説明

火花点火式エンジンの燃焼室構造

【課題】 耐ノッキング性能を向上させることにより、実用上有効に圧縮比を高めることができる火花点火式エンジンの燃焼室構造を提供する。
【解決手段】 シリンダボア軸線を挟んで開口する2個の吸気ポート21及び少なくとも1個の排気ポート22と、シリンダボア径方向中央部に設けられた第1点火プラグ15とを含む火花点火式エンジンの燃焼室構造において、各吸気ポートの間かつシリンダボア周縁部に設けられた第2点火プラグ15aを設け、第1点火プラグ周辺から第2点火プラグ周辺にかけて連続する第1燃焼空間14aとシリンダボア周縁部の第2燃焼空間14bとによって燃焼室14を形成し、第1点火プラグ周辺から排気側のシリンダボア周縁にかけての途中位置に、第1燃焼空間14aと第2燃焼空間14bとを連通するとともに、天井壁11とピストン頂面4との間隙が周囲よりも狭められた小間隙部5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火式エンジンの燃焼室の構造に関し、より詳しくは、シリンダヘッド下面とピストン頂面との間に形成され、上記シリンダヘッド下面を天井壁とする燃焼室の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、経済面のみならず、地球の温暖化防止という環境面においてもエンジンの燃費向上要求が一段と高まりつつある。火花点火式エンジンにおいて燃費を向上するには燃焼効率を高めれば良く、その有力な手段として圧縮比の増大が挙げられる。
【0003】
圧縮比を高めるには、シリンダー容積に対して燃焼室容積を小さくすれば良い。そのような高圧縮比化に好適な燃焼室構造として、たとえばペントルーフ型の燃焼室構造が多く用いられている。この燃焼室構造は、吸気側の天井壁と排気側の天井壁とが屋根形をなすように形成されたものであって、比較的大きな吸排気バルブ径を確保しつつ、燃焼室容積を小さくすることができるという特徴がある。またスワール(ピストン摺動軸まわりの旋回流。横渦。)、タンブル(ピストン摺動軸に平行な面内の旋回流。縦渦。)、或いはスキッシュ(ピストン上昇時にピストンボア周縁部から中央部に押し出すような流れ)といった筒内流動を生成するうえでも有利な構造である。
【0004】
例えば特許文献1乃至3には、各種の筒内流動を生成させて燃焼効率向上を図った燃焼室の構造が示されているが、その図示された断面構造から、何れもペントルーフ型燃焼室であると解される。
【0005】
また特許文献4および5には、強いタンブルを生成させ得る吸気ポートの構造が開示されている。これらのような、強いタンブルを生成させ得る吸気ポートの総称を、当明細書ではタンブル生成ポートというものとする。
【特許文献1】特開平08−254126号公報
【特許文献2】特開平08−049546号公報
【特許文献3】特開2003−184559号公報
【特許文献4】特開平03−023314号公報
【特許文献5】特開平06−010680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように燃焼室構造を工夫する等して高圧縮比を実現したとしても、それで直ちに実用上有効な燃焼を行わせることができるとは限らない。良く知られているように、圧縮比を高めるとノッキングやデトネーション等の異常燃焼(以下ノッキング等という)が起こり易くなるからである。つまり実用上は、ノッキング等の発生しない範囲でしか圧縮比を高めることができない。
【0007】
しかしそれは、ノッキング等の発生を抑制することができれば、つまり耐ノッキング性能を向上させることができれば、より圧縮比を高めることができることをも意味する。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑み、耐ノッキング性能を向上させることにより、実用上有効に圧縮比を高めることができる火花点火式エンジンの燃焼室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、前期主燃焼期間(燃焼質量の10%から90%が燃焼する主燃焼期間のうち、10%以上50%未満が燃焼する期間)では低速で燃焼させることによって筒内圧力や温度の上昇が抑制され、未燃燃料の過早着火が効果的に抑制されるので、高い耐ノッキング性能を得ることができ、後期主燃焼期間(主燃焼期間のうち、燃焼質量の50%以上90%未満が燃焼する期間)では未燃燃料を高速燃焼させて速やかに燃焼を完了させることにより、燃え残りを核とする自着火を抑制することができ、やはり耐ノッキング性能を高めることができ、燃焼全体としての主燃焼期間を殆ど延ばすことなく、効果的にノッキングを抑制することができる燃焼形態(以下当明細書において、後期重心型燃焼と称する)に着目し、鋭意研究を重ね、このような後期重心型燃焼を容易に行わせることのできる次のような火花点火式エンジンの燃焼室構造を見出した。
【0010】
