説明

炊飯器

【課題】簡易な構成で水槽内の水位と水温を検知することのできる炊飯器を得る。
【解決手段】被加熱物が投入される炊飯釜2と、炊飯釜2が着脱自在に収容される本体5と、炊飯釜2を加熱する加熱コイル10と、加熱中に発生する炊飯釜2内の蒸気を案内する蒸気導管6と、蒸気導管6により案内された蒸気を、内部に溜めた水により復水する水槽7と、水槽7から放射される赤外線を検知する単眼赤外線センサ8と、単眼赤外線センサ8の出力に基づいて、水槽7内の水位を判定する水位判定部96と、単眼赤外線センサ8の出力に基づいて、水槽7内の水温を判定する温度判定部95と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯中に発生する蒸気を回収する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気を回収する炊飯器において、「水槽7の側面側には、下限水位検知部10、初期満水検知部11、満水検知部12及び温度検出部13がそれぞれ配置」されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−178380号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の炊飯器においては、水槽内の水位を検知する手段として3つの水位検知部を設け、水槽内の水温を検知する水温検知部を別途設けていた。このため、構造が複雑となりやすく、また、コストも高くなる。このため、簡易な構成で水位と水温を検知することが望まれていた。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、簡易な構成で水槽内の水位と水温を検知することのできる炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る炊飯器は、被加熱物が投入される内鍋と、前記内鍋が着脱自在に収容される本体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、加熱中に発生する前記内鍋内の蒸気を案内する蒸気導管と、前記蒸気導管により案内された蒸気を、内部に溜めた水により復水する水槽と、前記水槽から放射される赤外線を検知する赤外線検知手段と、前記赤外線検知手段の出力に基づいて、前記水槽内の水位を判定する水位判定手段と、前記赤外線検知手段の出力に基づいて、前記水槽内の水温を判定する水温判定手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、水槽から放射される赤外線を検知する赤外線検知手段を備え、この赤外線検知手段の出力に基づいて、水槽内の水位と水槽内の水温とを判定する。1つの赤外線検知手段を用いて水位と水温とを検出できるので、炊飯器の構成を簡易にすることができ、低コスト化にも資する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す側面模式図である。
【図2】実施の形態1に係る炊飯器の機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る単眼赤外線センサによる温度検出処理を説明する図である。
【図4】実施の形態1に係る炊飯器の制御動作を説明する図である。
【図5】実施の形態2に係る炊飯器の構成を示す側面模式図である。
【図6】実施の形態2に係る炊飯器の機能ブロック図である。
【図7】実施の形態2に係る受光素子アレイの斜視図である。
【図8】実施の形態2に係るアレイ状赤外線センサによる温度検出処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す側面模式図である。
炊飯器1は、本体5と、本体5内部の炊飯釜収納部5aに着脱可能に収容された炊飯釜2と、本体5の上部開口を開閉可能な蓋体3と、蓋体3に着脱可能に取り付けられた内蓋4とを備える。内蓋4は、蓋体3が本体5の上部開口部を覆った際に、炊飯釜2の上面開口部を塞いでその内部を密閉状態にする。本体5の底部には炊飯釜2を加熱する加熱コイル10が設けられている。また、蓋体3には、一端が内蓋4に着脱可能に装着された蒸気導管6が配設されている。蒸気導管6は、内蓋4に設けられた小穴(図示せず)に接続されており、炊飯釜2内で生じた蒸気を水槽7に導く。更に、本体5には炊飯釜収納部5aとは区画された領域である水槽収納部5bが形成されており、この水槽収納部5bには水槽7が着脱可能に設置される。水槽7の近傍には、水槽7から放射される赤外線を受光可能な単眼赤外線センサ8が設けられている。
【0009】
