説明

炊飯器

【課題】蓋体の変形などを確実に防止することができ、その上軽量かつ製作が容易でコストを低減することのできる補強部材を備えた炊飯器を提供する。
【解決手段】内部に内釜6が収容される炊飯器本体1と、後端部がヒンジ部2を介して炊飯器本体1に装着され炊飯器本体1の上部を開閉自在に覆う蓋体10と、蓋体10内において蓋体10の前後方向に固定され後端部がヒンジ部2に軸支された補強部材70とを備え、この補強部材70は帯状の金属板の短手方向を少なくとも1回ほぼ垂直に折り曲げて成る垂直部及び水平部を備え、さらに短手方向を折り曲げた金属板の長手方向を略円周状に曲げて成る略円周部と、この略円周部の両端から外方へほぼ平行に延設されて成る一対の直線部と、を備え、一対の直線部の垂直部は対向する位置にヒンジ部2と嵌合する穴を有する。これにより、少ない材料で強度をあげ、蓋体の変形を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器に関するものであり、特に圧力を高めて炊飯の調理を行う炊飯器における蓋の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
米と水が入れられた内釜の圧力を高めて炊飯を行うことはよく知られているが、このような炊飯器(以下、圧力式炊飯器ということがある)においては、蓋体に大きな圧力が加わるため、合成樹脂製の蓋体が変形したり破損したりすることがある。
【0003】
このような圧力式炊飯器に、内鍋を収容し一側にヒンジ部を有し他側にロック解除ボタンとストッパーを有する調理器本体と、合成樹脂からなり調理器本体のヒンジ部により開閉自在とした蓋体と、内鍋の上方開口を覆う内蓋と、蓋体の空間部内に配設され一側がヒンジ部に軸止され他側が係止装置に掛止した金属材料からなる補強板と、補強板の他側に軸支され蓋体の閉塞時にストッパーに係止する係止部を有する係止板とを備え、補強板により蓋体の変形を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2869390号公報(第3−4頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の一般の圧力式炊飯器においては、蓋体は後端部がヒンジ部に枢支され、前端部が係止装置に係止して調理器本体にロックされているため、前後方向の中央部付近が一番変形し易い。
特許文献1に記載の従来の炊飯器においては、補強板はヒンジ部から係止装置まで1枚の平板の金属材料を折り曲げ・プレス抜き加工することで形成されている。また、補強板の中央部に部品を載置するために、材料の中央部を切り捨てている。このため製作時に使用される材料の使用量に対して強度へ有効な活用ができていない。
【0006】
また、補強板は、全長にわたって中央部付近の圧力に抵抗しうる強度(板厚)の材料で形成しなければならないため、ヒンジ部側や係止装置側のほとんど変形するおそれのない部分も、中央部付近と同じ材料、板厚で形成することになるので、重量が大きくなるばかりでなく製造が面倒で、コストアップになるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、材料の無駄がなく必要な強度を確保し、軽量かつ製作が容易でコストを低減することのできる補強部材を備え、コンパクトな炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る炊飯器は、内部に内釜を収容し、後部側上部にヒンジ部を有する炊飯器本体と、後端部がヒンジ部を介して炊飯器本体に枢支され、この炊飯器本体の上部を開閉自在に覆う蓋体と、この蓋体に配設された補強部材と、を備え、補強部材は、略円周状に構成され、断面形状として少なくとも垂直部とこの垂直部の一端から略垂直に延設された水平部とを有する略円周部と、この略円周部の両端から外方へほぼ平行に延設され、断面形状として少なくとも垂直部とこの垂直部の一端から略垂直に延設された水平部とを有する一対の略直線部と、を備え、一対の略直線部の垂直部は対向する位置に前記ヒンジ部と嵌合する穴を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補強部材の材料の無駄がなく必要な強度を確保でき、軽量でかつ簡単に製作することができ、コンパクトでコストを低減しつつ蓋体の変形などを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の外観斜視図である。
