説明

炎症性疾患治療用の置換プテリジン

本発明は、呼吸器系もしくは胃腸系の障害又は疾患、関節、皮膚もしくは眼の炎症性疾患、末梢神経系もしくは中枢神経系の疾患あるいは癌性疾患の治療に適している新規なプテリジンに関する。また、本発明は前記化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
−呼吸器系又は胃腸系の障害又は疾患、
−関節、皮膚又は眼の炎症性疾患、
−末梢神経系又は中枢神経系の疾患、あるいは
−癌の治療に適した新規なプテリジンならびに該化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プテリジンは増殖抑制作用を有する活性物質として従来技術より公知である。Merz等は、7-ベンジルアミノ-6-クロロ-2-ピペラジノ-4-ピロリジノプテリジン及び位置異性体のない誘導体の調製について、Journal of Medicinal Chemistry 1998、41、4733〜4743ページに記載している。調製したこの化合物により腫瘍細胞の増殖を阻止できることが発見された。DE3540952には、2-ピペラジノ-プテリジンの6位がフッ素、塩素又は臭素から選択されるハロゲン原子によって置換された化合物が記載されている。この化合物が、生体内での腫瘍細胞及びヒト血小板の活性化を抑制できることがわかった。DE3323932には、4位にジアルキルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ又は1-オキシドチオモルホリノ基を有する2-ピペラジノ-プテリジンが開示されている。この化合物は、生体内での腫瘍細胞及びヒト血小板の活性化を抑制できることがわかった。DE3445298には、2、4、6及び7位に多数の異なる置換基を有するプテリジンが記載されているが、プテリジン骨格に2-ピペラジノ基を有する化合物が腫瘍の増殖の抑制剤として好適であり、また抗血栓特性及び転移抑制特性を有する。米国特許第2,940,972号にはトリ置換及びテトラ置換プテリジン誘導体が記載されているが、このプテリジン化合物には、有用な薬理学的特性である冠動脈拡張効果、鎮静効果、解熱効果及び鎮痛効果があるという主旨で全体が記載されている。
【0003】
従来技術から公知のIV型ホスホジエステラーゼ阻害剤は、吐き気や嘔吐等の副作用を引き起こすことが知られている(Doherty、1999、Curr. Op. Chem. Biol.、Aug. 3、(4):466〜73)。本発明に記載の物質は、動物実験で吐き気や嘔吐についての副作用をひきおこさなかったことから、前述の疾病の治療に対して特に好ましく適している(S. Murinus、Yamamoto K.等、Physiol. Behav.、2004、Oct. 30、83(1)、151〜6)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、呼吸器系もしくは胃腸系の障害又は疾患、関節、皮膚もしくは眼の炎症性疾患、末梢神経系もしくは中枢神経系の疾患あるいは癌の予防又は治療に適した新規な化合物を提供することであり、とりわけ、副作用のなかでも特に嘔吐や吐き気を抑えることを特徴とする前記化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、式1のプテリジンは炎症性疾患の治療に適していることがわかった。そこで、本発明は式1の化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物に関する。



【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
1は、窒素原子と、窒素、硫黄及び酸素から選択されるさらにもう1つの原子とを含んでいてもよい飽和又は不飽和の5、6又は7員環の複素環式基を表し、
2は、窒素原子と、窒素、硫黄及び酸素から選択されるさらにもう1つの原子とを含んでいてもよい5、6又は7員環の複素環式基を表し、
3は式a〜式iで表される基を表し、
































