで、前記膜130が適切に選択される場合には、前記細胞の発達のために必要な要素(特にグルコース)が前記滞留性流体内に透過する。特に、グルコースが通過するために適切な多孔度の膜を選択することが可能である。
【0040】
従って、本発明の前記第1の側面による装置100は、前記細胞の培養に第1の応用を見出す。実際、循環する栄養流体は細胞を運び去り、その構造を破壊して、細胞の発達を阻害し、細胞の活動を制限する障害となる可能性がある。前記装置100は、前記細胞と直接接触している流体を循環することなく、栄養供給液を提案することが可能であることから、前記困難を解消することができる。
【0041】
しかし前記第2のチャンバ内の前記流体循環の圧力が前記膜130の変形を起こしその後前記底部壁111により近づく。前記膜130はその後前記細胞の発達の機械的脅威となる;というのは前記細胞の構造を破壊し前記壁111から剥がす恐れがあるからである。
【0042】
この際、前記ミクロ構造はこの有害な効果から細胞を保護する。実際、たとえ、前記膜130が前記底部壁111と接触するような場合でも、それは前記ミクロ構造111.3及びミクロバンプ111.4及びミクロチャンネル111.2と接触するであろうし、前記細胞は常に前記ミクロチャンバ111.0及びミクロチャンネル111.2内で成長し得る。従って、前記ミクロチャンバ及びミクロチャンネルは、前記細胞の発達に好ましい構造を形成するだけでなくまた、前記膜130が前記底部壁111にまで変形する場合に保護する。
【0043】
それにより開示された装置100は、これが図4に示されるように本発明の前記第2の側面による濾過システムで使用され得る。前記システムはさらに、装置100,循環手段320を備えた循環パイプ310を含む流体循環回路300を含む。ここで「パイプ」とは1組の1以上のパイプを意味する。これらのパイプはフレキシブルであっても剛性であってもよく、当業者に知られた全ての適切な材料であり得る。前記流体回路300は、前記第2ブロック102内のそれぞれの通路151及び152を通って前記第2のチャンバ120内の前記第1及び第2の開口部122、123に接続される。
【0044】
循環手段320は好ましくは栄養媒体の供給340へ接続され、液体ポンプ、ぺリスタポンプ、1組のバルブ、例えばセレノイドバルブ、又はその他の当業者に知られた全ての適切な手段を含む。
【0045】
さらに、前記回路300は、好ましくは、前記第2のチャンバ120内へ通過した後前記栄養流体のための放出管350を含む。
【0046】
本発明の前記第2の側面によるかかるシステムは、前記回路300が開かれたこの図の態様に限定されるものではなく、かつ特に、前記回路300が閉じられ、場合により栄養流体を再現する手段を含む全てのシステムに拡張されるものである。
【0047】
前記第1のチャンバの流体循環
さらに、本発明の前記第1の側面による装置100は前記記載に限定されるものではない。さらに前記第1のチャンバ110内の循環もまた可能である。
【0048】
この目的で、本発明の前記第1の側面による前記装置100はさらに、図5に示されるように流体入口112及び流体出口113を含む。
【0049】
前記流体入口112は、入り口ネットワーク114を介して前記ミクロチャンネル111.2の少なくとも一部に接続される。前記入口ネットワーク114は、前記流体入口112からの前記第1のチャンバの底部壁111のそれぞれの前記ラインを供給するための一連の枝管を含む。
【0050】
前記流体は前記ミクロチャンネル111.2及びミクロチャンバ111.0で、かつ前記第1のチャンバ110のミクロ構造の上で、例えば発達細胞に供給するために循環するように意図される。
【0051】
前記流体出口113は出口ネットワーク115を介して前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される。前記出口ネットワーク115は、前記流体出口113へ前記チャンバ110の底部壁111のラインのそれぞれに接続されるための連続する合流点を含む。前記底部壁の入口114及び出口115ネットワークは本発明の有利な変法として図6に記載される。
【0052】
従って、前記ミクロチャンネル111.2は前記入口21をそれぞれのミクロチャンバ111.0に−前記入口ネットワーク114を介して−及びそれぞれのミクロチャンバを前記流体出口113−前記出口ネットワーク115を介して接続される。
【0053】
本発明には、本発明の前記第1の側面のこの有利な変法による装置の多くの応用が含まれる。
【0054】
例えば、前記細胞で試験されるべき分子を含む流体を前記チャンバ110内で循環するために用いられる。この応用は特に、人の毒性物質のスクリーニングにおいて興味が持たれる。即ち人細胞組織を培養し、チャンバ120内を循環する栄養流体を前記膜を通じて供給し、かつ前記チャンバ110内の分子を試験するために直接曝露させる。
【0055】
さらに、細胞分泌物を連続的に除去するために放出流体を前記チャンバ110内で循環させることも可能である。
【0056】
その他の可能な応用は、前記細胞の機械的刺激である。内皮細胞などのある細胞は、自然に血液などの流体の条件にある。これらの細胞は自然に摩擦により活性化され、前記第1のチャンバ110内の前記流体の循環により再現され得る。
【0057】
前記ミクロ構造の寸法
前記ミクロ構造の有利な寸法は、図7を参照して本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様により説明される。
【0058】
この有利な変法で、前記ミクロチャンネル111.0は前記方向d1に関して長さ寸法及び幅寸法を有し、それぞれは約500μm及び550μmの間、好ましくは520μmを有する。従って、前記濾過装置100の前記ミクロチャンバ111.0の寸法は有利には520μmx520μmx100μmである。
【0059】
これらの寸法は、前記ミクロチャンバ111.0内の肝細胞発達のために特に好ましい。
【0060】
なお有利には、前記ミクロチャンネル111.2は方向d1に関して、長さ寸法が700μmと750μmの間、好ましくは720μmであり、幅寸法は200μmと250μmの間、好ましくは220μmである。従って前記装置100のミクロチャンネル111.2の寸法は、有利には720μmx220μmx100μmである。
【0061】
それにより前記寸法のミクロチャンネル111.2は肝細胞の発達を促進し、特に肝臓器官の一部がミクロチャンネルのネットワークを通じて移動することを可能とする。
【0062】
さらに、図5には、本発明の第1の側面の濾過装置100の1つの可能な実施態様についての、ミクロ壁111.3、ミクロバンプ111.4及びミクロチャンネル111.2のいくつかの他の特徴的寸法が記載されている。
【0063】
1つの有利な変法により、前記ミクロ壁111.3は、図4及び6に示されるように、少なくとも1つのチャンバ111.0の前記入口領域111.5及び出口領域111.6のいずれかの側で傾斜領域111.7を含む。
【0064】
これらの傾斜領域111.7は前記方向d1に関して幅寸法、100μmと120μmの間、好ましくは110μmを含む。特に前記流体循環方向d1を横切る端部を持つ。前記傾斜領域111.7は、前記方向d1に関して、前記チャンバ110の入口領域111.5のいずれかの側に部分的に保護領域、即ち前記流体の流速が循環が急激に低下する領域を定める。
【0065】
従って、かかる部分的に保護された領域での発達中の細胞が、前記ミクロチャンバ111.0内の流体循環により運び出されることはほとんどない。
【0066】
通常前記細胞が前記流体により運び出されることが保護される領域の程度は循環条件により、特に流速及び剪断特性に依存する。
【0067】
それにもかかわらず、本発明の前記第1の側面のこの有利な変法による部分的保護領域は、少なくとも100μmの幅を持つ前記方向d1を横切る端部を持つ。
【0068】
それらは従って、前記方向d1に関して入口領域111.5から下流で、前記ミクロチャンバ111.0のいずれかの側で横切るコーナー111.8で細胞が集塊することを可能とする。特に肝細胞は、好ましい細胞活性のための形状である、100μmの程度の大きな直径を有する球状として集塊することを可能とする。
【0069】
一般に、ミクロチャンネルのネットワークは細胞が発達し発達領域で3次元の構造を持って集塊することを可能とする。即ち:
−前記ミクロチャンバ111.0で前記底部壁111の位置、
−前記ミクロチャンネル111.2で前記底グヘキャリア111の位置、
−前記ミクロ壁111.3の側壁及び
−前記ミクロバンプ111.4の側壁である。
【0070】
これらの全発達領域は培養表面積により定められる。有利には、前記底部壁領域111の全表面積と発達表面積との比は90%と110%との間にある。好ましくは1%の精度で100%に等しい。
【0071】
非限定的数値範囲として、前記培養表面積は次のように区分され得る(全底部壁表面積は149mm2):
−前記ミクロチャンバ111.0と前記ミクロチャンバ111.2での前記底部壁の表面積:96.5mm2、
−前記ミクロバンプ111.4の側壁表面積:36.5mm2、
−前記ミクロバンプ111.4の側壁表面積:18mm2。
【0072】
前記培養表面積は従って151mm2となる。
【0073】
前記培養表面の前記底部壁全表面積との比は従ってこの例では101%となる。
【0074】
従って、前記底部壁111上のミクロ構造は、前記底部壁111の全表面積に比較して利用可能な表面積をほとんど変更するものではなく、さらに3次元発達を可能とするものである。
【0075】
さらに、細胞は前記ミクロ壁111.3及びミクロバンプ111.4上の上部表面上で発達し得る。ただしかかる領域は3次元発達に特に好ましいというわけではない。
【0076】
前記ミクロ壁111.3及び前記ミクロバンプ111.4の上部表面積を加えた前記培養表面は従って「全培養表面積」とする。
【0077】
前記の数値例で、これらの上部表面積は52.2mm2であり、全培養表面積は203.5mm2となり、全培養表面積と前記全底部壁表面積との比は137%となる。
【0078】
なお有利には、前記培養チャンバ10は1つの容積を持ち、前記全培養表面積と前記培養チャンバ10の容積との比は、4mm−1と6mm−1の間の値を持つ。
【0079】
前記容量が前記全培養表面積に比較して小さすぎると(R2>6mm−1)、細胞が閉じ込められ前記流体による十分な栄養が供給されず、細胞発達を害する恐れがある。
【0080】
さらに、前記容量が前記全培養表面積に比較して大きすぎると(R2<4mm−1)もはや興味の対象とはならず、これは実際には小型装置を持つことが好ましい。
【0081】
前記第1のチャンバ110の容積とは、前記流体の通過のための利用可能な容積を意味し、前記ミクロ壁111.3とミクロバンプ111.4により占められる容積は従って除かれる。
【0082】
前記数値例での値を取り、チャンバ高さが0.2mmとすると、前記培養チャンバ110の容積は次のように決定される:149x0.2−52.2x0.1=24.55mm3。
【0083】
全培養表面積と前記第1のチャンバ110の容積との比は従って、203.5mm2/24.55mm3=8.29mm−1となる。
【0084】
