説明

炭化珪素単結晶インゴット、炭化珪素単結晶ウェハ及びその製造方法

【課題】 本発明は、高品質かつ目的の特性を有するSiC単結晶ウェハを高歩留りで作製できるSiC単結晶インゴット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 炭化珪素単結晶のドーパント元素濃度の最大値が5×1017atoms/cm未満で、かつ、ドーパント元素濃度の最大値が最小値の50倍以下である炭化珪素単結晶インゴット、及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパント元素の濃度が均一な炭化珪素単結晶、炭化珪素単結晶ウェハ及びその製造方法に関するものである。本発明は、特に高抵抗率炭化珪素単結晶に効果的である。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、2.2〜3.3eVの広い禁制帯幅を持つワイドバンドギャップ半導体である。従来、SiCは、その優れた物理的、化学的特性から耐環境性半導体材料としての研究開発が行われてきたが、近年は、青色から紫外にかけての短波長光デバイス、高周波高耐圧電子デバイス向けの材料としても、SiCが注目されており、活発に研究開発が行われている。SiC単結晶の半導体分野への応用においては、大面積を有する高品質の単結晶が求められ、特に高周波デバイス用基板等の用途では、結晶の品質に加えて高い電気抵抗率を有することも求められている。
【0003】
従来、研究室程度の規模では、例えば昇華再結晶法(レーリー法)で半導体素子の作製が可能なサイズのSiC単結晶を得ていた。しかしながら、この方法では、得られる単結晶の面積が小さく、その寸法、形状、さらには結晶多形(ポリタイプ)や不純物キャリア濃度の制御も容易ではない。一方、化学気相成長法(CVD法)を用いて珪素(Si)等の異種基板上にヘテロエピタキシャル成長させることにより、立方晶のSiC単結晶を成長させることも行われている。この方法では、大面積の単結晶は得られるが、SiCとSiの格子不整合が約20%もあること等により、多くの欠陥(〜10/cm)を含むSiC単結晶しか成長させることができず、高品質のSiC単結晶は得られていない。これらの問題点を解決するために、SiC単結晶ウェハを種結晶として用いて昇華再結晶を行う改良型のレーリー法が提案されている(非特許文献1)。この改良レーリー法を用いれば、SiC単結晶の結晶多形(6H型、4H型、15R型等)及び形状、キャリア型及び濃度を制御しながら、SiC単結晶を成長させることができる。
【0004】
現在、改良レーリー法で作製したSiC単結晶から口径2インチ(50mm)から3インチ(75mm)のSiC単結晶ウェハが切り出され、電力エレクトロニクス分野等のデバイス作製等に供されている。実際のデバイス応用に当たっては、用途に応じて結晶の伝導形や抵抗率を制御する必要があるが、これは、一般的にはドーパント物質の種類と濃度を制御することにより達成される。しかし、SiCの結晶成長温度において、ドーパント物質がSiCと大きく異なる蒸気圧を有する場合、ドーパント物質を結晶内に均一にドープするのは極めて困難となる。その顕著な例として、高周波デバイス用SiCウェハの例を以下に示す。
【0005】
近年、高周波半導体デバイス用材料として、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)よりも優れた特性を持つ窒化ガリウム(GaN)に注目が集まっている(非特許文献2)。GaNデバイスの作製に当たっては、何らかの単結晶基板上にGaNの単結晶薄膜を形成する必要がある。この基板の一つとして一般的なものにサファイア基板がある。サファイアは、比較的良質な単結晶を安定して製造できるメリットがあるものの、サファイアとGaNの格子定数差は13.8%あり、GaN薄膜の品質劣化を誘発し易い。また、サファイアは、熱伝導率が0.42W/cm・Kと低く、デバイス動作時の放熱の点でも問題があり、サファイア基板上のGaN高周波デバイスは、その本来の性能が十分に引き出されていないと言うのが現状である。一方、SiC単結晶はGaNとの格子定数差が3.4%と小さいため、良質なGaN薄膜が形成可能である。また、熱伝導率も3.3W/cm・Kと高い値を示し、冷却効率も高い。サファイア等の従来材料に比較して、SiC単結晶を基板として用いた場合には、大幅なGaNデバイスの特性向上が望めることから、近年、GaN系高周波デバイスの分野でも、SiC単結晶基板に対する期待が非常に高くなってきている。
【0006】
前述した高周波デバイス分野において、デバイス作製に使用される単結晶基板は、その結晶品質に加えて、その上に作製される素子の寄生容量低減と素子間分離のため、高い抵抗率(5×10Ωcm以上、望ましくは1×10Ωcm以上)を有することが必要不可欠である。現在、高抵抗率SiC単結晶基板は、何らかの方法でSiC単結晶の禁制帯中に深い準位を形成することによって、工業的に得られている。例えば、バナジウムは、SiC結晶中でドナー又はアクセプターの何れの状態でも深い準位を形成し、不可避的に結晶に取り込まれる浅いドナー又は浅いアクセプター不純物を補償して、結晶を高抵抗率化することが知られている。具体的には、例えば、非特許文献3にあるように、前述の昇華再結晶法において、原料となるSiC粉末中に金属バナジウムあるいはバナジウム化合物(珪化物、酸化物等)を含有させ、SiC原料と共に昇華させることにより、バナジウム添加結晶が得られる。しかしながら、このようにして製造したSiC単結晶インゴットは、結晶品質が悪く、また、高抵抗率を有する結晶部位は、単結晶インゴット中の極めて限られた部分となっていた。これは、バナジウムの昇華速度あるいは蒸発速度が、SiC原料の昇華速度に比べて、非常に大きいことが起因している。昇華速度の大きいバナジウムは、SiC単結晶の成長初期段階で、高い濃度でSiC単結晶に取り込まれ、その結果、バナジウムの量が固溶限界(3〜5×1017atoms/cm)(例えば、非特許文献4参照)を超え、過剰分のバナジウムは、化合物等としてSiC単結晶中に析出し、結晶欠陥の発生起点となって、その後に成長するSiC単結晶の結晶品質も低下させる。更には、単結晶の成長後半段階では、バナジウムのソースが不足し、成長後半のSiC単結晶中では、バナジウム濃度はキャリア不純物を補償する濃度に至らない。以上により、従来技術によるバナジウム添加結晶は、結晶品質が低く、また、一つの単結晶インゴットからは限られた枚数の高低効率ウェハしか作製できなかった。