【0008】
【化2】

【0009】
式中、
mは1、2又は3を表し、
nは0、1、2又は3を表し、
3.1は、C1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.1.1、CONR3.1.1R3.1.2、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.1.1、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.1.1R3.1.2、NHCOR3.1.1、SO2R3.1.1、SO2NR3.1.1R3.1.2、ハロゲンから選択される基を表し、
3.1.1は水素、C1-6-アルキルを表し、
3.1.2は水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2は、C2-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.2.1、CONR3.2.1R3.2.3、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.2.2、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.2.1R3.2.3、NHCOR3.2.1、SO2R3.2.1、SO2NR3.2.1R3.2.3、フッ素、臭素から選択される基を表し、
3.2.1は水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2.2は水素、C2-6-アルキルを表し、
3.2.3は水素、C1-6-アルキルを表す。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
式1で表される上記化合物のうち、
1が、窒素原子と、窒素及び硫黄から選択されるさらにもう1つの原子とを含んでいてもよい飽和又は不飽和の5又は6員環の複素環式基を表し、
2が、1個又は2個の窒素原子を含んでいてもよい5又は6員環の複素環式基を表す化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が好ましい。
式1で表される上記化合物のうち、
1が、窒素原子を含んでいてもよく、さらに硫黄原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和の5又は6員環の複素環式基を表し、
2が、2個の窒素原子を含む6員環の複素環式基を表す化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が好ましい。
【0011】
式1で表される上記化合物のうち、
3が式a〜式iで表される基を表し、
式中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、C1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.1.1、CONR3.1.1R3.1.2、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.1.1、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.1.1R3.1.2、NHCOR3.1.1、SO2R3.1.1、SO2NR3.1.1R3.1.2、ハロゲンから選択される基を表し、
3.1.1が水素、C1-6-アルキルを表し、
3.1.2が水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2が、C2-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.2.1、CONR3.2.1R3.2.3、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.2.2、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.2.1R3.2.3、NHCOR3.2.1、SO2R3.2.1、SO2NR3.2.1R3.2.3、フッ素、臭素から選択される基を表し、
3.2.1が水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2.2が水素、C2-6-アルキルを表し、
3.2.3が水素、C1-6-アルキルを表す、式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が好ましい。
【0012】
これらの中で、
3が式a〜式iで表される基を表し、
式中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、C1-4-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.1.1、CONR3.1.1R3.1.2、CN、C1-4-ハロアルキル、OR3.1.1、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-4-ハロアルキル、NR3.1.1R3.1.2、NHCOR3.1.1、SO2R3.1.1、SO2NR3.1.1R3.1.2、ハロゲンから選択される基を表し、
3.1.1が水素、C1-4-アルキルを表し、
3.1.2が水素、C1-4-アルキルを表し、
3.2が、C2-4-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.2.1、CONR3.2.1R3.2.3、CN、C1-4-ハロアルキル、OR3.2.2、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-4-ハロアルキル、NR3.2.1R3.2.3、NHCOR3.2.1、SO2R3.2.1、SO2NR3.2.1R3.2.3、フッ素、臭素から選択される基を表し、
3.2.1が水素、C1-4-アルキルを表し、
3.2.2が水素、C2-4-アルキルを表し、
3.2.3が水素、C1-4-アルキルを表す、式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が好ましい。
【0013】
これらの中で、
3が式a〜式iで表される基を表し、
式中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、メチル、エチル、プロピル、OMe、OEt、OPr、フッ素、塩素、臭素、CN、NH2、NHCOMe、COOH、COOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、SO2NMe2、Ph、OH、OCHF2、OCF3、CF3、シクロプロピル、シクロペンチル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチル、OCH2-シクロプロピルから選択される基を表し、
3.2が、エチル、プロピル、OEt、OPr、フッ素、臭素、CN、NH2、NHCOMe、COOH、COOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、SO2NMe2、Ph、OH、OCHF2、OCF3、CF3、シクロプロピル、シクロペンチル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチル、OCH2-シクロプロピルから選択される基を表す、式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が好ましい。
3が式a〜式iで表される基を表し、
式中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、C1-4-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、CONH2、CN、C1-4-ハロアルキル、OR3.1.1、O-C3-6-シクロアルキル、OCH2-シクロプロピル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-4-ハロアルキル、NHCOR3.1.1、SO2R3.1.1、SO2NH2、ハロゲンから選択される基を表し、
3.1.1が水素、C1-4-アルキルを表し、
3.2が、C2-4-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、CONH2、CN、C1-4-ハロアルキル、OR3.2.1、O-C3-6-シクロアルキル、OCH2-シクロプロピル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-4-ハロアルキル、NHCOR3.2.2、SO2R3.2.2、SO2NH2、フッ素、臭素から選択される基を表し、
3.2.1が水素、C2-4-アルキルを表し、
3.2.2が水素、C1-4-アルキルを表す、式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が好ましい。
【0014】
これらの中で、
3が式a〜式iで表される基を表し、
式中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、メチル、イソプロピル、OMe、フッ素、塩素、CN、NHCOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、Ph、OH、OCHF2、OCF3、CF3、i-Pr、シクロプロピル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチル、OCH2-シクロプロピルから選択される基を表し、
3.2が、CN、NHCOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、Ph、OH、フッ素、OCHF2、OCF3、CF3、i-Pr、シクロプロピル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチル、OCH2-シクロプロピルから選択される基を表す、式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が好ましい。
これらの中で、
1がピロリジンを表し、
2がピペラジンを表し、
3が以下から選択される基
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
を表す、式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物が特に好ましい。
(使用する用語及び定義)
本出願の範囲において、可能な置換基を定義する際、置換基も構造式の形で示すことができる。置換基の構造式におけるアスタリスク(*)は、分子の残り部分への結合サイトと解釈される。例えば、N-ピペリジニル(I)、4-ピペリジニル(II)、2-トリル(III)、3-トリル(IV)及び4-トリル(V)を以下に示す。
【0018】
【化5】

【0019】
置換基の構造式にアスタリスク(*)がない場合は、各水素原子が置換基から離脱でき、遊離した原子価が分子残りの部分への結合サイトになる。例えば、VIは2-トリル、3-トリル、4-トリル及びベンジルを表すことができる。
【0020】
【化6】

