説明

炊飯器

【課題】炊飯工程と保温時に過熱蒸気を利用可能とするとともに、水量精度の確保をはかった炊飯器を提供することを目的としている。
【解決手段】本体31に対して着脱自在に収納される鍋34と、鍋34を加熱する加熱手段35と、鍋34を開閉する蓋体37と、炊飯工程と保温時に過熱蒸気を鍋34内に供給する蒸気供給手段47とを備え、蒸気供給手段47は、炊飯工程と保温時に使用する水を貯水するそれぞれ専用の貯水部43a、43bを有するものである。これによって、炊飯工程と保温時に使用する水を貯水するそれぞれ専用の貯水部43a、43bを有することで、保温時には過熱蒸気が利用できない、あるいは途中での水補給作業の発生、といったことがなく、また、貯水部の容積を一定の精度で確保することで、水量精度の確保がはかれ、安定した炊飯性能および保温性能を得ているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯性能を向上させるために、水の沸点以上の過熱蒸気を利用する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、過熱蒸気を利用して、糊化を促進し、炊飯性能を向上させるようにした炊飯器はすでに提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−160917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、過熱蒸気を利用して、糊化を促進し、炊飯性能を向上させているが、実使用時における配慮が十分になされているものではない。例えば、炊飯工程であるむらし工程と、保温時に過熱蒸気を利用する場合、水量精度を確保しなければ、むらし工程ですべての水を使いきってしまい、保温時には過熱蒸気が利用できない、あるいは途中での水補給作業の発生、といったことが生じるものであった。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、炊飯工程と保温時に過熱蒸気を利用可能とするとともに、水量精度の確保をはかった炊飯器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、本体に対して着脱自在に収納される鍋と、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の開口部を開閉する蓋体と、炊飯工程と保温時に過熱蒸気を鍋内に供給する蒸気供給手段とを備え、蒸気供給手段は、炊飯工程と保温時に使用の水を貯水するそれぞれ専用の貯水部を有するものである。
【0006】
これによって、炊飯工程と保温時に使用する水を貯水するそれぞれ専用の貯水部を有することで、保温時には過熱蒸気が利用できない、あるいは途中での水補給作業の発生、といったことがなく、また、貯水部の容積を一定の精度で確保することで、水量精度の確保がはかれ、安定した炊飯性能および保温性能を得ているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炊飯器は、炊飯工程と保温時に過熱蒸気が利用可能とするとともに、水量精度の確保をはかれ、安定した炊飯性能および保温性能を得ている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、本体に対して着脱自在に収納される鍋と、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の開口部を開閉する蓋体と、炊飯工程と保温時に過熱蒸気を鍋内に供給する蒸気供給手段とを備え、蒸気供給手段は、炊飯工程と保温時に使用の水を貯水するそれぞれ専用の貯水部を有する炊飯器としたものである。これによって、炊飯工程と保温時に使用する水を貯水するそれぞれ専用の貯水部を有することで、保温時には過熱蒸気が利用できない、あるいは途中での水補給作業の発生、といったことがなく、また、貯水部の容積を一定の精度で確保することで、水量精度の確保がはかれ、安定した炊飯性能および保温性能を得ているものである。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明において、蓋体の開閉動作に連動して、保温用の貯水部に貯水されている水が炊飯用の貯水部に移動するようにしたことにより、水移動が特別な作業をすることなく行えるとともに、貯水部の水排出部を2つ設ける必要がなくなり、形状の簡素化、お手入れ性の向上をはかることができる。