【0007】
一方、より高い抵抗率のバナジウム添加結晶を得る技術は、特許文献1に開示されている。これは、SiCの最も代表的な不純物である窒素を3価の浅いアクセプター準位を有する元素の添加によって過剰補償し、伝導形をn形からp形に変化させた上で、バナジウム等の遷移金属をドナー準位に置くことによって、より高い抵抗率を得ることを意図した技術である。しかしながら、該公報の技術においても、バナジウム濃度が不均一となる問題は避けられず、この技術も結晶品質や歩留りと言ったバナジウム添加結晶の本質的な問題を解決するものではない。
【0008】
以上述べたように、従来技術によって製造されるバナジウムドープSiC単結晶インゴットのウェハ歩留りは低く、その品質も半導体分野の高い要求を満足していないのが、現状である。
【特許文献1】特表平9−500861号公報
【非特許文献1】Yu. M. Tairov and V. F. Tsvetkov, Journal of Crystal Growth, Vol.52 (1981) pp.146〜150
【非特許文献2】Rutberg & Co., Gallium Nitride:A Material Opportunity (2001)
【非特許文献3】S. A. Reshanov et al., Materials Science Forum, Vols.353〜356 (2001) pp.53〜56
【非特許文献4】J. R. Jenny et al., Applied Physics Letters, Vol.68, No.14, pp.1963〜1965 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、従来技術で製造されたSiC単結晶インゴットは、ドーパント物質の濃度不均一性に起因した結晶品質の低下があり、さらに、所望の特性を有する結晶部位は、単結晶インゴット中の限られた部分となっていた。本発明は、前述の問題点を解決し、高品質かつ目的の特性を有するSiC単結晶ウェハを高歩留りで作製できるSiC単結晶インゴット及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意研究開発を進めてきた。その結果、ドーパント物質をSiC単結晶中に均一にドープすることにより、高品質なSiC単結晶インゴットを製造する技術を見出した。即ち、本発明は、以下の構成よりなるものである。
【0011】
(1) 炭化珪素単結晶のドーパント元素濃度の最大値が5×1017atoms/cm未満で、かつ、ドーパント元素濃度の最大値が最小値の50倍以下であることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴット。
【0012】
(2) 前記ドーパント元素濃度の最大値が最小値の10倍以下である(1)に記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【0013】
(3) 前記ドーパント元素濃度の最大値が最小値の2倍以下である(1)に記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【0014】
(4) 前記ドーパント元素濃度の最小値が5×1014atoms/cm以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【0015】
(5) 前記ドーパント元素濃度の最小値が1×1015atoms/cm以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【0016】
(6) 前記ドーパント元素濃度の最小値が1×1016atoms/cm以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【0017】
(7) 前記ドーパント元素がバナジウムである(1)〜(6)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【0018】
(8) 前記炭化珪素単結晶の伝導タイプがn形である、(7)に記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【0019】
(9) 前記炭化珪素単結晶の主たるポリタイプが、3C、4H、6H又は15Rのいずれかである(1)〜(8)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【0020】
(10) 前記炭化珪素単結晶の主たるポリタイプが4Hである(1)〜(8)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【0021】
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットを切断、研磨してなる炭化珪素単結晶ウェハであって、該ウェハの常温での電気抵抗率が5×10Ωcm以上であることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハ。
