説明

濾過装置

【課題】 例えば或る一定以上の不純物が濾紙に付着したときに、未濾過液を濾紙に透過させる濾過流量を殆ど低下させずに、この不純物が付着した濾紙を未使用又はそれに近いものと確実に取り替えることができる濾過装置を提供すること。
【解決手段】 貯留槽12に流入する未濾過液を帯状の濾紙10に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を貯留槽12から流出させる濾過装置11において、貯留槽12に設けられ濾紙10のうち未濾過液を透過させる部分を保持し、かつ、濾過済み液が透過可能な環状ネットベルト26を有し、この環状ネットベルト26を走行させることによって濾紙10を移送することができる濾紙送り機構部14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば肉、魚、コロッケ等の揚げ物を作るときに使用される食用油、水、液体調味料や、研磨、研削、ホーニング等の機械加工に使用される加工液等を濾過することができる濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の濾過装置の一例として図9及び図10に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。この図9の縦断面図に示す濾過装置1は、例えばフライヤー(図示せず)にて肉、魚、コロッケ等の揚げ物を作るときに使用された食用油(未濾過液)を濾過して、この濾過済みの食用油をフライヤーに戻すことができるものである。
【0003】
この濾過装置1を使用して食用油を濾過するときは、まず、図10の平面図に示す主制御弁2を開放し、副制御弁3を閉じた状態で循環ポンプ4を作動させる。この循環ポンプ4の吸込み力によって、フライヤーで使用された濾過前の食用油を、貯留槽5に設けられている流入口5aから流入させることができる。この流入してきた濾過前の食用油を、図9に示す濾紙6のうち貯留槽5の底壁と平行して配置されている水平部分6aに透過させて濾過して、主流出口5bを介してフライヤーに戻すことができ、この濾過済み食用油を再び使用することができる。
【0004】
そして、濾過に使用された濾紙6の水平部分6aに、或る一定以上の揚げカス等の不純物が付着して、主流出口5bから流出する濾過済み食用油の流量が所定の設定値よりも小さくなったときは、この主流出口5bの流量を流量検出器(図示せず)が検出して、自動的に主制御弁2を閉鎖すると共に副制御弁3を開放することができる。これによって、貯留槽5に流入してきた濾過前の食用油を、図9に示す濾紙6のうち貯留槽5の側壁と平行して配置されている未使用の垂直部分6bに透過させて濾過することができ、この濾過済みの食用油を、側壁の外側に設けられている迂回室7及び副流出口5cに通してフライヤーに戻すことができ、再び使用することができる。
【0005】
このように、濾紙6の水平部分6aに、揚げカス等の不純物が付着して、主流出口5bから流出する食用油の流量が所定の設定値よりも小さくなったときに、未使用の濾紙6の垂直部分6bで食用油を濾過するようにしたので、濾紙6の水平部分6aに付着する揚げカス等の不純物の付着量が多くなっても、フライヤーに送り込む濾過済み食用油の流量を或る一定以上に保つようになっており、フライヤーによる揚げ物の品質を一定に保つようにしている。
【0006】
なお、図9に示す濾紙6の垂直部分(揚げカス等の不純物が付着していない部分)6bで濾過しているときは、不純物が付着している濾紙6の水平部分6aを透過する食用油の透過量が低減するので、循環ポンプ4の吸込み力によって、濾紙6の水平部分6aが主多孔板8に吸い付けられる力が小さくなる。よって、この状態で、濾紙巻取り駆動部(図示せず)を駆動することによって、濾紙6に掛かる張力が小さい状態で濾紙6が破れないように移送することができ、水平部分6aを未使用の濾紙6に取り替えることができる。
【0007】
しかる後に、主制御弁2を開放すると共に副制御弁3を閉じる。これによって、貯留槽5に流入してきた濾過前の食用油を、濾紙6のうち未使用の水平部分6aに透過させて濾過することができる。このようにして、濾紙6の水平部分6aに揚げカス等の不純物が付着しても、循環ポンプ4による濾過済み食用油の循環流量を低下させずに、濾紙6の水平部分6aを未使用のものに取り替えることができるようにしている。
【特許文献1】特開平1−155916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図9に示す従来の濾過装置1では、循環ポンプ4が濾過済み食用油を主流出口5bから吸い込んでいるときに、濾過済み食用油を副流出口5cからも吸い込んでしまうこととなり、揚げカス等の不純物が濾紙6の水平部分6aだけでなく、垂直部分6bにも付着してしまう。
【0009】
そうすると、濾紙6の水平部分6aに揚げカス等の不純物が付着して、主流出口5bから流出する食用油の流量が所定の設定値よりも小さくなったときに、主制御弁2を閉鎖すると共に副制御弁3を開放しても、副流出口5cから流出する濾過済み食用油の流量を所定の設定値よりも大きくすることができないことがある。このような場合は、フライヤーによる揚げ物の品質を一定に保つことができない恐れがある。そして、この場合は、濾紙6が主多孔板8及び副多孔板9の両方に強く吸い付けられているために、濾紙巻取り駆動部を駆動して濾紙6の水平部分6aを未使用のものと取り替えるときに、濾紙6に大きな張力が掛かり、濾紙6が破れる恐れがある。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、例えば或る一定以上の不純物が濾紙に付着したときに、未濾過液を濾紙に透過させる濾過流量を殆ど低下させずに、この不純物が付着した濾紙を未使用又はそれに近いのものと確実に取り替えることができる濾過装置、及び濾紙の品質を代えずに濾過精度の向上を図ることができる濾過装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る濾過装置は、貯留槽に流入する未濾過液を帯状の濾紙に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を前記貯留槽から流出させる濾過装置において、前記貯留槽に設けられ前記濾紙のうち前記未濾過液を透過させる部分を保持し、かつ、前記濾過済みの液体が透過可能な濾紙移送部を有し、この濾紙移送部を移動させることによって前記濾紙を移送することができる濾紙送り機構部を備えることを特徴とするものである。