水槽7は、例えば熱伝導が良くプラスチックなどの絶縁物で構成され、内部に水を収容可能な水槽本体7aと、水槽本体7aの上面開口部を着脱可能に覆う水槽蓋7bと、水槽本体7a内に下端が挿入されていて水槽蓋7bを貫通する蒸気導入管7cとを備えている。この蒸気導入管7cの上端は、蓋体3に配設された蒸気導管6の他端と着脱可能に連結される。つまり、蓋体3が開けられたとき蒸気導管6が蒸気導入管7cから離れ、蓋体3が閉じられたときに蒸気導管6と蒸気導入管7cとが気密状態で連結される。蒸気導管6と蒸気導入管7cは、炊飯中に発生する炊飯釜2内の蒸気を水槽7内に導くためのものであり、水槽7は、蒸気導入管7cに流入した蒸気を、予め溜められた水で凝縮させて回収水として貯留する。
【0010】
水槽7の側面には、下限水位L1を示す下限水位目盛14と、初期満水L2を示す初期満水目盛15とが印刷あるいは刻印などにより設けられている。下限水位L1とは、蒸気を水で凝縮させるのに必要となる最低限の水位である。初期満水L2とは、下限水位L1よりも上側の水位であって、1回の炊飯時に発生する蒸気をすべて凝縮して回収したとしても水槽7から水が溢れないようにするための上限の水位である。また、水槽7の側面には目盛として刻まれてはいないが、水槽7の水が溢れないための限界の水位として、初期満水L2よりも上側に満水位L3を想定している。
【0011】
本体5の水槽7の側面近傍には、回転装置12を介して単眼赤外線センサ8が設けられている。単眼赤外線センサ8は、集光エリアT内の赤外線を受光し、受光した赤外線に対応する信号を出力する機能を持ち、本発明の赤外線検知手段に相当する。
回転装置12は、モータと、このモータにより回転する回転軸とを備えている。回転装置12は、回転軸を介して取り付けられた単眼赤外線センサ8を回転させ、単眼赤外線センサ8の集光エリアTを複数段階に上下方向に変化させる。本実施の形態1では集光エリアTを4段階に変化させるものとし、各集光エリアをそれぞれ集光エリアT1〜T4と区別して称する。
【0012】
この単眼赤外線センサ8の設置位置、単眼赤外線センサ8の赤外線集光視野角、回転装置12による1段階あたりの回転角度、及び回転装置12による回転段階数は、任意に設定することができる。ただし、単眼赤外線センサ8を回転して得られる全集光エリア(本実施の形態1では集光エリアT1〜T4)の範囲内に、下限水位L1〜満水位L3の領域が包含されるようにする必要がある。
また、単眼赤外線センサ8の設置高さは、下限水位L1から満水位L3までの高さの範囲内とすることが望ましい。このようにすることで、単眼赤外線センサ8を回転させる角度を最小限に抑えることができ、検知対象である水槽7の表面と単眼赤外線センサ8とを結ぶ直線距離も短くできることから、赤外線の検知精度が高まる。
【0013】
フィルタ11は、単眼赤外線センサ8の集光部前面に設けられた赤外線波長領域を透過するシリコン材などで構成されるフィルタで、本体5の水槽収納部5b側に配設されている。
【0014】
本体5の水槽収納部5bの底面であって水槽7が配置される位置には、水槽検知部16が配置されている。水槽検知部16は、水槽収納部5b内に水槽7が設置されたときにONする例えばタクトスイッチからなる。水槽検知部16の出力信号は、制御部9に入力される。
【0015】
制御部9は、例えばマイコンからなり、単眼赤外線センサ8から出力される信号を取得して水槽7内の水位及び温度を検出するとともに、操作表示部13からの操作入力に基づいて加熱コイル10に通電する高周波電流を制御する。また、制御部9は、ユーザに報知すべき情報を操作表示部13に表示させる。
【0016】
次に、水槽7の温度と水位の検出に関連する構成について詳細に説明する。図2は、実施の形態1に係る炊飯器1の機能ブロック図である。
【0017】
単眼赤外線センサ8は、赤外線を集光する集光レンズ86、赤外線検出素子81、及び赤外線検出素子81からの出力信号を所定の増幅度で増幅する増幅部82を備える。また、サーミスタからなる基準温度素子85、基準温度素子85の出力信号を所定の増幅度で増幅する増幅部84、及び増幅部82の増幅信号と増幅部84の増幅信号との差分を増幅する差動増幅部83を備える。
【0018】
(制御手段、水位判定手段、水温判定手段)
制御部9は、回転装置12に回転指示の信号を出力する信号出力部91と、A/D変換部92と、温度変換部93と、記憶部94と、温度判定部95と、水位判定部96と、加熱制御部97と、表示制御部98とを備える。
信号出力部91は、所定のタイミングで回転装置12に回転指示の信号を出力し、単眼赤外線センサ8を段階的に上下方向に回転させる。
