説明

炊飯器

【課題】炊飯及び保温中の鍋内の蒸気を循環することで炊飯及び保温時のご飯の状態を改善し、蒸気循環手段へおねばの流入なく蒸気循環手段へおねばの流入なく使い勝手がよく且つ信頼性の高い炊飯器を提供する。
【解決手段】着脱自在な鍋と、上面に有底筒状の鍋収納部を有する本体と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、炊飯中に発生する蒸気を前記鍋内に循環させる蒸気循環手段を有し、前記蒸気循環手段は蒸気を過熱蒸気に過熱する蒸気過熱手段を有する炊飯器であって、前記蒸気過熱手段は記蓋内に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱蒸気を用いた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器は、炊飯器本体に対して着脱自在に装着され、上方開放部が蓋体で開閉される鍋内の蒸気をシロッコファンなどのポンプを介して循環流動させるとともに、その循環の途中で蒸気を加熱して過熱蒸気とするようになっていた。
【0003】
蒸気循環は主に炊飯動作行程の炊き上げ行程、特にむらし行程で行われるもので、これにより、米、水の加熱において不足する鍋上方からの加熱を行い、併せて乾燥をも抑止して食味を高めるようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−289117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の炊飯器にあっては、炊飯中に鍋内で発生する煮汁成分、所謂おねばが蒸気循環系に侵入して詰まることがあった。そのため、過熱蒸気の鍋内への散布ができなくなり、鍋上方からの熱供給が不足して初期の食味が得られない問題があった。
【0005】
また、おねばにより蒸気循環系が汚れる課題もあり、その除去清掃に非常に手間がかかるものであった。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解消したものであって、おねばの蒸気循環系への侵入を防止して過熱蒸気の鍋内への供給を確実とし、これより食味に優れた炊飯を可能としたものである。さらに循環径路に、異物が侵入しにくくまた、侵入した場合でも故障せず信頼性の高い炊飯器を提供する。また前記に加えポンプ動作中の異音を抑えた炊飯器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、炊飯器本体に対して着脱自在に装着され、上方開放部には開閉自在な蓋体を有する鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋内の蒸気を循環させるポンプと鍋内の蒸気を前記ポンプに供給する吸気経路と、ポンプに供給された蒸気を再び鍋内に供給する排気経路により構成された循環流動させるための蒸気循環路と、前記排気経路に設けられた流動する蒸気を加熱し過熱蒸気を得るための蒸気加熱室と蒸気加熱室を加熱する蒸気加熱手段とを具備し、前記蒸気循環路は、鍋内→吸気経路→ポンプ→排気径路→鍋内の順で蒸気を循環したものである。
【0008】
これにより、蒸気循環路へのおねばの侵入を確実に防止でき異物が侵入しにくくまた、侵入した場合でも故障せず信頼性の高く異音を抑えた炊飯器を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯器によれば、蒸気循環路へのおねばの侵入が防止されるため、必要なときに過熱蒸気を確実に鍋上方へ供給することができ、これにより、優れた食味の炊飯ができるとともに、蒸気循環路に汚れが付きにくく、メンテナンス面で有利であり、常時衛生的に維持できるとともに異物が侵入しにくくまた、侵入した場合でも故障せず信頼性の高く異音を抑えることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の炊飯器は、炊飯器本体に対して着脱自在に装着され、上方開放部には開閉自在な蓋体を有する鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋内の蒸気を循環させるポンプと鍋内の蒸気を前記ポンプに供給する吸気経路と、ポンプに供給された蒸気を再び鍋内に供給する排気経路により構成された循環流動させるための蒸気循環路と、前記排気経路に設けられた流動する蒸気を加熱し過熱蒸気を得るための蒸気加熱室と蒸気加熱室を加熱する蒸気加熱手段とを具備し、前記蒸気循環路は、鍋内→吸気経路→ポンプ→排気径路→鍋内の順で蒸気を循環したもので、これにより、蒸気循環路へのおねばの侵入を確実に防止できるものである。
