説明

炉内熱の利用装置

【課題】熱処理装置からの廃熱を効率よく利用できる熱処理装置を提供すること。
【解決手段】加熱帯、均熱帯及び冷却帯、または、加熱帯、均熱帯、冷却帯、過時効帯及び冷却帯からなる連続焼鈍炉設備の炉内熱を利用する熱利用装置において、
前記加熱帯、均熱帯または過時効帯のいずれかの入出側の妻壁に前記加熱帯、均熱帯または過時効帯内の熱を吸収して発電するスターリングエンジンを配設したことを特徴とする連続焼鈍炉設備における炉内熱の利用装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、連続焼鈍炉で発生する熱を利用する利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば連続焼鈍炉設備での熱の利用としては、加熱帯の前に予熱炉を設けて、この加熱帯から発生する排ガスを予熱炉内に導入して鋼板を予熱することが広く行なわれている。(例えば、特許文献1)
【0003】
連続焼鈍炉の加熱帯では加熱装置が配置されている。加熱装置としては、加熱帯炉内に直接火炎を噴射させて炉内に搬送される鋼板を加熱する直火バーナを配置した直火式加熱帯や炉内にラジアントチューブを配置して鋼板を間接的加熱するラジアントチューブ式加熱帯などがある。
【0004】
直火式加熱帯では、炉内に搬送される鋼板の表裏面の幅方向両側から直火バーナを配置して炉内温度を所定の温度に保持し、搬送される鋼板をガス輻射およびガス対流により鋼板を加熱するものである。
【0005】
炉内の直火バーナから噴射された燃焼ガスは鋼板を所定の温度に加熱すると炉体に設けられた煙道から排出される。この煙道には、前記した排ガスの顕熱を回収する熱交換機を配置し、この熱交換機の媒体と熱交換を行い、前記直火バーナの燃焼用空気として利用されている。
【0006】
ラジアントチューブ式加熱帯では、ラジアントチューブの排ガス排出側に熱交換機を設置し、この熱交換器内に燃焼用空気の媒体を通して、排ガスと熱交換を行い、ラジアントチューブバーナの燃焼用空気の予熱用として利用されていた。
【0007】
ラジアントチューブ式加熱帯においては、ラジアントチューブバーナとして蓄熱式バーナが採用されるようになり、ラジアントチューブの排ガス排出側に設置していた熱交換機に代わって、蓄熱体により排ガスの顕熱を蓄熱し、この蓄熱された排ガスの顕熱と燃焼用空気との熱交換を交互に行いながら排ガスの顕熱を回収利用している。
また、この蓄熱体は直火バーナにおいても採用されており、炉体から排出される排ガスの温度は蓄熱体を設置により低温度で排出されるようになった。
このように、従来、連続焼鈍炉での熱の利用としては、燃焼後の排ガスを利用することが主に考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2671936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、加熱帯の排ガスを利用することができるものの、熱源からの熱を直接的に利用するわけではなく、例えば300℃程度の温度の排ガスを媒体として熱を利用するために、熱の利用効率は低くなる。そのため、特許文献1に記載の方法は、加熱帯の排ガスの利用効率の点で必ずしも十分なものではなかった。また、熱交換機を設置して排ガスにより燃焼用空気予熱して燃焼用空気として利用するものにおいても、約400℃程度の予熱しか行われず、また、蓄熱体を使用したバーナでは、燃焼空気温度として800℃程度まで予熱でき、省エネ効果も期待されている。しかし、蓄熱体を採用したバーナでは、予熱空気温度の上昇に伴い、排ガス温度が低下することになり、排ガスの利用には限界があった。また、連続焼鈍炉における均熱帯や過時効帯での熱の利用はほとんどなされていない。
【0010】
本発明の目的は、連続焼鈍炉での熱を効率よく利用できる熱利用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の炉内熱の利用装置は、加熱帯、均熱帯及び冷却帯、または、加熱帯、均熱帯、冷却帯、過時効帯及び冷却帯からなる連続焼鈍炉設備の炉内熱を利用する熱利用装置において、前記加熱帯、均熱帯または過時効帯のいずれかの入出側の妻壁に前記加熱帯、均熱帯または過時効帯内の熱を吸収して発電するスターリングエンジンを配設したことを特徴とする連続焼鈍炉設備における炉内熱の利用装置である。
【0012】