A/D変換部92は、差動増幅部83から出力された差動信号(電圧)をデジタル信号に変換する。温度変換部93は、A/D変換部92から出力されたデジタル信号を温度データに変換し、単眼赤外線センサ8の回転後の集光エリア毎に記憶部94に格納する。
【0019】
温度判定部95は、本発明の水温判定手段に相当し、記憶部94に格納された単眼赤外線センサ8の集光エリア毎の温度データに基づいて、水槽7内の温度を判定する(詳細は後述する)。
水位判定部96は、本発明の水位判定手段に相当し、記憶部94に格納された単眼赤外線センサ8の集光エリア毎の温度データに基づいて、水槽7内の水位を判定する(詳細は後述する)。
加熱制御部97は、水槽7内の温度及び水位と操作表示部13を用いてユーザにより入力設定された運転条件とに基づいて、加熱コイル10に通電する高周波電流を制御することにより、炊飯釜2を加熱する火力を制御する。
表示制御部98は、炊飯器1の運転条件、炊飯釜2の加熱状態、及びユーザに報知すべき情報などを操作表示部13に表示させる。加熱制御部97と表示制御部98とが、本発明の制御手段に相当する。
【0020】
(温度検出処理)
図3は実施の形態1に係る単眼赤外線センサ8による温度検出処理を説明する図であり、図3(a)は単眼赤外線センサ8と水槽7の要部を示す模式図、図3(b)は集光エリア別の検出温度の例を示している。以下、図2と図3を参照して温度検出処理を説明する。
制御部9は、回転装置12に動作信号を出力し、単眼赤外線センサ8を初期位置に配置させる。ここで、単眼赤外線センサ8の初期の集光エリアTは、例えば図3(a)の集光エリアT1であるとする。赤外線検出素子81は、集光エリアT1において水槽7の側面から放射された赤外線を集光レンズ86によって集光する。これにより、赤外線検出素子81から電圧が出力される。そして、赤外線検出素子81の出力電圧が増幅部82へ入力される。一方、基準温度素子85は周囲温度を検出し、その出力電圧が増幅部84へと入力される。
【0021】
次に、増幅部82及び増幅部84で増幅されたそれぞれの出力電圧は、差動増幅部83で比較増幅される。そして、差動増幅部83により比較増幅された出力電圧は、A/D変換部92に入力されてデジタル信号となる。続けて、このデジタル信号が温度変換部93によって温度データに変換され、記憶部94に格納される。
【0022】
続けて、単眼赤外線センサ8の集光エリアが集光エリアT2となるように信号出力部91が回転装置12に信号を出力して単眼赤外線センサ8を回転させる。そして、上述したのと同様にして回転後に単眼赤外線センサ8が検知した温度データを記憶部94に更に格納する。集光エリアT3、集光エリアT4の温度データも同様にして記憶部94に格納する。
この集光エリアT1〜集光エリアT4の温度検知を複数回繰り返し、検知した温度データをそれぞれ記憶部94に格納する。そして、集光エリア毎に温度データの平均値を算出する。なお、集光エリア毎に温度データの検知を複数回繰り返して平均値を算出するのは、検出値のばらつきを低減するためである。
【0023】
集光エリアT1〜集光エリアT4毎に温度データの平均値を算出すると、例えば図3(b)に示すように、水槽7内の水面や水Wの温度に応じて検出温度に差異が生じる。この集光エリアT1〜集光エリアT4の検出温度と、集光エリア間の検出温度の差異に基づいて、後述するようにして水槽7の水温と水位とを判定する。
【0024】
(炊飯器の動作)
まず、本実施の形態1に係る炊飯器1の動作概要を説明する。
本実施の形態1に係る炊飯器1は、被加熱物(米rや水W等)を収容した炊飯釜2を、加熱コイル10で加熱することで被加熱物を炊きあげるものである。
具体的には、ユーザが水槽7に水を入れ、米r及び水Wを入れた炊飯釜2を本体5の炊飯釜収容部5b内に収容し、蓋体3を閉め、図示しない操作スイッチ等の操作手段を操作して炊飯開始を指示する。この炊飯開始の指示により、炊飯器1は炊飯動作を開始する。水槽7に入れる水は、下限水位目盛14から初期満水目盛15までの範囲の水位となるようにする。炊飯動作を開始すると、制御部9によって制御された加熱コイル10が、炊飯釜2を介して米rや水Wを加熱する。加熱によって炊飯釜2内に生じた蒸気は、蒸気導管6、蒸気導入管7cを経由して水槽本体7a内に入り、水槽7内に溜められた冷却水によって凝縮され、水として水槽7内に貯留される。
【0025】
次に、前記のように構成された炊飯器1の制御動作の詳細について図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態1に係る炊飯器1の制御動作を示すフローチャートである。