有利には、前記第2のチャンバ120の上部表面121もまたミクロ構造を有する。これらのミクロ構造は、前記第1のチャンバ110の底部壁111に関してこれまで詳細に説明されたミクロ構造との全ての有利な変形をも含み得る。前記ミクロ構造は前記下部壁111及び上部壁121の理想的寸法であり得る。この利点は特に、両方のチャンバで細胞を培養する観点から興味ある応用の1つである。
【0085】
本発明の範囲に含まれる膜
本発明の範囲に含まれる膜120の異なる特徴について以下詳細に説明する。
【0086】
膜130は好ましくはフレキシブル材料であり、従って前記チャンバ110、120のそれぞれに与えられる圧力に依存してやや変形可能である。前記のように、前記ミクロ構造は膜130が前記壁に接着されることを防止し、培養細胞が膜に接触することから保護する。
【0087】
膜130は疎水性又は親水性であり、目標とする応用(透析、細胞培養など)に依存する。
【0088】
膜は、その末端基が水素結合により水と相互作用する場合に親水性といわれる。セルロース膜などの疎水性膜は優れた拡散性を有し、タンパク質の吸着が少なく、優れた対流性を示す。しかし一方では生物適合性については低い。
【0089】
この膜は水及び非常に小さい溶質を通過させるための透析に使用される。
【0090】
人工膜などの疎水性膜は、低い拡散性を示すが、その高い多孔度による高い限外濾過係数を持ち、タンパク質吸着の好ましくない効果を相殺するものである。このタンパク質吸着性は、より優れた生物適合性の原因となる。この膜はしばしば血液濾過に使用される。この膜の生物適合性により、これらの膜が細胞培養に数多く応用されている。
【0091】
前記膜は、前記ミクロポアタイプ(図8A及び8B)のミクロ構造によりミクロ構造化され得るだけではなく、また、ミクロチャンネル又はミクロキャピラリ又は例えば図7に示される形状のミクロ形状であるミクロポアのミクロ構造によりミクロ構造化され得る。
【0092】
有利には、前記膜130は疎水性であってよく、これによりバクテリアやタンパク質の吸着を制限し、前記膜130のポア内の流体の通過抵抗を低減する。
【0093】
又は膜130は親水性であってよく、これによりバクテリアの吸着を制限し、タンパク質の吸着を促し、前記ポア内に流体の抵抗を増加させる。
【0094】
異なる多孔度は、濾過されるべき要素のサイズに依存して膜130に使用され得る。
1つの有利な変法によると、膜130は好ましくはバリア膜であり、即ち小分子又は気体のみ通過させ、流体の1つのチャンバ110、120から他のチャンバ120、110への通過を防止する。図8A及び8Bには、多孔度がそれぞれ40000Da及び500000Daであるポリエーテルスルホンの2つの例示的膜130a、130bの電子顕微鏡により取得された画像を示す。
【0095】
本発明の1つの可能な実施態様により、膜130は、膜130上で細胞を培養することができるように選択される。
特に、MDCKやCaco−2細胞などの前記膜上の生物的バリア(例えば腸バリア又は脳関門)のモデル細胞を培養するために有利である。
【0096】
好ましくは、しかし限定されるものではないが、膜130は表面積が1cm2の程度である。
【0097】
前記ブロック及び膜の分離
有利には、本発明の前記第1の側面による前記濾過装置100は、保持手段160を含み、前記第1のブロック101、前記膜130及び前記第2のブロック102をこの順で保持する。
【0098】
前記手段160は、一方で、前記第1のブロック101及び膜130が共に確実に保持されるように、他方で、前記膜130及び前記第2のブロックが共に確実に保持されるようにロック構成を持ち、かつ前記ブロック101と膜130がお互いに分離され及び/又は前記膜130と前記第2のブロック102がお互いに分離されるようにアンロック構成を持つ。
【0099】
さらに、前記保持手段160は、例えばユーザ操作により、前記ロック構成からアンロック構成へ、又はその逆に切替可能とされる。
【0100】
前記手段160は、図1に示されるように、前記第1のブロック101、膜130及び第2のブロック102を全体の高さにわたり通じるネジを含む。
前記手段160はまた、ストップ、バイス又は当業者に知られるその他の適切な手段を含み得る。
【0101】
かかる保持手段160はいくつかの利点を有する。これは前記装置100をその構成部品に分離することを可能とし、かつ再組立する可能性を有する。
従って、前記装置100を使用不能にすることなく、チャンバ110及び120に、膜130と同様にアクセスすることを可能とする。
【0102】
このことは特に、表面上に吸着された濾過されるべき分子を前記チャンバから洗浄しかつ例えばオートクレーブで殺菌するため、又はその他の当業者に知られた適切な洗浄方法で洗浄するために有用である。
【0103】
さらに、前記膜130は、膜間電気抵抗測定、前記細胞に蛍光標識するための膜の回収、インピーダンス測定、又は当業者に知られるその他の有用な分析などの供するために回収され得る。細胞培養を受け入れる膜の場合において、前記手段160はまた、この培養物を前記装置100から流体と共に放出されること(これは前記培養構造を破壊するおそれがある)を防止しつつ直接に前記細胞にアクセスする可能性を提供する。
【0104】
さらに、前記膜は、洗浄を必要とすることなく繰り返し実験のために新しい膜と交換し得る。従って、膜130を交換して実験を繰り返すことが可能となり、その間前記チャンバ110、120の細胞内容はそのまま維持される。
【0105】
逆にまた、同じ膜130は1つの装置100から他の装置に移されて、異なるミクロ構造の形状を持つチャンバ110、120で実験の対象とすることができる。このことは、前記濾過又は前記膜130上の細胞培養におけるミクロ構造の効果を特徴付けるために有用である。
【0106】
2つの流体回路を持つ濾過システム
本発明の前記第2の側面のいくつかの可能な実施態様による濾過システムについて、図9から11を参照して記載される。
【0107】
以下記載される変法において、前記濾過システム内に組み込まれた前記装置100は、前記第1のチャンバ110内に流体入口112及び流体出口113を含む。
【0108】
前記システムは、前記第1のチャンバ110に接続される流体回路200を含み、これは前記第2のチャンバ120へ接続された前記回路300と類似するものである。前記流体回路200は、循環手段220を設けられた循環パイプ210を含み、前記第1のチャンバ110内の前記入口112及び出口113に接続されている。前記流体回路200は、前記第1のチャンバ110に、前記第1のブロック101のそれぞれの通路141と142を介して前記流体入口112と出口113に接続されている。
【0109】
前記循環手段320は、好ましくは、流体供給240に接続され、かつ流体ポンプ、ペリスタポンプ、1組のバルブ、例えばセレノイドバルブ、又は当業者に知られた全ての他の手段を含み得る。
【0110】
さらに、前記回路200は好ましくは、前記第1のチャンバ110内に通過した後の前記流体について放出導管250を含む。
【0111】
本発明の前記第2の側面によるシステムは、ここで図示された前記回路200が開いている実施態様に限定されるものではなく、特に前記回路200が閉じられ場合により前記流体を再生するための手段を含む、全てのシステムに拡張され得る。
【0112】
さらに、前記回路200及び/又は300内で循環する流体は有利には温度制御される。例えば、前記供給240及び/又は340は、温度調節浴(図示されていない)内に設けられ得る。これに代えて、又はこれに加えて、前記回路200及び/又は300の温度を制御するための当業者に知られるその他の手段が含まれる。
【0113】
図9に示される他の実施態様では、前記下部チャンバ110と上部チャンバ120に含まれる流体が順流として循環する。この構成によると、前記第1の開口部122は前記第2のチャンバ120の流体出口であり、前記第2の開口部123は前記第2のチャンバ120の流体入口である。
【0114】
さらに、図10で示されるように、1つの他の実施態様は、前記下部チャンバ110と上部チャンバ120に含まれる流体が向流として循環する。この構成によると、前記第1の開口部120は前記第2のチャンバ120内の流体入口であり、前記第2の開口部123は前記第2のチャンバ120の流体出口である。
【0115】
図9及び10に示されるシステムは、特に血液透析の分野での応用を持つ。処理されるべき血液は前記第2のチャンバ120内を循環し、通常なら機能的腎臓により除かれる特定の成分を前記膜130を通すことで濾過することで清浄化される。前記第1のチャンバ110に含まれる透析流体は、その後濾過された成分を放出し患者のグルコース提供を確実にする。
【0116】
かかるシステムはまた、濾過膜130を特徴付けるために使用され得る。例えば、所与の膜130について1つの分子の拡散係数を、物理的モデル及び前記第1のチャンバ110及び/又は第2のチャンバ120での前記分子の濃度と時間の測定とから、評価することが可能である。前記順流システムは、前記モデルを較正し、拡散係数を評価するために使用され得る。さらに前記向流システムは前記拡散係数をチュックするために使用され得る。又はこれらの逆もまた可能である。
【0117】
特に以下の式により、濾過されるべき流体が前記第2のチャンバ内で循環する場合において、前記第1のチャンバ110内の濃度の時間依存変化がモデル化される。
−順流体の場合(図9に示される):
【0118】
【数1】
−向流体の場合(図10に示される):
【0119】
【数2】
ここで、
【0120】
【数3】
であり、かつ
C1(t)は、時間の関数として前記第1のチャンバ110での濃度を表し、
Lは、第1及び第2のチャンバ110、120の(共通する)長さを表し、
bは、第1及び第2のチャンバ110、120の(共通する)幅さを表し、
Qfは、前記濾過流速を表し、
V1は前記第1のチャンバ110の容積を表し、
V2は前記第2のチャンバ120の容積を表し、
C10は、前記第1のチャンバ110の初期濃度を表し。
C1∞は、前記第1のチャンバ110の平衡濃度を表し、
Dmは、膜130で濾過される分子の拡散係数を表し、
δは膜の厚さを表す。
【0121】
これらのモデル化の手段により、所与の膜130についての試験されるべき分子の拡散係数Dm値が決定され得る。このために、例えば、順流モードで操作し、前記第2のチャンバ内の前記分子の消失(従って前記第1のチャンバ10への発現)を測定することが可能である。
【0122】
図11及び12では、前記第2のチャンバ120での濃度−対−初期濃度比の変化が所与の実験条件について時間に対して示されており、尿素(図11)及びビタミンB12(図12)のそれぞれが、いくつかのタイプの膜を用いて実験されている。さらに、アルブミンについてもこの比を決定した(グラフに示されていない)。
【0123】
実験結果が次の表に示されている。高多孔度膜(8Fタイプ)を用いた実験は記号□、△で、低多孔度膜(1FPHタイプ)を用いた実験は記号*及び○で表されている。次に分析モデルの回帰を例えば最小二乗法により行い実験的に拡散係数(m2/s)を得ることが可能である。
【0124】
【表1】
従って、分子が大きいほど拡散係数は小さくなる。さらに膜多孔度が大きくなるほど拡散係数は大きくなる。
【0125】
拡散係数がその後向流モードで実証された。
【0126】
従って、1cm2程度の膜表面積を必要とするミクロシステムを持つ膜を特徴付けることが可能となる。必要な場合、前記水滴された特徴はより大きなサイズの膜について外挿され得る。
【0127】
