説明

災害時緊急通報システム

【課題】低コストで信頼性の高い災害時緊急通報システムを提供する。
【解決手段】AMラジオ放送波を用いて災害発生情報を含むDTMF信号を発信する放送基地局2と、放送基地局2からAMラジオ放送波を用いて発信されたDTMF信号を受信する受信機7,8と、を備え、受信機7,8は、DTMF信号を受信するとDTMF信号の内容に応じてアラームを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AMラジオ放送波を利用した災害時緊急通報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震や津波などのような災害情報は、省庁や地方自治体が運用している災害システムから受信することができるため、災害発生時にその災害情報を電子メールで公衆に配信するシステムが提供されている(例えば、特許文献1,2など参照)。電子メールによれば、多数の人間に対して低コストで情報を配信することができるため、災害の発生を通報するシステムを容易に導入することができる。
【特許文献1】特開2003−132473号公報
【特許文献2】特開2006−31470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、実際には、災害発生時に電子メールで災害情報を発信しようとすると、多数の人間に対して同時送信するために、メールサーバにおいて輻輳が生じてメールの到達に遅延が生じる場合がある。また、電子メールによる場合には、予め情報発信者にメールアドレスを登録しておく必要があるため、災害情報の通報対象者も限られてしまうこととなる。よって、災害発生時のように出来るだけ多くの人間に即時かつ確実に情報を伝達する必要がある場合には、電子メールのような通信インフラを用いたシステムでは不十分であるといえる。
【0004】
そこで本発明は、低コストで信頼性の高い災害時緊急通報システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る災害時緊急通報システムは、AMラジオ放送波を用いて災害発生情報を含むDTMF信号を発信する放送基地局と、前記放送基地局から前記AMラジオ放送波を用いて発信された前記DTMF信号を受信する放送受信機と、を備え、前記受信機は、前記DTMF信号を受信すると前記DTMF信号の内容に応じてアラームを発生することを特徴とする。
【0006】
前記構成によれば、通信インフラにAMラジオ放送波を用いているので、輻輳が生じることがなく、多数の受信機に対して即時かつ確実に災害情報を送信することができる。さらに、AMラジオ放送波により通信する場合には、電子メールのようなアドレス登録作業も必要がないため、災害情報の通報対象者を容易に拡大することができる。また、AMラジオ放送波は、放送基地局からの到達距離が長いという特徴を有するため、広い地域にわたって災害発生情報を通報するのに適するという利点がある。また、AMラジオ放送は既存のインフラを利用することができるため、導入コストも抑制することも可能となる。
【0007】
前記DTMF信号は、発生した災害の種類を示す災害種類コードを含んでいてもよい。
【0008】
前記構成によれば、受信機は、受信したDTMF信号に含まれる災害種類コードに応じた適切なアラームを発生させることができる。
【0009】
前記DTMF信号は、通報を要する地域を示す地域コードを含んでいてもよい。
【0010】
前記構成によれば、受信機は、受信したDTMF信号に含まれる地域コードに応じてアラームを発生させることができる。
【0011】
前記受信機は、それ自身が位置する地域を示す地域情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記地域情報を前記DTMF信号に含まれた前記地域コードに照合させる照合部と、前記照合部で前記地域コードの示す地域が前記地域情報の示す地域と一致する場合にアラームを発生させるアラーム発生部とを有していてもよい。
【0012】
前記構成によれば、受信機は、自己の位置する地域に関連する災害情報だけに反応してアラームを発生させるので、無駄なアラームの発生が無くなり、ユーザの無用な混乱を防ぐことができる。
【0013】
前記受信機は、GPSを利用して自己位置を検出可能なGPS部を有し、前記記憶部は、前記GPS部で検出された自己位置が属する地域を記憶するよう構成されていてもよい。