すなわち請求項1に係る発明は、シリンダヘッド下面とピストン頂面との間に形成され、上記シリンダヘッド下面を天井壁とする燃焼室と、上記天井壁の、シリンダボア軸線を挟んだ一方側に開口する2個の吸気ポートと、同他方側に開口する少なくとも1個の排気ポートと、上記天井壁の、シリンダボア径方向中央部から上記燃焼室内に先端が臨設された第1点火プラグとを含む火花点火式エンジンの燃焼室構造であって、上記2個の吸気ポート開口部の間であってシリンダボア周縁部における上記天井壁から上記燃焼室内に先端が臨む第2点火プラグが設けられ、ピストンが上死点にある状態で、上記燃焼室内空間の主要部が、上記第1点火プラグ周辺から上記第2点火プラグ周辺にかけて連続する第1燃焼空間と、シリンダボア周縁部の第2燃焼空間とによって形成され、上記第1点火プラグ周辺から排気側のシリンダボア周縁にかけての途中位置に、上記第1燃焼空間と上記第2燃焼空間とを連通するとともに、上記天井壁と上記ピストン頂面との間隙が周囲よりも狭められた小間隙部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また請求項2に係る発明は、請求項1記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造において、上記2個の吸気ポートは、タンブル生成ポートであることを特徴とする。
【0012】
また請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造において、上記小間隙部は、上記シリンダボア径方向における、上記第1点火プラグから上記シリンダボア周縁との中間点よりも上記シリンダボア周縁寄りに形成されていることを特徴とする。
【0013】
また請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造において、上記ピストンの冠部には、上記天井壁に向けて突出した凸部と、該凸部に対して相対的に没入した凹部とが形成されており、上記小間隙部は上記凸部の頂面と上記天井壁との間に形成され、上記第1燃焼空間および上記第2燃焼空間は上記凹部と上記天井壁との間に形成されていることを特徴とする。
【0014】
また請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造において、上記燃焼室は、吸気側天井壁と排気側天井壁とが屋根形をなすペントルーフ型であり、上記第2燃焼空間が、上記天井壁のペントルーフ形状および上記シリンダボア周縁に沿って略環状に形成され、上記小間隙部は、排気側よりも吸気側の方が広くなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によると、以下に述べるように、上述の後期重心型燃焼を容易に行わせることができる。そして上述のように、後期重心型燃焼によって耐ノッキング性能を向上させ、実用上有効に圧縮比を高めることができる。またそれを利用して燃費の向上を図ることができる。さらに、第2点火プラグを併用することにより、全体の燃焼期間をより短縮して一層耐ノッキング性能を高めることができる。その場合、必要に応じて第2点火プラグでの点火を停止したり遅らせたりすることにより、燃焼期間を短縮することによる弊害が懸念される場合に、その懸念を払拭することができる。
【0016】
本発明の構成によれば、前期主燃焼期間では主として第1点火プラグ周辺から上記第2点火プラグ周辺にかけて連続する第1燃焼空間で燃焼が行われ、後期主燃焼期間では主としてシリンダボア周縁部の第2燃焼空間で燃焼が行われる。一般的に、燃焼は火炎伝播によって進行し、その火炎面(火炎伝播の最前線)は、未燃ガスを押し出すようにして、第1点火プラグと第2点火プラグの各電極付近に形成された各火炎核を中心として、それぞれ略球状に拡がって行く(第1点火プラグと第2点火プラグとを併用した場合)。
【0017】
ところが本発明の構成では、第1燃焼空間と第2燃焼空間との間に、ピストン頂面と燃焼室天井壁との間隙が狭められた小間隙部が設けられている。火炎面に押し出された未燃ガスがこの小間隙部を通過する際、一種の絞り作用を受ける。その影響を受けて第1燃焼空間での燃焼の火炎伝播が抑制される。このため前期主燃焼期間における燃焼速度が比較的低く抑えられる。
【0018】
そして火炎面が小間隙部を経て第2燃焼空間に達すると、もはや小間隙部による絞り作用の影響を受けないので、速やかに火炎伝播が進行する。つまり後期主燃焼期間における燃焼速度が比較的高くなる。
【0019】
結局、全体として、前期主燃焼期間では比較的低速の燃焼が行われ、後期主燃焼期間では比較的高速の燃焼が行われるという、上述の後期重心型燃焼が行われることになるのである。
【0020】
ところで、本発明の構成では、シリンダボア径方向中央部の第1点火プラグに加え、2個の吸気ポート開口部の間に第2点火プラグが設けられている。仮に第2点火プラグを用いずに、第1点火プラグのみを用いた場合、火炎は第1点火プラグの電極付近に形成された火炎核を中心に略球状に拡がって行くことになる。この場合、より厳密には、排気側(排気バルブ側)への伝播速度が吸気側(吸気バルブ側)への伝播速度よりもやや高くなっている。高温の排気側では、より燃焼反応が促進されるからである。
