説明

炊飯器

【課題】表示手段の消費電力が増えた場合でも、停電中のバックアップ時間を極力延ばすことができる炊飯器を提供する。
【解決手段】本発明の炊飯器は、制御手段であるCPU203と、表示手段である表示LCD204と、停電中にCPU203や表示LCD204に電源を供給するバックアップ電源とを備える。バックアップ電源は、CPU用電池208AおよびLCD用電池208Bとして、CPU203と表示LCD204にそれぞれ別個に設けられており、表示LCD204に設けたバックアップは、交換可能な電池すなわちLCD用電池208Bとして設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯機能を有する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す炊飯器は、時計やメニューなどを表示する表示手段として、表示LCDを備えている。図20は、こうした表示LCDを含む炊飯器のバックアップ機能に関連した構成を示したもので、ここでは電源プラグ201を図示しないコンセントに差し込むと、商用電源からの交流入力電圧が電源回路202で整流・降圧される。この整流・降圧した電圧は、炊飯および保温を制御するCPU203と、前記表示LCD204と、ヒータなどの負荷205を制御する負荷制御回路206に電源電圧として供給される。これを受けてCPU203は、表示LCD204や負荷制御回路206などの動作を制御する。
【0003】
また、従来は停電時のバックアップ電源として電池208が設けられている。すなわち、商用電源の無通電時(電源プラグ201をコンセントに差し込んでいない状態や、商用電源の供給が遮断された状態)には、電源回路202に交流入力電圧が供給されず、電池208からCPU203および表示LCD204に電源電圧が供給される。これにより、停電中もCPU203を駆動させ、表示LCD204に時計やメニューの表示を行なわせることができ、タイマー炊飯の設定中に停電(瞬時停電を含む)があっても、時計の計時や、設定したタイマー時刻およびメニューなどがクリアされることなく、復電時に設定されていたタイマーの動作などを継続することができる。また、販売時の店頭陳列時においても、電池208を利用して表示LCD204の時計表示やメニュー表示が可能である。
【0004】
しかし、表示LED204の大型化に伴なってその消費電流が増大し、停電中のバックアップ時間を従来と同等に確保するためには、電池208の容量を増やす必要がある。すなわち電池208の容量を増やすと、電池208を収納するスペースが増えたり、電池208としてのコストが高くなる問題を生じる。また、電池208の容量を従来と同等にした場合には、停電中のバックアップ時間が短くなる。例えば、表示LED204の消費電流が従来の2倍になった場合、停電中のバックアップ時間は半分(従来が4年であるとすると2年)になってしまう。さらに、電池208の容量がなくなると、停電状態になった瞬間にCPU203がリセットされ、時計の計時や、設定したタイマー時刻およびメニューなどが初期状態となり、時計や、タイマー時刻や、メニューなどの再設定を頻繁に行なわざるを得なくなる。また、タイマー炊飯の設定中に停電が発生すると、その時点で設定はリセットされ、無効になってしまう。
【0005】
また、特許文献1に示すようなバックアップ電源を備えた炊飯器において、市場で使われた製品が故障などで戻入されたとき、その製品が何ヶ月使用されていたのか判断ができず、その故障原因が、例えば初期不良であるのか、偶発的なものであるのか、あるいは磨耗であるのかが推定しにくい。また。工場で製造してからユーザが実際に使用するまでの期間が不明であり、バックアップ電源の電池寿命、すなわち電池容量を決める際の設計根拠が不明確になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、表示手段の消費電力が増えた場合でも、停電中のバックアップ時間を極力延ばすことができる炊飯器を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別な目的は、ユーザが実際に使用を開始してから、どの程度の時間を経た製品なのかを正しく認識することができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1における炊飯器では、制御手段用のバックアップ電源と、表示手段用のバックアップ電源が別々に設けられるので、表示手段用のバックアップ電源の容量がなくなっても、停電中に制御手段は引き続きその動作を継続し、例えば時計の計時や、タイマー時刻や、メニューなどの設定を保持して、復電時に停電前の状態に戻ることができる。また、制御手段用のバックアップ電源は、停電中に表示手段をバックアップする必要がなく、従来のバックアップ時間を確保しながら、その容量を小型化することができる。よって、表示手段の消費電力が増えた場合でも、停電中のバックアップ時間を極力延ばすことができる。
【0010】
さらに、制御手段と表示手段の各バックアップ時間を別々に規定できるので、表示手段に設けられる電池を交換可能にすることで、当該電池の容量を任意に選ぶことができる。一例として、販売時の店頭に陳列しているときにのみ表示を行ないたい場合は、小容量の電池を表示手段用のバックアップ電源として使用し、その後、ユーザが使用する段階で、それよりも大きな容量の電池を表示手段用のバックアップ電源として使用すればよい。また、表示手段用のバックアップ電源の容量がなくなったときに、停電中における表示手段の必要,不要をユーザ側で判断し、適切な時期に電池の交換を行なうことができる。
【0011】
本発明の請求項2における炊飯器では、表示手段用の電池が未装着状態となっているので、ユーザが適切な容量の電池を直ぐに装着できる。
【0012】
本発明の請求項3における炊飯器では、制御手段用のバックアップ電源の容量が、製品寿命の期間内でなくなるのを防止して、例えば時計の計時や、タイマー時刻や、メニューなどの再設定を、製品の使用途中で行なうような煩わしさを解消できる。
【0013】
本発明の請求項4における炊飯器では、工場出荷時からの時間を計測手段がカウントし、初めてユーザが使用したときの時間を記録手段が記録する。そのため、製品の戻入時などに、送出手段からそれぞれの時間のデータを取得すれば、ユーザが実際に使用を開始してから、どの程度の時間を経た製品なのかを正しく認識することができる。また、工場出荷時に日時を設定する必要がなく、製造時における設定項目が増えずに済むので、工程時間を短縮して管理を楽にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の炊飯器では、表示手段の消費電力が増えた場合でも、停電中のバックアップ時間を極力延ばすことができる。また、表示手段に設けられる電池を、任意の容量で適切な時期に交換することができる。
【0015】
請求項2の炊飯器では、ユーザが適切な容量の電池を直ぐに装着できる。
【0016】
請求項3の炊飯器では、製品の使用途中で再設定を行なう煩わしさを解消できる。
【0017】
請求項4の炊飯器では、ユーザが実際に使用を開始してから、どの程度の時間を経た製品なのかを正しく認識することができる。また、製造時における設定項目が増えずに済むので、工程時間を短縮して管理を楽にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の参考例における炊飯器の全体断面図である。
【図2】同上、加圧時における要部の拡大断面図である。
【図3】同上、減圧時における要部の拡大断面図である。
【図4】同上、図2とは別な断面であらわした加圧時における要部の拡大断面図である。
【図5】同上、電気的構成を示すブロック図である。
【図6】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【図7】同上、駆動ポンプおよびその周辺の回路図である。
【図8】同上、電磁ポンプの電流値と、鍋内の真空度との経時変化を示すグラフである。
【図9】同上、減圧制御手段の動作手順を示すフローチャートである。
【図10】同上、減圧制御手段の別な動作手順を示すフローチャートである。
【図11】同上、別な電磁ポンプの電流値と、鍋内の真空度との経時変化を示すグラフである。
【図12】同上、減圧制御手段のさらに別な動作手順を示すフローチャートである。
【図13】同上、本発明の実施例における炊飯器のハンドルおよびその周辺をあらわした炊飯器の部分断面図である。
【図14】同上、断熱部材の斜視図である。
【図15】本発明の実施例におけるバックアップ機能に関連する各部のブロック構成図である。
【図16】同上、市場での使用状態をモニタする機能に関連する各部のブロック構成図である。
【図17】同上、コネクタを実装するプリント基板の斜視図である。
【図18】同上、コネクタを実装するプリント基板の断面図である。
【図19】同上、図17および図18の例とは別なコネクタを実装するプリント基板の断面図である。
【図20】従来例におけるバックアップ機能に関連する各部のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における炊飯器の好ましい実施例を説明する。
【参考例】
【0020】
まず、図1に基づき、本発明の参考例である炊飯器の、実施例と共通する構成について説明する。同図において、炊飯器の外郭下部をなす枠体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3とにより、上面を開口して形成され、外枠3の底部開口を覆う底板4が設けられている。その際、上枠2や底板4は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂で形成される一方で、外枠3は清掃性や外観品位を向上させるために、例えばステンレスなどの金属部材で形成される。また、上枠2の上面内周部から一体に垂下させて形成されるほぼ筒状の鍋収容部6と、この鍋収容部6の下面開口を覆って設けられ、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で形成される内枠8とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体9が形成される。
【0021】
