説明

炭化珪素単結晶の製造方法

【課題】種結晶を継続して成長させつつ、炭化珪素単結晶の結晶性の低下や、らせん転位などの結晶欠陥をさらに抑制できる炭化珪素単結晶の製造方法の提供
【解決手段】本発明に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、炭化珪素を含む種結晶70、及び種結晶70の下方に配設され、種結晶70の成長に用いられる昇華用原料80を収容する黒鉛製坩堝10と、黒鉛製坩堝10の側部の周囲に配設され、黒鉛製坩堝10を誘導加熱コイル30aを用いて加熱する加熱部30と、加熱部30と黒鉛製坩堝10との間に配設される断熱部材12とを用いて、黒鉛製坩堝10の側面視において、黒鉛製坩堝10に収容された種結晶70の成長につれて、黒鉛製坩堝10の側方方向における断熱部材12の厚さを減らす工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種結晶及び昇華用原料を収容する坩堝と、誘導加熱コイルを用いて坩堝を加熱する加熱部とを用いた炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素によって形成された種結晶と、昇華用原料とが収容された坩堝を用いて炭化珪素単結晶(以下、単結晶と適宜省略する)を製造する炭化珪素単結晶の製造装置が広く用いられている。このような炭化珪素単結晶の製造装置では、粉体状の昇華用原料が坩堝内の底部に載置されるとともに、坩堝内の上部に単結晶の種結晶が配設される。また、坩堝の外側周囲には、坩堝を加熱する誘導加熱コイルが配設される。
【0003】
このような構造を有する炭化珪素単結晶の製造装置において、種結晶上に単結晶を継続して成長させつつ、炭化珪素多結晶や、らせん転位などの結晶欠陥を含む結晶の成長を抑制するため、種結晶の近傍の温度のみを結晶化温度に冷却する方法が知られている(例えば、特許文献1)。なお、らせん転位とは、結晶中の任意の線に対して、平行に結晶面がずれて成る転位のことを示す。
【0004】
具体的には、種結晶の配設位置に対応する坩堝の側部の周囲に誘導加熱コイルを配設する。このような方法によれば、坩堝の上部からの放熱の影響により、種結晶が配設される坩堝内の上部のみを結晶化温度に冷却できる。
【0005】
従って、このような構造を有する炭化珪素単結晶の製造装置は、種結晶の成長を継続しつつ、炭化珪素多結晶や、らせん転位などの結晶欠陥を含む結晶の成長を抑制できる。
【特許文献1】特開2002−255693号公報(第4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の炭化珪素単結晶の製造装置には、次のような問題があった。すなわち、種結晶の成長に伴い、坩堝の上部から種結晶が成長した炭化珪素単結晶の下端までの距離は徐々に長くなり、坩堝の上部からの放熱の影響が少なくなるとともに、炭化珪素単結晶は、昇華用原料が載置される坩堝内の底部に近づく。このため、炭化珪素単結晶の下端近傍の温度は、高くなり、昇華用原料近傍の温度との差が小さくなってしまう。従って、種結晶の成長速度が低下し、結晶性の低下や、らせん転位などの結晶欠陥の原因となる問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、種結晶を継続して成長させつつ、炭化珪素単結晶の結晶性の低下や、らせん転位などの結晶欠陥をさらに抑制できる炭化珪素単結晶の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、炭化珪素を含む種結晶(種結晶70)、及び種結晶の下方に配設され、種結晶の成長に用いられる昇華用原料(昇華用原料80)を収容する坩堝(黒鉛製坩堝10)と、坩堝の側部の周囲に配設され、坩堝を誘導加熱コイル(誘導加熱コイル30a)を用いて加熱する加熱部(加熱部30)と、加熱部と坩堝との間に配設される断熱部材(断熱部材12)とを用いた炭化珪素単結晶の製造方法であって、坩堝の側面視において、坩堝に収容された種結晶の成長につれて、坩堝の側方方向における断熱部材の厚さを減らす工程を備えることを要旨とする。
【0009】
このような炭化珪素単結晶の製造方法によれば、種結晶が成長した炭化珪素単結晶の近傍では、断熱部材による保温効果が低減するため、坩堝からの放熱の影響を受けて、炭化珪素単結晶の近傍の温度は、低下する。つまり、炭化珪素単結晶の製造装置は、種結晶の成長に伴って、昇華用原料に近づく場合においても、炭化珪素単結晶近傍と、昇華用原料近傍との温度差を生じさせることができる。
【0010】
従って、このような炭化珪素単結晶の製造方法によれば、種結晶を継続して成長させつつ、炭化珪素単結晶の結晶性の低下や、らせん転位などの結晶欠陥をさらに抑制できる。
【0011】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、断熱部材は、坩堝の側部に配設される第1断熱部材(第1断熱部材14)と、第1断熱部材よりも前記誘導加熱コイル側に配設される第2断熱部材(第2断熱部材16)とを含み、断熱部材の厚さを減らす工程では、坩堝の側面視において、坩堝に収容されている種結晶が成長した炭化珪素単結晶と対応する位置まで第1断熱部材又は第2断熱部材を抜き出すことを要旨とする。