熱処理装置からの排ガスを利用する従来の方法においては、加熱帯の熱源として例えばラジアントチューブバーナを用いる場合には、従来の方法においては、熱源からの熱を直接的に利用するわけではなく、例えば300℃程度の温度の排ガスを媒体として熱を利用するために、熱の利用効率は低くなる。これに対し、本発明においては、スターリングエンジンのヒータ部が加熱帯の入出側妻壁を貫通して、ラジアントチューブバーナに対向するように設けられている。そして、本発明においては、ラジアントチューブバーナからの輻射熱(例えば800℃以上1000℃以下の温度)を直接的に利用することができる。そのため、このような本発明によれば、加熱帯からの排ガスを利用する従来の方法と比較して、加熱帯の熱を直接利用するため効率よく利用できる。
【0013】
本発明の炉内熱の利用装置では、前記妻壁に炉内に向かって凹部を有する集熱板を配設し、該集熱板の中央を前記スターリングエンジンのヒータ部を貫通して配設したことが好ましい。
【0014】
このような本発明によれば、妻壁に設けられた凹形状の集熱板により、ラジアントチューブバーナからの輻射熱をこの凹部中央部から突出するように設けられているスターリングエンジンのヒータ部に輻射熱を集めることができる。このようにして、炉内熱をより効率よく利用できる。
【0015】
このような本発明においては、ラジアントチューブバーナからの輻射熱を直接的に利用して、スターリングエンジンにより発電することができる。そのため、本発明によれば、炉熱処理装置からの排ガスを利用する従来の方法と比較して、炉内熱を効率よく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る炉内熱の利用装置を用いた連続焼鈍設備の一例を示す説明図。
【図2】本発明の実施形態を竪型加熱帯に採用した構成概略図。
【図3】前記実施形態に係る妻壁部に配置したスターリングエンジンの取付概略図。
【図4】前記実施形態に係る集熱板の他の実施例を示す図。
【図5】前記実施形態に係る加熱帯に配置したスターリングエンジンの取付概略図
【図6】本発明の他の実施形態で横型加熱帯に適用した実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、連続焼鈍炉10は、入側より加熱帯15と、均熱帯16と、一次冷却帯17と、過時効帯18と、二次冷却帯19とを備える。鋼板Sは加熱帯から搬入され、加熱帯15により目的の温度に加熱され、加熱された温度で均熱帯16に搬送され、目的の時間で保持され、保持された温度から一次冷却帯17により過時効温度まで冷却されて、過時効帯に搬送される。過時効帯18では過時効処理が行われ、二次冷却帯19により目的の温度まで冷却されて鋼板の焼鈍が終了する。
【0018】
本発明について、連続焼鈍炉10の加熱帯15を例に挙げて説明する。なお、連続焼鈍炉10の均熱帯16および過時効帯についても以下に説明する加熱帯15と同様の構成を備える。
図2に示すように、竪型の炉体151内には上下に鋼板Sを搬送するハースロール152が複数配置されている。鋼板Sはこの上下ハースロール152により炉内を上下に搬送されながら移動する。上下に搬送される鋼板Sを挟んで対向して、鋼板Sを加熱する加熱装置(ここではラジアントチューブ)が配置されている。ラジアントチューブ153は炉体側壁側の一方側から装入され、他方側を炉内で支持されている。
装入側にはバーナ153A(図5参照)が接続され、このバーナ153Aを燃焼させることにより、ラジアントチューブ153内に燃焼ガスを送ってラジアントチューブ153を加熱し、このラジアントチューブ153の輻射熱で鋼板Sを所定の温度まで加熱する。竪型の加熱帯15などの炉体における入側および出側の炉壁を通常妻壁と呼んでいる。
【0019】
スターリングエンジン155は、U字管状のヒータ部155A内の作動流体を外部から加熱または冷却して仕事を得る外燃機関のことであり、適宜公知のものを用いることができる。このスターリングエンジン155は、炉体151を構成する入側および出側の妻壁151Aに、それぞれ取り付けられている。
【0020】
ここで、スターリングエンジン155の取り付け構造について説明する。
妻壁151Aは、図3に示すように、カバープレート151B、断熱材151C、および炉体鉄皮151Dの3層から構成される。カバープレート151Bの材質としては、ステンレスなどが用いられる。断熱材151Cの材質としては、セラミックファイバなどが用いられる。
また、入側および出側の妻壁151Aには、図3に示すように、炉内に向かって凹部を有する集熱板151Eが設けられている。この集熱板151Eは、妻壁151Aの平面視で円形状に、妻壁151Aの断面視で円弧状に凹むように設けられている。
【0021】
