説明

火災感知器および火災感知器の点検装置

【課題】
加煙試験と感度試験が同時にできる火災感知器および火災感知器の点検装置を提供する。
【解決手段】
本発明の火災感知器の点検装置は、通常はノズルが閉栓されているガスボンベと、ノズルを開栓して火災感知器の火災検出部にガスを供給するノズル開栓手段と、火災感知器から感度情報を受光する受光手段と、受光した感度情報を表示する表示手段と、感度情報より火災感知器が正常であるかを判断する試験判定部を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器の点検時に、加煙試験器による動作確認と同時に感度確認も行える火災感知器および火災感知器の点検装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の感知器点検具は、煙感知器の加煙試験をすることしかできなく、感度試験を実施する場合は、煙感知器を天井等から取り外して感度試験器で取付する必要があった。従って、感知器の着脱作業を伴うために時間を要していた。
【特許文献1】特開平09−097389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の火災感知器は、感知器点検具による煙の発生によって検出レベルが火災閾値以上となると作動し、その際に、点検者がストップウォッチ等でその火災感知器が作動するまでの作動時間を計測していた。また、感度試験は天井から取り外した火災感知器を感度試験器に取付する必要があった。従って、作業時間を要するうえ、手間がかかるものであった。
【0004】
本発明は、火災感知器の加煙試験と感度試験を同時に実施し、点検者の作業性が向上できる火災感知器および火災感知器の点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の火災感知器においては、火災検出部と、感度情報を記憶部に格納し、かつ、火災検出部からの検出レベルが火災閾値以上となると火災判別して火災信号を送信する制御手段と、制御手段により火災判別時に点灯される表示手段と、を有する火災感知器において、制御手段は、火災信号の送信時に表示手段を、感度情報を示す第1の点灯状態、または、火災表示を示す第2の点灯状態、に制御するものである。
【0006】
本発明の火災感知器においては、火災検出部と、感度情報を記憶部に格納し、かつ、火災検出部からの検出レベルが火災閾値以上となると火災判別して火災信号を送信する制御手段と、制御手段により火災判別時に点灯される表示手段と、を有する火災感知器において、制御手段は、火災検出部からの検出レベルの上昇率が所定の閾値以上となると、火災信号の送信時に表示手段を、感度情報を示す第1の点灯状態、または、火災表示を示す第2の点灯状態、に制御するものである。
【0007】
また、本発明の火災感知器においては、火災検出部は、煙検出部であるものである。
【0008】
また、本発明の火災感知器においては、感度情報は、火災検出部の汚損度または火災感知器の作動時間であるものである。
【0009】
また、本発明の火災感知器においては、表示手段は、第1の点灯状態で送信する赤外線を発光する第1の発光素子と、第2の点灯状態で可視光線を発光する第2の発光素子と、からなるものである。
【0010】
本発明の火災感知器の点検装置においては、通常はノズルが閉栓されているガスボンベと、ノズルを開栓して火災感知器の火災検出部にガスを供給する供給手段と、火災感知器から感度情報を受光する受光手段と、受光した感度情報を表示する表示手段と、感度情報より火災感知器または点検装置が正常であるかを判断する試験判定部と、を備えたものである。
【0011】
本発明の火災感知器の点検装置においては、ノズルの開栓時から前記感度情報受光時までの時間を測定する計時手段と、を設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の火災感知器は、点検装置の試験用ガスの噴射により検煙空間に煙粒子等が侵入する際、検出レベルが急上昇してから火災閾値以上となるときに各表示灯に感度情報を送信させるものである。よって、点検装置の加煙開始から火災感知器発報までの間、点検者がストップウォッチ等を使用する必要がない。
【0013】
本発明の火災感知器の点検装置は、試験用ガスの噴射による加煙試験と、加煙試験の作動時に感度情報を受光する感度試験と、を同時に実施できるために、火災感知器を天井面から取り外して専用の感度試験器に取付する必要がない。また、感度情報の結果から試験判定部で火災感知器が正常であるかを判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態における光電式煙感知器20のブロック図である。光電式煙感知器20は、発光回路1と、受光増幅回路2と、制御回路3と、定電圧回路4と、作動表示回路5と、送信回路6と、からなる。また、制御回路3は、A/D変換器13と、火災判別部14と、記憶部15、計時手段16などを備えるCPU17を有するものである。
【0015】