【0014】
前記構成によれば、受信機を持つユーザが移動する場合であっても、災害発生時における受信機の所在地域に対応する適切なアラームを発生させることができる。
【0015】
前記受信機は、前記DTMF信号を受信すると、そのDTMF信号の内容に応じて外部の装置に災害対策命令を送信してもよい。
【0016】
前記構成によれば、DTMF信号を受信した受信機は、災害対策命令を自動的に外部の装置(例えば、基幹サーバ、工場内装置、陸閘駆動装置、ガス調理器など)に送信するので、被害拡大を即時に防止することができる。
【0017】
本発明の災害時緊急通報用の受信機は、AMラジオ放送波を受信可能な災害時緊急通報用の受信機であって、AMラジオ放送波を用いて発信された災害発生情報を含むDTMF信号を受信すると前記DTMF信号の内容に応じてアラームを発生することを特徴とする。
【0018】
前記構成によれば、前述したように、低コストでありながら即時かつ確実に災害情報を受信し、出来るだけ多くのユーザに対して的確に災害発生を知らせることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、低コストで信頼性の高い災害時緊急通報システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る災害時緊急通報システム1の全体図である。図1に示すように、災害時緊急通報システム1は、AMラジオ放送を行う放送基地局2を備えている。放送基地局2は、通常のラジオ放送のための音声情報を生成する演奏所3と、その演奏所3で生成された音声情報を振幅変調方式で変調して中波(AMラジオ放送波)により不特定多数の公衆に向けて送信する送信所4とを有している。さらに、放送基地局2は、演奏所3で生成された音声情報に対して、省庁5などから受信した災害発生情報をDTMF信号として重畳させる通報装置6を有している。
【0022】
また、災害時緊急通報システム1は、放送基地局2から中波を用いて発信されたDTMF信号を受信するための携帯型受信機7及び据置型受信機8を備えている。なお、携帯型受信機7は、ICチップ化された小型かつ薄型で軽量のデバイス(例えば、カード型デバイス)である。受信機7,8は、災害時緊急通報用の専用端末機器であるが、他の機器(例えば、携帯電話やラジオ端末など)に内蔵したものでもよい。携帯型受信機7は、一般市民の他、消防署や役所などの職員、病院や看護施設や学校等の職員などにより所持されている。据置型受信機8は、住居、防災システムを有する機関(例えば、消防署や役所)、船舶、港湾施設などに設置されている。
【0023】
図2は図1に示す災害時緊急通報システム1に用いられるDTMF信号のフォーマットを説明する図面である。図2に示すように、放送基地局2から送信されるDTMF信号は、同期コード(3桁)、地域コード(4桁)、災害種類コード(2桁)、予備コード(2桁)、チェックサム(2桁)の各領域を有している。同期コードは、3桁全てが「#」で構成されており、DTMF信号を受信開始したことを受信機7,8が認識するために設定される。地域コードは、予め区分けされた複数の地域のうち緊急通報を要する地域に対応するコードが設定される。例えば、津波が発生した場合には、沿岸部の地域に対応するコードが地域コードに設定される。災害種類コードは、省庁5などから受信した災害発生情報が示す災害の種類(例えば、地震、津波、洪水など)に対応するコードが設定される。予備コードは、将来的に通報地域の分割や災害種類の細分化などのような送信情報の拡張に対応するための予備のコードである。チェックサムは、地域コード、災害種類コード、予備コードの総和の下位2桁で構成されており、誤り検出に用いられるコードである。
【0024】
