説明

炭素−炭素鎖分子の機械的破壊による物質の形成

短鎖炭素分子を含む製品物質を製造するための、相対的に長い炭素鎖分子を含む資源物質の機械的破壊を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、主に炭素鎖を含む物質を他の物質、たとえば限定されないが、燃料などに変換するための新規な工程に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
炭素は、炭素−炭素結合の相互結合を含む長鎖を形成する能力を有する。炭素−炭素結合は極めて強力である。この特性は、炭素が膨大な数の化合物の形成を可能とする点で重要である。そのような化合物の非限定的な例は、炭水化物、炭化水素、アルカン、アルケン、単糖類、多糖、天然ポリマー、合成されたポリマー、合成ポリマー、化石燃料、アルコール、複合アルコール、ポリアルコール、天然ゴム、合成ゴム、動物、植物、セルロース、リグニン、デンプン、および、その他である。
【0003】
化学地質学的工程を通して、有機物は化石燃料に変換され得る。化学的工程を通して、石油化学工業は石油燃料を多くの留分(たとえば限定されないが気体、液体、種々の粘性および固形製品)に精製し得る。
【0004】
そのようなガスの非限定的な例は、天然ガス、石油ガス、炭素数5以下のアルカン、炭素数5以下のアルケン、メタン、メタノール、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン、ペンタン、ペンテンなどを含む。そのような液体の非限定的な例は、ナフサ、ガソリン(gasoline)、ガソリン(petrol)、燃料オイル、6以上の炭素のアルカン、6以上の炭素のアルケン、2以上の炭素のアルコールなどを含む。そのような粘性の液体は重燃料油、ろう蒸留物、基油、炭素数16以上のアルカン、炭素数16以上のアルケン、炭素数16以上のアルコールなどを含む。そのような固体の非限定的な例はろう蒸留物、ろう、瀝青、炭素数25以上のアルカン、炭素数25以上のアルケン、炭素数25以上のアルコールなどを含む。
【0005】
多くの化学的工程を通して、触媒を用いるか又は用いないで、石油化学工業は精製された製品を多くの派生的な製品に変換し得る。
【0006】
そのような化学的工程のための非限定的な例は、沈殿、抽出、クラッキング(cracking)、架橋、重合化、Fisher-Tropsch、および、より多くのものを含む。そのような派生的製品の非限定的な例は、ポリマー、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、合成ゴム、SBS、SBR、パラフィンろう、潤滑油、および、その他のものを含む。
【0007】
他の化学的工程、たとえば限定されないが、「発酵」を通して、植物および動物に含まれる多糖はアルコール燃料、たとえば限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど、または、それらの混合物に変換され得る。さらに他の化学的工程、たとえば限定されないが、「エステル交換」を通して、植物および動物油は、例えば一般にディーゼルエンジン、ヒータおよびその他に用いられる燃料を形成する「バイオディーゼル」に変換され得る。
【0008】
化石燃料の資源の減少とエネルギ価格の高騰により、再生可能な燃料資源を実現する技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
本願発明は、以下にさらに詳細に説明するように、炭素鎖を含む物体を他の物質、たとえば限定されないが、燃料などに変換するための新規な方法を供給することを目的とする。相対的に長い炭素鎖分子を含む多くの物質は、機械的に破壊されて短い炭素鎖を含むものに変換され得る。「機械的破壊」の用語は、明細書および請求の範囲を通して用いられているように、物理的力の物質への適用を指し、その力は、相対的に長い鎖を有する分子をより短い鎖分子に破壊するものである。相対的に長い鎖分子は、物理的力の直接的結果として短鎖分子に破壊され得、および/または、物理的力の適用によって生じる副次的効果により破壊され得る(「副次的効果」の用語は、同時であれ、同時でない場合であれ、物理的力の適用の結果として生じる間接的効果を指す)。物理的力の適用の結果である副次的効果の非限定的な例は、化学的反応または熱エネルギ(加熱)である。単に説明の目的のために、本発明を限定することなく、相対的に長い炭素分子の物理的力の適用による機械的破壊は、破壊点における化学的に不安定な端部を作ることが可能である。これらの端部は、物質における不安定性を均衡するために化学的反応(および可能な熱および他の反応)を生じさせることができる。