【0022】
(12) (1)〜(10)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットを切断、研磨してなる炭化珪素単結晶ウェハであって、該ウェハの常温での電気抵抗率が1×10Ωcm以上であることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハ。
【0023】
(13) 前記炭化珪素単結晶ウェハが、3C、4H、6H又は15Rの単一ポリタイプからなる(11)又は(12)に記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【0024】
(14) 前記炭化珪素単結晶ウェハが、4Hの単一ポリタイプからなる(11)又は(12)に記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【0025】
(15) 前記炭化珪素単結晶ウェハの口径が50mm以上である(11)〜(14)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【0026】
(16) 前記炭化珪素単結晶ウェハの口径が100mm以上である(11)〜(14)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【0027】
(17) (11)〜(16)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハに、炭化珪素薄膜をエピタキシャル成長させてなることを特徴とするエピタキシャルウェハ。
【0028】
(18) (11)〜(16)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハに、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムまたはこれらの混晶からなる薄膜をエピタキシャル成長させてなることを特徴とするエピタキシャルウェハ。
【0029】
(19) 昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶の製造方法であって、ドーパント元素を含有し、比表面積が0.5m/g以下である固体物質を昇華原料に含むことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【0030】
(20) 昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶の製造方法であって、ドーパント元素を含有し、2400℃以下の温度で比表面積が0.5m/g以下となる固体物質を昇華原料に含むことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【0031】
(21) 前記昇華原料が、前記の固体物質を予め炭化珪素粉末又は炭化珪素原料粉末と混合してなる(19)又は(20)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【0032】
(22) 前記昇華原料が、前記の固体物質と炭化珪素粉末又は炭化珪素原料粉末とを分離してなる(19)又は(20)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【0033】
(23) 前記の固体物質の比表面積が0.1m/g以下である(19)〜(22)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【0034】
(24) 前記の固体物質の比表面積が0.05m/g以下である(19)〜(22)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【0035】
(25) 前記のドーパント元素がバナジウムである、(19)〜(24)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ドーパント元素濃度が均一で結晶品質の高いSiC単結晶インゴットを提供することができ、バナジウムをドーパント元素とした場合は、高抵抗率で且つ結晶品質の高いSiC単結晶ウェハを、単結晶インゴットから歩留り良く作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明のSiC単結晶インゴットは、ドーパント元素濃度の最大値を5×1017atoms/cm未満とすることにより、異種ポリタイプやマイクロパイプの発生起点となるドーパント元素化合物等のSiC単結晶中への析出が抑制され、インゴット全域の結晶品質が高く保たれる。また、SiC単結晶インゴット中のドーパント元素濃度の最大値は最小値の50倍以下、望ましくは10倍以下、さらに望ましくは2倍以下とし、ドーパント元素濃度の下限値については、5×1014atoms/cm以上、望ましくは1×1015atoms/cm以上、さらに望ましくは1×1016atoms/cm以上とすることにより、インゴット全体もしくは大部分で、目的の特性が得られるようになり、1つのインゴットから高品質のウェハを収率良く作製することが可能となる。なお、ウェハの作製方法については、ワイヤーソー等の切断プロセス、ラップ、ポリッシュなどの研磨プロセスなどの公知の加工プロセス、加工装置を用いることができる。
【0038】
