説明

炊飯器

【課題】外蓋に形成した縦壁を効率よく補強でき、安価ながら蓋フックの掛かり具合が安定する蓋を備えた炊飯器を提供する。
【解決手段】外蓋10に設けられた蓋フック16が炊飯器本体1のフック受け部30に掛かる炊飯器において、前記外蓋10が前記フック受け部30に臨む縦壁15とこの縦壁15の内側面に連なる複数のリブ立て部17a〜gとを有し、前記縦壁15の内側面にリブ立て部17a〜g間を繋ぐ横リブ18が突出し、前記蓋フック16が前記縦壁15に形成されたフック状部分からなる構成を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外蓋に蓋フックを設けた炊飯器に関し、特に、外蓋にヒータカバーの取付け部を設ける場合に好適な蓋フック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炊飯容量の小さい炊飯器には、いわゆる蓋リング部材を省略した構造の蓋が採用されることが多い。例えば、図8、図9に示すように、外蓋81が開口82を形成した縦壁83を有し、外蓋81の内面に、内蓋84と、フック状部を形成した蓋フック部材85とを装着した蓋80がある(特許文献1)。
【0003】
蓋フック部材85は、前後にスライド可能に、かつ後退方向に付勢して設けられている。内蓋84を取付けると、蓋フック部材85は、スライド溝86に案内されて前進し、縦壁83の開口82から突出する。蓋80が閉じられると、開口82が炊飯器本体のフック受け部87に臨み、蓋フック部材85は、フック受け部87に掛かるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−355168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような炊飯器では、蓋フック部材85がスライド式の複雑な構造なので、蓋80の低コスト化を図る妨げとなっていた。そこで、蓋フック部材85を省略するため、蓋フックを、縦壁83に形成したフック状部分から構成することが考えられる。
【0006】
ところが、蓋80は、蓋リング部材を省略した構造のため、蓋全体の剛性が低く、蓋開閉時の勢いで縦壁83が変形し易い。また、外蓋81の成型時に縦壁83の寸法にバラツキが生じることは避けられない。これらが原因となって、組立てた炊飯器の中には、蓋フックの掛かりが浅いものや掛かりが悪いものが生じ得る。これに対する低コストの解決手段としては、外蓋81に縦壁83を補強するリブを立てることが考えられる。
【0007】
しかしながら、蓋リング部材のない蓋80では、外蓋81の内面に、内蓋84の取付け部を設ける必要がある。このため、縦壁83を補強するリブを立てようとしても、金型抜きのクリアランスを設け難く、十分なリブを立てることは困難である。
【0008】
そこで、この発明の課題は、外蓋に形成した縦壁を効率よく補強でき、安価ながら蓋フックの掛かり具合が安定する蓋を備えた炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する手段として、この発明は、外蓋に設けられた蓋フックが炊飯器本体のフック受け部に掛かる炊飯器において、前記外蓋が前記フック受け部に臨む縦壁とこの縦壁の内側面に連なる複数のリブ立て部とを有し、前記縦壁の内側面にリブ立て部間を繋ぐ横リブが突出し、前記蓋フックが前記縦壁に形成されたフック状部分からなることを特徴とする構成を採用した。
【0010】
この発明の構成では、前記外蓋が前記フック受け部に臨む縦壁とこの縦壁の内側面に連なる複数のリブ立て部とを有し、前記縦壁の内側面にリブ立て部間を繋ぐ横リブが突出し、前記蓋フックが前記縦壁に形成されたフック状部分からなるので、前記縦壁と前記複数のリブ立て部と前記横リブとが箱状構造をなして一体的な強度を発揮する。これにより、前記縦壁が効率よく補強されるので、蓋フックの掛かり具合が安定する。また、蓋の部材数が減り、蓋の組立て工程が簡略化されるので、蓋の製造コストが安くなる。
【0011】