【0010】
機械的破壊、物理的破壊、機械的分子破壊、または物理的分子破壊の用語は、全体を通して相互変換可能に用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
炭素鎖の断片を含むどのような材料も、より短い炭素鎖を含む個々の留分に機械的に破壊され得、それは、燃料または他の工程のための資源材料として用いられ得る。
【0012】
本願発明の実施形態に従えば、炭素鎖を含む第1の物質(「資源」とも呼ばれる)(たとえば、炭化水素、炭水化物、ポリマー、木材など、または、それらの組合せ)を、物理的な力を適用することによって、その炭素鎖分子を機械的に破壊することにより、機械的に変換するための方法が提供され、それにより第1の物質よりも短い長さの炭素鎖分子を含む第2の物質(「製品」とも呼ばれる)(たとえば、燃料または他のものを含む燃料、および、その他多くのもの)を得ることができる。
【0013】
短鎖炭素分子を含む製品物質を製造するための、相対的に長い炭素鎖を含む資源物質の機械的破壊を含む方法が、本願発明の実施形態に従って提供される。
【0014】
その機械的破壊は、粉砕(milling)、押潰し(crushing)、粉砕(comminuting)、摩耗(wearing)、引裂き(tearing)、崩壊(crumbling)、圧搾(squeezing)、微粉砕(pulverizing)、すり潰し(grinding)、衝突(impacting)、破壊(breaking)、超音波の適用(applying ultra-sonic waves)、電圧変換(voltage altering)、および、コールドプラズマ粉砕(cold plasma milling)の少なくとも1つを含み得る。
【0015】
相対的に長い炭素鎖分子は機械的破壊の物理的力による直接的な結果としてより短い炭素鎖分子に破壊され得る。相対的に長い炭素鎖分子は機械的破壊の物理的力の適用によって生じる副次的な効果によって、より短い炭素鎖分子に破壊され得る。その副次的効果は、化学的効果および熱的効果の少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
本願発明の実施形態に従って、相対的に長い炭素鎖分子の短鎖炭素分子への破壊は、100℃以下、50℃以下、気温、0℃以下、−50℃以下、−100℃以下、または、選択的に−150℃以下の温度下で行なわれ得る。
【0017】
相対的に長い炭素鎖分子の短鎖分子への破壊は、資源物質の融点以下、資源物質のガラス転移温度以下、または製品物質の融点以下の温度で行なわれ得る。
【0018】
相対的に長い炭素鎖分子の短鎖炭素分子への破壊は、非液体環境下または液体環境下で行なわれ得る。非液体環境は、空気、CO2、N2、O2、H2、H2OおよびHe、または、それらの混合物の少なくとも1つを含み得る。非液体環境の圧力は、大気圧以下、または、代替的に大気圧以上であり得る。
【0019】
液体環境と製品物質とは混和できないものであってもよい。代わりに、液体環境と製品物質は混和できるものであってもよい。液体環境は製品物質を含み得る。
【0020】
本願発明の実施形態に従えば、機械的破壊は、炭素鎖を含む資源物質の少なくともいくらかを、1000ナノメータより小さい、100ナノメータより小さい、10ナノメータより小さい、または、1ナノメータより小さい粒子にすることを含み得る。(上記の非限定的な例は、少なくとも資源物質の1%、代わりに資源物質の少なくとも10%、代わりに資源物質の少なくとも30%、代わりに資源物質の少なくとも50%、または、代わりに資源物質の少なくとも70%のサイズ減少である。)
本願発明の実施形態に従えば、資源物質の少なくとも0.2%、2%、10%または20%は、50より低い炭素数(1分子中の炭素原子の数)、代わりに150より低い炭素数、代わりに500より低い炭素数、または代わりに1000よりも低い炭素数の製品に変換され得る。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の実施形態に従えば、資源物質の相対的に長い炭素鎖が短鎖炭素分子に機械的に破壊されることによって製造される製品を含む物品が提供される。