【図2】図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図1の炊飯器の中蓋の全体斜視図である。
【図4】図1の蓋開閉ボタンの斜視図である。
【図5】図1のスライド部材の斜視図である。
【図6】スライド部材にソレノイドを取付けた状態を示す平面図である。
【図7】図1のフックの斜視図である。
【図8】図2の補強部材の斜視図である。
【図9】図2の補強部材加工工程概略図である。
【図10】スライド部材の作用説明図である。
【図11】スライド部材と蓋開閉ボタンとの位置関係を示す説明図である。
【図12】蓋開閉ボタンに対するスライド部材の作用説明図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の補強部材の斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の補強部材の加工工程概略図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る炊飯器の補強部材の斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態4に係る炊飯器の補強部材の上面図および断面図である。
【図17】補強部材の断面図である。
【図18】補強部材と内釜の位置関係を示す断面図である。
【図19】補強部材とフックの位置関係を示す上面図である。
【図20】曲げ加工後の補強部材の寸法説明図である。
【図21】補強部材の円周径と縁部の幅の寸法説明図である。
【図22】補強部材の周囲に設けられた中蓋のリブとねじボス形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る炊飯器の外観斜視図、図2は図1の炊飯器の縦断面図であり、図3は図1の中蓋の全体斜視図である。なお、図2において、図2(a)は補強部材を取り除いた状態の炊飯器の縦断面図であり、図2(b)は補強部材を取り付けた場合の補強部材の配置を示す炊飯器の縦断面図であり、同図中斜線で示したものが補強部材70である。
【0012】
以下、炊飯器の構成を図1〜図3を用いて説明する。なお、この説明では、図2(a)または図2(b)の左側を前(図の左側に立つ調理者から見て手前)、右側を後という。図1に示すように、炊飯器は、前部に操作部8を備えた炊飯器本体1と、この炊飯器本体1の上部に設けられた蓋体10とから構成されている。蓋体10は、上蓋11を備え、この上蓋11の凹部21には蓋開閉ボタン23が設けられており、凹部15には蒸気口20が形成されたカートリッジ17が設けられている。
また、図2(a)に示すように蓋体10は、上部が開口した炊飯器本体1の後部側上部に設けたヒンジ部2に一端が枢支され、一部に金属板を有する合成樹脂で構成されており、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆うように設けられている。
【0013】
炊飯器本体1内の下方には、ほぼ深皿状のコイル台3が設置されており、その下面及びコーナ面には電磁誘導コイル4が配設されている。温度センサー5はコイル台3の底部中央部付近に設けられ、ばねに付勢されてコイル台3の底部から上方に突出している。
【0014】
内釜6は上部開口部の外周に設けたフランジ6aが炊飯器本体1に係止して炊飯器本体1内に収容され、その下部はコイル台3に近接して位置し、内釜6の底面にはばねに付勢された温度センサー5が当接する。
【0015】
制御部7は炊飯器本体1内において前面側に設けられ、操作部8は炊飯器本体1の前面に設けられる。係合部9は炊飯器本体1の上部開口部の前面側に設けられ、後述の蓋体10のフック55が係止する。
【0016】
蓋体10は、上蓋11と、その下面に配設された中蓋12と、中蓋12の下面に着脱可能に装着されて内釜6の上部開口部を覆う金属板からなる内蓋13とによって構成されており、中蓋12の下面には金属板からなる中蓋中間部材14が固定されている。
【0017】
上蓋11の後部側には開口部16を有し後端部が開口された凹部15が設けられており、この凹部15には、下部に有底の筒状部18が設けられたカートリッジ17が、筒状部18を開口部16に着脱可能に挿入することにより収容されている。なお、筒状部18の底部には通気孔19が設けられており、カートリッジ17の上壁には蒸気口が設けられている。
【0018】
