説明

炊飯器

【課題】温度検知の精度を向上し、省エネを向上した炊飯器を提供する。
【解決手段】本体31と、本体31の底ケース39と、お米と水を入れる内釜32と、内釜32を本体31に着脱自在に収納する内容器41と、内容器41の外側底面部に配置され内釜32を誘導加熱する加熱コイル34と、加熱コイル34に電力を供給する制御部35と、加熱コイル34と制御部35に送風して冷却する冷却ファン36と、内釜32の外側底面部と当接して温度を検出する温度センサユニット47と、底ケース39に温度センサユニット47の外周側に位置するように設けた上方を開口した筒状リブ39aと、加熱コイル34と筒状リブ39aとに圧縮固定され温度センサユニット47の周囲を囲う断熱材33を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検知の精度を向上させた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の炊飯器は、浸し工程で米に水分を吸収させ、加熱工程で加熱コイルにより内釜底部を加熱して、内釜底部に当接する温度検出部で内釜の温度を検知し、やがて、沸騰して米が水を吸って水がなくなると急激に温度が上がるドライアップと呼ばれる状態の温度を検知して、予め設定された温度に到達したと判断すると、蒸らし工程に移行して、全炊飯工程を経てご飯を炊くものが普及してきた。
【0003】
同時に、加熱コイルと加熱コイルを動作する基板に送風する冷却ファンを備え、加熱コイルで加熱中に送風して加熱コイルや基板を冷却するものが一般的である。
【0004】
そして、炊飯の電力消費を少なくする省エネが要望されている。
【0005】
特許文献1について、同文献図1を引用した図8の説明図で示す。
【0006】
特許文献1は、炊飯器1の釜2を電磁誘導コイル6A,6Bで加熱し、ファンモータ9で制御基板10等を冷却し、筒状胴部4Bを備えて釜2の胴部を覆い、珪藻土からなる筒状断熱部材5を備え、釜収容ケース4の開口4cに温度センサ7が装着され、さらに開口4cの外側に筒体20が設けられ、筒体20は温度センサ7を囲むように下方へ伸び、炊飯器本体8の底部23と隙間21を設け、炊飯器本体8には、前記筒体20の下部に穴22を設けられているものがある。(前記の番号20〜23は同文献では番号なし。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−154831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、炊飯器に要求される要望は、ごはんをおいしく炊き上げる要望と同じくらい省エネルギーに対する要望も大きくなってきている。
【0009】
しかし、特許文献1に示す炊飯器は、温度センサ7を囲う筒体20の下部に設けられた隙間21からファンモータ9の風が流入し、温度センサ7が冷やされ、温度センサ7の検知する温度が釜2の温度よりも低く検出し、釜2の温度変化に対して遅れることが考えられる。
【0010】
よって、ドライアップ時の釜2の温度は急勾配に立上るが、温度センサ7の検出する温度変化が緩やかになるため、ドライアップ到達検出温度に到達するまで時間がかかる。
【0011】
そのため、ドライアップ直前の加熱を必要以上に継続したり、最悪の場合は蒸らし工程に移行できない事が予想される。
【0012】
結果として全炊飯工程での消費電力の無駄が発生して省エネ特性が悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本体と、該本体の底ケースと、お米と水を入れる内釜と、該内釜を前記本体に着脱自在に収納する内容器と、該内容器の外側底面部に配置され前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと、該加熱コイルに電力を供給する制御部と、前記加熱コイルと前記制御部に送風して冷却する冷却ファンと、前記内釜の外側底面部と当接して温度を検出する温度センサユニットと、前記底ケースに前記温度センサユニットの外周側に位置するように設けた上方を開口した筒状リブと、前記加熱コイルと前記筒状リブとに圧縮固定され前記温度センサユニットの周囲を囲う断熱材を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、近年の要望である、ごはんをおいしく炊き上げる要望と同じくらい省エネルギーに対する要望も大変大きくなっている事情に答えることができる。
【0015】