前記のドーパント元素をバナジウムとした場合は、SiC単結晶インゴットの広い領域でバナジウムが不純物を補償できるので、SiC単結晶インゴットから加工される全てのウェハもしくは大部分のウェハを、5×10Ωcm以上、望ましくは1×10Ωcm以上の高抵抗率ウェハとすることができる。高周波デバイス応用においてはウェハの抵抗率は高い方が有利であり、本発明のSiC単結晶ウェハについて抵抗率の上限値は特に設定しないが、SiC単結晶は理論的には常温で1×1020〜1×1025Ωcm程度までの高抵抗率化が可能と考えられている。バナジウムによって補償される不純物の種類については、特に限定しないが、SiCの代表的な不純物はドナー元素である窒素であり、昇華再結晶法によりSiC単結晶を製造する場合、一般的に成長した結晶の伝導形はn形となることが多い。より深い準位を形成するバナジウムのドナー準位を利用して高抵抗率化を実現しようとする場合は、硼素やアルミニウム等のアクセプター元素をSiC単結晶へ添加し、結晶の伝導形をp形に変換する必要があるが、本発明においては、結晶の伝導形がn形でも十分に高い抵抗率が得られるため、アクセプタ−元素を添加する必要はなく、プロセスを簡略化できるメリットを享受することができる。
【0039】
本発明のSiC単結晶は、現在デバイス応用が有力視されている3C、4H、6H又は15Rのいずれのポリタイプでも製造可能である。特に高いデバイス特性が期待されているのは、4Hポリタイプであるが、4Hポリタイプは結晶成長中に窒素を取り込み易い性質を持ち、従来技術では高抵抗率化が困難であった。しかし、本発明技術は、4Hポリタイプに適用した場合も十分に大きな効果が得られる。また、デバイスとしての応用を考慮すると、SiC単結晶ウェハは、単一ポリタイプで構成されていることが望ましい。本発明のSiC単結晶インゴットは、異種ポリタイプが混在する原因となり得る析出物等の発生が無く、インゴット全域でポリタイプの混在が全く無い、もしくは非常に少ないため、単一ポリタイプウェハの歩留りが高い。SiC単結晶ウェハの口径については、従来技術ではインゴットが大口径化するほどウェハ収率が低くなる傾向があるが、本発明は、50mm以上、さらには100mm以上の大口径インゴットにおいても、高ウェハ収率が安定して得られる。口径の上限については、特に限定しないが、改良レーリー法では口径が300mmを超えると物質移動の制御が極端に難しくなるため好ましくない。
【0040】
本発明のSiC単結晶ウェハは、抵抗率が高く、また、高い結晶品質も有しているので、高周波、高出力デバイス基板への適用が可能である。本発明のSiC単結晶ウェハ上に、CVD法等によりSiC単結晶薄膜を形成して作製されるエピタキシャルウェハ、あるいは窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウム又はこれらの混晶をエピタキシャル成長してなるエピタキシャルウェハは、基板となるSiC単結晶ウェハの結晶性が良好なため、優れた特性(薄膜の表面モフォロジ―、電気特性等)を有するようになる。
【0041】
前述したSiC単結晶を製造する方法としては、昇華再結晶法において、ドーパント元素を含有し、比表面積が0.5m/g以下、望ましくは0.1m/g以下、さらに望ましくは0.05m/g以下である固体物質を昇華原料に含むことが有効である。粒子状物質の昇華、蒸発現象は、粒径と密接な関係があり、例えば、J. Timmler and P. Roth, Journal of Aerosol Science, Vol.80, No.3 (1989) pp.1011〜1014等で報告されているように、粒径の小さな物質ほど昇華速度(単位時間当りの昇華質量)は大きい。粒子状物質に限らず一般的に、寸法の小さな、即ち、比表面積の大きな固体物質は、昇華の初期段階で昇華速度が非常に高く、その後、急激に固体物質が減少していくため、昇華速度は大きく低下する。それに比較して、比表面積の小さな固体物質は、昇華速度が低く、固体物質が減少する速度は緩やかである為、昇華速度の変化は小さいと言える。ドーパント元素を含有する固体物質の比表面積を前述した範囲とすることにより、SiC単結晶の成長中に、ほぼ一定のドーパント元素の昇華又は蒸発速度が実現され、成長終盤のドーパントソースの枯渇も回避して、インゴット全域で均一なドーパント濃度のSiC単結晶が製造可能となる。昇華原料中の固体物質と炭化珪素原料の比率については、ドーパント元素の種類、固体物質の種類や比表面積、目的とするSiC結晶中のドーパント濃度などを考慮して決定する。ドーパント元素がバナジウムの場合は、炭化珪素原料質量:固体物質中のバナジウム質量=100:0.001〜1.0程度が適当である。もちろん、この範囲はその他のドーパントにも適用してもよい。なお、前記固体物質の比表面積について、特に下限値は設定しないが、極端に比表面積の小さな場合は、昇華速度が極めて低くなり、必要なドーパント物質濃度を得るのが困難になるので好ましくない。固体物質の比表面積は0.001m/g以上とするのが望ましい。前述した比表面積の固体物質を炭化珪素原料と混合したものを昇華原料として結晶成長を行うことにより、本発明のSiC単結晶インゴットが製造できるが、入手可能な固体原料の比表面積が本発明範囲でない場合(バナジウムについては、一般に入手可能な原料の比表面積は2〜10m/g以上、粒径1〜5μm程度)、焼結や溶解等の熱処理によって、比表面積を調製する必要がある。事前に熱処理を施した固体物質を炭化珪素原料と混合して、昇華原料としても良いが、目的の固体物質が、SiCの昇華温度(約2400℃)よりも低い温度で溶融や焼結等により、比表面積が低下し、目的の比表面積が得られる場合は、SiC単結晶インゴットの製造プロセスに前記の熱処理を組み込むこともでき、プロセスを簡略化できる。その場合、前記固体物質とSiC粉末は、分離して配置することにより、固体物質の粒子同士の接触が十分に得られ、昇華に先立って効果的に比表面積が低下する。具体的には、例えば、耐熱容器を成長用坩堝の内部又は外部に設置して、これを前記固体物質の充填空間とする他、2つ以上の原料充填空間を持つような坩堝構造として固体物質とSiC粉末を分離しても良い。
【0042】