チャンバ内での圧力制御
図13を参照して、前記循環回路200は有利には、前記第1のチャンバ110内に流体圧力制御手段230を含むか、又は前記循環回路300は有利には前記第2のチャンバ120内に流体圧力制御手段330を含むか、又は両方の回路200、300がそれぞれ、関連するチャンバ110、120内に圧力制御手段230,330を含む。
【0128】
好ましくは、限定されるものではないが、前記制御装置230(それぞれ330)は圧力センサ231、232(それぞれ331、332)を含み、前記第1のブロック101(前記第2のブロック102ではそれぞれ151、152)内の前記通路141、142、又は前記流体入口及び出口112、113(前記第1及び第2の開口部それぞれ122、123)での流体の圧力を検出する。前記手段230(それぞれ330)はさらに、アクチュエータ233、234(それぞれ333、334)を含み、これらは前記パイプ210(それぞれ310)上に配置され、前記第1のチャンバ110(それぞれ前記第2のチャンバ120)内の前記流体の入口及び出口での圧力を変更する。これらのアクチュエータは、例えば圧力センサからのデータを処理するためのユニット(図示されていない)又は当業者に知られる全ての他の手段により制御されるセレノイドバルブであり得る。
【0129】
前記圧力制御はそれぞれの制御手段230、330のユニットにより実施され、固定又は可変設定値回りの圧力を安定化させる。安定化は例えば、比例制御装置、比例積分制御装置、オープンループ(圧力センサが使用されない場合)又はその他のシステム制御の分野の当業者に知られる適切な制御ループなどを適用することで行われる。
【0130】
前記回路200、300の制御手段230、330は、本発明の前記第2の側面による濾過システムのために意図される用途により、類似するか又は相違する。
【0131】
これらは、放出率又は拡散係数などの濾過の際の特定のパラメータを監視するために非常に有用であることを証明するものである。
【0132】
この圧力差は、前記膜が前記壁上に接着しないように規定の値で維持され得る。
【0133】
さらに、前記手段230、330は前記チャンバ110、120内の流体と濾過中の膜間流体との速度条件を制御することを可能とする。これにより、所与の溶質について放出率、即ち前記膜により維持される溶解物質のパーセント及び前記膜130を通る前記溶質の拡散係数などの濾過パラメータの制御を可能とする。
【0134】
従って、手段230、330は、流速と膜間流体の同じ条件で繰り返し実験を行うことを可能とする。
【0135】
この有利な効果の特に興味ある応用は、同様の実験条件下で異なる膜を試験することである。このことは例えば図14に示される実験を介して前記膜の性質、例えば水勾配−即ち純粋の前記膜の浸透圧−の特徴付け可能とする。
【0136】
この実験で、前記第2のチャンバ120内の循環流体は水である。前記第1のチャンバ110には細胞培養物は含まれておらず、前記第1の回路200を短く循環するための手段250により、前記第1のチャンバはさらに供給240及び循環手段220から分離されている。又はこの例では、前記第1の回路200は供給240を含まず、循環手段220も含まない。この場合には前記短い循環手段250は必要ない。このことを示すために、供給240及び前記手段220は、図14で点線の長方形で囲まれている。
【0137】
さらに、前記第2の回路300の放出管350は水についてブロックされている(例えば閉鎖タップ)。従って、前記第2の開口部152を通る前記第2のチャンバ内を循環する水は、前記第1のブロック101の通路140を通ってのみ前記装置100から流出され、前記通路142は前記パイプ210を通って前記第1の回路200の放出管250に接続される。
【0138】
さらに、本発明の前記第2の側面のこの変法による前記システムは、水の量を測定するための装置400に関連し、前記放出管250に接続される容器410、スケール420及び前記スケールと相互作用する処理ユニット430を含み、前記容器410内に含まれる水の量を時間に対して決定することが意図される。さらに前記処理ユニットは手段230、330から、両方の回路200、300内の圧力を制御するために情報を受け取る。
【0139】
従って、前記装置400は、前記膜130を通る水の量対時間及び膜間圧力を評価することが可能となり、前記膜130の水勾配の決定を可能とする。
【0140】
この実験は、図8A及び8Bのそれぞれに示される膜130a及び130b上で行われた。前記決定された水勾配はそれぞれ、8mL/(分.バール.cm3)及び80mL(分.バール.cm3)である。
【0141】
他の応用は、前記第1のチャンバ110(及び、細胞培養物を受け入れる場合に、前記第2のチャンバ120)での圧力低下を測定することであり、圧力低下は、前記チャンバ内の数種類の培養細胞上に指示を与える。
【0142】
直列接続された装置
最後に、いくつかの濾過装置100を直列に配置することも本発明に含まれ、それにより腎臓の操作ステップを完全に再現でき、それぞれの装置が特定の機能を再現し得る。さらに一般的に、いくつかの装置100が直列に使用され、前記身体内の流体及び種々の細胞組織間の相互作用を再現するために使用され得る。
【0143】
結論
本発明は多くの効果を持つ。本発明の前記第2の側面によるシステムはよりより大きなシステムに匹敵する濾過を可能とする。前記流体の回路は乱流を起こさず、本発明の前記第1の側面による前記装置のチャンバ内同様にパイプ内でも非常にわずかな端部効果を持つのみである。圧力と前記膜を制御するための手段を用いて、均一なパラメータ(流体の圧力、温度、成分及び濃度)を維持して、前記観察された結果が類似のパラメータを持つシステムに容易に外挿され得る。従って、本発明は、人又は動物体の現象のインビトロ再現への大きなステップであり、同様に人工器官作成への大きなステップである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過現象のインビトロでの再現に関連する。より具体的には、2つのチャンバを分離する膜を含むバイオリアクターのための濾過装置、及び前記濾過装置で1以上の実施例を実行する濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移植は肝臓疾患及び腎臓不全の治療にとって現在でも最も効果的な解決方法である。しかし、ドナー不足により、臓器提供を待つ患者は、最もしばしば合併症の原因となる主要な規則的治療を受けることを強いられている。従って組織工学の最も大きな挑戦の1つは、不全性又は欠失性器官と交換することのできる人工器官を開発することである。このような人工器官により患者の生命状態は改善され、前記治療の費用が削減されると思われる。この目的で、人及び動物の体内の器官のインビトロ現象、特に濾過現象を再現するための多くの研究がなされてきた。
【0003】
このために、利用可能なバイオリアクターが、細胞の発達と組織化に適合する環境を再現できることが必要であり、一方膜が、人又は動物の組織又は器官に類似して、例えば腎臓での糸球体濾過などの濾過現象を再現することができることが必要である。
【0004】
文献、米国特許第6197575号明細書には、インビトロで人工組織又は器官を得るための細胞培養のための装置を開示する。この装置は、濾過膜を含む容器を含み前記膜は前記容器を2つに分離し、前記膜上には細胞培養物を受け入れるためのチャンネルが設けられている。従って、濾過の役割を行う前記膜はまた、培養チャンバ内で細胞培養のための支持体として使用され、前記容器の他の部分は放出チャンバを形成する。これは前記膜がある程度の剛性を持つことを意味する。培養及び放出のための種々の流体の流入/流出の組み合わせが考慮され(米国特許第6197575号明細書の図1〜2cを参照)、それぞれの組み合わせは前記装置の特定の使用に対応する。
【0005】
文献「A MEMS−Based Renal Replacement System」(2004年6月発行)には、連続血液透析での応用のための血液処理用ユニットが記載されている。前記ユニットは二重層装置スタックを含み、それぞれが血液循環及び放出チャンバのためのチャンネルのネットワークを持ち、共にお互いに、限外濾過膜で分離されている(本文件図2参照)。この文献の著者は、人の血管での血液循環を再現するネットワークの形態(モロホロジー)を定めるためのアルゴリズムを用いた。
【0006】
前記開示されたユニットは、血管での血液輸送状態を効果的に模倣する可能性を与える。実際、前記血液は非常に狭い区分を持つチャンネル内に閉じ込められ、これにより前記それぞれの装置による処理される血液流速が制限され、前記チャンネルが目詰まりすることを低減し得る。前記著者は、血液透析を実施するためには、100を超える二重層装置を想定している。
【0007】
米国特許番号第7048856号明細書には、バイオリアクターに使用され得るコンパクトな限外濾過装置が開示されている。前記装置はチャンバを含み、これには限外濾過膜が設けられ、前記膜は前記チャンバを濾過部と放出部に分離し、同様に流体入口、流体出口及び流体放出出口に分離する。前記膜は前記流体を前記入口で受け入れて意図された濾過を実行するように構成される。例えば、前記膜はポアを有し、前記サイズは血液中の尿素を濾過するように選択される。さらに、この文献で示される1つの具体的な実施態様によると、前記装置は分析チャンバを含み、そこで前記濾過流体が分析される。前記膜はまた細胞培養液を受け入れることができる。前記流体入口及び出口は、前記流体を制御するためのポンプ又はバルブが設けられてよく、場合により圧力センサと接続されていてよい。
【0008】
文献国際公開第2004/020590号には、生細胞を培養するためのバイオリアクターが記載され、その中で人の身体条件が人工的に再現されている。身体機構の特定の不全をよりよく理解するために、インビトロで異常組織のミクロ環境を模倣することのできるバイオリアクターを開発することが必要である。前記文献で提案される応用は、2つのサブチャンバに分けられたチャンバを開示しており、これらは第1の型の細胞及び第2の型の細胞をそれぞれ含む。両方のサブチャンバとも、多孔性バリアで分離され、このバリアは細胞を完全に透過させないか、特定の細胞のみ透過させるものである。前記バイオリアクターはまた、入口/出口アクセスを含み、前記サチャンバ内の細胞、流体又は化学物質の循環を可能とする。前記バイオリアクター内に適切な方法で設けられる種々の基板を追加することで、電気化学的及び光学的測定を実行することを可能とする。
【0009】
このようにインビトロ濾過装置についての多くの種類がこれまでなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6197575号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/020590号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A MEMS−Based Renal Replacement System(2004年6月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の濾過装置に比較して多くの利点を有する新規な濾過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的で、本発明は第1の側面による濾過装置を提供するものであり、前記装置は:
−ミクロ壁とミクロバンプを含む1組のミクロ構造を持つ底部壁を含む第1のチャンネルを形成するキャビティを持つ第1のブロックであり、前記1組のミクロ構造が前記培養チャンバの前記底部壁上に、ミクロチャンバ及びミクロチャンネルを定める、第1のブロックと、
−第2のチャンバを形成するキャビティを持つ第2のブロックと、
−濾過膜を含み、
前記第1のブロック、前記膜及び前記第2のブロックが、前記膜が前記第1及び第2のチャンバとの間に、前記第1及び第2のチャンバに隣接して配置されるように設けられ、かつ
−前記膜により前記第1のチャンバから分離される前記第2のチャンバ内に流体を通すための第1の開口部と第2の開口部を含む。
【0014】
本発明の前記第1の側面による濾過装置は、次の構成を単独で又は全ての技術的に可能な組み合わせにより有利に達成される:
−前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体入口と、前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体出口が含まれ、
前記ミクロチャンネルが、前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続され、かつそれぞれのミクロチャンバが前記流体出口に接続され、前記第1のミクロチャンバ内で流体循環を可能となるように、ネットワークを形成し、
−前記ミクロチャンバが、前記流体の循環方向に関して長さ寸法及び幅寸法を有し、それぞれが500μmと550μmとの間である、
−前記ミクロチャンネルが前記流体の循環方向に関して長さ寸法を持ち、700μmと750μmとの間であり、かつ前記流体の循環方向に関して幅寸法を持ち、200μmと250μmとの間である、
−前記ミクロチャンバが入口領域と出口領域を含み、前記ミクロ壁が、少なくとも1つのチャンバの前記入口領域及び前記出口領域のいずれかの側に傾斜領域を含み、前記傾斜領域が前記流体の循環方向に関して幅寸法を有し、100μmと120μmとの間であり、前記チャンバの前記入口領域のいずれかの側に部分的保護領域を定める、
−前記第1のチャンバが、前記底部壁の全表面積とある比で培養表面積を持ち、90%と110%との間である、
−前記第1のチャンバが、前記第1のチャンバの全利用可能な容積とある比で培養表面積を持ち、4/mmと6/mmとの間である、
−前記第2のチャンバが、前記第1のチャンバの前記底部壁と同じ1組のミクロ構造を持つ上部壁を持つ、
−前記膜がフレキシブル材料である、
−前記膜が疎水性材料である、
−前記膜が親水性材料である、
−前記膜がバリア性材料である、
−前記膜が、前記膜上で細胞の成長を可能とする適切な材料である、及び
−保持手段を含み、前記保持手段が、
一方で前記第1のブロックと前記膜とを共に確実に保持し、他方で前記膜と前記第2のブロックとを共に確実に保持するロック構成と、
前記1のブロックと前記膜をお互いに分離可能とし及び/又は前記膜と前記第2のブロックはお互いに分離可能とされ得るアンロック機構を含み、
前記保持手段が前記ロック構成から前記アンロック構成へ、又はその逆へ切り替え可能とする、保持手段が含まれる。
【0015】
本発明はまた、第2の側面による濾過システムを提供し、前記システムは:
−本発明の前記第1の側面による濾過装置と、
−循環手段が設けられ及び前記第2のチャンバの前記第1及び第2の開口部に接続される循環パイプを含む流体回路とを含む。
【0016】
本発明の前記第2の側面による前記濾過システムは、有利には次の構成を単独で、又はそれらの技術的に可能な組み合わせによる:
−前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体入口と、前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される前記第1のチャンバ内の流体出口が含まれ、
前記ミクロチャンネルが、前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続され、かつそれぞれのミクロチャンバが前記流体出口に接続され、前記第1のミクロチャンバ内で流体循環を可能となるように、ネットワークを形成し、
前記装置はさらに循環手段が設けられた循環パイプを含み、かつ前記第1のチャンバ内の前記流体入口及び出口に接続され、
−前記第1の回路は、前記第1のチャンバ内の流体圧力を制御するための制御手段を含み、及び
−前記第2の回路が前記第2のチャンバ内の流体圧力を制御するための制御手段を含む。
【0017】
本発明の他の構成、課題及び効果については、純粋に説明の目的であって一切制限する目的ではない、以下の説明を添付図面を参照することで明確となる。図中、類似の要素等には類似の符号が付される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置の模式的正面断面図を示す。
【図2】図2は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置の模式的側面断面図を示す。
【図3】図3は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様によるミクロ構造の3次元斜視図を示す。
【図4】図4は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置であり、前記第1のチャンバに流体入口及び出口が設けられているものの側面断面図を示す。
【図6】図6は、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による濾過装置であり、前記第1のチャンバに流体入口ネットワーク及び出口ネットワークが設けられるものを、模式的に示す。
【図7】図7は、前記第1のチャンバの底部壁のミクロ構造の模式的上面図を示し、同様に本発明の第1の側面によるこれらのミクロ構造の寸法を示す。
【図8a】図8aは、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による、異なる多孔度の膜の電子顕微鏡画像を示す。
【図8b】図8bは、本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様による、異なる多孔度の膜の電子顕微鏡画像を示す。
【図9】図9は、本発明の前記第2の側面による実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図10】図10は、本発明の前記第2の側面による実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図11】図11は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様によるシステムを用いる実験の際の、前記第2のチャンバ内の、濃度−対−初期濃度比の時間依存変化を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様によるシステムを用いる実験の際の、前記第2のチャンバ内の、濃度−対−初期濃度比の時間依存変化を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の前記第2の側面の可能な実施態様による濾過システムの模式的側面断面図を示す。
【図14】図14は、本発明の前記第2の側面の1つの可能な実施態様によるシステムを適用する膜の水勾配を特徴付けるための実験を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般的説明
図1及び2を参照して、本発明の前記第1の側面による濾過装置100は、第1のチャンバ110を形成するキャビティを持つ第1のブロック101、また第2のチャンバ120を形成するキャビティを持つ第2のブロック102を含み、同様に前記第1のチャンバ110及び第2のチャンバ120との間に位置しかつ前記第1及び第2のチャンバ110,120のそれぞれに隣接する濾過膜130を含む。
【0020】
これらのチャンバの両方共、濾過される流体又は操作流体を受け入れることができる。これは以下説明されるように、前記膜130は、物質を、1つの流体から前記他の流体へ、前記第1のチャンバ及び第2のチャンバ間での濃度差又は圧力差に基づき、又は当業者に知られるその他の全ての濾過原因に基づき移動させることを可能にする。
【0021】
1つの非限定的例示として、前記第1及び第2のブロック101,102は、ガラス、シリカ又は有利にはポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリジメチルシロキサン(PDMS)又はそれらの混合物などのポリマーからなる。PDMSは酸素に対して多孔性であることから有利である。両方のブロックが同じ材料又は異なる材料からなるものであってよい。
【0022】
前記第2のチャンバ120は、循環流体を受け入れることが意図される。この目的で前記装置100は、第1の開口部122及び第2の開口部123を流体を通過させるために含む。これはさらに上部壁121を含む。
【0023】
ここで「膜」とは2つの媒体を分離する壁を意味する。膜はそのポアのサイズに依存して多孔度(porocity)を持つ。
この意味で、本発明の前記第1の側面によると、前記膜は前記第1のチャンバ110及び第2のチャンバ120を分離し、これらのチャンバ110、120のそれぞれお互いに相補する単一の閉鎖空間を定める。特に、チャンバ110、120間に圧力差がない場合、前記膜は前記第1のチャンバ110の底部壁111にも前記第2のチャンバ120の前記上部壁121にも接触する点を持たない。
【0024】
以下詳細に記載されるように、チャンバ120に設けられる前記流体の方向に依存して、前記第1の開口部122(前記第2の開口部もそれぞれ同様)は前記第2のチャンバ120の流体入口(前記第2のチャンバ120の流体出口もそれぞれ同様)又は前記第2のチャンバ120の流体出口(前記第2のチャンバ120の流体入口もそれぞれ同様)であり得る。
【0025】
前記第1のチャンバ110は底部壁111を持ち、好ましくは長さと幅が定められる実質的に長方形状である。
【0026】
非限定的例示として、前記底部壁の長さ及び幅は、それぞれ13.25mm及び11.23mmである。
【0027】
以下、水平とは、前記底部壁111に平行であることを意味し、垂直とは前記壁111に直行し、前記壁111から前記膜130へ向かうことを意味する。従って、前記底部壁111は膜130に平行であり膜130の下に位置され、膜自体は前記上部壁121の下に位置される、ということができる。さらに、前記底部壁111の長手方向はd1で示される。
【0028】
これらの定義は、本明細書記載の内容を明確にするためだけのものであり、いかなる座標システムにおいても本発明の前記第1の側面による装置の使用の位置について制限するものと解釈されるべきではない。
【0029】
細胞を培養するためのミクロ構造
前記第1のチャンバ110は細胞培養液を受け入れるように意図される。この目的で、前記底部壁111は図3で3次元で示される1組のミクロ構造を持つ。これらのミクロ構造は出願人により開発されたものであり、論文「Developpement et caracterisation d’une puce a cellules pour le criblage d’agents toxiques(Development and characterization of cell chip for screening toxic agents)」の対象となっているものである。