【0021】
医薬的に許容される酸付加塩は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩及びp−トルエンスルホン酸塩から選択される塩を意味し、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フマル酸塩及びメタンスルホン酸塩が好ましい。
「C1-6-アルキル」(他の基の一部である場合を含む)という用語は、炭素原子1〜6個を有する分岐及び分岐していないアルキル基を意味し、「C2-6-アルキル」という用語は炭素原子2〜6個の分岐及び分岐していないアルキル基を意味し、「C1-4-アルキル」という用語は炭素原子1〜4個の分岐及び分岐していないアルキル基を意味する。1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、ネオペンチル又はヘキシルが挙げられる。以下の略語、Me、Et、n-Pr、i-Pr、n-Bu、i-Bu、t-Bu等も前述の基に使用することができる。特に記載のない限り、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルの定義には該当基の異性体として存在しうるすべてのものが含まれる。例えば、プロピルには、n-プロピル及びiso-プロピルが、ブチルにはiso-ブチル、sec-ブチル及びt-ブチル等が含まれる。
「C1-4-アルキレン」(他の基の一部である場合を含む)という用語は、炭素原子1〜4個の分岐及び分岐していないアルキレン基を意味する。例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、1-メチルエチレン、ブチレン、1-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン又は1,2-ジメチルエチレンが挙げられる。特に記載のない限り、プロピレン及びブチレンの定義には該当基の異性体として存在しうる、炭素数が同じであるすべてのものが含まれる。例えば、プロピルには1-メチルエチレンが含まれ、ブチレンの場合は、1-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレンが含まれる。アルキレン鎖の1個又は2個の炭素原子と一緒になって3、4、5又は6個の炭素原子を有する炭素環式基を形成する基によって、炭素鎖が置換されている場合、環の例として以下のものが挙げられる。



【0022】
【化7】

【0023】
「C3-6-シクロアルキル」(他の基の一部である場合を含む)という用語は、炭素原子3〜6個の環状アルキル基を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。特に記載のない限り、環状アルキル基は、メチル、エチル、iso-プロピル、t-ブチル、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
本発明の範囲において、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。反対のことが記載されていない限り、フッ素、塩素及び臭素が好ましいハロゲンとみなされる。
「C1-6-ハロアルキル」(他の基の一部である場合を含む)という用語は、炭素原子1〜6個の分岐及び分岐していないアルキル基が、1個以上のハロゲン原子で置換されているものを意味する。「C1-4-アルキル」という用語は、炭素原子1〜4個の分岐及び分岐していないアルキル基が、1個以上のハロゲン原子で置換されているものを意味する。1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。例としては、CF3、CHF2、CH2F、CH2CF3が挙げられる。
【0024】
「アリール」(他の基の一部である場合を含む)という用語は、炭素原子6〜10個を有する芳香環系を意味する。例としてはフェニル又はナフチルが挙げられるが、フェニルが好適なアリール基である。特に記載のない限り、芳香族基は、メチル、エチル、iso-プロピル、t-ブチル、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
「複素環式基」又は「het」という用語は、5、6もしくは7員環の飽和もしくは不飽和複素環式基又は5〜10員環の二環式複素環式基で、酸素、硫黄及び窒素から選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含んでいてもよく、環は炭素を介して分子に結合するか又は窒素原子があれば窒素原子を介して分子に結合していてもよい。下記は、5、6もしくは7員環の飽和もしくは不飽和複素環式基の例である。
【0025】
【化8】

