説明

炭素材料の製造方法

【課題】初期充放電容量が一層向上した、リチウムイオン二次電池などの電極用材料となる炭素材料の製造方法を提供する。
【解決手段】分子内に、少なくとも1個の式(2a)


(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)


(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、アルキル基またはアリール基を表わす。)で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、アルデヒド化合物を重合させる重合工程と、前記重合工程で得られた重合物を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する炭化工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素粉末など炭素材料は、例えば、リチウムイオン二次電池などの電極用材料に使用される。前記炭素材料の製造方法としては、例えば、オルソクレゾール−ホルムアルデヒドの重合体をヘキサメチレンテトラミンで硬化させ、得られた硬化物を不活性ガス雰囲気下、1000℃で加熱する方法が特許文献1に記載されている。そして、得られた炭素材料を含むリチウムイオン二次電池は、初期充放電容量341mAh/gを与えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−188978号([実施例5])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初期充放電容量が一層向上した、リチウムイオン二次電池などの電極用材料となる炭素材料の製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の[1]〜[16]記載の発明に至った。
[1] 式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させる重合工程と、
前記重合工程で得られた重合物を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する炭化工程とを含むことを特徴とする炭素材料の製造方法。
【0006】
[2] 式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させる重合工程と、
前記重合工程で得られた重合物を酸化性ガス雰囲気下で400℃以下にて加熱する焼成工程と、
前記焼成工程で得られた焼成品を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する炭化工程とを含むことを特徴とする炭素材料の製造方法。
【0007】
[3] 重合工程が、式(1)で表される化合物、
分子内に少なくとも1個の前記式(2a)で示される2価の基または少なくとも2個の前記式(2b)で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を混合した後、得られた混合物を重合する工程を含むことを特徴とする[1]又は[2]記載の製造方法。
[4] 重合工程が、塩基性触媒の存在下に重合する工程であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか記載の製造方法。
[5] 重合工程で得られた重合物を水洗する水洗工程をさらに含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか記載の製造方法。
[6] 重合工程で得られた重合物を乾燥する乾燥工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
[7] 式(1)で表される化合物におけるR’がいずれも水素原子であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか記載の製造方法。
[8] 式(1)で表される化合物におけるRがいずれも炭素数1〜12のアルキル基であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか記載の製造方法。
[9] アルデヒド化合物がホルムアルデヒドであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか記載の製造方法。
【0008】
[10] [1]〜[9]のいずれか記載の製造方法で得られた炭素材料を含むことを特徴とする電極。
[11] [10]記載の電極を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
[12] [10]記載の電極を含むことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【0009】
[13] 式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させて得られた重合物を、
不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱することにより得られる炭素材料。
【0010】
[14] 式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させて得られた重合物を、
酸化性ガス雰囲気下で400℃以下にて加熱し、
得られた焼成品を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱することにより得られる炭素材料。
【0011】
[15] 炭素原子に対する水素原子の原子数比(H/C)が0.08〜0.25であることを特徴とする[13]又は[14]記載の炭素材料。
[16] 炭素材料における窒素の含有量が0.5重量%以上であることを特徴とする[13]〜[15]のいずれか記載の炭素材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、初期充放電容量が一層向上したリチウムイオン二次電池などの電極用材料となる炭素材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いられる式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある。)中、Rは水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表し、該炭化水素基には、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基、又はカルバモイル基が結合していてもよい。
【0014】
炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などの炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、例えば、i−プロピル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基などの炭素数3〜12の分枝状アルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3〜12のシクロアルキル基、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基などの炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基などの炭素数7〜12のアラルキル基などが挙げられる。炭素数1〜12の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖状アルキル基がより好ましい。
【0015】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基などが挙げられる。