本体の底ケースに設けた筒状リブの上端部と本体の内容器に設けた加熱コイルで断熱材を圧縮固定し、温度センサユニットに風が当たるのを防止する防風手段を設けたので、温度センサユニットに設けている温度センサの検知する温度が、内釜の温度と略等しくなり温度変化に対して速やかに検知できる。
【0016】
よって、ドライアップ時の内釜の温度は急勾配に立上るのを、温度センサが俊敏に温度変化を検出するため、ドライアップ到達検出温度に速く到達する。
【0017】
そのため、ドライアップ直前の加熱を継続する時間を短くでき、速やかに蒸らし工程に移行できる。
【0018】
結果として全炊飯工程での消費電力の無駄がなく省エネ特性を向上することができる。
【0019】
また、組立て工程において、本体に底ケースを固定することによって、筒体保持体部の周囲で加熱コイルに載置した断熱材が筒状リブの上端部と圧縮固定されるため、取付構造を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施例における炊飯器の全体横断面図である。
【図2】同炊飯器を裏返して底ケースを取外して上から見た斜視図である。
【図3】同炊飯器の底ケースの内側の構成を示す上面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】一実施例における炊飯器の底ケース内側の斜視図である。
【図6】同炊飯器の制御ブロック図である。
【図7】同炊飯器の炊飯動作チャート図である。
【図8】従来の炊飯器の全体横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1において、炊飯器の本体31の内側の内容器41には上面が開口した内釜32が着脱自在に挿入されている。
【0023】
本体31の上面には、下面に内蓋58を有する蓋53が開閉自在に取付けられており、蓋53で本体31の上面開口部を覆い、外周にパッキン58aを備える内蓋58で内釜32の上面開口部を塞いでいる。
【0024】
本体31の下部で、内釜32の外側底面部には、内釜32を誘導加熱するための加熱コイル34が設けられている。
【0025】
また、本体31の下部で、内釜32の外側底面部の中央部に当接し、内釜32の温度を検出する温度センサユニット47が設けられ、その温度情報を制御部35に入力して、加熱コイル34の加熱を制御する。
【0026】
制御部35は、本体31内の温度の低い空間部に配置されている。
【0027】
蓋53の下面に配置された内蓋58の上面には50W程度のコードヒータ等からなる蓋ヒータ42が設けられ、内蓋58の露付きを蒸発させる働きをする。
【0028】
内蓋58には調圧弁59と、蓋53に調圧弁制御部51を備え、調圧弁59は球体で内釜32内部の気圧が1.3気圧を超えると開口部を開き1.3気圧を維持する構造である。調圧弁制御部51は、ソレノイドによって前記球体を動かして調圧弁59を調圧動作状態か開放状態かを制御する。
【0029】
蓋53にはラビリンス構造で蒸気を結露水に変える蒸気回収ユニット50を備える。蒸気回収ユニット50には調圧弁59から出た蒸気が流入し、内蓋58に結露水を戻す。
【0030】
本体31の前面には、米の種類,炊き方などのメニューや、「炊飯」,「切」等を操作する操作部52を備え、制御部35に接続する。
【0031】
本体31の前方下部に冷却ファン36を備え、制御部35と加熱コイル34を含む本体31内部を冷却する。
【0032】
図1〜図5において、温度センサユニット47周囲の構造について説明する。
【0033】
図1は全体横断面図で、図2は炊飯器を裏返して底ケース39を取外して上から見た斜視図である。
【0034】
図1,図2において、温度センサユニット47は、筒体38の上方に上蓋38aを備え、上蓋38aに当接するように温度センサ37を固定し、筒体28の下方は開口部38bを備える。
【0035】
内釜32を収容する内容器41の底面中央部に温度センサユニット47の外周(筒体38)を支える筒体保持部41aを備える。筒体保持部41aの下端を加熱コイル34よりも低く位置する。
【0036】
筒体保持部41aに温度センサユニット47を組込んだ状態で、温度センサユニット47の外周と筒体保持部41aとで通水口41bを形成する。この通水口41bは、内釜32の外側底面部に付着した水滴が、内容器41の底部に垂れても、内容器41内に溜まらないように、本体31の底ケース39へ流出させるためのものである。
【0037】
加熱コイル34の下面で、筒体保持部41aと通水口41bの外側を断熱材33で覆っている。断熱材33は、発砲樹脂製で、縦横60mm厚さ10mmの直方体で中央部に筒体保持部41aを通すφ30mmの穴が開いていて、角を冷却ファン36に向けて図2に示すように配置する。また、断熱材33は、加熱コイル34に接触させて配置するため、耐熱150℃で難燃グレードはUL94 V−0の部品を用いている。
