説明

炉内壁用耐火物及び廃棄物処理装置

【課題】クロムを含有させることなく、廃棄物に由来する溶融スラグと接する耐火物の耐食性を向上させること。
【解決手段】本発明の炉内壁用耐火物は、廃棄物を燃焼させて生じる灰分を溶融スラグ化する炉の炉内壁用耐火物であって、ジルコニア質、ジルコン質、ムライト質、スピネル質のうち少なくとも一種を母材とし、チタン酸カリウムを1〜4重量%含んで構成される。これにより炉内壁42を流下する溶融スラグ57は、耐火物から溶出するカリウム化合物の作用により粘度が大きくなり、物質移動が抑制される。このため、炉内壁42は、溶融スラグ57による耐火物の侵食を抑制することができ、高い耐食性を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を燃焼して生じる灰分を溶融スラグとする炉の炉内壁用耐火物と、この炉を備えた廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭やオフィスなどから出される都市ごみなどの一般廃棄物、廃プラスチック、カーシュレッダー・ダスト、電子機器、化粧品などの産業廃棄物を処理する方法として、これらの廃棄物を熱分解反応器に導いて低酸素雰囲気で熱分解し、熱分解ガスと主として不揮発性成分からなる熱分解残渣とを生成し、この熱分解残渣から分離された熱分解カーボンを主体とする可燃物と熱分解ガスとを燃焼溶融炉に導いて燃焼処理することが行われている。
【0003】
ここで、燃焼溶融炉においては、燃焼灰(灰分)を燃焼熱により加熱して溶融スラグ化し、この溶融スラグを耐火物で覆われた炉内壁を伝わらせて流下させ、炉底部から排出して冷却固化させるようにしている。
【0004】
ところで、耐火物は、鉄鋼、非鉄、セメント、ガラス、窯業など高温処理を必要とする工業の窯炉やボイラ、廃棄物焼却炉などに広く使用されている。特に、溶融スラグと接触する環境において耐火材を選定する場合は、酸素分圧、アルカリ分圧などの気相側環境とともに、溶融スラグの関与による過酷な高温腐食も考慮する必要がある。
【0005】
一般に、酸素分圧の高い環境で使用される耐火物においては、酸化物系耐火材が使用されており、耐食性を向上させるためクロム化合物が含まれている。しかし、クロム化合物を含む耐火物を用いると、材料費が高く付くという問題がある。
【0006】
これに対し、空気で廃棄物を溶融させる廃棄物溶融炉において、例えば、クロムを含まない、マグネシア−アルミナ複合系でMgAl(マグネシアスピネル)−アルミナ−マグネシアの混合耐火材を用いることが提案されている(特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−193681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、廃棄物に由来する灰分を溶融させた溶融スラグは、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、カルシア(CaO)を基本とする多成分系であり、塩基度が比較的低く、炉内には気相中に塩素やイオウなどの酸化性ガスが共存する。このような環境においては、耐火物中のアルミナやマグネシアなどの酸化性成分は溶解度が高く、かつ、溶融スラグを溶融状態で流出させるために炉内が高温に曝されることにより、耐火材成分がスラグ中に溶出し、耐火物の損耗が進行するおそれがある。
【0009】
このため、溶融スラグに対する耐火物の耐食性を高めるには、溶融スラグとの反応機構を踏まえた材料設計が不可欠となる。すなわち、耐火物中に溶融スラグが浸透する現象や、耐火材成分が溶融スラグ中に移動する現象には、溶融スラグの粘性が重要な役割を果たし、これが耐火物と溶融スラグとの境界相の反応速度を支配することにより、耐火物のスポーリングや溶解にともなう損耗が継続して進行する。このような観点から、耐火物損耗を支配する溶融スラグの粘性を考慮し、耐火物の開発を行うことが肝要となる。
【0010】
本発明は、これまでの溶融スラグの粘性に関する学術的知見に基づき、クロムを含有させることなく、廃棄物に由来する溶融スラグと接する耐火物の耐食性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、廃棄物の燃焼処理において炉内で生成する溶融スラグの粘性に及ぼす影響について種々検討した結果に基づいてなされたものである。以下、本発明の原理について説明する。
【0012】