【0011】
また、前記吸気径路及び排気径路の一部を一体化し、一体化部にバイパス路を設けるとともに、バイパス路に吸気径路に所定の負圧が生じた時、バイパス路を開放する弁機構からなる負圧防止装置を備えたものである。
【0012】
これにより、ポンプ吸気部に必要以上の負圧がかからなくなるため、吸気部の負圧によるポンプの故障を未然に防ぐことができるため異物が吸気部に付着しても、ポンプが故障することが無いため故障せず信頼性が向上するものである。また吸気径路及び排気径路の一部を一体化し、一体化部にバイパス路を設けることで、径路を繋ぐチューブ等が必要なくなり構成が簡単になるとともにチューブ抜け等の故障がなくなり信頼性が向上する。
【0013】
また、吸気経路の入り口部に、米粒の外形より小さな穴を形成した蒸気口キャップを設けたものである。これにより、米粒等の異物は蒸気口キャップの穴径より大きいため吸気径路に進入することは無い。
【0014】
また、蒸気加熱手段は、蓋体の鍋側に配置され、間に蒸気循環路を一部となる空間を形成する上下2枚の蓋板、および少なくとも一方の蓋板を加熱する加熱源で構成した。そして、その加熱源として電磁誘導コイルを採用する場合には、上部蓋板上に電磁誘導コイルを配置するとともに、下部蓋板を磁性材で、上部蓋板を非磁性材でそれぞれ形成する。
【0015】
これにより、磁性材製の下部蓋板が電磁誘導で発熱(加熱)されるとともに、下部蓋板程ではないが、非磁性材製の上部蓋板も電磁誘導で発熱(加熱)され、それらの間の空間を流れる蒸気を有効に加熱する。
【0016】
ポンプの駆動による蒸気循環路を介した蒸気の循環は、炊飯動作のむらし行程時に行うのが望ましい。また、ポンプは、複数のダイヤフラムより構成された循環部と回転運動を往復運動に変換しダイヤフラムを駆動するカムシャフト部とカムシャフト部に回転運動を与えるモーター部を備え前記複数のダイヤフラムは各々位相をずらして往復運動をしたものである。
【0017】
これにより、ダイヤフラムの往復運動の位相が分散されることとなりポンプの振動を軽減することができるため炊飯器の異音を抑えることができる。望ましくは、各ダイヤフラムの往復運動の位相を等間隔でずれていることである。たとえば、3つのダイヤフラムで構成されたポンプの場合各ダイヤフラムの往復運動の位相のずれを120°に設定するとポンプの振動がもっとも少なくなる。
【0018】
また、ポンプのモーター部をゴム等の防振部材により支持したものである。これにより往復運動の存在するポンプ部より回転運動であるモーター部の振動が少ないため、モーター部を保持することで振動を更に抑えることができる。
【0019】
以下本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によ
って本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1〜3において、炊飯器本体1は、金属製の保護枠胴2の下部に合成樹脂などの非磁性材からなる深皿状の保護枠3を連設して構成した有底筒状の鍋収納部4を内設し、また、これら炊飯器本体1と鍋収納部4との上方隙間はリング状の枠体5で閉じられている。
【0021】
磁性材製の鍋6は前記鍋収納部4に着脱自在に収納され、鍋加熱手段7,8で加熱されるようにしてある。
【0022】
本実施の形態において、前記鍋加熱手段7は鍋6の底部、および下部周壁に対応して保護枠3に配設した電磁誘導コイルから構成されており、鍋6が電磁誘導加熱されるようにしてある。詳しくは、鍋6が電磁誘導により自身が発熱するものであるが、便宜上、この発熱も加熱として表現している。
