説明

炊飯器

【課題】従来の炊飯器では、炊飯後に外蓋を開放すると、結露受け皿の下面に付着した結露が内鍋内や外蓋の回転軸近傍に垂れ落ちてしまい、炊きあがったご飯が水っぽくなってしまったり、回転軸近傍に水たまりができたりという問題があった。
【解決手段】上記課題は、内鍋と、該内鍋を着脱自在に収納する本体と、該本体の上方に備えられ、外蓋回転軸を支点として開閉する外蓋と、該外蓋に着脱自在に装着された内蓋と、該内蓋に着脱自在に装着された結露受け皿と、を具備しており、前記結露受け皿は内鍋側に斜面を有しており、該斜面の前記外蓋回転軸側の端部には、前記外蓋を開放したときに、前記結露受け皿に付着した結露水を前記結露受け皿と前記内蓋の間に形成されるタンクに導く露回収穴が設けられている炊飯器によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体内に収納した内鍋内に炊飯中に発生する結露水を貯溜する結露受け部を設け、蒸らし中及び保温中に前記結露受け部から発生する蒸気でご飯を蒸らし、保温時のご飯の乾燥を低減する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯終了後の蒸らし、保温中に内鍋内に蒸気を供給し、該蒸気により美味にご飯を蒸らし、保温中に蒸気で加湿する炊飯器として、特許文献1には、本体の上面開口部を覆う外蓋と、本体内に着脱自在に収納される内鍋と、内鍋の上部を覆う内蓋と、内蓋に設けられた内蓋蒸気通路と、外蓋に設けられた外蓋蒸気通路と、外蓋蒸気通路と内蓋蒸気通路との間で蒸気の通過を制限する制限手段を有し、外蓋には内蓋を加熱する蓋加熱手段を備えた炊飯器において、内蓋の下面に内蓋のほぼ全面を覆う結露受け皿を設け、結露受け皿は内蓋より熱容量が小さい材料で構成され、その外周面がシールパッキンを介して前記内蓋の下面に密接し、かつ、結露受け皿は、外周側より内蓋蒸気通路側に近い位置に内蓋側に突出する略リング状の膨出部を有し、該膨出部にリング状に沿って複数個の蒸気流通路を設けた炊飯器が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、本体と、外蓋と、内鍋と、内鍋の上部を覆う内蓋と、内蓋に設けられた内蓋蒸気通路と、外蓋に設けられた外蓋蒸気通路と、外蓋蒸気通路と内蓋蒸気通路との間で蒸気の通過を制限する制限手段を有し、外蓋には内蓋を加熱する蓋加熱手段を備えた炊飯器において、内蓋は外蓋の下面に近接して設けられ、内蓋の下面に該内蓋のほぼ全面を覆う結露受け皿を設け、該結露受け皿は内蓋より熱容量が小さい材料で構成され、その外周面がシールパッキンを介して内蓋の下面に密接し、皿部に複数個の蒸気流通路を設け、蒸らし時と保温時に蓋加熱手段に通電して結露受け皿に溜まった結露水を蒸気流通路から内鍋内に蒸気として供給する炊飯器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−285231号公報
【特許文献2】特開2009−285232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する炊飯器では、同文献の図7に示されるような結露受け皿形状を採用していた。このような結露受け皿を採用することで炊飯時に発生する水蒸気を回収し、蒸らし、保温時に加湿を行うことができたが、更に、ご飯の甘味を増やすために内鍋内に供給する蒸気を増やそうとした場合、結露受け皿に溜まる結露水の量が不足する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、内鍋と、該内鍋を着脱自在に収納する本体と、該本体の上方に備えられ、外蓋回転軸を支点として開閉する外蓋と、該外蓋に着脱自在に装着された内蓋と、該内蓋に着脱自在に装着された結露受け皿と、を具備しており、前記結露受け皿は内鍋側に斜面を有しており、該斜面の前記外蓋回転軸側の端部には、前記外蓋を開放したときに、前記結露受け皿に付着した結露水を前記結露受け皿と前記内蓋の間に形成されるタンクに導く露回収穴が設けられている炊飯器によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、結露受け皿の内鍋側に付着した結露水をタンクに回収して結露受け皿に溜める結露水を増やし、内鍋内に供給する蒸気量を増やすことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施例の炊飯器の外蓋を閉じた状態の断面図。
