説明

炊飯器

【課題】ピラフ調理に適した炊飯ができる炊飯器において、ピラフ調理に適した炊飯シーケンスで炊飯し、炊飯量に関わらず、芯がなく、粒のバランスの良いピラフを炊飯できるようにする。
【解決手段】被調理物を入れる鍋1を加熱手段2により加熱し、鍋1で炊飯するピラフ調理に適した炊飯シーケンスを記憶手段6に複数記憶し、沸騰を検知する第1の温度検知手段3の出力と鍋1の温度を検知する第2の温度検知手段5の出力を制御手段8に入力して加熱手段2を制御する。制御手段8は、ピラフ調理を選択する選択手段7によりピラフ調理を選択したとき、記憶手段6に記憶した炊飯シーケンスにより炊飯するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラフ調理に適した炊飯ができる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、仕事をもつ主婦が増加しており、それに伴い、簡単調理志向が高まり、それに対応するために炊飯器を使用して、いろいろな調理メニューが考えられるようになってきている。
【0003】
従来、ピラフを炊飯する炊飯器は、おこわメニューの炊飯制御と共用していた。ピラフ調理が選択された際、所定の条件で炊き上がり温度まで加熱した後、前記炊き上がり温度あるいは炊き上がり温度近傍の温度にて所定時間だけ保持し、その後蒸らしを実行することにより、炒めたお米のように初期温度が高くなってしまう米からピラフを調理する場合にも、早切れによる炊き上がり不足が生じるということがなくなるようにしたものであった。
【0004】
図5Aは、特許文献1に記載された従来のピラフ調理を炊飯制御する加熱パターンを示すものである。ここで、図5を参照しながら従来のピラフ調理を炊飯する炊飯器の動作を説明する。
【0005】
図5に示すように、ピラフ調理が選択されると、所定の条件で炊き上がり温度T(例えば、110℃)まで加熱された後、前記炊き上がり温度Tより高い温度T(例えば、118℃)にて所定時間t1(例えば、7分)だけ保持され、その後蒸らしが実行される。しかも、前記保持温度Tを、お焦げ付き炊飯を行うときの焦げ目付け温度T(例えば、130℃)より低く、蒸らし温度T(例えば、105℃)より高い温度に設定している。また、前記保持時間は、調理するピラフの量に応じて調整するようにしている。
【特許文献1】特開2001−333858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ピラフを調理する方法としては、予め炒めたお米にスープや具を加えて炊き上げる場合と、生米にスープや具を加えて炊き上げる場合との二つがある。炒めたお米の場合は生米の場合に比べ、油等を使用しているため、調味料による鍋底の昇温速度が速くなり、早切れする場合がある。前記従来の加熱パターンでは鍋内の温度が沸騰を検知した後の早切れによる炊き上がり不足が生じることはなくなるが、沸騰を検知するまでの早切れによる炊き上がり不足が生じることがあり、ピラフをうまく調理することはできないという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ピラフ調理に適した炊飯シーケンスで炊飯し、米の状態(例えば、炒めたお米や生米)に関係なく、炊飯量に関わらず、おいしいピラフを炊き上げることができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、蓋の温度を検知する第1の温度検知手段と、鍋の温度を検知する第2の温度検知手段と、ピラフ調理専用炊飯シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記ピラフ調理専用炊飯シーケンスが、前記第2の温度検知手段の検知温度を第1の所定温度に第1の所定時間保持する吸水工程と、第1の温度検知手段が第2の所定温度を検知するまで白米炊飯コースにおけるよりも小さい火力で加熱する加熱工程と、第2の温度検知手段が第3の所定温度を検知するまで白米炊飯コースにおけるよりも大きい火力で加熱する沸騰工程とを有するようにしたものである。
【0009】
これによって、ピラフ調理に適した炊飯シーケンスで炊飯することができて、米の状態(例えば、炒めたお米や生米)に関係なく、炊飯量に関わらず、おいしいピラフを炊き上げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、ピラフ調理に適した炊飯シーケンスで炊飯し、米の状態(例えば、炒めたお米や生米)に関係なく、炊飯量に関わらず、おいしいピラフを炊き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、被調理物を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口面を覆う蓋と、前記蓋の温度を検知する第1の温度検知手段と、前記鍋の温度を検知する第2の温度検知手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、ピラフ調理専用炊飯コースを選択入力する選択手段と、ピラフ調理専用炊飯シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記ピラフ調理専用炊飯シーケンスが、前記第2の温度検知手段の検知温度を第1の所定温度に第1の所定時間保持する吸水工程と、第1の温度検知手段が第2の所定温度を検知するまで白米炊飯コースにおけるよりも小さい火力で加熱する加熱工程と、第2の温度検知手段が第3の所定温度を検知するまで白米炊飯コースにおけるよりも大きい火力で加熱する沸騰工程とを有するものであり、ピラフを炊飯するとき、選択手段によりピラフ調理を選択することで、ピラフ調理に適した炊飯シーケンスで炊飯することができて、ピラフをおいしく炊飯することができる。
【0012】
さらに、ピラフは特に、炒めたお米を使用する場合、吸水工程がなく、強い火力で炊き上がり温度まで加熱すると、調味料による鍋底の昇温速度が早くなるので、早切れする場合があるため、吸水工程の時間を追加する、あるいは温度を高めに設定することで、米にある程度吸水時間を設けることにより、加熱工程の昇温速度を遅らせることができるため、早切れを防止し、粒のバランスのよいピラフを炊くことができる。
【0013】
さらに、加熱工程の火力が強すぎると、炒めたお米の場合、調味料による鍋底の昇温が早すぎて、早切れが生じて炊飯が終了し、生米状態になるため、加熱工程の火力を適度な火力に変更することで、鍋底の昇温速度を遅らせ、早切れを防止し、火通りの良いピラフに炊き上げることができる。
【0014】
さらに、沸騰工程の火力が弱いと、沸騰工程の時間が長くなり、粒表面が崩れてバランスの悪いピラフとなるため、沸騰工程の火力を強くすることで、粒の崩れを防止し、粒のバランスの良いピラフに炊き上げることができる。
【0015】
第2の発明は特に、第1の発明において、加熱工程において、第2の温度検知手段が第3の所定温度より高い場合は、加熱を停止し、再び、第1の温度検知手段が第2の所定温度を検知するまで、第2の温度検知手段が第3の所定温度より低い第4の所定温度で保持すべく加熱するようにしたものであり、炒めた米の場合は鍋底の昇温が早く、早切れが生じて炊飯が終了し、炊けない場合があるため、沸騰工程終了温度より低い温度で温度を保持しながら、加熱開始および停止を繰り返し、沸騰を検知するまで加熱を継続することにより、芯がなく、おいしいピラフを炊き上げることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における炊飯器のブロック図を示したものである。
【0018】
図2は、同炊飯器の断面図を示すものである。
【0019】
図1および図2において、鍋1は被調理物を入れ、この鍋1を加熱手段2を構成する誘導加熱コイルの上部に載置し、加熱手段2により加熱して調理するようにしている。第1の温度検知手段3は、鍋1内の被調理物の沸騰を検知するもので、蓋体4の被調理物に対向した面に配置し、第2の温度検知手段5は鍋1の温度を検知するもので、鍋1の底面に接して配置している。
【0020】
記憶手段6は鍋1で炊飯するピラフ調理に適した炊飯シーケンスを複数記憶しており、選択手段7はピラフ調理を選択するものである。制御手段8は、マイクロコンピュータなどで構成し、第1の温度検知手段3の出力と第2の温度検知手段5の出力を入力とし、インバータ回路などで構成した駆動手段9を介して加熱手段2を制御する。ここで、選択手段7によりピラフ調理を選択したとき、記憶手段6に記憶したピラフ調理に適した炊飯シーケンスにより炊飯するように構成している。
【0021】
なお、制御装置10は、記憶手段6、選択手段7、制御手段8、駆動手段9などで構成し、駆動手段9は、加熱手段2を誘導加熱コイルで構成している場合はインバータ回路などで構成し、加熱手段2をヒータで構成している場合は双方向性サイリスタやリレーで構成している。