【0030】
さらに、前記出願人は2009年6月23日に仏国特許出願番号0954288を行い、ここで特に肝臓細胞培養への応用に照らしてこれらのミクロ構造の有利な寸法を請求するものである。
【0031】
1組のミクロ構造は:
−以下で「ミクロバンプ」とされるミクロ寸法を持つバンプ111.4と、
−以下で「ミクロ壁」とされるミクロ寸法を持つ壁111.3を含む。
【0032】
前記底部壁111の「全表面積」とは、前記底部壁111が、前記ミクロ構造が垂直方向に前記壁111上に投影された場合に有するであろう表面積を意味する。
【0033】
前記ミクロ壁111.3は矢印形状部分と直線部分を持ち、前記底部壁111の全長上に伸びている。
【0034】
図2に示されるように、ミクロ壁111.3は、他のミクロ壁111.3と共に相補的にその矢印形状でミクロチャンバ111.0を定め、かつミクロバンプ111.4と相補的にその直線部でミクロチャンネル111.2を定める。
【0035】
それぞれのミクロバンプ111.4は前記ミクロバンプのいずれかの側に位置するミクロ壁と相補的にそれぞれ2つのミクロチャンネルを定める。
【0036】
前記第1のチャンバ110の前記底部壁111は従って、その長手方向d1にその幅全体にわたり周期的ラインを含む。それぞれのラインはミクロ壁111.3で交互に分離された、ミクロチャンバ111.0とミクロチャンネル111.2を含む。
【0037】
非制限的例示として、それぞれのラインは、9個のミクロチャンバ111.0及び8個のバンプ111.4−それぞれが2つのミクロチャンバ111.2に対応する−を交互に含み、前記底部壁111は合計15のラインを含む。
【0038】
かかる装置は、特にペトリ皿などの平面培養装置に比較して前記底部壁111上に細胞発達に好適な形状を持つ。このミクロ構造は、前記細胞の発達のために必要な要素、例えば酸素やグルコースを含む栄養流体を供給される場合には細胞が3次元に組織化することを可能とする。
【0039】
滞留性流体中での細胞培養
この目的で、本発明の前記第1の側面による装置は、前記第1のチャンバ内で必要な栄養物を循環することなく前記細胞への栄養供給を可能とする。実際に、前記細胞が培養される前記第1のチャンバ内に滞留性流体を配置し、前記第2のチャンバ内で栄養流体を循環させることで、前記膜130が適切に選択される場合には、前記細胞の発達のために必要な要素(特にグルコース)が前記滞留性流体内に透過する。特に、グルコースが通過するために適切な多孔度の膜を選択することが可能である。
【0040】
従って、本発明の前記第1の側面による装置100は、前記細胞の培養に第1の応用を見出す。実際、循環する栄養流体は細胞を運び去り、その構造を破壊して、細胞の発達を阻害し、細胞の活動を制限する障害となる可能性がある。前記装置100は、前記細胞と直接接触している流体を循環することなく、栄養供給液を提案することが可能であることから、前記困難を解消することができる。
【0041】
しかし前記第2のチャンバ内の前記流体循環の圧力が前記膜130の変形を起こしその後前記底部壁111により近づく。前記膜130はその後前記細胞の発達の機械的脅威となる;というのは前記細胞の構造を破壊し前記壁111から剥がす恐れがあるからである。
【0042】
この際、前記ミクロ構造はこの有害な効果から細胞を保護する。実際、たとえ、前記膜130が前記底部壁111と接触するような場合でも、それは前記ミクロ構造111.3及びミクロバンプ111.4及びミクロチャンネル111.2と接触するであろうし、前記細胞は常に前記ミクロチャンバ111.0及びミクロチャンネル111.2内で成長し得る。従って、前記ミクロチャンバ及びミクロチャンネルは、前記細胞の発達に好ましい構造を形成するだけでなくまた、前記膜130が前記底部壁111にまで変形する場合に保護する。
【0043】
それにより開示された装置100は、これが図4に示されるように本発明の前記第2の側面による濾過システムで使用され得る。前記システムはさらに、装置100,循環手段320を備えた循環パイプ310を含む流体循環回路300を含む。ここで「パイプ」とは1組の1以上のパイプを意味する。これらのパイプはフレキシブルであっても剛性であってもよく、当業者に知られた全ての適切な材料であり得る。前記流体回路300は、前記第2ブロック102内のそれぞれの通路151及び152を通って前記第2のチャンバ120内の前記第1及び第2の開口部122、123に接続される。
【0044】
循環手段320は好ましくは栄養媒体の供給340へ接続され、液体ポンプ、ぺリスタポンプ、1組のバルブ、例えばセレノイドバルブ、又はその他の当業者に知られた全ての適切な手段を含む。
【0045】
さらに、前記回路300は、好ましくは、前記第2のチャンバ120内へ通過した後前記栄養流体のための放出管350を含む。
【0046】
本発明の前記第2の側面によるかかるシステムは、前記回路300が開かれたこの図の態様に限定されるものではなく、かつ特に、前記回路300が閉じられ、場合により栄養流体を再現する手段を含む全てのシステムに拡張されるものである。
【0047】
前記第1のチャンバの流体循環
さらに、本発明の前記第1の側面による装置100は前記記載に限定されるものではない。さらに前記第1のチャンバ110内の循環もまた可能である。
【0048】
この目的で、本発明の前記第1の側面による前記装置100はさらに、図5に示されるように流体入口112及び流体出口113を含む。
【0049】
前記流体入口112は、入り口ネットワーク114を介して前記ミクロチャンネル111.2の少なくとも一部に接続される。前記入口ネットワーク114は、前記流体入口112からの前記第1のチャンバの底部壁111のそれぞれの前記ラインを供給するための一連の枝管を含む。
【0050】
前記流体は前記ミクロチャンネル111.2及びミクロチャンバ111.0で、かつ前記第1のチャンバ110のミクロ構造の上で、例えば発達細胞に供給するために循環するように意図される。
【0051】
前記流体出口113は出口ネットワーク115を介して前記ミクロチャンネルの少なくとも一部に接続される。前記出口ネットワーク115は、前記流体出口113へ前記チャンバ110の底部壁111のラインのそれぞれに接続されるための連続する合流点を含む。前記底部壁の入口114及び出口115ネットワークは本発明の有利な変法として図6に記載される。
【0052】
従って、前記ミクロチャンネル111.2は前記入口21をそれぞれのミクロチャンバ111.0に−前記入口ネットワーク114を介して−及びそれぞれのミクロチャンバを前記流体出口113−前記出口ネットワーク115を介して接続される。
【0053】
本発明には、本発明の前記第1の側面のこの有利な変法による装置の多くの応用が含まれる。
【0054】
例えば、前記細胞で試験されるべき分子を含む流体を前記チャンバ110内で循環するために用いられる。この応用は特に、人の毒性物質のスクリーニングにおいて興味が持たれる。即ち人細胞組織を培養し、チャンバ120内を循環する栄養流体を前記膜を通じて供給し、かつ前記チャンバ110内の分子を試験するために直接曝露させる。
【0055】
さらに、細胞分泌物を連続的に除去するために放出流体を前記チャンバ110内で循環させることも可能である。
【0056】
その他の可能な応用は、前記細胞の機械的刺激である。内皮細胞などのある細胞は、自然に血液などの流体の条件にある。これらの細胞は自然に摩擦により活性化され、前記第1のチャンバ110内の前記流体の循環により再現され得る。
【0057】
前記ミクロ構造の寸法
前記ミクロ構造の有利な寸法は、図7を参照して本発明の前記第1の側面の1つの可能な実施態様により説明される。
【0058】
この有利な変法で、前記ミクロチャンネル111.0は前記方向d1に関して長さ寸法及び幅寸法を有し、それぞれは約500μm及び550μmの間、好ましくは520μmを有する。従って、前記濾過装置100の前記ミクロチャンバ111.0の寸法は有利には520μmx520μmx100μmである。
【0059】
これらの寸法は、前記ミクロチャンバ111.0内の肝細胞発達のために特に好ましい。
【0060】
なお有利には、前記ミクロチャンネル111.2は方向d1に関して、長さ寸法が700μmと750μmの間、好ましくは720μmであり、幅寸法は200μmと250μmの間、好ましくは220μmである。従って前記装置100のミクロチャンネル111.2の寸法は、有利には720μmx220μmx100μmである。
【0061】
それにより前記寸法のミクロチャンネル111.2は肝細胞の発達を促進し、特に肝臓器官の一部がミクロチャンネルのネットワークを通じて移動することを可能とする。
【0062】
さらに、図5には、本発明の第1の側面の濾過装置100の1つの可能な実施態様についての、ミクロ壁111.3、ミクロバンプ111.4及びミクロチャンネル111.2のいくつかの他の特徴的寸法が記載されている。
【0063】
1つの有利な変法により、前記ミクロ壁111.3は、図4及び6に示されるように、少なくとも1つのチャンバ111.0の前記入口領域111.5及び出口領域111.6のいずれかの側で傾斜領域111.7を含む。
【0064】
これらの傾斜領域111.7は前記方向d1に関して幅寸法、100μmと120μmの間、好ましくは110μmを含む。特に前記流体循環方向d1を横切る端部を持つ。前記傾斜領域111.7は、前記方向d1に関して、前記チャンバ110の入口領域111.5のいずれかの側に部分的に保護領域、即ち前記流体の流速が循環が急激に低下する領域を定める。
【0065】
従って、かかる部分的に保護された領域での発達中の細胞が、前記ミクロチャンバ111.0内の流体循環により運び出されることはほとんどない。
【0066】
通常前記細胞が前記流体により運び出されることが保護される領域の程度は循環条件により、特に流速及び剪断特性に依存する。
【0067】
それにもかかわらず、本発明の前記第1の側面のこの有利な変法による部分的保護領域は、少なくとも100μmの幅を持つ前記方向d1を横切る端部を持つ。
【0068】
それらは従って、前記方向d1に関して入口領域111.5から下流で、前記ミクロチャンバ111.0のいずれかの側で横切るコーナー111.8で細胞が集塊することを可能とする。特に肝細胞は、好ましい細胞活性のための形状である、100μmの程度の大きな直径を有する球状として集塊することを可能とする。
【0069】
一般に、ミクロチャンネルのネットワークは細胞が発達し発達領域で3次元の構造を持って集塊することを可能とする。即ち:
−前記ミクロチャンバ111.0で前記底部壁111の位置、
−前記ミクロチャンネル111.2で前記底グヘキャリア111の位置、
−前記ミクロ壁111.3の側壁及び
−前記ミクロバンプ111.4の側壁である。
【0070】
これらの全発達領域は培養表面積により定められる。有利には、前記底部壁領域111の全表面積と発達表面積との比は90%と110%との間にある。好ましくは1%の精度で100%に等しい。
【0071】
非限定的数値範囲として、前記培養表面積は次のように区分され得る(全底部壁表面積は149mm2):