前記鍋収容体9内には、米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の鍋11が着脱自在に収容される。鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。鍋11の側面中央から上部に発熱体13を設けないのは、鍋11の軽量化を図るためである。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成される。なお、鍋収容部6の外周には加熱手段を設けない構成となっている。
【0022】
前記内枠8の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって鍋11の発熱体13が発熱し、鍋11ひいては鍋11内の被炊飯物が加熱されるようになっている。
【0023】
また、内枠8の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、鍋温度検出手段としての温度センサ21が配置され、鍋11の温度を検知し、加熱コイル16による鍋11の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
【0024】
前記鍋収容体9の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ26が円環状に配置される。このコードヒータ26は電熱式ヒータからなり、鍋収容体9の上端に載置して取付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング27上に保持されると共に、コードヒータ26を上から覆うようにしてヒータリング27に取付けられ、かつ熱伝導性に優れた例えばアルミ板からなる固定金具と放熱部とを兼用する金属板29を備えて、フランジヒータを構成している。この金属板29は、枠体1と蓋体31との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板29の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が枠体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体9内に収容されるようになっている。したがって、鍋11とこの鍋11が収容された鍋収容体9の上端との間における隙間がほとんどない構成になる。しかも、鍋11のフランジ部14は、外形がコードヒータ26と同等以上の大きさに形成されており、これにより、コードヒータ26が鍋11のフランジ部14で上から覆われるようになっている。但し、図示していないが、鍋11の持ち手部(フランジ部14)は非接触にし、部分的に隙間を形成することで、鍋11の外面に水が付着した状態で炊飯したときに、当該隙間から蒸気が排出されるようにしてある。
【0025】
蓋体31は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋32と、蓋体31の内面である下面を形成する放熱板34と、外蓋32および放熱板34を結合させて蓋体31の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー35とを主たる構成要素としている。また、前記蓋体31の内部にあって、放熱板34の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ36が設けられている。この蓋ヒータ36は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。本参考例と後述する実施例では、前記枠体1と蓋体31とにより、炊飯器の本体7を形成している。
【0026】
前記上枠2の後方には、蓋体31と連結するヒンジ部38が設けられる。このヒンジ部38には、正面から見て左右方向に一対の孔(図示せず)が設けられていると共に、ねじりコイルバネなどで形成したヒンジバネ40が、その内部に収納される。一方、外蓋カバー35の後方にも、前記ヒンジ部38に設けた孔と対向するようにヒンジ受部としての外蓋カバーヒンジ孔(図示せず)が設けられる。そして、このヒンジ孔とヒンジ部38の孔に共通して、棒状のヒンジシャフト41を挿通することで、枠体1と蓋体31がヒンジシャフト41を支点として開閉自在に軸支される。さらに、前記ヒンジバネ40の一端と他端が、外蓋カバー35と外枠2にそれぞれ引掛けられることで、蓋体31は常時開方向に付勢されている。
【0027】
蓋体31の前方上面には、蓋開ボタン46が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン46を押すと、蓋体31の内部に設けられたクランプ(図示せず)が回転して、蓋体31と枠体1との係合が解除され、ヒンジバネ40によって蓋体31が自動的に開く構成となっている。
【0028】
55は、放熱板34の外側すなわち下側に設けられる蓋体31の下部部材としての内蓋組立体である。この内蓋組立体55は、鍋11の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の内蓋56と、鍋11と内蓋56との間をシールするために、当該内蓋56の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる蓋パッキン57と、容器の内圧力を調整する調圧部58とを備えている。環状に形成された蓋パッキン57は、蓋体31を閉じた時(蓋閉時)に、鍋11のフランジ部14上面に当接して、この鍋11と内蓋56との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉する。すなわち、ここでの蓋体31は、鍋11の開口を開閉自在に密閉して覆うものである。
【0029】
前記放熱板34には、蓋体31の特に内蓋56の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ36による内蓋56の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ61が設けられている。また、蓋体31の上面後方寄り部には、蓋体31の上面側から着脱可能な蒸気口(図示せず)が設けられる。蒸気口と前記調圧部58は蓋体31の内部で連通しており、これらの蒸気口や調圧部58により、鍋11内で発生した蒸気を外部へ放出するための蒸気排出機構が形成される。
【0030】
ここで、図2や図3を参照しながら、調圧部58の構成をより詳しく説明する。前記調圧部58は、調圧用の調圧弁65と、調圧弁65を保持する調圧弁ホルダー組立体66と、調圧弁65を覆うドーム状の調圧弁カバー67とを備えて構成される。調圧弁65は耐食性に優れた材料で、ある程度の重量を有する部品であればよく、例えばオーステナイト系のステンレスからなるボールで形成される。
【0031】
調圧弁ホルダー組立体66は、第1ホルダー68と、第2ホルダー69と、減圧支持部材に相当する第1調圧パッキン71と、第2調圧パッキン72と、鍋11内からの圧力が第1調圧パッキン71に直接加わらないように、この第1調圧パッキン71の下方にあって、加圧支持部材に相当する弁支持体73と、第1調圧パッキン71の下面に弁支持体73が当接する方向に、当該弁支持体73を付勢する弾性体としての調圧バネ74と、により構成される。弁支持体73には、鍋11内の加圧時にボール状の調圧弁65の下方に当接する連通孔70が設けられる。この連通孔70は、鍋11と内蓋56とを連通させる為のもので、連通孔70を通過する蒸気が、蒸気口から外気へ放出されるようになっている。また、別な図4に示すように、第1ホルダー68と第2ホルダー69には、互いを嵌合する為の凸状の係合部75と凹状の被係合部76がそれぞれ設けられている。これらの第1ホルダー68と第2ホルダー69は、前記第1調圧パッキン71や弁支持体73などを保持する保持部材として、内蓋56に設けた孔77に装着される。第1ホルダー68は全体がキャップ状に形成され、その中央部に貫通孔68Aを有し、貫通孔68Aの周辺部68Bと第2ホルダー69の上端部69Aとにより、第1調圧パッキン71の基部を挟持するようになっている。また、第2ホルダー69は筒状で、その下側には内蓋56の孔77周辺の下面に当接するフランジ69Bが形成されると共に、フランジ69の上方外周には、リング状の前記第2調圧パッキン72を嵌合させる凹溝69Cが形成される。さらに、第2ホルダー69の内周側には、調圧バネ74の一端部を嵌め込むために、断面L字状の突片69dが形成される。
【0032】
調圧弁ホルダー組立体66の組立に際しては、まず第2ホルダー69の凹溝69Cに調圧パッキン72を嵌め込んだものを、内蓋56に設けた孔77に差込み、第2ホルダー69の内周側で調圧バネ74を挟むようにして、弁支持体73を第2ホルダー69の上方から挿入する。次に、弁支持体73および第2ホルダー69の上端部69Aを覆うようにして、第1調圧パッキン71を弁支持体73に載置し、その状態から更に第1調圧パッキン71を挟む様にして、第1ホルダー68を上方から被せ、係合部75と被係合部76とを互いに嵌合させて、第2ホルダー69に第1ホルダー68を取付ける。そして、図2や図3に示すように、調圧弁ホルダー組立体66を組立てた状態では、鍋11内部に第2ホルダー69の内側面と弁支持体73の下面が直接対向し、これらの第2ホルダー69や弁支持体73の上側に配置された第1調圧パッキン71は、鍋11内から直接圧力を受けずに済む構造になっている。
【0033】
この様に組立てた調圧弁ホルダー組立66で調圧弁65を保持し、上方から調圧弁カバー67を被せることで調圧部58を構成する。この時、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67との取付けは爪嵌合でも良いし、ネジやリベットなどの止着部材を利用して止めてもよい。調圧弁カバー67は、調圧弁65の移動範囲を規制するためのもので、連通孔70から放出する蒸気を蒸気口に導く複数の孔(図示せず)が設けられている。また内蓋56は、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67とで峡持されるので、内蓋56の孔77は露出しない。
【0034】
弁支持体73の連通孔70の開口面積は、弁支持体73の下側に形成した脚部79の内側の、鍋11内から直接圧力を受ける面80の面積より小さくなっている。これにより、連通孔70の開口面積と調圧弁65との重量により、鍋11内の圧力を調整することができる。
【0035】
調圧弁65を動かして蓋体31の密閉度即ち鍋11内圧を調節するソレノイド78が、蓋体31内部に設けられている。ソレノイド78の非通電状態では、その先端部を進出位置に保持し、調圧弁65を連通孔70から退避する一方、ソレノイド78の通電状態では、その先端部を退避させ、調圧弁65を連通孔70に自重で転動させ、連通孔70を塞いで鍋11内に圧力を投入する。