【0012】
請求項1に係る濾過装置によると、貯留槽に流入する未濾過液を濾紙に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を貯留槽から流出させることができる。濾紙移送部は、未濾過液が濾紙を透過するときに、濾紙が受ける力(透過抵抗)を保持することができるので、未濾過液の濾過中に濾紙が破れたり損傷することを防止できる。そして、濾紙移送部は、濾過済みの液体が透過可能なので、濾紙によって未濾過液を効率よく濾過することができる。そして、濾紙移送部上の濾紙に例えば或る一定以上の不純物が付着すると、濾紙送り機構部が濾紙移送部を移動させることによって濾紙を移送することができる。これによって、濾紙の不純物が付着する部分を未使用又はそれに近い濾紙に取り替えることができ、濾過を連続して行うことができる。
【0013】
請求項2に係る濾過装置は、請求項1の濾過装置において、前記濾紙送り機構部を、ネットコンベアとしたものである。このようにすると、ネットコンベアを駆動して濾紙を移送することによって、濾紙の不純物が付着した部分を、未使用又はそれに近い部分に確実で簡単に取り替えることができる。
【0014】
請求項3に係る濾過装置は、請求項1又は2の濾過装置において、前記濾紙を、前記濾紙移送部との間に挟み込む複数の挟持部材を有し、この複数の挟持部材を前記濾紙移送部と同期して同方向に移動させる挟持機構部を備えるようにすることができる。このようにすると、濾紙を、濾紙送り機構部の濾紙移送部と、挟持機構部の挟持部材との間に挟み込んで留めておくことができるし、濾紙を挟み込んだ状態で所定の方向に移送することができる。これによって、濾紙が濾紙移送部から浮き上がったり、折れ曲がることがなく、未濾過液に含まれる不純物を確実に捕捉できるようにすることができる。
【0015】
請求項4に係る濾過装置は、貯留槽に流入する未濾過液を帯状の濾紙に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を前記貯留槽から流出させる濾過装置において、前記濾過済みの液体をそれぞれの吸込み口から吸い込んで流出させる第1吸込み室及び第2吸込み室と、前記第1及び第2吸込み室のそれぞれの吸込み口と前記濾紙との間に配置され、前記濾紙のうち前記未濾過液を透過させる部分を保持し、かつ、前記濾過済みの液体が透過可能な濾液透過部材と、前記濾過済みの液体が前記第2吸込み室に吸い込まれることを停止させる吸込み停止手段と、濾紙送り機構部とを備えることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に係る濾過装置によって未濾過液を濾過するときは、まず、吸込み停止手段を停止動作させて、濾過済みの液体が第2吸込み室に吸い込まれることを停止させると共に、濾過済みの液体を第1吸込み室の吸込み口から吸い込んで流出させる。これによって、貯留槽内の未濾過液を、第1吸込み室の吸込み口と対応する部分に配置されている濾紙の部分(濾紙の第1吸込み室側部分)で濾過して、この濾過済みの液体を第1吸込み室に通して流出させることができる。なお、濾液透過部材は、未濾過液が濾紙を透過するときに濾紙が受ける力を保持することができ、未濾過液の濾過中に濾紙が破れたり損傷することを防止できる。そして、濾液透過部材は、濾過済みの液体が透過可能なので、濾紙によって未濾過液を効率よく濾過することができる。
【0017】
そして、濾紙の第1吸込み室側部分に例えば或る一定以上の不純物が付着したときは、吸込み停止手段の停止動作を解除して、濾過済みの液体を第2吸込み室にも吸い込ませて流出させる。このとき、濾紙の第1吸込み室側部分には不純物が付着しているので、所定量の未濾過液は、第2吸込み室の吸込み口と対応する部分に配置されている濾紙の部分(濾紙の第2吸込み室側部分)で濾過されて流出する。
【0018】
また、吸込み停止手段の停止動作が解除されて、未濾過液が濾紙の第1及び第2吸込み室側部分を透過しているときは、濾紙の第1及び第2吸込み室側部分が濾液透過部材に押し付けられる力が小さくなる。よって、濾紙送り機構部を作動させることによって、不純物が付着する濾紙の第1吸込み室側部分を、濾紙の未使用又はそれに近い部分に簡単に取り替えることができ、このように濾紙を取り替えている際にも、濾過を継続して行うことができる。なお、未濾過液が濾紙の第1及び第2吸込み室側部分を透過するときに、濾紙の第1及び第2吸込み室側部分の部分が濾液透過部材に押し付けられる力が小さくなるのは、濾紙の第2吸込み室側部分は未使用又はそれに近い状態であるので、未濾過液の濾紙に対する透過抵抗が小さいからである。
【0019】
請求項5に係る濾過装置は、請求項4の濾過装置において、前記濾過済みの液体を前記第1及び第2吸込み室に吸い込ませるための吸込みポンプを備え、前記吸込み停止手段は、前記吸込みポンプの吸込み口と前記第2吸込み室とを連通する連通管に設けられている弁装置であり、前記濾液透過部材は、多数の小孔を有するものである。この濾過装置によると、吸込みポンプを作動させることによって、貯留槽内の未濾過液を濾過して、濾過済み液を第1吸込み室に通して流出させることができるし、第1及び第2吸込み室に通して流出させることもできる。濾過済み液を第2吸込み室に通さない場合は、弁装装置を閉にすればよいし、濾過済み液を第2吸込み室に通す場合は、弁装装置を開にすればよい。濾液透過部材を、多数の小孔を有するものとすることによって、強度が大きく、構造が簡単であり、安価に製作できる。
【0020】
請求項6に係る濾過装置は、請求項1乃至5のいずれかの濾過装置において、前記濾紙送り機構部は、前記濾紙のうち前記未濾過液中の不純物が或る一定以上付着して、この不純物によってプリコート層が形成されたプリコート部分と、このプリコート部分よりも前記不純物の付着量が少ない非プリコート部分とに前記未濾過液を透過させるように、前記濾紙を移送するものである。
【0021】