【図2】図1の炊飯器の外蓋を開いた状態の断面図。
【図3】結露受け皿と内蓋を外蓋側から見た斜視図。
【図4】結露受け皿と内蓋の内鍋側から見た斜視図。
【図5】結露受け皿を内蓋に装着した状態での斜視断面図。
【図6】結露受け皿を内蓋に装着した状態での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例の炊飯器の断面図であり、1は炊飯器の本体、2は本体1の上面開口部を上方から覆う外蓋である。外蓋2は、外蓋回転軸1aを支点として開閉する。3は本体1に挿入される内鍋、4は外蓋2の下面に装着され、内鍋3の上面開口部を覆うステンレス製の内蓋、5は内蓋4の下面に装着される結露受け皿、12は内鍋3を側方および下方から誘導加熱する誘導加熱コイル、13は内鍋3の底面の温度を検知する温度センサである。
【0011】
図2は、図1の炊飯器の外蓋2を開放した状態の断面図であり、7は内蓋4に設けられた内蓋蒸気通路、8は外蓋2に設けられた外蓋蒸気通路、9は内蓋4に設けられ内蓋蒸気通路7から外蓋蒸気通路8への蒸気の放出を制御する圧力調整部、10は外蓋2に設けられ、内蓋4および結露受け皿5を加熱する蓋ヒータである。圧力調整部9は機械的に通路を開閉するものであっても良いし、通路を塞ぐ球などを用いて、球の自重と通過する蒸気の圧力で蒸気の通過を制限するものであっても良い。なお、露回収穴51,露受け部52については後で詳細に説明する。
【0012】
ここで、内鍋3は本体1の上面開口部に着脱自在に収納され、内蓋4は外蓋2に着脱自在に装着され、結露受け皿5は内蓋4に着脱自在に装着されている。内鍋3は、有底筒状であり、その上端部は、本体1からの着脱操作がしやすいように、略水平に折り曲げられている。なお、蓋ヒータ10や誘導加熱コイル12は図示しない制御回路14によって制御されており、加熱制御には温度センサ13から得た情報などが用いられる。
【0013】
次に、図3と図4を用いて、結露受け皿5の内蓋4への装着方法を説明する。図3は、内蓋4と結露受け皿5を、外蓋2の方向から見た斜視図である。結露受け皿5は、内蓋4のほぼ全面を覆うものであり、上面及び下面にフッ素樹脂をコーティングしたアルミ製の皿部5a、その外周に設けられた立ち上げ壁5b、それに嵌め込まれた樹脂製の枠体5c、立ち上げ壁5bに沿って設けられたシールパッキン5dで構成されている。結露受け皿5が内蓋4に装着されると、シールパッキン5dによってシールされたタンク6が両者の間に形成される。また、結露受け皿5には、略同心円状に配置された複数の小穴である蒸気流通穴5jと、長方形状の露回収穴51の、2種類の穴が設けられている。なお、シールパッキン5dは、必ずしも枠体5cの内周壁面に嵌め込まれる必要はなく、他の方法で固定してもよく、要は皿部5aの立ち上げ壁5bの内壁側に位置していて外蓋2を開けたときに皿部5aから滴下する結露水を受けることができればよい。
【0014】
図4は、内蓋4と結露受け皿5を、内鍋3の方向から見た斜視図である。結露受け皿5には、図示しないバネ5fによって上方に付勢される上引掛け具5gと、下引掛け具5hが設けられており、結露受け皿5の下引掛け部5hを内蓋4の下受け具4dに嵌め込んだ後、上引掛け具5gをバネ5fに抗して下に押し下げて内蓋4の上受け具4cに嵌め込み、バネ5fが上に戻ることによって上引掛け具5gが上受け具4cに固定される。このようにして、結露受け皿5を内蓋4に着脱自在に装着することができる。
【0015】
次に、図5および図6の断面図を用いて内蓋4と結露受け皿5の間に構成されるタンク6の構成を詳細に説明する。なお、図5および図6では、下方向が外蓋回転軸1aの方向に相当するものとする。
【0016】