【0036】
第1調圧パッキン71および第2調圧パッキン72は、何れもシリコーンゴム等の弾性部材で構成する。これにより、特に図3に示す鍋11内の減圧時には、第1調圧パッキン71の弾性変形により、調圧弁65が当該第1調圧パッキン71に密着し、第1調圧パッキン71における開口部すなわち孔71Aのシール性が向上する。
【0037】
前記内蓋組立体55には、その他に鍋11内の圧力が何らかの要因で設定値以上である異常圧力に昇圧すると開弁して、鍋11の内圧を下げる安全弁62が設けられる。調圧部58および安全弁62は、内蓋56を外蓋カバー35の下側に取付けたときに、蒸気口の入口側に臨んで設けられる。そして、内蓋56,蓋パッキン57,調圧部58および安全弁62は、内蓋組立体55の外周に設けたパッキンベース59で一体化され、外蓋カバー35内面に着脱可能に備えてある。
【0038】
81は、蓋体31を枠体1に閉じた状態で、鍋11内を通常の大気圧よりも低くするために設けた減圧手段である。この減圧手段81は、枠体1の後部に設けた減圧源としての電磁ポンプ82と、この電磁ポンプ82から枠体1および蓋体31を経て、内蓋56に設けた孔83に至る管状の経路84とを備えている。なお、図1では電磁ポンプ82を枠体1内に設けているが、蓋体31の例えば後方に設けても構わない。また、蓋体31の内部には、経路84の基端部を開閉する開閉手段としての電磁弁87と、この電磁弁87を収容する弁収容体88が設けられる。弁収容体88には、前記内蓋56の孔83の周囲に向けて放熱板34から下方に突出した筒状の減圧パッキン89が接続される。このように、本実施例では鍋11内の圧力を検出するのに、高価な圧力センサをあえて使用していないことが注目される。
【0039】
そして、内蓋56を含む内蓋組立体55を蓋体31の下面に装着すると、減圧パッキン89が弾性変形しながら内蓋56の上面に密閉当接し、これにより孔83と電磁ポンプ82とを連通する経路84が形成される。また、内蓋組立体55を装着した状態で蓋体31を閉じると、蓋パッキン57が鍋11に密着して、調圧弁65が連通孔70を塞いでいれば、蓋体31に密閉した鍋11と電磁ポンプ82との間が経路84により連通する。この状態から電磁ポンプ82を起動させると、電磁弁87ひいては経路84が開放して、鍋11内の空気が経路84および電磁ポンプ82を通って枠体1の外部に排出され、蓋パッキン57により鍋11との密閉性を高めつつ、鍋11内の圧力が低下する。また、電磁ポンプ82の電流が一定値以上になったら、電磁弁87ひいては経路84を閉塞して、鍋11内を減圧状態に保っている。さらに、スローリークにより鍋11内の圧力が上昇するので、一定時間毎に同様に電磁ポンプ82を作動させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を開放して、鍋11内を大気圧よりも低い状態に維持している。
【0040】
この様な鍋11内が大気圧よりも低い状態では、弁支持体73を構成する脚部79の内側の空気が鍋11内に吸引され、それに伴い調圧弁65や、この調圧弁65を載置支持する弁支持体73が、調圧バネ74の付勢に抗して下降する。しかし、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも低い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの弁支持体73に代わって第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保され、減圧を継続して行なえる(図3参照)。
【0041】
逆に炊飯時などにおいて、鍋11内を大気圧以上に加圧する時には、弁支持体脚79の内側が鍋11内から直接圧力を受けるため、調圧弁65の自重に抗して弁支持体73が上昇する。ここで、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも高い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの第1調圧パッキン71に代わって弁支持体73に載置され、連通孔70を塞ぐと共に、弁支持体73に載置している調圧弁65も、弁支持体73と同様に上昇する。そして、弁支持体73は上昇後、第1調圧パッキン71に当接し、それにより第1調圧パッキン71の孔71Aを通過しようとする蒸気などを遮断して、鍋11内の密閉を保持できる(図2参照)。
【0042】
再度図1に戻り、前記枠体1の前部には操作パネル101が設けられている。この操作パネル101の内側には、時間や選択したメニューを表示するLCD102や、他にいずれも図示しないが、現在の行程を表示するLED105(図16参照)や、炊飯を開始させたり、メニューを選択させたりする操作スイッチ103(図5参照)などを配置した基板が配設される。操作パネル101にはボタン名などが表示され、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル101を蓋体31の正面側に設けてもよい。
【0043】
111は、枠体1の内部前方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段111は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器112に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン113から発する風を放熱器112に当てて熱を奪うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。
【0044】
冷却ファン113は、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112の下方、若しくは側部に配置されている。また、枠体1の底部若しくは側部には、冷却ファン113から発し、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112から熱を奪って温かくなった風を、枠体1の外部へ排出するための孔(図示せず)が複数設けられている。加熱制御手段111は製品内部すなわち枠体1内に収納されるが、鍋11の外周囲のどの位置に配置してもよい。また、枠体1の底部若しくは側部に設けた孔も、どの位置に配置してもよい。しかし、近年は製品の小形化設計が求められている背景もあり、加熱制御手段111や冷却ファン113と、温かな風を排出する孔114は、鍋11をはさんで略反対位置に配置するのが好ましい。さらに、枠体1の内部には、電源プラグ(図示せず)を巻き取るためのコードリール116が設けられる。
【0045】
次に制御系統について、図5を参照しながら説明する。同図において、111は前述の加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ21および蓋温度センサ61からの各温度情報を受けて、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ26と、蓋体31を加熱する蓋ヒータ36とを各々制御すると共に、前述した電磁ポンプ82や電磁弁87を各々制御するものである。特に本参考例の加熱制御手段111は、鍋温度センサ21の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ52の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ26が制御されて放熱板34ひいては内蓋56を温度管理するようになっている。加熱制御手段111は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に前記鍋11内の被炊飯物を炊飯加熱する炊飯制御手段118と、保温時に鍋11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段119とをそれぞれ備えている。
【0046】
ここでの保温制御手段119はタイマー手段120を備えており、保温動作が開始するとタイマー手段120を起動させて保温経過時間を計時し、この保温経過時間が予め設定した時間(例えば1時間)に達したら、鍋11内の圧力が加圧状態からほぼ大気圧に戻り、且つ鍋11内の温度が保温温度にまで低下した、いわゆる保温が安定する状態と判断するようになっている。また、加熱制御手段11はその他に、操作スイッチ103からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段118を制御する予約炊飯コースを実行可能な予約炊飯制御手段121を備えている。なお、前記所定時間は、操作スイッチ103の例えば時間キーや分キーを操作することで、適宜変更することができる。
【0047】
122は、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段111の出力側には、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、放熱板34や内蓋56を加熱するように蓋ヒータ36を駆動させる蓋ヒータ駆動手段123と、コードヒータ26をオンにするコードヒータ駆動手段124と、ソレノイド78をオンまたはオフにするソレノイド駆動手段125と、電磁ポンプ82を駆動させるポンプ駆動手段126と、電磁弁89をオンまたはオフにする電磁弁駆動手段127と、前述したLCDやLEDからなる表示手段128を駆動させる表示駆動手段129が各々設けられる。前記炊飯制御手段118による炊飯時、および保温制御手段119による保温時には、鍋温度センサ21と蓋温度センサ61からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ26による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ36による蓋体31への加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段118による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段119による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ21の検知温度に基づき、加熱コイル16やコードヒータ26による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