また、上蓋11の前部側に設けられた横長の凹部21内には、蓋開閉ボタン23が配設されている。この蓋開閉ボタン23は、図4の蓋開閉ボタン23の拡大斜視図に示すように、周壁を有するほぼ楕円形状の本体部24と、先端部に外方に向う係止爪を有し、長手方向の内壁に沿って立設された左右各一対の係止片25と、長手方向の両端部近傍において天面から立設された一対のロック棒26a,26bと、中央部において天面から立設された押圧部27とからなり、ロック棒26a,26bにはばね28が介装されている。
【0019】
この蓋開閉ボタン23は上蓋11の凹部21内に挿入され、係止片25が凹部21の底部に設けた穴(図示せず)から突出してその係止爪が底面に係止し、ロック棒26a,26bは凹部21の底部に設けた穴22から突出し、また、押圧部27は凹部21の底部中央部近傍に設けた開口部(図示せず)の上方に位置する。そして、ロック棒26a,26bに設けたばね28が凹部21の底部と本体部24の天面との間に介装され、蓋開閉ボタン23を上方に付勢している。
【0020】
中蓋12の上面のほぼ中央部には、下部が開口し前面側に開口部31を有するドーム状の弁室30が設けられており、開口部31は中央部に弾性体33が設けられたリング状のシール部材32により閉塞されている。弁室30の下部とカートリッジ17の通気孔19は蒸気通路34によって連通している。
【0021】
スライド部材40は、図5のスライド部材40の拡大斜視図に示すように、開口部42を有する枠状の本体部41と、本体部41の前面側の両側に設けられたロック部43a,43bとによりほぼ品字状に形成されている。そして、本体部41の後部側には上部が開口し先端部に円板45を有する円筒部44が設けられており、円板45の後面側には突部46が設けられている。本体部41の両側下端部にはフランジ47が設けられている。
このスライド部材40は、フランジ47及びロック部43a,43bの下面が、中蓋12の上面に設けたガイド部35上に、前後方向にスライド自在に配設されている。なお、図示してないが、ガイド部35の側部には、スライド部材40が横方向に移動するのを防止するために、複数のガイドが設けられている。
【0022】
スライド部材40の本体部41の開口部42内には、図6に示すように、ソレノイド50が配設され、ねじ51により中蓋12に固定されている。そして、その可動鉄心52は円筒部44内においてスライド部材40に固定されており、非通電状態においては、図6に示すようにソレノイド50から突出した状態にあり、その先端部は円板45に近接又は当接している。53はソレノイド50のケースとスライド部材40の円板45との間において、可動鉄心52に介装された復帰ばねで、スライド部材40を後部側に付勢している。
【0023】
中蓋12の上面の前端部近傍にはほぼ断面形状がL字状のフック55が設けられており、図7に示すように、垂直片57の両側から軸挿通穴59を有する支持腕58a,58bが、垂直片57及び水平片56の双方に垂直に延設されている。また、水平片56の長手方向のほぼ中央部の後部側には、水平片56より上方に位置し、蓋開閉ボタン23の押圧部27と対向する受け片60が設けられている。また、垂直片57の両端部近傍には、炊飯器本体1に設けた係止部9に係止する係止爪62を備えた一対の係止片61a,61bが延設されている。
【0024】
このフック55の支持腕58a,58bの軸挿通穴59には、図7に示すように支持軸63が回動自在に嵌入され、支持軸63は後述の補強部材70の軸貫通用の穴78,78により、軸支され,補強部材70が中蓋12に固定される。64は支持軸63に介装され、一端が中蓋12に、他端がフック55に取付けられたばねであり、フック55を図7の矢印方向に常時付勢する。
【0025】
補強部材70は、図8の補強部材70の外観斜視図に示すように、中蓋12の上面に設けられ、蓋体10の変形などを抑制するものである。
次に、この補強部材70の加工工程について説明する。図9(a)〜(d)は、補強部材70の加工工程概略図である。まず、図9(a)に示すように、帯状の金属板100に、ヒンジ軸挿通穴73を穿設する場所となる内側垂直部121やねじ挿通穴74を穿設する場所となる水平部122やヒンジ軸挿通穴73とフック55の支持軸63の挿通穴78を穿設する場所となる外側垂直部123を決めるために折曲げ部103を決めておく。そして、ヒンジ軸挿通穴73を内側垂直部121と外側垂直部123に、ねじ挿通穴74を水平部122に、挿通穴78を外側垂直部123に穿設し、さらに後述する垂直片102を切り起こすための切り込み線を外側垂直部123に切り込んでおく(図9(b))。