前記リブ立て部は、前記の箱状構造が構成されるように少なくとも2箇所にあればよく、金型抜きのクリアンスの余裕に応じて増やすことができる。したがって、この発明の構成では、蓋リング部材を省略し、前記外蓋の内面にヒータカバーを取付ける構成を採用した場合でも前記縦壁を十分に補強することができる。
【0012】
この際、前記外蓋がその内面に取付けられたヒータカバーの外周を囲む環状壁を有し、前記リブ立て部と前記横リブとが前記環状壁に連なる構成を採用することが好ましい。ここで、前記環状壁は、前記ヒータカバーを前記外蓋に取付けた状態で前記外蓋と前記ヒータカバーとの間に生じる隙間を目隠しするためのものである。
【0013】
この構成によれば、前記リブ立て部と前記横リブとが前記環状壁に連なるので、前記リブ立て部と前記横リブに加わる負荷が前記環状壁で分担される。これにより、前記リブ立て部を小さく立てることが可能になるので、前記環状壁の成型に伴って金型抜きのクリアランスが減少しても、前記縦壁を十分に補強することができる。
【0014】
また、この発明の具体的構成として、前記リブ立て部が前記縦壁を挟んで前記蓋フックの両側に有り、前記横リブが前記縦壁を挟んで前記蓋フックと対向する構成を採用することもできる。この構成によれば、前記蓋フック付近が前記の箱状構造部分で直接的に補強されるので、前記リブ立て部の成型範囲を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、この発明の具体的構成として、前記縦壁と前記リブ立て部と前記横リブとによる箱状構造部分が、前記環状壁の内周面に開放し、前記ヒータカバーの外周部に固定された蓋パッキンが、前記環状壁とこのヒータカバーとの間を塞ぐ構成を採用することもできる。この構成によれば、前記リブ立て部と前記横リブとを前記環状壁の内周面を成型する金型面から突出するスライド金型で成型した場合でも、前記の箱状構造部分に埃や露が溜まることを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べたように、この発明によれば、外蓋に形成した縦壁を効果的に補強でき、安価ながら蓋フックの掛かり具合が安定する蓋を備えた炊飯器を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を添付図面の図1〜図7に基づいて説明する。
図1から図3に示すように、この実施形態に係る炊飯器は、炊飯器本体1と、これに蓋ヒンジ2を介して開閉可能に取付けた蓋3とを備える。蓋3は、外蓋10にヒータカバー20を取付けた構造を有し、蓋ヒンジ2に通した一本のヒンジスプリング4によって開方向に付勢されている。
【0018】
外蓋10は、蓋3の外殻を構成しており、内面に環状壁11を有する。環状壁11の内周面前方側には、爪状の取付け部12,12が左右対称で形成されている。また、環状壁11は、外蓋内面に突設された蓋補強リブ13と一体的に形成されており、外蓋の凹入部分からなる蒸気室14と蓋補強リブ13を介して連なっている。
【0019】
図4(a)〜(c)に示すように、ヒータカバー20は、電熱ヒータ21が配設されたカバー部22と、カバー部外周に形成した折返し部23と、折返し部23に連設したカシメ代24とを有する。カシメ代24は、前方側に、取付け部12に対応する位置に抜き穴25を有する切起し部26が形成され、後方側に、外蓋10に固定するためのねじ通し部27が形成されている。
【0020】
折返し部23には、内鍋5に密着する蓋パッキン28が嵌合されている。この蓋パッキン28は、カシメ代24と、抜き穴成形時の抜き片部29とをカシメることによりヒータカバー20に固定されている。このように、抜き穴形成時の抜き片部29を蓋パッキン28のカシメ止めに利用することにより、蓋パッキン28の取付け強度を向上させることができる。
【0021】
ヒータカバー20は、抜き穴25を取付け部12に係合させて位置決めし、ねじ通し部27においてねじ止めすることにより、外蓋10に取付けるようになっている。この取付け状態で、環状壁11は、ヒータカバー20の外周を囲むようになっている。
【0022】