【0026】
特に記載がない限り、複素環式基はケト基を有していてもよい。この例としては、以下が挙げられる。
【0027】
【化9】

【0028】
(実施例)
本発明の化合物は、例えばDE3540952等の文献からそれ自体は公知である方法によって調製することができる。
実施例12: a)3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-ベンズアルデヒド:10.00g(65.73mmol)の3-ヒドロキシ-4-メチル-ベンズアルデヒドを、100mlのジメチルホルムアミドに溶解し、11.00ml(103.34mmol)のブロモシクロペンタンと14.00g(101.30mmol)の炭酸カリウムとを加える。反応混合物を100℃で20時間攪拌した後、真空下で蒸発させる。残渣を酢酸エチル及び水で抽出する。有機相を乾燥、蒸発乾固させる。収量:13.44g(=理論値の93%)
b)3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-ベンズアルデヒドオキシム:500mg(2.27mmol)の3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-ベンズアルデヒドを5mlのアセトニトリルに投入し、0.35ml(2.53mmol)のトリエチルアミンと174mg(2.50mmol)のヒドロキシルアミン塩酸塩とを加える。反応混合物を攪拌しながら24時間還流した後、真空下で蒸発させる。残渣を水及び酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせて、乾燥、蒸発乾固させる。異物がまだ混入している生成物をクロマトグラフィーで精製する。
収量:341mg(=理論値の64%)
【0029】
c)3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-ベンジルアミン:291mg(1.24mmol)の3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-ベンズアルデヒド-オキシムを3mlのメタノールに溶解し、600mg(2.47mmol)の塩化ニッケル(II)六水和物を添加し、混合物を-50℃に冷却する。480mg(12.44mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを数回に分けて添加する。反応混合物を-30℃から-40℃で2時間攪拌した後、12mlの2N塩酸をゆっくり添加する。析出物を吸引濾過し、2N水酸化ナトリウム溶液により母液を塩基性にして、酢酸エチルで抽出を行う。有機相を乾燥、蒸発乾固させる。
収量:214mg(=理論値の78%)
実施例37a: a)3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシ-ベンズアルデヒド:4.70g(24.98mmol)の4-ジフルオロメトキシ-3-ヒドロキシベンズアルデヒドを50mlのジメチルホルムアミドに投入し、4.00g(29.63mmol)のブロモメチルシクロプロパンと3.50g(25.32mmol)の炭酸カリウムとを添加する。反応混合物を100℃に20時間加熱した後、ジメチルホルムアミドを蒸発させ濃縮する。残渣を酢酸エチル及び水で抽出し、有機相を乾燥、蒸発乾固させる。
収量:5.83g(理論値の96%)
b)(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシ-フェニル)-メタノール:0.188g(4.96mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを、30 mlのテトラヒドロフラン及び0.60mlのメタノール中に溶解し、氷で冷却しながら1.20g(4.95mmol)の3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシ-ベンズアルデヒドを含む6mlのテトラヒドロフラン溶液を滴下する。反応混合物を周囲温度で24時間攪拌した後、蒸発させる。残渣を80mlの0.5N水酸化ナトリウム溶液と混合し、酢酸エチルで抽出する。有機相を塩化ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥、蒸発乾固させる。収量:0.985g(理論値の81%)
【0030】
実施例38: a)3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシ-ベンズアルデヒドオキシム:4.50g(18.58mmol)の3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシ-ベンズアルデヒドを50mlのアセトニトリルに投入し、3.00ml(22.00mmol)のトリエチルアミンと1.50g(22.00mmol)のヒドロキシルアミン塩酸塩とを添加する。反応混合物を4時間還流し、周囲温度で16時間攪拌する。その後、混合物を蒸発させる。残渣を酢酸エチル及び水で抽出し、有機相を乾燥、蒸発乾固させる。収量:4.56g(理論値の95%)
b)3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシ-ベンジルアミン:3.50g(13.61mmol)の3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシ-ベンズアルデヒドオキシムを、35mlのメタノールに投入し、3.40g(14.02mmol)の塩化ニッケル(II)六水和物を添加する。混合物を-50℃に冷却した後、5.30g(137.30mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを2.5時間以内で添加する。反応混合物を-30℃から-40℃で1.5時間攪拌した後、65mlの16%塩酸をゆっくりと添加する。析出物をCeliteで吸引濾過し、母液を塩基性にする。さらに生成された析出物は順次吸引濾過して、濾液を真空下で蒸発させる。水性の残渣を酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥、蒸発乾固させる。
収量:2.20g(理論値の66%)
【0031】
実施例41: a)3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-ベンズアルデヒド:2.00gの3-ヒドロキシ-4-メチル-ベンズアルデヒドを20mlのジメチルホルムアミドに投入し、2.20ml(20.67mmol)のブロモシクロペンタンと2.80g(20.26mmol)の炭酸カリウムとを添加する。反応混合物を115℃に3時間加熱した後、蒸発させる。残渣を酢酸エチル及び水で抽出し、有機相を乾燥、蒸発乾固させる。収量:2.60g(理論値の90%)
b)(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-フェニル)-メタノール:0.50g(13.22mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを70mlのテトラヒドロフラン及び1.40mlのメタノール中に溶解し、氷で冷却しながら2.50g(11.35mmol)の3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-ベンズアルデヒドを含む10mlのテトラヒドロフラン溶液を滴下する。反応混合物を周囲温度で24時間攪拌し、蒸発させる。残渣を100mlの0.5N水酸化ナトリウム溶液と混合し、酢酸エチルで抽出する。有機相を塩化ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥、蒸発乾固させる。
収量:2.40g(理論値の95%)
以下に例として多数の化合物を示すが、これらは前記で概説した合成方法の1つと同様にして調製することができる。融点(mp)は「℃」で表す。
【0032】
【化10】