制御部9は、操作表示部13の炊飯スイッチのON操作を検知すると、水槽検知部16により水槽7が検知されているかどうかを判定する(S1)。水槽7の設置が検知されなかったときは、例えば操作表示部13にメッセージを表示したりブザー音を発するなどして水槽7を設置すべきことを報知する(S10)。
【0026】
水槽7が設置されているときは、単眼赤外線センサ8により検知された水槽7の温度が、所定の開始温度(本発明の第1温度)以上か否か判定する(S2)。ここで開始温度とは、加熱コイル10による加熱を開始するか否かを判断するための閾値として設定された所定の温度である。
詳細には、まず、単眼赤外線センサ8を回転させて集光エリア毎に算出した温度データの平均値を比較し、隣り合う集光エリアよりも所定値以上温度が低い集光エリアがあれば、その集光エリアの温度を水槽7の水温であると判断する。炊飯開始前は通常、水槽7内には常温の水が入っており、この常温の水は空気温度よりも低い。このため、隣り合う集光エリアとの温度差に基づいて、水槽7内の水温を判断することができる。そして、水槽7の水温として判断した温度と、所定の開始温度とを比較する。
水槽7の温度が所定の開始温度以上である場合には、例えば操作表示部13にメッセージを表示したりブザー音を発するなどして水槽7の水交換をすべきことを報知する(S11)。
【0027】
水槽7の温度が所定の開始温度より低い場合は、単眼赤外線センサ8により検知された水位が初期満水L2に達しているか否かを判定する(S3)。ステップS2で隣り合う集光エリアよりも所定値以上温度が低い集光エリアを検出するが、この所定値以上温度が低い集光エリア内に水Wの水面があると判断し、この集光エリアと初期満水L2との上下関係を判定する。水槽7内の水Wとその水面より上にある空気との間には温度差があるため、この温度差が生じている位置が水槽7内の水位であると判断できる。
水位が初期満水L2に達している場合には、例えば操作表示部13にメッセージを表示したりブザー音を発するなどして水槽7の水位調整、すなわち水槽7内の水を排出すべきことを報知する(S12)。
【0028】
水位が初期満水L2に達していない場合には、単眼赤外線センサ8により検知された水位が下限水位L1に達しているか否か判定する(S4)。水位の判断方法はステップS3で上述した通りである。水位が下限水位L1に達していない場合には、例えば操作表示部13にメッセージを表示したりブザー音を発するなどして水槽7に水補給すべきことを報知する(S13)。
水位が下限水位L1に達している場合には、炊飯スイッチのON操作に基づく炊飯動作を開始する(S5)。
すなわち、水槽7が設置されていることが検知され、かつ水槽7内の水位が下限水位L1以上で初期満水L2未満のときに、炊飯を開始する。
【0029】
ステップS10〜S13のいずれかで報知を行ったときは、炊飯スイッチのON操作に基づく炊飯開始指示を無効にし(S16)、動作を終了する。炊飯器1の報知を受けてユーザが対処し、再び炊飯スイッチのON操作がなされると、制御部9は、再び水槽7が設置されているかどうかの判定を行う(S1)。以降の処理は前述の通りである。
【0030】
ステップS1における水槽7の設置の有無の判定は、水槽7が設置されることなく炊飯が行われた場合に発生する蒸気導管6からの蒸気放出を防止するためである。蒸気が放出された場合、炊飯器1内への結露や、火傷のおそれがあるので、水槽7の設置が検知されなかったとき、ステップS11において水槽7の設置を報知するようにしている。
【0031】
ステップS2における水槽7の温度の判定は、水槽7内に案内された蒸気を効率よく冷やして凝縮させるようにするためである。水槽7の温度が所定の開始温度より高い場合、すなわち水槽7内の水温が高いと、蒸気凝縮率が低下し蒸気を十分に回収することができず、一部蒸気が水槽7外部へ漏れてしまう。
また、ステップS2における水槽7の温度の判定は、安全性を高めることをも目的としている。水槽7の所定の開始温度以上の場合、すなわち水槽7に入っている水の温度が所定の開始温度以上の場合には、炊飯を開始して水槽7に高温の蒸気が導入されると、この高温の蒸気により更に水温が高くなってユーザが触れると非常に熱く感じるおそれがある。
これらの事態を回避するために、ステップS11において水槽7の水交換を報知するようにしている。
【0032】
ステップS4における下限水位L1の判定は、水槽7内の水Wが下限水位L1より低いとき、蒸気回収時に水温が上昇してしまい蒸気凝縮率が低下し蒸気を十分に回収することができず、一部蒸気が水槽7外部へ漏れてしまうのを防止するためである。よって、ステップS13において水の補給を報知するようにしている。
【0033】
炊飯を開始した後は(S5)、単眼赤外線センサ8により検知された水位が満水位L3に達したか否かを判定し(S6)、満水位L3に達していないときは炊飯が終了したかどうかを判定する(S7)。