廃棄物に由来する溶融スラグは、SiO、Al、CaOを主成分とし、RO(Rはアルカリ元素)、R´O(R´はアルカリ土類元素)及び酸化鉄(FtO)を含む多成分系からなっている。この溶融スラグの主成分は、ある一定の組成(CaO/SiO=0.3〜1.5、Al=20重量%前後)を有している。このような狭い組成範囲の溶融スラグにおいて粘度を支配する主たる流動ユニットは、アルミノシリケートイオンであり、その重合度によって溶融スラグの粘度が大きく変化する。
【0013】
最近のスラグ物性とその構造解析に係る研究報告(斉藤敬高,他2名,「CaO−SiO−Al−(RO、RO)系スラグの粘度」,鉄鋼協会,第148回秋季講演大会、Vol.17(2004)−542)によれば、SiO、Al、CaOを主成分とする系に対し、アルカリ元素の酸化物として、LiO、NaO、KOをそれぞれ所定量添加した系において、KOを添加した系に特異な粘度の増加を示すことが明らかにされている。この現象は、LiO、NaOにおいては、アルミノシリケートイオンを分断するように挙動するのに対し、KOは、両性酸化物であるスラグ中のAlがアルミノシリケートイオンの重合度を増やすように挙動することによる。
【0014】
一方、耐火物の母材については、本分野の耐火物は一般にアルミナ系の酸化剤が広く使用されているが(例えば、特許文献1)、これは、アルミナが比較的安価で、化学的に安定していることによる。しかし、フリーのアルミナはスラグ中への溶出度が高いため、必ずしも好適な母材とはならない。
【0015】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するため、廃棄物を燃焼させて生じる灰分を溶融スラグ化する炉の炉内壁用耐火物であって、この耐火物は、ジルコニア質、ジルコン質、ムライト質、スピネル質のうち少なくとも一種を母材とし、チタン酸カリウムを1〜4重量%含むことを特徴としている。
【0016】
このように、廃棄物の溶融スラグと接する耐火物において、カリウム化合物としてチタン酸カリウムを含ませることにより、溶融スラグと接する面から耐火材成分が溶出し、溶融スラグ中のカリウム酸化物の濃度を増加させることができる。そして、溶融スラグ中のカリウム酸化物の濃度が増加することにより、アルミノシリケートイオンの重合度が増加し、それに伴い溶融スラグの粘度をより大きくすることができる。このため、耐火物の開気孔への溶融スラグの浸透が抑制されるとともに、耐火物成分の拡散する濃度境界層の厚さが増加し、結果として、耐火物の損耗を抑制することができる。
【0017】
また、耐火物の母材は、ジルコニア質、ジルコン質、ムライト質、スピネル質のいずれも構造的にフリーのアルミナを含まないため、スラグ中の局所的なAl濃度の増加を抑制し、アルミノシリケートイオンを重合しやすくすることができる。特に、ジルコニア質の耐火物は、高融点で、熱伝導性が低いことから、溶融スラグに対する安定性が高い。この耐火物の母材には、電融品や焼結品などの市販の原料を用いることができる。
【0018】
このように本発明では、所定の母材中にチタン酸カリウムを含有させることにより、耐火物の溶融スラグに対する耐食性を一層高めることができる。ここで、チタン酸カリウムの添加率を1〜4重量%の範囲としているのは、1重量%未満であると、アルミノシリケートイオンの重合率増加に伴う耐食性向上の効果を得ることができず、また、4重量%を超えると、耐火物中のチタン酸カリウムの凝集が大きくなるため、例えば、母材中のジルコニア粒子の結合が弱くなり、耐火物の耐久性が低下するおそれがあるためである。
【0019】
本発明の耐火物は、クロム化合物を添加しなくても高い耐食性を示すことができるため、腐食性環境の炉内壁用として高い耐久性を備えることができるとともに、材料費を低く抑えることができる。
【0020】
また、本発明の廃棄物処理装置は、廃棄物を熱分解する熱分解反応器と、この熱分解反応器から排出される熱分解ガス及び熱分解残渣に含まれる可燃物を燃焼して、熱分解ガス及び熱分解残渣に含まれる不燃物を溶融スラグ化する燃焼溶融炉を備え、燃焼溶融炉の炉内壁が上述の炉内壁用耐火物で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クロムを含有させることなく、廃棄物に由来する溶融スラグと接する耐火物の耐食性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の炉内壁用耐火物の実施の形態について説明する。
【0023】