【0033】
【化11】




【0034】
【化12】




【0035】
【化13】




【0036】
【化14】

【0037】
(適応症)
式1の化合物の特徴として、治療分野における広範囲の用途を有することがわかった。なかでも、式1で表される本発明の化合物が、PDE4阻害剤として医薬的効力を有するために好適に適合する用途について、特に言及しておくべきであろう。例としては、呼吸器系又は胃腸系の疾患又は障害、関節、皮膚又は眼の炎症性疾患、末梢神経系又は中枢神経系の疾患が挙げられる。
とりわけ、粘液の産生の増加を伴う気道や肺の疾患、炎症性及び/又は閉塞性の気道疾患の予防や治療に言及する必要がある。この例としては、急性、アレルギー性又は慢性の気管支炎、慢性閉塞性気管支炎(COPD)、咳、肺気腫、アレルギー性もしくは非アレルギー性の鼻炎又は副鼻腔炎、慢性の鼻炎又は副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫病、気道過敏症、感染性の気管支炎又は肺炎、小児喘息、気管支拡張症、肺繊維症、急性成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支浮腫、肺浮腫、例えば誤嚥、毒性ガスの吸入などの様々な要因の結果として起こる気管支炎又は間質性肺炎もしくは肺繊維症、或いは、心不全、放射線被爆、化学療法、嚢胞性繊維症もしくは膵臓繊維症又はα1−アンチトリプシン欠乏症の結果として起きる気管支炎、肺炎又は間質性肺炎が挙げられる。
また、胃腸管の炎症性疾患の治療も特筆に価する。この例としては、胆嚢炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性偽ポリープ、若年性ポリープ、深在性嚢胞性大腸炎、腸壁嚢胞状気腫、胆石や凝塊等の胆管及び胆嚢の疾患における急性又は慢性の炎症性の変化、或いはリウマチ様関節炎などの関節の炎症性疾患又は皮膚や眼の炎症性疾患の治療用が挙げられる。
【0038】
癌の治療についても優先的に言及しておくべきである。この例としては、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病等のあらゆる形態の急性及び慢性白血病、骨肉腫等の骨腫瘍、乏突起膠腫や神経膠芽細胞腫等のあらゆる種類の膠腫が挙げられる。
また、末梢神経系又は中枢神経系の疾患の予防と治療についても優先的に言及しておくべきである。この例としては、鬱病、双極性鬱病もしくは躁鬱病、急性及び慢性の不安神経症、精神分裂病、アルツハイマー病、パーキンソン病、急性及び慢性の多発性硬化症又は急性及び慢性の疼痛、ならびに卒中、低酸素症又は頭蓋大脳外傷を原因とする脳の損傷が挙げられる。
とりわけ好ましくは、本発明は、肺をはじめとする気道上流及び下流の炎症性又は閉塞性疾患、例えば、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、気管支拡張症、嚢胞性繊維症、特発性肺繊維症、繊維性肺胞炎、COPD、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息、クローン病、潰瘍性大腸炎の治療用、とりわけ、COPD、慢性気管支炎及び喘息の治療用の医薬組成物を調製するための、式1で表される化合物の使用に関する。
COPD、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息、クローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性及び閉塞性疾患、とりわけ、COPD、慢性気管支炎及び喘息を治療するために、式1で表される化合物を使用することが特に好ましい。
鬱病、双極性鬱病もしくは躁鬱病、急性及び慢性の不安神経症、精神分裂病、アルツハイマー病、パーキンソン病、急性及び慢性の多発性硬化症又は急性又は慢性の疼痛、ならびに、卒中、低酸素症又は頭蓋大脳外傷を原因とする脳の損傷等の末梢神経系又は中枢神経系の疾患を治療するために、式1で表される化合物を使用することも好ましい。
本発明の卓越した態様の1つは、副作用が抑えられることである。これは、本発明の範囲においては、患者が嘔吐を起こすことなく、好ましくは吐き気を感じることなく、さらに好ましくは倦怠感を催すことなく、投与量の医薬組成物を投与することができることを意味する。疾病のいずれの段階においても、嘔吐又は吐き気を催させることなく治療上有効量の物質を投与することができるということは、極めて好ましい。
【0039】
(組合せ)
式1の化合物は単独で使用することもできるし、本発明による式1で表される別の有効成分と一緒に使用することもできる。また、所望であれば、式1の化合物は他の薬理学的に有効な成分と一緒に使うこともできる。本目的のためには、例えば、ベータ受容体刺激薬(betamimetics)、抗コリン作用薬、コルチコステロイド、他のPDE4−阻害剤、LTD4−拮抗薬、EGFR−阻害剤、ドーパミン作動薬、H1−抗ヒスタミン薬、PAF−拮抗薬及びPI3−キナーゼ阻害剤から選択される有効成分を用いることが好ましく、二重もしくは三重に組合わせて使用することが好ましい。例えば、
− ベータ受容体刺激薬と、コルチコステロイド、PDE4−阻害剤、EGFR−阻害剤又はLTD4−拮抗薬、
− 抗コリン作用薬と、ベータ受容体刺激薬、コルチコステロイド、PDE4−阻害剤、EGFR−阻害剤又はLTD4−拮抗薬、
− コルチコステロイドと、PDE4−阻害剤、EGFR−阻害剤又はLTD4−拮抗薬、
− PDE4−阻害剤と、EGFR−阻害剤又はLTD4−拮抗薬、
− EGFR−阻害剤とLTD4−拮抗薬、の組合せである。
本発明は、3種の有効成分の組合せも包含し、それぞれの有効成分が前記化合物カテゴリーの1つから選択される。
【0040】
(調剤)