【0016】
炭素数6〜20のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基およびp−トリルスルホニル基が挙げられ、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基およびエチルスルホニル基が挙げられる。
炭素数2〜20のアシルアミノ基としては、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基およびベンゾイルアミノ基が挙げられる。
【0017】
水酸基が結合した芳香族炭化水素基としては、例えば、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−ヒドロキシベンジル基、3−ヒドロキシベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基などが挙げられる。
アルコキシ基が結合した芳香族炭化水素基としては、例えば、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基などが挙げられる。
アルキルチオ基が結合した芳香族炭化水素基としては、例えば、2−メチルチオフェニル、3−メチルチオフェニル基、4−メチルチオフェニル基などが挙げられる。
カルボキシル基が結合した芳香族炭化水素基としては、例えば、2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基などが挙げられる。
他の基が結合した芳香族炭化水素基としては、例えば、3−ニトロフェニル基、4−アミノフェニル基、4−シアノフェニル基、4−アセチルアミノフェニル基などが挙げられる。
【0018】
Rは、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖状アルキル基がより好ましい。
【0019】
式(1)中のR’は、水素原子又はメチル基を表し、特に水素原子であると、製造が容易なことから好ましい。RとR’とは互いに同一でも異なっていてもよい。
化合物(1)のベンゼン環に結合している2つの水酸基は、互いにメタ位に位置に置換されており、かつ、いずれも-CH(R)-基のオルト位に置換していることが好ましい。
【0020】
式(1)中のnは3〜7の整数を表わし、3、5または7であることが好ましく、nは3又は7であることがより好ましく、とりわけ、3が好ましい。
化合物(1)は立体異性体を有するが、いずれか一方のみの立体異性体であっても立体異性体の混合物であってもよい。化合物(1)は、通常、立体異性体の混合物が得られる。
【0021】
化合物(1)の具体例を示せば式(I)〜(III)の化合物等が挙げられる。

【0022】
前記式(I)で表される化合物は、化合物(1)のnが3であり、R及びR’は、化合物(1)のR及びR’と同じ意味を表す。
式(I)で表される化合物としては、例えば、R及びR’がいずれも水素原子である化合物、Rが水素原子でR’がメチル基である化合物、Rがメチル基でR’が水素原子である化合物、Rがエチル基でR’が水素原子である化合物、Rがn−プロピル基でR’が水素原子である化合物、R及びR’がいずれもメチル基である化合物、Rが水素原子でR’がフェニル基である化合物、Rがフェニル基でR’が水素原子である化合物、Rがフェニル基でR’がメチル基である化合物などが挙げられる。
【0023】

【0024】
前記式(II)で表される化合物は、化合物(1)のnが5であり、R及びR’は、化合物(1)のR及びR’と同じ意味を表す。
式(II)で表される化合物としては、例えば、R及びR’がいずれも水素原子である化合物、Rが水素原子でR’がメチル基である化合物、Rがメチル基でR’が水素原子である化合物、Rがエチル基でR’が水素原子である化合物、Rがn−プロピル基でR’が水素原子である化合物、R及びR’がいずれもメチル基である化合物、Rが水素原子でR’がフェニル基である化合物、Rがフェニル基でR’が水素原子である化合物、Rがフェニル基でR’がメチル基である化合物などが挙げられる。
【0025】

【0026】
前記式(III)で表される化合物は、化合物(1)のnが7であり、R及びR’は、化合物(1)のR及びR’と同じ意味を表す。
式(III)で表される化合物としては、例えば、R及びR’がいずれも水素原子である化合物、Rが水素原子でR’がメチル基である化合物、Rがメチル基でR’が水素原子である化合物、Rがエチル基でR’が水素原子である化合物、Rがn−プロピル基でR’が水素原子である化合物、R及びR’がいずれもメチル基である化合物、Rが水素原子でR’がフェニル基である化合物、Rがフェニル基でR’が水素原子である化合物、Rがフェニル基でR’がメチル基である化合物などが挙げられる。
化合物(1)の製造方法としては、例えば、下記

(R’は前記と同じ意味を表わす。)
で表されるレゾルシノール類と
【0027】
下記式
RCHO
(Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表されるアルデヒド化合物とを、酸触媒の存在下に反応させる方法(例えば、Tetrahedron,52,2663−2704(1996)参照。)により製造したものを用いてもよい。
【0028】
レゾルシノール類としては、例えば、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノールなどが挙げられ、好ましくは、レゾルシノールである。
【0029】
化合物(1)の製造に用いられるアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−ドデシルアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒド又は5−ヒドロキシペンタナールなどの脂肪族アルデヒド、例えば、ベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−t−ブチルベンズアルデヒド、4−フェニルベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、3−メトキシベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、3−クロロベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、2−ブロモベンズアルデヒド、3−ブロモベンズアルデヒド、4−ブロモベンズアルデヒド、2−フルオロベンズアルデヒド、3−フルオロベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、2−メチルチオベンズアルデヒド、3−メチルチオベンズアルデヒド、4−メチルチオベンズアルデヒド、2−カルボキシベンズアルデヒド、3−カルボキシベンズアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド、3−ニトロベンズアルデヒド、4−アミノベンズアルデヒド、4−アセチルアミノベンズアルデヒド又は4−シアノベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。化合物(1)の製造に用いられるアルデヒド化合物としては、脂肪族アルデヒドが好ましく、炭素数1〜12の脂肪族アルデヒドがより好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等の炭素数2〜6の脂肪族アルデヒドが特に好ましい。
尚、アルデヒド化合物は水溶液や無水物のものでもよい。具体的には、例えば、ホルアルデヒドの水溶液を用いてもよい。
アルデヒド化合物の使用量は、通常、レゾルシノール類1モルに対し、1〜3モル程度であり、好ましくは1.2〜2.5モル程度である。
【0030】