図6に示すように、結露受け皿5には、中心よりも外蓋回転軸1a側に斜面部53を有している。そして、この斜面部53の外蓋回転軸1a側の端部には露回収穴51が設けられており、露回収穴51の更に外蓋回転軸1a側には露受け部52が設けられている。
【0017】
以上で説明した構成を備えた本実施例の炊飯器において、炊飯が完了した後に外蓋2を開放すると、炊飯中に結露受け皿5に付着した結露は、結露受け皿5の表面に沿って下方に垂れ、斜面部53に至る。斜面部53の端部には露回収穴51が設けられているので、結露受け皿5の表面に沿って垂れた露は、矢印に示すように露回収穴51を通って、タンク6に回収される。なお、露回収穴51よりも外蓋回転軸1a側には、斜面部53に略平行な突出斜面を持った露受け部52が設けられているので、傾斜面53を剥離した露が内鍋3に垂れたり、外蓋回転軸1a近傍に垂れたりするのが抑制される。
【0018】
本実施例の炊飯器は以上の構成よりなり、以下でその動作を説明する。
【0019】
まず、炊飯時の動作を説明する。使用者が内鍋3に適量の米と水を入れ、外蓋2を閉めると、内鍋3の上部を内蓋4が塞ぎ、密閉した空間となる。このとき、この空間内には内蓋4と結露受け皿5で構成されるタンク6も含まれる状態となる。
【0020】
その後、使用者が炊飯操作をすると、炊飯が開始され、誘導加熱コイル12に通電されて内鍋3が加熱される。ただし、この時、蓋ヒータ10には通電されていない。
【0021】
内鍋3の内部が60℃を越えるころから、湯気(低温の蒸気)が発生し、内鍋3の内周面に触れてその温度差によって結露する。結露によって結露受け皿5の内鍋3との対向面は熱をもらうことになるので、結露受け皿5の温度は内鍋3内部の湯の温度に近い状態で上昇していく。
【0022】
このとき、内蓋4は、結露受け皿5によりほぼ全面が覆われており、湯気(低温の蒸気)が触れないことと、皿部5aの枠体5cが樹脂で構成されていることにより、結露受け皿5からの放射熱は受けるものの、結露受け皿5からの熱伝導が少なく、結露受け皿5よりも低い温度で推移する。
【0023】
やがて、内鍋3内が沸騰すると、蒸気(100℃)が発生して圧力が高まり、結露受け皿5の蒸気流通穴5jと露回収穴51から内蓋4と結露受け皿5で構成されるタンク6に蒸気が流入する。
【0024】
このとき、圧力調整部9が開放されているので、この蒸気は、内蓋蒸気通路7,圧力調整部9,外蓋蒸気通路8を経て外部へと放出されるが、内蓋蒸気通路7より結露受け皿5の蒸気流通穴5jの開口面積が大きいので、内鍋3の内部と結露受け皿5と内蓋4の間隙の圧力はほぼ等しく、結露受け皿5と内蓋4の間のタンク6に蒸気が充満することになる。
【0025】
加えて、結露受け皿5の蒸気流通穴5jと露回収穴51は、内蓋蒸気通路7と対向しない位置にあるので、直行的に蒸気が内蓋蒸気通路7から出ることがなく、結露受け皿5と内蓋4のタンク6に蒸気が充満することになる。この充満した蒸気は、結露受け皿5に比べて温度が低く、温まりにくい内蓋4の結露受け皿5の対向面に結露し、水滴化して結露受け皿5の上に溜まる。内蓋4は、温まりにくく、かつ、蓋ヒータ10は加熱動作をしていないので、内蓋4に触れた蒸気は放熱され、内蓋4に継続的に結露して水滴化し、結露受け皿5の上に溜まる。以上で説明したようにして、炊飯時には、結露受け皿5によって形成されるタンク6内に水が蓄えられる。
【0026】
次に、炊飯が完了した後に行われる蒸らし時の動作について説明する。蒸らしに移行すると、蓋ヒータ10に通電されて内蓋4が加熱され、内蓋4の下面から滴下して結露受け皿5に溜まった水滴が加熱され蒸気となる。なお、結露受け皿5は、アルミ板で構成されており、ステンレス板で構成される内蓋4に比べて材料の比熱,重量,厚さ,熱容量が小さく、温まりやすくなっている。
【0027】
このとき、圧力調整部9は閉じられているので、蒸気が外蓋蒸気通路8から外部に出ることがなく、蒸気圧によって結露受け皿5の蒸気流通穴5jと露回収穴51から内鍋3内の全体に均一に蒸気が供給され、内鍋3の内部を蒸気で充満させることになる。これによって、内鍋3内の全体を十分に蒸らし、ご飯を美味に仕上ることができる。
【0028】
保温中においても、蒸らし時と同様に、内鍋3内の全体に均一に蒸気が供給され、内鍋3の内部を蒸気で加湿し、ご飯の乾燥をおさえながら保温ができる。