【0012】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、断熱部材の厚さを減らす工程では、第2断熱部材を抜き出すことを要旨とする。
【0013】
本発明の第4の特徴は、本発明の第2または3の特徴に係り、断熱部材の厚さを減らす工程では、坩堝及び第1断熱部材を誘導加熱コイルから上方に遠ざけることを要旨とする。
【0014】
本発明の第5の特徴は、本発明の第2乃至4の何れか一つの特徴に係り、第1断熱部材は、坩堝を覆うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特徴によれば、種結晶を継続して成長させつつ、炭化珪素単結晶の結晶性の低下や、らせん転位などの結晶欠陥をさらに抑制できる炭化珪素単結晶の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る第1及び第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0017】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
[第1実施形態]
本実施形態においては、(1)炭化珪素単結晶の製造装置の概略構成、(2)炭化珪素単結晶の製造方法、(3)作用・効果について、図1及び図2を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置1の概略を説明する構成図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置1の概略を説明する構成図である。
【0020】
(1)炭化珪素単結晶の製造装置の概略構成
図1に示すように、炭化珪素単結晶の製造装置1は、黒鉛製坩堝10と、石英管20と、加熱部30と、第2断熱部材16とを有する。
【0021】
炭化珪素単結晶の製造装置1を構成する各部位について説明する。具体的には、(1.1)黒鉛製坩堝10、(1.2)石英管20、(1.3)加熱部30、(1.4)炭化珪素単結晶100について説明する。
【0022】
(1.1)黒鉛製坩堝10
黒鉛製坩堝10は、炭化珪素を含む種結晶70、及び種結晶70の下方に配設され、種結晶70の成長に用いられる昇華用原料80を収容する。黒鉛製坩堝10は、支持棒40により、石英管20の内部に固定される。黒鉛製坩堝10は、反応容器本体50と、蓋部60とにより構成される。
【0023】
反応容器本体50は、少なくとも内部が円筒状である。反応容器本体50には、種結晶70及び昇華用原料80が収容される。反応容器本体50の内側には、種結晶70が配設される。具体的に、種結晶70は、蓋部60の内側表面61に接着される。
【0024】
昇華用原料80は、反応容器本体50の底部51に載置される。
【0025】
反応容器本体50の内部は、例えば、アルゴン等の不活性ガスが充填されて、不活性雰囲気になっている。反応容器本体50の内部の圧力及び温度は、変更可能である。
【0026】
蓋部60は、反応容器本体50に螺合により着脱自在に設けられる。
【0027】
(1.2)石英管20
本実施形態においては、石英管20は、黒鉛製坩堝10の少なくとも側面を覆う。石英管20の内部は、例えば、アルゴン等の不活性ガスが充填されて、不活性雰囲気になっている。
【0028】
(1.3)加熱部30
加熱部30は、黒鉛製坩堝10の側部の周囲に配設され、黒鉛製坩堝10を誘導加熱コイル30aを用いて加熱する。また、加熱部30は、石英管20の外周に配置される。
(1.4)炭化珪素単結晶100
昇華用原料80は、炭化珪素を含む炭化珪素原料である。黒鉛製坩堝10の内部が、加熱部30により加熱され所定の温度条件及び圧力条件になると、昇華用原料80は、昇華する。
【0029】
図2に示すように、昇華した昇華用原料80は、結晶化温度に至るまで冷却されると種結晶70上で再結晶し、炭化珪素単結晶100となる。
【0030】
炭化珪素単結晶100は、成長が進むにつれて、種結晶70から昇華用原料80に向けて、凸状に形成される。黒鉛製坩堝10の上下方向における、炭化珪素単結晶100の下端を単結晶端部100aとする。
【0031】
(1.5)断熱部材12
断熱部材12は、誘導加熱コイル30aと黒鉛製坩堝10との間に配設される。具体的には、断熱部材12は、黒鉛製坩堝10の側部に配設される第1断熱部材14と、第1断熱部材14よりも誘導加熱コイル30a側に配設される第2断熱部材16とを含む。
【0032】
本実施形態において、第1断熱部材14は、黒鉛製坩堝10の側部だけでなく、黒鉛製坩堝10の全体を覆う。具体的には、第1断熱部材14は、黒鉛製坩堝10を構成する反応容器本体50の側部、底部51及び、蓋部60に密着する。
【0033】