本発明の別の態様は、呼吸器系障害の治療用医薬品に関するもので、式1で表される前記プテリジン1種以上を含有し、プテリジンを、ベータ受容体刺激薬、抗コリン作用薬、コルチコステロイド、PI3−キナーゼ阻害剤、LTD4−拮抗薬、EGFR−阻害剤、ドーパミン作動薬、H1−抗ヒスタミン薬又はPAF−拮抗薬から選択される追加の有効成分1種以上、好ましくは、ベータ受容体刺激薬、抗コリン作用薬又はコルチコステロイドを一緒に使用するもので、同時投与、連続投与又は別々の投与により一緒又は順次に使用する。
投与に適した形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、溶液、シロップ、エマルジョン又は吸入可能な粉末もしくはエアロゾルが挙げられる。いずれの場合も、医薬的に有効な化合物(化合物類)の含有量は、組成物全質量に対して0.1〜90質量%、好ましくは0.5〜50質量%の範囲であるとよく、即ち、本願明細書で後述の投与量範囲となるような十分な量であるとよい。
調剤品は、錠剤状又は粉末、カプセル(例えばゼラチンのハードカプセル)に内包した粉末、溶液もしくは懸濁液状態で経口投与することができる。吸入による投与の場合は、有効成分組成物を粉末又は水性もしくは水性−エタノール性溶液として投与するか、噴射剤ガス組成物を使用して投与することができる。
【0041】
そこで、医薬製剤は、上記の好適な実施形態に応じた式1の化合物1種以上の含有量によって特徴づけられる。
式1の化合物は経口投与がとりわけ好ましく、また、1日1回又は2回の投与が特に好ましい。例えば、好適な錠剤の場合、公知の賦形剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはラクトース等の不活性希釈剤、コーンスターチもしくはアルギン酸等の崩壊剤、デンプン又はゼラチン等の結合剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはタルク等の滑剤及び/又はカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースもしくはポリ酢酸ビニル等の放出遅延剤と有効成分とを混合することによって得られる。また、錠剤はいくつかの層を有していてもよい。
したがって、被覆錠剤の場合は、錠剤同様に作製したコアを、錠剤コーティング剤として通常用いられる物質、例えばコリドンもしくはセラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン又は糖などで被覆することによって調製される。放出を遅らせたり、不相溶にならないようにするために、コアを多層で構成してもよい。同様に、錠剤コーティングも、前記錠剤で記載した賦形剤を用いて、多数の層で構成して放出を遅らせることができる。
本発明の有効成分又はその組成物を含有するシロップ剤は、サッカリン、シクラメート、グリセロール又は糖等の甘味剤や、例えばバニリン又はオレンジ抽出物のような香味料等の風味相乗剤をさらに含有していてもよい。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の懸濁補助剤又は増粘剤、又は、例えば脂肪アルコールとエチレンオキシドとの縮合物等の湿潤剤、又は、p-ヒドロキシ安息香酸エステル等の防腐剤も含有させることができる。
1種以上の有効成分又は有効成分組成物を含むカプセル剤の場合は、例えば、ラクトースもしくはソルビトール等の不活性担体を有効成分と混合して、混合物をゼラチンカプセルに充填して調製することができる。
【0042】
好適な坐薬は、例えば、中性脂肪、ポリエチレングリコール又はその誘導体等の本目的のために提供される担体と混合して作製することができる。
使用できる賦形剤としては、例えば、水;パラフィン(例えば石油留分)、植物油(例えば落花生油もしくはゴマ油)、単官能性アルコールもしくは多官能性アルコール(例えばエタノールもしくはグリセロール)等の医薬的に許容される有機溶媒;天然鉱物粉末(例えば、カオリン、クレー、タルク、チョーク)、合成鉱物粉末(例えば高分散性ケイ酸及びケイ酸塩)、糖類(例えば蔗糖、ラクトース及びグルコース)、乳化剤(例えばリグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロース、デンプン及びポリビニルピロリドン)及び滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸及びラウリル硫酸ナトリウム)等の担体が挙げられる。
経口投与のためには、前記担体の他にクエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム及び第二リン酸カルシウム等の添加剤を、デンプン、好ましくはジャガイモデンプン、ゼラチン等の様々な添加剤と一緒に含有できるのは勿論のことである。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク等の滑剤を錠剤作製時に同時に使用することもできる。水性懸濁液の場合、前記の賦形剤に加えて様々な風味相乗剤又は着色剤を有効成分と混合してもよい。
また、式1の化合物を吸入で投与することも好ましく、特に1日1回又は2回投与が好ましい。この目的では、式1の化合物を吸入に合った形態で利用できるようにしなければならない。吸入可能な調剤としては、吸入可能な粉末、噴射剤含有定量エアロゾル又は噴射剤を含有しない吸入可能な溶液が挙げられ、これらは任意であるが、従来からの生理的に許容される賦形剤との混合物で構成されていてもよい。
本発明の範囲において、噴射剤を含有しない吸入溶液とは、濃縮物又は直ぐに使用できる無菌吸入液を含む。本発明により使用できるこれらの調剤については、明細書の次のパートでより詳細に説明する。
【0043】
(吸入粉末)