−前記ミクロチャンバ111.0と前記ミクロチャンバ111.2での前記底部壁の表面積:96.5mm2、
−前記ミクロバンプ111.4の側壁表面積:36.5mm2、
−前記ミクロバンプ111.4の側壁表面積:18mm2。
【0072】
前記培養表面積は従って151mm2となる。
【0073】
前記培養表面の前記底部壁全表面積との比は従ってこの例では101%となる。
【0074】
従って、前記底部壁111上のミクロ構造は、前記底部壁111の全表面積に比較して利用可能な表面積をほとんど変更するものではなく、さらに3次元発達を可能とするものである。
【0075】
さらに、細胞は前記ミクロ壁111.3及びミクロバンプ111.4上の上部表面上で発達し得る。ただしかかる領域は3次元発達に特に好ましいというわけではない。
【0076】
前記ミクロ壁111.3及び前記ミクロバンプ111.4の上部表面積を加えた前記培養表面は従って「全培養表面積」とする。
【0077】
前記の数値例で、これらの上部表面積は52.2mm2であり、全培養表面積は203.5mm2となり、全培養表面積と前記全底部壁表面積との比は137%となる。
【0078】
なお有利には、前記培養チャンバ10は1つの容積を持ち、前記全培養表面積と前記培養チャンバ10の容積との比は、4mm−1と6mm−1の間の値を持つ。
【0079】
前記容量が前記全培養表面積に比較して小さすぎると(R2>6mm−1)、細胞が閉じ込められ前記流体による十分な栄養が供給されず、細胞発達を害する恐れがある。
【0080】
さらに、前記容量が前記全培養表面積に比較して大きすぎると(R2<4mm−1)もはや興味の対象とはならず、これは実際には小型装置を持つことが好ましい。
【0081】
前記第1のチャンバ110の容積とは、前記流体の通過のための利用可能な容積を意味し、前記ミクロ壁111.3とミクロバンプ111.4により占められる容積は従って除かれる。
【0082】
前記数値例での値を取り、チャンバ高さが0.2mmとすると、前記培養チャンバ110の容積は次のように決定される:149x0.2−52.2x0.1=24.55mm3。
【0083】
全培養表面積と前記第1のチャンバ110の容積との比は従って、203.5mm2/24.55mm3=8.29mm−1となる。
【0084】
有利には、前記第2のチャンバ120の上部表面121もまたミクロ構造を有する。これらのミクロ構造は、前記第1のチャンバ110の底部壁111に関してこれまで詳細に説明されたミクロ構造との全ての有利な変形をも含み得る。前記ミクロ構造は前記下部壁111及び上部壁121の理想的寸法であり得る。この利点は特に、両方のチャンバで細胞を培養する観点から興味ある応用の1つである。
【0085】
本発明の範囲に含まれる膜
本発明の範囲に含まれる膜120の異なる特徴について以下詳細に説明する。
【0086】
膜130は好ましくはフレキシブル材料であり、従って前記チャンバ110、120のそれぞれに与えられる圧力に依存してやや変形可能である。前記のように、前記ミクロ構造は膜130が前記壁に接着されることを防止し、培養細胞が膜に接触することから保護する。
【0087】
膜130は疎水性又は親水性であり、目標とする応用(透析、細胞培養など)に依存する。
【0088】
膜は、その末端基が水素結合により水と相互作用する場合に親水性といわれる。セルロース膜などの疎水性膜は優れた拡散性を有し、タンパク質の吸着が少なく、優れた対流性を示す。しかし一方では生物適合性については低い。
【0089】
この膜は水及び非常に小さい溶質を通過させるための透析に使用される。
【0090】
人工膜などの疎水性膜は、低い拡散性を示すが、その高い多孔度による高い限外濾過係数を持ち、タンパク質吸着の好ましくない効果を相殺するものである。このタンパク質吸着性は、より優れた生物適合性の原因となる。この膜はしばしば血液濾過に使用される。この膜の生物適合性により、これらの膜が細胞培養に数多く応用されている。
【0091】
前記膜は、前記ミクロポアタイプ(図8A及び8B)のミクロ構造によりミクロ構造化され得るだけではなく、また、ミクロチャンネル又はミクロキャピラリ又は例えば図7に示される形状のミクロ形状であるミクロポアのミクロ構造によりミクロ構造化され得る。
【0092】
有利には、前記膜130は疎水性であってよく、これによりバクテリアやタンパク質の吸着を制限し、前記膜130のポア内の流体の通過抵抗を低減する。
【0093】
又は膜130は親水性であってよく、これによりバクテリアの吸着を制限し、タンパク質の吸着を促し、前記ポア内に流体の抵抗を増加させる。
【0094】
異なる多孔度は、濾過されるべき要素のサイズに依存して膜130に使用され得る。
1つの有利な変法によると、膜130は好ましくはバリア膜であり、即ち小分子又は気体のみ通過させ、流体の1つのチャンバ110、120から他のチャンバ120、110への通過を防止する。図8A及び8Bには、多孔度がそれぞれ40000Da及び500000Daであるポリエーテルスルホンの2つの例示的膜130a、130bの電子顕微鏡により取得された画像を示す。
【0095】
本発明の1つの可能な実施態様により、膜130は、膜130上で細胞を培養することができるように選択される。
特に、MDCKやCaco−2細胞などの前記膜上の生物的バリア(例えば腸バリア又は脳関門)のモデル細胞を培養するために有利である。
【0096】
好ましくは、しかし限定されるものではないが、膜130は表面積が1cm2の程度である。
【0097】
前記ブロック及び膜の分離
有利には、本発明の前記第1の側面による前記濾過装置100は、保持手段160を含み、前記第1のブロック101、前記膜130及び前記第2のブロック102をこの順で保持する。
【0098】
前記手段160は、一方で、前記第1のブロック101及び膜130が共に確実に保持されるように、他方で、前記膜130及び前記第2のブロックが共に確実に保持されるようにロック構成を持ち、かつ前記ブロック101と膜130がお互いに分離され及び/又は前記膜130と前記第2のブロック102がお互いに分離されるようにアンロック構成を持つ。
【0099】
さらに、前記保持手段160は、例えばユーザ操作により、前記ロック構成からアンロック構成へ、又はその逆に切替可能とされる。
【0100】
前記手段160は、図1に示されるように、前記第1のブロック101、膜130及び第2のブロック102を全体の高さにわたり通じるネジを含む。
前記手段160はまた、ストップ、バイス又は当業者に知られるその他の適切な手段を含み得る。
【0101】
かかる保持手段160はいくつかの利点を有する。これは前記装置100をその構成部品に分離することを可能とし、かつ再組立する可能性を有する。
従って、前記装置100を使用不能にすることなく、チャンバ110及び120に、膜130と同様にアクセスすることを可能とする。
【0102】
このことは特に、表面上に吸着された濾過されるべき分子を前記チャンバから洗浄しかつ例えばオートクレーブで殺菌するため、又はその他の当業者に知られた適切な洗浄方法で洗浄するために有用である。
【0103】
さらに、前記膜130は、膜間電気抵抗測定、前記細胞に蛍光標識するための膜の回収、インピーダンス測定、又は当業者に知られるその他の有用な分析などの供するために回収され得る。細胞培養を受け入れる膜の場合において、前記手段160はまた、この培養物を前記装置100から流体と共に放出されること(これは前記培養構造を破壊するおそれがある)を防止しつつ直接に前記細胞にアクセスする可能性を提供する。
【0104】
さらに、前記膜は、洗浄を必要とすることなく繰り返し実験のために新しい膜と交換し得る。従って、膜130を交換して実験を繰り返すことが可能となり、その間前記チャンバ110、120の細胞内容はそのまま維持される。
【0105】
逆にまた、同じ膜130は1つの装置100から他の装置に移されて、異なるミクロ構造の形状を持つチャンバ110、120で実験の対象とすることができる。このことは、前記濾過又は前記膜130上の細胞培養におけるミクロ構造の効果を特徴付けるために有用である。
【0106】
2つの流体回路を持つ濾過システム
本発明の前記第2の側面のいくつかの可能な実施態様による濾過システムについて、図9から11を参照して記載される。
【0107】
以下記載される変法において、前記濾過システム内に組み込まれた前記装置100は、前記第1のチャンバ110内に流体入口112及び流体出口113を含む。
【0108】
前記システムは、前記第1のチャンバ110に接続される流体回路200を含み、これは前記第2のチャンバ120へ接続された前記回路300と類似するものである。前記流体回路200は、循環手段220を設けられた循環パイプ210を含み、前記第1のチャンバ110内の前記入口112及び出口113に接続されている。前記流体回路200は、前記第1のチャンバ110に、前記第1のブロック101のそれぞれの通路141と142を介して前記流体入口112と出口113に接続されている。
【0109】
前記循環手段320は、好ましくは、流体供給240に接続され、かつ流体ポンプ、ペリスタポンプ、1組のバルブ、例えばセレノイドバルブ、又は当業者に知られた全ての他の手段を含み得る。
【0110】
さらに、前記回路200は好ましくは、前記第1のチャンバ110内に通過した後の前記流体について放出導管250を含む。
【0111】
本発明の前記第2の側面によるシステムは、ここで図示された前記回路200が開いている実施態様に限定されるものではなく、特に前記回路200が閉じられ場合により前記流体を再生するための手段を含む、全てのシステムに拡張され得る。
【0112】
さらに、前記回路200及び/又は300内で循環する流体は有利には温度制御される。例えば、前記供給240及び/又は340は、温度調節浴(図示されていない)内に設けられ得る。これに代えて、又はこれに加えて、前記回路200及び/又は300の温度を制御するための当業者に知られるその他の手段が含まれる。
【0113】
図9に示される他の実施態様では、前記下部チャンバ110と上部チャンバ120に含まれる流体が順流として循環する。この構成によると、前記第1の開口部122は前記第2のチャンバ120の流体出口であり、前記第2の開口部123は前記第2のチャンバ120の流体入口である。
【0114】
さらに、図10で示されるように、1つの他の実施態様は、前記下部チャンバ110と上部チャンバ120に含まれる流体が向流として循環する。この構成によると、前記第1の開口部120は前記第2のチャンバ120内の流体入口であり、前記第2の開口部123は前記第2のチャンバ120の流体出口である。
【0115】
図9及び10に示されるシステムは、特に血液透析の分野での応用を持つ。処理されるべき血液は前記第2のチャンバ120内を循環し、通常なら機能的腎臓により除かれる特定の成分を前記膜130を通すことで濾過することで清浄化される。前記第1のチャンバ110に含まれる透析流体は、その後濾過された成分を放出し患者のグルコース提供を確実にする。
【0116】
かかるシステムはまた、濾過膜130を特徴付けるために使用され得る。例えば、所与の膜130について1つの分子の拡散係数を、物理的モデル及び前記第1のチャンバ110及び/又は第2のチャンバ120での前記分子の濃度と時間の測定とから、評価することが可能である。前記順流システムは、前記モデルを較正し、拡散係数を評価するために使用され得る。さらに前記向流システムは前記拡散係数をチュックするために使用され得る。又はこれらの逆もまた可能である。