第2断熱部材16は、円筒状に形成される。第2断熱部材16は、黒鉛製坩堝10と加熱部30との間に挿入される。具体的には、第2断熱部材16は、黒鉛製坩堝10を構成する反応容器本体50と、石英管20との間に挿入される。
【0034】
図2に示すように、第2断熱部材16は、種結晶70が成長した炭化珪素単結晶100と対応する位置まで抜き出される。
【0035】
第1断熱部材14及び第2断熱部材16は、黒鉛製坩堝10よりも熱伝導率が低い。具体的には、第1断熱部材14及び第2断熱部材16の熱伝導率は、0.06W/m・k以下であることが好ましい。
【0036】
第1断熱部材14及び第2断熱部材16は、例えば、複数の孔が形成された多孔質のカーボンまたはカーボンフェルトにより形成される。第1断熱部材14の厚さd14及び第2断熱部材16の厚さd16は、それぞれ15ミリメートル以上である。
【0037】
(2)炭化珪素単結晶の製造方法
次に本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を示すフローチャートである。
【0038】
具体的には、炭化珪素単結晶の製造方法は、(2.1)原料準備工程、(2.2)配置工程、(2.3)坩堝加熱工程、(2.4)単結晶成長工程、(2.5)断熱部材削減工程、(2.6)外周研削工程、(2.7)スライス工程を含む。
【0039】
(2.1)原料準備工程
ステップS1の原料準備工程では、昇華用原料80を準備する。
【0040】
(2.2)配置工程
ステップS2の配置工程では、昇華用原料80、種結晶70等を炭化珪素単結晶の製造装置1に配置する。
【0041】
ステップS2の配置工程において、第2断熱部材16は、反応容器本体50と、石英管20との間に挿入されていない状態である。具体的には、第2断熱部材16は、反応容器本体50の底部51よりも支持棒40側に配設される。
【0042】
(2.3)坩堝加熱工程
ステップS3の坩堝加熱工程では、加熱部30を用いて黒鉛製坩堝10を加熱する。具体的には、加熱部30は、誘導加熱コイル30aに電流を通電させて、黒鉛製坩堝10を略一定の出力で加熱する。加熱部30は、黒鉛製坩堝10を加熱し、昇華用原料80を昇華させる。
【0043】
(2.4)単結晶成長工程
ステップS4の単結晶成長工程では、種結晶70上に炭化珪素単結晶100を成長させる。
【0044】
具体的には、ステップS4の単結晶成長工程では、昇華した昇華用原料80は、結晶化温度に至るまで冷却されると蓋部60の内側表面61に配置された種結晶70上で再結晶する。
【0045】
すなわち、昇華用原料80から昇華した原料ガスは、種結晶70上に炭化珪素単結晶100を成長させる。
【0046】
(2.5)断熱部材削減工程
ステップS5の断熱部材削減工程では、ステップS4の単結晶成長工程における種結晶70の成長につれて、黒鉛製坩堝10の側方方向における断熱部材12の厚さを減らす。具体的には、黒鉛製坩堝10の側面視において、黒鉛製坩堝10に収容された種結晶70の成長につれて、加熱部30と黒鉛製坩堝10との間の断熱部材12の厚さを減らす。
【0047】
ステップS5の断熱部材削減工程では、黒鉛製坩堝10の側面視において、黒鉛製坩堝10に収容されている種結晶70が成長した炭化珪素単結晶100と対応する位置まで第1断熱部材14又は第2断熱部材16を抜き出すことにより、断熱部材の厚さを減らす。
【0048】
図2に示すように、本実施形態におけるステップS5の断熱部材削減工程では、黒鉛製坩堝10の側面視において、炭化珪素単結晶100の単結晶端部100aに対応する単結晶端部線Sに対応する位置まで第2断熱部材16を炭化珪素単結晶の製造装置1の下方へ適宜抜き出す。
【0049】
これにより、炭化珪素単結晶(以下、単結晶インゴットという)が時間とともに、黒鉛製坩堝10の上下方向に成長する。
【0050】
上述のステップS1〜S5を行うことにより、単結晶インゴットを得る。
【0051】
(2.6)外周研削工程
ステップS6の外周研削工程では、所望とするサイズに成長した単結晶インゴットに外周研削加工等を施す。例えば、単結晶インゴットに、結晶方位(Si面やC面等)を示すオリエンテーションフラット(オリフラ)を形成するオリフラ形成加工を行ってもよい。
【0052】
(2.7)スライス工程
ステップS7のスライス工程では、単結晶インゴットから半導体ウェハを切り出す。
【0053】
なお、上述のステップS1〜S7を行うことにより、半導体ウェハを製造できる。
【0054】
以上、図3に示す製造方法によれば、加熱された昇華用原料80の加熱位置から原料ガスが昇華し、種結晶70上に再結晶化され、種結晶70上に炭化珪素単結晶100が成長する。
【0055】
(3)作用・効果
以上説明したように、本実施形態によれば、ステップS5の断熱部材削減工程において、加熱部30と、黒鉛製坩堝10との間の断熱部材12は、種結晶70の成長につれて、減らされる。このため、種結晶70が成長した炭化珪素単結晶100の近傍では、断熱部材12による保温効果が低減するため、黒鉛製坩堝10からの放熱の影響を受けて、炭化珪素単結晶100の近傍の温度は、低下する。つまり、炭化珪素単結晶の製造装置1は、種結晶70の成長に伴って、昇華用原料80に近づく場合においても、炭化珪素単結晶100近傍と、昇華用原料80近傍との温度差を生じさせることができる。