図3は図2に示すDTMF信号に対するスクランブル処理を説明する図面である。図3に示すように、放送基地局2からDTMF信号が送信される際には、情報セキュリティのためにDTMF信号にスクランブル処理が施される。具体的には、地域コード、災害種類コード、予備コードの計8桁に対して、時刻情報(YY,MM,DD,hh)の8文字を0〜9までの数字の1文字単位で加算する。例えば、放送基地局2における送信時刻が2008年03月01日15時である場合には、「08030115」の8文字をDTMF信号の1文字ごとに加算する。受信機7,8は、このスクランブル処理された信号から内部時計(図示せず)の時刻情報(YY,MM,DD,hh)の8文字を1文字単位で減算することで復元を行う。これにより、過去に生成された緊急通報用のDTMF信号を悪用して第三者が別の時刻に送信した信号を、受信機7,8側で排除することができる。なお、受信機7,8に設定された内部時計(図示せず)の時刻に誤差が発生すること考慮し、放送基地局2は時刻情報をのせたDTMF信号を定期的に送信し、放送基地局2の時計(図示せず)と受信機7,8の内部時計(図示せず)とが同期した状態を維持するように時計合わせを実施する。
【0025】
図4は図1に示す災害時緊急通報システム1に用いられる携帯型受信機7の構成を説明するブロック図である。図4に示すように、携帯型受信機7は、受信アンテナ11、受信部12、GPS部13、記憶部14、照合部15、災害情報判定部16、アラーム発生部17、電源18などを備えている。受信部12は、受信アンテナ11で受信した中波に含まれるDTMF信号を復調する。GPS部13は、GPS(全地球測位システム)を利用して自己位置(受信機7の位置)を検出する。記憶部14は、GPS部13で検出された最新の自己位置が属する地域や、災害種類コードと災害種類との関係などを記憶している。
【0026】
照合部15は、受信したDTMF信号に含まれる地域コードに、記憶部14に記憶された地域情報を照合させる。災害情報判定部16は、受信したDTMF信号に含まれる災害種類コードから発生した災害の種類を判定する。アラーム発生部17は、照合部15において、DTMF信号の地域コードの示す地域が記憶部14の地域情報の示す地域と一致した場合に、災害情報判定部16で判定された種類の災害に関するアラーム(警告音、警告ディスプレイ表示、警告ランプなど)を発生する。また、携帯型受信機7は、通常は待機電流を流したスタンバイ状態で待ち受けしており、DTMF信号を受信するとアラーム発生機能をオンにしてアラームを発生する。即ち、この災害時緊急通報システム1は、プッシュ型の情報配信システムである。
【0027】
図5は図1に示す災害時緊急通報システム1に用いられる据置型受信機8の構成を説明するブロック図である。図5に示すように、据置型受信機8は、受信アンテナ11、受信部12、記憶部24、照合部15、災害情報判定部16、アラーム発生部27、対策命令送信部28、送信アンテナ29、電源18などを備えている。なお、受信アンテナ11、受信部12、照合部15、災害情報判定部16及び電源18については、携帯型受信機7のものと同機能であるため詳細な説明は省略する。
【0028】
記憶部24は、受信機8の配置された位置の属する地域や、災害種類コードと災害種類との関係などを予め記憶している。アラーム発生部27は、照合部15において、DTMF信号の地域コードの示す地域が記憶部14の地域情報の示す地域と一致した場合に、災害情報判定部16で判定された種類の災害に関するアラーム(警告音、警告ディスプレイ表示、警告ランプなど)を発生し、かつ、災害情報判定部16で判定された災害種類に応じた災害対策命令を対策命令送信部28に送信する。対策命令送信部28は、災害種類に応じた対策命令信号を送信アンテナ29から外部の装置31〜34に無線で送信する。なお、対策命令送信部28は、災害種類に応じた対策命令信号を外部の装置31〜34に有線で送信してもよい。また、装置31〜34には、対策命令信号を受信する手段と、その受信信号に応じて自己の動作を制御する手段が設けられている。
【0029】
災害種類が地震である場合には、対策命令送信部28は地震対策命令信号を送信し、それを受信した基幹サーバ31や工場内装置32やガス調理器34などの二次被害が想定される装置は、動作を停止するなどの対策制御を自動的に行う。災害種類が津波である場合には、対策命令送信部28は津波対策命令信号を送信し、それを受信した陸閘駆動装置33は、陸閘を自動的に閉鎖する制御を行う。
【0030】
以上に説明した構成によれば、通信インフラにAMラジオ放送の中波を用いているので、輻輳が生じることがなく、多数の受信機7,8に対して即時かつ確実に災害情報を送信することができる。さらに、中波により通信する場合には、電子メールのようなアドレス登録作業も必要がないため、災害情報の通報対象者を容易に拡大することができる。また、中波は、放送基地局2からの到達距離が長いという特徴を有するため、広い地域にわたって災害発生情報を通報するのに適するという利点がある。また、中波は既存のAMラジオ放送局のインフラを利用することができるため、導入コストも抑制することも可能となる。