【0010】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、炊飯用および保温用の貯水部は、1つの容器内を仕切り壁により仕切って形成し、容器には両貯水部への注水用の1つの注水孔と、仕切り壁よりも高い位置に設置した水計量の水位線とを有することにより、貯水部の構成がコンパクト化され、1つの注水孔に水を注水するだけで、両方の貯水部に一度に注水することができ、所定の水量を得ることができる。
【0011】
第4の発明は、特に、第3の発明において、仕切り壁の保温用の貯水部側は、蓋体の開放時において炊飯用の貯水部側への水の移動促進をはかる傾斜面としたことにより、保温用の貯水部側の残水をなくすことができる。
【0012】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、仕切り壁は保温用および炊飯用の貯水部側とも傾斜面としたことにより、両貯水部を形成する仕切り壁の厚さを薄くすることができ、樹脂成型時のヒケ防止と外観性の向上、および軽量化を行うことができる。
【0013】
第6の発明は、特に、第3〜第5のいずれか1つの発明において、仕切り壁は、容器内において炊飯用および保温用の貯水部の水が自由に移動するに十分な高さとしたことにより、炊飯用および保温用の貯水部間を水が自由に移動でき、安定した炊飯性能および保温性能を得ることができる。
【0014】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、炊飯終了後に蓋体を開放した時のみ、保温時に過熱蒸気を利用してご飯を再加熱することにより、過熱蒸気を発生させる蒸気供給手段の異常発熱を防止することができる。
【0015】
第8の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、炊飯工程において過熱蒸気を利用して炊飯を実施した場合にのみ、保温時に過熱蒸気を利用してご飯を再加熱することにより、過熱蒸気を発生させる蒸気供給手段の異常発熱を防止することができる。
【0016】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、保温時に過熱蒸気を利用してのご飯の再加熱は1回のみとしたことにより、過熱蒸気を発生させる蒸気供給手段の異常発熱を防止することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示すものである。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態における炊飯器は、上面が開口する略円筒形の本体31と、本体31に対して着脱自在に収納される鍋34と、鍋34を誘導加熱する誘導コイルなどの加熱手段35と、一端の軸支部42を中心に回動して鍋34の開口部を開閉する蓋体37と、蓋体37に設けられ炊飯工程と保温時に過熱蒸気を鍋34内に供給する蒸気供給手段47とを備えている。
【0020】
蒸気供給手段47は、蓋体37の下面に着脱自在に設けた加熱板38、加熱板38を誘導加熱する蓋加熱手段40、蓋体37に対して貯水部パッキン43nによりシールして着脱自在に設けられた蒸気筒43、およびポンプ44などを中心として構成されている。
【0021】
加熱板38は、過熱蒸気を発生するための蒸気発生部となる加熱板貯水部38aと、加熱板貯水部38a以外の部分である蒸気加熱部38bと、加熱板貯水部38aから発生した100℃以上の過熱蒸気を鍋34内に投入にするための蒸気投入部38c、および鍋パッキン39を有する。
【0022】
蒸気供給手段47を構成する蒸気筒43は、図2に詳細を示しているように、炊飯工程と保温時に使用する水を貯水するそれぞれ専用の貯水部43a、43bと、1つの容器43i内を仕切って炊飯用および保温用の貯水部43a、43bを形成した仕切り壁43cと、容器43iの上部に設けた両貯水部43a、43bへの注水用の1つの注水孔43hと、仕切り壁43cよりも高い容器位置に設置した水計量の水位線43jと、注水孔パッキン43kによりシールされ注水孔43hを覆う注水孔蓋43dとを有している。
【0023】