【0021】
これに対し、第2点火プラグでも点火を行うようにすれば、火炎の伝播速度の遅い吸気側から排気側に向かう第2の火炎伝播が起こるので、第1点火プラグのみを点火させた場合に比べ、主燃焼期間を効果的に短縮することができる。
【0022】
一般的に、エンジンの回転速度が低く、負荷が高い運転領域(低速高負荷領域)では、主燃焼期間を短縮すれば耐ノッキング性能が向上する。それは後期重心型燃焼を行う場合も同様である。つまり本発明によれば、後期重心型燃焼を行うことに加え、主燃焼期間の短縮によっても耐ノッキング性能を高めることができ、その相乗効果によって、一層の耐ノッキング性能向上を図ることができる。
【0023】
一方、エンジンの回転速度が高く、負荷が高い運転領域(高速高負荷領域)では、主燃焼期間を短縮しすぎると、デトネーションと呼ばれる異常燃焼を招き易くなる。本発明の構成によれば、そのような高速高負荷領域では第2点火プラグの点火を停止したり、点火時期を遅らせたりすることにより、主燃焼期間を短縮しすぎないようにすることもできる。
【0024】
以上のように、本発明によれば、後期重心型燃焼を行わせ、さらに必要に応じて主燃焼期間を短縮させて効果的に耐ノッキング性能を高めることができる。或いは、耐ノッキング性能を高めた分だけ圧縮比を増大させる、つまり耐ノッキング性能を悪化させることなく圧縮比を高めることができる。本願発明者は、本発明の燃焼室構造によって、耐ノッキング性能を悪化させることなく圧縮比を従来比で0.5以上高めることができることを確認している。
【0025】
請求項2の発明によると、燃焼室内のタンブル(縦渦)によって筒内流動性が高められ、一層の主燃焼期間の短縮を図ることができる。特にタンブルは、点火プラグの電極に近い燃焼室の天井付近で吸気側から排気側へ向かう流れとなるので、第2点火プラグから排気側への火炎伝播をより促進させることができる。
【0026】
またタンブル生成ポートは、一般的に他の筒内流動生成手段(例えばスワール生成ポート)よりも吸気抵抗が小さいという特徴があり、高速運転領域での出力増大を図り易いという利点がある。
【0027】
請求項3の発明によると、以下に述べるように初期燃焼期間(主燃焼期間より前の、燃焼質量の10%が燃焼するまでの期間)を早期に完了させ、主燃焼期間への移行遅れを効果的に防止することができる。
【0028】
上記のように、前期主燃焼期間では主として第1燃焼空間で燃焼が行われる。従って、その前段階の初期燃焼期間も主として第1燃焼空間で燃焼が行われる。ここで、第1点火プラグと小間隙部との距離が近すぎると、初期燃焼期間での燃焼が小間隙部による絞り作用の影響を強く受けてしまい、燃焼速度が低下してしまう。初期燃焼期間での燃焼速度が低下すると、主燃焼期間への移行が遅れてしまい、燃焼全体の遅れに繋がるので好ましくない。
【0029】
そこで本発明の構成によれば、小間隙部が、シリンダボアの径方向における、第1点火プラグからシリンダボア周縁との中間点よりもシリンダボア周縁寄りに形成されている。つまり第1点火プラグと小間隙部とが適度に離間しているので、初期燃焼期間での燃焼に小間隙部による絞り作用の影響が殆ど及ばないようにすることができる。
【0030】
但し、小間隙部をシリンダボア周縁に寄せ過ぎると、第2燃焼空間を充分確保することが困難となる。従って小間隙部は、第1点火プラグからシリンダボア周縁との中間点よりはシリンダボア周縁寄りであり、かつシリンダボア周縁からもある程度離間した適所に形成させるのが好ましい。その適所はエンジンの特性等によって異なるが、概ね第1点火プラグからシリンダボア周縁までの距離の60〜85%の範囲内にある。
【0031】
請求項4の発明によると、ピストン冠部に凹凸を設けるという簡単な構造で第1燃焼空間、小間隙部および第2燃焼空間を形成することができる。
【0032】
請求項5の発明によると、比較的大きな吸排気バルブ径を確保しつつ、燃焼室容積を小さくすることができるというペントルーフ型燃焼室の特徴を利用して、より容易に高圧縮比化を図ることができる。
【0033】
また本発明の構成によれば、比較的火炎伝播速度の低い吸気側の吸気側の小間隙部が、比較的火炎伝播速度の高い排気側の小間隙部よりも広くなっているので、第1燃焼空間から第2燃焼空間への火炎伝播が、全体的により均等となり円滑な燃焼を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は本発明の第1実施形態に係る火花点火式エンジンの燃焼室構造を示す縦断面図である。また図2は、その主要部の拡大図である。さらに図3は、図1のIII−III線断面図である。
【0035】
当実施形態の燃焼室14はペントルーフ型であり、図1ないし図3は、ピストン13が上死点にある状態を示している。燃焼室14は、シリンダブロック50のシリンダボア12と、ピストン頂面4と、燃焼室14に臨むシリンダヘッド10の下面である天井壁11とに囲まれた空間である。天井壁11は、吸気側天井壁11aと排気側天井壁11bとが屋根形をなすように形成されている。
