説明

火災感知器及び火災報知システム

【課題】専用の火災受信機を必要とせず、試験信号を重ならせずに火災感知器を1台ずつ順送りに動作試験を行うことにより、回線毎の試験消費電流を抑制できることを目的とする。
【解決手段】火災を検知する火災検知センサ11と、試験信号に基づいて火災検知センサ11に疑似火災信号を出力させる試験光源22と、試験信号を自ら生成して周期的に出力するよう設定するか、外部から試験信号を受けるよう設定することができる試験設定切替器21と、火災検知センサ11からの信号を信号の大きさに応じたデジタル信号に変換する変換手段31と、変換手段31が変換したデジタル信号に基づいて火災判別して火災信号を出力し、試験光源22による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を外部に出力する火災判別・試験判定部であるCPU32とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火災感知器及び火災報知システム、特に火災感知器の動作試験における試験消費電流を抑制できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火災感知装置は、火災の熱を感知して閉じる感熱スイッチと抵抗器とから成る直列回路を有し、感熱時に前記感熱スイッチが閉じ、このときの感熱スイッチを流れる電流により受信機内の警報器を鳴動させて火災を報知する熱式火災感知装置において、並列接続された熱感知器群を受信機側より遠方操作によりその作動点検を行う場合、前記受信機内の点検スイッチを閉じることにより各熱感知器側に対してヒータ加熱用配線を経て各熱感知器内の加熱ヒータに直流電源が供給され、このヒータの加熱により火災熱と同等の熱を加え、感熱スイッチを閉じさせ、感知信号電流に全感知器の個数を乗じた値を受信機内の直流電流計で計測し、その値が全感知器の個数と感知信号電流との積であることを知って全熱感知器が正常に作動していることを知るようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭53−69598号公報(第1頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の火災感知装置では、受信機側より遠方操作によりその作動点検を行う場合、受信機内の点検スイッチを閉じることにより、並列接続された熱感知器群の各熱感知器内の加熱ヒータに直流電源が供給され、このヒータの加熱により火災の熱と同等の熱を加え、感熱スイッチを閉じさせて一斉に作動点検を行うため、回線に流れる感知信号電流による消費電流が大きくなり、回線毎の許容消費電流によっては、熱感知器の最大接続台数に制約を受ける場合があるという問題があった。
また、従来の火災感知装置では、受信機内に点検スイッチを設ける必要があり、専用の受信機が必要となって、構成が複雑になり、高価になり、しかも点検スイッチを有する専用の受信機がなければ、熱感知器の作動点検を行うことができないという問題点もあった。
【0004】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたもので、専用の火災受信機を必要とせず、試験信号を重ならせずに火災感知器を1台ずつ順送りに動作試験を行うことにより、回線毎の試験消費電流を抑制できる火災感知器及び火災報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る火災感知器は、火災を検知する火災検知センサと、試験信号に基づいて前記火災検知センサに疑似火災信号を出力させる試験手段と、前記試験信号を自ら生成して周期的に出力するよう設定するか、外部から試験信号を受けるよう設定することができる試験設定切替器と、前記火災検知センサからの信号を信号の大きさに応じたデジタル信号に変換する変換手段と、該変換手段が変換したデジタル信号に基づいて火災判別して火災信号を出力し、前記試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を外部に出力する火災判別・試験判定部とを備えて構成されている。
【0006】
また、本発明に係るもう1つの火災報知システムは、火災を監視し、警報を行う火災受信部と、該火災受信部からの信号線に並列に接続された複数の前記請求項1記載の火災感知器とを備え、前記複数の火災感知器のうち、1つの火災感知器について試験設定切替器により試験信号を自ら生成して周期的に出力するよう設定して親火災感知器として機能させ、それ以外の火災感知器について試験設定切替器により外部から試験信号を受けるよう設定して子感知器として機能させ、前記親火災感知器の試験手段は自ら生成して周期的に出力する試験信号に基づいて火災検知センサに疑似火災信号を出力させ、火災判別・試験判定部は、該試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力し、前記子火災感知器の試験手段は外部からの試験信号に基づいて前記火災検知センサに疑似火災信号を出力させ、火災判別・試験判定部は、該試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力し、子火災感知器の当該動作を末端の子感知器まで繰り返すようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明における火災感知器は、火災を検知する火災検知センサと、試験信号に基づいて火災検知センサに疑似火災信号を出力させる試験手段と、試験信号を自ら生成して周期的に出力するよう設定するか、外部から試験信号を受けるよう設定することができる試験設定切替器と、火災検知センサからの信号を信号の大きさに応じたデジタル信号に変換する変換手段と、変換手段が変換したデジタル信号に基づいて火災判別して火災信号を出力させ、試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を外部に出力する火災判別・試験判定部とを備えているので、火災を監視し、警報を行う火災受信部からの信号線にこのような火災感知器を複数並列に接続し、複数の火災感知器のうち、1つの火災感知器について試験設定切替器により試験信号を自ら生成して周期的に出力するよう設定して親火災感知器として機能させ、それ以外の火災感知器について試験設定切替器により外部から試験信号を受けるよう設定して子感知器として機能させるようにすることにより、親火災感知器は自ら生成して周期的に出力する試験信号に基づいて試験判定を行い、試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力し、子火災感知器は外部からの試験信号に基づいて試験判定を行い、試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力するため、試験信号を出さない一般的な火災受信機を用いた火災報知システムにおいても複数の炎感知器について動作試験を順次行うことが可能となった。
【0008】
また、もう1つの本発明は、親火災感知器の試験手段は自ら生成して周期的に出力する試験信号に基づいて火災検知センサに疑似火災信号を出力させ、火災判別・試験判定部は、該試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力し、子火災感知器の試験手段は外部からの試験信号に基づいて火災検知センサに疑似火災信号を出力させ、火災判別・試験判定部は、該試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力し、子火災感知器の当該動作を末端の子感知器まで繰り返すようにしたので、火災感知器1台ずつ順送りに動作試験を行うこととなり、動作試験における試験消費電流の分散を図ることができ、試験信号を出さない一般的な火災受信機を用いた火災報知システムにおいても複数の炎感知器について動作試験を順次行うことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の実施の形態1の火災報知システムの構成を示すブロック図、図2は同火災報知システムの火災感知器の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、火災報知システムは、火災を検知する複数の炎感知器1と、これら炎感知器1からの火災信号を受信して火災を監視し、警報を行う火災受信機2とを有して大略構成されている。
火災受信機2から延設している電源線3と信号線4にそれぞれ複数の炎感知器1が並列に接続されている。また、炎感知器1同士は試験信号線5で接続されており、最終段の炎感知器1の試験信号線5は火災受信機2に接続されている。さらに、各炎感知器1と火災受信機2は故障信号線6で接続されている。
【0010】
図2に示すように、各炎感知器1は、焦電素子等からなる赤外線センサ11を備えており、この赤外線センサ11は炎を検出するためのCO2 共鳴放射に関する赤外線を受光し、電気信号に変換して増幅器12に出力する。増幅器12で増幅された信号はMPU13に入力される。23は定電圧回路で、各部に所定の直流電圧を供給する。
MPU13は、図2に示すように、A/D変換器31、CPU32、火災検知プログラムを記憶するROM33、RAM34、タイマ35及びI/O(入出力)回路36を備えており、増幅器12からの出力をA/D変換器31を介して取り込んで、炎であることの火災判別及び試験判定を行う。
【0011】
また、MPU13はI/O回路36を介して試験入力I/F14、試験出力I/F15、火災出力I/F16及び故障出力I/F17と接続されている。
その試験入力I/F14は火災受信機2又は前段の炎感知器1からの試験信号が入力され、試験出力I/F15は次段の炎感知器1に試験信号を出力し、火災出力I/F16は火災信号を火災受信機2に出力し、故障出力I/F17は故障信号を火災受信機2に出力する。
21は自動試験の設定と手動試験の設定の切り替えを行う試験設定切替器である。ここで、自動試験の設定とは試験信号の有無に拘わらず、自分、即ち炎感知器1自身で定期的に試験信号を出して試験を行うように設定することをいい、手動試験の設定とは外部から試験信号が入ってきたら試験を行うように設定することをいう。試験の設定切替はディップスイッチ等を用いても自動化してもよい。
【0012】
従って、試験設定切替器21によって自動試験の設定が行われると、その炎感知器1は親炎感知器1として機能し、手動試験の設定が行われると、その炎感知器1は子炎感知器1として機能するようになる。
22は疑似火災信号を出力させる例えば白熱電球の試験光源で、I/O回路36からの試験用点灯信号に基づいて点灯させられる。
試験設定切替器21を操作して自動試験の設定が行われると、この炎感知器1は親炎感知器1となり、タイマ35が例えば一日一回起動してCPU32からの試験信号に基づいてI/O回路36より試験光源22に試験用点灯信号が出力され、試験光源22が点灯させられる。
【0013】
次に、本発明に係る実施の形態の炎感知器の動作について説明する。
まず、赤外線センサ11のセンサ出力は、増幅器12で増幅された後に、MPU13に入力される。MPU13のCPU32では、A/D変換器31によりA/D変換された赤外線センサ11の検出信号から火災における炎の赤外線を検出し、その赤外線量が所定値以上の場合に炎であることの火災判別をする。
こうして火災判別されると、MPU13はI/O回路36を経て火災出力I/F16より信号線4を介して火災受信機2に火災信号を出力する。その火災信号を受けた火災受信機2は火災報知する。
【0014】
次に、本発明に係る実施の形態1の火災報知システムの動作試験について説明する。
この場合、図1において火災受信機2に一番近い炎感知器1について試験設定切替器21を操作して自動試験の設定を行って親炎感知器1とし、それ以外の炎感知器1については試験設定切替器21を操作して手動試験の設定を行って子炎感知器1としておく。