請求項6に係る濾過装置の濾紙送り機構部によると、プリコート部分と、非プリコート部分とに未濾過液を透過させるように、濾紙を移送することができる。プリコート部分は、未濾過液中の不純物が或る一定以上濾紙に付着して、この不純物によって濾紙の表面にプリコート層が形成されたものであり、このプリコート層によって、濾紙の品質を変更せずに、比較的細かい不純物を捕捉することができる。つまり、このプリコート層は、濾紙で捕捉することができない微細不純物を捕捉することができる。また、非プリコート部分は、不純物の付着量がプリコート部分よりも少ない部分であり、この非プリコート部分の面積を適切に規定することによって、所望の流量の濾過済み液が得られるようにすることができる。
【0022】
請求項7に係る濾過装置は、請求項6の濾過装置において、前記未濾過液を透過させる前記プリコート部分の面積が、前記未濾過液を透過させる前記非プリコート部分の面積よりも大きいものである。このように、未濾過液を透過させるプリコート部分の面積を、未濾過液を透過させる非プリコート部分の面積よりも大きくすることによって、所望の濾過精度が得られるようにすることができる。
【0023】
請求項8に係る濾過装置は、請求項6濾過装置において、前記未濾過液を透過させる前記プリコート部分の面積と、前記未濾過液を透過させる前記非プリコート部分の面積との比を約4対1としたものである。このように、未濾過液を透過させるプリコート部分の面積と、未濾過液を透過させる非プリコート部分の面積との比を約4対1にすることによって、適切な濾過流量及び濾過精度が得られるようにすることができる。
【0024】
請求項9に係る濾過装置は、貯留槽に流入する未濾過液を帯状の濾紙に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を前記貯留槽から流出させる濾過装置において、前記濾紙のうち前記未濾過液中の不純物が或る一定以上付着して、この不純物によってプリコート層が形成されたプリコート部分と、このプリコート部分よりも前記不純物の付着量が少ない非プリコート部分とに前記未濾過液を透過させるように、前記濾紙を移送する濾紙送り機構部を備えていることを特徴とするものである。
【0025】
請求項9に係る濾過装置は、請求項6の濾過装置と同様に、プリコート部分と、非プリコート部分とに未濾過液を透過させるように、濾紙送り機構部が濾紙を移送することができるものであるので、その作用の詳細な説明を省略する。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る濾過装置によると、濾紙送り機構部が濾紙移送部を移動させることによって濾紙を移送する構成としたので、濾紙に対する不純物の付着量が多くなって、未濾過液の濾紙に対する透過抵抗が増大して、濾紙を濾紙移送部上に押し付ける力が大きくなっても、濾紙を、比較的小さい張力で、濾紙が破れたり損傷しないように確実に移送することができる。つまり、不純物が付着した濾紙を未使用又はそれに近いものに取り替えるときに、未濾過液が濾紙を濾紙移送部上に押し付ける力が小さくなるように、未濾過液の濾紙に対する透過流量(濾過能力)を低下させる必要がなく、所定の濾過流量を確保した状態で、この不純物が付着した濾紙を、未使用のものと確実に取り替えることができる。
【0027】
請求項4に係る濾過装置によると、濾紙の第1吸込み室側部分に不純物の付着量が多くなったときに、未濾過液を濾紙の第2吸込み室側部分で濾過できる構成としたので、濾紙の第1吸込み室側部分に対する不純物の付着量が多くなって、未濾過液が濾紙を濾液透過部材上に押し付ける力が大きくなっても、この押付け力を小さくすることができる。その結果、所定の濾過流量を確保した状態で、濾紙を、比較的小さい張力で濾紙が破れないように確実に移送することができる。
【0028】
請求項6及び9に係る濾過装置によると、濾紙の表面に形成されるプリコート層は、未濾過液中の不純物によって形成されたものであるので、当該不純物の例えば粒子の大きさによって濾過精度が決定され、その結果、濾紙よりも濾過精度を向上させることができる。よって、濾紙の品質を変更せずに、未濾過液中の不純物を効果的に捕捉できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る濾過装置の第1実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1の縦断面図に示す濾過装置11は、例えばフライヤー(図示せず)にて肉、魚、コロッケ等の揚げ物を作るときに使用された食用油を濾過して、この濾過済みの食用油をフライヤーに戻すことができるものであり、濾過前の食用油(未濾過液)を貯留することができる貯留槽12を備えている。この貯留槽12には、図1に示すように、未濾過液を流入させるための流入口12a、及び未濾過液中の比較的大きな揚げカス等の不純物(粗不純物)を捕捉するための粗不純物濾過機構部13が設けられている。更に、比較的細不純物を捕捉するための帯状の濾紙10が配置されており、この濾紙10を移送するための濾紙送り機構部14、濾紙10の浮上がり等を防止するための挟持機構部15、及び濾過済みの食用油(濾過済み液)を貯留槽12から流出させるための流出口12bが設けられている。
【0030】
流入口12aは、図1に示すように、濾紙10の送り方向と平行する横側壁12cに設けられており、フライヤーで使用された未濾過液を貯留槽12内に流入させるためのものである。
【0031】
粗不純物濾過機構部13は、図3に示すように、流入口12aから流入してきた未濾過液を粗濾過槽16に貯留して、この粗濾過槽16内の未濾過液を粗濾過部材17に透過させることによって、未濾過液中の粗不純物を捕捉できるものである。この粗濾過部材17によって捕捉された粗不純物は、掻き取り装置18で掻き取られて貯留槽12の外側に排出される。そして、粗濾過部材17を透過した未濾過液は、図1に示す細濾過槽19に流入する。
【0032】
粗濾過槽16は、図3等に示すように、横側壁12cと、一対の仕切り壁20、20と、粗濾過部材17とによって形成されており、流入口12aから流入してきた未濾過液に含まれている粗不純物を捕捉して、この粗不純物が細濾過槽19内に流入しないようにするものである。この細濾過槽19は、図1に示す貯留槽12のうち、粗濾過槽16以外の部分である。