【0036】
吸気側天井壁11aには、これに開口する2箇所の吸気ポート21が設けられており、各吸気ポート21には所定の吸気タイミングで開く吸気バルブ19が設けられている。また排気側天井壁11bには、これに開口する2箇所の排気ポート22が設けられており、各排気ポート22には所定の排気タイミングで開く排気バルブ20が設けられている。吸気バルブ19および排気バルブ20の、燃焼室14に臨む面は、それぞれ吸気側天井壁11aおよび排気側天井壁11bの一部を形成している。
【0037】
吸気ポート21は、強いタンブルを生成させ得るタンブル生成ポートである。タンブル生成ポートは、各種の方式(例えばストレートポートの採用など。特許文献4及び5参照)が提案されている周知の構造である。当実施形態ではその詳細構造の説明を省略するが、このタンブル生成ポートによって、燃焼室内に図5に示すような強いタンブル30(縦渦)を生成させることができる。
【0038】
シリンダボア12の径方向中央付近には、天井壁11から燃焼室14内に先端が臨設された第1点火プラグ15が設けられている。また、2箇所の吸気ポート21の開口部の間であってシリンダボア周縁部における吸気側天井壁から燃焼室14内に先端が臨設された第2点火プラグ15aが設けられている(図5参照。なお同図および図6において、第1点火プラグ15および第2点火プラグ15aは、その臨設位置に×印を付して簡略的に示している。)。
【0039】
図2に示すように、天井壁11の周縁部である天井壁周縁部11dは、シリンダブロック50との合わせ面(詳しくは、シリンダヘッド10とシリンダブロック50との間に設けられた図略のヘッドガスケットとの合わせ面)よりもシリンダブロック50から離間する側にオフセットして形成されている。
【0040】
燃焼室14は、ピストン13が上死点にある状態で、燃焼室14内空間の主要部が第1点火プラグ15周辺から第2点火プラグ15a周辺にかけて連続する第1燃焼空間14aと、シリンダボア12周縁部の第2燃焼空間14bとによって形成されている。そして第1燃焼空間14aと第2燃焼空間14bとは、ピストン頂面4と天井壁11との間隙が狭められた小間隙部5を介して連通されている(但し、後述するように第2点火プラグ15a付近は除く)。
【0041】
ここで、ピストン13の形状、特に冠部の形状について説明する。図4はピストン13の斜視図である。以下の説明で、ピストン13の上下方向は図示状態での上下方向とする。つまり組立状態で天井壁11に近い方を上とする。
【0042】
ピストン冠部13aには、平面視で吸気側が切り欠かれた略円環状(以下C字状という)をなして上方に突出する凸部6が設けられている。凸部6のC字形の閉じた側(図4に示す状態で左上)は燃焼室14内での排気側に位置するように配設され、ピストン冠部13aの外周と略同心の円弧状となるように形成されている。その円弧半径はピストン13の平均半径の半分よりもやや大きい。また凸部6のC字形の開いた側(図4に示す状態で右下)は燃焼室14内での吸気側に位置するように配設される。そして凸部6のC字形の内側および外側には、凸部6に対して相対的に没入した凹部が形成されている。すなわち凸部6のC字形内側には中央側凹部7、C字形外側には周縁側凹部8が形成されている。
【0043】
凸部6の詳細形状は、所定の高さ及び幅をもって上方に突出するC字形凸状体の、吸気側および排気側を、それぞれ径方向内側上方から外側下方に向けて平斜面で削ぎ落としたような形状となっている。その削ぎ落としの切り口に相当する各面が吸気側凸部頂面9aおよび排気側凸部頂面9bを形成している。
【0044】
凸部6の上面は、排気側に比べて吸気側の方がより大きく削ぎ落とされている。従って、ピストン冠部13aの中心から、図2の左右方向に同一距離離反した位置で比較すると、排気側凸部頂面9bの高さは吸気側凸部頂面9aの高さより高くなっている(図2参照)。
【0045】
凸部6の上端面である凸部頂面9の、吸気側凸部頂面9a或いは排気側凸部頂面9b以外の部分は、略水平で平坦な凸部平坦頂面9cとなっている。
【0046】
中央側凹部7は、凸部6のC字形内側で、凸部6に対して相対的に没入した部分である。中央側凹部7は、凸部6のC字形と同様に吸気側に開口したU字状外縁を有する平坦部である。従って、中央側凹部7の、吸気側以外の周囲には、凸部6の側面によって形成された壁面が立設されている。
【0047】
周縁側凹部8は、凸部6のC字形外側で、凸部6に対して相対的に没入した部分である。周縁側凹部8は略水平で、ピストン冠部13aの外周と略同心の略円環形状となっている。
【0048】
次に、図2を参照して再び燃焼室14の詳細構造について説明する。第1燃焼空間14aは、ピストン13の中央側凹部7と天井壁11との間に形成されている。従って第1燃焼空間14aは、第1点火プラグ15から第2点火プラグ15aにかけて一体的に連続する空間となっている。また第2燃焼空間14bは、凸部6の外側の領域であって、かつピストン13の周縁側凹部8と天井壁11(詳しくは天井壁周縁部11d)との間に略環状(平面視でC字状)に形成されている。