次に、図9(a)にて決めておいた折曲げ部103の部分で折り曲げ加工して内側垂直部121と水平部122と外側垂直部123を形成する(図9(c))。この時の折り曲げ方向は、内側垂直部121と外側垂直部123が平行且つ対向する断面略コの字状となるように同一方向にほぼ垂直に2回折り曲げる。また、ヒンジ軸挿通穴73と両端のねじ挿通穴74との間の水平部122に後端曲げ部101を決めておく。そして、図9(d)に示すように水平部122を上向き、内側垂直部121を内側にした状態でベンド加工を施し、図示するような略円周状の形状(以下、略円周部71と呼ぶ場合がある)を形成する。このとき、後端曲げ部101の部分で折り曲げ加工も行われ、ヒンジ取付垂直部125とヒンジ取付水平部126とで構成されるヒンジ取付部124を形成して、補強部材70が完成する。このヒンジ取付部124は略直線部を構成する。
なお、このとき、垂直片102は、前方へ突出した状態になる。
また、略円周部71の大きさは、中蓋12の幅方向に近い大きさまたは内釜6の大きさと略同等にしても良い。
【0026】
次に、上記のように構成した補強部材70の中蓋12への取付け手順の一例について図8と図9(d)を用いて説明する。
まず、補強部材70の前方の挿通穴78にフック55に設けた支持軸63の両端部を挿入し、補強部材70の後端部を中蓋12の後端付近から外方に突出させて中蓋12に載置し、ねじ挿通穴74に挿通したねじ80により中蓋12に固定する。
【0027】
内蓋13の中蓋12に設けた弁室30の直下には開口部85が設けられており、この開口部85には有天円筒状で、その天面が弁室30の上下方向のほぼ中間部に位置する内筒86が装着されている。そして、内筒86の下部開口部には中心部に蒸気通路88を有する弾性体87が装着されており、また、天板の中心部には弁孔89が設けられ、天板の上面の弁孔89の外周には、後部側が上方に傾斜した弁座90が形成されている。91は弁座90上に位置する調圧ボールである。
【0028】
上記のように構成した蓋体10は、中蓋12の補強部材70のヒンジ軸挿通穴73がヒンジ部2のヒンジ軸2aに嵌合されて炊飯器本体1に開閉自在に支持され、その上面には上蓋11が結合され、下面には内蓋13が着脱可能に装着される。
【0029】
次に、蓋体10の動作について説明する。
中蓋12に設けたソレノイド50が非通電状態の場合は、図10(a)に示すように、ソレノイド50の可動鉄心52は後退しており、可動鉄心52と一体化されたスライド部材40も後方へスライドし、その突部46が弁室30の開口部31に設けた弾性体33を押圧して弾性変形させ、調圧ボール91を弁座90の後部側に移動させて弁孔89を開放している。
【0030】
この状態で蓋体10を閉じると、フック55の係止爪62が炊飯器本体1の係止部9に係合し、炊飯器本体1の上部開口部を閉塞してロックする。このとき、蓋開閉ボタン23の押圧部27は図10(a)、図11に示すようにフック55の受け片60に当接又は近接して位置する。また、スライド部材40のロック部43a,43bは、図12(a)に示すように、蓋開閉ボタン23のロック棒26a,26bより後部側に位置する。
そして、ユーザーが蓋開閉ボタン23を圧下すると、押圧部27が受け片60を圧下してフック55を回動させ、係止爪62が係止部9から離脱するので、蓋体10をヒンジ部2を軸に上方に回動することにより開放することができる。
【0031】
図10(a)の状態でユーザーが操作部を操作することによりソレノイド50に通電すると、図10(b)に示すように、可動鉄心52が前進し、これに連結されたスライド部材40が前部側に移動して弾性体33は元の状態に戻り、調圧ボール91は自重により移動して弁孔89を閉じる。このとき、前部側に移動したスライド部材40は、図12(b)に示すように、そのロック部43a,43bが蓋開閉ボタン23のロック棒26a,26bの直下に移動し、蓋開閉ボタン23をロックして下降を阻止する。これにより、蓋開閉ボタン23を圧下することができないので、蓋体10を開放することができない。
【0032】
次に、上記のように構成した炊飯器により炊飯する場合について説明する。
ユーザーは、所定の米と水が入れられた内釜6を炊飯器本体1内にセットし、蓋体10を閉じる。圧力をかけて炊飯する場合、ユーザーは、操作部8を操作する。これにより、ソレノイド50に通電し、図1,図10(b)に示すように、調圧ボール91により内筒86の弁孔89を閉鎖する。また、図12(b)に示すように、スライド部材40により、蓋開閉ボタン23をロックする。そして、ユーザーが操作部8を操作すると、電磁誘導コイル4等に通電し、炊飯を開始する。
【0033】