化合物(1)の製造方法としては、例えば、レゾルシノール類、アルデヒド化合物、酸触媒及び水系溶媒を一括で混合し、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて、約10分間〜24時間の範囲内等で攪拌し、化合物(1)を析出させて濾別する方法;レゾルシノール類、酸触媒及び水系溶媒からなる混合物にアルデヒド化合物を0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて、約10分間〜24時間の範囲内等で混合させ、得られた化合物(1)を析出させて濾別する方法;アルデヒド化合物、酸触媒及び水系溶媒からなる混合物にレゾルシノール類を0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて、約10分間〜24時間の範囲内等で混合させ、得られた化合物(1)を析出させて濾別する方法;レゾルシノール類、アルデヒド化合物及び水系溶媒からなる混合物に酸触媒を0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて、約10分間〜24時間の範囲内等で混合させ、得られた化合物(1)を析出させて濾別する方法などが挙げられる。
これらの製造方法において、化合物(1)を濾別する前に水などの貧溶媒を加えてもよい。
【0031】
濾別された化合物(1)は、10〜100℃程度で通風乾燥、減圧乾燥などの方法で乾燥してもよい。また、濾別された化合物(1)を親水性有機溶媒で置換した後で乾燥してもよい。ここで、親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール及びt−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル等の脂肪族ニトリル類;アセトン等の脂肪族ケトン類;ジメチルスルホキシド等の脂肪族スルホキシド類;酢酸等の脂肪族カルボン酸類が挙げられる。
最も推奨される実施態様は、レゾルシノール類とアルデヒド化合物とを酸触媒を用いて脱水縮重合して得られた化合物(1)の反応マスをそのまま、後述する重合工程を行う方法である。
【0032】
化合物(1)の製造に用いられる酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸などが挙げられ、中でも塩酸、硫酸が好ましい。酸触媒の使用量は、通常、レゾルシノール類1モルに対し、0.001〜3モル程度である。
【0033】
化合物(1)の製造に用いられる水系溶媒とは、水と任意の割合で混合し得る有機溶媒との混合溶媒または水であり、具体的には、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒を用いる場合には、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
水系溶媒としては、炭素数3以下のアルコール溶媒又は水と炭素数3以下のアルコールとの混合溶媒が好ましく、とりわけ炭素数3以下のアルコール溶媒が好ましい。
レゾルシノール類と水系溶媒との使用量の比は、水系溶媒1重量部あたり、通常、式(2)で表されるレゾルシノール類0.01〜5重量部であり、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0034】
また、化合物(1)は、東京化成、アルドリッチ、和光純薬などから市販されているものをそのまま、使用してもよい。
【0035】
本発明は、分子内に、少なくとも1個の式(2a)

で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物(以下、尿素類(2)と記すことがある)を用いる。
式(2a)および(2b)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わし、酸素原子が好ましい。
式(2b)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基が挙げられる。
【0036】
尿素類(2)としては、例えば、分子内に1個または2個の式(2a)で示される基を有する炭素数1〜30の化合物が好ましく、分子内に1個または2個の式(2a)で示される基を有する炭素数1〜12の化合物がより好ましい。
尿素類(2)の具体例としては、尿素、N−メチル尿素、N,N’−ジメチル尿素、チオ尿素、2−イミダゾリジノン、4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン、グリコールウリル等が挙げられ、好ましくは、尿素、2−イミダゾリジノン、グリコールウリル、特に好ましくは尿素である。
尿素類(2)の使用量としては、化合物(1)1モルに対して尿素類(2)を0.05〜2モル程度が好ましく、特に0.1〜0.5モルが好ましい。
【0037】
本発明の製造方法の第1の実施態様は、化合物(1)、尿素類(2)及びアルデヒド化合物を重合させる重合工程と、
前記重合工程で得られた重合物を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する炭化工程とを含む製造方法である。
【0038】
重合工程について説明する。
重合工程の具体例としては、化合物(1)、尿素類(2)及びアルデヒド化合物を塩基性触媒の存在下に重合させる方法などが挙げられる。
重合工程に用いられる塩基性触媒の量は化合物(1)に対して0.001〜1000当量比程度の範囲であり、0.005〜10当量比程度が好ましい範囲として挙げられ、0.01〜5当量比が特に好ましい範囲として挙げられる。
ここで、当量比とは、[化合物(1)のモル数]/[(塩基性触媒のモル数)/(塩基性触媒の価数)]を表す。また、レゾルシノール類とアルデヒド化合物とを酸触媒を用いて脱水縮重合して得られた化合物(1)の反応マスをそのまま、重合工程を行う場合には、上記塩基性触媒の量には、さらに、脱水縮重合の際に用いた酸触媒の量を中和する程度の量が必要である。
【0039】
塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカル金属水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、例えば、アンモニアなどが挙げられる。特に、炭酸ナトリウム及びアンモニアが好ましい。
アンモニアは通常、水溶液として取り扱う。
【0040】
重合工程に用いられるアルデヒド化合物としては、化合物(1)を製造する際に用いられたアルデヒド化合物と同様のものが例示される。化合物(1)を製造する際に用いられたアルデヒド化合物(RCHO)とアルデヒド化合物とは同一でも異なっていてもよい。
重合工程に用いられるアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒドが好ましい。ホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどの水をほとんど含まない形態でもよいが、通常、ホルムアルデヒド水溶液が用いられる。
重合工程に用いられるアルデヒド化合物の使用量としては、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.1〜6モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、1〜5モルの範囲等が挙げられる。
【0041】