貯水部43a、43bは、本体31の前後方向に設置され、炊飯用の貯水部43aが蓋体37の軸支部42側となるようにしている。仕切り壁43cは、容器43i内において炊飯用および保温用の貯水部43a、43bの水が自由に乗り越えて移動するに十分な高さとしているものである。
【0024】
また、蒸気筒43は、炊飯用の貯水部43a側の容器43i底に水排出孔43eが設けられており、この水排出孔43eには水投入弁43fが水投入弁バネ43gにより下方に付勢されており、水排出孔44eのシールを行っているのである。蒸気筒43が蓋体37にセットされた際には、水投入弁43fを水投入弁バネ43gと逆方向に移動させる水投入弁開放用の突部37aが蓋体37に設けてあり、蒸気筒43の蓋体37へのセット時には水投入弁43fは開放されている。
【0025】
また、蒸気筒43の一部には蓋体37とのシールのために、蒸気筒パッキン43pが設置されており、蓋体37と蒸気筒43の嵌合の役割をするとともに、シールも兼用している。
【0026】
蒸気供給手段47を構成するポンプ44は、蒸気筒43の貯水部43a、43bの水を加熱板38に供給するため蓋体37内部に設けられている。このポンプ44と蓋体水流入孔37bは給水チューブ45で繋がれており、さらに、ポンプ44と蓋カバー水排出孔37cは給水チューブ46で繋がれ、蓋カバー水排出孔37cから加熱板38の加熱板貯水部38aへと水が供給される。
【0027】
次に、図1、図3に基づき、誘導加熱式の炊飯器の全体構成について説明する。
【0028】
本体31の開口部には上枠32が嵌着しており、本体31内部には上枠32とコイルベース33とで鍋収納部を形成している。コイルベース33は有底円筒状に形成され、コイルベース33上端部は上枠32に固定されている。コイルベース33には鍋34を誘導加熱するための加熱手段(誘導コイル)35が設置されており、鍋34を誘導加熱しているのである。また、鍋34底面には鍋温度を検知する底センサー36がセンサーバネ(図示しない)により付勢されており、炊飯および保温時の鍋温度を検知し、鍋34内の調理物が最適な温度状態になるよう、制御されているのである。
【0029】
合成樹脂製の蓋体37の下面には蓋カバー41が設置されており、蓋カバー41に設置されている一端の軸支部42を中心に上枠32の後部に一体形成されたヒンジ部材32aを介して回動自在に支持されている。
【0030】
この蓋カバー41の下面には鍋パッキン39を有する加熱板38が、蓋カバー41に1ヶ所の係止部と2ヶ所の嵌合部の3ヶ所により嵌合している。また加熱板38上方位置の蓋カバー41には加熱板38を誘導加熱するための蓋加熱手段40が設けられている。
【0031】
また、蓋体37、蓋カバー41、加熱板38には、鍋34から発生する蒸気を本体外に放出するための蒸気孔部が設けられ、この蒸気孔部には蒸気筒43の一部が位置する。
【0032】
次に、過熱蒸気が必要である理由について説明する。
【0033】
まず、炊飯を3つの工程にわけて考えてみる。炊飯を開始してから鍋34内を約60℃で維持する工程がある。この工程では米に水分を十分に浸水させる工程であるので、「浸水工程」と呼ぶ。さらに浸水工程の次の工程では鍋34内の調理物を100℃に沸騰させ、水分がなくなるまで一定時間、調理物を100℃付近で維持するための「炊き上げ工程」、最後に水が無くなってから、米を十分に糊化させるための「むらし工程」に分けることができる。
【0034】
浸水工程、炊き上げ工程では鍋34内に水がまだ十分にあるために、鍋34からの加熱で十分に調理物を加熱することが可能である。しかし、むらし工程においては、すでに鍋34内には水がなくなっており、鍋34の加熱を続けると調理物が焦げてしまう。鍋34の加熱ができないために加熱板38からの輻射熱を利用して調理物の表面から加熱を行うが、やはり加熱しすぎると調理物表面が乾燥してしまう結果となり、むらし工程では今まで、十分な加熱を行うことができなかった。
【0035】
そこで、水がすでになくなっている、むらし工程においては100℃以上の過熱蒸気を利用することで、ご飯を十分に加熱することができるのである。投入された蒸気はご飯表面に付着するのみではなく、過熱蒸気がご飯に接触することで、ご飯の糊化が促進されるのである。また加熱板38のみの加熱ではご飯表面を加熱するに過ぎないが、加熱された蒸気はご飯表面のみでなく、ご飯の隙間を通り、ご飯中層部にも影響を与えることができるのである。