前述のように、ドーパント元素含有物質とSiC粉末を分離して配置する類似技術は、M. Bickermann et al., Journal of Crystal Growth, 254 (2003) pp.390〜399に記述されている。該文献における均一ドープのメカニズムは明確には記されていないが、黒鉛材に不可避的に存在する微細な開気孔が物質移動のパスとなって、半密閉の容器内部から外部への物質移動量がある程度制御され、バナジウムのSiC単結晶へのドープ濃度均一化が達成されていることは明らかである。一方、本発明では、ドーパント元素を含む固体物質の比表面積でドープ濃度を制御しており、該文献とは全く異なる技術である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。
【0044】
本発明の実施例及び比較例は、図1の改良型レーリー法による結晶成長装置を用いて製造した。結晶成長は、昇華原料2を誘導加熱により昇華させ、種結晶1上に再結晶させることにより行われる。
【0045】
(実施例1)
実施例1の結晶は、本発明範囲の比表面積を有するドーパント元素を含む固体物質を、予めSiC原料と混合する方法で製造した。ドーパント元素を含む固体物質としては、炭化バナジウムを用いた。炭化バナジウムは、市販の粉体を用い、次に示す熱処理方法で比表面積を調整した。先ず、原料として純度99.5%、平均一次粒径1.2μmの炭化バナジウム粉末を用意した。窒素ガスを用いたBET法によって、この炭化バナジウム粉末の比表面積を測定した結果、比表面積は4.1m/gであった。この炭化バナジウム粉末1.4gを高純度黒鉛製坩堝に充填し、抵抗加熱炉(黒鉛ヒーター)にて、Ar大気圧雰囲気、2000℃×4時間の熱処理を行った。熱処理後の固体物質を黒鉛製坩堝から取り出し、定性X線分析を行って、固体物質にバナジウム元素が含まれていることを確認した。この固体物質をSiC製乳鉢と乳棒で約0.5〜1mm程度の粗粒に塊砕してから、SiC原料と混合した。塊砕後の固体物質の比表面積は、0.048m/g(窒素ガスを用いたBET法)であった。SiC粉末に対して、前記の固体物質を質量比で、SiC粉末:固体物質=100:0.073の配合比で混合し、これを昇華原料2とし、図1に示した装置を用いて、結晶成長を実施した。種結晶1として、口径100mmの{0001}面を有した6H単一ポリタイプで構成されたSiC単結晶ウェハを用意し、Si面を成長面として、黒鉛蓋4の内面に取り付けた。昇華原料2は、黒鉛坩堝3の内部に充填される。この黒鉛坩堝3及び黒鉛蓋4は、熱シールドのために黒鉛製フェルト7で被膜され、二重石英管5内部の黒鉛支持棒6の上に設置される。石英管5の内部を、真空排気装置11を用いて、1.0×10−4Pa未満まで真空排気した後、純度99.9999%以上の高純度Arガスを、配管9を介して、Arガス用マスフローコントローラ10で制御しながら流入させ、石英管内圧力を8.0×10Paに保ちながら、ワークコイル8に高周波電流を流し、黒鉛坩堝下部を目標温度である2400℃まで上昇させる。坩堝温度の計測は、坩堝上部及び下部の黒鉛製フェルト7に直径2〜15mmの光路を設けて、二色温度計により行う。坩堝上部温度を種結晶温度、坩堝下部温度を原料温度とした。その後、石英管内圧力を成長圧力である1.3×10Paまで約15分かけて減圧し、この状態を20時間維持して、結晶成長を実施した。
【0046】
前述したプロセスにより、高さ19mm、口径100mmのSiC単結晶インゴットが得られた。インゴットのポリタイプをX線回折及びラマン散乱により分析したところ、6Hポリタイプが成長したことが確認できた。得られたインゴットは{0001}面を有する厚さ0.4mmのウェハ8枚に加工し、結晶性と物理特性の分析を行った。種結晶側から数えて1〜8をウェハ番号とする。1番〜8番の各ウェハのインゴット高さに対する相対位置は、それぞれ0.1〜0.8である(0は種結晶表面に相当し、1.0はインゴットの高さ19mmに相当する)。加工された各ウェハについても、X線回折及びラマン散乱によりポリタイプを分析し、全てのウェハが6H単一ポリタイプで構成されていることを確認した。また、ウェハは、顕微鏡及び偏光観察装置により、結晶品質の評価を行った。顕微鏡観察では析出物は観察されず、偏光像からは全てのウェハが良質な結晶性であることが確認できた。さらに、図2に示す中央部22(1点)と周辺部23(4点)の5箇所で2次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry、SIMS)を用いて、バナジウム濃度と不純物濃度を測定した。R. G. Wilson et al., Secondary Ion Mass Spectrometry: A Practical Handbook For Depth Profiling And Bulk Impurity Analysis (1989)によれば、SIMSによるバナジウムの分析については、1.5×1014atoms/cmの測定下限が得られる。本発明においても、これに準拠した方法で分析を行い、バナジウムの測定下限は約5×1014atoms/cmであった。以上説明した分析方法によって、インゴット全体の結晶品質、不純物濃度が十分な確度で把握できる。また、4mm×4mmの試験片を、図2に示す24の位置から加工し、Van der Pauw法により電気抵抗率の測定も行った。
【0047】
バナジウム濃度と未補償不純物濃度(|バナジウム以外のn形不純物濃度−バナジウム以外のp形不純物濃度|)の最大値と最小値、常温抵抗率の測定結果を表1に示す。各ウェハ面内では、バナジウム濃度及び未補償不純物濃度の最大値は、常に中央部の測定点で得られ、最小値は、周辺部の測定点1箇所で得られた。結晶の主たる不純物は窒素であり、不純物による伝導はn形であった。全測定点でのバナジウム濃度の最大値は、8番のウェハの中央部で2.09×1017atoms/cmであり、バナジウムの固溶限度未満である。また、バナジウム濃度の最小値は、1番のウェハの周辺部で1.40×1017atoms/cmであり、最大値は最小値の1.49倍であった。不純物分析を行った全てのウェハの全測定点で、バナジウム濃度が未補償不純物濃度を上回っており、全てのウェハの常温抵抗率が1×10Ωcm以上であった。