さらに具体的に説明すると、例えば、化合物(1)、尿素類(2)、アルデヒド化合物、水系溶媒及び塩基性触媒の全てを一括して混合し、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて約10分〜24時間の範囲内で攪拌し、さらに必要に応じて後述する静置工程を行い重合物を得る方法、例えば、化合物(1)、尿素類(2)、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にアルデヒド化合物を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合し、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて約10分〜24時間の範囲内で攪拌し、さらに必要に応じて後述する静置工程を行い重合物を得る方法、例えば、アルデヒド化合物、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物に、化合物(1)及び尿素類(2)の混合物を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合し、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて約10分〜24時間の範囲内で攪拌し、さらに必要に応じて後述する静置工程を行い重合物を得る方法、例えば、化合物(1)、尿素類(2)、アルデヒド化合物及び水系溶媒からなる混合物に塩基性触媒を、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて混合し、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃にて約10分〜24時間の範囲内で攪拌し、さらに必要に応じて後述する静置工程を行い重合物を得る方法などが挙げられる。
上記重合工程における温度は一定の反応温度で行ってもよいし、徐々に反応温度挙げるなどの反応温度を変化させながら行ってもよい。
【0042】
特に、化合物(1)、尿素類(2)、塩基性触媒及び水系溶媒からなる混合物にアルデヒド化合物を30〜90℃にて混合し、30〜90℃にて約10分〜24時間の範囲内で攪拌し、さらに必要に応じて後述する静置工程を行い重合物を得る方法が好ましい。
また、化合物(1)と尿素類(2)とアルデヒド化合物とを、塩基性触媒の存在下に重合させ、得られた反応混合物に、酢酸等の酸およびアルデヒド化合物を加え、さらに重合反応を行ってもよい。
【0043】
ここで、静置工程とは、化合物(1)、尿素類(2)、塩基性触媒、及びアルデヒド化合物を0〜100℃にて混合した当該混合物を0〜100℃の温度条件下に1時間〜10日間、静置する工程である。
具体的には、当該混合物を平皿に置き、通風オーブンなどで0〜100℃、好ましくは30〜90℃で加熱する方法などが例示される。静置しての加熱に供する保温時間としては、通常、1時間〜10日間程度である。また、静置工程としては、例えば、当該混合物を20℃以上、60℃未満の低温で1時間〜5日間、保温したのち、60℃以上、100℃以下にて保温するなど、保温中の温度を変化させてもよい。
【0044】
重合工程に用いられる水系溶媒とは、水、水と任意の割合で混合し得る有機溶媒、該有機溶媒と水との混合物を意味する。ここで、該有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
水系溶媒としては、水、炭素数3以下のアルコール系溶媒、水と炭素数3以下のアルコール系溶媒との混合物が好ましく用いられる。
【0045】
水系溶媒と化合物(1)との量比は、水系溶媒1重量部に対して、通常、化合物(1)0.001〜5重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部である。
本発明の製造方法において、水系溶媒の使用量は、重合時における水系溶媒の使用量を意味することから、化合物(1)、尿素類(2)及びアルデヒド化合物に含まれる水系溶媒も使用量に算入する。例えば、37%ホルムアルデヒド水溶液であれば、63%の水は水系溶媒として計算する。
【0046】
重合工程が塩基性触媒を用いて重合物を得る場合には、得られた重合物を水洗あるいは酸を含有させた水で水洗する工程(以下、水洗工程を記すことがある)をさらに有することが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法は、重合工程で得られた重合物を乾燥する工程(以下、乾燥工程を記すことがある)を有していてもよく、上述のように、水洗工程を経て得られた重合物を乾燥工程に供することが好ましい。具体的には、重合工程で得られた重合物、又は、重合工程及び水洗工程を経て得られた重合物を室温〜100℃程度で通風乾燥するか、減圧乾燥する方法などが挙げられる。また、重合物中の溶媒が水である場合、親水性有機溶媒で置換した後、室温(約25℃)〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法などが挙げられる。
上記の親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル等の脂肪族ニトリル類;アセトン等の脂肪族ケトン類;ジメチルスルホキシド等の脂肪族スルホキシド類;酢酸等の脂肪族カルボン酸類が挙げられる。
親水性有機溶媒としては、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、酢酸が好ましく用いられ、t−ブチルアルコールは水と置換し易いことから特に好ましい。
また、室温〜100℃程度で通風するか、減圧乾燥する方法に代えて、凍結乾燥を実施してもよい。凍結乾燥における温度は、通常、−70〜20℃の範囲であり、好ましくは−30〜10℃の範囲である。また、凍結乾燥は、通常、真空下で実施される。
さらに、特開平9−328308号公報に記載されているように、二酸化炭素などを用いて、超臨界状態下で乾燥してもよい。
【0048】
第1の実施態様における炭化工程とは、前記重合工程で得られた重合物を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する工程である。前記重合工程で得られた重合物とは、前記重合工程のみを経て得られた重合物、前記重合工程及び前記水洗工程を経て得られた重合物、又は前記重合工程、前記水洗工程及び前記乾燥工程を経て得られた重合物などである。
炭化工程の具体例としては、例えば、前記重合物を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃、好ましくは800℃〜1000℃、特に好ましくは850〜990℃の範囲にて、通常、1分間〜24時間程度加熱する方法などが挙げられる。
600℃以上で加熱することにより得られる炭素材料の充填密度が向上する傾向があることから好ましく、3000℃以下で加熱することにより、炭素材料の黒鉛化を抑制する傾向があることから好ましい。
ここで、不活性ガスとは、炭素に対して反応し得ない気体であり、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス、例えば、窒素などが挙げられる。
また、加熱は、昇温しながら行ってもよいし、最高温度や昇温途中の任意の一定温度で保持しながら加熱してもよい。
不活性ガス雰囲気下での加熱の際に、密閉容器の不活性ガス雰囲気下で加熱してもよいし、不活性ガスを通気させてもよい。
【0049】
炭化工程は、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、流動炉、高温焼成炉などの焼成炉を用いて加熱することが好ましい。
特に、ロータリーキルンは、大量の重合物を容易に加熱することができ、特に粉砕することがなくとも、粉末状の炭素材料を得ることができる。
炭化工程を焼成炉で行う場合、例えば、重合物を焼成炉内で不活性ガス雰囲気に置換した後、600〜3000℃の温度範囲まで昇温させ、該温度で加熱する方法などが挙げられる。
【0050】
炭化工程を経て得られた炭素材料をさらに粉砕してもよい。粉砕方法としては、例えば、ジェットミルなどの衝撃摩擦粉砕機、遠心力粉砕機、ボールミル(チューブミル、コンパウンドミル、円錐形ボールミル、ロッドミル)、振動ミル、コロイドミル、摩擦円盤ミル、ジェットミルなどの微粉砕用の粉砕機が好適に用いられる。