【0048】
特に前記コードヒータ26による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ26を発熱させて、蓋体31と枠体1との隙間の空間に金属板29から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱する期間にもコードヒータ26により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
【0049】
さらに、本参考例における加熱制御手段111は、予約炊飯制御手段121による予約炊飯の待機時の炊飯が開始するまでの期間や、炊飯制御手段118が実質的な炊飯を開始するまでのひたし行程の期間や、保温制御手段119により前述した保温が安定する状態と判断した後で、鍋11内が大気圧より低くなるように、電磁ポンプ82や減圧状態保持用の電磁弁87を動作させる減圧制御手段130としての機能をも備えている。
【0050】
次に、上記構成について、その作用を図6のタイミングチャートに基づき説明する。なお、この図6において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における圧力および温度の各推移を示し、以下、減圧選択スイッチの動作タイミングと、前記LCDによる減圧表示ランプの動作タイミングと、電磁ポンプ82の動作タイミングと、電磁弁87の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
【0051】
先ず、予約炊飯時における動作を説明すると、操作スイッチ103の時間キーや分キーを操作することで、前記所定時間に相当する炊上がりの希望時刻を設定し、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れて、その後で操作スイッチ103の別な例えばタイマースイッチを操作すると、予約炊飯制御手段121による予約炊飯コースが設定(セット)され、予約炊飯の待機状態に移行する。この予約炊飯コースでは、所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段118を制御するが、予約炊飯の待機状態から実質的に炊飯が開始する時点までの間に、減圧制御手段130が動作して鍋11内の圧力が大気圧(1atm=1013hPa)よりも低くなるように、電磁ポンプ82や電磁弁87が制御される。
【0052】
具体的には、予約炊飯コースがセットされると、減圧制御手段130は炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、電磁ポンプ82を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この電磁ポンプ82に同期して電磁弁87ひいては経路84を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は電磁ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持する。
【0053】
予約炊飯の待機中は、加熱制御手段111がソレノイド78をオン状態(通電状態)にしているため、調圧弁65が連通孔70を塞ぐ位置に転動されているが、鍋11内には僅かではあるが空気が侵入し(スローリーク)、鍋11内の圧力が電磁弁87の閉塞時点から次第に上昇する。減圧制御手段130は、一定時間が経過すると、再び電磁ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、電磁ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。なお、実質的な炊飯が開始した後の動作は、後述する通常の炊飯動作と共通しているので、ここでは省略する。
【0054】
こうして、予約炊飯コースが設定された後、炊飯が開始するまでの待機時間が長く設定された場合でも、鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、鍋11内で雑菌が増殖したり、被炊飯物である米や水の腐敗が起こるのを効果的に防止できる。よって、最終的には炊上がり時に食味のよいご飯を得ることができる。また、この参考例では、予約炊飯の待機中の全期間に渡って、圧力制御手段130が鍋11内の圧力を減圧する制御を行なっているが、例えば予約炊飯コースが設定された後、所定の時間(例えば2時間)が経過したら、鍋11に対する減圧制御を行なうようにしてもよい。このように、予約炊飯の待機中の一定時間だけ、鍋11の圧力を大気圧よりも低くすることで、例えば炊飯開始までの待機時間がさほど長くないのに、鍋11内への減圧制御が強制的に行なわれて、電磁ポンプ82や電磁弁87を動作させるのに無駄な電力を消費する懸念を解消できる。
【0055】
次に、予約炊飯を行なわない通常の炊飯について、その動作を説明する。なお、前述した通り、予約炊飯コースにおける実質的な炊飯が開始した後の動作は、これから説明する通常炊飯の動作と共通している。
【0056】
鍋11内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ103の例えば炊飯キーを操作すると、炊飯制御手段118による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段118は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、鍋温度センサ21による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ26で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたしを行なう。このひたし中は、ソレノイド78がオン状態になる。
【0057】
このひたし時にも、減圧制御手段130が動作して鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、電磁ポンプ82や電磁弁87が制御される。具体的には、ひたし行程が開始すると、減圧制御手段130は実質的な炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、電磁ポンプ82を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この電磁ポンプ82に同期して電磁弁87ひいては経路84を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は電磁ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び電磁ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、電磁ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0058】
こうして、ひたし時には鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、ひたし時に密閉状態で鍋11内を減圧することができ、鍋11内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
【0059】
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段118は実質的な炊飯動作を開始すると共に、減圧制御手段130による鍋11への減圧制御は中断し、減圧選択スイッチはオフになると共に、LCDによる減圧状態である旨の表示も停止する。併せて、電磁ポンプ82および電磁弁87は、その後の保温が安定した状態になるまでオフ状態となる。
【0060】
炊飯行程に移行すると、炊飯制御手段118は加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被炊飯物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体31の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。沸騰加熱の途中で、炊飯制御手段118はソレノイド78をオフ状態にして、調圧弁65を連通口70から退避させる。これにより、調圧部58は密閉せずに鍋11の内外を連通させた開放状態となり、鍋11はほぼ大気圧に維持される。なお、上述の蓋体31の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ61からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ21と蓋温度センサ61とにより、鍋11の底部および蓋体31がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0061】
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体31のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段111は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ21または蓋温度センサ61が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を序止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
【0062】
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段118は蓋ヒータ36による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋56の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ61の検知温度により管理される。また沸騰継続加熱に移行したら、炊飯制御手段118はソレノイド78を周期的にオン・オフさせる。この沸騰継続加熱では、操作スイッチ103により選択したメニューに応じて、ソレノイド78の通断電タイミングを変えるのが好ましい。これにより、鍋11に通じる調圧部58の密閉度を、選択したメニューに応じて最適なものに可変することができる。
【0063】
そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋11内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段118による炊飯行程を終了し、保温制御手段119により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ61の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ36を通断電し、内蓋56への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段119による保温に移行する。
【0064】
保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ36により蓋体31の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ26でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ21や蓋温度センサ61が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
【0065】
また、上記むらしにおける調圧部58の密閉度は、選択した炊飯メニューに応じて変えるが、むらし終了の所定時間前になったら、ソレノイド78をオフにして調圧部58の密閉度を下げ、炊飯終了時に蓋体31を開けるのに支障がない程度に減圧する。
【0066】
一方、保温制御手段119は、炊飯行程が終了するとタイマー手段120による保温経過時間の計時を開始する。このとき減圧制御手段130は、当該保温経過時間が予め設定した時間になるまで、すなわち保温が安定する状態と判断されるまで、表示手段128のLCDを利用して、減圧表示を短時間繰り返し行なわせる。これにより利用者は、炊き上げ後、鍋11内が未だ減圧状態に移行していないことを理解できる。
【0067】
その後、前述した保温経過時間が予め設定した時間に達すると、すなわち鍋11内で保温が安定する状態になると、減圧制御手段130により鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、電磁ポンプ82や電磁弁87が制御される。この減圧制御の具体的な動作は前述した通りであり、減圧制御手段130は少なくとも蓋体31が開けられて、減圧選択スイッチがオフするまで、当該減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、電磁ポンプ82を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この電磁ポンプ82に同期して電磁弁87ひいては経路84を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は電磁ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び電磁ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、電磁ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0068】
こうして、炊飯完了後の保温が安定する状態になると、鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、鍋11内の保温温度を下げたり、鍋11内に蒸気を投入しなくても、保温時に密閉状態で鍋11内を減圧すれば、鍋11内の酸素濃度が下がると共に、被炊飯物の水分蒸発を防ぐことができ、メイラード反応や酸化を十分に抑制できる。よって、長期にわたって食味のよいご飯を得ることができる。
【0069】
さらに、加熱制御手段111が、操作スイッチ103の例えばメニュー選択キーからの操作信号を受けて、複数の炊飯メニュー(例えば、白米,玄米,無洗米など)の中から、一つの炊飯メニューを選択でき、この選択した炊飯メニューに応じて、加熱コイル16,蓋ヒータ36,コードヒータ26などを独自に制御して、炊飯や保温を行なえる炊飯器にも、上述した減圧制御の手法を適用できる。その場合、選択した炊飯メニューによって、鍋11内の圧力や、減圧制御を行なう時間が異なるようにして、異なる減圧制御を行なえるようにするのが好ましい。例えば、鍋11内に投入する被炊飯物の含水率の違いにより、白米を被炊飯物とする白米メニューでは、鍋11内の圧力を0.8気圧(atm)となるように減圧制御し、玄米を被炊飯物とする玄米メニューでは、鍋11内の圧力を白米メニューよりも低い0.6気圧となるように減圧制御し、さらに無洗米を被炊飯物とする無洗米メニューでは、鍋11内の圧力を白米メニューよりも高く、玄米メニューよりも低い0.7気圧となるように減圧制御すれば、炊飯メニューに応じた最適な減圧制御を行なえる。なお、これらはあくまでも一例であって、別な炊飯メニューでは、それに応じた最適な減圧制御を採用すればよい。さらに、選択した炊飯メニューによっては、あえて減圧制御を行なわない構成としてもよい。
【0070】
図7は、前記図5におけるポンプ駆動手段126や減圧ポンプ82の回路構成を示したものである。同図において、前記電磁ポンプ82は、第1のスイッチ手段であるトランジスタ141と、電流検出器である抵抗142と共に直列回路を構成し、当該直列回路が電磁ポンプ82の動作電源Vcc1とグランドとの間に接続される。トランジスタ141は、前記加熱制御手段111を構成するマイコン(マイクロコンピュータ)143からの駆動信号を受けてオンまたはオフし、この駆動信号は、分圧用の抵抗144,145と、第2のスイッチ手段であるトランジスタ146と、別な分圧用の抵抗147,148とを経て、トランジスタ141のベースに供給される。また、抵抗142は電磁ポンプ82とグランドとの間に接続され、電磁ポンプ82に接続する抵抗142の一端を、マイコン143の入力端子であるAD端子に接続することで、電磁ポンプ82を流れる電流を、マイコン143が抵抗142の両端間に発生する電圧値として監視するようになっている。なお、この抵抗142の両端間にはコンデンサ149が接続されると共に、抵抗142の一端とマイコン143への動作電源Vcc2との間には、ダイオード150が接続される。
【0071】
この参考例における減圧制御手段130は、圧力センサを別に設けることなく、減圧源である電磁ポンプ82の電流を監視して、例えば減圧手段81を構成する電磁ポンプ82や電磁弁87のオン,オフ制御を行なう制御手段として設けられている。すなわち減圧制御手段130は、鍋11内が大気圧から減圧して真空に近づくにしたがって、動作中の電磁ポンプ82の負荷が増大し、電磁ポンプ82を構成するモータの回転が遅くなって、ポンプ電流が増大するのを利用して、鍋11内の圧力を監視するようにしている。
【0072】
次に、上記減圧制御手段130による動作手順を、図8におけるグラフを参照しながら、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、図8は電磁ポンプ82の動作中における電流値と気圧の経時変化を示しており、記号■を結んだ線は、電磁ポンプ82の電流値ひいてはマイコン143のAD端子に印加される入力電圧をあらわし、また記号◆を結んだ線は、鍋11内の気圧をあらわしている。
【0073】
前述した予約炊飯から保温に至る一連の動作中に、鍋11内を大気圧よりも低くために、減圧制御手段130がH(高)レベルの駆動信号をポンプ駆動手段126に出力すると、トランジスタ141がオンして、電磁ポンプ82がオンすなわち通電状態となる。このとき減圧制御手段130は、同時に電磁弁87ひいては経路84を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力し、密閉した鍋11内を大気圧から徐々に減圧する。このときの鍋11内の真空度は、時間の経過と共に図8のグラフのように変化する。
【0074】
図9のステップS1において、減圧制御手段130により電磁ポンプ82を駆動している場合には、次のステップS2で当該減圧制御手段130が電磁ポンプ82の電流を監視する。電磁ポンプ82を流れる電流値は、鍋11内が真空になるにしたがって上昇するので(図8のグラフを参照)、減圧制御手段130はAD端子に印加する入力電圧ひいては電磁ポンプ82の電流が一定値以上になり、次のステップS3に移行して、一定時間が経過したならば、鍋11内が十分に減圧されたものと判断して、電磁ポンプ82をオフすなわち非通電状態にするのに、L(低)レベルの駆動信号をポンプ駆動手段126に出力する(ステップS4)。それと共に減圧制御手段130は、電磁弁駆動手段127を介して電磁弁87ひいては経路84を閉塞させ、鍋11内を大気圧よりも低い状態に維持する。
【0075】
このように上記参考例では、容器としての鍋11と、鍋11を密閉する開閉自在な蓋体31と、減圧源である電磁ポンプ82の駆動により鍋11内を大気圧よりも低くする減圧手段81と、電磁ポンプ82の電流を監視して制御を行なう制御手段としての減圧制御手段130と、を備えている。このようにすれば、鍋11内の圧力が真空に近づくに従い、電磁ポンプ82の負荷が増大して、電磁ポンプ82への電流が増大することを利用し、減圧制御手段130はこの電磁ポンプ82への電流が変化するのを監視することで、圧力センサを用いた場合と同等の制御を実現できる。
【0076】
ところで、上記図9のフローチャートを実現する減圧制御手段130では、蓋体31の下面に装着した内蓋組立体55の蓋パッキン57と、鍋11との密着性が不十分であると、電磁ポンプ82の電流値が一定値以上に上昇せず、電磁ポンプ82がいつまでも動作し続ける可能性がある。また、電磁ポンプ82への通電路が遮断または短絡したときに、この電磁ポンプ82のオープンまたはショートの検出を行なうことができない。さらには、電磁ポンプ82を構成するモータのロックを検出することもできない懸念がある。
【0077】
こうした問題を回避するために、図10に示すフローチャートの各処理手順を実行する減圧制御手段130を備えてもよい。ここでの減圧制御手段130は、電磁ポンプ82を流れる電流が一定値以上に達しないまま安定すると、電磁ポンプ82の駆動を停止させるように構成している。
【0078】