ここで、ステップS6の炊飯中の水位判定について説明する。炊飯中は、加熱により炊飯釜2内に生じた高温蒸気が蒸気導管6を通り、水槽7へと導かれる。水槽7内に侵入した高温蒸気は、水槽7内の水Wによって凝縮されて水となるが、このとき、高温蒸気と水Wとの間で熱交換が行われるので水Wの温度が上昇し、高温の水Wが水槽7の上方に移動する。このため、水Wの水面の温度と、水面より上方の空気との間に温度差が生じる。したがって、単眼赤外線センサ8を回転させて集光エリア毎に算出した温度データの平均値を比較し、隣り合う集光エリアよりも所定値以上温度が高い集光エリアがあれば、その集光エリア内に水槽7の水面が位置していると判断することができる。そして、水面が位置していると判断された集光エリアと満水位L3との上下関係を判定する。
【0034】
炊飯が終了する前に水槽7内の水位が満水位L3に達したときは、加熱コイル10への通電を遮断して炊飯釜2の加熱を一時的に停止し(S14)、例えば操作表示部13にメッセージを表示したりブザー音を発するなどして水槽7が満水であることを報知し(S15)、加熱制御の動作を終了する。この状態となるのは、炊飯開始前の水槽7内の水位が初期満水L2寸前の状態で炊飯を行った場合や、炊飯釜2内から生じた蒸気が想定された以上の量となった場合である。このような場合は、ユーザが水槽7内の水Wを排出してその水槽7を本体5内に設置し、炊飯スイッチをONすると、制御部9は、炊飯開始を再開して加熱コイル10に通電し、中断したところから実行するようになっている。
【0035】
また、満水が検知されることなく炊飯が終了したときは、単眼赤外線センサ8により検出された水槽7の温度が所定の注意温度(本発明の第2温度)以上か否かを判定する(S8)。注意温度は、水槽7の温度が高温であることをユーザに報知するか否かを判断するための閾値であり、例えば60℃程度に設定することができる。
ここで、炊飯終了後の水温判定について説明する。炊飯後は、加熱により炊飯釜2内に生じた高温蒸気が蒸気導管6を通って水槽7内に侵入し、前述したように水槽7内の水Wの水面付近が高温となっている。このため、水Wの水面付近の温度と、水面より上方の空気との間に温度差が生じている。したがって、単眼赤外線センサ8を回転させて集光エリア毎に算出した温度データの平均値を比較し、最も高い温度を示す集光エリアの温度を、水槽7の水温であると判断する。
水槽7の温度が所定の注意温度以上のときは、例えば操作表示部13にメッセージを表示したりブザー音を発するなどして水槽7が高温である旨の注意報知を行い(S9)、前述した一連の動作を終了する。一方、水槽7の温度が所定の注意温度より低いときは、高温注意を報知することなく一連の動作を終了する。最も高い温度を水槽7の温度であると判断し、この温度が注意温度以上である場合に注意報知を行うので、ユーザに対して適切に注意を促すことができる。
【0036】
以上のように本実施の形態1によれば、水槽7の側面に単眼赤外線センサ8を設置し、単眼赤外線センサ8が検知する赤外線により水槽7内の水位と水温の両方を検知するようにした。単眼赤外線センサ8のみで水位と水温の両方を検知できるので、水温検知手段と水位検知手段を別個に設ける場合と比べて構造を簡易化でき、また、製造コストを低減することができる。
また、前述した特許文献1のように発光部と受光部を用いて散乱光により水位を検出する場合には、水槽を透明な部材で構成する必要があったが、本実施の形態1によれば赤外線を用いるので水槽7を必ずしも透明な部材で構成する必要はなく、水槽設計の自由度が高まる。
【0037】
また、単眼赤外線センサ8を回転させて単眼赤外線センサ8の集光領域を段階的に変化させる回転装置12を設けた。回転装置12により単眼赤外線センサ8を回転させ、下限水位L1から満水位L3までの領域をカバーする範囲から赤外線を集光するので、1つの単眼赤外線センサ8の集光エリアを超える広い範囲の水温と水位とを検出することができ、設置するセンサ数を低減することができる。
【0038】
また、炊飯開始前には、単眼赤外線センサ8が検知する水槽7の水温が所定の開始温度以上か否か判定し、水温が高い場合には水槽の水交換を行うよう報知するようにした。このため、蒸気の凝縮効率を高めることができるとともに、水槽7の過度な高温化を抑制できる。
また、炊飯開始前には、単眼赤外線センサ8が検知する水槽7の水温が下限水位L1以上でかつ初期満水L2未満であるか判定し、水位がこの範囲に無い場合には水位調整を行うよう報知するようにした。水槽7内の水位が適切な状態で炊飯を開始することができるので、水槽7における蒸気の凝縮効率を高めることができる。