粉砕方法としては、ジェットミル、ボールミルが好ましく、ボールミルを用いる場合、金属粉の混入を避けるために、ボールや粉砕容器は、アルミナ、メノウなどの非金属製であることが好ましい。
このように粉砕された粉末状の炭素材料の体積基準のメジアン径(D50)としては、例えば、1〜50μm、好ましくは1〜10μm、より好ましくは4〜7μm、特に好ましくは5〜6μm等が挙げられる。
【0051】
本発明の製造方法の第2の実施態様としては、化合物(1)、尿素類(2)及びアルデヒド化合物を重合させる重合工程と、
前記重合工程で得られた重合物を酸化性ガス雰囲気下で400℃以下にて加熱する焼成工程と、
前記焼成工程で得られた焼成品を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する炭化工程とを含む製造方法である。
【0052】
重合工程は、前記第1の実施態様と同様に行えばよい。
焼成工程に用いられる、前記重合工程で得られた重合物とは、前記重合工程のみを経て得られた重合物、前記重合工程及び前記水洗工程を経て得られた重合物、又は前記重合工程、前記水洗工程及び前記乾燥工程を経て得られた重合物などである。
【0053】
焼成工程を具体的に説明すると、重合工程で得られた重合物を空気、H2O、CO2又はO2等の酸化性ガスの存在下に、400℃以下、好ましくは、150℃〜300℃で加熱する方法などが例示される。
焼成工程が150〜190℃で行われる場合、通常、重合物を空気雰囲気下にて加熱する。空気は、通気させるようにしてもよい。
また、焼成工程が190〜400℃で行われる場合、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを主成分とし、酸素などの酸化性ガスの含有量を15容量%以下まで低減させた混合ガス雰囲気下で加熱してもよい。該混合ガスは、通気させるようにしてもよい。
前記焼成工程を経て得られたものは、重合物が一部又は全部架橋して高分子量化したもの、及び/又は、重合物が一部又は全部炭化したものである。
【0054】
焼成工程における加熱は、例えば、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、流動炉、高温焼成炉などの焼成炉を用いて加熱する。
【0055】
第2の実施態様における炭化工程は、焼成工程で得られた焼成物を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃、好ましくは800℃〜1000℃、特に好ましくは850〜990℃の範囲にて、通常、1分間〜24時間程度加熱する方法などが挙げられる。
600℃以上で加熱することにより得られる炭素材料の充填密度が向上する傾向があることから好ましく、3000℃以下で加熱することにより、炭素材料の黒鉛化を抑制する傾向があることから好ましい。
ここで、不活性ガスとは、第1の実施態様と同じ意味を表す。
また、加熱は、昇温しながら行ってもよいし、最高温度や昇温途中の任意の一定温度で保持しながら加熱してもよい。
不活性ガス雰囲気下での加熱の際に、密閉容器の不活性ガス雰囲気下で加熱してもよいし、不活性ガスを通気させてもよい。
【0056】
炭化工程は、第1の実施態様と同様の焼成炉を用いて加熱することが好ましい。
第2の実施態様において炭化工程を焼成炉で行う場合、焼成物を含む、焼成工程で用いた焼成炉を不活性ガス雰囲気に置換した後、600〜3000℃の温度範囲まで昇温させ、該温度で加熱する方法が好ましい。
【0057】
第2の実施態様における炭化工程を経て得られた炭素材料は第1の実施態様と同様に、さらに粉砕してもよい。
【0058】
第1の実施態様及び第2の実施態様などの本発明の製造方法で得られた炭素材料における炭素原子に対する水素原子の原子数比(H/C)は、通常、0.08〜0.25、好ましくは、0.10〜0.25、特に好ましくは、0.12〜0.25である。
炭素材料における炭素含有率(元素分析値)は、80〜98重量%が好ましい。また、炭素材料における窒素含有率(元素分析値)は、0.5〜5重量%であることが好ましく、特に、1〜4重量%であることが好ましい。
【0059】
本発明の製造方法で得られた炭素材料の比表面積は、通常、0〜1000m/gである。
【0060】
本発明の製造方法で得られた炭素材料は、例えば、乾電池、圧電素子用センサー、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池及び燃料電池などの電極用材料;触媒を担持するための担体;クロマトグラフ用担体;吸着剤などに使用することができる。
特に、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等のリチウムイオンを吸蔵放出可能な電極材料に好適である。
【0061】
本発明の電極は、本発明の製造方法で得られた炭素材料を含む電極であり、リチウムイオン二次電池の負極、リチウムイオンキャパシタの負極として好適に用いられる。
以下、本発明の製造方法で得られた炭素材料を含む電極について説明する。
【0062】
本発明の製造方法で得られた炭素材料を含む電極は、通常、電極として成形しやすいように、結合剤などを原料として用いる。
電極の製造方法としては、通常、集電体の上に本発明の本発明の炭素材料及び結合剤等を含む混合物を成形する。具体的には、例えば、本発明の炭素材料及び結合剤等に溶剤を添加した混合スラリーを集電体に、ドクターブレード法などで塗布又は浸漬し乾燥する方法、例えば、本発明の炭素材料及び結合剤等に溶剤を添加して混練、成形し、乾燥して得たシートを集電体表面に導電性接着剤等を介して接合した後にプレス及び熱処理乾燥する方法、例えば、本発明の炭素材料、結合剤及び液状潤滑剤等からなる混合物を集電体上に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、得られたシート状の成形物を一軸又は多軸方向に延伸処理する方法などが挙げられる。
電極をシート状とする場合、その厚みは、通常、5〜1000μm程度である。
【0063】
集電体の材料としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅、金、銀、白金、アルミニウム合金又はステンレス等の金属、例えば、炭素素材又は活性炭繊維に、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、鉛又はこれらの合金をプラズマ溶射又はアーク溶射することによって形成されたもの、例えば、ゴム又はスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)など樹脂に導電剤を分散させた導電性フィルムなどが挙げられる。
集電体の形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチング状若しくはエンボス状であるもの又はこれらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)等が挙げられる。
集電体表面にエッチング処理により凹凸を形成させてもよい。
【0064】