【0022】
ここで、記憶手段6に複数記憶したピラフ調理に適した炊飯シーケンスについて説明する。ピラフをおいしく炊くためには、米の状態(例えば、炒めたお米や生米)により、特に炒めたお米の場合は生米に比べ、油等の調味料による鍋底の昇温速度が早いため、吸水工程がなく、加熱工程に入ると、早切れが生じる場合があるので、吸水工程を追加する。また、油等の調味料により温度検知が早いため、温度をやや高めに設定することで、粒表面の崩れを防止し、粒のバランスのよいピラフに炊き上げる。吸水工程の時間が長すぎると、炒めたお米の場合に加熱工程で早切れが生じることがあるので、短めに設定している。加熱工程の火力が高いと、調味料による鍋底の昇温が早く、早切れが生じやすくなるので、若干低めに設定している。また、沸騰工程の通電率(火力)が低いと、粒表面が崩れてバランスの悪いピラフとなるため、沸騰工程の通電率(火力)を高めに設定している。ピラフの調理法によっては炒めたお米の場合は早切れが生じて炊けないことがあるため、加熱工程において沸騰工程終了温度より高い温度を検知した場合、加熱を停止し、沸騰工程終了温度より低い温度で温度を保持しながら、加熱開始および停止を繰り返し、沸騰を検知するまで加熱を継続するようにしている。
【0023】
以上のように構成された炊飯器について、ピラフを炊飯する場合の動作を図3を参照しながら説明する。まず、炊飯を開始すると、電力Wで加熱する吸水工程に入る。吸水工程は、第2の温度検知手段5により検知した鍋1の温度が第1の所定温度θ1より低い場合は、加熱手段2を作動し、第1の所定温度θ1以上の場合は加熱手段2の作動を停止するように、加熱手段2をオンオフ制御しながら鍋1内の温度をθ1に保つ。
【0024】
ピラフは米の状態(例えば、炒めたお米や生米)によって、特に炒めたお米の場合、生米に比べ、油等の調味料による鍋底の昇温が早くなるので、加熱工程において早切れが生じやすくなるため、吸水工程を追加する。吸水工程の時間が長すぎても、加熱工程で早切れが生じるため、吸水工程の時間を、たとえば3分に設定する。また、油等の調味料により温度検知が早くなるため、吸水工程の温度が低いと、吸水不足を生じるため、吸水工程の温度を、たとえば3℃高めに設定する。第1の所定時間T1経過後に吸水工程を終了し、加熱工程に入る。
【0025】
加熱工程では、第2の温度検知手段5により所定の温度θ2を検知してから第1の温度検知手段3により第2の所定温度φ1を検知するまで、電力Wで加熱し、その際の温度上昇率から炊飯量を判定し、炊飯量に応じた火力で次のパワーダウン工程及び沸騰工程を行う。通常の白米炊飯コースの場合は、W1>Wである第1の電力W1による加熱工程に入り、炊き上げ工程開始からパワーダウン工程にかけて一定時間経過するか、あるいは第1の温度検知手段3により第2の所定温度φ1を検知した時点で、W1>Wである電力Wとし、以降の工程を続行させるが、ピラフ調理コースの場合は、特に炒めたお米の場合、加熱工程の火力が高い場合には油等の調味料による昇温が早すぎるため、早切れが生じやすくなり、粒の中が硬く、バランスの悪いピラフになるので、適度な火力に設定することにより、早切れを生じにくくなり、バランスの良いピラフに炊き上げることができる。ここでは、Wは1000W、W1は1100W、T1は2分56秒、θ1は56℃、θ2は80℃とする。
【0026】
一旦、パワーを引いてふきこぼれを防ぐパワーダウン工程を一定時間T2行った後、沸騰工程を行う。沸騰工程の通電率を高めに設定することにより、沸騰工程の通電率が低すぎることによって、粒がくずれてバランスの悪いご飯となるのをなくすことができる。
【0027】
第2の温度検知手段5により第3の所定温度θ3を検知すると、沸騰維持工程を終了する。ここでは、T2は1分40秒、θ3は130℃とする。その後は蒸らし工程に入り、一定時間の間に複数回の炊飯量に応じた加熱(追い炊き)を行う。所定時間T3経過すると、蒸らし工程を終了し、炊飯が終了する。ここでは、T3は8分とする。
【0028】
以上の炊飯工程を通して、炊飯量に関係なく、ピラフをおいしく炊くことができる。なお、本実施例におけるT1、T2、T3、θ1、θ2、θ3、φ1、W、W1の値は実施の一例であり、状況に応じて数値を設定することができる。
【0029】
