説明

炭化ホウ素複合材料

本発明は、2体積パーセント未満の多孔度を有する、ダイヤモンド粒子と、炭化ホウ素とを含む炭化ホウ素複合材料に関する。本発明は、このような材料を製造するための方法であって、複数のダイヤモンド粒子を炭化ホウ素でコーティングするステップと、この複数のダイヤモンド粒子を合わせることによって、グリーン体を形成するステップと、このグリーン体を、摂氏約1200度から約2000度の範囲の温度及び約2000Mpaを超えない圧力又は真空にさらすステップとを含む方法にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ホウ素とダイヤモンドとを含む炭化ホウ素複合材料、及び炭化ホウ素複合材料を製造するための方法に関する。このような材料は、通常、例えばアーマー、切削、穴あけ及び機械加工用の工具並びに磨損を含む作業などの用途に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
炭化ホウ素を含む複合成形体は、防弾アーマー及び耐摩耗性部品に使用される。炭化ホウ素の主要な利点は、炭化ホウ素が、極めて硬質、低密度であるため、防弾衣に使用される材料として最も良く知られていることである。したがって、炭化ホウ素をベースとする防弾衣は、最新技術を代表するものである。セラミックベースの材料による弾道発射体の停止は、複雑で、動的であり、理解が不十分な工程である。これにもかかわらず、硬度及び圧縮強度は、この目的に適した材料の重要な特性であり、材料の強度は、約200MPaを超えるべきであると考えられている。発射体がアーマー材へと深く侵入する前の、アーマーシステムによる発射体の破断及び破壊は、発射体を無効にするための効力を向上させると考えられている。多孔質相及び/又は軟質相の存在は、セラミック複合体アーマーの性能、並びに機械加工、切削、穴あけ用の工具又は劣化する硬質体又は研磨体の性能に悪い影響を与えると考えられている。
【0003】
米国特許第6,862,970号は、炭化ホウ素の主要部分を特徴とする反応結合プロセスにより、炭化ホウ素複合材料を生成するための方法を開示している。ケイ素と、1つ又は複数のホウ素原料とを含有する溶融した溶浸材を、少なくともいくらかの炭化ホウ素を含有し、さらに少なくともいくらかの遊離炭素を含有する多孔性の塊に接触させる。この溶融した溶浸材は、圧力又は真空の補助なしに、多孔性の塊へと溶浸させることによって、理論的密度に近い複合体を形成する。溶浸材のケイ素成分は、多孔性の塊の中の遊離炭素と反応することによって、マトリックス相としてその場で炭化ケイ素を形成する。さらに、溶融ケイ素は、炭化ホウ素成分と反応する傾向にあるため、ケイ素をホウ素原料に結合させる、又はホウ素原料をドーピングすることによって、抑制、又は少なくとも大幅に弱めることができる。したがって、生成した複合体には、炭化ケイ素マトリックス全体に炭化ホウ素が分散又は分布して含まれている。通常、ケイ素とホウ素とを含有する溶浸相もいくらか残留して未反応で存在するが、これらはマトリックス全体に渡り、同じ様に分布又は分散している。
【0004】
国際公開公報第2005079207号は、ホウ素を含む少なくとも1つの物質がその中に溶解しているケイ素を含む複合物、及び炭素を含む少なくとも1つの物質を含むマトリックス成分と、炭化ホウ素を含む強化成分とを含む複合材料であって、前記強化相が前記マトリックス全体に分布し、前記炭化ホウ素が、前記複合物によって実質的に影響を受けない複合材料を開示している。この複合材料は、この中にホウ素及び炭素が溶解されているケイ素を含む、溶融した溶浸材を提供するステップと、この溶融した溶浸材を、炭化ホウ素を含む多孔性の塊へと溶浸させるステップとを含む方法により生成される。
【0005】
2006年に発表された論文(Abramshe,R、(2006)、「よりよい材料によるセラミックアーマーの性能の改善(Improving Ceramic Armor Performance with Better Materials)」、Ceramic Industry、10月号、BNP Media、Troy、MI、USAから出版)は、防弾用に提供されるセラミック材料、例えば炭化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素及びホウ素と炭化ケイ素の混合物などは、改善の可能性があり、過剰の追加重量を加えることなくアーマープレートの硬度及び破壊靭性を上げる、より硬質な材料、例えば合成ダイヤモンドなどとの新しい複合体が開発されていることを開示した。ダイヤモンドで外側を被覆した、超高圧及び超高温を用いて生成されたセラミック炭化ホウ素の小片が開示されている。外側のダイヤモンド被覆層は、固体小片の形態で炭化ホウ素粉末に完全に結合しているが、このダイヤモンド被覆層の目的とは、すべてのタイプの発射体に対して、この発射体が、アーマープレートの炭化ホウ素部分へと侵入する機会を得る前に発射体の先端部を完全に破壊することである。発射体を破壊することにより、その滞留時間が増加し、これによって発射体全体の粉砕が可能となる。これら2種類の材料の表面エネルギーは、非常に似通っているので、高温/高圧、ホットプレス又は反応結合が、コストを少し上げること(主に合成ダイヤモンドのコスト)によって達成できる。
【0006】