【0049】
そして第1燃焼空間14aと第2燃焼空間14bとを連通する小間隙部5は、ピストン13の凸部頂面9と天井壁11との間に平面視でC字状(ピストン冠部13aに凸部6が形成されている箇所)に形成されている。
【0050】
上述のように、凸部6のC字形の円弧部の半径がピストン13の平均半径の半分よりもやや大きいので、小間隙部5は、シリンダボア12の径方向における、第1点火プラグ15からシリンダボア周縁との中間点よりもシリンダボア周縁寄りに形成されている。その最適位置は、エンジンの特性等によって異なるが、概ね第1点火プラグ15からシリンダボア周縁までの距離の60〜85%の範囲内にある。
【0051】
小間隙部5は、詳細には小間隙部5a、最小間隙部5bおよび小間隙部5cからなる。小間隙部5aは、ピストン13の吸気側凸部頂面9aと、これに対向する天井壁11との間の間隙である。最小間隙部5bは、ピストン13の排気側凸部頂面9bと、これに対向する天井壁11との間の間隙である。上述のように排気側凸部頂面9bが吸気側凸部頂面9aより高い位置にあるので、最小間隙部5bは小間隙部5aより狭い。また最小間隙部5bは下記の小間隙部5cよりも狭く、小間隙部5のなかで最小の間隙となっている。
【0052】
小間隙部5cは、ピストン13の凸部平坦頂面9cと、これに対向する天井壁11との間の間隙である。小間隙部5cは、天井壁11が低い箇所ほど狭く、天井壁11が高くなるほど、つまり稜線部11c(図3参照)に近づくほど広くなる。
【0053】
次に、当実施形態の燃焼室構造を有する火花点火式エンジンの動作について、特に主としてノッキングが問題となる低速高負荷領域での動作と、主としてデトネーションと呼ばれる異常燃焼が問題となる高速高負荷領域での動作について説明する。
【0054】
まず低速高負荷領域での動作について説明する。
【0055】
吸気行程において吸気バルブ19が開くとともに、ピストン13が降下する。それに伴って吸気ポート21から燃焼室14内に混合気が負圧吸引される。その際、吸気ポート21がタンブル生成ポートなので、図5に示すように強いタンブル30が生成され、筒内混合気の流動性が高められる。その吸気抵抗は、スワール(横渦)を生成させる場合に比べて小さい。
【0056】
続く圧縮行程において吸気バルブ19が閉じるとともに、ピストン13が上昇する。それに伴って、燃焼室14内の混合気が圧縮され、温度と圧力が上昇する。圧縮行程の終盤、つまりピストン13が図2に示す上死点付近まで上昇したとき、第1点火プラグ15および第2点火プラグ15aの電極から火花が飛ばされる。その各火花によって点火プラグ15および第2点火プラグ15aの各電極付近の混合気が着火し、火炎核が形成される。
【0057】
続く膨張行程では、各火炎核の火炎面が略球状に拡がりながら燃焼が進行する(この燃焼形態については後に詳述する)。燃焼によって急速に高められた筒内圧力によってピストン13が押し下げられる。ピストン13を押し下げる力が図外のコンロッド等を介して図外の出力軸(クランクシャフト)の回転駆動力となる。
【0058】
続く排気行程では排気バルブ20が開くとともにピストン13が上昇に転じる。ピストン13の上昇によって既燃ガス(排ガス)が排気ポート22から押し出され、排出される。
【0059】
以上の吸気、圧縮、膨張および排気からなる4行程を繰り返すことによってエンジンが連続運転される(4サイクルエンジン)。また多気筒エンジンの場合は、気筒ごとに上記の各行程をずらした設定とすることにより、より滑らかで振動や騒音の少ないエンジンとすることができる。
【0060】
次に、上記膨張行程で行われる燃焼について詳細に説明する。この燃焼が従来の一般的な燃焼と異なる特徴は、タンブルを伴う多点(二点)点火であることと、後期重心型燃焼(詳細は後述する)であることである。多点点火によって主燃焼期間が短縮される。そのうえで、後期重心型燃焼によって、前期主燃焼期間での燃焼速度が比較的低く、後期主燃焼期間での燃焼速度が比較的高くなる。これら多点点火と後期重心型燃焼によって、以下説明するように耐ノッキング性能が格段に高められる。
【0061】
まずタンブルを伴う多点点火について説明する。図6(a)は、燃焼時の燃焼室14を、ピストン13側から見た平面図(但し、後期重心型燃焼の影響を受けない場合)である。火炎面が拡がる様子を火炎伝播等時線70aで示している。火炎伝播等時線70aの間隔が粗である箇所は火炎伝播速度が高く、密である箇所は火炎伝播速度が低いことを示す。第1点火プラグ15の周囲の火炎伝播等時線70aに着目して明らかなように、吸気側(図の右側)への火炎伝播速度よりも排気側(図の左側)への火炎伝播速度の方が高い。これは、高温の排気側では、より燃焼反応が促進されるからである。
【0062】
当実施形態では第2点火プラグ15aでも点火を行っているので、火炎伝播等時線70aに示すように、第2点火プラグ15aの電極付近を第2の起点として火炎が広がっている。このように、第1点火プラグ15からの火炎面の到達が遅れる吸気側からも燃焼させることにより、第1点火プラグ15のみを点火させた場合に比べ、主燃焼期間を効果的に短縮することができる。