結合剤としては、例えば、フッ素化合物の重合体が挙げられる。フッ素化合物としては、例えば、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−オクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリレート]、パーフルオロアルキル置換アルキル(メタ)アクリレート[例えばパーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート]、パーフルオロオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロドデシルオキシエチル(メタ)アクリレート及びパーフルオロデシルオキシエチル(メタ)アクリレートなど]、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)クロトネート、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)マレート及びフマレート、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)イタコネート、フッ素化アルキル置換オレフィン(炭素数2〜10程度、フッ素原子数1〜17程度)、例えばパーフロオロヘキシルエチレン、炭素数2〜10程度、及びフッ素原子の数1〜20程度の二重結合炭素にフッ素原子が結合したフッ素化オレフィン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン又はヘキサフルオロプロピレンなどが挙げられる。
【0065】
結合剤のその他の例示としては、フッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体の付加重合体が挙げられる。かかる単量体としては、例えば、(シクロ)アルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等];芳香環含有(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等];アルキレングリコールもしくはジアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4)のモノ(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート];(ポリ)グリセリン(重合度1〜4)モノ(メタ)アクリレート;多官能(メタ)アクリレート[例えば、(ポリ)エチレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等]などの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系誘導体[例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等]などの(メタ)アクリルアミド系単量体;(メタ)アクリロニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチルアクリルアミド等のシアノ基含有単量体;スチレン及び炭素数7〜18のスチレン誘導体[例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン及びジビニルベンゼン等]などのスチレン系単量体;炭素数4〜12のアルカジエン[例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等]などのジエン系単量体;カルボン酸(炭素数2〜12)ビニルエステル[例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等]、カルボン酸(炭素数2〜12)(メタ)アリルエステル[例えば、酢酸(メタ)アリル、プロピオン酸(メタ)アリル及びオクタン酸(メタ)アリル等]などのアルケニルエステル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体;炭素数2〜12のモノオレフィン[例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン及び1−ドデセン等]のモノオレフィン類;塩素、臭素又はヨウ素原子含有単量体、塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどのフッ素以外のハロゲン原子含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;ブタジエン、イソプレンなどの共役二重結合含有単量体などが挙げられる。
また、付加重合体として、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体又はエチレン・プロピレン共重合体などの共重合体でもよい。また、カルボン酸ビニルエステル重合体は、ポリビニルアルコールなどのように、部分的又は完全にケン化されていてもよい。
結合体はフッ素化合物とフッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体との共重合体であってもよい。
【0066】
結合剤のその他の例示としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどの多糖類及びその誘導体;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂:ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;石油ピッチ;石炭ピッチなどが挙げられる。
結合剤としては、特に、フッ素化合物の重合体が好ましく、とりわけ、テトラフルオロエチレンの重合体であるポリ弗化ビニリデンが好ましい。
【0067】
結合剤としては複数種の結合剤を使用してもよい。
電極における結合剤の配合量としては、本発明の炭素材料の合計100重量部に対し、通常、0.5〜30重量部程度、好ましくは2〜30重量部程度である。
結合剤に用いられる溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコール若しくはメチルアルコールなどのアルコール類、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、エーテル類又はケトン類などが挙げられる。
結合剤が増粘する場合には、集電体への塗布を容易にするために、可塑剤を使用してもよい。
【0068】
本発明の電極を用いたリチウムイオン二次電池について以下について説明する。リチウムイオン二次電池とは、通常、正極、セパレータ、電解液及び負極を含み、正極及び負極の両極においてリチウムの酸化・還元が行われ、電気エネルギーを貯蔵、放出する電池である。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、負極は前記の本発明の電極であり、正極はリチウム金属又はリチウムを含む金属酸化物である。
【0069】
正極は、通常、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、導電材及び結合剤を含む合剤を集電体上に担持したものである。
リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料の具体例としては、例えば、V、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属を少なくとも1種含むリチウム複合酸化物、リチウム箔などが挙げられる。中でも好ましくは、平均放電電位が高いという点で、コバルト/リチウム複合酸化物、ニッケルとニッケル以外の遷移金属またはアルミを含有するリチウムとの複合酸化物、などのα−NaFeO2型構造を母体とする層状リチウム複合酸化物、リチウムマンガンスピネルなどのスピネル型構造を母体とするリチウム複合酸化物が挙げられる。尚、本特許の炭素材料評価用のリチウムイオン二次電池の正極には、リチウム箔(リチウム金属)を用いた。
正極に含まれる結合剤は前記電極で例示された結合剤と同じものが例示される。
正極に含まれる導電材は、例えば、本発明の炭素材料、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどが挙げられる。導電材として、それぞれ単独で用いてもよいし、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いるといった複合導電材系を選択してもよい。
【0070】