【0036】
ここで、蒸気筒43の操作方法について説明する。まず蓋体37より蒸気筒43を外し、さらに注水孔蓋43dを開放する、そして蒸気筒43に水を給水した後、注水孔蓋43dを閉めて、蓋体37にセットするのである。このとき、蓋体37の蒸気筒セット部には水投入弁43fを開放するための突部37aが設けられており、蒸気筒43が蓋体37にセットされると突部37aが水投入弁43fを押し上げ水投入弁43fが開放し、水が加熱板38に給水されるようになる。
【0037】
ここで、蒸気筒43のセットする状態をさらに詳しく説明する。給水が完了した蒸気筒43は蓋体37にセットされる際、貯水部パッキン43nが蓋体37に接触し、シール性を確保した状態になって初めて、水投入弁43fが開放する寸法関係になっているのである。これを実現するためには、貯水部パッキン43nが蓋体37に完全に接触した状態では、水投入弁43fと蓋体37の水投入弁開放用の突部37aとの間には一定の隙間を確保することで実現する。
【0038】
このような寸法関係にしているのは、蒸気筒43がセットされるスピードがさまざまであり、すばやくセットした場合は、貯水部パッキン43nと蓋体37のシールするタイミングと水投入弁43fが開放するタイミングがどのような状態でも、ほとんど水はこぼれることは無いが、蒸気筒43をゆっくりとセットした場合は水投入弁43fが開放したときに、貯水部パッキン43nが蓋体37とのシールができていないと、その部分から水がこぼれ出てしまうからである。蒸気筒43のセットスピードは使用者によって様々であるため、どのような取り付け方法でも蒸気筒43の水をこぼさないようにするためには、貯水部パッキン43nと蓋体37のシールを確保してから、水投入弁43fを開放する必要があるのである。
【0039】
次いで、炊飯および保温再加熱における動作を説明する。
【0040】
水を注水された蒸気筒43を蓋体37に設置し炊飯をスタートする。炊飯が進み、予めプログラムされた炊飯工程になると、ポンプ44が動作する。ポンプ44が動作することで、炊飯用の貯水部43aに貯水された水が加熱板38の加熱板貯水部38aに供給され、炊飯のむらし工程で加熱板38を発熱させることで、蒸気発生、蒸気加熱を行い、100℃以上の過熱蒸気を調理物に放射する。
【0041】
炊飯が終了すると自動的に保温に切り替わる。保温に切り替わった時の蒸気筒43の状態は保温用の貯水部43bに仕切り壁43cの高さまで水が残った状態になっている。ここで炊飯が終了すると、使用者は炊飯が完了したご飯をかき混ぜ、食べるために蓋体37を開放する(図3)。蓋体37の動作は軸支部42を中心に回動しながら、開放するのである。このとき蒸気筒43の保温用の貯水部43bに残っていた水は蓋体37が軸支部42を中心にして90度開放すると、保温用の貯水部43bから炊飯用の貯水部43aに移動する。そして、蓋体37を閉じると保温用の貯水部43bの水はすべて炊飯用の貯水部43aに移動しているのである。
【0042】
そして、保温時間が経過し、使用者が保温してあるご飯を再加熱する際、水を再注水しなくても再加熱をスタートができ、再加熱がスタートするとポンプ44が作動し、保温用の貯水部43bから炊飯用の貯水部43aに移動した水を加熱板38に供給することで、過熱蒸気(スチーム)を利用した再加熱を行うことができるのである。
【0043】
なお、図4に示す例では、仕切り壁43cは、保温用の貯水部43b側が蓋体37の開放時において炊飯用の貯水部43a側への水の移動促進をはかる傾斜面43mとするとともに、炊飯用の貯水部43a側も傾斜面43qとし、保温用の貯水部43b側の傾斜面角度A、炊飯用の貯水部43a側の傾斜面角度Bとしている。例えば、傾斜面角度Aは蓋体37が86度開放する場合、90度−86度=4度以上の角度に設定されている。
【0044】
また、角度Aを大きくすればするほど水の移動促進がはかれるが、仕切り壁43cの根元厚さは厚くなり、蒸気筒43を樹脂部品で成形した場合、仕切り壁43cの根元側にヒケが発生し、仕切り壁43cの反対面側に凹部形状ができてしまう。このため、できる限り凹部形状を発生させないように、仕切り壁43cの傾斜面角度Aより小さい傾斜面角度Bの傾斜面43qを設けることで、仕切り壁43cの厚さを薄くしている。
【0045】