国際公開公報第90/09361号は、炭化ケイ素以外の酸化又は非酸化セラミックのマトリックス内で一緒に結合しているダイヤモンド粒子を含み、このダイヤモンド粒子が、複合体の70体積パーセント未満を構成しているダイヤモンド複合体を開示している。この発明の複合体は、ホットプレス、熱間等静圧圧縮成形又は常圧焼結などの技法で形成することができる。組成物を形成する開示された方法は、ダイヤモンド粒子と、酸化又は非酸化セラミックの粉末との混和物を準備するステップと、この混合物を圧縮し、摂氏1750度未満の温度及び200MPaを超えない圧力での還元環境において、密度を高める/焼結するステップとを含む。20体積パーセントから40体積パーセントの間のダイヤモンド粒子を含有する複合体が、最適な特性を示すようにみえる。非酸化セラミックスの例として、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化クロム、ジホウ化チタン、炭化ホウ素及び窒化ホウ素が挙げられる。12の例が開示されている。グラファイトへと変換されているダイヤモンド粒子があった場合には、各複合体の試料にX線回折を施すことによって、変換の程度を求めた。この測定結果は、例12で報告されていたが、生成した複合体は、X線回折により、炭化クロム、グラファイト及びダイヤモンドを含有する高密度材料であると判定された。
【0007】
英国特許第1595517号は、硬質な耐摩耗性金属体を製造する方法が、金属粉末と、金属粉末の25重量パーセントまでの量の、ホウ素及び/又は炭化ホウ素及び/又はホウ化チタンから構成される粉末化したホウ化剤と、ホウ化剤の30重量パーセントまでの量の、粉末化したホウ化活性剤とを混和するステップと、この混合物を型に設置するステップと、この混合物を少なくとも理論値のあるパーセンテージの密度まで圧縮するステップと、こうして形成された素地を、保護的雰囲気下、摂氏700度から摂氏1300度の温度で焼結させるステップとを含むことを開示している。コバルト又はニッケルなどの金属粉末に、この金属粉末がホウ素化される前及び/又は後に、例えば、ダイヤモンド及び/又は立方体の窒化ホウ素などのさらに硬質な材料の研磨粒子を中に埋め込むことができる一実施形態を開示している。これにより、非常に硬質な材料用の切削工具を得ることができる。したがって、金属結合した研磨用素地は、この発明の方法により製造することができ、ダイヤモンド又は立方体の窒化ホウ素の研磨粒子は、金属結合したマトリックス内に保持され、この金属結合したマトリックスは、コバルトで構成され、コバルトは、少なくとも50重量パーセントの量で存在し、マトリックス全体に実質的に均一に分布しており、この金属結合したマトリックスは、ホウ化コバルトの形態で、実質的にコバルト及びホウ素のみで構成することができ、この中で、ホウ素は、マトリックスの0.5から3重量パーセントの量で存在し、この素地中の研磨粒子の含有量は、この素地の5から15体積パーセントである。
【0008】
米国特許公開第2006/280638号は、炭化セラミックが、炭化チタン(TiC)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)及び炭化ホウ素からなる群から選択される、金属間結合した複合体を開示している。複合体は、高温金属間バインダー及びダイヤモンド粒子を混練し、高温金属間バインダー及びダイヤモンド粒子を加圧し、高温金属間バインダー及びダイヤモンド粒子を焼結することによって、金属間結合したダイヤモンド複合体を形成する方法により形成され、この高温金属間バインダーは、加工温度が少なくとも摂氏約1200度である複合物を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
弾道発射体を停止させる(無効にする)より優れた特性を有する、又は切削、機械加工、穴あけ又は劣化する硬質材料若しくは研磨材料に適しており、しかも対費用効果も高い、炭化ホウ素ベースのセラミック複合体が継続して緊急に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に従って、ダイヤモンド粒子と、炭化ホウ素とを含む炭化ホウ素複合材料であって、2体積パーセント未満の多孔度を有する材料を提供する。
【0011】
好ましくは、炭化ホウ素複合材料は、ダイヤモンド粒子と炭化ホウ素粒子とを含む。
【0012】
好ましくは、ダイヤモンド粒子の平均サイズは、炭化ホウ素粒子の平均サイズから50μm以内であり、より好ましくは、ダイヤモンド粒子の平均サイズは、炭化ホウ素粒子の平均サイズから20μm以内である。ダイヤモンドと炭化ホウ素粒子との間のこの平均サイズの関係は、アーマーの用途に有利であると考えられている。ダイヤモンド粒子及び/又は炭化ホウ素粒子のサイズ分布は、一峰性、二峰性又は多峰性であってよい。
【0013】
好ましくは、多孔度は、1体積パーセント未満であり、より好ましくは、多孔度は、0.5体積パーセント未満であり、さらにより好ましくは、複合材料は、実質的に細孔を含まない。
【0014】
好ましくは、炭化ホウ素複合材料は、2重量パーセント未満のグラファイトを含み、より好ましくは、複合材料は、1重量パーセント未満のグラファイトを含み、さらにより好ましくは、複合材料は、実質的にグラファイトを含まない。
【0015】
多孔度及びグラファイト含有量は、これらが材料の弾道発射体の停止(無効にする)能力に悪い影響を及ぼすと考えられていることから、可能な限り低いことが重要である。材料の硬度も靭性もまた、切削、機械加工、穴あけ及び劣化する硬質材料又は研磨材料に重要である。
【0016】
好ましくは、複合材料は、炭化ケイ素をさらに含む。炭化ケイ素は、硬質な材料であり、ダイヤモンド及び炭化ホウ素粒子の間のすきまの領域を満たすことができ、これによって多孔性を低下又は排除し、材料全体の硬度及び靭性を改善することができる。
【0017】
好ましくは、複合材料は、10重量パーセント未満の未反応ケイ素、より好ましくは7重量パーセント未満の未反応ケイ素、さらにより好ましくは5重量パーセント未満の未反応ケイ素を含む。未反応ケイ素又は遊離ケイ素は、比較的に軟質で、この存在により、複合材料の硬度及び弾道発射体を停止させる能力が低下する傾向にある。