【0023】
また、もう一つの鍋加熱手段8は鍋6の上部周壁と対応して保護枠胴2に巻装され、外周を断熱材9で覆った電気ヒータ線で構成してあり、通電により電気ヒータ線が発熱して、保護枠胴2を加熱し、これにより同保護枠胴2からは鍋6の上部周壁へ向け輻射熱が放射されるようにしてある。
電磁誘導コイルの鍋加熱手段7から外側へ出る磁力線はフェライト10で反射され、また、遮蔽板11でさらに遮断されるようにして、磁力線の外部への漏洩を防止している。
【0024】
前記鍋6の外底面中央部に接する鍋温度センサ12からの温度信号は後述するマイコン13へ送られるようにしてある。
【0025】
そして、このマイコン13は加熱電力送出部14を介して電磁誘導コイルよりなる鍋加熱手段7へ供給する高周波電流、および鍋加熱手段8へ供給する電流を可変することで鍋6の温度を炊飯・保温時に適温になるように制御するものである。
【0026】
加熱電力送出部14はアルミやアルミダイキャストなどで形成され、かつファンモータ15の送風路に位置するヒートシンク16を有するものである。
【0027】
前記鍋6は炊飯器本体1の後方上部にヒンジ17を介して軸支された蓋体18で開閉されるようにしてある。
【0028】
図1のように、この蓋体18は合成樹脂よりなる蓋カバー19と間隔をおいて配置した上下蓋板20,21とからなる中空状の構成で、通常は炊飯器本体1の前側に設けた尾錠22でその閉じ状態が維持されるようにしてある。
【0029】
尾錠22を解錠すると、前記ヒンジ17の近傍に設けたスプリング23によって蓋体18が自動的に開くようにしてある。そして、その開蓋動作を制動するように制動手段が設けてある。
【0030】
前記蓋体18の上蓋板20はオーステナイト系ステンレスなどの非磁性金属で、下蓋板21は鉄板やフェライト系ステンレス板などの磁性材でそれぞれ形成され、それらの間の間隔は蒸気循環路24の一部をなす蒸気加熱室25に設定してある。
【0031】
蓋体18の内部であって、しかも上蓋板20の所定上方には合成樹脂などの非磁性材からなる隔壁26が存在し、この上面に蒸気加熱手段27が配置してある。
【0032】
本実施の形態の場合、前記蒸気加熱手段27はリング状の電磁誘導コイルで構成されており、これから放射される磁力線は上蓋板20をほとんどが透過して下蓋板21を誘導加熱(発熱)する。前記磁力線は上蓋板20を透過するが全てが透過するのではなく、やはり同上蓋板20を誘導加熱(発熱)する。
【0033】
したがって、前記蒸気加熱室25が高温となり、その中を流れる蒸気を加熱して100℃以上の、いわゆる、過熱蒸気とするようになっている。
【0034】
蒸気加熱手段27の一部と隔壁26とに挟まれるようにして温度ヒューズ28が設けられており、また、蒸気加熱手段27の上方には反射板29があり、電磁誘導コイルからなる蒸気加熱手段27の電磁波が外部に漏れ出すのを防止している。
【0035】
下蓋板21と鍋6のフランジ部6aとの間はパッキン30が介在され、鍋6の内部を水密にシールしており、さらに、前記上下蓋板20,21間の間隔はパッキン31で環状にシール区画されて、結果的に蒸気加熱室25を形成しているものである。
【0036】
32は蓋センサで、センサバネ33による押圧で下蓋板21に当接してその温度を検知する。
【0037】
先のマイコン13は蓋体18に内設されており、また、蓋カバー19には、操作部34と表示部35を構成する操作基板36が基板カバー37に覆われて設置されている。
【0038】
操作基板36上の液晶38は炊飯器の設定状態や動作状態を表示する。
【0039】
また、蓋カバー19はその一部が透明な樹脂で構成されており、その表面はフィルム39で一体に覆われており、部分的にフィルム39のみの部分からなるエンボス部40を有している。
【0040】
エンボス部40は上下に撓み、キートップ41、およびタクトスイッチ42で操作スイッチを構成している。
【0041】
基板カバーパッキン43は基板カバー37の外周部と蓋カバー19に設けた基板カバーシールリブ44で挟持され、基板カバー37と蓋カバー19の間を水密にシールし、万が一、蓋体18内に蒸気が侵入しても操作基板36が結露しないようにしてある。