【0031】
また、受信機7,8は、自己の位置する地域に関連する災害情報だけに反応してアラームを発生させるので、無駄なアラームの発生が無くなり、ユーザの無用な混乱を防ぐことができる。さらに、携帯型受信機7は、GPSを利用して記憶部14に記憶される自己位置を逐次更新しているので、携帯型受信機7を所持するユーザが移動する場合であっても、災害発生時における携帯型受信機7の所在地域に対応する適切なアラームを発生させることができる。また、据置型受信機8は、DTMF信号を受信すると、そのDTMF信号の内容に応じて外部の装置(例えば、基幹サーバ31、工場内装置32、陸閘駆動装置33、ガス調理器34など)に自動的に災害対策命令を送信するので、被害拡大を即時に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る災害時緊急通報システムの全体図である。
【図2】図1に示す災害時緊急通報システムに用いられるDTMF信号のフォーマットを説明する図面である。
【図3】図2に示すDTMF信号に対するスクランブル処理を説明する図面である。
【図4】図1に示す災害時緊急通報システムに用いられる携帯型受信機の構成を説明するブロック図である。
【図5】図1に示す災害時緊急通報システムに用いられる据置型受信機の構成を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1 災害時緊急通報システム
2 放送基地局
7,8 受信機
13 GPS部
14.24 記憶部
15 照合部
17,27 アラーム発生部
18 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AMラジオ放送波を用いて災害発生情報を含むDTMF信号を発信する放送基地局と、
前記放送基地局から前記AMラジオ放送波を用いて発信された前記DTMF信号を受信する受信機と、を備え、
前記受信機は、前記DTMF信号を受信すると前記DTMF信号の内容に応じてアラームを発生することを特徴とする災害時緊急通報システム。
【請求項2】
前記DTMF信号は、発生した災害の種類を示す災害種類コードを含んでいる請求項1に記載の災害時緊急通報システム。
【請求項3】
前記DTMF信号は、通報を要する地域を示す地域コードを含んでいる請求項1に記載の災害時緊急通報システム。
【請求項4】
前記受信機は、それ自身が位置する地域を示す地域情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記地域情報を前記DTMF信号に含まれた前記地域コードに照合させる照合部と、前記照合部で前記地域コードの示す地域が前記地域情報の示す地域と一致する場合にアラームを発生させるアラーム発生部とを有している請求項3に記載の災害時緊急通報システム。
【請求項5】
前記受信機は、GPSを利用して自己位置を検出可能なGPS部を有し、
前記記憶部は、前記GPS部で検出された自己位置が属する地域を記憶するよう構成されている請求項4に記載の災害時緊急通報システム。
【請求項6】
前記受信機は、前記DTMF信号を受信すると、そのDTMF信号の内容に応じて外部の装置に対策命令信号を送信する請求項1乃至5のいずれかに記載の災害時緊急通報システム。
【請求項7】
AMラジオ放送波を受信可能な災害時緊急通報用の受信機であって、
AMラジオ放送波を用いて発信された災害発生情報を含むDTMF信号を受信すると前記DTMF信号の内容に応じてアラームを発生することを特徴とする災害時緊急通報用の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−33276(P2010−33276A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193886(P2008−193886)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(500384019)株式会社ラジオ関西 (2)
【出願人】(593014831)ヤノ電器株式会社 (1)
【Fターム(参考)】