【0018】
各ダイヤモンド粒子(必ずしも全部ではない)に伴う層、及び少なくとも部分的にそれを包囲する層が存在することが好ましく、この層内には、ホウ素と炭素の両方が存在し、ホウ素の炭素に対する割合は、粒子からの半径方向距離と共に増加してもよい。このような層は、グラファイトへの変換に対抗してダイヤモンド粒子を安定させ、ダイヤモンド粒子の周囲のホウ素及び/又は炭素含有材料への結合を促進させると考えられている。
【0019】
好ましくは、この層は、ダイヤモンド粒子、及び存在し得るあらゆる炭化ホウ素の微粒子又は粒子とは、微細構造的に及び/又は組成上異なる。
【0020】
好ましくは、この付随する層は、ダイヤモンド粒子の不可欠な部分であるか、又はその表面に結合しているコーティング層である。
【0021】
好ましくは、炭化ホウ素複合材料は、約0.5重量パーセントから約40重量パーセントの範囲の炭化ホウ素と、約10重量パーセントから約60重量パーセントの範囲のダイヤモンドとを含む。より好ましくは、炭化ホウ素複合材料は、約15重量パーセントから約30重量パーセントの範囲の炭化ホウ素と、約30重量パーセントから約50重量パーセントの範囲のダイヤモンドとを含む。
【0022】
好ましくはその炭化ホウ素複合材料は、電流を運ぶ(導電性である)ことができる。これにより、この材料は、放電加工(EDM)法により、造形及び切断することができる。一実施形態において、炭化ホウ素は、0.5重量パーセントから2重量パーセント、好ましくは約1重量パーセントの範囲の量で、好ましくは、EDM法の適用を可能にするために十分な電流を運ぶことができる複合材料を得るのにちょうど十分な量で、グリーン体中に存在する。
【0023】
本発明による炭化ホウ素の複合材料は、防弾衣を含めたアーマーの用途における使用に適していてもよい。なぜなら、この複合材料は、軽量であり、超硬質材料、すなわちダイヤモンドで強化されており、低い又は無視できる位の多孔度、及び低い又は無視できる位の、グラファイトなどの軟質相の含有量を有する。硬度が非常に高いため、本発明の複合材料は、機械加工、切削、穴あけ又は劣化する硬質材料又は研磨材料、例えば岩、コンクリート、石、金属、セラミックスなど、ある種類の木製品及び複合材料に適している。
【0024】
本発明の第2の態様に従って、本明細書中で前に記載した炭化ホウ素と、ダイヤモンドとを含む炭化ホウ素複合材料を製造する方法であって、この複数のダイヤモンド粒子を、炭化ホウ素でコーティングするステップと、複数のダイヤモンド粒子を合わせることによって、グリーン体を形成するステップと、このグリーン体を、摂氏約1200度から摂氏約2000度の範囲の温度及び約2000MPaを超えない圧力又は真空にさらすステップとを含む方法を提供する。好ましくは、圧力は、約1000MPaを超えない。
【0025】
このような温度及び圧力は、従来の焼結システムの適用範囲内であるため、使用すれば費用が有意に増加することになる超高圧炉を使用する必要がない。
【0026】
グリーン体は、硬質金属及びセラミック製造の技術分野で知られている用語であり、焼結される予定ではあるが、まだ焼結されていない物を指す。通常、グリーン体は自立していて、目的とする完成品の一般的な形態を有する。グリーン体は通常、少量のバインダーと粉末を合わせ、この合わせた混合粉末を型に入れ、圧力をかけてこの粉末を圧縮することによって形成される。
【0027】
ダイヤモンド粒子は、これらを合わせるステップの前に炭化ホウ素でコーティングするのが好ましい。
【0028】
好ましくは、グリーン体は多孔性である。
【0029】
焼結補助剤、例えばケイ素若しくは自然ホウ素、バインダー材料、又はバインダー材料の前駆体などを、グリーン体に導入してもよい。これは、焼結補助剤を、コーティング成分として、又は混和した微粒子成分として含めることによって達成してもよいし、これを溶浸により多孔性グリーン体に導入してもよい。
【0030】
好ましい実施形態において、本方法は、液体ケイ素又は液体ホウ素をグリーン体に溶浸させることを含み、より好ましくは、本方法は、液体ケイ素をグリーン体に溶浸させることを含む。
【0031】
好ましくは、圧力は、0MPaを超え、約1000MPa以下の範囲であり、より好ましくは、圧力は、0MPaを超え、約200MPa以下の範囲であり、さらにより好ましくは、圧力は、0MPaを超え、約100MPa以下の範囲である。
【0032】
好ましくは、温度は、摂氏約1000度を超えるが、ダイヤモンドの熱劣化を最小限に抑えるように選択される。好ましくは、温度は、摂氏約2000度を超えない。本方法が、グリーン体を液体ケイ素に溶浸させるステップを含まない場合、温度は、摂氏約1500度を超えないことが好ましい。
【0033】
好ましくは、本方法は、複数のダイヤモンド粒子と、複数のホウ素含有粒子とをブレンドすることによって、ブレンドした混合物を形成するステップと、このブレンドした混合物を圧縮することによってグリーン体を形成するステップとを含む。
【0034】
好ましくは、ホウ素含有粒子は、炭化ホウ素粒子である。
【0035】
前もって選んだセラミック材料の粒子を、グリーン体に取り込むことができ、このセラミック材料は、アルミナ、炭化物、ホウ化物及び窒化物、例えば二ホウ化チタン、炭化ケイ素及び窒化ケイ素などからなる群から選択されることが好ましい。
【0036】
好ましくは、炭化ホウ素コーティングは、ダイヤモンド粒子に化学的に結合している。好ましくは、コーティングは、実質的に微結晶性の部分を含む。
【0037】