【0042】
ところで、前記蓋体18の一部には着脱自在な排出筒45を有する蒸気排出路46が上下に貫通して設けられている。
【0043】
排出筒45は水平に対して傾斜したガイド部47にて移動自在に保持された球状のマグネットからなるおねば検出体48が配備され、また、このマグネットからなるおねば検出体48により開閉されるリードスイッチ49が蒸気排出路46の外側で、蓋体18の内部に位置して設けてある。
【0044】
前記おねば検出体48は、ふきぼれ検知用としてだけではなく、蓋体18の開閉検知手段を構成するものである。
【0045】
蒸気排出路46はパッキン50を介して蓋体18の内部とは隔離シールされているものである。
【0046】
前記蓋体18の内部にはダイヤフラム型などのポンプ51が装備されている。そして、
その吸引側に接続された吸引管52を介して蒸気径路53に接続される。
また、ポンプ51の排気側に接続され吐出管86を介して蒸気径路53に接続される。蒸気径路53は、蒸気径路上54、蒸気径路下55の2部品よりなり両者が溶着され吸気径路A56、排気径路A57の独立した2つの径路が形成される。
前記蒸気径路下の吸気径路A56には、吸気穴A58と還流リブ59に囲まれたΦ1.5の還流穴60が設けられ、還流穴60を塞ぐようにΦ3のステンレス製の球体であるボール弁61が設けられている。排気径路57Aには排気穴A62が設けられ、吸気経路A56にはゴムなどの接続パッキン63が連接されている。
【0047】
また、上蓋板20にゴム等で成型された吸気パッキン64を勘合させ、吸気パッキン64の穴部に、ステンレスでできた蒸気口キャップ65を勘合させる。蒸気口キャップ65には、前記吸気パッキン64の勘合部先端に米粒の外形より小さな吸気穴B66と外周部に排気穴B67を複数形成している。
蓋体18を組み立てたときを蒸気口キャップ65の吸気穴B66の外周を吸気パッキン63が当接し吸気径路A56と接続される。隔壁26には、蒸気径路パッキン68が勘着されており、上蓋板20に侠持されるとともに外周部全周を前記上蓋板20とシールされ上蓋板と蒸気径路パッキン68の間で排気径路B69を構成している。
【0048】
また蒸気径路パッキン68の下面は、蒸気口キャップ65及び上蓋板20に設けられた排気口C70の外周をシールするとともに、上面は前記隔壁26を貫通し蒸気通路下55の排気穴A62及び還流穴60の外周をシールし空間を形成する。従って、蒸気径路パッキン68によって、排気径路A57及び排気径路B69が接続され蒸気加熱室25とも接続されることとなる。また還流穴60の上面は吸気径路A56、下面は排気径路B69と面しバイパス路が形成される。下蓋板21には前記吸気パッキン64のシール面内部に蒸気吸気穴21bが設けられ鍋6の上面空間と吸気径路と接続されている。
【0049】
下蓋板21の蒸気加熱室25に複数の蒸気放出口21aが設けられている。つまり、先の蒸気循環路24は、鍋6の上層部→吸気パッキン64の空間→蒸気口キャップ65の吸気穴B66→吸気径路A56→吸引管52→ポンプ51→吐出管86→排気径路A57→蒸気通路パッキン68→蒸気口キャップ65の排気穴B67→排気径路B69→加熱室25→蒸気放出口21a→鍋6の上層部の経路で構成されるものである。72は、ゴム等でできた防振部材でポンプ51のモーター部73を支持しており、この防振部材72を介してポンプ51を蓋体18に取り付ける。
【0050】
74は同心円状で等角に複数のダイヤフラムを成型したダイヤフラム弁で、外周をポンプケースA75及びポンプケースB76にて挟持しダイヤフラム室77を形成する。本実施例では3個のダイヤフラムを備えている。78はダイヤフラムの底部に取り付けられた台座でカムシャフト79と摺動可能な状態で連結されている。
【0051】
80はモーター軸で前記カムシャフト79を固定している。81はアンブレラ弁でダイヤフラム室に各々1つ設けられポンプケースA75に取り付けられている。82は吸気穴でアンブレラ弁で閉止される位置にポンプケースA75に形成されている。83はポンプ吸気口で吸引管52と接続される。84は排出弁でダイヤフラム弁74と一体に成型されている。85はポンプ吐出口で、吐出管86と接続される。