そうすると、親炎感知器1のタイマ35が例えば一日一回起動してCPU32からの試験信号に基づいてI/O回路36より試験光源22に試験用点灯信号が出力され、試験光源22が点灯させられる。この親炎感知器1が正常であれば、赤外線センサ11は火災における炎と同様のセンサ出力を出力し、そのセンサ出力は、増幅器12で増幅された後に、MPU13に入力され、MPU13のCPU32で火災判別する。このとき、CPU32では試験光源22によるものと認識しているので、MPU13は火災出力I/F16を作動させずに試験出力I/F15より試験信号線5を介して次段の炎感知器1に試験信号を出力する。
【0015】
なお、この親炎感知器1が異常の場合は、CPU32は故障と判断して故障信号をI/O回路36を経て故障出力I/F17より出力線6を介して火災受信機2に出力するが、この場合もMPU13はI/O回路36を経て試験出力I/F15より試験信号線5を介して次段の炎感知器1に試験信号を出力する。
次段の子炎感知器1では、その試験信号を試験入力I/F14で受け、その試験信号はI/O回路36を経てCPU32に入力される。試験信号を受けたCPU32はI/O回路36を経て試験光源22に試験用点灯信号を出力し、試験光源22を点灯させ、試験動作に移る。
このようにして、複数の炎感知器1について動作試験が順次行われ、最終段の子炎感知器1が動作試験後に出力する試験信号は火災受信機2に入力され、その試験信号を受け取った火災受信機2は動作試験が終了したことを認識する。また、火災受信機2から一番遠い炎感知器1を親炎感知器1としてもよい。
【0016】
この実施の形態1の火災報知システムにおいて、動作試験を行う場合、火災受信機2に一番近い炎感知器1について試験設定切替器21を操作して自動試験の設定を行って親炎感知器1とし、それ以外の炎感知器1については試験設定切替器21を操作して手動試験の設定を行って子炎感知器1としておくことにより、親炎感知器1のタイマ35が一日一回起動してCPU32からの試験信号に基づいてI/O回路36より試験光源42に試験用点灯信号が出力され、試験光源22が点灯させられて動作試験が終了すると、親炎感知器1は次段の子炎感知器1に試験信号を出力し、試験信号を受けた次段の子炎感知器1が試験光源22が点灯させられて動作試験に移り、動作試験が終了すると、次の子炎感知器1に試験信号を出力し、というように次々と複数の子炎感知器1について順次動作試験を行うようにしたので、試験消費電流の分散を図ることができ、試験信号を出さない一般的な火災受信機2を用いた火災報知システムにおいても複数の炎感知器1について動作試験を順次行うことができる。
【0017】
上記実施の形態1では試験信号を出さない一般的な火災受信機について説明したが、試験信号を出す専用の火災受信機の場合には、全ての炎感知器1について試験設定切替器21を操作して手動設定にしておけば、動作試験を順次行うことができることはいうまでもない。
また、この実施の形態1では炎感知器として説明したが、煙感知器、熱感知器でもよいことは勿論である。
さらに、火災感知器が火災受信機に火災信号や故障信号を出力する火災報知システムだけでなく、火災感知器が火災受信機に火災や故障の情報を伝送する火災報知システムにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1の火災報知システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同火災報知システムの火災感知器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0019】
1 炎感知器、2 火災受信機、3 電源線、4 信号線、5 試験信号線、6 出力線、11 赤外線センサ、12 増幅器、13 MPU、21 試験設定切替器、22 試験光源、31 A/D変換器、32 CPU、33 ROM、34 RAM、35 タイマ、36 I/O回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を検知する火災検知センサと、
試験信号に基づいて前記火災検知センサに疑似火災信号を出力させる試験手段と、
前記試験信号を自ら生成して周期的に出力するよう設定するか、外部から試験信号を受けるよう設定することができる試験設定切替器と、
前記火災検知センサからの信号を信号の大きさに応じたデジタル信号に変換する変換手段と、
該変換手段が変換したデジタル信号に基づいて火災判別して火災信号を出力し、前記試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を外部に出力する火災判別・試験判定部と、
を備えたことを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
火災を監視し、警報を行う火災受信部と、該火災受信部からの信号線に並列に接続された複数の前記請求項1記載の火災感知器とを備え、
前記複数の火災感知器のうち、1つの火災感知器について試験設定切替器により試験信号を自ら生成して周期的に出力するよう設定して親火災感知器として機能させ、それ以外の火災感知器について試験設定切替器により外部から試験信号を受けるよう設定して子感知器として機能させ、
前記親火災感知器の試験手段は自ら生成して周期的に出力する試験信号に基づいて火災検知センサに疑似火災信号を出力させ、火災判別・試験判定部は、該試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力し、
前記子火災感知器の試験手段は外部からの試験信号に基づいて前記火災検知センサに疑似火災信号を出力させ、火災判別・試験判定部は、該試験手段による疑似火災信号出力に基づく試験判定後に試験信号を次段の子火災感知器に出力し、子火災感知器の当該動作を末端の子感知器まで繰り返すようにしたことを特徴とする火災報知システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−148562(P2007−148562A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339165(P2005−339165)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】