本発明のリチウムイオン電池で用いる電解質溶液としては、例えばリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解質溶液などが挙げられる。リチウム塩としては、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiC(SOCF、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlClなどのうち1種または2種以上の混合物が挙げられる。
リチウム塩として、これらの中でもフッ素を含むLiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、およびLiC(CFSOからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0071】
本発明の電解液で用いる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、または上記の有機溶媒にフッ素置換基を導入したものを用いることができるが、通常はこれらのうちの2種以上を混合して用いる。
【0072】
セパレータは、作用極と対極とを分離し、電解液を保持する役割を担うもので、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持ち絶縁性の膜が用いられる。
セパレータとしては、例えば、ビスコースレーヨン又は天然セルロースなどの抄紙、セルロースやポリエステル等の繊維を抄紙して得られる混抄紙、電解紙、クラフト紙、マニラ紙、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、ガラス繊維、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリエステル、アラミド繊維、ポリブチレンテレフタレート不織布、パラ系全芳香族ポリアミド、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンと6フッ化プロピレンとの共重合体、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂などの不織布又は多孔質膜等が挙げられる。
セパレータとしては、シリカなどのセラミック粉末粒子と前記結合剤とからなる成形物であってもよい。該成形物は通常、作用極及び対極と一体成形される。また、ポリエチレンやポリプロピレンなどを用いたセパレータについては、親水性を向上させるために界面活性剤やシリカ粒子を混合させてもよい。さらに、セパレータには、アセトン等の有機溶媒、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤等が含有されていてもよい。
【0073】
セパレータとして、プロトン伝導型ポリマーを用いてもよい。
セパレータとしては、特に電解紙、ビスコースレーヨン又は天然セルロースの抄紙、クラフト紙、マニラ紙、セルロース又はポリエステルの繊維を抄紙して得られる混抄紙、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、マニラ麻シート、ガラス繊維シート等が好ましい。
セパレータの孔径は、通常、0.01〜10μm程度である。セパレータの厚さは、通常、1〜300μm程度、好ましくは5〜30μm程度である。
セパレータは空孔率の異なる複数のセパレータを積層したものであってもよい。特に、ポリオレフィン多孔質膜とポリエステル樹脂多孔質膜とからなるセパレータが好適である。
【0074】
本発明の電極は、繰り返し使用しても優れた性能を示す。
【0075】
本発明の電極は、リチウムイオンキャパシタの電極に用いることができる。本発明の電極を有するリチウムイオンキャパシタとしては、例えば、正極が活性炭、負極が本発明の電極であり、負極にあらかじめリチウムが担持されているリチウムイオンキャパシタなどが挙げられる。
リチウムイオンキャパシタの電解液は上記リチウムイオン二次電池の電解液と同様のリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解質溶液が好適に用いられる。
また、リチウムイオンキャパシタには、リチウムイオン二次電池で用いられたセパレータが含まれていてもよい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。部、%は、特に断りがない限り、重量基準を意味する。また、1容量部とは水1部が4℃で示す容量を意味する。
(実施例1)
(テトラノルマルプロピルカリックス[4]レゾルシナレーン(以下、PCRAと記すことがある。)を含むメタノール溶液の製造)
フラスコに、窒素気流下でレゾルシノール30部、メタノール88部、濃硫酸7部(レゾルシノール/硫酸=4モル比)を入れ氷冷し、攪拌しながらn-ブチルアルデヒド21.1部を滴下した。滴下終了後得られた溶液を60℃に昇温し、その後同温度で2時間保温した。得られた溶液を室温まで放冷し、PCRA(化合物(I)のRがn−プロピル基、R’が水素原子である化合物に相当。下記式

参照。)
を含むメタノール溶液を得た。
【0077】
(重合工程)
前記PCRAを含むメタノール溶液に、尿素1.0部(尿素/PCRA=0.25モル比)及び20重量%炭酸ナトリウム水溶液54.2部(炭酸ナトリウム/PCRA=1.5モル比)を混合し、さらに37%ホルムアルデヒド水溶液22.1部(ホルムアルデヒド/PCRA=4モル比)を滴下した。滴下終了後、65℃に昇温し、その後、同温度で2時間保温した。保温終了後、室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターを用いて30℃、0.10kPaの条件下、3時間25分溶媒を留去した。留去後、得られた塊状物を遊星ボールミル(500rpm、10分間)にて粉砕し、重合物を含む粉末99.2部を得た。
前記粉末 99.2部を水 396.8部の入った反応容器に移し、60℃で1時間保温することで水洗工程を行った。この操作を計3回繰り返した後、固形の粉末を濾別し、60℃で24時間減圧乾燥によって乾燥工程を行い、乾燥した重合物54.3部を得た。
【0078】
(炭化工程)
前期重合物をロータリーキルン中、窒素ガスを毎分0.1L/gの割合で流通させながら、室温から毎分約5℃の昇温速度で900℃まで昇温し、同温度にて同様に窒素ガスを流通させながら1時間保持し、炭素材料を得た。次いで、ボールミル(メノウ製ボール、28rpm、5分間)で粉砕し、粉末状の炭素材料を得た。
粉末状の炭素材料のBET表面積は6m/g、全細孔容積は、0.01cc/gであった。
ここで、BET比表面積はユアサアイオニクス社製、AUTOSORBを用い、液体窒素温度での窒素吸着等温線から算出される値を用いた。全細孔容積は、前記窒素吸着等温線における相対圧0.95付近の窒素吸着量から算出した。メソ孔容積及びミクロ孔容積は、前記窒素吸着等温線からBJH法を用いて算出した。
【0079】
(水素及び炭素の原子数比、並びに、炭素及び窒素の元素分析値)
前記粉末状の炭素材料をエレメンタール社製CHN自動分析装置(型式:varioEL)にて元素分析を行い、水素及び炭素の原子数比(H/C)を算出したところ0.11であった。また、炭素の元素分析値は83.2%、窒素の元素分析値は0.6%であった。
【0080】
(非水電解液型リチウムイオン二次電池の負極としての評価)