より具体的な動作について説明すると、電磁ポンプ82が通電状態となり、同時に電磁弁87ひいては経路84が開放して、密閉した鍋11内を大気圧から徐々に減圧すると、ステップS1からステップS11に移行して、減圧制御手段130が電磁ポンプ82の電流を監視する。減圧制御手段130は、AD端子に印加する入力電圧ひいては電磁ポンプ82の電流が一定値以上になり、一定時間が経過したならば、前記図9のフローチャートで説明したように、電磁ポンプ82をオフにするが、この電磁ポンプ82の電流が一定値以上に達しない場合(図8のグラフの例では、電磁ポンプ82の電流が0.15Aで、マイコン143の入力電圧が1.5V以下の場合)に、ステップS11にて当該電流値が一定の範囲内に安定すれば、ステップS3に移行して、一定時間が経過した後に、電磁ポンプ82をオフすると共に(ステップS4)、電磁弁駆動手段127を介して電磁弁87ひいては経路84を閉塞させる。これにより、蓋パッキン57と鍋11との密着性が不十分であっても、電磁ポンプ82の電流が一定値よりも少ない値で安定したら、電磁ポンプ82を強制的にオフにして、消費電力および電磁ポンプ82の寿命劣化を低減することができる。
【0079】
また、電磁ポンプ82への配線が断線するなどして、当該電磁ポンプ82がオープンの状態になった場合にも、電磁ポンプ82の電流値は所定値に達しないまま安定する(オープン状態では、電磁ポンプ82の電流が0Aで、マイコン143の入力電圧が0Vとなる)。そのため、上記動作手順を実行する減圧制御手段130は、電磁ポンプ82のオープン状態も同時に検出して、電磁ポンプ82を適切にオフすることができる。
【0080】
以上のように、ここでの減圧制御手段130は、電磁ポンプ82の電流値が一定値よりも少ない値で安定すると、電磁ポンプ82を停止させるように構成している。この場合、鍋11内を大気圧よりも低くする減圧動作時に、蓋体による鍋11の密閉が不十分であったり、電磁ポンプ82がオープン状態であると、電磁ポンプ82の電流値は小さいままとなるが、減圧制御手段130は当該電流値が小さいまま安定したら、電磁ポンプ82を停止させるので、電磁ポンプ82が連続通電されるのを防止して、消費電力および電磁ポンプ82の寿命劣化を低減することができる。
【0081】
ところで、前記電磁ポンプ82の電流値は、当該電磁ポンプ82の特性により、鍋11の内部が大気圧よりも低くなると、最初は上昇し、その後下降に転じて、初期値よりも下がるものがある。図11は、こうした電磁ポンプ82の電流値と鍋11内の真空度との関係を示すグラフであり、記号■を結んだ線は電磁ポンプ82の電流値をあらわし、記号◆を結んだ線は鍋11内の気圧をあらわしている。このような特性を示す電磁ポンプ82では、上述した図9や図10の動作手順を実行する減圧制御手段130では、鍋11内の圧力が大気圧よりも十分に低下したことを正しく検出できない。
【0082】
図12は、こうした点を考慮した別な減圧制御手段130における処理手順のフローチャートを示している。ここでの減圧制御手段130は、電磁ポンプ82の電流値が一定値に達したか否かに拘らず安定するか、さもなければ所定の例えば電磁ポンプ82の通電開始時における初期値よりも低下すると、当該電磁ポンプ82を停止させるように構成している。
【0083】
より具体的には、電磁ポンプ82が通電状態となり、同時に電磁弁87ひいては経路84が開放して、密閉した鍋11内を大気圧から徐々に減圧すると、ステップS1からステップS21に移行して、減圧制御手段130が電磁ポンプ82の電流を監視する。また、ここでの減圧制御手段130は、ポンプ駆動手段126に前記駆動信号を出力した直後の電磁ポンプ82の電流初期値を記憶する。減圧制御手段130は、AD端子に印加する入力電圧ひいては電磁ポンプ82の電流値が一定の範囲内に安定すれば、当該電流値が一定値以上に達したか否かに拘らず、ステップS4に移行して電磁ポンプ82をオフすると共に、電磁弁駆動手段127を介して電磁弁87ひいては経路84を閉塞させる。つまり、図11に示すような特性の電磁ポンプ82において、その電磁ポンプ82の電流値が安定するのは、当該電磁ポンプ82がオープンしたときや、鍋11に対する蓋体31の密着性が不十分であるときの他に、電磁ポンプ82がショートしたときや、ロック状態になったとき(何れも、例えば電磁ポンプ82の電流が0.15A以上で、マイコン143の入力電圧が1.5V以上で安定する)である。したがって減圧制御手段130は、こうした電磁ポンプ82の異常時や、鍋11に対する密着性が悪い時に、速やかに当該電磁ポンプ82への通電を遮断することができる。
【0084】
また減圧制御手段130は、電磁ポンプ82の電流値が安定した値にならず変化しているときに、予め記憶した初期値よりも低くなったならば、鍋11内の圧力が大気圧よりも十分に低下したと判断して、電磁ポンプ82をオフにする(ステップS22)。これにより、図11のような特性を持つ電磁ポンプ82であっても、鍋11内の圧力低下を正しく検出することができる。なお、ステップS22において、電磁ポンプ82の電流値の上限(ピーク値)を記憶し、このピーク値よりも電磁ポンプ82の電流が一定値下がったならば、当該電磁ポンプ82をオフするようにしても、同様の作用効果を発揮する。
【0085】
さらに減圧制御手段130は、通常の鍋11内が大気圧よりも低下したのを検出して、電磁ポンプ82をオフした場合には、所定の例えば1時間後に再度上記ステップS1からの手順を順に実行するが、電磁ポンプ82の異常時や、鍋11に対する密着性が悪い時に、電磁ポンプ82をオフした場合には、操作スイッチ103の例えば切キーを押すまで、電磁ポンプ82が再起動しないように制御を行なっている。
【0086】
以上のように、ここでの減圧制御手段130は、電磁ポンプ82の電流値が安定するか、さもなければ電磁ポンプ82の電流値が所定値(例えば初期値やピーク値)よりも低下したら、当該電磁ポンプ82を停止させるように構成している。このようにすると、鍋11内を大気圧よりも低くする減圧動作時に、蓋体31による鍋11の密閉が不十分であると、電磁ポンプ82の電流値は小さいままとなる。また、電磁ポンプ82がショートまたはオープンとなったり、電磁ポンプ82がロックした場合も、電磁ポンプ82の電流値は一定値となる。このような電磁ポンプ82の異常時に、減圧制御手段130は電磁ポンプ82の電流値が安定したのを監視して、当該電磁ポンプ82を停止させることができる。
【0087】
また、電磁ポンプ82の特性により、鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなると、最初は電磁ポンプ82の電流値が上昇するが、その後は電磁ポンプ82の電流値が低下するものにおいて、減圧制御手段130は、この電流値が所定値よりも低下したのを監視して、鍋11内の圧力が大気圧よりも十分に低下した状態で、電磁ポンプ82を確実に停止させることができる。
【0088】
次に、本参考例において特徴となるハンドルとその周辺の構成について、図13および図14を参照しながら説明する。図13は、図1とは別な方向から見た炊飯器の部分断面図であるが、前記枠体1と蓋体31で構成される本体7の内部には、本体7の外観部品(例えば、上枠2,外枠3,底板4,外蓋32など)と比較して、熱伝導率が同等以下の材料からなる断熱部材151が配設される。図14は、断熱部材151の斜視図である。また本体7の両側面には、持ち運びが楽になるように、略コ字形を有するハンドル152が前後方向に揺動自在に取付けられる。ハンドル152は、図13に示すように枠体2に備えてもよいし、蓋体31に備えてもよい。
【0089】
ハンドル152を蓋体31に備える場合、断熱部材151は外蓋32と外蓋カバー35との間に収納配置される。外蓋カバー35には、前述のようなクランプを含むクランプ機構の他に、ヒンジ受部を含むヒンジ機構や、蓋加熱手段としての蓋ヒータ36が設けられており、断熱部材151を蓋体31内の所定位置に設けるために、当該断熱部材151には位置決めが必要となる。これは、本体7の持ち運びの際に断熱部材151が動いたり、組立時に断熱部材151が違う箇所に収納されるのを防止するためである。ハンドル152には蓋体31に取付けられる取付部(図示せず)を設けておく。また蓋体31にも、当該取付部を受ける取付受部(図示せず)を備えておく。断熱部材151には、図14に示すような貫通孔153が設けられるが、この貫通孔153は蓋体31の取付部よりも大きく形成される。そして、貫通孔153が蓋体31の取付受部に対向するように断熱部材151を蓋体31内に配設し、ハンドル152の取付部を断熱部材151の貫通孔153に貫通させて、蓋体31の取付受部に装着する。こうすることで、蓋体31とハンドル152とにより断熱部材151の位置を規制することができる。
【0090】
一方、ハンドル152を枠体1に備える場合、ハンドル152は略コ字型を有する形状とし、その先端部の両側は内側(枠体1側)に向かう取付部としての軸支部154を備えている。外枠3の上側面両側には前記軸支部154が貫通する貫通孔155が設けられる。また、外枠3の貫通孔155に対向して、上枠2には前記軸支部154を回動自在な状態に取付けるハンドル受部156が開口形成される。ハンドル152の軸支部154は、前述のように外枠3の貫通孔155を貫通し、上枠2のハンドル受部156に装着される。ハンドル152は上枠2のハンドル受部156を中心に、左右一対の軸支部154を支点として、枠体1に対し回動自在に設けられる。また、図示しないが上枠2の背面にはハンドル載置部が形成され、ハンドル152の不使用時には、このハンドル152を本体7の後方に倒してハンドル載置部に載せ、使い勝手の向上と本体7のコンパクト化を図るようにしている。
【0091】
前記断熱部材151は、図13に示すように、上枠2の鍋収容部6と外枠3との間に配置される。このときの断熱部材151は、鍋収容部6の全周を覆うように設けてもよいし、部分的に枠体1の側面のみを覆うように設けてもよい。そして、ハンドル152の取付けに際しては、ハンドル152の軸支部154を外枠3の貫通孔155に通過させ、次に断熱部材151に設けた別の貫通孔153に通過させて、その先にある上枠2のハンドル受部156に軸受部154を嵌合させる。このとき、断熱部材151はハンドル152の軸支部154によって吊設状態に保持される。ハンドル152の回動を妨げないように、外枠3の貫通孔155や断熱部材151の貫通孔153は、ハンドル152の軸支部154よりも大きく形成する。
【0092】
断熱部材151の材料は、PP材料を膨らませた発泡PPなどの中空部を有する材料で形成したり、さもなければガス成形などにより中空部を備えた形状とする。いずれの場合も、中空部が静止空気層として作用し、断熱部材151そのものの断熱性能に加えて、一層の断熱効果が期待できる。
【0093】