【0038】
図3は、底ケース39の構成を示す内側の上面図で、図4は図3のA−A断面図を、図5は底ケース39の斜視図を示している。
【0039】
底ケース39は、前側に吸気口39f、後側に排気口39g、略中程に円形のリブ39dを備える。
【0040】
リブ39dの内部に、中央に穴を持つ円盤状のアルミバン43をボス39eにネジ44で固定している。アルミバン43は、本体31下部に加熱コイル34による磁束漏れ防止として設けられている。
【0041】
リブ39dの内側に格子状の補強リブ39hに囲まれて配置される複数の排水孔39cを設け、本体31内の結露水などの排水をする。
【0042】
底ケース39の略中央部には、内容器41の底面中央部に設けた温度センサユニット47の外周(筒体38)を支える筒体保持部41aの外周側に位置し、上方を開口した筒状リブ39aを設けている。筒状リブ39aは、リブ39dより高く、略均一の高さで上端部39a1を構成している。
【0043】
筒状リブ39aの内側に補強リブ39jに囲まれて排水孔39bを備える。排水孔39bは、前記した内釜32の外側底面部に付着した水滴が内容器41の底面部に垂れ、筒体38の外周と筒体保持部41aとで形成する通水口41bから垂れた水滴を本体31の外へ流出させるためのものである。
【0044】
本体31に底ケース39を組込むときに、筒状リブ39aの上端部39a1で加熱コイル34に当接した断熱材33を圧縮固定する。底ケース39の筒状リブ39aと断熱材33とで、筒状リブ39a内の筒体38の開口部38bに風が入るのを防止する防風手段40を構成する。
【0045】
前記の温度センサユニット47周囲の構造で、図1,図2に示す冷却ファン36の送風は、吸気口39fから吸気し、制御部35を冷却する風と、加熱コイル34を含む本体31内部を冷却する風に分かれる。そして、両方の風が排気口39gから排気されて、本体31内部の温度が維持される。
【0046】
ここで、加熱コイル34を冷却する風のうち底ケース39に沿う風は、底ケース39のリブ39dを越えアルミバン43の上面を流れ、筒状リブ39aの外周を流れる。一方加熱コイル34に沿って流れる上部の風は加熱コイル34に圧縮固定した断熱材33の左右側面の外周を流れる。
【0047】
そのため底ケース39に沿う風、加熱コイル34に沿う風の両者の流れによって、筒状リブ39aと断熱材33で構成する防風手段40の内部には風が流入しない。
【0048】
よって、内容器41の底面中央部に設けた筒体保持部41aの内部に保持された温度センサユニット47に風が当たらないので、温度センサユニット47に設けた温度センサ37の温度検知の精度を向上するものである。
【0049】
図6において、制御部35は、マイコンによって構成されており、前記した温度センサ37が検出した温度情報を入力し、その温度情報に基づいて加熱コイル34と、冷却ファン36と、調圧弁制御部51と、蓋ヒータ42を制御する。米の種類,炊き方などのメニューや、「炊飯」,「切」等の操作情報は操作部52から制御部35に信号を送られる。
【0050】
本実施例は以上の構成よりなり、次にその炊飯動作を図7で説明する。
【0051】
炊飯に際して、使用者は内釜32内に米と適量の水を入れ、本体31内に収納して蓋53を閉じる。説明に用いられる時間には、白米3カップの例を示したものである。
【0052】
次に、本体31の前面側上部に配置した操作部52で「炊飯」スイッチを操作して炊飯を開始する。
【0053】
前記「炊飯」スイッチの信号が制御部35に入力されると浸し工程に入る。
【0054】
浸し工程では、加熱コイル34により約400Wの電力で内釜32を約60℃に加熱し、冷却ファン36は送風を開始する。また、調圧弁制御部51には通電せず、内蓋58の調圧弁59は開放動作を継続する。
【0055】
次に、制御部35による浸し時間の計時が終了すると浸し工程が終了して加熱工程に移行する。
【0056】
加熱工程では、加熱コイル34に約1000Wの電力を供給し内釜32を加熱すると、内釜32内の水が沸騰し、米を加熱する。同時に加熱工程開始時から調圧弁制御部51に通電されて内蓋58の調圧弁59は調圧状態となる。冷却ファン36は送風を継続する。すると、温度と圧力が上昇していき、加熱工程途中から加熱コイル34へ供給する電力が約500Wに制御される。
【0057】
そして、加熱が進むと内釜32の内部の圧力が上昇し、調圧弁59によって内釜32内部の圧力が約1.3気圧に維持され、沸点が107℃になり、内釜32の内部の温度を大気圧の状態よりも高温に維持する。