【0033】
粗濾過部材17は、多数の小さなスリットが形成されている矩形の金属製板状体であり、図3に示すように、貯留槽12内に傾斜した状態で設けられている。そして、この粗濾過部材17の上面側に掻き取り装置18が設けられている。この多数の各スリットは、粗不純物が通過できない大きさである。
【0034】
掻き取り装置18は、図3に示すように、粗濾過部材17の表面に捕捉された粗不純物を多数の掻き取りバー21、・・・で掻き取って、貯留槽12の外側に排出するためのものである。この多数の掻き取りバー21、・・・は、例えばそれぞれが間隔を隔てて一対の環状チェーン22に取り付けられており、この一対の環状チェーン22は、一対の駆動スプロケット23及び一対の従動スプロケット24に掛けられている。これら駆動及び従動スプロケット23、24は、それぞれ駆動軸及び従動軸を介して回動自在に支持され、これらの各軸は、貯留槽12に設けられている。
【0035】
駆動スプロケット23が掻き取り駆動部(モータ)25によって駆動されると、環状チェーン22が走行して、多数の掻き取りバー21が粗濾過部材17の表面に沿って昇降移動する。掻き取りバー21は、上昇移動するときに、粗濾過部材17の表面に当接した状態で粗濾過部材17の下縁部から上縁部まで移動する。これによって、粗濾過部材17の表面に付着する粗不純物を掻き取って、貯留槽12の外側に排出することができる。
【0036】
濾紙送り機構部14は、例えばネットコンベアであり、図1に示すように、挟持機構部15との間に帯状の濾紙10を挟みこんで、この濾紙10を所定の濾紙送り方向に移送することができるものであって、水平部14aと、傾斜部14bとを備えている。この水平部14aは、貯留槽12の底部12dと間隔を隔てて、略水平に設けられており、傾斜部14bは、貯留槽12の濾紙送出し側の左側壁12eと間隔を隔てて傾斜して設けられている。この濾紙送り機構部14は、金属製の環状ネットベルト(濾紙移送部)26を有している。この環状ネットベルト26は、濾紙10による濾過済み液が透過可能であって、貯留槽12の横幅よりも少し狭い横幅寸法に形成されており、一対の歯付き駆動プーリ27、及び複数対の歯付き従動プーリ28に掛けられている。これら歯付き駆動プーリ27及び歯付き従動プーリ28は、それぞれ駆動軸及び従動軸を介して回動自在に支持され、これらの各軸は、貯留槽12に設けられている。
【0037】
歯付き駆動プーリ27が濾紙送り用駆動部(モータ)29によって駆動されると、環状ネットベルト26が走行して、濾紙10を、この環状ネットベルト26と、挟持機構部15の挟持バー(挟持部材)30との間に挟み込んだ状態で、所定の速度、タイミング、及びピッチで所定の濾紙送り方向に移送することができる。
【0038】
挟持機構部15は、図1に示すように、多数の棒状の挟持バー30、・・・を備えている。この多数の挟持バー30は、例えばそれぞれが間隔を隔てて一対の環状チェーン31に取り付けられており、この一対の環状チェーン31は、一対の駆動スプロケット32及び複数対の従動スプロケット33、・・・に掛けられている。これら駆動及び従動スプロケット32、33は、それぞれ駆動軸及び従動軸を介して回動自在に支持され、これらの各軸は、貯留槽12に設けられている。
【0039】
駆動スプロケット32は、濾紙送り用駆動部29によって駆動されるようになっており、駆動スプロケット32が駆動されると、環状チェーン31に伴って多数の挟持バー30、・・・が濾紙送り方向に走行する。
【0040】
なお、図1では、挟持バー30、濾紙10、及び環状ネットベルト26の配置を分かり易くするために、これらを互いに間隔を隔てて描いてあるが、これらは互いに当接している。
【0041】
流出口12bは、図1に示すように、濾紙送出し側の左側壁12e及び底部12dに設けられており、この濾過装置11で濾過されて生成された濾過済み液をこの貯留槽12から流出させて、フライヤーに戻すためのものである。
【0042】
この流出口12bには、循環用連通管34が接続されており、この循環用連通管34に循環ポンプ(吸込みポンプ)35が設けられている。この循環ポンプ35は、この濾過装置11で濾過され生成された濾過済み液を流出口12bを介して吸い込んで、フライヤーに戻すことができる。フライヤーは、使用後の未濾過液を、貯留槽12の流入口12aを介して貯留槽12内に流入させることができる。
【0043】
また、図1に示すように、貯留槽12の濾紙送出し側部には、一対の濾紙送出しローラ36が設けられている。この濾紙送出しローラ36は、濾紙送り機構部14及び挟持機構部15によって濾紙送り方向に送られる濾紙10を挟み込んで、濾紙10を確実に送出すためのものである。この濾紙送出しローラ36は、濾紙送り用駆動部29によって所定の濾紙送り方向に回転駆動される。
【0044】
つまり、環状ネットベルト26、挟持バー30、及び濾紙送出しローラ36は、帯状の濾紙10を、皺が形成されたり折れ曲がらないように移送できるように、同期して同一の速度で駆動されている。具体的には、これら環状ネットベルト26、挟持バー30、及び濾紙送出しローラ36の駆動機構部は、それぞれが例えば図示しないギヤー、スプロケット、及びチェーンによって連結されており、1台の濾紙送り用駆動部29(モータ)で駆動されるようになっている。
【0045】
図4は、濾紙送り機構部14の環状ネットベルト26によって移送される濾紙10の各縁部10aと、貯留槽12の対応する各横側壁12cとの間の濾紙密封構造37を示す拡大断面図である。この濾紙密封構造37は、同図に示すように、横側壁12cの内面に支持板38が略水平に設けられ、この支持板38上に多数の小孔39a、・・・を有する多孔板39がネジ止めされている。この多孔板39は、環状ネットベルト26の上側走行部40に沿って、その上側走行部40の全範囲に亘って設けられている。この多孔板39の上面と、環状ネットベルト26の上側走行部40の上面とが、略同一の高さとなるように配置されている。このように、濾紙10の縁部10aが多孔板39を介して支持板38で支持されているので、未濾過液が濾紙10の縁部10aと、横側壁12cとの間の隙間41を通って流出口12bから流出しないようにすることができる。よって、未濾過液が混入していない濾過済み液だけを流出口12bから流出させることができる。