炭化ホウ素コーティングの厚さは、好ましくは、約0.01μmから約5μmの範囲であり、より好ましくは、炭化ホウ素コーティングの厚さは、約0.5μmから約3μmの範囲であり、さらにより好ましくは、炭化ホウ素コーティングの厚さは、約1μmから約3μmの範囲である。炭化ホウ素コーティングは、達成されるべき使用のために必要であれば、厚いことが好ましいが、実質的にはそれ以上厚いことはない。
【0038】
ダイヤモンド粒子の大きさは、約0.005μmから約2000μmの範囲内であり、好ましくは約0.5μmから約300μmの範囲内であり、より好ましくは約1μmから約100μmの範囲内であり、さらにより好ましくは約10μmから約70μmの範囲内であってよい。
【0039】
ダイヤモンド粒子上の炭化ホウ素コーティングは、ダイヤモンドとコーティングの界面において、炭素が多く含まれ、ダイヤモンドから離れたコーティングの表面において、ホウ素が多く含まれることが好ましい。このようなコーティングの勾配により、界面において、ダイヤモンドとコーティングの熱膨張特性により良い相容性が生じる結果となり、さらに焼結工程の間のコーティング全体への炭素の拡散が向上することによって、成形体の優れた焼結が達成される。
【0040】
本発明の第3の態様に従って、本明細書中で前述の炭化ホウ素と、ダイヤモンドとを含む炭化ホウ素複合材料を製造するための方法であって、複数のコーティングされたダイヤモンド粒子と、複数のホウ素含有粒子とをブレンドすることによって、ブレンドした混合物を形成するステップと、このブレンドした混合物をグリーン体へと形成するステップと、このグリーン体を、高温及び約2000MPaを超えない圧力にさらすステップとを含む方法を提供する。好ましくは、ダイヤモンド粒子の少なくとも一部分は、炭化ホウ素でコーティングされていない。好ましくは、ホウ素含有粒子は、炭化ホウ素である。
【0041】
好ましくは、炭化ホウ素複合材料は、本発明による。
【0042】
本発明の第4の態様に従って、本明細書中で前述の炭化ホウ素と、炭化ケイ素と、ダイヤモンドとを含む炭化ホウ素複合材料を製造するための方法であって、複数のダイヤモンド粒子と、複数の炭化ホウ素粒子とを合わせることによって、ブレンドした混合物を形成するステップと、このブレンドした混合物を多孔性のグリーン体へと形成するステップと、このグリーン体を、ケイ素原料と接触させるステップと、このグリーン体及びケイ素原料を、ケイ素の融点より高い温度にさらすことによって、溶融ケイ素をこのグリーン体へ溶浸させ、このグリーン体中の炭素を反応させて、炭化ケイ素を形成するステップとを含む方法を提供する。ケイ素が溶融する場合、ケイ素は溶浸するか、又はグリーン体の細孔へと運ばれる。
【0043】
好ましくは、そのように製造された炭化ホウ素複合材料は、本発明による。
【0044】
グラファイトへの変換に対抗してダイヤモンドを安定させ、ダイヤモンド粒子の周囲の材料への結合を改善させるために、好ましくは少なくとも一部分、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも90%のダイヤモンド粒子は、炭化物材料、例えば炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タンタル及び炭化タングステンなどで、又はアルミナでプリコーティングされている。
【0045】
好ましくは、少なくとも20%のダイヤモンド粒子は、炭化ホウ素コーティングを有し、より好ましくは少なくとも90%のダイヤモンド粒子は、炭化ホウ素コーティングを有する。好ましくは、炭化ホウ素コーティングは、ある量の未反応ホウ素を取り込んでいる。理論により限定されることなく、この未反応ホウ素は、接触した溶融ケイ素中に拡散し、ケイ素と炭化ホウ素粒子との反応性を低下させる効果を有すると考えられている。
【0046】
好ましくは、グリーン体及びケイ素原料は、ケイ素の融点より高い温度まで加熱する一方で、ダイヤモンドがこの温度で熱力学的に安定する圧力又は真空よりも低い圧力又は真空にさらす。
【0047】
好ましくは、温度は、摂氏約1200度から摂氏約2000度以下の範囲であり、圧力は、約2000MPaを超えない。
【0048】
好ましくは、グリーン体は、約3重量パーセントより多くの、より好ましくは約5重量パーセントより多くの有機バインダーを含む。
【0049】
一実施形態において、グリーン体は、放電加工(EDM)を用いて切断することができる炭化ホウ素複合材料完成品を得るために十分な炭化ホウ素を含む。この実施形態において、炭化ホウ素は、0.5重量パーセントから2重量パーセントの範囲、好ましくは約1重量パーセントの量でグリーン体の中に存在する。
【0050】
本発明の第5の態様に従って、ダイヤモンド粒子と、炭化ホウ素粒子と、炭化ケイ素とを含む炭化ホウ素複合材料を提供する。
【0051】
本発明の第6の態様に従って、本発明による、又は本発明による方法を用いて製造された炭化ホウ素複合材料を含む、抗弾道アーマーアセンブリを提供する。
【0052】
好ましくは、抗弾道アーマーアセンブリは、第1及び第2の背中合わせの面と、第1及び第2の領域とを含む、偶発的な発射体を無効にする素地を含み、第1の(外側の)面は、偶発的な発射体により近い位置での使用に適応されており、第1の領域は、第1の面に隣接しており、第2の領域は、第2の面に隣接しており、第1の領域は、本明細書中で前述の炭化ホウ素と、コーティングされたダイヤモンド粒子とを含み、第2の領域は、実質的にダイヤモンドを含有しない。
【0053】
偶発的な発射体を無効にする素地は、単一の、まとまった構成材料であってよく、又はこれは、例えば、層、交互配置されたタイル、モザイク又は「鱗状」構造体などとして配置された2つ以上の別々の下位の構成材料を含んでもよい。
【0054】