また、図1に示すように、外蓋10は、炊飯器本体1のフック受け部30に臨む縦壁15を有する。縦壁15は、外蓋上面の前端縁から勾配部分を介して概ね垂下するように設けられている。なお、縦壁15は、蓋開閉の障害とならず、蓋3を閉じた状態でフック受け部30に臨むように設ければよい。
【0023】
フック受け部30には、蓋閉じ動作に伴って蓋3に設けられた蓋フック16と掛かり合うことにより蓋3を閉じ位置にロックし、ロック解除操作によって掛かり合いを解くことができる機構を用いる。この実施形態では、従来と同様、フックボタン部30aの後端縁に蓋フック16と掛かり合う掛り部30bを形成した部材を、ロック位置とロック解除位置との間を移動可能に、かつトーションばね31によりロック位置を保つように設置した機構が用いられている。
【0024】
図1、図5(a)〜(c)に示すように、蓋フック16は、蓋閉じ動作に伴ってフック受け部30に掛かるものであり、縦壁15に形成されたフック状部分からなる。蓋フック16の両端には、蓋閉じ動作に伴ってフック受け部30に接触するテーパ部16aが形成されている。蓋フック16は、テーパ部16aの接触に伴いフック受け部30をロック解除位置に移動させて通過した後、蓋3の戻り動作(ヒンジスプリング4の付勢による)に伴い、トーションばね31によりロック位置に戻されているフック受け部30の掛り部30bに掛かるようになっている。
【0025】
また、外蓋10は、縦壁15の内側面に連なる複数のリブ立て部17a〜gを有する。両端のリブ立て部17a,gは、縦壁15を挟んで蓋フック16の両側に有り、環状壁11に連なっている。他のリブ立て部17b〜fは、後端縁上端が環状壁11に連なっている(図3参照)。なお、中央のリブ立て部17dは、蓋補強リブ13と一体的に形成されている。
【0026】
さらに、縦壁15の内側面には、縦壁15を挟んで蓋フック16と対向し、リブ立て部17a〜g間を繋ぐ横リブ18が突出している。横リブ18は、各リブ立て部17a〜gの上端を繋ぎ、環状壁11に連なっている。これにより、外蓋10には、縦壁15と各リブ立て部17a〜gと横リブ18とによる箱状構造部分が環状壁11と一体的に形成されている。なお、両端のリブ立て部17a,gと横リブ18のみを設けた場合でも、それぞれの肉厚等を調整すれば、縦壁15の変形や倒れを防止することは十分に可能である。
【0027】
リブ立て部17a〜gと横リブ18は、環状壁11の内周面を成型する金型面から突出するスライド金型により成型されている。このように成型すると、金型の複雑な分割化を回避できるので、金型の強度が増し、外蓋10の寸法精度が安定する。
【0028】
ただし、前記の箱状構造部分は、環状壁11の内周面に開放したものとなる。そこで、蓋パッキン28は、ヒータカバー20を取付けた状態で、環状壁11とヒータカバー20の間を塞ぐように設けられている。これにより、箱状構造内に埃や露が溜まることが防止される。なお、当然のことながら、ヒータカバー20と蒸気室14の間は蒸気通路で連通されている。
【0029】
また、この実施形態では、環状壁11が蓋補強リブ13と蒸気室14とに連続するので、縦壁15に加わる負荷が環状壁11を介して外蓋全体に分散される。このため、この実施形態では、リブ立て部17a〜gの負担を特に軽減することができる。
【0030】
また、この実施形態では、リブ立て部17a〜gと横リブ18は、縦壁15と環状壁11の間に有り、しかも、環状壁11よりも低く設けられているので、ヒータカバー20の取付けに何ら悪影響を与えることがない。
【0031】
また、この実施形態では、縦壁15が十分に補強されるので、図6、図7に示すように、縦壁15の外側面に、蓋閉じ動作時における蓋3の左右方向の振れを炊飯器本体1のガイド部40,40との接触案内により規制する振止め部41,41を形成することができる。
【0032】
振止め部41,41は、蓋フック16を挟むように左右一対で縦壁15の外側面に設けられた突出部分からなり、縦壁15の勾配部分から壁先端に亘って蓋開閉方向と平行する方向に設けられている。
【0033】
一方、ガイド部40,40は、フック受け部30を挟むように左右一対で肩部1aに設けられた凸形状部分からなり、左右方向外側の側面が振止め部41,41の対向側面42,42を蓋開閉方向と平行する方向に案内するガイド面となっている。この案内は、蓋閉じ動作時において、縦壁15がフック受け部30に臨んでから蓋フック16がフック受け部30に掛かるまで行われるようになっている。