また、炊飯終了後は、単眼赤外線センサ8が検知する最も高い温度が所定の注意温度以上か否か判定し、水温が高い場合には高温である旨の注意報知を行うようにした。このため、炊飯後に高温となる水槽7にユーザが触れてしまう等の事態を回避でき、安全性を高めることができる。
【0039】
なお、本実施の形態1では、回転装置12による単眼赤外線センサ8の回転段階数を4段階としたが、これは4段階に限定するものではない。また、回転時の集光エリアが互いにオーバーラップしてもよい。
【0040】
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、単眼赤外線センサ8を用いて水槽7の水温判定と水位判定を行う例を示した。本実施の形態2では、アレイ赤外線センサを用いて水温判定と水位判定を行う場合の例を説明する。なお、本実施の形態2では前述の実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付している。
【0041】
図5は、実施の形態2に係る炊飯器1Aの構成を示す側面模式図である。実施の形態2に係る炊飯器1Aは、実施の形態1に係る単眼赤外線センサ8に代えて、アレイ状赤外線センサ8Aを備えている。また、炊飯器1Aは、実施の形態1で説明した回転装置12を備えていない。
【0042】
アレイ状赤外線センサ8Aは、所定の集光エリアを有する受光素子が例えば縦方向に8個配列して構成された受光素子アレイを備えている。アレイ状赤外線センサ8Aの集光エリアRは、図5に示すように、下限水位L1から満水位L3までの領域を包含するように構成されている。
【0043】
図6は、実施の形態2に係る炊飯器1Aの機能ブロック図である。
アレイ状赤外線センサ8Aは、赤外線を集光する集光レンズ86、受光素子アレイ88、スキャン部87、及びスキャン部87で選択された出力信号を所定の増幅度で増幅する増幅部82を備える。また、サーミスタからなる基準温度素子85、基準温度素子85の出力信号を所定の増幅度で増幅する増幅部84、及び増幅部82の増幅信号と増幅部84の増幅信号との差分を増幅する差動増幅部83を備える。
【0044】
ここで、受光素子アレイ88の斜視図を図7に示す。図7において、受光素子アレイ88は、受光素子88a〜受光素子88hが例えば縦方向に8個(すなわち、1×8)のライン状に配列されて構成されている。受光素子88a〜受光素子88hとしては、量子型赤外線素子あるいは熱型のサーモパイル素子を採用することができる。
【0045】
(制御手段、水位判定手段、水温判定手段)
制御部9は、信号出力部91Aと、マルチプレクサ99と、A/D変換部92と、温度変換部93と、記憶部94と、温度判定部95と、水位判定部96と、加熱制御部97と、表示制御部98とを備える。
【0046】
信号出力部91Aは、所定のタイミングで受光素子アレイ88の各受光素子に対応したスキャン部87にアドレス信号を出力する。
マルチプレクサ99は、差動増幅部83からの出力信号を取得し、各受光素子の選択/切替を行う。
A/D変換部92は、マルチプレクサ99から出力された各受光素子の差動信号(電圧)をデジタル信号に変換する。
温度変換部93は、A/D変換部92から出力されたデジタル信号を温度データに変換し、各受光素子毎に記憶部94に格納する。
温度判定部95は、記憶部94に格納された受光素子アレイ88の受光素子毎の温度データに基づいて、水槽7内の水温を判定する(詳細は後述する)。
水位判定部96は、記憶部94に格納された受光素子アレイ88の受光素子毎の温度データに基づいて、水槽7内の水位を判定する(詳細は後述する)。
【0047】
(温度検出処理)
図8は実施の形態2に係るアレイ状赤外線センサ8Aによる温度検出処理を説明する図であり、図8(a)はアレイ状赤外線センサ8Aと水槽7の要部を示す模式図、図8(b)は集光エリア別の検出温度の例を示している。以下、図6と図8を参照して温度検出処理を説明する。
受光素子アレイ88は、水槽7の下限水位L1から満水位L3の範囲を包含する集光エリアRにおいて、水槽7の側面から放射された赤外線を集光レンズ86によって集光する。これにより、受光素子アレイ88を構成する複数の受光素子88a〜受光素子88hから電圧が出力される。そして、信号出力部91より出力されるアドレス信号がスキャン部87へ送り出され、複数の受光素子の中から例えば一つの受光素子を選択し、この受光素子の出力電圧が増幅部82へ入力される。一方、基準温度素子85は周囲温度を検出し、出力電圧を増幅部84へ入力する。
【0048】