【0063】
しかも、燃焼室14内には強いタンブル30が生成されているので、筒内流動性が高められ、一層の主燃焼期間の短縮が図られる。また天井壁11付近のタンブル30は、図6(a)の矢印で示すように吸気側から排気側へ向かっている。従って、第2点火プラグ15aから排気側への火炎伝播をより促進させることができる。
【0064】
ノッキングは、火炎面が到達する前に、未到達の部分の未燃燃料(エンドガス)が自着火を起こすことが原因である。当実施形態のようなタンブルを伴う多点点火を行うと、主燃焼期間が短縮される、つまり燃焼速度が高められるので、エンドガスが自着火を起こす前に燃焼室14全体に火炎面を到達させ易くなる。従ってノッキングが効果的に抑制される。
【0065】
次に、後期重心型燃焼について説明する。後期重心型燃焼は、端的に表現すれば前期主燃焼期間での燃焼速度が比較的低く、後期主燃焼期間での燃焼速度が比較的高い燃焼形態である。後期重心型燃焼は、当実施形態の燃焼室構造と密接な関係があり、この燃焼室構造によってなし得る燃焼形態である。
【0066】
後期重心型燃焼について、燃焼室構造と関連付けながら説明する。火炎面は未燃ガスを押し出すようにして拡がって行くが、第1燃焼空間14aの外側には小間隙部5が設けられている。従って、火炎面に押し出された未燃ガスが小間隙部5を通過する際、一種の絞り作用を受ける。その影響を受けて火炎伝播が抑制される。このため第1燃焼空間14aにおける燃焼速度が比較的低く抑えられる。
【0067】
そして火炎面が小間隙部5を経て第2燃焼空間14bに達すると、もはや小間隙部5による絞り作用の影響を受けないので、速やかに火炎伝播が進行する。つまり第2燃焼空間14bにおける燃焼速度が比較的高くなる。
【0068】
こうして、主として第1燃焼空間14aでの前期主燃焼期間には比較的低速の燃焼が行われ、主として第2燃焼空間14bでの後期主燃焼期間には比較的高速の燃焼が行われるという、後期重心型燃焼が行われることになる。
【0069】
ところで、上述したように、排気側への火炎伝播速度は吸気側への火炎伝播速度よりも高い。当実施形態では、最小間隙部5bによって、排気側へのガス流を他よりも強く絞っているので、高くなりがちな排気側への火炎伝播速度が比較的強く抑制される。一方、火炎伝播速度が低くなりがちな吸気側においては、比較的広い小間隙部5aをもって絞り作用を抑制している。こうすることにより、全体的にはより均等な火炎伝播速度を得ることができ、円滑な燃焼を図ることができる。また火炎面の第1燃焼空間14aから第2燃焼空間14bへの移行を、より均等に行わせることができる。
【0070】
図7は、当実施形態の後期重心型燃焼における燃焼特性を示す特性図である。横軸にクランク角(°CA)、縦軸に燃焼質量割合(%)を示す。燃焼質量割合とは、燃焼した燃料の質量全体を100%とし(無次元化)、当該クランク角時点までに燃焼した燃料の積算値を示したものである。
【0071】
図示のように、燃焼質量割合が10%未満の領域を初期燃焼領域81といい、その期間を初期燃焼期間θという。また燃焼質量割合が10%以上90%未満の領域を主燃焼領域80という。主燃焼領域80は50%を境にして前期と後期に分けられ、燃焼質量割合が10%以上50%未満の領域を前期主燃焼領域80aといい、50%以上90%未満の領域を後期主燃焼領域80bという。そして前期主燃焼領域80aの期間を前期主燃焼期間θといい、後期主燃焼領域80bの期間を後期主燃焼期間θという。
【0072】
図7には、当実施形態の燃焼特性T1を示すとともに、比較のために従来の一般的な燃焼特性T1’を併記している。なお図7は、エンジン回転速度が1500rpmで、高負荷運転状態での燃焼特性を示す。
【0073】
当実施形態の燃焼特性T1では、初期燃焼期間θは点火時期〜約3°CA、前期主燃焼期間θは約3〜約13°CA、後期主燃焼期間θは約13〜約20°CAとなっている。一方、従来の燃焼特性T1’では、初期燃焼期間θ’は点火時期〜約4°CA、前期主燃焼期間θ’は約4〜約13°CA、後期主燃焼期間θ’は約13〜約21°CAとなっている。
【0074】
つまり当実施形態の燃焼特性T1は、従来の燃焼特性T1’に比べ、初期燃焼期間θが約1°CA短縮され、前期主燃焼期間θが約1°CA延ばされ、後期主燃焼期間θが約1°CA短縮されている。これは、主として第1燃焼空間14aで燃焼が行われる前期主燃焼期間θでは燃焼速度が相対的に低く、主として第2燃焼空間14bで燃焼が行われる後期主燃焼期間θでは燃焼速度が相対的に高くなっていることを示している。つまり後期重心型燃焼となっていることがわかる。
【0075】
また初期燃焼期間θ及び前期主燃焼期間θでの燃焼は、ともに主として第1燃焼空間14aでの燃焼であるが、初期燃焼期間θはむしろ短縮されている。これは、小間隙部5が、第1点火プラグ15に近すぎない適所(詳しくは第1点火プラグ15からシリンダボア周縁までの距離の60〜85%の範囲内の適所)に設けられていることによって、小間隙部5による絞り作用の影響が初期燃焼期間θにまでは及んでいないことを示している。