表1は、本発明にかかる炉内壁用耐火物の構成成分の実施例を示すものである。本実施例の耐火物の焼結体は、例えば、母材のジルコニア質となる市販の電融ジルコニア(例えば、福島製鋼製の「ジルボン」)について3種類の粒度(粗粒、中粒、微粒)を混合して粒度調整されたものが用いられる。そして、この粉末に添加剤及び焼結助剤を添加して混合したものを一軸プレスにより加圧成形し、大気雰囲気中、1600〜1700℃の温度で10〜40時間加熱することにより所定の形状の焼結体が得られる。
【0024】
ここで、電融ジルコニアにおいて、粗粒とは粒径1mm以上3mm未満の粒子をいい、中粒とは粒径150μm以上1mm未満の粒子をいい、微粒とは粒径150μm未満の粒子をいう。また、焼結助剤には、乳酸チタニウム(TiC10)が用いられ、添加剤には、チタン酸カリウム(KTi)が用いられる。なお、チタン酸カリウムに代えて、熱分解してチタン酸カリウムになるシュウ酸チタン(IV)カリウム・2水和物を用いてもよい。
【0025】
【表1】

試験用試料は、上記のようにして得られた焼結体の相状態をX線解析により確認した後、φ10mmの丸棒状に切り出して作製し、回転侵食装置により実機から採取した溶融スラグに浸漬させて、回転侵食試験を実施した。
【0026】
図1に回転侵食装置の模式図を示す。回転侵食装置は、容器1内に溶融スラグを満たすアルミナ製ルツボ3が収納されており、ルツボ3の内部には、アルミナ製の回転軸5に支持された試験用試料7が溶融スラグ11に浸漬するように配置されている。試験用試料7は、回転軸5に連結されたモータ9によって回転するようになっている。ルツボ3の周囲には溶融スラグ11を加熱する加熱ヒータ(図示せず)が配置されている。容器内には、混合ガス(窒素95%、酸素5%)がボンベ13から供給され、ほぼ大気圧に調整されている。
【0027】
表2に溶融スラグ11の組成を示す。試験用試料7を回転速度60rpmで回転させ、混合ガスを流し、1400℃で10hの回転侵食試験の後、試験用試料7を取り出して切断し、試験前後の外径の変化から腐食損耗量(mm)を求めた。その結果を表1に示す。
【0028】
【表2】

次に、カリウム化合物の溶出がスラグ粘度に及ぼす影響を確認するため、実機採取スラグ(スラグKという。)と、このスラグKに5重量%のカリウム化合物(ここでは、アルミン酸カリウムを用いた)を添加した系、及び、スラグKに5重量%の酸化クロムを添加した系の3種類について試験用のスラグを作製し、粘度測定装置を用いて高温溶融状態のスラグ粘度について測定し比較した。
【0029】
図2(a)に粘度測定装置の概略図を示す。粘度測定装置は、容器21内に試験用の溶融スラグを満たすPt−20Rh製のルツボ23が収納されており、ルツボ23の内部には、Pt−20Rh製のロッド25の一端に同一材料で形成された円板状の回転子27が溶融スラグ31に浸漬するように配置されている。ルツボ23の底部には回転軸29が連結されており、所定の回転速度でルツボ23が回転するようになっている。ルツボ23の周囲には溶融スラグ31を加熱する加熱ヒータ33が配置されている。ロッド25の他端側は、図2(b)に示す差動トランスを改良したトルク発生器35に接続されている。
【0030】
トランス発生器35は、ロッド25に連結されてロッド25の径方向に延在するコア37と、ロッド25の周囲を取り巻くように配置されるコイル39を備えて構成され、ルツボ23を回転させると、溶融スラグ31の粘性抵抗によって、ロッド25にトルクが生じ、コア37が回転することにより所定の電位差を発生するようになっている。
【0031】
このような粘度測定装置を用いて、先ず、ルツボ23を加熱して溶融スラグ31を1600℃まで昇温し、融体状態の安定化のため90min保持した。そして、温度を下げながら50℃間隔で各測定温度に約30min保持した後、3回測定を行った。次に再び温度を上げながら同様に測定を行った。このように昇温時と降温時に測定された値(電位差)の平均をその温度の測定値とした。この測定値から予め用意された検量線により見掛けの粘度を求め、各温度におけるルツボ23とロッド25の熱膨張の影響を補正して粘度とした。なお、繰り返し測定の誤差及び昇温時と降温時の測定値のばらつきは±3%程度であった。
【0032】