次に、増幅部82及び増幅部84で増幅されたそれぞれの出力電圧は、差動増幅部83で比較増幅される。そして、差動増幅部83により比較増幅された出力電圧は、マルチプレクサ99を介してA/D変換部92に入力されてデジタル信号となる。続けて、このデジタル信号が温度変換部93によって温度データに変換され、ある受光素子が検出した温度データとして記憶部94に格納される。なお、記憶部94には、受光素子アレイ88の各受光素子に対応する記憶バッファーが設けられている。
こうした一連の動作を受光素子毎に実行することにより、全受光素子が検出した温度データを記憶部94に格納することができる。そして、受光素子88a〜受光素子88hに対応する集光エリアR1〜集光エリアR8の温度データの検知を複数回繰り返して検知した温度データを記憶部94に格納し、集光エリア毎に温度データの平均値を算出する。
【0049】
集光エリア毎に温度データの平均値を算出すると、例えば図8(b)に示すように、水槽7内の水面や水Wの温度に応じて集光エリア毎の検出温度に差異が生じる。この集光エリア毎の検出温度と、集光エリア間の検出温度の差異に基づいて、後述するようにして水槽7の水温と水位とを判定する。
【0050】
(炊飯器の動作)
次に、上記のような構成を有する炊飯器1Aの動作について説明する。なお、本実施の形態2では、基本的な炊飯動作については実施の形態1で説明した図4と同様であるが、アレイ状赤外線センサ8Aを用いた水位検出処理及び温度検出処理に特徴を有する。このため、図4を参照しつつ、水位検出処理及び温度検出処理について説明する。
【0051】
(図4のステップS2)
ステップS2は、水槽7の温度が、所定の開始温度(本発明の第1温度)以上か否か判定する処理である。この処理を実行するにあたり、水槽7の温度を検出する必要があり、この水槽7の温度検出処理について説明する。
まず、アレイ状赤外線センサ8Aの各受光素子が検出した温度データを比較し、隣り合う受光素子よりも所定値以上温度が低い受光素子があれば、その受光素子が検出した温度を、水槽7の水温であると判断する。炊飯開始前は通常、水槽7内には常温の水が入っており、この常温の水は空気温度よりも低い。このため、隣り合う受光素子との温度差に基づいて、水槽7内の水温を検出することができる。
【0052】
(図4のステップS3、ステップS4)
ステップS3、S4は、水槽7内の水位が初期満水L2あるいは下限水位L1に達しているか否かを判定する処理である。この処理を実行するにあたり、水槽7の水位を検出する必要があり、この水槽7の水位検出処理について説明する。
前述のステップS2において、隣り合う受光素子よりも所定値以上検出温度の低い受光素子を特定するが、この受光素子の集光エリア内に、水Wの水面があると判断する。水槽7内の水Wとその水面より上にある空気との間には温度差があるため、この温度差が生じている位置が水槽7内の水位であると判断できる。
【0053】
(図4のステップS6)
ステップS6は、水槽7内の水位が満水位L3に達しているか否かを判定する処理である。この処理を実行するにあたり、水槽7の水位を検出する必要があるが、この水槽7の水位検出処理について説明する。
実施の形態1で説明した通り、炊飯中に生じた高温蒸気が水槽7内に侵入することにより、水Wの水面の温度は、水面より上にある空気の温度よりも高温となる。したがって、アレイ状赤外線センサ8Aの各受光素子が検出した温度データを比較し、隣り合う受光素子よりも所定値以上温度が高い受光素子があれば、その受光素子の集光エリア内に、水Wの水位があると判断する。
【0054】
(図4のステップS8)
ステップS8は、炊飯終了後に水槽7の温度が所定の注意温度(本発明の第2温度)より高いか否かを判定する処理である。この処理を実行するにあたり、水槽7の温度を検出する必要があり、この水槽7の温度検出処理について説明する。
まず、アレイ状赤外線センサ8Aの各受光素子が検出した温度データを比較する。そして、検出された温度データのうち最も高い温度を、水槽7の水温であると判断する。最も高い温度を水槽7の水温であると判断することで、ユーザに対する適切な注意報知を行うことができる。
【0055】
以上のように本実施の形態2によれば、水槽7の側面にアレイ状赤外線センサ8Aを設置し、受光素子アレイ88が検知する赤外線により水槽7内の水位と水温の両方を検知するようにした。アレイ状赤外線センサ8Aのみで水位と水温の両方を検知できるので、水温検知手段と水位検知手段を別個に設ける場合と比べて構造を簡易化でき、また、製造コストを低減することができる。
【0056】