また、鍋1を加熱する加熱手段2として誘導加熱方式を例として説明したが、ヒータ式およびガス炊飯器等においても、支障はないものである。
【0030】
(実施の形態2)
図1に示す記憶手段6は、鍋1で炊飯するピラフ調理に適した炊飯シーケンスを記憶しており、制御手段8は、選択手段7によりピラフ調理を選択したとき、記憶手段6に記憶したピラフ調理に適した炊飯シーケンスにより炊飯するように構成している。
【0031】
ここで、記憶手段6に記憶したピラフに適した炊飯シーケンスは、炒めたお米によっては、油等を使用することにより、加熱工程で早切れが生じる場合があるため、加熱工程において沸騰工程終了温度より高い温度を検知した場合、加熱を停止し、沸騰工程終了温度より低い温度で温度を保持しながら、加熱開始および停止を繰り返し、沸騰を検知するまで加熱を継続するようにしている。他の構成は上記実施例1と同じである。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施の形態の炊飯器の動作タイムチャートである。
【0033】
上記構成において、ピラフを炊飯する場合の動作を図4を参照しながら説明する。なお吸水工程までの動作は上記実施例1の動作と同じであるので説明を省略する。
【0034】
吸水工程が終了すると、加熱工程に入り、沸騰工程終了温度θ3より高い温度を検知した場合、加熱手段2による加熱を停止し、沸騰工程終了温度より低い第4の所定温度θ4で温度を保持しながら、加熱開始および停止を繰り返し、第1の温度検知手段3により第2の所定温度φ1を検知するまで、加熱を継続するようにしている。ここでは、θ4は123℃とする。
【0035】
このことにより、沸騰するまでの早切れを防止し、芯がなく、おいしいピラフを炊き上げることができる。なお、本実施例におけるθ4の値は実施の一例であり、状況に応じて数値を設定することができる。
【0036】
また、当然のことながら、さらに別の実施例として、これらの実施例のなかの一部の炊飯シーケンスのみを組み合わせて採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように本発明にかかる炊飯器は、ピラフ調理に適した炊飯シーケンスで炊飯し、炊飯量に関わらず、芯がなく、粒のバランスの良いおいしいピラフを炊飯することが可能となるので、ピラフ専用調理器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施例の炊飯器のブロック図
【図2】同炊飯器の断面図
【図3】同炊飯器の動作タイムチャート
【図4】本発明の第2の実施例の炊飯器の動作タイムチャート
【図5】従来のピラフを炊飯制御する加熱パターンを示す図
【符号の説明】
【0039】
1 鍋
2 加熱手段
3 第1の温度検知手段
5 第2の温度検知手段
6 記憶手段
7 選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口面を覆う蓋体と、前記蓋体下面の温度を検知する第1の温度検知手段と、前記鍋の温度を検知する第2の温度検知手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、ピラフ調理専用炊飯コースを選択入力する選択手段と、ピラフ調理専用炊飯シーケンスを記憶する記憶手段とを備え、前記ピラフ調理専用炊飯シーケンスが、前記第2の温度検知手段の検知温度を第1の所定温度に第1の所定時間保持する吸水工程と、第1の温度検知手段が第2の所定温度を検知するまで白米炊飯コースにおけるよりも小さい火力で加熱する加熱工程と、第2の温度検知手段が第3の所定温度を検知するまで白米炊飯コースにおけるよりも大きい火力で加熱する沸騰工程とを有する炊飯器。
【請求項2】
加熱工程において、第2の温度検知手段が第3の所定温度より高い場合は、加熱を停止し、再び、第1の温度検知手段が第2の所定温度を検知するまで、第2の温度検知手段が第3の所定温度より低い第4の所定温度で保持すべく加熱する請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−149594(P2006−149594A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343494(P2004−343494)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】