発光回路1内の発光素子(図示せず)は、検煙空間に所定間隔でパルス光を照射する。検煙空間に煙粒子が侵入すると、煙粒子により生じる散乱光の受光量より受光増幅回路2内の受光素子(図示せず)が受光信号を出力する。制御回路3は、受光増幅回路2で増幅された増幅信号をA/D変換器13に入力し、得られた検出レベルが閾値以上のときに火災と判別して火災信号を出力するとともに、各表示灯を点灯制御させる。また、定電圧回路4は各回路に対し、安定した電圧を供給するものである。また、作動表示回路5は、例えば、可視光の作動表示灯19により火災感知器が作動状態であることを報知するものである。また、送信回路6は、例えば、赤外光の感度表示灯18により感度情報を点検装置へ送信するものである。
【0016】
感度情報は、検煙空間の汚れ度合と、加煙試験による感知器の作動時間と、からなる。検煙空間の汚れ度合は、記憶部15に格納された、例えば6時間前から現在までの検出レベルの平均値を算出するものであり、監視開始時からの汚れ増加による検出レベルの上昇値、または、火災閾値との差分値などとして記憶部15に格納する。感知器の作動時間は、制御回路3の火災判別部14で、例えば6秒前から現在までの検出レベルの上昇率(%/m/6秒)を演算して、検出レベルの上昇率が予め設定した加煙閾値以上であるかを判断する。火災判別部14は上昇率が加煙閾値以上であるときに加煙試験開始と認識し、計時手段16に作動時間の測定を開始させる。なお、感度表示灯18に加煙試験開始の認識信号を送信させてもよい。そして、火災判別部14は検出レベルが火災閾値以上であるときに加煙試験による火災感知器の作動と認識し、計時手段16に作動時間の測定を終了して記憶部15に格納する。これらの双方またはどちらか一方の感度情報は、感知器作動時に光パルス信号により点検装置に送信される。また、点検装置に計時手段を設ける場合は、汚れ度合だけを送信するようにしてもよい。
【0017】
この状態で、感度表示灯18はCPU17の記憶部15に格納された感度情報を含める赤外線パルスを発光する一方で、作動表示灯19は連続発光する。また、感度表示灯18と作動表示灯19の表示タイミングは任意に設定される。また、表示灯を1つの可視光線の発光素子で兼用する場合、制御回路3は、検出レベルが火災閾値以上となると感度表示と作動表示を切替制御する。この状態で、図示しない受信機の復旧スイッチを操作すると光電式煙感知器20は監視状態に戻る。なお、光電式煙感知器20に送信部を設け、感度情報を無線送信してもよい。
【0018】
図2は、本発明の実施形態の火災感知器の点検装置30の構成図である。点検装置30は、試験用ガスが充填されているガスボンベ31と、ガスボンベ31のノズルを開栓して光電式煙感知器20の火災検出部に試験用ガスを供給するノズル開栓手段32と、火災感知器の感度表示灯18から感度情報を受光する受光手段33と、受光した感度情報を表示する図示しない表示手段と、感度情報より光電式煙感知器20が正常であるかを判断する試験判定部34と、点検中に光電式煙感知器20を覆うフード35と、点検装置30を光電式煙感知器20の取付位置まで近づける支持棒36と、からなる。
【0019】
本発明の実施形態の火災感知器の点検装置30による手順を説明する。まず、点検者は、支持棒36を用いて、天井面等に設置されている光電式煙感知器20を点検装置30の略蛇腹形状のフード35で確実に覆う。この状態で、点検装置30を設置面に押し上げると、ノズル開栓手段32が押されてガスボンベ31のノズルを開栓して試験用ガスを噴射する。この状態で、光電式煙感知器20の感度(1種、2種、3種)に応じて噴射時間を変化させる。光電式煙感知器20はフード35で覆われているので、試験用ガスはフード35内を進み、順次、光電式煙感知器20の煙流入口から検煙空間に入り込む。これにより、検出レベルの上昇率は加煙閾値以上の急上昇となるため、火災検出部14は試験用ガスが噴射されたことを認識し、計時手段16に作動時間の測定を開始させる。さらに、検煙空間に試験用ガスが入り続けて検出レベルが火災閾値を超えると、光電式煙感知器20は作動状態となり、計時手段16で測定した作動時間を記憶部15に格納し、検煙空間の汚れ度合と作動時間を合わせた感度情報を光パルスにより送信する。この光パルスを点検装置30の受光手段33が受信し、試験判定部34により試験結果を判定する。また、表示手段は、感知器の感度情報および試験結果を表示させる。
【0020】
また、計時手段16は、点検装置30に設けてもよい。この場合、点検装置30のガス開栓手段32が押されたときに作動時間を測定開始すればよい。また、試験用ガスが噴射開始から検煙空間へ進入するまでに時間差が発生する場合は、作動時間を測定値より小さく補正してもよい。
【0021】
光電式煙感知器20の火災判別部14は、加煙開始後、検出レベルの上昇率が防虫網の目詰まり閾値未満と小さくなるときは、通常時の感度情報に加えて防虫網の目詰まり警報を送信する。一方、点検装置30は防虫網の目詰まり警報を表示する。この場合は、光電式煙感知器20の図示しない防虫網を清掃するなどで対応する。
【0022】