本発明の第7の態様に従って、機械加工、切削、穴あけ用の工具又は劣化する硬質材料若しくは研磨材料のための挿入成分であって、本発明による炭化ホウ素複合材料を含む挿入成分を提供する。
【0055】
好ましくは、この挿入成分は、石油及びガス掘削産業において使用し得るような、地下へのボーリング又は岩層へのボーリングのドリルビットにおいて使用される。
【0056】
本発明の第8の態様に従って、コーティングされたダイヤモンド粒子であって、このコーティングが、ホウ素と炭素の両方を含み、このコーティングが、ダイヤモンド表面に隣接する第1の(内側の)領域と、コーティングの表面に隣接する第2の(外側の)領域とを含み、ホウ素の炭素に対する割合が、コーティングの内側及び外側の領域において異なる、コーティングされたダイヤモンド粒子を提供する。
【0057】
好ましくは、コーティングされたダイヤモンド粒子は、本発明における使用に適している。
【0058】
コーティングは、堆積させてもよく、さもなければ、少なくとも1つの別個のステップにおいてダイヤモンド表面上に形成してもよく、又は、ダイヤモンド合成中に反応物の塊にホウ素を導入することによって、ダイヤモンドと一体化してこれを形成してもよく、このようなやり方は、互いに排他的ではない。
【0059】
好ましくは、ホウ素の炭素に対する割合は、第1又は内側の領域において1:4未満であり、第2又は外側の領域において2:1を超える。
【0060】
コーティングの第2の外側の領域は、表面からコーティングの約0.01から0.1μmの間の深さまで広がっている。
【0061】
好ましくは、コーティングは、平均の厚さが約0.5μmを超え、好ましくは微細結晶性成分を含む。
【0062】
追加のコーティングはまた、上述のように、コーティングされたダイヤモンドに塗布することができる。
【0063】
ダイヤモンド粒子を炭化ホウ素でコーティングすることの利点として、グラファイトへの変換に対抗してダイヤモンド粒子の表面を安定化させること、複合体の内でのダイヤモンド粒子の結合及び保持を強化すること、隣接する相へのダイヤモンドの溶解を妨害すること、隣接する相との化学反応を妨害すること、焼結した複合材料のある種の特性、特にこの材料の硬度、靭性、強度、熱伝導度及び耐摩耗性を強化することなどが挙げられると考えられる。コーティングはまた、例えば、凝集を低減させることによって、複合体内のダイヤモンド粒子の分散性を向上させると考えられる。
【0064】
ダイヤモンド粒子を炭化ホウ素でプリコーティングするさらなる利点は、既知の方法による既知の炭化ホウ素成形体の製造に対して最適化されている工程条件を、ダイヤモンドの存在に合うように適応させることが必要となった場合には、最小限の適応で済ませることができることである。
【0065】
本発明による炭化ホウ素複合材料は、摩耗環境にさらされて使用される部品、例えば摩耗部品(例えばノズル)及び切削工具などにおける使用に適している。炭化ホウ素複合材料はまた、耐荷重性部品、例えばベアリングなどにおける使用に適している。
【0066】
以下の付随する図を参照して、非限定的な実施形態をここに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ホウ素と炭素とを含むコーティングを有するダイヤモンド粒子の断面を示す電子顕微鏡像を示す図である。顕微鏡像の拡大率は異なる。
【図2】ホウ素と炭素とを含むコーティングを有するダイヤモンド粒子の断面を示す電子顕微鏡像を示す図である。顕微鏡像の拡大率は異なる。
【図3】ダイヤモンド基材上のホウ素及び炭素コーティングの第二次イオンマススペクトル法(SIMS)分析を示す図である。
【図4】ダイヤモンド基材上のホウ素及び炭素コーティングのAuger分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明による炭化ホウ素複合材料を製造するための方法の好ましい実施形態は、ダイヤモンド粒子と炭化ホウ素粒子とを含むグリーン体を調製するステップと、このグリーン体を液体ケイ素に溶浸させるステップとを含む。このグリーン体は、平均粒度が約1μmから約100μmの範囲のダイヤモンド粉末のある量と、平均サイズが同じ範囲であるBC粒子のある量とをブレンドすることにより、ブレンドした混合物を形成することによって調製される。約10重量パーセント未満という微量な量の、TiCなどの他の炭化物セラミックスが、ブレンドした混合物に含まれていてもよい。BC粒子が、ダイヤモンド粒子と均一に混練及びブレンドされることが重要である。BC粒子の酸化は、液体の粉砕溶剤及びブレンド溶剤として、アルコール及びケロシンを用いて、又はアルコールなしでケロシンを用いて、最小限に抑えるべきである。次いで、通常、約2重量パーセントから10重量パーセントの範囲の濃度で、有機バインダーをブレンドした混合物に加える。次いで、このブレンドした混合物を、型又はダイに入れ、約100MPa未満の圧力で一軸圧縮することによって、グリーン体を形成する。次いで、ケイ素の存在下、このケイ素が溶融して、グリーン体の細孔内に溶浸するのに十分な温度で、このグリーン体を、炉で加熱し、グリーン体内のダイヤモンド及び他の炭素と反応させることによって、SiCを形成する。米国特許第6,179,886号、第6,709,747号及び第6,862,970号で教示されている溶浸法を、この実施形態で使用してもよい。
【0069】