なお、本実施の形態1では、受光素子を1×8のライン状に配列して構成された受光素子アレイ88を例に説明したが、受光素子の数についてはこれに限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 炊飯器、1A 炊飯器、2 炊飯釜、3 蓋体、4 内蓋、5 本体、5a 炊飯釜収納部、5b 水槽収納部、6 蒸気導管、7 水槽、7a 水槽本体、7b 水槽蓋、7c 蒸気導入管、8 単眼赤外線センサ、8A アレイ状赤外線センサ、9 制御部、10 加熱コイル、11 フィルタ、12 回転装置、13 操作表示部、14 下限水位目盛、15 初期満水目盛、16 水槽検知部、81 赤外線検出素子、82 増幅部、83 差動増幅部、84 増幅部、85 基準温度素子、86 集光レンズ、87 スキャン部、88 受光素子アレイ、88a〜88h 受光素子、91 信号出力部、91A 信号出力部、92 変換部、93 温度変換部、94 記憶部、95 温度判定部、96 水位判定部、97 加熱制御部、98 表示制御部、99 マルチプレクサ、L1 下限水位、L2 初期満水、L3 満水位、T1〜T4 集光エリア、R1〜R8 集光エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が投入される内鍋と、
前記内鍋が着脱自在に収容される本体と、
前記内鍋を加熱する加熱手段と、
加熱中に発生する前記内鍋内の蒸気を案内する蒸気導管と、
前記蒸気導管により案内された蒸気を、内部に溜めた水により復水する水槽と、
前記水槽から放射される赤外線を検知する赤外線検知手段と、
前記赤外線検知手段の出力に基づいて、前記水槽内の水位を判定する水位判定手段と、
前記赤外線検知手段の出力に基づいて、前記水槽内の水温を判定する水温判定手段と、
を備えた
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記赤外線検知手段は、
前記水槽から放射される赤外線を受光する単眼型赤外線センサと、
前記単眼型赤外線センサの受光エリアを上下に移動させる移動手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記赤外線検知手段は、
前記水槽から放射される赤外線を受光する複数の受光素子を縦方向のアレイ状に配列して構成されたアレイ状赤外線センサを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項4】
前記水温判定手段及び水位判定手段の判定結果に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、
報知手段と、を備え、
前記制御手段は、前記加熱手段による加熱開始前に、前記水位判定手段により判定された水位が蒸気を復水するのに必要な所定水量を示す下限水位以上か否か判定し、前記水位が前記下限水位より低い場合には前記水槽の水補給を前記報知手段に報知させるとともに前記加熱手段に加熱を開始させない
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記加熱手段による加熱開始前に、前記水位判定手段により判定された水位が加熱時に発生する蒸気を復水しても前記水槽から水が溢れないための水量を示す初期満水以上か否か判定し、前記水位が初期満水以上である場合には前記水槽の水量調整を前記報知手段に報知させるとともに前記加熱手段に加熱を開始させない
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか記載の炊飯器。
【請求項6】
前記制御手段は、前記加熱手段による加熱中に、前記水位判定手段により判定された水位が満水位以上か否か判定し、前記水位が満水位以上である場合には前記水槽が満水状態であることを前記報知手段に報知させるとともに前記加熱手段に加熱を停止させる
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御手段は、前記加熱手段による加熱開始前に、前記水温判定手段により判定された水温が所定の第1温度以上か否か判定し、前記水温が前記第1温度以上である場合には前記水槽の水交換を前記報知手段に報知させるとともに前記加熱手段に加熱を開始させない
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか記載の炊飯器。
【請求項8】
前記制御手段は、前記加熱手段による加熱終了後に、前記水温判定手段により判定された水温が所定の第2温度以上か否か判定し、前記水温が前記第2温度以上である場合にはその旨を前記報知手段に報知させる
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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