図3は、本発明の実施形態における光電式煙感知器20の試験時の動作を示すフローチャートである。S1で、発光素子が検煙空間にパルス発光する。S2で、受光素子の受光出力による検出レベルを演算して記憶部15に格納する。S3で、記憶部15に格納された過去から現在までの検出レベルの平均値を演算して、検煙空間の汚れ度合を感度情報として記憶部15に格納する。S4で、制御回路3の火災判別部14は、検出レベルの上昇率(%/m/時間)が予め設定した加煙閾値以上であるかを判断する。加煙閾値以上であれば、S5で、加煙開始と認識して、加煙閾値未満であれば、S1に戻る。
【0023】
S6で、発光素子が検煙空間にパルス発光する。S7で、受光素子の受光出力による検出レベルを演算して記憶部15に格納する。S8で、記憶部15に格納された過去から現在までの検出レベルの平均値を演算して、検煙空間の汚れ度合を感度情報として記憶部15に格納する。S9で、制御回路3の火災判別部14は、検出レベルが予め設定した火災閾値以上であるかを判断する。火災閾値以上であれば、S10で、加煙開始時から作動時までの検出レベルの上昇率が防虫網の目詰まり閾値以上であるかを判断する。目詰まり閾値以上であれば正常と判断し、S11で、感度表示灯18により感度情報を送信し、S12で、作動表示灯19を点灯させる。一方で、目詰まり閾値未満であれば異常と判断し、S13で、感度表示灯18により感度情報と目詰まり警報を送信し、S14で、作動表示灯19を点灯させる。なお、S9で、検出レベルが火災閾値未満であれば、S6に戻る。
【0024】
なお、点検対象の光電式煙感知器20の感度(1種、2種、3種)により、ガスボンベ31のノズルを開栓している時間は異なるが、同じ方法で点検できる。また、実施形態では光電式煙感知器20の例を示したが、イオン化式煙感知器でもよい。さらに、熱感知器や炎感知器などにも応用できる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態における光電式煙感知器20のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における火災感知器の点検装置30の構成図である。
【図3】本発明の実施形態における光電式煙感知器20の試験時の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1 発光回路
2 受光増幅回路
3 制御回路
4 作動表示回路
5 定電圧回路
6 送信回路
11 発光素子
12 受光素子
13 A/D変換器
14 火災判別部
15 記憶部
16 計時手段
17 CPU
18 感度表示灯
19 作動表示灯
20 光電式煙感知器
30 点検装置
31 ガスボンベ
32 ノズル開栓手段
33 受光手段
34 試験判定部
35 フード
36 支持棒



【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災検出部と、感度情報を記憶部に格納し、かつ、該火災検出部からの検出レベルが火災閾値以上となると火災判別して火災信号を送信する制御手段と、該制御手段により火災判別時に点灯される表示手段と、を有する火災感知器において、前記制御手段は、前記火災信号の送信時に前記表示手段を、前記感度情報を示す第1の点灯状態、または、火災表示を示す第2の点灯状態、に制御することを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
火災検出部と、感度情報を記憶部に格納し、かつ、該火災検出部からの検出レベルが火災閾値以上となると火災判別して火災信号を送信する制御手段と、該制御手段により火災判別時に点灯される表示手段と、を有する火災感知器において、前記制御手段は、前記火災検出部からの検出レベルの上昇率が所定の閾値以上となると、前記火災信号の送信時に前記表示手段を、前記感度情報を示す第1の点灯状態、または、火災表示を示す第2の点灯状態、に制御することを特徴とする火災感知器。
【請求項3】
前記火災検出部は、煙検出部であることを特徴とする請求項1または2記載の火災感知器。
【請求項4】
前記感度情報は、前記火災検出部の汚損度または前記火災感知器の作動時間であることを特徴とする請求項1乃至3記載の火災感知器。
【請求項5】
前記表示手段は、前記第1の点灯状態で送信する赤外線を発光する第1の発光素子と、前記第2の点灯状態で可視光線を発光する第2の発光素子と、からなることを特徴とする請求項1乃至4記載の火災感知器。
【請求項6】
通常はノズルが閉栓されているガスボンベと、前記ノズルを開栓して火災感知器の前記火災検出部にガスを供給する供給手段と、火災感知器から前記感度情報を受光する受光手段と、受光した前記感度情報を表示する表示手段と、前記感度情報より火災感知器または点検装置が正常であるかを判断する試験判定部と、を備えたことを特徴とする火災感知器の点検装置。
【請求項7】
前記ノズルの開栓時から前記感度情報受光時までの時間を測定する計時手段と、を設けた請求項6記載の火災感知器の点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−250858(P2008−250858A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94024(P2007−94024)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】