炊飯中は、内筒86の弁孔89が閉鎖されているため、内釜6内に発生した蒸気が漏れることがないので内釜6内の圧力が上昇し、高圧のもとで炊飯が行われる。内釜6内の圧力の上昇により蓋体10にこれを押上げようとする力が作用するが、蓋体10はその前後がフック55とヒンジ部2により炊飯器本体1に固定されているため、蓋体10の中央部付近に大きな圧力が作用する。
【0034】
しかしながら、本発明においては、補強部材70を、蓋体10内に略円周状に形成したので、圧力によって蓋体10が変形したり破損したりするのを確実に防止することができる。また、補強部材70を帯状の金属板100から形成したので、材料の無駄もなく、補強部材70の略円周部71の内側に弁室などの他の部品を自由に設置できるため、軽量、コンパクトな構成とすることができる。蓋体10にひび割れなどを生じることがない。
【0035】
炊飯が終るとソレノイド50への通電がOFFされて、可動鉄心52及びスライド部材40は図10(a)の状態に戻って内筒86の弁孔89が開放されるので、内釜6内の高圧蒸気は、内筒86の弁孔89から弁室30を通って、蒸気通路34、カートリッジ17の通気穴19を経て蒸気口20から外部に放出される。同時に、蓋開閉ボタン23のロックが解除されるので、蓋体10を開放することができる。
【0036】
圧力をかけないで炊飯する場合は、ソレノイド50に通電せず、図10(a)の状態で電磁誘導コイル4等に通電すればよい。これにより、内釜6に発生した蒸気は、内筒86の弁孔89から弁室30を通って、蒸気通路34、カートリッジ17の通気穴19を経て蒸気口20から放出され、炊飯される。
【0037】
上記の説明では、補強部材70の断面を略コの字状としているが、これに限る必要はなく、少なくとも一つの略水平面と一つの略垂直面を有していれば良い。例えば、図17(b)に示すように略L字状でも良いし、図17(c)に示すように数字の7のような形でも良いし、図17(d)に示すように略Z字状でも良い。また図20に示すように略水平部と略垂直部の曲げ加工は外側曲げ寸法をR1とし、板厚寸法をt1としたとき、「R1≧t1」とすることで、曲げ部分の厚みを確保でき、強度を保てる。仮に「R1<t1」とすると、平板の曲げを行う際に、内Rが外Rよりも小さくなり、局所的に外側が大きく伸び、内側が縮むので、板厚が薄くなったり、不均一になり、よれが生じたり、ひびや切れが生じたりする場合がある。
また、補強部材70を金属板100から曲げ加工により上記の形状の断面を有するように構成しているが、元々上記断面が形成されているL字材やチャンネル材を補強部材70として使用してもよい。
また、図18に示すように補強部材70の略円周部71の直径は内釜6の直径と同等にするのが望ましい。これは、内釜6のシール65の変形を防ぐことが蒸気モレを抑制するのに一番ふさわしいためである。即ち、図2(b)に示すよう内釜6の上部開口部の外周にはほぼ水平の外向きにフランジ6aが設けられている。この内釜6の開口部の上方は内蓋13と中蓋12によって覆われており、さらに弾性変形する合成樹脂製のシール65が補強部材70とフランジ6aとの間に介在すると共にこのシール65の一部がさらに内釜6の上部内壁にまで延在している。そして、調理者が蓋体10を閉じると、ロック機構により蓋体10が炊飯器本体1に係止するので、上蓋11から補強部材70を介して下方向の圧力が作用し、この圧力によりシール65が少しだけ変形する。これにより、シール65は、フランジ6aを上から下に押す圧力だけでなく、変形によって内釜6の上部内壁を外周方向へ押す力が作用する。これにより、内釜6は内蓋13と中蓋12およびシール65によって密閉された状態となる。
また、調理中に内釜6内の蒸気圧が作用することで蓋体10が多少変形した場合、この変形により補強部材70は多少前後左右に移動するが、蓋体10のロック機構が機能しているため、上下方向の変形は殆どない。また、補強部材70の前後左右の移動範囲も蓋体10の変形により、補強部材70とフランジ6aとの間に摩擦力が作用するので、フランジ6aの領域内に収まる。従って、補強部材70はフランジ6aの上に常時位置することになり、内釜6との密閉性を維持することができるため、蒸気漏れの問題は発生しない。
【0038】