また、貯水部43a、43bは蒸気筒43に設けた場合を説明したが、貯水部自身が蓋体37に設けられており、貯水部を2ヶ所に分割し、蓋体37の開閉動作で水の移動を利用することで、同様の効果を得ることがきることは言うまでもない。
【0046】
また、加熱方式は電磁誘導加熱方式について説明したが、熱源が限定されるものではない。
【0047】
また、水投入弁43fの構成は水投入弁バネ43gによる付勢方式での開閉弁の構成で説明しているが、機械的に開閉できる弁であれば、同じ効果を得ることができる。
【0048】
また、蒸気筒43への給水方法は、蒸気筒43を蓋体37から外した状態で行い、蓋体37にセットする方法を説明したが、蒸気筒43を蓋体37にセットした状態で注水孔蓋43dを開放し給水した場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、加熱板38への水供給はポンプ44を用いた供給方法を記載したが、水の自重を利用した滴下方法など、他の方式でも同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、貯水部43a、43bと2ヶ所の貯水部の説明を行ったが、2個以上貯水部があっても、蓋体37の開閉でそれぞれの貯水部からの水移動を利用することで、同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、蓋体37は軸支部42を中心として回動状態で開閉する構成を説明したが、蓋体37の開閉方式には左右されるものではなく、蓋体37の開閉動作に連動し、水移動を利用利用すれば同様の効果を得ることができる。
【0052】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における炊飯器の炊飯フローを示すものである。炊飯器自体の構成は実施の形態1と同じであるのでその説明を省略する。
【0053】
本実施の形態における炊飯器は、保温時における過熱蒸気(スチーム)による再加熱を実施する条件を定めた点に特長がある。
【0054】
スチーム再加熱のスチーム発生は加熱板38の発熱で行うが、加熱板38に水が供給されている場合とされていない場合とで同じ様に加熱板38を発熱させると、水がない場合、加熱板38は異常発熱をしてしまう可能性がある。そのため加熱板38に水がある場合とない場合で発熱量を変化させている。ここで加熱板38の水の有無検知であるが、通常水の有無検知を実施する場合、ある程度加熱板38を発熱させ、加熱板38自身の温度を測定すれば、水の有無で温度上昇値に変化が現れるため、水の有無検知が可能である。しかし、これはある程度の水量があれば可能であるが水量が少量になった場合、水量バラツキ、加熱板38の温度検知用センサー(図示しない)バラツキを含めると、検知精度が低下する恐れがある。
【0055】
このため、水有無検知を実施して、通常再加熱かスチーム再加熱のどちらかを行うことを判断するのではなく、ある一定の条件をクリアした場合にのみ、スチーム再加熱を実施する方式を行っている。条件については以下の通りである。
【0056】
本実施の形態では、再加熱用の水は蒸気筒43の保温用の貯水部43bに貯水されている水を炊飯終了後、蓋体37の開閉により、炊飯用の貯水部43aに移動させ、スチーム再加熱用の水を確保している。
【0057】
この構成においてスチーム再加熱を実施する条件は、まず第1に、炊飯でスチーム炊飯(過熱蒸気利用)を実施しているという条件である。炊飯でスチーム再加熱をしていない場合は蒸気筒43の貯水部43a、43bに水が貯水されていないために、スチーム炊飯を行わなかったと考えられる。このため、スチーム炊飯を行われなかった場合はすべて、スチーム再加熱は実施せず、通常再加熱を行う(ステップ1、2、12〜18)。
【0058】
第2の条件として、保温工程で、再加熱をスタートするまでに蓋体37を一度でも開放していないと、スチーム再加熱は行わないとしている。これはスチーム再加熱のスチーム用の水は蓋体37が開放しないと、炊飯用の貯水部43aに移動しないため、炊飯後、蓋体37の開放がない場合は、スチーム再加熱を実施しない(ステップ6、11、18および15、17、18)。
【0059】