【0056】
従って、このような炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶の製造装置1は、種結晶70を継続して成長させつつ、炭化珪素単結晶100の結晶性の低下や、らせん転位などの結晶欠陥をさらに抑制できる。
【0057】
本実施形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、ステップS5の断熱部材削減工程では、黒鉛製坩堝10の側面視において、黒鉛製坩堝10の側方方向における断熱部材12の厚さを減らすため、炭化珪素単結晶100の近傍では、断熱部材12による保温効果が更に低減するため、黒鉛製坩堝10からの放熱の影響を更に受けやすくなる。従って、炭化珪素単結晶100の近傍の温度は、更に低下しやすくなる。
【0058】
本実施形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、断熱部材12は、第1断熱部材14と第2断熱部材16とを含み、ステップS5の断熱部材削減工程では、黒鉛製坩堝10の側面視において、黒鉛製坩堝10に収容されている種結晶70が成長した炭化珪素単結晶100と対応する位置まで第2断熱部材16を炭化珪素単結晶の製造装置1の下方へ抜き出すことにより断熱部材12の厚さを減らす。
【0059】
このため、黒鉛製坩堝10の側面視において、昇華用原料80から炭化珪素単結晶100までの黒鉛製坩堝10は、断熱部材12に覆われるため、引き続き高温に保たれる。また、第2断熱部材16を抜き出した領域の黒鉛製坩堝10は、第2断熱部材16による保温効果が確実に低減する。つまり、このような炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶100近傍と、昇華用原料80近傍との温度差を確実に生じさせることができる。
【0060】
従って、このような炭化珪素単結晶の製造方法によれば、種結晶70を確実に継続して成長させつつ、炭化珪素単結晶100の結晶性の低下や、らせん転位などの結晶欠陥をさらに抑制できる。
【0061】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態では、ステップS5の断熱部材削減工程では、炭化珪素単結晶の製造装置1において、黒鉛製坩堝10と、加熱部30との間の第2断熱部材16を炭化珪素単結晶100と対応する位置まで抜き出すことにより、断熱部材12の厚さを減らしている。これに対して、第2実施形態では、断熱部材削減工程における製造方法が、第1実施形態と異なる。
【0062】
第2実施形態では、黒鉛製坩堝10と、第1断熱部材14とを抜き出す構成について、図4を用いて説明する。
【0063】
図4は、本発明の第2実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置1の概略を説明する構成図である。
【0064】
なお、以下の第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点を主に説明し、重複する説明を省略する。
【0065】
本実施形態においては、(1)炭化珪素単結晶の製造方法、(2)作用・効果、(3)変形例について説明する。
【0066】
(1)炭化珪素単結晶の製造方法
図4に示すように、炭化珪素単結晶の製造装置1の構成は、第1実施形態と同様である。
【0067】
第2実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法のステップS5Aの断熱部材削減工程では、黒鉛製坩堝10及び第1断熱部材14を誘導加熱コイル30aから上方に遠ざける点で、第1実施形態の炭化珪素単結晶の製造方法と異なる。
【0068】
具体的には、ステップS5Aの断熱部材削減工程では、黒鉛製坩堝10の側面視において、炭化珪素単結晶100の単結晶端部100aに対応する単結晶端部線Sに対応する位置まで黒鉛製坩堝10と、第1断熱部材14とを炭化珪素単結晶の製造装置1の上方へ適宜抜き出す。
【0069】
(2)作用・効果
以上説明したように、第2実施形態の炭化珪素単結晶の製造方法によれば、第1実施形態の炭化珪素単結晶の製造方法と同様に、黒鉛製坩堝10の側面視において、昇華用原料80から炭化珪素単結晶100までの黒鉛製坩堝10は、断熱部材12に覆われるため、引き続き高温に保たれる。
【0070】
また、上方へ抜き出された黒鉛製坩堝10は、第2断熱部材16による保温効果が確実に低減するとともに、誘導加熱コイル30aから遠ざかるため、迅速に冷却される。
【0071】
従って、このような炭化珪素単結晶の製造方法によれば、炭化珪素単結晶100近傍と、昇華用原料80近傍との温度差を確実に生じさせることができるため、第1実施形態の炭化珪素単結晶の製造方法と同様の効果を得るとともに、炭化珪素単結晶100の単結晶端部100aには、炭化珪素単結晶が、迅速に形成される。