【0052】
また、排出筒45の上方開放部は蒸気口59をもつカバー60で覆われている。
【0053】
次に上記構成において動作を説明する。
【0054】
蓋体18を開け、炊飯を行う米とその米量に対応する水を鍋6に入れ、鍋収納部4の所
定の状態に内挿する。
【0055】
蓋体18の開放状態では、おねば検出体48は重力によってリードスイッチ49から遠ざかり、その接点が開放となる。これにより蓋体18の開閉が検知可能となる。
【0056】
引き続き、操作部34の炊飯開始スイッチ(図示せず)を使用者が操作すると、マイコン13が炊飯開始スイッチよりの入力を受け、炊飯工程が実施される。
【0057】
このとき液晶38に動作状態が表示され、その透明な樹脂を透過して外部より目視可能にすることで、使用者に炊飯器の動作状態を知らせる。
【0058】
鍋温度センサ12は鍋6の底面の温度を検知し、マイコン13へと信号を送る。
【0059】
信号を受けてマイコン13は浸水、炊き上げ、蒸らしの各工程に大分された炊飯工程のそれぞれにおいて、鍋6の内部の水と米の状態が適正値として設定された温度に所定時間維持されるよう、加熱電力送出部14を介して通電される鍋加熱手段7,8や蒸気加熱手段27の通電量を制御する。
【0060】
誘導加熱方式は、各誘導コイルに通電した高周波電流から発生する高周波磁界が被加熱金属を通過する際に誘導加熱を引き起こし発熱する。
【0061】
ここで、加熱電力送出部14は高周波電流を各誘導コイルへ供給する際、電気抵抗ロスおよび高周波発生時のスイッチングロスで自己発熱する。
【0062】
加熱電力送出部14が自己発熱で許容温度以上に高温となると、破壊する場合があるので、アルミやアルミダイキャストなどでできたヒートシンク16を通じで放熱する。
【0063】
ファンモータ15でヒートシンク16は冷却され、効率的に加熱電力送出部14の冷却が行われる。
【0064】
鍋加熱手段7は鍋6を誘導加熱(発熱)させる。ここで、フェライト10は鍋加熱手段7から発生する磁界を効率よく鍋6側へ集める。
【0065】
これにより、鍋6はその周辺に高密度の磁界が発生するところから、より高効率に加熱(発熱)されることとなる。
【0066】
また、遮蔽板11は鍋加熱手段7からの高周波磁界が外部に漏れ出すのを防止し、周囲の機器に影響を及ぼさないような工夫がなされている。
【0067】
蒸気加熱手段27は加熱電力送出部14より供給される電流で上、下蓋板20,21を同時に発熱させる。
【0068】
ここで上部蓋板20は前述のとおり非磁性金属製で、かつ0.4mm以下の薄板で構成されるため、高周波磁界を透過しつつ誘導加熱で自己発熱する。
【0069】
上蓋体20を透過した高周波磁界は磁性金属でできた下蓋板21を誘導加熱し、これにより、上下蓋板20,21間の蒸気通路25も加熱されることとなる。
【0070】
なお、上下蓋板20,21の発熱比は蒸気加熱手段27からの距離と、材料物性などにて任意に設定が可能である。また、蒸気加熱手段27の上方の反射板29が高周波磁界の
外部の漏出を防止し、マイコン13や周囲の機器に影響を及ぼさないような工夫がなされている。
【0071】
一方の鍋加熱手段9は加熱電力送出部14より供給される電流で自己発熱し、保護枠胴2を加熱する。保護枠胴2が熱せられることによる輻射熱、および対流熱で鍋6の側面を加熱する。
【0072】
続いて、各工程での炊飯器の動作を説明する。まず、浸水工程では米の糊化が開始しない温度まで米と水の温度が上昇するように鍋加熱手段8を通電し鍋6を発熱させる。
【0073】
そして、所定の温度で所定時間米を浸水し、米全体に十分な吸水を促す。浸水工程において、鍋6の米全体を目的の温度で均一に維持し、吸水条件を均一に保つ。
【0074】
次に、炊き上げ工程では、鍋加熱手段7で鍋6の底面を誘導加熱(発熱)するとともに、蒸気加熱手段27では上下蓋板20,21を加熱し、鍋加熱手段8では鍋6の側面を加熱して、この鍋6の全体を包み込むように加熱する。
【0075】
炊き上げ工程においては、強火の加熱で一気に炊き上げ、米の芯まで熱を伝えることが重要である。誘導加熱方式だと熱板によって鍋を加熱する方式に比べ高火力で鍋を加熱することができ、よりおいしいごはんが炊き上がる。