この実施形態のあるバージョンにおいて、少なくともいくらかのダイヤモンド粒子は、炭化ホウ素でプリコーティングされている。炭化ホウ素コーティングは、ホウ素を、ダイヤモンド表面の炭素と反応させることによって生成できる。これにより、ダイヤモンドへのコーティングの強い結合が生じる。これは、ダイヤモンドと炭化ホウ素の界面において、炭化ホウ素を形成するのに十分高い温度で、CVD又はパックセメンテーション法を行うことにより達成し、ホウ素コーティングを炭化ホウ素へと完全又は部分的に変換させてもよいし、又は、例えばPVDなど他の方法を用いて、ダイヤモンドをホウ素でコーティングし、その後で、加熱処理を行い、一部又はすべてのホウ素を炭化ホウ素へと変換してもよい。国際公開公報第05017227号の教示に従って、炭化ホウ素の粗いコーティングでダイヤモンド粒子をプリコーティングすることができる。ダイヤモンドを炭化ホウ素でコーティングするこの方法は、図1及び2に示されているように、外側表面が非常に粗い炭化ホウ素コーティングを生成する傾向にある。酸化物の存在は、焼結を妨げることもあるので、ケロシンを含むアルコール中で軽く摩砕することによって、又は当分野で知られている他の方法を用いて、ダイヤモンドコーティングの曝露表面から酸化物を取り除くことが重要であると考えられている。この非常に粗い外側表面の利点としては、コーティングされた粉末の流動性が改善され、これにより圧縮工程が促進される;コーティングされたダイヤモンド粉末のマトリックス材料への機械的定着が改善され、これにより、マトリックス内でのダイヤモンドの保持が改善される;及びこれに混合される任意の追加の粉末(例えば焼結添加剤)の含浸率が改善される、などが挙げられると考えられる。粗い表面は、焼結ステップの間、コーティングされたダイヤモンド粒子間の点と点での接触領域により高い圧力がかかり、これにより、塑性変形が促進され、焼結能力、硬度及び靭性を改善するという追加の利点を有する。いくらかのホウ素が未反応のまま残っている場合、このホウ素は、焼結補助剤として機能し得る。
【0070】
焼結補助剤は、場合によって混合又は混練してもよく、又は、適切なコーティング又は同時蒸着法、例えば原子層堆積、PVD、CVD、ゾルゲル、コロイド又は当業者に既知の同様の方法で、コーティングされた粒子の表面上又はコーティング内に堆積させることもできる。焼結補助剤の例として、金属又は希土類の酸化物、例えばアルミナ、イットリア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、シリカなど、炭化物、例えば炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化チタンなど、金属ホウ化物、例えばジホウ化チタン、ジホウ化アルミニウム、遷移金属類、例えばチタン、バナジウム、鉄、ニッケル、コバルト、マンガンなど、及びこれらの任意の組合せなどが挙げられる。焼結補助剤は、焼結した成形体の特性、例えば破壊靭性などを改善するという追加の利点を有し得る。炭化ホウ素コーティングは通常粗いので、ダイヤモンド粒子上の炭化ホウ素コーティングは、粉末の形態で導入された焼結補助剤の分散を助けることができると考えられている。
【0071】
本方法の別の実施形態において、グリーン体は、スリップキャスティング法を用いて形成される。スリップキャスティングは、極めて周知の方法であり、多孔性の型の中の鉱物性粒子のコロイド懸濁剤から水を除去(「脱水」)することを含み、残ったコーティングは、乾燥後に焼結することができる。スリップキャスティングは、酸化セラミックス及び非酸化セラミックス並びに金属及びサーメットに適用されてきた。セラミック部分、例えば、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素又は炭化ホウ素などを流し込む工程は、一般的に同じ工程段階を有することになるが、この工程は、バインダー、粒度分布、真空脱水、熟成などの選択により、それぞれ異なるセラミックに対して最適化することができる。一般化した工程段階は、セラミック粉末原材料を提供すること、スリップ調製、スリップキャスティング及びスリップ除去を含み、これにより未焼結のグリーン体が残る。「チクソトロピーキャスティング」として当分野で知られているある種類のスリップキャスティング、及び他の形態の振動性スリップキャスティングが好ましい。チクソトロピーキャスティングは、複雑な形状の製作によく適しており、コスト効率が良く、比較的単純な工程段階を有する。チクソトロピーキャスティングのさらなる利点は、差異沈澱の排除に対するその潜在能力である。これらすべての特性が、防弾衣の構成材料など、複雑な造形品に要求された。
【0072】
スリップキャスティングに利用できる、適切な有機及び無機のバインダーが多く存在する。セラミックのスリップ工程に使用される一般的なものは、アルコールと混合した微孔性セルロース(炭素源)である。アルジネート、デンプン(すべての種類)、粘土、ポリビニルアルコールと混合したアクリロニトリル、様々な魚油などが使用できる。このような種類のバインダーをスリップから取り除くのに必要とされる温度条件は、一般的に摂氏500度から1050度の間である。急速な乾燥によるひび又は縮みを避けるために、ゆっくりとした上昇時間及び保持時間も必要である。
【0073】
グリーン体は、摂氏1000度から摂氏2200度の範囲の温度及び1MPaから40MPaの範囲の圧力で焼結する。
【0074】
本発明を使用することによって、様々な形状及び大きさの製品を作製することができる。特に、本発明を使用することによって、防弾アーマーシステムのための構成材料、例えば、防弾衣用にカーブした胸プレート、肩、頸部及びすね用のアーマーのための半円プレート、並びにヘリコプターシートの防護用の完全カーブの形状などを作ることができる。潜在的な用途として、防弾アーマー、セラミック工具ダイ、切削、穴あけ及び粉砕用工具、耐摩耗性部品、例えばノズルなど、並びに粉砕媒体などが挙げられる。
【0075】