【0058】
やがて、沸騰して米が水を吸って水がなくなると急激に温度が上がるドライアップと呼ばれる状態となる。内釜32の温度が120℃まで急上昇すると、内釜32の外側底面に当接している温度センサユニット47に設けている温度センサ37がその温度を検出して制御部35に信号を送り、その結果、制御部35の指令により、加熱コイル34への電力の供給を一端停止し、加熱が終了する。
【0059】
この加熱工程が終了すると、米のねばりや甘みを出す蒸らし工程に移行する。
【0060】
蒸らし工程では、加熱コイル34に約500Wの電力を適宜供給する状態である。また蓋ヒータ42は、蒸らし工程の前半は通電せず、加熱を行わない。冷却ファン36は送風を継続し、調圧弁59も調圧動作を継続して、内釜32内部の圧力は大気圧よりも高い状態で100℃以上の高温に維持する。
【0061】
蒸らし工程の後半は、蓋ヒータ42に通電して内釜32内を上方から加熱する。蒸らし工程の後半のみ蓋ヒータ42で加熱を行い、蓋センサ(図示せず)が110℃を検出するまで内蓋58が加熱されることにより、蒸らし中に内蓋58についた結露水を飛ばすことができる。この蓋ヒータ42の加熱は蓋センサ(図示せず)から信号を制御部35に送られることにより一定温度に保たれるように制御される。
【0062】
そのため、加熱工程で約15分、蒸らし工程で約15分の間、内釜32内部の圧力を最大1.3気圧で大気圧より高い状態で100℃以上の高温に維持するため、一般に「米」が「ごはん」になるにはβ澱粉をα澱粉にするために、98℃以上を20分間保つ必要があると言われている条件を、十分満たして美味しいご飯を炊き上げることができる。
【0063】
蒸らし工程が終了すると炊飯工程のすべてが終了する。終了後は冷却ファン36は停止し、調圧弁59は開放状態となる。
【0064】
上記した本実施例によれば、近年の要望である、ごはんをおいしく炊き上げる要望と同じくらい省エネルギーに対する要望も大変大きくなっている事情に答えることができる。
【0065】
本体31の底部39に設けた筒状リブ39aの上端部39a1と本体31の内容器41に設けた加熱コイル34で断熱材33を圧縮固定し、温度センサユニット47に風が当たるのを防止する防風手段40を設けたので、温度センサユニット47に設けている温度センサ37の検知する温度が、内釜32の温度と略等しくなり温度変化に対して速やかに検知できる。
【0066】
よって、ドライアップ時の内釜32の温度は急勾配に立上るのを、温度センサ37が俊敏に温度変化を検出するため、ドライアップ到達検出温度に速く到達する。
【0067】
そのため、ドライアップ直前の加熱を継続する時間を短くでき、速やかに蒸らし工程に移行できる。
【0068】
結果として全炊飯工程での消費電力の無駄がなく省エネ特性を向上することができる。
【0069】
また、組立て工程において、本体31に底ケース39を固定することによって、筒体保持体部41aの周囲で加熱コイル34に載置した断熱材33が筒状リブ39aの上端部39a1と圧縮固定されるため、取付構造を簡略化できる。
【符号の説明】
【0070】
31 本体
32 内釜
33 断熱材
34 加熱コイル
35 制御部
36 冷却ファン
37 温度センサ
38 筒体
38a 上蓋
38b 開口部
39 底ケース
39a 筒状リブ
39a1 上端部
41 内容器
41a 筒体保持部
47 温度センサユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体の底ケースと、お米と水を入れる内釜と、該内釜を前記本体に着脱自在に収納する内容器と、該内容器の外側底面部に配置され前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと、該加熱コイルに電力を供給する制御部と、前記加熱コイルと前記制御部に送風して冷却する冷却ファンと、前記内釜の外側底面部と当接して温度を検出する温度センサユニットと、前記底ケースに前記温度センサユニットの外周側に位置するように設けた上方を開口した筒状リブと、前記加熱コイルと前記筒状リブとに圧縮固定され前記温度センサユニットの周囲を囲う断熱材を設けたことを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245033(P2011−245033A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121116(P2010−121116)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】