図14に示すように、板状の断熱部材151は、その断面形状が例えば略コ字状となるように、一方を開口した凹部158が形成される。この凹部158は、空気による断熱空間を確保するためのものである。略コ字状の向きは、上向き,下向き,左右のどちらにあっても構わない。また凹部158は、断熱部材の全域で形成してもよいし、部分的な領域に形成してもよい。本参考例における貫通孔153は、本体7のサイズをコンパクト化するために、凹部158以外の幅狭な部位に設けられているが、凹部158に貫通孔153を設けてもよいし、貫通孔153の近傍にのみ凹部158を設けない構成としてもよい。
【0094】
159は、前記断熱部材151とは異なる材料で構成される遮熱部材である。この遮熱部材159は、例えばグラスウールやシリカなどの低熱伝導性を有する材料を、樹脂ラミネートフィルムや樹脂フィルムなどで溶着封止して得たものを利用する。この場合、フィルム内部を真空引きすると、断熱効果がさらに向上する。遮熱部材159は、断熱部材151よりも熱伝導率の低いもので構成するのが好ましい。
【0095】
断熱部材151に設けた前記凹部158には、遮熱部材159を挿入してもよい。この場合の凹部158は、遮熱部材159が脱落するのを防止するために、上向きに開口していることが好ましい。また、複数の凹部158を断熱部材151に形成した場合は、凹部158の全てに遮熱部材159を挿入してもよいし、断熱効果が得られる部分に対応する凹部158にのみ、遮熱部材159を挿入してもよい。
【0096】
こうして本参考例では、鍋11を収容する枠体1と、鍋11の開口部を覆う蓋体31とを備え、枠体1と蓋体31とにより本体7を形成し、この本体7にハンドル152を設けると共に、本体7内に、本体7の外観部品よりも熱伝導性の悪い材料からなる断熱部材151を設けた炊飯器において、断熱部材151を貫通して本体7に取付けられる取付部(軸支部154)を、ハンドル152に設けている。
【0097】
こうすると、ハンドル152の取付部が、断熱部材151を貫通して本体7に取付けられることから、本体7内における断熱部材151の動きが、ハンドル152の取付部によって規制される。そのため、断熱部材151を他の部材に貼り付けたり、別部品で固定したりするような製造コストを上昇する要因を排除して、安価な炊飯器を提供でき、併せて断熱部材151による消費電力の低減や、省エネ性能の向上を図ることができる。
【0098】
また本参考例では、ハンドル152の取付部は枠体1と軸支する軸支部154として設けられ、枠体1には、軸支部154が貫通する孔としての貫通孔155と、軸支部154を取付ける受部としてのハンドル受部156が設けられ、前記軸支部154が断熱部材151に設けた通路部としての貫通孔153を通過して、ハンドル受部156に取付けられるように、枠体1の貫通孔155とハンドル受部156との間に断熱部材151を配置している。
【0099】
こうすると、断熱部材151が枠体1の貫通孔155とハンドル受部156との間に位置して、ハンドル152の軸支部154により吊るされた状態に保持される。よって、枠体1内における断熱部材151の位置がさらに安定化し、消費電力の低減や、省エネ性能の向上を一層確実なものとすることができる。また、断熱部材151の脱落や動きを防止できるので、断熱部材151を他の部材に貼り付けたり、別部品で固定したりするような製造コストを上昇する要因を排除して、安価な炊飯器を提供できる。
【0100】
本参考例における断熱部材151は、中空部を有する材料から形成してもよい。また本参考例では、前記断熱部材151に中空部を形成してもよい。これらの中空部は静止空気層として作用するので、断熱効率が向上する。よって、消費電力の低減や、省エネ性能の向上をさらに促進できる。
【0101】
本参考例では、断熱部材151に凹状の部分である凹部158を形成しており、この凹部158が大きな断熱空気層を形成するので、断熱部材151からの放熱量を低減できる。よって、消費電力の低減や、省エネ性能の向上をさらに促進できる。
【0102】
さらに本参考例では、断熱部材151とは異なる材料の遮熱部材159を設け、前記凹部158に遮熱部材159を配置している。こうすれば、断熱部材151を利用して別な遮熱部材159を枠体1内の所定位置に設けることができる。さらに、断熱部材151と遮熱部材159とにより、枠体1から外部への放熱をさらに低減できる。そのため、消費電力の低減や、省エネ性能の向上をより一層促進できる。
【実施例】
【0103】
次に、停電中のバックアップ機能に関連する構成を、図15に基づいて説明する。なお、前記図20と同一部分には同一の符号を付し、共通する説明は重複を避けるため極力省略する。同図において、ここでは電池部以外の構成、すなわち、電源プラグ201,電源回路202,CPU203,表示LCD204,負荷205,負荷制御回路206は、背景技術で説明したものと同一である。異なるのは、停電時にCPU203に対しバックアップ電源を供給するCPU用電池208Aと、表示LCD204に対しバックアップ電源を供給するLCD用電池208Bが、別個に設けられていることである。そして、表示手段である表示LCD204に対応して設けたLCD用電池208Bは、一般的に市販されている交換可能な電池とし、電池容量がなくなったときに、ユーザが新しいものと交換できるようになっている。
【0104】
そして、商用電源の通電時には、従来と同様に、電源回路202で整流・降圧した電圧が、CPU203と、前記表示LCD204と、ヒータなどの負荷205を制御する負荷制御回路206に電源電圧として供給され、これを受けてCPU203は、表示LCD204や負荷制御回路206などの動作を制御するようになっている。一方、商用電源の無通電時には、CPU203を駆動するためのバックアップ電源がCPU用電池208Aから供給される一方で、表示LCDを駆動するためのバックアップ電源が、別なLCD用電池208Bから供給される。
【0105】
この場合、LCD用電池208Bは消費電流の比較的大きな表示LCD204によって、CPU用電池208Aよりも早期に電池容量がなくなる可能性があるが、CPU用電池208Aの電池容量が残っている限り、停電中に表示LCD204の表示は消灯するものの、CPU203としての動作は確保される。そのため、例えば炊飯器として必要な時計の計時や、タイマー時刻や、メニューなどの設定をリセットせずに保持でき、復電時に停電前の状態に戻すことができる。また、CPU用電池208Aは、停電中に表示LCD204にバックアップ電源を供給する必要がなく、小容量の電池を用いることができる。さらに、交換可能なLCD用電池208Bの容量を任意に選択することで、CPU203のバックアップ時間とは別に、表示LCD204のバックアップ時間を規定できる。このLCD用電池208Bは、一般的に市販されているボタン型電池や乾電池のような、ユーザが交換できる構造であるため、LCD用電池208Bの容量がなくなったときに、停電中において表示LCD204による表示の必要,不要をユーザ側で判断し、適切な時期にLCD用電池208Bの交換を行なうことができる。
【0106】
このように本実施例では、制御手段であるCPU203と、表示手段である表示LCD204と、停電中にCPU203や表示LCD204に電源を供給するバックアップ電源とを備えた炊飯器において、バックアップ電源は、CPU用電池208AおよびLCD用電池208Bとして、CPU203と表示LCD204にそれぞれ別個に設けられており、表示LCD204に設けたバックアップは、交換可能な電池すなわちLCD用電池208Bとして設けられている。
【0107】
このように、CPU203用のバックアップ電源と、表示LCD204用のバックアップ電源が、CPU用電池208AおよびLCD用電池208Bとして別々に設けられるので、LCD用電池208Bの容量がなくなっても、停電中にCPU203は引き続きその動作を継続し、例えば時計の計時や、タイマー時刻や、メニューなどの設定を保持して、復電時に停電前の状態に戻ることができる。また、CPU用電池208Aは、停電中に表示LCD204をバックアップする必要がなく、従来のバックアップ時間を確保しながら、その容量を小型化することができる。よって、表示LCD204の消費電力が増えた場合でも、停電中のバックアップ時間を極力延ばすことができる。
【0108】
さらに、CPU203と表示LCD204の各バックアップ時間を別々に規定できるので、表示LCD204に設けられるLCD用電池208Bを交換可能にすることで、当該LCD用電池208Bの容量を任意に選ぶことができる。一例として、販売時の店頭に陳列しているときにのみ表示を行ないたい場合は、小容量の電池をLCD用電池208Bとして使用し、その後、ユーザが使用する段階で、それよりも大きな容量のLCD用電池208Bを表示LCD204用のバックアップ電源として使用すればよい。また、LCD用電池208Bの容量がなくなったときに、停電中の表示LCD204による表示の必要,不要をユーザ側で判断し、適切な時期に電池の交換を行なうことができる。
【0109】
またこの場合、LCD用電池208Bが製品出荷時に取付けられておらず、後でユーザが装着できるように未装着状態となっていることが好ましい。このように、後でLCD用電池208Bが装着できる空の電池収納部が炊飯器に設けられていることで、LCD用電池208Bが未装着状態となっているので、ユーザが適切な容量の電池を直ぐに装着できる。
【0110】
さらにこの場合、CPU用電池208Aは製品寿命を満足する容量のものであり、LCD用電池208Bは製品寿命よりも短い容量のものであることが好ましい。これにより、CPU用電池208Aの容量が、製品寿命の期間内でなくなるのを防止して、例えば時計の計時や、タイマー時刻や、メニューなどの再設定を、製品の使用途中で行なうような煩わしさを解消できる。
【0111】
次に、市場での使用状態をモニタする機能を備えた炊飯器の構成を、図16に基づいて説明する。なお、上述した各部の説明と同一箇所には同一の符号を付し、共通する説明は重複を避けるため極力省略する。同図において、本体7に設けられた表示・操作部171は、前述した加熱制御手段111や減圧制御手段130などを備えたマイコン143と、LCD102と、操作スイッチ103と、LED105の他に、停電を検出すると停電信号を出力する停電検出回路172と、前述したCPU用電池208AやLCD用電池208Bを含み、停電検出時にマイコン143などに電源電圧を供給するバックアップ回路173と、を備えている。また、マイコン143は、炊飯・保温プログラム174や、LCD102やLED105の表示を制御する表示プログラム175や、操作スイッチ103に関連したスイッチ操作を制御するスイッチ操作プログラム176や、時間計測プログラム177や、モニタプログラム178や、通信プログラム179などを備えている。なお、これらの各プログラム174〜178の動作については、後程説明する。