このようにして粘度を測定した結果、すべての系について、図3に示すような温度依存性が確認され、カリウム化合物を添加した系は、酸化クロムを添加した系と同等の粘度を示すことがわかった。この粘度の温度依存性は、スラグの性質上、スラグ融点に対し100℃程度高い温度(例えば、1200℃)まで図のように直線的な傾向を示すことから、実機の炉内温度付近の1300℃へ外挿することにより、炉内環境において、カリウム化合物を添加した系は、無添加のスラグKの値よりも大きな粘度を示すことがわかる。このようにカリウム化合物を添加したことによる粘度の増加は、カリウムがスラグ中のアルミノシリケートイオンの重合度を大きくしたことに起因するものと解釈される。つまり、カリウム化合物を添加した系では、粘度が増加することにより、物質移動が抑制され、耐食性が向上する。
【0033】
一方、表3に示すように、比較材として、カリウム化合物を含まない母材のみ(比較例1)、チタン酸カリウムを5重量%含むもの(比較例2)、チタン酸カリウムを7.5重量%含むもの(比較例3)の3種類について、表1の試験用試料と同様に、φ10mmの丸棒状に切り出して、回転侵食試験を実施した。その結果、表3に示すように、いずれの試料も腐食損耗量は5mm以上を示した。
【0034】
【表3】

【0035】
以上の結果から、母材をジルコニア質とする耐火物にチタン酸カリウムを2.5重量%添加した場合において、無添加及び5重量%,7.5重量%添加した系よりも優れた耐食性が認められた。すなわち、チタン酸カリウムは、所定量を超えて添加すると、母材中でチタン酸カリウムの凝集が大きくなるため、ジルコニア粒子の結合が弱くなり、耐火物の耐久性が低下する。したがって、チタン酸カリウムの添加率は4重量%が上限となる。一方、添加率が1重量%未満であると、アルミノシリケートイオンの重合率増加に伴う耐食性向上の効果を得ることができないため1重量%が下限となる。
【0036】
次に、本発明に係る燃焼溶融炉の炉内壁用耐火物の実施の形態について説明する。図4は、本発明を適用してなる燃焼溶融炉の一実施の形態を示す縦断面図である。
【0037】
本実施の形態の燃焼溶融炉41は、縦型の円筒状に形成され、その頂部にバーナ43、熱分解カーボン吹込部45、熱分解ガス吹込部47がそれぞれ配設されている。燃焼溶融炉41の底部には、略水平方向に延在する炉底部49が接続され、この炉底部49にはスラグ回収口51が設けられている。
【0038】
炉底部49には、燃焼溶融炉41の頂部付近の高さまで鉛直に立ち上げて形成される煙道53が接続されている。煙道53の内部には、空気加熱器55が配設されている。この空気加熱器55は、例えば、空気を通流させる単管よりなるセラミックス製の伝熱管からなり、例えば、複数の伝熱管が燃焼排ガスの通流方向に直交させて配設されている。伝熱管同士は炉壁外で連通され、炉壁外から導入された空気が各伝熱管内を通流し、熱交換して加熱空気となり、炉外に排出されるようになっている。煙道53は、頂部を水平方向に折り曲げて、図示しない廃熱ボイラなどに接続されている。
【0039】
このように構成される燃焼溶融炉1に、熱分解ガスと共に熱分解カーボンなどの燃料が導入されると燃焼し、炉底部49が例えば1300℃程度の高温になる。これらの燃焼により生じる飛灰が、炉内を旋回しながら炉底部49で溶融され、溶融スラグ57が発生する。ここで発生した溶融スラグ57は、炉壁を伝って流下し、スラグ回収口51から炉外の水槽内に落下して冷却固化される。
【0040】
一方、高温の燃焼排ガス(例えば、1100℃)は、炉底部49、煙道53を経由して、空気加熱器55の伝熱管表面を介して熱交換により冷却された後、廃熱ボイラなどに供給される。
【0041】
燃焼溶融炉41において、少なくとも溶融スラグ57が接する領域の内壁42は、本発明に係る炉内壁用耐火物で形成されている。この例では、ジルコニア質を母材とし、チタン酸カリウムを1〜4重量%含む耐火材が用いられる。すなわち、内壁42は、溶融スラグ57に対する耐食性に優れた耐火物で形成されている。
【0042】
次に、このような燃焼溶融炉41を備えた廃棄物処理装置の一実施の形態について説明する。図5は、本発明を適用してなる廃棄物処理装置の一実施の形態を示す系統図である。
【0043】
廃棄物は、所定の大きさに破砕され、スクリューフィーダ61により回転ドラム式の熱分解反応器63に導入され、例えば450℃程度に加熱され、低酸素雰囲気で熱分解される。
【0044】
熱分解反応器63から発生した熱分解ガスと熱分解残渣は、排出装置65に導かれ、熱分解ガスは管路67を通じて燃焼溶融炉41に燃焼用空気とともに供給される一方、熱分解残渣は、冷却装置69に導かれ、例えば80℃程度に冷却された後、分別装置71に導入される。
【0045】