【0076】
図8は、図7に示す燃焼特性を別の視点から表した特性図である。横軸にクランク角(°CA)、縦軸に熱発生率(%)を示す。ここで熱発生率とは、図7の熱発生割合の微分値であり、燃焼による全体の熱発生量を100%とし(無次元化)、当該クランク角時点における熱発生量の割合を示したものである。
【0077】
図8には、当実施形態の燃焼特性T2を示すとともに、比較のために従来の一般的な燃焼特性T2’を併記している。特性T2’と比較して、特性T2の顕著な特徴として、前期主燃焼期間θにおいて傾きの緩やかな棚部T2aを有している点、および後期主燃焼期間θにおいて最大熱発生率の極大値が大きくなっている点である。この二点が後期重心型燃焼を特徴付けるものとなっている。
【0078】
棚部T2aについて説明すると、これは、初期燃焼期間θから前期主燃焼期間θに移行後、熱発生率の増大率が一時的に低下していることを示している。これは小間隙部5による絞り効果によって、前期主燃焼期間θでの燃焼速度が比較的低くなったからであると考えられる。
【0079】
その後、後期主燃焼期間θにおいて最大熱発生率の極大値が大きくなっている点については、比較的多く残留した未燃燃料が、充分な容積が確保された第2燃焼空間14bで高速で燃焼したためであると考えられる。
【0080】
以上説明したように、後期重心型燃焼を行わせると、前期主燃焼期間では低速で燃焼させることによって筒内圧力や温度の上昇が抑制され、未燃燃料の過早着火が効果的に抑制されるので、高い耐ノッキング性能を得ることができる。そして後期主燃焼期間では未燃燃料を高速燃焼させて速やかに燃焼を完了させることにより、燃え残りを核とする自着火を抑制することができ、やはり耐ノッキング性能を高めることができる。こうして燃焼全体としての主燃焼期間を殆ど延ばすことなく、効果的にノッキングを抑制することができる。
【0081】
次に、主としてデトネーションと呼ばれる異常燃焼が問題となる高速高負荷領域での動作について説明する。デトネーションとは、燃焼室14内の混合気が自己着火してしまい、異常に高い火炎伝播速度で燃焼する異常燃焼である。デトネーションが起こると、騒音レベルが悪化したりエンジンの耐久性に悪影響を及ぼしたりする。デトネーションが懸念される高速高負荷領域で燃焼期間を短縮し過ぎると、デトネーションを招き易くなるので好ましくない。そこで当実施形態では、高速高負荷領域では第2点火プラグ15aの点火を停止させている(実質的に点火停止と同じ結果となる程度に点火を遅らせるようにしても良い)。図6(b)は、高速高負荷領域における図6(a)に対応する図である。火炎伝播等時線70bは、第1点火プラグ15のみから拡がっており、第2点火プラグ15aを点火させる場合に比べて全体の燃焼速度が低く抑えられる。すなわちデトネーションが抑制される。
【0082】
以上のように、当実施形態の燃焼室構造によれば、簡単な構造で後期重心型燃焼を容易に行わせることができる。そして後期重心型燃焼によって耐ノッキング性能を向上させ、実用上有効に圧縮比を高めることができる。またそれを利用して燃費の向上を図ることができる。さらに、第2点火プラグ15aを併用することにより、全体の燃焼期間をより短縮して一層耐ノッキング性能を高めることができる。その場合、必要に応じて第2点火プラグ15aでの点火を停止したり遅らせたりすることにより、燃焼期間を短縮することによる弊害(例えばデトネーションが起こりやすくなる等)が懸念される場合に、その懸念を払拭することができる。
【0083】
次に、本発明に係る第2実施形態について、図9および図10を参照して説明する。
【0084】
図9は、第2実施形態の燃焼室構造の、図2に対応する縦断面図である。図10はピストン13の斜視図である。なお、これらの図において、第1実施形態と同一または同様の機能を有する構成要素には同一符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0085】
当実施形態は、第1実施形態に対し、ピストン冠部13aの凸部6の吸気側に、吸気側凸部6aを設けた点が異なっている。吸気側凸部6aは、第2点火プラグ15a付近に相当するピストン冠部13aを、周囲の凸部6を越えない範囲で(当実施形態では同一高さにまで)突出させたものである。
【0086】
図9に示すように、吸気側凸部6aによって、第1燃焼空間14a内に、ピストン頂面4と吸気側天井壁11aとの間隙がやや狭められた吸気側間隙部16が形成される。吸気側間隙部16の弱い絞り作用によって、第1点火プラグ15から吸気側に向かう火炎伝播速度および第2点火プラグ15aから排気側に向かう火炎伝播速度の双方が若干低下する。従って、エンジンの性状や目標特性等を勘案し、第1実施形態よりも全体的に主燃焼期間を長くしたいという要求や、前期主燃焼期間をさらに長くしたいという要求がある場合に当実施形態を採用すれば効果的である。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲内で種々の変形を行っても良い。