【0046】
なお、図1に示す濾紙送り機構部14の右先端部と、貯留槽12の右側壁12fとの間にも、図示しない支持板38及び多孔板39が設けられており、その右先端部と右側壁12fとの間を未濾過液が通って流出口12bから流出しないようにしてある。
【0047】
図1等に示すように構成された第1実施形態に係る濾過装置11によると、循環ポンプ35を駆動することによって、貯留槽12内の濾過済み液を、流出口12bから流出させてフライヤーに戻すことができる。フライヤーでの使用後の未濾過液は、貯留槽12の流入口12aを介して貯留槽12内に流入する。この貯留槽12に流入する未濾過液は、粗濾過槽16に設けられている粗濾過部材17を透過することによって、粗不純物が除去され、この粗不純物が除去された未濾過液は、細濾過槽19に流入する。細濾過槽19に流入した未濾過液は、濾紙10を透過することによって、細不純物が除去され、この細不純物が除去された濾過済み液は、流出口12bを通って再びフライヤーに戻る。
【0048】
また、図1に示す濾紙送り機構部14が備えている環状ネットベルト26は、未濾過液が濾紙10を透過するときに、濾紙10が受ける力(透過抵抗)を保持することができるので、未濾過液の濾過中に濾紙10が破れたり損傷することを防止できる。そして、環状ネットベルト26は、濾過済みの液体が透過可能なので、濾紙10によって未濾過液を効率よく濾過することができる。
【0049】
そして、環状ネットベルト26上の濾紙10に例えば或る一定以上の細不純物が付着すると、濾紙送り機構部14、挟持機構部15、及び濾紙送出しローラ36を駆動して、濾紙10を所定のピッチだけ移送することができる。これによって、濾紙10の細不純物が付着する部分の例えば一部又は全部を、未使用又はそれに近い濾紙10に取り替えることができ、所定の濾過流量を確保した状態で、濾過を連続して行うことができる。
【0050】
なお、濾紙送り機構部14等が濾紙10を所定のピッチだけ移送するタイミングは、流出口12bから流出する濾過済み液の流量が、所定の設定流量となったときである。そして、濾過済み液の流出量が所定の設定流量となったことは、例えば流量センサや圧力検出器で検出することができ、この流量センサ等の検出信号に基づいて濾紙送り機構部14等が作動する。
【0051】
このように、図1に示す濾過装置11によると、濾紙送り機構部14が環状ネットベルト26を走行させることによって濾紙10を移送する構成としたので、濾紙10に対する細不純物の付着量が多くなって、未濾過液の濾紙10に対する透過抵抗が増大して、濾紙10を環状ネットベルト26上に押し付ける力が大きくなっても、濾紙10を、比較的小さい張力で、濾紙10が破れないように確実に移送することができる。つまり、細不純物が付着した濾紙10を未使用又はそれに近いものに取り替えるときに、未濾過液が濾紙10を環状ネットベルト26上に押し付ける力を小さくするために、未濾過液の濾紙10に対する透過流量(濾過能力)を低下させる必要がなく、この不純物が付着した濾紙10を、未使用等のものと確実に取り替えることができる。
【0052】
そして、濾紙送り機構部14は、ネットコンベアで構成されているので、このネットコンベアを駆動して濾紙10を移送することによって、濾紙10の細不純物が付着した部分を、未使用等の部分に確実で簡単に取り替えることができる。
【0053】
また、図1に示すように、濾紙10を、濾紙送り機構部14の環状ネットベルト26と、挟持機構部15の挟持バー30との間に挟み込んで、この環状ネットベルト26及び挟持バー30を同期させて同方向に移動させる構成としたので、濾紙10を、環状ネットベルト26と、挟持バー30との間に挟み込んで留めておくことができるし、濾紙10を挟み込んだ状態で濾紙送り方向に移送することができる。これによって、濾紙10が環状ネットベルト26から浮き上がったり、折れ曲がることがなく、未濾過液に含まれる細不純物を確実に捕捉することができ、細不純物及び粗不純物を含まない濾過済み液をフライヤーに送り込むことができる。
【0054】
次に、本発明に係る濾過装置の第2実施形態を図5〜図8を参照して説明する。図5の縦断面図に示す第2実施形態の濾過装置43は、図1に示す第1実施形態の濾過装置11と同様に、例えばフライヤー(図示せず)にて肉、魚、コロッケ等の揚げ物を作るときに使用された食用油を濾過して、この濾過済みの食用油をフライヤーに戻すことができるものであり、濾過前の食用油(未濾過液)を貯留することができる貯留槽44を備えている。この貯留槽44には、図5に示すように、未濾過液を流入させるための流入口12a、及び未濾過液中の比較的大きな揚げカス等の不純物(粗不純物)を捕捉するための粗不純物濾過機構部13が設けられている。更に、細不純物を捕捉するための帯状の濾紙10が配置されており、濾過済みの食用油(濾過済み液)を貯留槽44から流出させるための流出口12b、循環ポンプ35、及び循環用連通管34が設けられている。これらは、第1実施形態と同等であるので、それらを同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。ただし、帯状の濾紙10は、濾紙送り機構部45によって移送される。
【0055】
濾紙送り機構部45は、図5に示すように、貯留槽44の濾紙送出し側に設けられている濾紙送出しローラ36と、複数の従動ローラ46、・・・と、濾紙送り用駆動部29とを備えている。濾紙10は、これらの濾紙送出しローラ36等に掛けられており、濾紙10の一部(未濾過液透過部分)10bが貯留槽44の底壁として設けられている濾液透過部材47と間隔を隔てて略平行に配置されている。
【0056】
次に、第2実施形態に係る濾過装置43の特徴とする構成を説明する。図5に示すように、貯留槽44の底壁(濾液透過部材47)の下面側には、濾紙10によって濾過されて生成された濾過済み液をそれぞれの第1吸込み口及び第2吸込み口から吸い込んで、流出口12bから流出させる第1吸込み室48及び第2吸込み室49が設けられている。これら第1及び第2吸込み室48、49のそれぞれの第1及び第2吸込み口には、濾液透過部材47が設けられている。
【0057】