式1の有効成分を医薬的に許容される賦形剤との混合物として含有する場合、以下の医薬的に許容される賦形剤を使用して本発明の吸入粉末を調製することができる。単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖類及び多糖類(例えば、デキストラン)、多価アルコール類(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、あるいはこれら賦形剤の混合物。好ましくは、単糖類又は二糖類が使用され、なかでもラクトース又はグルコースの使用が好ましく、限定はされないが、その水和物の形が特に好ましい。本発明の目的には、ラクトースが特に好ましい賦形剤であり、ラクトース一水和物が最も好ましい。本発明の吸入粉末の調製方法は、成分を粉砕、微粉砕し、最後に一緒に混合するもので従来技術より公知である。
(噴射剤含有吸入エアロゾル)
本発明で使用できる噴射剤含有吸入エアロゾルは、有効成分1を噴射剤ガス中に溶解又は分散状態で含むことができる。本発明の吸入エアロゾルの調製に使用できる噴射剤ガスについては従来技術から公知である。適当な噴射剤ガスは、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物、及び、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの好ましくはフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物のなかから選択される。上記噴射剤ガスは単独で、又はその混合物として使用できる。特に好ましい噴射剤ガスは、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)ならびにその混合物から選択されるフッ素化アルカン誘導体である。また、本発明の使用の範囲内で用いられる噴射剤駆動型吸入エアロゾルには、補助溶剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑剤及びpH調節剤等の他の成分も含ませることができる。これらの成分はすべて、当分野において公知である。
【0044】
(噴射剤を含有しない吸入可能な溶液)
本発明の式1で表される化合物を用いて、噴射剤を含有しない吸入可能な溶液や吸入可能な懸濁液が好ましくは調製される。この目的で使用される溶媒は水性又はアルコール系溶媒で、好ましくはエタノール性溶液である。溶媒として水を単独で使用してもよいし、水とエタノールとの混合物でもよい。溶液又は懸濁液は、適当な酸を用いてpH値を2〜7、好ましくは2〜5に調整する。pHは無機酸又は有機酸から選択される酸を用いて調整すればよい。特に好適な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が挙げられる。特に好適な有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸等が挙げられる。推奨される無機酸は塩酸及び硫酸である。また、有効成分の1つとともに酸付加塩を形成している酸を使用することも可能である。有機酸の中では、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸が好ましい。所望であれば、上記の酸の混合物を用いることもでき、特に、酸性化特性に加えて、例えば香料、酸化防止剤又は錯化剤としての特性を有する酸、例えばクエン酸又はアスコルビン酸等の場合は、混合して用いるとよい。本発明によると、塩酸を用いてpH値を調整することが特に好ましい。
【0045】
本発明の目的のために使用される噴射剤を含有しない吸入溶液には、補助溶剤及び/又は他の賦形剤を添加することができる。好ましい補助溶剤は、ヒドロキシル基又は他の極性基を含むもので、例えばアルコール類、特にイソプロピルアルコール、グリコール類、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類である。本明細書における賦形剤及び添加剤という用語は、それ自体は活性物質ではないが、薬理学的に好適な溶媒中で1種またはそれより多くの活性物質と共に処方することができ、活性物質を含む調剤の定性的特性を改善することができる、薬理学的に許容される任意の物質を意味する。これらの物質は薬理的作用を持たないことが好ましい。あるいは、所望の療法との関連において容易に認識できるような薬理作用は持たないか、少なくとも望ましくない薬理作用を有していないことが好ましい。賦形剤及び添加剤としては、例えば、大豆レシチン、オレイン酸、ポリソルベート等のソルビタンエステル類、ポリビニルピロリドンなどの界面活性剤、他の安定剤、錯化剤、最終的な医薬調剤の品質保持期間を保証又は延長する酸化防止剤及び/又は防腐剤、香味付与剤、ビタミン類及び/又は当分野において公知の他の添加剤が挙げられる。また、添加剤として、塩化ナトリウム等の薬理学的に許容される塩も等張剤として挙げられる。好ましい賦形剤としては、例えばpHの調整に使用されていない場合のアスコルビン酸、さらにはビタミンA、ビタミンE、トコフェロール類及び人体で産生する類似のビタミン類及びプロビタミン類等の酸化防止剤が挙げられる。防腐剤を使用して病原体による汚染から該調剤を保護することができる。適当な防腐剤は当該分野において公知のものであり、特に、従来技術から公知の濃度の塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム又は安息香酸もしくは安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩である。
前述の治療用の形態として、呼吸器系障害の治療用医薬品のそのまま使用できるパックが提供されるが、このパックには、例えば、呼吸器系疾患のCOPD又は喘息という言葉をはじめとする説明が同封され、プテリジンと前記から選択される1種以上の組合せパートナーとが含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物。
【化1】