【0048】
【表1】

【0049】
(実施例2)
実施例2として、ドーパント元素を含む固体物質の熱処理をSiC単結晶の製造プロセスに含む場合について説明する。結晶成長に使用する坩堝及び昇華原料は、図3の構成とした。黒鉛製坩堝31は、第一の原料充填空間32と第二の原料充填空間33の二つの独立した原料充填空間を有している。黒鉛蓋34は、ねじによって黒鉛製坩堝31に固定される構造になっており、第一の原料充填空間32と第二の原料充填空間33とを分離している。第一の原料充填空間32の内部には、SiC原料35が充填される。第二の原料充填空間33の内部には、バナジウム元素を含む固体原料36として、SiC原料35の100質量部に対して0.15質量部の割合で、純バナジウム粉末と高純度黒鉛粉の混合物が充填される(純バナジウムと高純度黒鉛の質量比は100:20)。使用した純バナジウム粉末の純度は99.95%であり、比表面積を測定したところ2.4m/g(窒素ガスを用いたBET法)であった。以上の構成の坩堝、原料を坩堝3及び昇華原料2として、図1の結晶成長装置にて結晶成長を実施する。種結晶1として口径51mmの{0001}面を有した4H単一ポリタイプで構成されたSiC単結晶ウェハを用意し、C面を成長面とした。実施例1の結晶成長プロセスと同様に、二重石英管5の内部を1.0×10−4Pa未満まで真空排気した後、高純度Arガスを流入させ、石英管内圧力を8.0×10Paに保ちながら、ワークコイルに高周波電流を流し、黒鉛坩堝を固体原料の熱処理温度まで上昇させる。処理温度は1800℃、処理時間は2時間とした。実施例2の結晶成長に先立って、事前に前記条件の熱処理実験を行い、熱処理後の固体原料を分析した。定性X線分析の結果、熱処理後の固体原料にはバナジウムが含有されており、比表面積は0.026m/g{窒素ガスを用いたBET法}であった。熱処理完了後、原料温度を成長温度である2400℃まで上昇させ、石英管圧力を1.3×10Paまで約15分かけて減圧し、この状態を20時間維持して成長を行った。
【0050】
こうして得られた口径51mm、高さ17mmのSiC単結晶インゴットのポリタイプを、X線回折及びラマン散乱により、分析したところ、4Hポリタイプが成長したことが確認できた。成長したインゴットは、{0001}面を有する口径51mm、厚さ0.4mmのウェハ8枚に加工した。実施例1と同様に、各ウェハのインゴット高さに対する相対位置は0.1〜0.8であり、1.0はインゴットの高さ17mmに相当する。各ウェハのポリタイプをX線回折及びラマン散乱により分析し、全てのウェハが4H単一ポリタイプで構成されていることを確認した。ウェハの顕微鏡観察では析出物は観察されず、偏光像からは良質な結晶性であることが確認できた。図2に示す中央部22(1点)と周辺部23(4点)の5箇所で、SIMSを用いて、バナジウム濃度と不純物濃度の測定を行い、24の位置から試験片を加工してVan der Pauw法による電気抵抗率の測定も行った。バナジウム濃度と未補償不純物濃度(|バナジウム以外のn形不純物濃度−バナジウム以外のp形不純物濃度|)の最大値と最小値、常温抵抗率の測定結果を、表2に示す。ウェハ中央部の不純物分析結果については、グラフにプロットしたものを図4に示す。各ウェハ面内では、バナジウム濃度の最大値は周辺部の測定点1箇所で得られ、未補償不純物濃度の最大値は中央部の測定点で得られた。結晶の主たる不純物は窒素であり、不純物による伝導はn形であった。全測定点でのバナジウム濃度の最大値は、6番のウェハの周辺部で、1.72×1017atoms/cm、最小値は、1番のウェハの中央部で、1.40×1017atoms/cmであり、最大値は最小値の1.23倍であった。2枚目〜8枚目のウェハの全測定点で、バナジウム濃度が未補償不純物濃度を上回っており、これらのウェハの常温抵抗率は1×10Ωcm以上であった。
【0051】
【表2】

【0052】
(比較例)
比較例として、従来法によるバナジウム添加SiC単結晶の製造について説明する。比較例も、実施例と同様に、図1の装置を用いて結晶成長を行った。先ず、SiC粉末と炭化バナジウム粉末(純度99.5%、平均一次粒径1.2μm、比表面積4.1m/g(窒素ガスを用いたBET法))を、質量比で、SiC粉末:炭化バナジウム粉末=100:0.05の配合比で混合し、これを昇華原料2とした。種結晶1として、口径51mmの{0001}面を有した4H単一ポリタイプで構成されたSiC単結晶ウェハを用意し、C面を成長面として、実施例1と同様の真空脱気、Ar置換処理を行った後、2400℃、20時間の結晶成長プロセスで結晶成長を実施した。こうして得られた口径51mm、高さ17mmのSiC単結晶インゴットのポリタイプを分析したところ、4Hポリタイプが成長したことを確認できた。成長したインゴットは、{0001}面を有する口径51mm、厚さ0.4mmのウェハ8枚に加工した。各ウェハのインゴット高さに対する相対位置は0.1〜0.8であり、1.0はインゴットの高さ17mmに相当する。各ウェハの顕微鏡観察を行ったところ、1番のウェハに炭化バナジウムと考えられる物質が析出しているのが確認された。また、ウェハの偏光像から、前述の析出物の周辺に転位が集積して、亜粒界状の結晶欠陥となっており、さらに、この欠陥はその後の結晶成長でも引き継がれ、8番のウェハにも同じ位置に亜粒界状の結晶欠陥があるのが観察された。