【0034】
上記のようにガイド部40,40と振止め部41,41とを設けると、蓋3は、ヒンジスプリング4の偏った付勢等が原因となって左右いずれかの方向に振れようとしても、ガイド部40,40と振止め部41,41との接触案内により規制されるので、正常な閉じ位置に落ち着く。このため、この実施形態では、蓋3と炊飯器本体1の肩部1aとの間に大きな隙間や段差を生じることがない。
【0035】
なお、ガイド部と振止め部は、上記のようなものに限定されない。例えば、振止め部41,41を凹溝状に形成し、ガイド部40,40を振止め部41,41と合致する凸リブ状に形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態に係る炊飯器の縦断側面図。
【図2】同上の蓋開放状態を示す全体斜視図。
【図3】同上のリブ立て部付近の部分拡大斜視図。
【図4】(a)同上のヒータカバーの上面斜視図、(b)図4(a)の切起し部付近の拡大図、(c)図4(a)の切起し部の周方向中心上で径方向に切断した部分拡大縦断面図。
【図5】(a)同上の蓋フック付近の拡大斜視図、(b)同上の蓋の蓋フック付近の部分拡大縦断側面図、(c)同上の蓋の蓋フック付近の拡大下面図。
【図6】同上のフック受け部付近の拡大斜視図。
【図7】同上のフック受け部付近の拡大上面図。
【図8】従来例の蓋の下面側を示した斜視図。
【図9】従来例の蓋を閉じた状態における蓋フック付近の拡大縦断側面図。
【符号の説明】
【0037】
1 炊飯器本体
1a 肩
2 蓋ヒンジ
3 蓋
4 ヒンジスプリング
5 内鍋
10 外蓋
11 環状壁
12 取付け部
13 蓋補強リブ
14 蒸気室
15 縦壁
16 蓋フック
16a テーパ部
17 リブ立て部
18 横リブ
20 ヒータカバー
21 電熱ヒータ
22 カバー部
23 折返し部
24 カシメ代
25 抜き穴
26 切起し部
27 ねじ通し部
28 蓋パッキン
29 抜き片部
30 フック受け部
30a フックボタン部
30b 掛り部
31 トーションばね
40 ガイド部
41 振止め部
80 蓋
81 外蓋
82 開口
83 縦壁
84 内蓋
85 蓋フック部材
86 スライド溝
87 フック受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外蓋に設けられた蓋フックが炊飯器本体のフック受け部に掛かる炊飯器において、前記外蓋が前記フック受け部に臨む縦壁とこの縦壁の内側面に連なる複数のリブ立て部とを有し、前記縦壁の内側面にリブ立て部間を繋ぐ横リブが突出し、前記蓋フックが前記縦壁に形成されたフック状部分からなることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記外蓋がその内面に取付けられたヒータカバーの外周を囲む環状壁を有し、前記リブ立て部と前記横リブとが前記環状壁に連なることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記リブ立て部が前記縦壁を挟んで前記蓋フックの両側に有り、前記横リブが前記縦壁を挟んで前記蓋フックと対向することを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記縦壁と前記リブ立て部と前記横リブとによる箱状構造部分が、前記環状壁の内周面に開放し、前記ヒータカバーの外周部に固定された蓋パッキンが、前記環状壁とこのヒータカバーとの間を塞ぐことを特徴とする請求項2または3に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−149418(P2006−149418A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340070(P2004−340070)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】