【0088】
例えば上記各実施形態は、本発明を4サイクルエンジンに適用した場合を示しているが、それ以外の、例えば2サイクルエンジンに適用しても良い。
【0089】
燃焼室14の形状はペントルーフ型が望ましいが、それ以外、例えば半球形型(ドーム型)、多球形型等であっても良い。
【0090】
上記各実施形態では排気ポート22を2箇所設けているが、これを1箇所としても良い。排気ポート数を削減することにより、構造を簡潔にすることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態に係る火花点火式エンジンの燃焼室構造を示す縦断面図である。
【図2】図1の主要部の拡大図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1に示すピストンの斜視図である。
【図5】燃焼室内でのタンブル生成状態を示す斜視図である。
【図6】燃焼時の燃焼室内を、ピストン側から見た平面図であり、(a)は低速高負荷領域の場合、(b)は高速高負荷領域の場合を示す。
【図7】第1実施形態の後期重心型燃焼における燃焼特性を示す特性図である。
【図8】図7に示す燃焼特性を微分した特性図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る燃焼室構造の、図2に相当する縦断面図である。
【図10】図9に示すピストンの斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
4 ピストン頂面
5 小間隙部
6 凸部
7 中央側凹部(凹部)
8 周縁側凹部(凹部)
9 凸部頂面
10 シリンダヘッド
11 天井壁(シリンダヘッド下面)
11a 吸気側天井壁
11b 排気側天井壁
12 シリンダボア
13 ピストン
13a ピストン冠部
14 燃焼室
14a 第1燃焼空間
14b 第2燃焼空間
15 第1点火プラグ
15a 第2点火プラグ
16 吸気側間隙部
21 吸気ポート(タンブル生成ポート)
22 排気ポート
30 タンブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド下面とピストン頂面との間に形成され、上記シリンダヘッド下面を天井壁とする燃焼室と、
上記天井壁の、シリンダボア軸線を挟んだ一方側に開口する2個の吸気ポートと、
同他方側に開口する少なくとも1個の排気ポートと、
上記天井壁の、シリンダボア径方向中央部から上記燃焼室内に先端が臨設された第1点火プラグとを含む火花点火式エンジンの燃焼室構造であって、
上記2個の吸気ポート開口部の間であってシリンダボア周縁部における上記天井壁から上記燃焼室内に先端が臨む第2点火プラグが設けられ、
ピストンが上死点にある状態で、上記燃焼室内空間の主要部が、上記第1点火プラグ周辺から上記第2点火プラグ周辺にかけて連続する第1燃焼空間と、シリンダボア周縁部の第2燃焼空間とによって形成され、
上記第1点火プラグ周辺から排気側のシリンダボア周縁にかけての途中位置に、上記第1燃焼空間と上記第2燃焼空間とを連通するとともに、上記天井壁と上記ピストン頂面との間隙が周囲よりも狭められた小間隙部が形成されていることを特徴とする火花点火式エンジンの燃焼室構造。
【請求項2】
上記2個の吸気ポートは、タンブル生成ポートであることを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造。
【請求項3】
上記小間隙部は、上記シリンダボア径方向における、上記第1点火プラグから上記シリンダボア周縁との中間点よりも上記シリンダボア周縁寄りに形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造。
【請求項4】
上記ピストンの冠部には、上記天井壁に向けて突出した凸部と、該凸部に対して相対的に没入した凹部とが形成されており、
上記小間隙部は上記凸部の頂面と上記天井壁との間に形成され、
上記第1燃焼空間および上記第2燃焼空間は上記凹部と上記天井壁との間に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造。
【請求項5】
上記燃焼室は、吸気側天井壁と排気側天井壁とが屋根形をなすペントルーフ型であり、
上記第2燃焼空間が、上記天井壁のペントルーフ形状および上記シリンダボア周縁に沿って略環状に形成され、
上記小間隙部は、排気側よりも吸気側の方が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の火花点火式エンジンの燃焼室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−85220(P2007−85220A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273525(P2005−273525)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】