図2に示す中央部22(1点)と周辺部23(4点)の5箇所で、SIMSを用いて、バナジウム濃度と不純物濃度の測定を行い、24の位置から試験片を加工して、Van der Pauw法による電気抵抗率の測定も行った。バナジウム濃度と未補償不純物濃度(|バナジウム以外のn形不純物濃度−バナジウム以外のp形不純物濃度|)の最大値と最小値、常温抵抗率の測定結果を表3に示す。各ウェハ面内では、バナジウム濃度の最大値、未補償不純物濃度の最大値とも、中央部の測定点で得られた。ウェハ中央部の不純物分析結果については、グラフにプロットしたものを図5に示す。得られた結晶の主たる不純物は窒素であり、不純物による伝導はn形であった。バナジウム濃度は、1番のウェハの中央部が最大値8.78×1017atoms/cm、8番のウェハの周辺部一箇所が最小値1.70×1015atoms/cmであって、最大値はバナジウムの固溶限度を超えており、また、最大値は最小値の516倍であった。バナジウム濃度が未補償不純物濃度を上回っている1枚目と2枚目のウェハの常温抵抗率は、1×10Ωcm以上であるが、それ以外のウェハの常温抵抗率は1×10Ωcm未満であった。
【0053】
【表3】

【0054】
図4、図5を用いて、本発明の効果を説明する。図4は、実施例2のSiC単結晶インゴットの不純物濃度とバナジウム濃度である。インゴット全体で、バナジウム濃度は固溶限よりも低く、バナジウム化合物の析出は見られなかった。このインゴットからは、高結晶品質かつ高抵抗率のウェハが相対高さ0.2以上の広い範囲で作製可能である。図5は、比較例(従来法)によって製造されたSiC単結晶インゴットの不純物濃度とバナジウム濃度である。種結晶近傍でバナジウムが非常に高濃度であり、相対高さ0.15までは、バナジウム化合物が析出している。このインゴットからは、バナジウム濃度が未補償不純物濃度を上回っている相対位置0.2までであれば、高抵抗率ウェハが作製可能であるが、成長初期の析出物により、インゴット全体でその結晶品質は低い。
【0055】
(実施例3)
次に、実施例2と同様のプロセスで製造したSiC単結晶インゴットより、(0001)面から<11−20>方向に4度オフの面方位を有する、口径50mm、厚さ360μmの鏡面ウェハを作製した。この鏡面ウェハを基板として、SiCのエピタキシャル成長を行った。SiCエピタキシャル薄膜の成長条件は、成長温度1520℃、シラン(SiH)、プロパン(C)、水素(H)の流量が、それぞれ5.0×10−9/sec、3.3×10−9/sec、5.0×10−5/secであった。成長圧力は大気圧とした。成長時間は2時間で、約5μmの膜厚に成長した。こうして得られたエピタキシャル薄膜を、ノルマルスキー光学顕微鏡により観察したところ、ウェハ全面に渡って、ピット等の表面欠陥の非常に少ない、良好な表面モフォロジ―を有する高品質SiCエピタキシャル薄膜が形成されたことが確認できた。
【0056】
さらに、実施例2と同様のプロセスで製造した別のSiC単結晶インゴットより、(0001)面ジャストの面方位を有する、口径50mm、厚さ360μmの鏡面ウェハを作製した。この鏡面ウェハを基板として、窒化ガリウム薄膜を有機金属化学気相成長法(MOCVD法)によりエピタキシャル成長させた。窒化ガリウム薄膜の成長条件は、成長温度1050℃、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)の流量が、それぞれ54×10−6モル/min、4リットル/min、22×10−11モル/minであった。成長圧力は大気圧とした。60分間の成長により、n型窒化ガリウムを約3μmの膜厚に成長させた。こうして得られたエピタキシャル薄膜を、ノルマルスキー光学顕微鏡により観察したところ、ウェハ全面に渡って非常に平坦なモフォロジ―を有する、品質の高い窒化ガリウムエピタキシャル薄膜が形成されたことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の結晶を製造するのに用いた単結晶製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】SiC単結晶ウェハの分析位置を示す図面である。
【図3】ドーパント元素を含む固体物質の予備処理を、SiC単結晶の製造プロセスに組み込んで行うための原料充填空間を示す図面である。
【図4】本発明実施例2の結晶の不純物濃度を示す図面である。
【図5】本発明比較例の結晶の不純物濃度を示す図面である。
【符号の説明】
【0058】
1 種結晶(SiC単結晶)
2 昇華原料
3 黒鉛坩堝
4 黒鉛蓋
5 二重石英管
6 支持棒
7 黒鉛製フェルト
8 ワークコイル
9 高純度Arガス配管
10 高純度Arガス用マスフローコントローラ
11 真空排気装置
21 SiC単結晶ウェハ
22 ウェハ中央部の不純物分析点
23 ウェハ周辺部の不純物分析点(4点)
24 抵抗率測定用試験片
31 黒鉛坩堝
32 第一の原料充填空間
33 第二の原料充填空間
34 第二の原料充填空間の黒鉛蓋
35 SiC原料
36 バナジウム元素を含む固体原料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素単結晶のドーパント元素濃度の最大値が5×1017atoms/cm未満で、かつ、ドーパント元素濃度の最大値が最小値の50倍以下であることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴット。
【請求項2】
前記ドーパント元素濃度の最大値が最小値の10倍以下である請求項1に記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【請求項3】
前記ドーパント元素濃度の最大値が最小値の2倍以下である請求項1に記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【請求項4】