【0117】
特に以下の式により、濾過されるべき流体が前記第2のチャンバ内で循環する場合において、前記第1のチャンバ110内の濃度の時間依存変化がモデル化される。
−順流体の場合(図9に示される):
【0118】
【数1】
−向流体の場合(図10に示される):
【0119】
【数2】
ここで、
【0120】
【数3】
であり、かつ
C1(t)は、時間の関数として前記第1のチャンバ110での濃度を表し、
Lは、第1及び第2のチャンバ110、120の(共通する)長さを表し、
bは、第1及び第2のチャンバ110、120の(共通する)幅さを表し、
Qfは、前記濾過流速を表し、
V1は前記第1のチャンバ110の容積を表し、
V2は前記第2のチャンバ120の容積を表し、
C10は、前記第1のチャンバ110の初期濃度を表し。
C1∞は、前記第1のチャンバ110の平衡濃度を表し、
Dmは、膜130で濾過される分子の拡散係数を表し、
δは膜の厚さを表す。
【0121】
これらのモデル化の手段により、所与の膜130についての試験されるべき分子の拡散係数Dm値が決定され得る。このために、例えば、順流モードで操作し、前記第2のチャンバ内の前記分子の消失(従って前記第1のチャンバ10への発現)を測定することが可能である。
【0122】
図11及び12では、前記第2のチャンバ120での濃度−対−初期濃度比の変化が所与の実験条件について時間に対して示されており、尿素(図11)及びビタミンB12(図12)のそれぞれが、いくつかのタイプの膜を用いて実験されている。さらに、アルブミンについてもこの比を決定した(グラフに示されていない)。
【0123】
実験結果が次の表に示されている。高多孔度膜(8Fタイプ)を用いた実験は記号□、△で、低多孔度膜(1FPHタイプ)を用いた実験は記号*及び○で表されている。次に分析モデルの回帰を例えば最小二乗法により行い実験的に拡散係数(m2/s)を得ることが可能である。
【0124】
【表1】
従って、分子が大きいほど拡散係数は小さくなる。さらに膜多孔度が大きくなるほど拡散係数は大きくなる。
【0125】
拡散係数がその後向流モードで実証された。
【0126】
従って、1cm2程度の膜表面積を必要とするミクロシステムを持つ膜を特徴付けることが可能となる。必要な場合、前記水滴された特徴はより大きなサイズの膜について外挿され得る。
【0127】
チャンバ内での圧力制御
図13を参照して、前記循環回路200は有利には、前記第1のチャンバ110内に流体圧力制御手段230を含むか、又は前記循環回路300は有利には前記第2のチャンバ120内に流体圧力制御手段330を含むか、又は両方の回路200、300がそれぞれ、関連するチャンバ110、120内に圧力制御手段230,330を含む。
【0128】
好ましくは、限定されるものではないが、前記制御装置230(それぞれ330)は圧力センサ231、232(それぞれ331、332)を含み、前記第1のブロック101(前記第2のブロック102ではそれぞれ151、152)内の前記通路141、142、又は前記流体入口及び出口112、113(前記第1及び第2の開口部それぞれ122、123)での流体の圧力を検出する。前記手段230(それぞれ330)はさらに、アクチュエータ233、234(それぞれ333、334)を含み、これらは前記パイプ210(それぞれ310)上に配置され、前記第1のチャンバ110(それぞれ前記第2のチャンバ120)内の前記流体の入口及び出口での圧力を変更する。これらのアクチュエータは、例えば圧力センサからのデータを処理するためのユニット(図示されていない)又は当業者に知られる全ての他の手段により制御されるセレノイドバルブであり得る。
【0129】
前記圧力制御はそれぞれの制御手段230、330のユニットにより実施され、固定又は可変設定値回りの圧力を安定化させる。安定化は例えば、比例制御装置、比例積分制御装置、オープンループ(圧力センサが使用されない場合)又はその他のシステム制御の分野の当業者に知られる適切な制御ループなどを適用することで行われる。
【0130】
前記回路200、300の制御手段230、330は、本発明の前記第2の側面による濾過システムのために意図される用途により、類似するか又は相違する。
【0131】
これらは、放出率又は拡散係数などの濾過の際の特定のパラメータを監視するために非常に有用であることを証明するものである。
【0132】
この圧力差は、前記膜が前記壁上に接着しないように規定の値で維持され得る。
【0133】
さらに、前記手段230、330は前記チャンバ110、120内の流体と濾過中の膜間流体との速度条件を制御することを可能とする。これにより、所与の溶質について放出率、即ち前記膜により維持される溶解物質のパーセント及び前記膜130を通る前記溶質の拡散係数などの濾過パラメータの制御を可能とする。
【0134】
従って、手段230、330は、流速と膜間流体の同じ条件で繰り返し実験を行うことを可能とする。
【0135】
この有利な効果の特に興味ある応用は、同様の実験条件下で異なる膜を試験することである。このことは例えば図14に示される実験を介して前記膜の性質、例えば水勾配−即ち純粋の前記膜の浸透圧−の特徴付け可能とする。
【0136】
この実験で、前記第2のチャンバ120内の循環流体は水である。前記第1のチャンバ110には細胞培養物は含まれておらず、前記第1の回路200を短く循環するための手段250により、前記第1のチャンバはさらに供給240及び循環手段220から分離されている。又はこの例では、前記第1の回路200は供給240を含まず、循環手段220も含まない。この場合には前記短い循環手段250は必要ない。このことを示すために、供給240及び前記手段220は、図14で点線の長方形で囲まれている。
【0137】
さらに、前記第2の回路300の放出管350は水についてブロックされている(例えば閉鎖タップ)。従って、前記第2の開口部152を通る前記第2のチャンバ内を循環する水は、前記第1のブロック101の通路140を通ってのみ前記装置100から流出され、前記通路142は前記パイプ210を通って前記第1の回路200の放出管250に接続される。
【0138】
さらに、本発明の前記第2の側面のこの変法による前記システムは、水の量を測定するための装置400に関連し、前記放出管250に接続される容器410、スケール420及び前記スケールと相互作用する処理ユニット430を含み、前記容器410内に含まれる水の量を時間に対して決定することが意図される。さらに前記処理ユニットは手段230、330から、両方の回路200、300内の圧力を制御するために情報を受け取る。
【0139】
従って、前記装置400は、前記膜130を通る水の量対時間及び膜間圧力を評価することが可能となり、前記膜130の水勾配の決定を可能とする。
【0140】
この実験は、図8A及び8Bのそれぞれに示される膜130a及び130b上で行われた。前記決定された水勾配はそれぞれ、8mL/(分.バール.cm3)及び80mL(分.バール.cm3)である。
【0141】
他の応用は、前記第1のチャンバ110(及び、細胞培養物を受け入れる場合に、前記第2のチャンバ120)での圧力低下を測定することであり、圧力低下は、前記チャンバ内の数種類の培養細胞上に指示を与える。
【0142】
直列接続された装置
最後に、いくつかの濾過装置100を直列に配置することも本発明に含まれ、それにより腎臓の操作ステップを完全に再現でき、それぞれの装置が特定の機能を再現し得る。さらに一般的に、いくつかの装置100が直列に使用され、前記身体内の流体及び種々の細胞組織間の相互作用を再現するために使用され得る。
【0143】
結論
本発明は多くの効果を持つ。本発明の前記第2の側面によるシステムはよりより大きなシステムに匹敵する濾過を可能とする。前記流体の回路は乱流を起こさず、本発明の前記第1の側面による前記装置のチャンバ内同様にパイプ内でも非常にわずかな端部効果を持つのみである。圧力と前記膜を制御するための手段を用いて、均一なパラメータ(流体の圧力、温度、成分及び濃度)を維持して、前記観察された結果が類似のパラメータを持つシステムに容易に外挿され得る。従って、本発明は、人又は動物体の現象のインビトロ再現への大きなステップであり、同様に人工器官作成への大きなステップである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過装置であり、前記装置は:
ミクロ壁とミクロバンプを含む1組のミクロ構造を持つ底部壁を含む第1のチャンネルを形成するキャビティを持つ第1のブロックであり、前記1組のミクロ構造が前記培養チャンバの前記底部壁上に、ミクロチャンバ及びミクロチャンネルを定める、第1のブロックと、
第2のチャンバを形成するキャビティを持つ第2のブロックと、
濾過膜を含み、
前記第1のブロック、前記膜及び前記第2のブロックが、前記膜が前記第1及び第2のチャンバとの間に、前記第1及び第2のチャンバに隣接して配置して設けられ、かつ
前記膜により前記第1のチャンバから分離される前記第2のチャンバ内に流体を通すための第1の開口部と第2の開口部を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であり、さらに:
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体入口と、
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体出口と、
前記ミクロチャンネルが、前記第1のチャンバの前記ミクロチャンバ内の流体の循環を可能とするように前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続するネットワークを形成する、装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の濾過装置であり、前記ミクロチャンバが前記流体の循環方向に関して長さ寸法及び幅寸法を有し、それぞれが500μmと550μmとの間である、装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置であり、前記ミクロチャンネルは前記流体の循環方向に関して長さ寸法を有し、前記長さ寸法が700μmと750μmとの間であり、かつ前記流体の循環方向に関し幅寸法を有し、前記幅寸法が200μmと250μmとの間である、装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置であり、前記ミクロチャンネルが入口領域と出口領域を持ち、前記ミクロ壁が、少なくとも1つのチャンバの前記入口領域及び前記出口領域のいずれかの側に傾斜領域を含み、前記傾斜領域が前記流体の方向に関して幅寸法を有し、前記幅寸法が100μmと120μmとの間であり、前記チャンバの前記入口領域のいずれかの側に、部分的に保護領域を定める、装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置であり、前記第1のチャンバが、前記底部壁の全表面積とある比で培養表面積を有し、前記比が90%と110%との間である、装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置であり、前記第1のチャンバが、前記第1のチャンバの流体の利用可能な全容積とある比で培養表面積を有し、前記比が4/mmと6/mmとの間である、装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置であり、前記第2のチャンバが、前記第1のチャンバの前記底部壁と同じ1組のミクロ構造を持つ上部壁を含む、装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜はフレキシブル材料である、装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜が親水性材料である、装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜が疎水性材料である、装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜がバリア性である、装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜が、前記膜上に細胞を培養することができる適切な材料である、装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置であり、さらに、保持手段を含み、前記保持手段が、一方で前記第1のブロックと前記膜を共に確実に保持し、他方で前記膜と前記第2のブロックが確実に保持されるロック構成と、前記ブロックと前記膜がお互いに分離され及び/又は前記膜と前記第2のブロックがお互いに分離されるアンロック構成を含み、前記保持手段が前記ロック構成からアンロック構成に、及びその逆に切り替え可能である、装置。