分別装置71は、例えば、流動式、篩、磁選式、うず電流式、遠心式などの公知の方法が用いられ、熱分解カーボンなどの可燃性の粉粒体と、不燃性成分の金属成分、非金属成分などに分別される。ここで、可燃性の粉粒体には、熱分解カーボンの粉粒体の他に、比較的大きな可燃物などが含まれ、これらは、粉砕処理後にホッパ73に貯留される。他の分離成分は、適宜、コンテナないしホッパに排出され、ホッパ73内の粉粒体は、管路75を通じて燃焼溶融炉41に導入される。
【0046】
燃焼溶融炉41に導入された熱分解カーボン等と粉砕処理物は、高温雰囲気において、旋回流を形成して溶融スラグ57となり、内壁42を伝ってスラグ回収口51から水槽77に落下する。ここで、燃焼排ガスは、前述したように、燃焼溶融炉41の後流側煙道に設置された空気加熱器55により熱回収され、加熱された空気は熱分解反応器63の加熱用熱源として利用される。なお、この加熱された空気は、熱分解反応器63の熱源に限定されず、他の熱源として利用するようにしてもよい。
【0047】
空気加熱器55により熱回収された燃焼排ガスは、例えば600℃に冷却され、これにより、後流側の廃熱ボイラ79において効率的に熱回収される。ここで、廃熱ボイラ79は、燃焼排ガスから回収された熱を利用して蒸気を発生させ、蒸気タービン発電機81を回転させて電力を回収する。
【0048】
廃熱ボイラ79から排出された燃焼排ガスは、集塵器83に導かれて除塵され、次いで脱塩装置85などのガス浄化装置により浄化された後、誘引送風機87を介して煙突89から大気へ放出される。
【0049】
本実施の形態の廃棄物処理装置において、燃焼溶融炉41の内壁42は、母材となるジルコニア質にチタン酸カリウムを添加した複合系の耐火物で形成されるため、例えば、炉内壁を流下する溶融スラグ57は、耐火物から溶出したカリウム化合物の作用により粘度が増加して物質移動が抑制される。これにより、炉内壁は、溶融スラグによる耐火物の侵食を抑制することができ、高い耐食性を維持することができる。また、本実施の形態の炉内壁は、高い耐久性を備えるとともに、クロム化合物を含まないことから、製造コストを低く抑えることができる。
【0050】
なお、本発明の炉内壁用耐火物は、上述したように廃棄物処理装置の燃焼溶融炉の炉内壁に最適に用いられるが、これに限定されるものではなく、廃棄物以外の処理炉、焼却炉などにも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用してなる炉内壁用耐火物の耐摩耗性を評価するための回転侵食装置の模式図を示す。
【図2】本発明を適用してなる炉内壁用耐火物の粘度の温度依存性を評価するための粘度測定装置を示し、(a)は装置外略図、(b)はAの拡大図である。
【図3】本発明を適用してなる炉内壁用耐火物の粘度について評価した結果を示す図である。
【図4】本発明を適用してなる燃焼溶融炉の一実施の形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明を適用してなる廃棄物処理装置の一実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
【0052】
41 燃焼溶融炉
42 内壁
49 炉底部
51 スラグ回収口
55 空気加熱器
57 溶融スラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を燃焼させて生じる灰分を溶融スラグ化する炉の炉内壁用耐火物であって、前記耐火物は、ジルコニア質、ジルコン質、ムライト質、スピネル質のうち少なくとも一種を母材とし、チタン酸カリウムを1〜4重量%含むことを特徴とする炉内壁用耐火物。
【請求項2】
廃棄物を熱分解する熱分解反応器と、該熱分解反応器から排出される熱分解ガス及び熱分解残渣に含まれる可燃物を燃焼して、該熱分解ガス及び熱分解残渣に含まれる不燃物を溶融スラグ化する燃焼溶融炉を備えた廃棄物処理装置において、前記燃焼溶融炉の炉内壁が請求項1に記載の炉内壁用耐火物で形成されていることを特徴とする廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−247615(P2008−247615A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87005(P2007−87005)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】