濾液透過部材47は、図5に示すように、濾紙10の未濾過液透過部分10bを保持することができる板状体であり、濾過済みの液体が透過可能な多数の小孔47a、・・・が形成されている。この多数の小孔47は、図7(a)に示すように、濾紙10の未濾過液透過部分10bの内側に配置されるように形成されている。これによって、未濾過液が濾紙10を通らずに各小孔47aに吸い込まれることを防止できる。
【0058】
つまり、濾過済み液が吸い込まれる第1及び第2吸込み室48、49のそれぞれの吸込み口として濾液透過部材47が設けられており、この濾液透過部材47の上方に濾紙10の未濾過液透過部分10bが配置される構成となっている。
【0059】
そして、第1吸込み室48と、第2吸込み室49とは、図5に示すように、仕切り板50で仕切られており、吸込み用連通管51を介して接続している。この吸込み用連通管51には、弁装置(吸込み停止手段)52が設けられており、この弁装置52が開状態では、第1吸込み室48と第2吸込み室49とが互いに連通する。そして、弁装置52が閉状態では、第1吸込み室48と第2吸込み室49とが互いに連通しない切り離された状態となる。
【0060】
また、第1吸込み室48には、流出口12bが設けられており、この流出口12bに循環用連通管34が接続されている。この循環用連通管34は、循環ポンプ(吸込みポンプ)35が設けられており、フライヤーと接続している。
【0061】
図5及び図6に示すように構成された第2実施形態に係る濾過装置43によると、循環ポンプ35を駆動することによって、貯留槽44内の濾過済み液を、第1吸込み室48、又は第1及び第2吸込み室48、49内に吸い込んで、この吸い込んだ濾過済み液を流出口12bから流出させてフライヤーに戻すことができる。フライヤーでの使用後の未濾過液は、貯留槽44の流入口12aを介して貯留槽44内に流入する。この貯留槽44に流入する未濾過液は、粗濾過槽16に設けられている粗濾過部材17で粗不純物が除去され、この粗不純物が除去された未濾過液は、細濾過槽19に流入する。細濾過槽19に流入した未濾過液は、濾紙10を透過することによって、細不純物が除去され、この細不純物が除去された濾過済み液は、流出口12bを通って再びフライヤーに戻る。
【0062】
次に、図5に示す弁装置52を開閉させて、細濾過槽19に貯留されている未濾過液を、第1吸込み室48、又は第1及び第2吸込み室48、49に吸い込ませる手順を説明する。まず、図5に示すように、弁装置52を閉動作させて、吸込み用連通管51を閉鎖する。そして、循環ポンプ35を作動させる。これによって、細濾過槽19内の未濾過液を、濾紙10のうち第1吸込み室48と対応する部分に配置されている部分(濾紙10の第1吸込み室側部分)10cで濾過させることができる。そして、この濾過済みの液体は、濾液透過部材47のうち第1吸込み室48と対応する部分(第1濾液透過部)47bの多数の小孔47aを通り、第1吸込み室48に吸い込まれて流出口12bから流出する。この際、弁装置52が閉じているので、濾過済み液が第2吸込み室49に吸い込まれない。
【0063】
なお、濾液透過部材47は、未濾過液が濾紙10を透過するときに濾紙10が受ける力を保持することができ、未濾過液の濾過中に濾紙10が破れたり損傷することを防止できる。そして、濾液透過部材47は、濾過済み液が多数の小孔47aを通って透過可能なので、濾紙10によって未濾過液を効率よく濾過することができる。
【0064】
そして、濾紙10の第1吸込み室側部分10cに例えば或る一定以上の細不純物が付着したときは、図6に示すように、弁装置52を開動作させて、濾過済み液を第2吸込み室49にも吸い込ませて流出させる。このとき、濾紙10の第1吸込み室側部分10cには細不純物が付着しているので、所定量の未濾過液は、濾紙10のうち第2吸込み室49と対応する部分(濾紙10の第2吸込み室側部分)10dで濾過されて、この濾過済みの液体を、濾液透過部材47のうち第2吸込み室49と対応する部分(第2濾液透過部)47c、第2吸込み室49、吸込み用連通管51、弁装置52、第1吸込み室48、及び流出口12bに通して流出させることができる。また、或る所定量の未濾過液は、濾紙10の第1吸込み室側部分10cで濾過されて、この濾過済みの液体を第1吸込み室48、及び流出口12bに通して流出させることができる。
【0065】
また、図6に示すように、弁装置52が開状態で、未濾過液が濾紙10の第1及び第2吸込み室側部分10c、10dを透過しているときは、濾紙10のそれぞれの部分が濾液透過部材47に押し付けられる力が小さくなっている。よって、この状態で、濾紙送り機構部45を作動させることによって、細不純物が付着する濾紙10の第1吸込み室側部分10cを、濾紙10の未使用又はそれに近い部分に簡単に取り替えることができる。このように濾紙10を取り替えている際にも、循環ポンプ35による濾過済み液の循環流量を低下させず、所定の濾過流量を確保することができる。
【0066】
なお、未濾過液が濾紙10の第1及び第2吸込み室側部分10c、10dを透過するときに、濾紙10のそれぞれの部分が濾液透過部材47に押し付けられる力が小さくなるのは、濾紙10の第2吸込み室側部分10dが未使用又はそれに近い状態であるので、未濾過液の濾紙10に対する透過抵抗が小さいからである。
【0067】
そして、細不純物が付着する濾紙10の第1吸込み室側部分10cを、濾紙10の未使用又はそれに近い部分に取り替えた後は、図5に示すように弁装置52を閉にする。これによって、未濾過液は、第2吸込み室49を通らず第1吸込み室48だけを通り、濾紙10の第1吸込み室側部分10cで濾過されて流出する。
【0068】
また、濾液透過部材47を、多数の小孔47aを有する多孔部材で構成することによって、強度が大きく、構造が簡単であり、安価に製作できる。
【0069】
次に、図7及び図8を参照して、第2実施形態の濾過装置43に設けられている濾紙送り機構部45が濾紙10を移送する動作の説明をする。図7(a)は、第1及び第2吸込み室48、49を示す平面図である。同図に示す状態では、弁装置52が閉じており、未濾過液が濾紙10の第1吸込み室側部分10cで濾過されて、濾過済み液が第1吸込み室48に吸い込まれて排出される。ただし、第2吸込み室49には、濾過済み液が吸い込まれていない。