【0072】
(3)変形例
第2実施形態においては、黒鉛製坩堝10及び第1断熱部材14を上方に抜き出して、誘導加熱コイル30aから上方に遠ざけているが、これに限られず、例えば、黒鉛製坩堝10、第1断熱部材14及び誘導加熱コイル30aを上方に移動させてもよい。
【0073】
これによれば、第1実施形態と同様に、第2断熱部材16が、炭化珪素単結晶100の単結晶端部100aに対応する単結晶端部線Sに対応する位置まで抜き出されることと同様の効果を得ることができる。
【0074】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0075】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。上述した実施形態では、第2断熱部材16は、炭化珪素単結晶100に対応する位置まで抜き出されるとした。しかし、第2断熱部材16の抜き出し長さは、種結晶70の成長に応じて、調整されてもよい。
【0076】
具体的には、種結晶70の近傍の温度が、第2断熱部材16に応じて低下しやすい場合、抜き出される第2断熱部材16の長さを短くして、種結晶70の近傍の温度を結晶化温度にする。一方、種結晶70の近傍の温度が、第2断熱部材16に応じて低下しにくい場合、抜き出される第2断熱部材16の長さを長くして、種結晶70の近傍の温度を結晶化温度にすることができる。
【0077】
第2断熱部材16は、複数の孔が形成された多孔質のカーボンフェルトであるとして説明したが、黒鉛製坩堝10よりも熱伝導率が低い材料であればよい。また、第2断熱部材16の厚さは、少なくとも15ミリメートルであるとした。しかし、カーボンフェルトとは異なる断熱部材を使用する場合には、下限値は、必ずしも15ミリでなくてもよい。厚さは、材料のもつ断熱効果に応じて適宜変更することができる。
【0078】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置1の概略を説明する構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置1の概略を説明する構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造装置1の概略を説明する構成図である。
【符号の説明】
【0080】
S…単結晶端部線、 1…製造装置、 10…黒鉛製坩堝、 12…断熱部材、
14…第1断熱部材、 16…第2断熱部材、 20…石英管、 30…加熱部、
30a…誘導加熱コイル、 40…支持棒、 50…反応容器本体、 51…底部、
60…蓋部、 61…内側表面、 70…種結晶、 80…昇華用原料、
100…炭化珪素単結晶、 100a…単結晶端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素を含む種結晶、及び前記種結晶の下方に配設され、前記種結晶の成長に用いられる昇華用原料を収容する坩堝と、
前記坩堝の側部の周囲に配設され、前記坩堝を誘導加熱コイルを用いて加熱する加熱部と
前記加熱部と前記坩堝との間に配設される断熱部材と、
を用いた炭化珪素単結晶の製造方法であって、
前記坩堝の側面視において、前記坩堝に収容された前記種結晶の成長につれて、前記坩堝の側方方向における前記断熱部材の厚さを減らす工程
を備える炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記断熱部材は、
前記坩堝の側部に配設される第1断熱部材と、
前記第1断熱部材よりも前記誘導加熱コイル側に配設される第2断熱部材と
を含み、
前記断熱部材の厚さを減らす工程では、前記坩堝の側面視において、前記坩堝に収容されている前記種結晶が成長した炭化珪素単結晶と対応する位置まで前記第1断熱部材又は前記第2断熱部材を抜き出す請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記断熱部材の厚さを減らす工程では、前記第2断熱部材を抜き出す請求項2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記断熱部材の厚さを減らす工程では、前記坩堝及び前記第1断熱部材を前記誘導加熱コイルから上方に遠ざける請求項2または3に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記第1断熱部材は、前記坩堝を覆う請求項2乃至4の何れか一項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−132510(P2010−132510A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311454(P2008−311454)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】