【0022】
その製品は、1000より短い炭素数、500より短い炭素数、150より短い炭素数、または、50よりも短い炭素数の炭素鎖を含み得る。製品に含まれる短鎖炭素分子の少なくとも0.2%、2%、10%または20%は、50より低い炭素数、代わりに150より低い炭素数、代わりに500より低い炭素数、または、代わりに1000より低い炭素数であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態の詳細な説明
本願発明の新規な工程は、相対的に長い炭素鎖を含むどのような資源物質も相対的に短い炭素鎖を含む製品物質に変換することができる。そのプロセスは、相対的に長い炭素鎖を持つ物質を使用可能な燃料に変換することができ、このように、これまで考えられなかったエネルギ資源を実現可能および再生可能なエネルギ資源に変えるものである。
【0024】
炭素は、連鎖化能力、すなわち、炭素−炭素結合の相互結合により長鎖を形成する能力を有している。炭素−炭素結合は極めて強く、相対的に安定である。この特性は炭素が膨大な数の化合物を形成することを可能にしている。炭素鎖を有する分子の非限定的な1つの例は、炭化水素−炭素原子の鎖に結合した水素原子からなる多くの種類の有機分子。鎖の長さ、側鎖/枝、鎖中の環、置換および官能基のすべてがそれらの分子の特性に影響を与えている。
【0025】
炭素鎖分子の他の非限定的な例は、炭化水素、すなわち、鎖を含み炭素、水素および酸素原子から構成される多くの種類の有機分子である。鎖の長さ、側鎖/枝、鎖中の環、置換および官能基のすべてがそれらの分子の特性に影響を与えている。
【0026】
このように、炭素鎖は、主に炭素、水素、酸素原子を含み、直鎖、分岐鎖、環、および他の多くの形態に結合された多くの分子(材料)に含まれている。1分子中の炭素原子の数(「炭素数」とも呼ばれる)は、1(たとえば、メタン、メタノールなど)から100万(たとえば、ポリマー、デンプンなど)まで変化し得る。
【0027】
長い炭素鎖は、その中で分子が互いに巻かれ、もつれ合った複合的構造を形成し得る。燃料は比較的短い炭素鎖から作られるため、長い炭素鎖の留分への機械的破壊は、使用可能な燃料を製造し得る。
【0028】
驚くべきことに、相対的に長い炭素鎖を含む資源物質の、1ミクロン(1000ナノメータ)より小さい、好ましくは100ナノメータより小さい、より好ましくは10ナノメータより小さい、任意に1ナノメータより小さい粒子への機械的破壊(非限定的な例は、粉砕(comminuting)、粉砕(milling)、押潰し(crushing)、摩擦粉砕(rubbing grinding)など)が、短い長さのさまざまな炭素鎖を含む物質を製造できることを見出した。さらに、資源物質に比べて、これらの製品物質は、燃料として使用するために適した高い濃度の留分(たとえば、異なる長さの炭素鎖)を有することを見出した。これら燃料様の留分は、使用可能ないずれかの方法によって変換および/または部分的に変換された物質から、分離することができる。この燃料様の留分は、商業上の必要性または適用に応じて、さらに精製、分離および/または品質向上の工程に付されてもよい。
【0029】
粉砕の細かさが増すことによって、破壊される分子断片の量も増加し、このようにして、より短い炭素長さ特性の分子がさらに作り出される。機械的破壊工程は、繰返し行なわれてもよく、得られた生成物分子はさらにより短い炭素鎖分子に繰返し破壊されてもよい。
【0030】
製品分子のどのような付加的断片化も行うことができる。たとえば、約25より小さい炭素数の分子に機械的に破壊された多種の分子は、液体燃料と同様の混合物を形成し得る。その混合物は、後でさらに精製、改質および/または他の公知の液体燃料に用いられる手段および装置によって処理されてもよい。約50より小さい炭素数の分子に機械的に変換された多種の分子は、粘性液体燃料と同様の混合物を形成し得る。約100より小さい炭素数の分子に機械的に破壊された多種の分子は、原油と同様の混合物を形成し得る。約150より小さい炭素数の分子に機械的に破壊された多種分子は、重質原油と同様の混合物を形成し得る。約500より小さい炭素数の分子に機械的に破壊された多種の分子は、重油砂、または瀝青岩と同様の混合物を形成し得る。約1000より小さい炭素数の分子に機械的に破壊された多種の分子は、アスファルトと同様の混合物を形成し得る。上記混合物は、すべて、後でさらに他の生産物および装置によって精製、処理および/または改質されてもよい。