アーマーの場合、アーマー材内の硬質相又は超硬質相(複数可)の粒子の約90%は、相当直径で、約100μm未満であると考えられている。
【実施例】
【0076】
(例1)
平均サイズ約10から20μmのダイヤモンド粒子のある量に、WO05017227に教示された方法に従って、ホウ素と炭素とを含むコーティングを塗布した。ダイヤモンド粒子を、ホウ素とホウ酸の50:50混合物を含む粉末とブレンドすることによって、微粒子物質の層を形成し、これを環状炉の中に入れた。この層を、以下の温度サイクルを用いて、アルゴン雰囲気下で加熱処理した。
・1時間に渡り、温度を摂氏300度まで上げ、
・温度を30分間摂氏300度で維持し、
・次いで、80分間に渡り、摂氏1150度まで上げ、
・この温度を6時間維持し、
・次いで室温まで冷却させた。
【0077】
コーティングしたダイヤモンド粒子を、過剰なホウ素及びホウ酸粉末から分離し、次いで希硝酸中で20分間沸騰させることによって、残留しているあらゆるホウ素及びホウ酸を除去した。
【0078】
コーティングしたダイヤモンド粉末を、平均サイズが10から40μmの範囲のB4C粒子と、50重量パーセントのダイヤモンド:50重量パーセントのB4Cという割合でブレンドした。B4C粒子を、ダイヤモンド粒子と均一にブレンドすることが重要である。B4C粒子の酸化は、液体の粉砕溶剤及びブレンド溶剤として、ケロシンと共にアルコールを用いて、又はケロシンのみを用いて、最小限に抑えるべきである。ケロシンを含むアルコール中で軽く摩砕することによって、又は他の手段を用いて、ダイヤモンドコーティングの曝露表面から酸化物を取り除くこともまた重要である。ブレンドした粉末は、バインダーと、90重量パーセントの粉末:10重量パーセントバインダーという割合でさらにブレンドした。上記ブレンドのある量に一軸圧縮を適用することによって、グリーン体を作製した。
【0079】
加熱処理により、バインダーをグリーン体から実質的に取り除いた。次いで、ケイ素が溶融し、グリーン体へと溶浸するのに十分な温度で、グリーン体をケイ素と接触させて炉で加熱した。
【0080】
画像分析を用いて、この完成した材料が、約33%重量のSiCを含んでいることが判明し、B4Cとダイヤモンドを合わせた量は、49%重量から53%重量であった。焼結した製品は、以下の物理的特性を有していた。
・音速:12900から13100m.s−1の範囲、
・密度:2.87g.cm−3
・Poisson比:0.150〜0.169の範囲、
・剛性率:190〜205GPaの範囲、
・ヤング率:450〜465GPaの範囲、
・体積弾性率:220〜230GPaの範囲。
【0081】
放電加工(EDM)を用いて、焼結した製品を容易に切断することができた。これは、この製品が、電流を運ぶことができることを示していた。焼結した完成複合材料には、目で認識できる細孔がなく、グラファイト含有量は、2重量パーセント未満であった。
【0082】
焼結した材料は、約7重量パーセント(%重量)の遊離又は未反応ケイ素と、約7重量パーセントの、ホウ素を含むシリケートを含んでいた。
【0083】
(例2)
コーティングされていないダイヤモンド粉末を、平均サイズが10から40μmの範囲であるB4C粒子と、50重量パーセントのダイヤモンド:50重量パーセントのB4Cという割合でブレンドした。プリコーティングされたダイヤモンド粒子が存在しないことを除いては、例1の通りにグリーン体を作製した。
【0084】
炉で加熱することによって、バインダーをグリーン体から実質的に取り除いた。次いで、ケイ素が溶融し、グリーン体へと溶浸するのに十分な温度で、グリーン体をケイ素と接触させて炉で加熱した。
【0085】
画像分析から、この材料が、約33%重量のSiCを含んでいることが判明し、B4Cとダイヤモンドを合わせた量は、49%重量から53%重量であった。焼結した製品は、例1で生成したものと同様の物理的特性を有し、同様に、機械加工(EDM)を用いて焼結した製品を容易に切断することもできた。同様に、焼結した完成複合材料には、目で認識できる細孔がなく、グラファイト含有量は2重量パーセント未満であった。
【0086】
(例3)
コーティングされたダイヤモンド粒子を、例1の通りに調製した。
【0087】
コーティングされたダイヤモンドを、炭化ホウ素粉末と、それぞれ、重量比10:90でブレンドした。層へのスリップキャスティングを用いて、一塊の粒子を形成し、これから、寸法5cm×5cm×5mmの四角形グリーン体プレートを切り出した。メタノールとメチルイソブチルケトンの50/50混合物を含むバインダー、0.5重量パーセント(炭化ホウ素及びダイヤモンドに対して)により、スリップ中に望ましい特性及び150から220℃の間の、短く、低い完全燃焼温度(すなわち、バインダーは、比較的低い蒸気圧を有する)を有する最終生成物を得た。この「バインダー」の使用は、乾燥及び焼結の間の内部応力の減少をもたらし、この製品の弾力性を向上させた。この残留物なしで炭化ホウ素を焼結しようと試みた場合と比較すると、この「バインダー」の炭素質残留物の存在が、炭化ホウ素の焼結を強化したようである。
【0088】
グリーン体は、圧力250MPa及び温度摂氏1000度を60分間適用し、低圧(準真空)で圧縮した。
【0089】
焼結した完成複合材料は、最大で、約0.5から1体積パーセントの範囲の多孔度を有し、ラマン分光法を用いて、グラファイトは検出されなかった。
【0090】
(例4)
コーティングされたダイヤモンド粒子を例1の通り調製した。
【0091】