前記ドーパント元素濃度の最小値が5×1014atoms/cm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【請求項5】
前記ドーパント元素濃度の最小値が1×1015atoms/cm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【請求項6】
前記ドーパント元素濃度の最小値が1×1016atoms/cm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の炭化珪素単結晶。
【請求項7】
前記ドーパント元素がバナジウムである請求項1〜6のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【請求項8】
前記炭化珪素単結晶の伝導タイプがn形である、請求項7に記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【請求項9】
前記炭化珪素単結晶の主たるポリタイプが、3C、4H、6H又は15Rのいずれかである請求項1〜8のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【請求項10】
前記炭化珪素単結晶の主たるポリタイプが4Hである請求項1〜8のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットを切断、研磨してなる炭化珪素単結晶ウェハであって、該ウェハの常温での電気抵抗率が5×10Ωcm以上であることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハ。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットを切断、研磨してなる炭化珪素単結晶ウェハであって、該ウェハの常温での電気抵抗率が1×10Ωcm以上であることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハ。
【請求項13】
前記炭化珪素単結晶ウェハが、3C、4H、6H又は15Rの単一ポリタイプからなる請求項11又は12に記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【請求項14】
前記炭化珪素単結晶ウェハが、4Hの単一ポリタイプからなる請求項11又は12に記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【請求項15】
前記炭化珪素単結晶ウェハの口径が50mm以上である請求項11〜14のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【請求項16】
前記炭化珪素単結晶ウェハの口径が100mm以上である請求項11〜14のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハ。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハに、炭化珪素薄膜をエピタキシャル成長させてなることを特徴とするエピタキシャルウェハ。
【請求項18】
請求項11〜16のいずれかに記載の炭化珪素単結晶ウェハに、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウム又はこれらの混晶からなる薄膜をエピタキシャル成長させてなることを特徴とするエピタキシャルウェハ。
【請求項19】
昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶の製造方法であって、ドーパント元素を含有し、比表面積が0.5m/g以下である固体物質を昇華原料に含むことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項20】
昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶の製造方法であって、ドーパント元素を含有し、2400℃以下の温度で比表面積が0.5m/g以下となる固体物質を昇華原料に含むことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項21】
前記昇華原料が、前記の固体物質を予め炭化珪素粉末又は炭化珪素原料粉末と混合してなる請求項19又は20に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項22】
前記昇華原料が、前記の固体物質と炭化珪素粉末又は炭化珪素原料粉末とを分離してなる請求項19又は20に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項23】
前記の固体物質の比表面積が0.1m/g以下である請求項19〜22のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項24】
前記の固体物質の比表面積が0.05m/g以下である請求項19〜22のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項25】
前記のドーパント元素がバナジウムである、請求項19〜24のいずれかに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111478(P2006−111478A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299088(P2004−299088)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】