また、図19に示すように蓋と本体を係止するロック機構は本体の前方に位置しており、フック55は炊飯器の形態に合わせて、図19(c)に示すように本体の前側1箇所109に設けても良いし、本体の両側一対110に設けても良い。図19(b)に示すように両側一対にすることで、補強部材70の略円周部71と筐体の角部に設けられるので、コンパクトな構成とすることができる。また、図21に示すように略円周状にベンド加工する半径R2は、断面水平面の幅W1に対して、R2≧4W1とすると、ベンド加工時の板材のよれや切れがなく、寸法の精度を確保できる。また、図22に示すように円周状の補強部材70の内周もしくは外周に略円周状のリブ131を中蓋12に備えることにより補強部材70の位置決めが容易なほか、蓋全体の剛性も無駄なスペースや無駄な材料を使用することなく仕上げることができる。特に内周側に一定のすきまgをあけて設けることで、炊飯時の熱で熱膨張をおこし、金属製の補強部材70と樹脂製の中蓋12を密着させることができる。また外周側に設けることで、熱膨張差による力を受けにくくし、中蓋12の損傷を防止することもできる。補強部材70の水平部の下面には中蓋12にねじを止めるボス111をリブ状に複数個設けることで、無駄なスペースを必要としないで、内釜6の圧力による変形を抑えることができる。また、補強部材70を中蓋12に取り付けるためのねじ挿通穴74はねじよりもサイズの大きい穴や長穴(図示せず)とすることで、熱膨張の違いによる寸法変化を吸収することができる。
また、温度センサー5は底部中央部付近に設けられていると説明したが、内釜の底部外周付近とすれば炊飯器を更にコンパクトに構成できる。操作部8も本構成によりスペースが有効になった蓋体10内(例えば上面)に設置できれば更にコンパクトとなるし、カートリッジ17においても外側から挿入せずに、スペースが有効となった蓋体10内に内側から挿入する形とすれば蓋体10の天面の凹凸もなくすっきりとコンパクトな形に構成できる。蓋開閉ボタン23も位置を炊飯器本体1の前面側に配置してもよいし、ボタン形状も楕円状に限らず、略四角形状や円状でも良い。弁室30の位置も蓋体10の中央部に限らず、内釜6の外径内であれば良く、弁室30の開口部85も前面側に固執することはない。
【0039】
以上詳述したように、炊飯器に圧力をかけて炊飯する場合、蓋体10の中央部付近に大きな変形となる力が作用するが、本実施の形態においては、蓋体10内に略円周状の補強部材70を構成することで、均一に変形させることができ、圧力による蓋体10の変形や損傷などを確実に防止することができる。また、補強部材70の断面を略コの字状あるいは略L字状に構成したので、補強部材70を従来並みの強度を維持しながら、従来よりも比較的板厚の薄い金属板100で形成することができる。このため、コストを低減できるばかりでなく、製造が容易でその上軽量化することができる。
【0040】
実施の形態2.
図13、図14は本発明の実施の形態2に係る炊飯器の補強部材の斜視図である。なお、実施の形態1の補強部材と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態2では、補強部材70は、図13の補強部材70の外観斜視図に示すように、中蓋12の上面に設けられ、蓋体10の変形などを抑制するようにしている。
次に、この補強部材70の加工工程について説明する。図14(a)〜(d)は、補強部材70の加工工程概略図である。まず、図14(a)に示すように、帯状の金属板100に、ヒンジ軸挿通穴73とフック55の支持軸63の挿通穴78を穿設する場所となる内側垂直部121やねじ挿通穴74を穿設する場所となる水平部122を決めるために折曲げ部103を決めておく。そして、ヒンジ軸挿通穴73と挿通穴78を内側垂直部121に、ねじ挿通穴74を水平部122に穿設しておく(図14(b))。
次に、図14(a)にて決めておいた折曲げ部103部分で折り曲げ加工して内側垂直部121と水平部122を形成する(図14(c))。この時の折り曲げ方向は、内側垂直部121と水平部122がほぼ垂直になるような断面略L字状とする。また、ヒンジ軸挿通穴73と両端のねじ挿通穴74との間の水平部122に後端曲げ部101を決めておく。そして、図14(d)に示すように水平部122を上向き、内側垂直部121を内側にした状態でベンド加工を施し、図示するような略円周部71を形成する。このとき、後端曲げ部101の部分で折り曲げ加工も行われ、ヒンジ取付垂直部125とヒンジ取付水平部126とで構成されるヒンジ取付部124を形成して、補強部材70が完成する。
なお、略円周部71の大きさは、中蓋12の幅方向に近い大きさまたは内釜6の大きさと略同等にしても良い。
【0041】
このように構成したことにより、炊飯器の通電時には内圧の増加により蓋体10の中央部付近に大きな変形となる力が作用するが、本実施の形態においては、蓋体10内に略円周状の補強部材70を構成することで、均一に変形させることができ、圧力による蓋体10の変形や損傷などを確実に防止することができる。
【0042】
実施の形態3.