【0070】
図7(b)は、濾過が行われている濾紙10の第1吸込み室側部分10cに、未濾過液中の細不純物が付着している状態を示している。ただし、濾過が行われていない濾紙10の第2吸込み室側部分10dには、未濾過液中の細不純物は付着していない。次に、或る一定以上の細不純物が濾紙10の第1吸込み室側部分10cに付着すると、図8(a)に示すように、濾紙送り機構部45を作動させて、濾紙10を所定の長さ(移送部分)だけ移送する。
【0071】
図8(a)は、弁装置52が開いており、未濾過液が濾紙10の第1及び第2吸込み室側部分10c、10dで濾過されて、濾過済み液が第1及び第2吸込み室48、49に吸い込まれて流出している状態を示す。このとき、濾紙送り機構部45が作動して濾紙10が所定の長さだけ(移送部分)移送されている。
【0072】
図8(b)は、弁装置52が閉じており、未濾過液が濾紙10の第1吸込み室側部分10cで濾過されて、濾過済み液が第1吸込み室48に吸い込まれて流出している状態を示す。なお、同図に示すように、濾紙10の第1吸込み室側部分10cは、プリコート部分54と、非プリコート部分55とから成っている。プリコート部分54は、未濾過液中の細不純物が或る一定以上付着して、この細不純物によってプリコート層56が形成された部分である。非プリコート部分55は、付着する細不純物がそれよりも少ない部分である。
【0073】
この濾過装置43に設けられている濾紙送り機構部45によると、図8(b)に示すように、プリコート部分54と、非プリコート部分55とに未濾過液が透過して第1吸込み室48に吸い込まれるように、濾紙10を移送することができる。プリコート部分54は、未濾過液中の細不純物が或る一定以上濾紙10に付着して、この細不純物によって濾紙10の表面にプリコート層56が形成されたものであり、このプリコート層56によって、濾紙10の品質を変更せずに、比較的微細な不純物を捕捉することができる。つまり、このプリコート層56は、濾紙10で捕捉することができない微細不純物を捕捉することができる。例えば濾紙10では、大きさが10μ以上の細不純物を捕捉できるのに対して、プリコート層56は、大きさが1μ以上の微細不純物を捕捉することができる。
【0074】
また、非プリコート部分55は、細不純物の付着量がプリコート部分54よりも少ない部分であり、この非プリコート部分(移送部分)55の面積を適切に規定することによって、所望の濾過流量の濾過済み液が得られるようにすることができる。
【0075】
そして、図8(b)に示すように、未濾過液を透過させるプリコート部分54の面積を、未濾過液を透過させる非プリコート部分55の面積よりも大きくすることによって、所望の濾過精度が得られるようにすることができる。
【0076】
また、未濾過液を透過させるプリコート部分54の面積と、未濾過液を透過させる非プリコート部分55の面積との比を約4対1にすることによって、適切な濾過流量及び濾過精度が得られるようにすることができる。
【0077】
更に、図7及び図8に示す濾紙10の移送方法によると、濾紙送り機構部45が作動してプリコート部分54が形成された濾紙10を移送するときに、濾紙10の表面に付着する細不純物が浮き上がってその付着状態が変更され、プリコート部分54の目詰まりを低減させることができる。これによって、プリコート部分54(濾紙10)を使用できる時間を長引かせることができ、その結果、濾紙10の使用量を削減することができ経済的である。
【0078】
ただし、上記第2実施形態の濾過装置43において、図7及び図8に示すように、プリコート部分54と、非プリコート部分55とに未濾過液を透過させるように、濾紙送り機構部45が濾紙10を移送するようにしたが、これと同様に、上記第1実施形態の濾過装置11において、図7及び図8に示すように、プリコート部分54と、非プリコート部分55とに未濾過液を透過させるように、濾紙送り機構部14が濾紙10を移送するようにしてもよい。
【0079】
勿論、上記第1及び第2実施形態以外の濾過装置、例えば貯留槽に流入する未濾過液を帯状の濾紙10に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を貯留槽から流出させる濾過装置に対して、図7及び図8に示すように、プリコート部分54と、非プリコート部分55とに未濾過液を透過させるように、濾紙送り機構部が濾紙10を移送するようにすることができる。
【0080】
そして、上記第1及び第2実施形態では、未濾過液として食用油を例に挙げたが、これ以外にも、例えば研磨、研削、ホーニング等の機械加工に使用される加工液を濾過することができる。この加工液としては、例えば研磨液、研削液、冷却液、ホーニング液がある。
【0081】
また、上記第1実施形態では、循環ポンプ35として吸込みポンプを使用して未濾過液を濾紙10に透過させたが、これに代えて、加圧ポンプを使用して未濾過液を濾紙10に透過させてもよい。また、吸込みポンプや加圧ポンプを使用せずに、落差によって未濾過液を濾紙10に透過させるようにしてもよい。
【0082】
更に、上記第2実施形態では、図5に示すように、第1吸込み室48と第2吸込み室49とを吸込み用連通管51によって連通したが、これに代えて、循環ポンプ35の吸込み口と第2吸込み室49とを吸込み用連通管によって連通してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明に係る濾過装置は、例えば或る一定以上の不純物が濾紙に付着したときに、未濾過液を濾紙に透過させる濾過流量を殆ど低下させずに、この不純物が付着した濾紙を未使用又はそれに近いものと確実に取り替えることができる優れた効果を有し、このような濾過装置等に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明の第1実施形態に係る濾過装置を模式的に示す縦断面図である。
【図2】同第1実施形態に係る濾過装置を模式的に示す平面図である。
【図3】同第1実施形態に係る濾過装置の粗不純物濾過機構部を示すA−A断面図である。
【図4】同第1実施形態に係る濾過装置に使用されている濾紙の縁部に関する濾紙密封構造を示す拡大断面図である。