【0076】
そして、この時発生する煮汁であるおねばも排出筒45へと流れ込むが、大量にそのおねばが流れ込む前にマグネットからなるおねば検出体48が押し上げられ、リードスイッチ49を開く。
【0077】
これと連動して加熱電力送出部14を介して鍋加熱手段8などの火力を低下することでふきこぼれを抑制でき、水加減に応じて自動的にふきこぼれ直前まで強火での加熱を可能にし、よりおいしいごはんが炊ける。
この時、蒸気循環路24の吸気穴21b及び排気穴21a、鍋6内の同一高さに位置しているため、両穴間にかかる圧力は等しいものとなる。したがって吸気穴21b及び排気穴21aに圧力差が発生しないため、蒸気循環路24へオネバが侵入することはない。
【0078】
さらに、ポンプ51はダイヤフラムポンプ等の容積型のポンプを用いることにより、ポンプ51内に弁によりオネバの進入が防止されるため、さらに循環径路のおねば進入は問題とはならない。
【0079】
鍋温度センサ12がおよそ130℃を検知すると、鍋6内の水はそのほとんどを米に吸収されるもしくは蒸発し、ごはんとして炊きあがった状態となる。
【0080】
そして、次の工程であるむらし工程へと移行する。
【0081】
そこで、むらし工程では、鍋加熱手段7が鍋6の底面の飯が乾燥したりこげたりしない程度にその底面を加熱する。
【0082】
そして、鍋加熱手段7の通電量低下に伴い、ファンモータ15はその回転数を低下させるか停止する。
併せて、ポンプ51を駆動させると、モータ−軸80が回転し、カムシャフト79が台座78との間で摺動回転することで、台座78が揺動運動しダイヤフラム74Aの底部を往復運動する。ダイヤフラム74Aの底部が往復運動によってダイヤフラム室77の体積が変化する。ダイヤフラム室77の体積が増加するときはダイヤフラム室が負圧となり、蒸
気はポンプ吸気口83より入り、アンブレラ弁81が開き吸気穴82を通過してダイヤフラム室77に吸気される。
【0083】
また、ダイヤフラム室77の体積が減少するときは、ダイヤフラム室77が正圧となるため、アンブレラ弁81が閉じ、ダイヤフラム室77にある蒸気が排出弁84を経てポンプ吐出口85より押し出される。以上のような工程でポンプ51が動作することで蒸気が循環される。このとき、ダイヤフラム74Aはカムシャフト79の回転で往復運動するため、各ダイヤフラムは互いに位相がずれ往復運動を行う。従って同心円状で等角に複数のダイヤフラム74Aを配設することにより、位相のずれが均等となりポンプ51の振動が少なくなる。
【0084】
上記のようにして鍋6の上層部→吸気パッキン64の空間→蒸気口キャップ65の吸気穴B66→吸気径路A56→吸引管52→ポンプ51→吐出管83→排気径路A58→気通路パッキン68→蒸気口キャップ65の排気穴B67→排気径路B69→蒸気加熱室25→蒸気放出口21a→鍋6の上層部と循環する。ポンプ51動作時は、鍋6内にオネバが存在することがないため、蒸気循環路24、特に、ポンプ51がおねばで詰まり、蒸気循環を阻害するようなことはない。
【0085】
蒸気加熱手段27により加熱されている先の蒸気通路25を蒸気が流動するとき、同蒸気はさらに加熱されて過熱蒸気化され、鍋6の内部上層部を効果的に加熱し加湿するものである。
【0086】
さらに、鍋6内の蒸気の一部は排出筒45から蒸気口59に至り、その後外部へ排出されるものである。
【0087】
むらし工程では飯が芯までの糊化するように飯が乾燥したりこげたりしない温度で鍋6全体を高温の状態に保つことが大切であるが、本実施の形態のように100℃以上の高温蒸気を飯に供給することにより、第1に、蒸気が供給されるがゆえに飯の乾燥を伴わない、しかも、第2に100℃以下の蒸気供給では飯粒表面に水が付着するに留まるが、100℃以上の蒸気であるので、米澱粉の糊化を進行させるのに必要なエネルギーをもち、糊化を促進し、炊飯性能を向上させることができる。
【0088】
さらには、上、下蓋板20,21で蒸気を挟み込むように加熱することで、蒸気の温度を瞬時に、かつ効率よく高温蒸気とすることができるので、よりおいしいごはんを炊くことができる。