【0031】
機械的破壊の用語は、物理的力、たとえば限定されないが、粉砕(milling)、押潰し(crushing)、粉砕(comminuting)、摩耗(wearing)、引裂き(tearing)、崩壊(crumbling)、圧搾(squeezing)、微粉砕(pulverizing)、すり潰し(grinding)、衝突(impacting)、破壊(breaking)、超音波の適用(applying ultra-sonic waves)、電圧変換(voltage altering)、および、コールドプラズマ粉砕(cold plasma milling)など、または、それらのいくつかの組合せによって、資源物質の粒子サイズをサブミクロンの大きさにするためのどのような方法も包含する。資源材料の大きさを1000nmより小さい粒子に減少させることのできるどのような機械的分子破壊方法も、その工程、たとえば限定されないが、ボールミル、ハンマーミル、コロイドミル、インパクトミル、グラインダー(grinder)、クラッシャー(crusher)、振動ミル、超音ミル(ultrasound mill)、超音波ミル、ジェットミル、低温ミル、ビーズミル、スプリッタ(splitters)、クリーバー(cleaver)、ミンサー(mincers)、マッシャー(mashers)、パウンダー(pou
nders)、シュレッダー、摩擦(rubbing)、圧搾、摩耗(wear)、削摩(abrasion)、浸食(erosion)、破裂(explosion)、コールドプラズマ粉砕によって粒子サイズを減少させる装置、および他の方法、または、それらの組合せに適用することができる。
【0032】
本願発明に係る機械的分子破壊は、資源が固体状態にある温度、資源がそのガラス転移温度より下にある温度、または、製品が固体状態にある温度で行なわれ得る。その条件は種々の資源に応じて変化させることができ、100℃より低い温度、50℃より低い温度、代わりに気温、代わりに0℃より低い温度、代わりに−50℃より低い温度、代わりに−100℃より低い温度、または、代わりに−150℃より低い温度であることができる。
【0033】
本願発明に係る機械的分子破壊は、資源物質を液体に分散または溶解させ、資源と液体の上記混合物をその凍結温度以下に冷却し、および、凍結した資源および液体の固体混合物を製品物質を含む微小な粒子に機械的に破壊することによって行なわれてもよい。単に説明のために、本発明を限定することなく、長い複雑な資源分子は、液体の凍結した分子間で互いに巻かれ、および/または、もつれ合っていることで、物理的分子破壊を受けやすくしてもよい。そのような液体の非限定的な例は、水、燃料、アルコール、シクロヘキサンなどである。
【0034】
機械的分子破壊は、気体環境中(たとえば限定されないが、空気、CO2、N2、O2、H2、H2O、He、またはそれらの混合物)で、大気圧より上、または、それ以下の気圧で、または、液体環境(たとえば限定されないが、製品と混和しない液体、製品と混和する液体燃料、溶媒、または、それらの混合物)中で行なわれる。
【0035】
液体環境の非限定的な例は:
a. 非混和性液体−最終産物(燃料であり得る)は、周囲の液体に溶解しない。
【0036】
b. 混和性液体−資源物質が溶媒であり、結果として生ずる物質(燃料であり得る)が周囲の液体に溶解する。
【0037】
c. 混和性分散−ちょうどほぼ液体の大きさの粒子が周囲の液体中で安定に分散した状態を維持していること以外は、混和性液体と同様。
【0038】
驚くべきことに、本願発明は、多種の資源分子を異なるより小さい分子に破壊することに成功した。
【0039】
炭素鎖を含むどのような材料も、より短い炭素鎖を含む材料に機械的に破壊され得る。そのような資源の非限定的な例は:
a. 有機物
b. 合成物
c. ポリマーリサイクル(Polymer recycling)
d. 精製残渣(陰圧吸引底部(vaccum bottom)、瀝青、接触分解への供給物)−接触分解の代替物
e. 多糖(または炭化水素、この用語は相互変換可能に用いられる)、たとえば限定されないが、セルロース、イグニン、デキストリン、デンプン、グリコーゲン、脂肪、アミロース、アミロペクチン、木材
f. 飽和炭化水素、天然の、合成されたまたは合成の、たとえば限定されないが、油脂、油、