一塊のコーティングされたダイヤモンド粒子であるが、炭化ホウ素粒子が加えられていないものを、層へのスリップキャスティングを用いて形成し、これから5cm×5cm×5mmの寸法の四角形グリーン体プレートを切り出した。メタノールとメチルイソブチルケトンの50/50混合物を含むバインダー、0.5重量パーセント(炭化ホウ素及びダイヤモンドに対して)により、スリップ中に望ましい特性及び150から220℃の間の、短く、低い完全燃焼温度(すなわち、バインダーは、比較的低い蒸気圧を有する)を有する最終生成物を得た。
【0092】
グリーン体は、圧力250MPa及び温度摂氏1000度を60分間適用し、低圧(準真空)で圧縮した。
【0093】
(例5)
例2に従って作製した、炭化ホウ素及びダイヤモンド複合体の5つの試料、5セットを、異なる厚さ、すなわち4mm、5mm、6mm、7mm及び8mmで作製した。ダイヤモンドを加えていない、炭化ホウ素の5つの試料の別の5セットを同様の条件下で作製した。これらの試料はすべて補助ポリマーとパッケージングすることによって、弾道学的特性試験に適したものにした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2体積パーセント未満の多孔度を有する、ダイヤモンド粒子と炭化ホウ素とを含む炭化ホウ素複合材料。
【請求項2】
ダイヤモンド粒子と炭化ホウ素粒子とを含む、請求項1に記載の炭化ホウ素複合材料。
【請求項3】
約2重量パーセント未満のグラファイトを含む、請求項1又は2に記載の炭化ホウ素複合材料。
【請求項4】
炭化ケイ素を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の炭化ホウ素複合材料。
【請求項5】
電流を運ぶことができる、請求項4に記載の炭化ホウ素複合材料。
【請求項6】
請求項1に記載の炭化ホウ素とダイヤモンドとを含む炭化ホウ素複合材料を製造するための方法であって、複数のダイヤモンド粒子を炭化ホウ素でコーティングするステップと、前記複数のダイヤモンド粒子を合わせることによって、グリーン体を形成するステップと、前記グリーン体を、摂氏約1200度から摂氏約2000度の範囲の温度及び約2000MPaを超えない圧力又は真空にさらすステップとを含む前記方法。
【請求項7】
ダイヤモンド粒子が、これらを合わせるステップの前に炭化ホウ素でコーティングされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項4に記載の炭化ホウ素と、炭化ケイ素と、ダイヤモンドとを含む炭化ホウ素複合材料を製造するための方法であって、複数のダイヤモンド粒子を複数の炭化ホウ素粒子と合わせることによって、ブレンドした混合物を形成するステップと、前記ブレンドした混合物を多孔性グリーン体へと形成するステップと、前記グリーン体を、ケイ素原料と接触させるステップと、前記グリーン体及び前記ケイ素原料を、ケイ素の融点を超える温度にさらすことによって、前記溶融したケイ素を前記グリーン体へと溶浸させ、前記グリーン体中の炭素と反応させて、炭化ケイ素を形成するステップとを含む前記方法。
【請求項9】
少なくとも20%のダイヤモンド粒子が、炭化物材料でプリコーティングされている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の、又は請求項6から9までのいずれか一項に従って製造された炭化ホウ素複合材料を含む抗弾道アーマーアセンブリ。
【請求項11】
第1及び第2の背中合わせの面と、第1及び第2の領域とを含む、偶発的な発射体を無効にする素地を含む、請求項10に記載の抗弾道アーマーアセンブリであって、前記第1の(外側の)面が、偶発的な発射体により近い位置での使用に適応されており、前記第1の領域が、第1の面に隣接しており、前記第2の領域が、第2の面に隣接しており、前記第1の領域が、炭化ホウ素とコーティングされたダイヤモンド粒子とを含み、前記第2の領域が、実質的にダイヤモンドを含まない前記抗弾道アーマーアセンブリ。
【請求項12】
機械加工、切削、穴あけ用の工具、又は劣化する硬質材料又は研磨材料のための挿入成分であって、請求項1から5までのいずれか一項に記載の炭化ホウ素複合材料を含む前記挿入成分。
【請求項13】
ダイヤモンド粒子とコーティングとを含むコーティングされたダイヤモンド粒子であって、前記コーティングが、ホウ素及び炭素の両方を含み、前記コーティングが、ダイヤモンド表面に隣接する第1の(内側の)領域と、コーティング表面に隣接する第2の(外側の)領域とを含み、ホウ素の炭素に対する割合が、前記コーティングの内側及び外側の領域において異なる前記ダイヤモンド粒子。
【請求項14】
請求項1に記載の炭化ホウ素とダイヤモンドとを含む炭化ホウ素複合材料を製造するための方法であって、複数のコーティングされたダイヤモンド粒子と、複数のホウ素含有粒子とをブレンドすることによって、ブレンドした混合物を形成するステップと、前記ブレンドした混合物をグリーン体へと形成するステップと、前記グリーン体を、高温及び約2000MPaを超えない圧力にさらすステップとを含む前記方法。
【請求項15】
ダイヤモンド粒子と、炭化ホウ素粒子と、炭化ケイ素とを含む炭化ホウ素複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−523613(P2011−523613A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509077(P2011−509077)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052053
【国際公開番号】WO2009/138970
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(507142155)エレメント シックス (プロダクション)(プロプライエタリィ) リミテッド (44)
【Fターム(参考)】