そして、スターリングエンジン155は、図2、図3に示すように、スターリングエンジン155のヒータ部155Aが妻壁151Aを貫通して、ラジアントチューブ153に対向するように設けられている。
【0022】
図3において、妻壁鉄皮151Dにスターリングエンジのヒータ部を貫通する貫通孔を設ける。この貫通孔の炉外側にスターリングエンジンを取り付けるフランジ156を立設する。そしてスターリングエンジン本体のフランジ158とボルト157により連結する。貫通孔の炉内側には筒状ガイドプレート155Dとこの筒状ガイドプレート155Dを炉体側で支持する支持プレート155Cが妻壁の炉内側に立設されている。スターリングエンジン155には外周にセラミックファイバ155Bを巻きつけて炉内に挿入し、炉体からの炉内熱の放出とスターリングエンジンの断熱とを兼ねている。このように構成した貫通孔から装入された、スターリングエンジン155のヒータ部を炉内に臨ませて配置する。次に炉内に挿入されたスターリングエンジン155のヒータ部155Aの取付け部に炉内側から曲面を有する円形状の集熱板151Eを取り付ける。炉内壁面に配置された集熱板151Eの中央開口部を貫通して接続されている。集熱板151Eのスターリングエンジン155のヒータ部155Aの取付け部は集熱板151Eの開口部の内側に折り曲げられて取り付けられている。これによりスターリングエンジン155に外周に取り付けられている断熱材であるセラミックファイバ155Bは炉内へ飛散することがない。また、図4に示すように集熱板151Eは、炉内面が曲面ではなく、平面で中央開口部に向かって漸次傾斜させた構造でも同じ効果が期待できる。この集熱板151Eは、妻壁151Aの平面視で四角形状に、妻壁151Aの断面視で台形状に凹むように設けられている。
【0023】
以上の本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
スターリングエンジン155のヒータ部155Aが妻壁151Aを貫通して、ラジアントチューブ153に対向するように設けられている。このため、ラジアントチューブ153からの輻射熱(例えば800℃以上1000℃以下の温度)を直接的に利用することができ、熱処理装置からの炉内熱を効率よく利用できる。
【0024】
また、妻壁151Aに設けられた凹部151Eから、スターリングエンジン155のヒータ部155Aを突出させている。このため、凹部を形成した集熱板151Eにより反射された輻射熱をヒータ部155Aに集めることができ、加熱帯からの炉内熱をより効率よく利用できる。
【0025】
前記実施形態では、焼鈍炉10の加熱帯15を縦型炉としたが、これに限定されない。例えば、図6に示すような、横型の加熱帯15Aとしてもよい。
【0026】
また、前記実施形態では、本発明の炉内熱の利用装置を用いた連続焼鈍炉10の加熱帯15を例に挙げて説明したが、これに限定されない。連続焼鈍炉における加熱帯の他、均熱帯、過時効帯等、所定温度以上であれば、前記実施形態の加熱帯15と同様の構成とすることで、前記実施形態と同様の効果を達成できる。例えば、焼鈍炉10の過時効帯18(400℃程度の温度に一定時間保持される)を、前記熱処理装置と同様の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
15…加熱帯、151A…妻壁、151E…凹部、153…ラジアントチューブ、155…スターリングエンジン、155A…ヒータ部、S…鋼板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱帯、均熱帯及び冷却帯、または、加熱帯、均熱帯、冷却帯、過時効帯及び冷却帯からなる連続焼鈍炉設備の炉内熱を利用する熱利用装置において、
前記加熱帯、均熱帯または過時効帯のいずれかの入出側の妻壁に前記加熱帯、均熱帯または過時効帯内の熱を吸収して発電するスターリングエンジンを配設したことを特徴とする連続焼鈍炉設備における炉内熱の利用装置。
【請求項2】
前記妻壁に炉内に向かって凹部を有する集熱板を配設し、該集熱板の中央を前記スターリングエンジンのヒータ部を貫通して配設したことを特徴とする請求項1に記載の炉内熱の利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241200(P2012−241200A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109194(P2011−109194)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】