【0112】
181は、前記表示・操作部171と共に本体7に組み込まれる加熱回路である。加熱回路181は、マイコン143からの駆動信号に基づいて、加熱コイル16を除く負荷187であるコードヒータ26や、蓋ヒータ36や、冷却ファン113などを駆動する負荷駆動回路182と、加熱コイル16の駆動回路に相当する発振・トリガ検出回路183と、加熱コイル16を駆動するための制御信号検出回路に相当する入力電圧・入力電流・回生電流検出回路184と、サージ(異常な高電圧)が加わったときに、マイコン143にサージ信号を出力して、加熱コイル16の駆動を停止させるサージ検出回路185と、前述した鍋温度センサ21や温度センサ61に相当する温度センサ188からのセンサ信号を受けて、炊飯や保温時に鍋11や蓋体31の温度を検出する回路に相当する温度検出回路186などを備えている。
【0113】
そして、前記マイコン143の炊飯・保温プログラム174は、前述した炊飯制御手段118や保温制御手段119に相当するもので、ひたし,沸騰加熱,沸騰継続,むらしの各行程を経て、保温に至る一連の制御を実行する。また、時間計時プログラム177は、前記炊飯・保温プログラム174が実行する炊飯や保温などの時間をカウント(計測)する他に、マイコン143が動作し始めてから停電中を含めた経過時間をカウントする計測手段として機能する。そのために、バックアップ手段に相当するバックアップ回路173は、停電中にも時間計時プログラム177を動作させるように電源電圧を供給する。
【0114】
モニタプログラム178は、過去数回(例えば1〜20回)の炊飯に関する各種のデータや、炊飯コース毎の炊飯回数などを記録する機能を有する。また、初めて炊飯をしてむらし制御になったときに、マイコン143が動作し始めてからの時間を記録する記録手段としての機能を備えている。この記録された時間は、前述のバックアップ回路173によって停電中にも保持される。つまりモニタプログラム178は、マイコン143が動作し始めてから、ユーザが初めて炊飯器を使用するまでの時間を記録する。この記録した時間と、計測手段がカウントする時間とを、送出手段に相当する通信プログラム179から取得すれば、ユーザが初めて炊飯器を使用した時の日時がわかる。例えば、モニタプログラム178によって記録された時間が1000時間で、計測手段がカウントする現在の時間が5000時間であるとすると、現在の時間に対応する現在の日時が12月10日の10時であれば、初めて炊飯をして蒸らし制御になったのは、5000時間−1000時間=4000時間に相当する166.7日前の6月26日18時であることがわかる。
【0115】
通信プログラム179は、前述のようにマイコン143が動作し始めてから、ユーザが初めて炊飯器を使用するまでの時間と、時間計時プログラム177が停電中を含めてカウントする時間とを、外部に出力する送出手段としての機能を有する。ここでは、UART通信アドで外部機器である例えばパソコン189と通信を行ない、こうした時間などの情報をパソコン189が取得するようになっている。
【0116】
以上のように本実施例では、時間をカウントする計測手段としての時間計時プログラム177と、時間の記録手段としてのモニタプログラム178と、停電中にも時間計時プログラム177を動作させると共に、モニタプログラム178が記録した時間を保持させるバックアップ手段としてのバックアップ回路173と、時間計時プログラム177でカウントした時間およびモニタプログラム178で記録した時間の送出手段としての通信プログラム179とを備え、モニタプログラム178は、初めてユーザが使用したのを検出して、時間計時プログラム177がカウントする時間を記録するように構成している。
【0117】
このように、工場出荷時からの時間を時間計時プログラム177がカウントし、初めてユーザが使用したときの時間をモニタプログラム178が記録する。そのため、製品の戻入時などに、外部の通信機器である例えばパソコン189などを用いて、通信プログラム179からそれぞれの時間のデータを取得すれば、ユーザが実際に使用を開始してから、どの程度の時間を経た製品なのかを正しく認識することができる。また、工場出荷時に日時を設定する必要がなく、製造時における設定項目が増えずに済むので、工程時間を短縮して管理を楽にすることができる。
【0118】
なお、本実施例では、初めてユーザが使用したときを、初めてむらしになったときで検出しているが、これに限定する必要はない。例えば、初めて炊飯を開始したときや、初めて鍋11の温度は所定温度以上になったときや、初めて炊飯が終了して保温に移行したときや、炊飯を開始して、初めて所定時間を経過したときをもって、検出してもよい。さらに、時間の送出手段としては、マイコン143に組み込まれた通信プログラム179ではなく、LCD102による表示や、図示しない報知手段によるブザー音や音声を利用してもよい。
【0119】
図17および図18は、本体7内に設けられたコネクタ191を実装するプリント基板192の斜視図と断面図をそれぞれ示している。同図において、コネクタ191は、本体193の底面より複数すなわち4つのコネクタピン194A〜194Dを突出して設けており、各々のコネクタピン194A〜194Dに対応して、プリント基板192にはこれらのコネクタピン194A〜194Dが挿入可能な4つの孔195A〜195Dが設けられる。また本実施例の特徴は、コネクタ191の両端部に位置する孔195A,195Dの孔径を、他の孔195B,195Cの孔径よりも小さく形成する。このときの各部の寸法関係は、次のようになる。
【0120】
コネクタ191の両端部以外に位置する孔195A,195Dの孔径>コネクタ191の両端部に位置する孔195A,195Dの孔径≧コネクタピン194A〜194Dのピン径
このようにすると、周囲温度の変化に伴ない、コネクタ191やプリント基板192の材料が収縮する際の、個々の材料の収縮率の差によって生じる、プリント基板192に対するコネクタピン194A〜194Dの変位量を規制することができる。これにより、コネクタ191の半田フィレット部197(図18参照)への負荷を軽減することができる。また、コネクタ191の両端部にある孔195A,195Dの孔径を、それ以外に位置する孔195A,195Dの孔径よりも小さくすることにより、全ての孔を同じ小さな孔径とした場合よりも、コネクタピン194A〜194Dの挿入に余裕を生じ、プリント基板192にコネクタ191を取付ける際の作業性を向上させることができる。
【0121】
図19は、上記図17や図18の変形例である。この図では、コネクタ191の本体193の底面から、6つのコネクタピン194A〜194Fを突出して設けており、各々のコネクタピン194A〜194Fに対応して、プリント基板192には6つの孔195A〜195Fが設けられる。そして、コネクタ191の両端部から複数箇所の孔195A,195Bおよび孔195E,195Fの孔径を、他の孔195C,195Dの孔径よりも小さく形成する。
【0122】
この場合も、周囲温度の変化に伴ない、コネクタ191やプリント基板192の材料が収縮する際の、個々の材料の収縮率の差によって生じる、プリント基板192に対するコネクタピン194A〜194Fの変位量を規制することができる。これにより、コネクタ191の半田フィレット部197への負荷を軽減することができる。また、コネクタ191の両端部から複数箇所の孔195A,195Bおよび孔195E,195Fの孔径を、それ以外に位置する孔195E,195Fの孔径よりも小さくすることにより、全ての孔を同じ小さな孔径とした場合よりも、コネクタピン194A〜194Fの挿入に余裕を生じ、プリント基板192にコネクタ191を取付ける際の作業性を向上させることができる。
【0123】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。実施例中における電流値や設定時間は一例に過ぎず、各炊飯器の仕様に合せて適宜変更してよい。さらに、減圧手段81としての構成も、本実施例のような電磁ポンプ82と、経路84と、電磁弁87とを組み合わせたものに限定されず、減圧源として電磁ポンプ82以外のものを利用してもよい。
【符号の説明】
【0124】
173 バックアップ回路(バックアップ手段)
177 時間計時プログラム(計測手段)
178 モニタプログラム(記録手段)
179 通信プログラム(送出手段)
203 CPU(制御手段)
204 表示LCD(表示手段)
208A CPU用電池(バックアップ電源)
208B LCD用電池(バックアップ電源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御手段と、表示手段と、停電中に電源を供給するバックアップ電源とを備えた炊飯器において、
前記バックアップ電源は、前記制御手段と前記表示手段にそれぞれ別個に設けられ、前記表示手段に設けたバックアップ電源は、交換可能な電池としたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記電池が未装着状態となっていることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御手段に設けたバックアップ電源は製品寿命を満足する容量のものであり、前記表示手段に設けたバックアップ電源は製品寿命よりも短い容量のものであることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項4】
時間をカウントする計測手段と、
前記時間の記録手段と、
停電中にも前記計測手段を動作させ、前記記録手段が記録した時間を保持させるバックアップ手段と、
前記計測手段の時間および前記記録手段で記録した時間の送出手段と、を備え、
前記記録手段は、初めてユーザが使用したのを検出して、前記計測手段の時間を記録するものであることを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−72839(P2011−72839A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9406(P2011−9406)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【分割の表示】特願2008−232496(P2008−232496)の分割
【原出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】