g. 飽和ポリマー、天然の、合成されたまたは合成の、たとえば限定されないが、ポリオレフィンなど
h. 不飽和炭化水素、天然の、合成されたまたは合成の、たとえば限定されないが、天然ゴム、合成ゴム、加硫ゴム、炭化水素を含む芳香物(aromatic)(たとえば、ポリスチレン、ラテックス)
i. 天然、合成されたまたは合成のポリマー−たとえば限定されないが、天然ゴム、合成ゴム、加硫ゴムなど
j. 家庭廃物
k. 家畜廃物/余剰物
l. 農業廃物/余剰物
m. 上記の少なくとも2つ、または、上記の1つと他の物質との組合せを含む混合物。
【実施例】
【0040】
上記新規な工程は、以下の非限定的な例によりさらに理解されるであろう。
ASTM D−5442に準じたガスクロマトグラフィ(GC)のための標準キットである、C16−C44の定性的保持時間混合物(qualitative retention time mix)は、シグマ−アルドリッチ社から購入することができ、シクロヘキサンで希釈することで各成分の416ppmを含む「対照液」が調製される。この標準キットは、同じ重量の炭素数16、18、20、22、24、26、28、30、32、36、40、44の直鎖炭水化物を含み、GC測定に用いられる。
【0041】
その液の1マイクロリットルがGC(ASTM D−5442規格に準じたガスクロマトグラフ試験)に、以下の実施例の定性的および定量的測定法のための対照記録(reference readings)の作成のために注入された。すべての実施例において、GC試験の測定を行なうために同じ対照液が使用された。すべての実施例において、GC試験はASTM D−5442基準に準じて行なわれた。
【0042】
実施例1:
1ミリリットルの対照液は、400ミリリットルの傾斜したドラムボールミル中の直径2mmのガラスビーズ100グラムに注がれた(ガラスビーズはミルの閉じたドラム内で分子を機械的に破壊するボールである)。湿らされた(対照液で被覆された)ガラスビーズはミルの底をドラム容量の約10%の量まで満たした。ボールミルのドラムは約−150℃まで冷却され、60Hzで12時間回転された。その温度では、その液体の周囲の液体被覆は固体形態に凍結する。ドラムの回転は、ガラスビーズおよびドラムの間およびビーズ自体の間での多様な衝突を作り出した。これらの衝突は機械的破壊を生じ、したがって、対照液の分子のかなりの部分の鎖サイズの減少を生じた。
【0043】
非粉砕液と比較するために粉砕された液について行なわれたGC試験は、その衝突が、対照液の分子の少なくとも約40%を、異なるより短い分子に破壊したことを示す。その衝突は、資源物質には存在しなかった炭素数7、12、19、21、23および27の分子を形成した。
【0044】
実施例2:
「モンタンワックス」(「Romonta N」、Romonta、ドイツ、大部分は1分子に約100の炭素数の直鎖状飽和炭化水素)は、以下のようにして振動ボールミル中で粉砕された:
粉末のモンタンワックスおよび直径2mmのガラスビーズ50グラムは、ミルの100ミリリットル金属シリンダ内に投入された(ガラスビーズは粉砕ボールである)。ガラスビーズおよびモンタンパウダーは、シリンダの容量の約半分を満たした。ミルは、以下に詳細に示すように、8cmの大きさで、10Hzで、さまざまな継続時間および温度で操作された。そのドラムの振動が、ガラスビーズおよびドラムの間およびそれ自体同士の間
の多様な衝突を生じた。これらの衝突は機械的破壊を生じ、したがってモンタンワックスの分子のかなりの部分の鎖サイズの減少を生じた。
【0045】
モンタンワックスの15グラムは、直径2mmのガラスビーズ50グラムとともに、−50℃で3時間、ミルにかけられた。
【0046】
他の粉末のモンタンワックスの15グラムは、直径2mmのガラスビーズの50グラムとともに、−50℃で12時間、ミルにかけられた。
【0047】
物理的分子破壊工程に入った、モンタンを含まない流れる粉末は破壊され、ガラスビーズおよびシリンダの表面のより柔軟な継続的被覆に変換された。
【0048】
粉砕されたモンタンワックスは、U.S. EPA 418.1 試験方法(石油炭化水素の試験方法)に準じて、FTIR(赤外線フーリエ変換)装置を用いて、TH(総炭化水素)およびTPH(総石油炭化水素)試験を受けた。粉砕されたモンタンワックスはGC試験にも付された。
【0049】