【請求項15】
濾過システムであり、前記システムが:
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の濾過装置、及び
循環手段が設けられる循環パイプを含み、前記第2のチャンバ内で前記第1及び第2の開口部へ接続される流体回路を含む、システム。
【請求項16】
請求項15に記載の濾過システムであり、前記濾過装置が:
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体入口と、
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体出口と、
前記ミクロチャンネルが、前記第1のチャンバの前記ミクロチャンバ内の流体の循環を可能とするように前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続するネットワークを形成し、
前記装置がさらに、循環手段が設けられ、前記第1のチャンバ内で前記流体入口及び出口に接続される循環パイプを含む流体回路を含む、濾過システム。
【請求項17】
請求項15又は16のいずれか1項に記載の濾過システムであり、前記第1の回路がさらに、前記第1のチャンバ内で流体圧力を制御するための制御手段を含む、濾過システム。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか1項に記載の濾過システムであり、前記第2の回路がさらに、前記第2のチャンバ内で流体圧力を制御するための制御手段を含む、濾過システム。
【請求項19】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の濾過装置をいくつか含み、これらが循環回路に直列に接続される、濾過システム。
【請求項1】
濾過装置であり、前記装置は:
ミクロ壁とミクロバンプを含む1組のミクロ構造を持つ底部壁を含む第1のチャンネルを形成するキャビティを持つ第1のブロックであり、前記1組のミクロ構造が前記培養チャンバの前記底部壁上に、ミクロチャンバ及びミクロチャンネルを定める、第1のブロックと、
第2のチャンバを形成するキャビティを持つ第2のブロックと、
濾過膜を含み、
前記第1のブロック、前記膜及び前記第2のブロックが、前記膜が前記第1及び第2のチャンバとの間に、前記第1及び第2のチャンバに隣接して配置して設けられ、かつ
前記膜により前記第1のチャンバから分離される前記第2のチャンバ内に流体を通すための第1の開口部と第2の開口部を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であり、さらに:
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体入口と、
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体出口と、
前記ミクロチャンネルが、前記第1のチャンバの前記ミクロチャンバ内の流体の循環を可能とするように前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続するネットワークを形成する、装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の濾過装置であり、前記ミクロチャンバが前記流体の循環方向に関して長さ寸法及び幅寸法を有し、それぞれが500μmと550μmとの間である、装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置であり、前記ミクロチャンネルは前記流体の循環方向に関して長さ寸法を有し、前記長さ寸法が700μmと750μmとの間であり、かつ前記流体の循環方向に関し幅寸法を有し、前記幅寸法が200μmと250μmとの間である、装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置であり、前記ミクロチャンネルが入口領域と出口領域を持ち、前記ミクロ壁が、少なくとも1つのチャンバの前記入口領域及び前記出口領域のいずれかの側に傾斜領域を含み、前記傾斜領域が前記流体の方向に関して幅寸法を有し、前記幅寸法が100μmと120μmとの間であり、前記チャンバの前記入口領域のいずれかの側に、部分的に保護領域を定める、装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置であり、前記第1のチャンバが、前記底部壁の全表面積とある比で培養表面積を有し、前記比が90%と110%との間である、装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置であり、前記第1のチャンバが、前記第1のチャンバの流体の利用可能な全容積とある比で培養表面積を有し、前記比が4/mmと6/mmとの間である、装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置であり、前記第2のチャンバが、前記第1のチャンバの前記底部壁と同じ1組のミクロ構造を持つ上部壁を含む、装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜はフレキシブル材料である、装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜が親水性材料である、装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜が疎水性材料である、装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜がバリア性である、装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置であり、前記膜が、前記膜上に細胞を培養することができる適切な材料である、装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置であり、さらに、保持手段を含み、前記保持手段が、一方で前記第1のブロックと前記膜を共に確実に保持し、他方で前記膜と前記第2のブロックが確実に保持されるロック構成と、前記ブロックと前記膜がお互いに分離され及び/又は前記膜と前記第2のブロックがお互いに分離されるアンロック構成を含み、前記保持手段が前記ロック構成からアンロック構成に、及びその逆に切り替え可能である、装置。
【請求項15】
濾過システムであり、前記システムが:
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の濾過装置、及び
循環手段が設けられる循環パイプを含み、前記第2のチャンバ内で前記第1及び第2の開口部へ接続される流体回路を含む、システム。
【請求項16】
請求項15に記載の濾過システムであり、前記濾過装置が:
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体入口と、
前記ミクロチャンネルの少なくとも1つに接続された前記第1のチャンバ内に流体出口と、
前記ミクロチャンネルが、前記第1のチャンバの前記ミクロチャンバ内の流体の循環を可能とするように前記流体入口をそれぞれのミクロチャンバに接続するネットワークを形成し、
前記装置がさらに、循環手段が設けられ、前記第1のチャンバ内で前記流体入口及び出口に接続される循環パイプを含む流体回路を含む、濾過システム。
【請求項17】
請求項15又は16のいずれか1項に記載の濾過システムであり、前記第1の回路がさらに、前記第1のチャンバ内で流体圧力を制御するための制御手段を含む、濾過システム。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか1項に記載の濾過システムであり、前記第2の回路がさらに、前記第2のチャンバ内で流体圧力を制御するための制御手段を含む、濾過システム。
【請求項19】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の濾過装置をいくつか含み、これらが循環回路に直列に接続される、濾過システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−505029(P2013−505029A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530264(P2012−530264)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064082
【国際公開番号】WO2011/036226
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512074401)ユニヴェルシテ テクノロジエ デ コンピエーニュ−ユテセ (2)
【出願人】(510309020)セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス) (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064082
【国際公開番号】WO2011/036226
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512074401)ユニヴェルシテ テクノロジエ デ コンピエーニュ−ユテセ (2)
【出願人】(510309020)セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス) (9)
【Fターム(参考)】
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