【図5】同発明の第2実施形態に係る濾過装置において第1吸込み室に濾過済み液が吸い込まれる状態を模式的に示す縦断面図である。
【図6】同第2実施形態に係る濾過装置において第1及び第2吸込み室に濾過済み液が吸い込まれる状態を模式的に示す縦断面図である。
【図7】同第2実施形態に係る濾過装置に使用されている濾紙の移送方法を説明するための平面図であり、(a)は濾紙に細不純物が付着していない状態を示す平面図、(b)は濾紙の第1吸引室側部分に細不純物が付着した状態を示す平面図である。
【図8】同第2実施形態に係る濾過装置に使用されている濾紙の移送方法を説明するための平面図であり、(a)は濾紙を所定の長さだけ移送した状態を示す平面図、(b)は濾紙のプリコート部分と非プリコート部分とに未濾過液を透過させている状態を示す平面図である。
【図9】従来の濾過装置を模式的に示す縦断面図である。
【図10】同従来の濾過装置を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0085】
10 濾紙
10a 縁部
10b 未濾過透過部分
10c 第1吸込み室側部分
10d 第2吸込み室側部分
11、43 濾過装置
12、44 貯留槽
12a 流入口
12b 流出口
13 粗不純物濾過機構部
14、45 濾紙送り機構部
14a 水平部
14b 傾斜部
15 挟持機構部
16 粗濾過槽
17 粗濾過部材
18 掻き取り装置
19 細濾過槽
20 仕切り壁
21 掻き取りバー
22 環状チェーン
23 駆動スプロケット
24 従動スプロケット
25 掻き取り駆動部
26 環状ネットベルト
27 歯付き駆動プーリ
28 歯付き従動プーリ
29 濾紙送り用駆動部
30 挟持バー
31 環状チェーン
32 駆動スプロケット
33 従動スプロケット
34 循環用連通管
35 循環ポンプ
36 濾紙送出しローラ
37 濾紙密封構造
38 支持板
39 多孔板
39a、47a 小孔
40 上側走行部
41 隙間
46 従動ローラ
47 濾液透過部材
47b 第1濾液透過部
47c 第2濾液透過部
48 第1吸込み室
49 第2吸込み室
50 仕切り板
51 吸込み用連通管
52 弁装置
54 プリコート部分
55 非プリコート部分
56 プリコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽に流入する未濾過液を帯状の濾紙に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を前記貯留槽から流出させる濾過装置において、
前記貯留槽に設けられ前記濾紙のうち前記未濾過液を透過させる部分を保持し、かつ、前記濾過済みの液体が透過可能な濾紙移送部を有し、この濾紙移送部を移動させることによって前記濾紙を移送することができる濾紙送り機構部を備えることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記濾紙送り機構部は、ネットコンベアであることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾紙を、前記濾紙移送部との間に挟み込む複数の挟持部材を有し、この複数の挟持部材を前記濾紙移送部と同期して同方向に移動させる挟持機構部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の濾過装置。
【請求項4】
貯留槽に流入する未濾過液を帯状の濾紙に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を前記貯留槽から流出させる濾過装置において、
前記濾過済みの液体をそれぞれの吸込み口から吸い込んで流出させる第1吸込み室及び第2吸込み室と、前記第1及び第2吸込み室のそれぞれの吸込み口と前記濾紙との間に配置され、前記濾紙のうち前記未濾過液を透過させる部分を保持し、かつ、前記濾過済みの液体が透過可能な濾液透過部材と、前記濾過済みの液体が前記第2吸込み室に吸い込まれることを停止させる吸込み停止手段と、濾紙送り機構部とを備えることを特徴とする濾過装置。
【請求項5】
前記濾過済みの液体を前記第1及び第2吸込み室に吸い込ませるための吸込みポンプを備え、
前記吸込み停止手段は、前記吸込みポンプの吸込み口と前記第2吸込み室とを連通する連通管に設けられている弁装置であり、
前記濾液透過部材は、多数の小孔を有することを特徴とする請求項4記載の濾過装置。
【請求項6】
前記濾紙送り機構部は、前記濾紙のうち前記未濾過液中の不純物が或る一定以上付着して、この不純物によってプリコート層が形成されたプリコート部分と、このプリコート部分よりも前記不純物の付着量が少ない非プリコート部分とに前記未濾過液を透過させるように、前記濾紙を移送することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項7】
前記未濾過液を透過させる前記プリコート部分の面積が、前記未濾過液を透過させる前記非プリコート部分の面積よりも大きいことを特徴とする請求項6記載の濾過装置。
【請求項8】
前記未濾過液を透過させる前記プリコート部分の面積と、前記未濾過液を透過させる前記非プリコート部分の面積との比が約4対1であることを特徴とする請求項6記載の濾過装置。
【請求項9】
貯留槽に流入する未濾過液を帯状の濾紙に透過させて濾過し、この濾過済みの液体を前記貯留槽から流出させる濾過装置において、
前記濾紙のうち前記未濾過液中の不純物が或る一定以上付着して、この不純物によってプリコート層が形成されたプリコート部分と、このプリコート部分よりも前記不純物の付着量が少ない非プリコート部分とに前記未濾過液を透過させるように、前記濾紙を移送する濾紙送り機構部を備えていることを特徴とする濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−330842(P2007−330842A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162221(P2006−162221)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(506200304)株式会社アトラステクノサービス (4)
【Fターム(参考)】