第3の条件として、貯水部43a、43bのうち、再加熱用の水は保温用の貯水部43bに貯水してあるのみであるので、1回目の再加熱ですでにスチーム再加熱の水は使用してしまっている。そのため、2回目以降の再加熱を実施する場合は、通常再加熱しか行わないのである(ステップ6〜10、18)。
【0060】
以上の条件でスチーム再加熱を実施するかどうかを判断している。
【0061】
炊飯器の使用方法は様々であり、炊飯時には貯水部に水を入れずに通常炊飯を実施し、保温に入ってから、炊飯用の貯水部43aに水を注水する場合や、2回目以降の再加熱を実施する場合に炊飯用の貯水部43aに注水してから再加熱を実施するなどの方法で再加熱を実施すれば、上記の3条件以外でもスチーム再加熱は可能である。しかし、使用者がどのような使用方法をしても、加熱板38の異常発熱を避けるため、スチーム再加熱実施条件を上記のようにしている。これは炊飯器の安全性を高めるためであり、使用者がどのような使用方法をしても、安全が確保されている炊飯器の提供を実現しているのである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、炊飯工程と保温時に過熱蒸気が利用可能とするとともに、水量精度の確保をはかれ、安定した炊飯性能および保温性能を得ているので、一般家庭用、業務用あるいは熱源如何にかかわらず炊飯器全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の要部拡大断面図
【図3】同炊飯器の蓋体開放時の断面図
【図4】同炊飯器の異なる例を示した要部拡大断面図
【図5】本発明の実施の形態2における炊飯器の炊飯フローを示す図
【符号の説明】
【0064】
31 本体
34 鍋
35 加熱手段
37 蓋体
43 蒸気筒
43a 炊飯用の貯水部
43b 保温用の貯水部
43c 仕切り壁
43i 容器
43J 水位線
47 蒸気供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して着脱自在に収納される鍋と、鍋を加熱する加熱手段と、鍋の開口部を開閉する蓋体と、炊飯工程と保温時に過熱蒸気を鍋内に供給する蒸気供給手段とを備え、蒸気供給手段は、炊飯工程と保温時に使用の水を貯水するそれぞれ専用の貯水部を有する炊飯器。
【請求項2】
蓋体の開閉動作に連動して、保温用の貯水部に貯水されている水が炊飯用の貯水部に移動するようにした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
炊飯用および保温用の貯水部は、1つの容器内を仕切り壁により仕切って形成し、容器には両貯水部への注水用の1つの注水孔と、仕切り壁よりも高い位置に設置した水計量の水位線とを有する請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
仕切り壁の保温用の貯水部側は、蓋体の開放時において炊飯用の貯水部側への水の移動促進をはかる傾斜面とした請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
仕切り壁は保温用および炊飯用の貯水部側とも傾斜面とした請求項3または4に記載の炊飯器。
【請求項6】
仕切り壁は、容器内において炊飯用および保温用の貯水部の水が自由に移動するに十分な高さとした請求項3〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
炊飯終了後に蓋体を開放した時のみ、保温時に過熱蒸気を利用してご飯を再加熱する請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
炊飯工程において熱蒸気を利用して炊飯を実施した場合にのみ、保温時に過熱蒸気を利用してご飯を再加熱する請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項9】
保温時に過熱蒸気を利用してのご飯の再加熱は1回のみとした請求項1〜8のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−301855(P2008−301855A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148893(P2007−148893)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】