FTIR試験から得られたTHおよびTPHの結果を、以下の表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
未処理モンタンワックスは、およその炭素数がその試験において検出するにはかなり高いものが大部分である分子を含む。未処理モンタンのFTIR結果は、TH検査で検出可能な炭化水素分子がたった4.5重量%であり、TPH検査で検出可能な石油分子がたった1.3%であることを示す。
【0052】
モンタンワックスの−50℃での3時間の粉砕は、元のモンタンワックスの分子のかなりの部分を破壊し、5の大きさ(magnitude)によって小さな分子の量を増加させる(TH検査によって検出可能なより短い炭化水素分子の4.5%は26%に変わり、TPH検査によって検出可能な石油分子の定義は6%に対応する)。さらに、−50℃で合計12時間のモンタンワックスの粉砕は、元の分子の50%近くを破壊し(4.5%が粉砕後49%になった)、それらはTH検査で検出可能なより短い炭化水素分子に変換され、その11.7%はTPH検査で検出可能な石油分子の記述(definition)に適合する。
【0053】
ガスクロマトグラフィ(GC)試験の結果を以下に示す:
非粉砕と比べて、粉砕されたモンタンは、様々かつ石油の性質の炭素数19−21および34−74の新たな存在を示した。粉砕されたモンタンは、炭素数22−33の極めて
大きな変化と多量化をも示す。
【0054】
実施例3:
「低密度ポリエチレン」(LDPE、Ipethene 323のカーメルオレフィン、M.F.R−2.0)は上記実施例2のようのボールミル内に設置された。4グラムの粉末LDPEは、50グラムの2mm直径のガラスビーズとともに気温下で12時間粉砕された。他方の4グラムの粉末LDPEは、50グラムの直径2mmのガラスビーズとともに8時間−50℃で粉砕された。粉砕に入ったLDPEを含まない流れる粉末は、ガラスビーズおよびシリンダ表面のワックス用のコーティングに変換された。その粉砕されたLDPEは、上記実施例2に記載されたようにEPA 418.1標準に準じたTHおよびTPH検査に付された:
FTIR試験から得られたTHおよびTPHの結果を以下の表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
未処理LDPE粉末は炭素数が10000より高い巨大分子を大部分に含む。約0.75%のみがTH検査で検出可能な分子であり、その0.63%のみがTPH検査で検出可能な石油分子である。
【0057】
THおよびTPH検査は、LDPEの粉砕が元のポリマーの巨大分子の部分を破壊し、長鎖分子の量を減少させ、小さい分子の量を増加させる。
【0058】
得られた結果は、LDPEが物理的分子破壊の影響を受けやすいことを示す。周囲の温度での12時間の粉砕の後、THは7500ppmから10300ppmへ37%増加し、TPHは6346ppmから7440ppmへ17%増加した。−50℃における8時間の粉砕の後、THは7500ppmから9200ppmへ22%増加し、TPHは6346ppmから7400ppmへ17%増加した。
【0059】
粉砕されたLDPEは、ガスクロマトグラフィ(GC)試験に付された。非粉砕と比べて、粉砕されたLDPEは、炭素数8、10、12、15、18、20、21、24、25、28、30および31の新たな存在を示す。
【0060】
実施例4:
ポリプロピレンホモポリマー(PP、カーメル・オレフィンズ社のCapilene E63F、M.F.R−1.9)は、上記実施例2のように振動ボール内で粉砕された。5グラムの粉末PPは、直径2mmのグラスビーズ50グラムとともに、−150℃で2時間粉砕された。その粉砕されたPPは、ガスクロマトグラフィ(GC)試験に付され、未処理P
Pと比較された。
【0061】
未処理PP粉末は、大部分に10000より高い炭素数の巨大分子を含む。約0.5%のみがGC試験で検出可能な分子である。
【0062】
非粉砕と比べて、粉砕されたPPは、炭素数20および25の分子の新たな存在を示す。これらの炭素数の出現は、この試験で検出された分子の約20.5%に相当する。
【0063】
実施例5:
小麦粉は、上記実施例2のように振動ボールミル中で粉砕された:
10グラムの小麦粉は、直径2mmのガラスビーズ50グラムとともに、−50℃で12時間粉砕された。機械的分子破壊工程に入った自由に流れる小麦粉は、粉砕され、ガラスビーズ上およびシリンダ表面の被覆に変換された。粉砕された粉は、ガスクロマトグラフィ(GC)試験に付された。未処理の小麦粉の粉末は、大部分にデンプン、10000より高い炭素数の多糖の巨大分子を含む。約0.8%のみがGC試験で検出可能な分子である。非粉砕と比べて、粉砕された小麦粉は炭素数8、10、25および32の分子の新たな存在を示す。これらの炭素数の出現は、この試験で検出された分子の約45.5%に相当する。
【0064】
本願発明は、当業者であれば、上述のように具体的に示され、記載されたものに限定されないことが理解されるものである。むしろ、本願発明の範囲は、上記記載を読んだ当業者に生じ、従来の技術にはない、上述した特徴の結合および副次的結合の両者、ならびに、それらの修飾および変形を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短鎖炭素分子を含む製品物質を製造するための、相対的に長い炭素鎖分子を含む資源物質の機械的破壊を含む方法。
【請求項2】
前記機械的破壊は、ミル(milling)、押潰し(crushing)、粉砕(comminuting)、摩耗(wearing)、引裂き(tearing)、崩壊(crumbling)、圧搾(squeezing)、微粉砕(pulverizing)、すり潰し(grinding)、衝突(impacting)、破壊(breaking)、超音波の適用(applying ultra-sonic waves)、電圧変換(voltage altering)、および、コールドプラズマ粉砕(cold plasma milling)の少なくとも1つを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記相対的に長い炭素鎖分子は、機械的破壊の物理的力の直接の結果として、より短い炭素鎖分子に破壊される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記相対的に長い炭素鎖分子は、機械的破壊の物理的力の適用によって生じる副次的効果によって、より短い炭素鎖分子に破壊される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記副次的効果は、化学的効果および熱的効果の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
相対的に長い炭素鎖分子の短鎖炭素分子への破壊は、0℃以下の温度で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
相対的に長い炭素鎖の短鎖分子への破壊は、資源物質の融点以下の温度で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記機械的破壊は、炭素鎖を含む資源物質の少なくともいくらかを100ナノメータより小さい粒子にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記機械的破壊は、炭素鎖を含む資源物質の少なくともいくらかを1ナノメータより小さい粒子にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
資源物質の相対的に長い炭素鎖を短鎖炭素分子に機械的に破壊することによって製造される製品を含む物品。
【請求項11】
前記製品は、50より小さい炭素数の分子を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記短鎖炭素分子の少なくとも0.2%は、50より低い炭素数である、請求項10に記載の物品。

【公表番号】特表2011−506050(P2011−506050A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539873(P2009−539873)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001515
【国際公開番号】WO2008/068764
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509159034)エイチ・エイ・インダストリアル・テクノロジーズ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HA INDUSTRIAL TECHNOLOGIES LTD.
【Fターム(参考)】