図15は本発明の実施の形態3に係る炊飯器の補強部材の斜視図である。なお、実施の形態1の補強部材70と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態では、補強部材70後方の左右に分かれた部分の強度を補強するために、水平部104aと垂直部104bとからなる断面形状が略L字状で長手方向を補強部材70の略円周部71とほぼ同心の円弧になるように曲げ加工した金属製の後部補強体104を設け、この後部補強体104の両端部の水平部104aに前記補強部材70の水平部122に設けたねじ挿通穴74と共締めできるねじ挿通穴105を設け、互いを共締めしたものである。これにより、補強部材70の左右に分かれた部分が塞がり、補強部材70の形状は完全に閉じた略円周状の環となる。
【0043】
以上のように構成したことにより、無駄なスペースを使用することなく、完全に閉じた略円周状の補強部材70で蓋体10の強度を高めることができるので、通電調理時に内圧が高まり蓋体10を変形させる力が作用しても、蓋体10の左右、前後の強度バランスが確保でき、圧力による蓋体10の変形や損傷などを確実に防止することができる。
【0044】
実施の形態4.
図16は本発明の実施の形態4に係る炊飯器の補強部材の上面図である。なお、実施の形態1の補強部材と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
実施の形態1では、補強部材70は帯状の金属板100を折り曲げ加工してコの字状の均一な断面形状を構成し,ベンド加工にて略円周状に形成したものである。
これに対して、本実施の形態に係る補強部材70は、帯状の金属板100の長手方向の一側面を波形106に切断し、その後折り曲げ加工によって構成したL字状の断面の水平部122を連続的に変化させたものである。
【0045】
次に、この補強部材70の加工工程について説明する。図16(a)〜(d)は、補強部材70の加工工程概略図である。まず、図16(a)に示すように、帯状の金属板100の長手方向の一側面を外側に2つの山を有する左右対称な波形106に切断し、その後波形106が形成された金属板100に、ヒンジ軸挿通穴73とフック55の支持軸63の挿通穴78を穿設する場所となる内側垂直部121やねじ挿通穴74を穿設する場所となる水平部122を決めるために折曲げ部103を決めておく。そして、ヒンジ軸挿通穴73と挿通穴78を内側垂直部121に、ねじ挿通穴74を水平部122に穿設しておく(図16(b))。
次に、図16(a)にて決めておいた折曲げ部103部分で折り曲げ加工して内側垂直部121と水平部122を形成する(図16(c))。この時の折り曲げ方向は、内側垂直部121と水平部122がほぼ垂直になるような断面略L字状とする。
また、ヒンジ軸挿通穴73と隣りのねじ挿通穴74との間の水平部122に後端曲げ部101を決めておく。そして、図16(d)に示すように水平部122を上向き、内側垂直部121を内側にした状態でベンド加工を施し、図示するような略円周部71を形成する。このとき、後端曲げ部101部分で折り曲げ加工も行われ、ヒンジ取付垂直部125とヒンジ取付水平部126とで構成されるヒンジ取付部124を形成して、補強部材70が完成する。この時、水平部の幅は図16(d)に示すように略円周部71の前部及び後部から前後方向に連続的に増加していき、図16(d)のB−B断面図に示すように前部が狭いWbであり、図16(d)のA−A断面図に示すように左右の部分が最大のWaとなる。後部も狭い。
なお、略円周部71の大きさは、中蓋12の幅方向に近い大きさまたは内釜6の大きさと略同等にしても良い。
【0046】
本実施の形態に係る補強部材70は事前に帯状の平板の長手方向の一側面を波形106に切断し、その後曲げ加工による断面を連続的に変化させる。この場合、ベンド加工をすることで、補強部材70の前後方向の中間部107で幅が最大となり、変形の力が最も大きくかかる蓋体10の中央部付近の幅や断面二次モーメントが前後の幅と比べ大きい構成となる。
【0047】
このように構成したことにより、蓋体10の中央部付近に大きな変形となる力が作用するが、本実施の形態においては、蓋体10内に略円周状の補強部材70を構成し、力の大きい中央部は変形をしにくくすることができ、圧力による蓋体10の変形や損傷などを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 炊飯器本体、2 ヒンジ部、3 コイル台、4 電磁誘導コイル、5 温度センサー、6 内釜、6a フランジ、7 制御部、8 操作部、9 係止部、10 蓋体、11 上蓋、12 中蓋、13 内蓋、14 中蓋中間部材、15 凹部、16 開口部、17 カートリッジ、18 筒状部、19 通気穴、20 蒸気口、21 凹部、22 穴、23 蓋開閉ボタン、24 本体部、25 係止片、26a,26b ロック棒、27 押圧部、28 ばね、30 弁室、31 開口部、32 シール部材、33 弾性体、34 蒸気通路、35 ガイド部、40 スライド部材、41 本体部、42 開口部、43a,43b