(式中、
1は、窒素原子と、窒素、硫黄及び酸素から選択されるさらにもう1つの原子とを含んでいてもよい飽和又は不飽和の5、6又は7員環の複素環式基を表し、
2は、窒素原子と、窒素、硫黄及び酸素から選択されるさらにもう1つの原子とを含んでいてもよい5、6又は7員環の複素環式基を表し、
3は式a〜式iで表される基を表し、
【化2】

式a〜式i中、
mは1、2又は3を表し、
nは0、1、2又は3を表し、
3.1は、C1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、アリール、COOR3.1.1、CONR3.1.1R3.1.2、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.1.1、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.1.1R3.1.2、NHCOR3.1.1、SO2R3.1.1、SO2NR3.1.1R3.1.2、ハロゲンから選択される基を表し、
3.1.1は水素、C1-6-アルキルを表し、
3.1.2は水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2は、C2-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、アリール、COOR3.2.1、CONR3.2.1R3.2.3、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.2.2、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.2.1R3.2.3、NHCOR3.2.1、SO2R3.2.1、SO2NR3.2.1R3.2.3、フッ素、臭素から選択される基を表し、
3.2.1は水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2.2は水素、C2-6-アルキルを表し、
3.2.3は水素、C1-6-アルキルを表す。)
【請求項2】
前記R1が、窒素原子と、窒素及び硫黄から選択されるさらにもう1つの原子とを含んでいてもよい飽和又は不飽和の5又は6員環の複素環式基を表し、
2が、1個又は2個の窒素原子を含んでいてもよい5又は6員環の複素環式基を表す、請求項1記載の式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物。
【請求項3】
前記R1が、窒素原子を含んでいてもよく、さらに硫黄原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和の5又は6員環の複素環式基を表し、
2が、2個の窒素原子を含む6員環の複素環式基を表す、請求項1又は2記載の式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物。
【請求項4】
前記R3が式a〜式iで表される基を表し、
式a〜式i中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、C1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.1.1、CONR3.1.1R3.1.2、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.1.1、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.1.1R3.1.2、NHCOR3.1.1、SO2R3.1.1、SO2NR3.1.1R3.1.2、ハロゲンから選択される基を表し、
3.1.1が水素、C1-6-アルキルを表し、
3.1.2が水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2が、C2-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、Ph、COOR3.2.1、CONR3.2.1R3.2.3、CN、C1-6-ハロアルキル、OR3.2.2、O-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-C3-6-シクロアルキル、O-C1-4-アルキレン-CONH2、O-C1-4-アルキレン-NH2、O-C1-6-ハロアルキル、NR3.2.1R3.2.3、NHCOR3.2.1、SO2R3.2.1、SO2NR3.2.1R3.2.3、フッ素、臭素から選択される基を表し、
3.2.1が水素、C1-6-アルキルを表し、
3.2.2が水素、C2-6-アルキルを表し、
3.2.3が水素、C1-6-アルキルを表す、請求項1〜3のいずれか1項記載の式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物。
【請求項5】
前記R3が式a〜式iで表される基を表し、
式a〜式i中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、メチル、エチル、プロピル、OMe、OEt、OPr、フッ素、塩素、臭素、CN、NH2、NHCOMe、COOH、COOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、SO2NMe2、Ph、OH、OCHF2、OCF3、CF3、シクロプロピル、シクロペンチル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチル、OCH2-シクロプロピルから選択される基を表し、
3.2が、エチル、プロピル、OEt、OPr、フッ素、臭素、CN、NH2、NHCOMe、COOH、COOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、SO2NMe2、Ph、OH、OCHF2、OCF3、CF3、シクロプロピル、シクロペンチル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチル、OCH2-シクロプロピルから選択される基を表す、請求項1〜4のいずれか1項記載の式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物。
【請求項6】
前記R3が式a〜式iで表される基を表し、
式a〜式i中、
mが1、2又は3を表し、
nが0、1、2又は3を表し、
3.1が、メチル、イソプロピル、OMe、フッ素、塩素、CN、NHCOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、Ph、OH、OCHF2、OCF3、CF3、i-Pr、シクロプロピル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチルから選択される基を表し、
3.2が、CN、NHCOMe、CONH2、SO2Me、SO2NH2、Ph、OH、フッ素、OCHF2、OCF3、CF3、i-Pr、シクロプロピル、OCH2CONH2、OCH2CH2NH2、O-シクロペンチルから選択される基を表す、請求項1〜5のいずれか1項記載の式1で表される化合物、又はその医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、ラセミ体、水和物又は溶媒和物。
【請求項7】
医薬組成物としての請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
PDE4酵素を阻害することにより治療が可能な疾病の治療用医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項9】
呼吸器系又は胃腸系の障害又は疾患、関節、皮膚又は眼の炎症性疾患、癌、或いは末梢神経系又は中枢神経系の疾患の治療用医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項10】
粘液の産生の増加を伴う呼吸器系又は肺の疾患、炎症性及び/又は閉塞性の気道疾患の予防又は治療用医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項11】
胃腸管の炎症性疾患の治療用医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項12】
COPD、慢性副鼻腔炎、喘息、クローン病、潰瘍性大腸炎のような炎症性閉塞性疾患の治療用医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項13】
鬱病、双極性鬱病又は躁鬱病、急性及び慢性の不安神経症、精神分裂病、アルツハイマー病、パーキンソン病、急性及び慢性の多発性硬化症又は急性及び慢性の疼痛、ならびに卒中、低酸素症又は頭蓋大脳外傷を原因とする脳の損傷のような末梢神経系又は中枢神経系の疾患の予防又は治療用医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項14】
急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病又は慢性骨髄性白血病等の急性及び慢性の白血病、骨肉腫等の骨腫瘍、ならびに乏突起膠腫又は神経膠芽細胞腫等のあらゆる種類の膠腫を含む癌の治療用医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項15】
前記治療の副作用が抑制される、請求項7〜14のいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
前記抑制される副作用が嘔吐及び吐き気から選択される、請求項7〜14のいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2008−521774(P2008−521774A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541995(P2007−541995)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056246
【国際公開番号】WO2006/058869
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】