【0029】
なお、上記した炊飯から保温までの工程における誘導加熱コイル12と蓋ヒータ10通電状態の制御は、内鍋3の温度を検知する温度センサ13と、該温度センサ13からの温度情報を入力する制御回路14によって行われる。
【0030】
また、蓋ヒータ10は、蒸らし工程と保温工程中、常に通電状態にしておいてもよいし、通電と遮電を繰り返してもよい。特に、保温工程での省エネを考慮するのであれば、通電と遮電を繰り返すのが望ましい。
【0031】
一方、ご飯を装うために、外蓋2を開けた場合には、結露受け皿5に傾斜部53,露回収穴51,露受け部52が設けられているため、結露受け皿5に付着した結露を露回収穴51から回収することができ加湿に有効利用することができると共に、結露受け皿5に付着した結露が内鍋3内に滴下したり、本体1等を濡らしたりすることを抑制できる。そして、外蓋2を閉じた後は、結露受け皿5に溜まった結露水により内鍋3の内部を蒸気で加湿してご飯の乾燥をおさえることに有効に使用することができる。
【0032】
なお、炊飯器を使用し終わった後に結露受け皿5を清掃する場合には、内蓋4の下面から結露受け皿5を取り外して洗う。結露受け皿5の取り外しは、取り付け時と逆で、結露受け皿5の上部の上引掛け具5gをバネ5fの付勢力に抗して下に押し下げ、内蓋4の上受け具4cから外す。その後、結露受け皿5を幾分上に持ち上げて下引掛け部5hを内蓋4の下受け具4dから外せばよい。
【0033】
この時も皿部5aの上面及び下面にフッ素樹脂がコーティングされているため、皿部5aに結露水が染みとなってこびり付いたり、おねばがこびり付いたりすることがなく、きれいに洗うことができる。
【0034】
上記したように、本実施例によれば、結露受け皿5の内鍋3側に付着した結露水をタンク6に回収して結露受け皿5に溜める結露水を増やし、内鍋3内に供給する蒸気量を増やすことで、ご飯の甘味を増すことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 本体
2 外蓋
3 内鍋
4 内蓋
5 結露受け皿
5a 皿部
5b 立ち上げ壁
5c 枠体
5d シールパッキン
5j 蒸気流通穴
6 タンク
7 内蓋蒸気通路
8 外蓋蒸気通路
9 圧力調整部
10 蓋ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋と、
該内鍋を着脱自在に収納する本体と、
該本体の上方に備えられ、外蓋回転軸を支点として開閉する外蓋と、
該外蓋に着脱自在に装着された内蓋と、
該内蓋に着脱自在に装着された結露受け皿と、
を具備しており、
前記結露受け皿は内鍋側に斜面を有しており、該斜面の前記外蓋回転軸側の端部には、前記外蓋を開放したときに、前記結露受け皿に付着した結露水を前記結露受け皿と前記内蓋の間に形成されるタンクに導く露回収穴が設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、
前記結露受け皿には、前記露回収穴よりも前記外蓋回転軸側に、露受け部が設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項2に記載の炊飯器において、
前記結露受け部は、前記結露受け皿の斜面と略平行な斜面を備えていることを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項1に記載の炊飯器において、
前記外蓋には蓋ヒータが設けられており、
保温時には前記蓋ヒータを加熱して、前記タンクに蓄えられた水から蒸気を生成し、前記露回収穴を介して前記内鍋に蒸気を供給することを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−234996(P2011−234996A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110724(P2010−110724)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】