【0089】
また、下蓋板21は100℃以上の高温となっているため、炊飯後に加熱板に露付き等が発生することもない。なお、防振部材はゴム等の弾性体の他、発泡した弾性体であっても同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように本発明の炊飯器は、蒸気循環路へのおねばの侵入が防止されるため、必要なときに過熱蒸気を確実に鍋上方へ供給することができ、これにより、優れた食味の炊飯ができるとともに、蒸気循環路に汚れが付きにくく、メンテナンス面で有利であり、常時衛生的に維持でき、一般家庭用はもとより業務用炊飯装置への利用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態1を示す炊飯器の全体断面図
【図2】同炊飯器の蒸気循環系及び過熱蒸気発生部の断面図
【図3】同炊飯器の蒸気循環系及び過熱蒸気発生部の斜視図
【図4】同炊飯器の蒸気循環系及び過熱蒸気発生部の斜視図
【図5】同炊飯器のポンプの断面図
【符号の説明】
【0092】
1 炊飯器本体
6 鍋
7,8 鍋加熱手段
18 蓋体
20 上蓋板
21 下蓋板
24 蒸気循環路
25 蒸気加熱室
27 蒸気加熱手段
51 ポンプ
52 吸引管
56 吸気径路A
57 排気径路A
61 ボール弁
60 還流穴
65 蒸気口キャップ
69 排気径路B
72 防振部材
73 モーター部
74 ダイヤフラム弁
79 カムシャフト
86 吐出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体に対して着脱自在に装着され、上方開放部には開閉自在な蓋体を有する鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋内の蒸気を循環させるポンプと鍋内の蒸気を前記ポンプに供給する吸気経路と、ポンプに供給された蒸気を再び鍋内に供給する排気経路により構成された循環流動させるための蒸気循環路と、前記排気経路に設けられた流動する蒸気を加熱し過熱蒸気を得るための蒸気加熱室と蒸気加熱室を加熱する蒸気加熱手段とを具備し、前記蒸気循環路は、鍋内→吸気経路→ポンプ→排気径路→鍋内の順で蒸気を循環した炊飯器。
【請求項2】
前記吸気径路及び排気径路の一部を一体化し、一体化部にバイパス路を設けるとともに、バイパス路に吸気径路に所定の負圧が生じた時、バイパス路を開放する弁機構からなる負圧防止装置を備えた請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
吸気通路の入り口部に、米粒の外形より小さな穴を形成した蒸気口キャップを設けた請求項1記載の炊飯器。
【請求項4】
蓋体の鍋側に配置され、間に蒸気循環路を一部となる空間を形成する上下2枚の蓋板、および少なくとも一方の蓋板を加熱する加熱源で蒸気加熱室を構成した請求項1記載の炊飯器。
【請求項5】
上部蓋板上に加熱源となる電磁誘導コイルを配置するとともに、下蓋板を磁性材で、上蓋板を非磁性材でそれぞれ形成した請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
炊飯動作のむらし行程時にポンプを駆動して蒸気循環路を介して鍋内の蒸気を循環させるようにした請求項1記載の炊飯器。
【請求項7】
ポンプは、複数のダイヤフラムより構成された循環部と回転運動を往復運動に変換しダイヤフラムを駆動するカムシャフト部とカムシャフト部に回転運動を与えるモーター部を備え前記複数のダイヤフラムは各々位相をずらして往復運動をする請求項1記載の炊飯器。
【請求項8】
ポンプのモーター部をゴム等の防振部材により支持した請求項7記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213964(P2010−213964A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65760(P2009−65760)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】