ロック部、44 円筒部、45 円板、46 突部、47 フランジ、50 ソレノイド、51 ねじ、52 可動鉄心、53 復帰ばね、55 フック、56 水平片、57 垂直片、58a、58b 支持腕、59 軸挿通穴、60 受け片、61a、61b 係止片、62 係止爪、63 支持軸、64 ばね、65 シール、70 補強部材、71 略円周部、73 ヒンジ軸挿通穴、74 ねじ挿通穴、75a,75b 前部補強体、76 折曲げ部、78 挿通穴、80 ねじ、85 開口部、86 内筒、88 蒸気通路、89 弁孔、90 弁座、91 調圧ボール、100 金属板、101 後端曲げ部、102 垂直片、103 折曲げ部、104 後部補強体、104a 水平部、104b 垂直部、105 ねじ挿通穴、106 波形、107 中間部、111 ボス、121 内側垂直部、122 水平部、123 外側垂直部、124 ヒンジ取付部、125 ヒンジ取付垂直部、126 ヒンジ取付水平部、131 リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内釜を収容し、後部側上部にヒンジ部を有する炊飯器本体と、
後端部が前記ヒンジ部を介して前記炊飯器本体に枢支され、この炊飯器本体の上部を開閉自在に覆う蓋体と、
この蓋体に配設された補強部材と、を備え、
この補強部材は、略円周状に構成され、断面形状として少なくとも垂直部とこの垂直部の一端から略垂直に延設された水平部とを有する略円周部と、この略円周部の両端から外方へほぼ平行に延設され、断面形状として少なくとも垂直部とこの垂直部の一端から略垂直に延設された水平部とを有する一対の略直線部と、を備え、前記一対の略直線部の垂直部は対向する位置に前記ヒンジ部と嵌合する穴を有することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記補強部材の略円周部の両端を別体の補強部材で結合したことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記補強部材の略円周部において、この略円周部が形成する略円周状の円の中心と前記略円周部の両端間の中心を結ぶ線とほぼ垂直を成す部分の水平部の幅または断面二次モーメントが他の部分の水平部のそれよりも大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記補強部材の断面形状を略コの字状としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記補強部材の断面形状を略Lの字状としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
前記補強部材の断面は、コの字状の平行する片の一片がもう一片よりも短いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項7】
前記補強部材の外径が内釜の外径と略同等としたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項8】
前記補強部材の係止構造が釜の前後方向長さの中間よりも前方に位置したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項9】
前記補強部材の内部に圧力調整弁、圧力安全弁、カートリッジを位置したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項10】
前記補強部材の断面曲げ部の外側Rを板厚よりも大きくしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項11】
前記補強部材の円周半径Rを断面幅Wに対してR≧4Wとしたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項12】
前記補強部材に沿って中蓋に周方向のリブを形成したことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項13】
前記補強部材の内周に沿って中蓋に周方向のリブを形成したことを特徴とする請求項12のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項14】
前記補強部材の外周に沿って中蓋に周方向のリブを形成したことを特徴とする請求項12に記載の炊飯器。
【請求項15】
前記補強部材の下部の中蓋に周方向のリブを形成し、リブ上に補強部材と、この補強部材を前記リブにとめるねじ取り付け部を設けたことを特徴とする請求項12に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−217769(P2011−217769A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86406(P2010−86406)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】