前記炭素材料91部、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)9部(固形分)にN−メチル−2−ピロリドンを適量加えた混合物を混錬した後、ドクターブレード法により厚さ20μmの銅集電体上に塗布し、50℃で2h予備乾燥した。次いで、1.7cm(φ14.5mmの円形)に切断して、電極を作成し、得られた電極を120℃、8時間真空乾燥した。得られた電極には、炭素材料及びPVDFの混合物2.9mgが塗布されていた。真空乾燥後、得られた電極を負極とし、正極としてリチウム箔(φ14.5mmの円形、厚み約300μm)、セパレータとしてニッポン高度紙工業社製TF40-50(φ14.5mmの円形、厚み約50μmのセルロース不織布)、電解液として濃度1モル/リットルのLiPF/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、コイン型電池(CR2032型(外形20mm(内径16mm)×高さ3.2mm)、2極式)を組み立て、初期充放電容量を測定したところ、423mAh/gであった。
ここで、本発明における初期充放電容量は、東洋システム(株) TOSCAT−3100充放電評価装置を用い、前記2極式セルを、0Vに達するまで電流密度60mA/gで定電流充電を行い、0Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が12時間となるように0Vにて定電位充電を行った後、電流密度60mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を意味する。
さらに、電流密度60mA/gで、電池の定電流充電を行い、電圧が0Vに達した後、電流密度60mA/gの定電流で、電圧が0.15Vに達するまで電池の放電を行う充放電サイクルを4回繰り返した。4サイクル目の充放電容量を算出したところ、174mAh/gであった。
【0081】
(実施例2)
(焼成工程)
実施例1で得られた乾燥した重合物をロータリーキルン中、空気を毎分0.05L/gの割合で流通させながら、室温から毎分約3℃の昇温速度で185℃まで昇温し、到達後、ただちに室温まで放冷し、焼成品を得た。
(炭化工程)
空気の流通を止め、キルン内部を窒素ガス置換した後、窒素を毎分0.1L/gの割合で流通させながら、室温から毎分約5℃の昇温速度で900℃まで昇温し、同温度にて同様に窒素を流通させながら1時間保持し、炭素材料を得た。次いで、ボールミル(メノウ製ボール、28rpm、5分間)で粉砕し、粉末状の炭素材料を得た。
評価結果を実施例1とともに表1に示した。
【0082】
(実施例3)
(重合工程)
実施例1と同様にして得られたPCRAを含む溶液に、尿素1.0部(尿素/PCRA=0.25モル比)及びアンモニア水13.9部(NH/PCRA=1モル比)を含む溶液に37%ホルムアルデヒド水溶液(ホルムアルデヒド/PCRA=4モル比)を滴下した。滴下終了後、70℃に昇温し、その後、同温度で7時間保温した。保温終了後、室温まで冷却し、反応溶液をろ過し、重合物を含むウェットケーキ92.6部を得た。
【0083】
(水洗工程及び乾燥工程)
該ウェットケーキを水 370.4部の入った反応容器に移し、60℃で1時間保温した。これをこの操作を計3回繰り返した後、固形分を濾別した後、乾燥工程(60℃×24時間減圧乾燥)を行い、乾燥した重合物54.2部を得た。
【0084】
(焼成工程)
前記の乾燥した重合物を窒素置換されたロータリーキルン中、空気を毎分0.05L/g(乾燥した重合物)の割合で流通させながら、室温から毎分約3℃の昇温速度で185℃まで昇温し、到達後、ただちに室温まで放冷し、焼成品を得た。
(炭化工程)
空気の流通を止め、キルン内部を窒素ガス置換した後、窒素を毎分0.1L/g(焼成品)の割合で流通させながら、室温から毎分約5℃の昇温速度で900℃まで昇温し、同温度にて同様に窒素を流通させながら1時間保持し、炭素材料を得た。次いで、ボールミル(メノウ製ボール、28rpm、5分間)で粉砕し、粉末状の炭素材料を得た。
評価結果を表1に示した。
【0085】
(実施例4)
(重合工程)
実施例1と同様にして得られたPCRAを含む溶液に、グリコールウリル2.4部(PCRAの収率100%としてグリコールウリル/PCRA=0.25モル比)を添加し、続いて25%アンモニア水13.9部(PCRAの収率100%としてNH/PCRA=1モル比)を滴下して、PCRAとグリコールウリルを含むアルカリ性溶液を得た。
続いて、PCRAとグリコールウリルを含むアルカリ性溶液に37%ホルムアルデヒド水溶液を22.1部(PCRAの収率100%としてホルムアルデヒド/PCRA=4モル比)滴下した。滴下終了後、70℃に昇温し、その後、攪拌を行いながら同温度で6時間保温した。保温終了後、室温まで冷却し、反応溶液をろ過し、PCRAとグリコールウリルに由来する構造単位含む重合物83.0部(ウエットケーキ)を得た。
(水洗工程及び乾燥工程)
前記重合物 83.0部(ウエットケーキ)を水 332.0部の入った反応容器に移し、60℃で1時間保温することで水洗工程を行った。この操作を計3回繰り返した後、固形分を濾別し、60℃で24時間減圧乾燥によって乾燥工程を行い、乾燥した重合物56.6部を得た。
【0086】
(焼成工程及び炭化工程)
重合物として前記の乾燥した重合物56.6部を用いる以外、実施例3と同様に行った。結果を表1にまとめた。
【0087】
(実施例5)
(重合工程)
実施例1と同様にして得られたPCRAを含む水溶液に、イミダゾリジノン2.9部部(PCRAの収率100%としてイミダゾリジノン/PCRA=0.5モル比)を添加し、イミダゾリジノンの溶解後、25%アンモニア水13.9部(PCRAの収率100%としてNH/PCRA=1モル比)を滴下して、PCRAとイミダゾリジノンを含むアルカリ性溶液を得た。
続いて、PCRAとイミダゾリジノンを含むアルカリ性溶液に37%ホルムアルデヒド水溶液を22.1部(PCRAの収率100%としてホルムアルデヒド/PCRA=4モル比)滴下した。滴下終了後、70℃に昇温し、その後、攪拌を行いながら同温度で約8時間保温した。保温終了後、室温まで冷却し、酢酸8.21部を滴下した。滴下終了後、70℃に昇温し、その後、さらに同温度で攪拌しながら約8時間保温した。保温終了後、室温まで冷却し、37%ホルムアルデヒド5.6部(PCRAの収率100%としてホルムアルデヒド/PCRA=1.1モル比)、酢酸4.1部を滴下した。再び、70℃に昇温した後、同温度で攪拌しながら6時間保温した。保温終了後、室温まで冷却し、反応溶液をろ過し、重合物を含むウエットケーキ104.2部を得た。
(水洗工程及び乾燥工程)
前記ウエットケーキ104.2部を水 420部の入った反応容器に移し、60℃で1時間保温した。この操作を計3回繰り返して水洗工程終了後、固形分を濾別し、乾燥工程(60℃×24時間減圧乾燥)を行い、乾燥した重合物58.0部を得た。
【0088】
(焼成工程及び炭化工程)
重合物として前記の乾燥した重合物58.0部を用いる以外、実施例3と同様に行った。結果を表1にまとめた。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明により、初期充放電容量が一層向上した、リチウムイオン二次電池などの電極用材料となる炭素材料の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させる重合工程と、
前記重合工程で得られた重合物を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する炭化工程とを含むことを特徴とする炭素材料の製造方法。
【請求項2】
式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させる重合工程と、
前記重合工程で得られた重合物を酸化性ガス雰囲気下で400℃以下にて加熱する焼成工程と、
前記焼成工程で得られた焼成品を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱する炭化工程とを含むことを特徴とする炭素材料の製造方法。
【請求項3】
重合工程が、式(1)で表される化合物、
分子内に少なくとも1個の前記式(2a)で示される2価の基または少なくとも2個の前記式(2b)で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を混合した後、得られた混合物を重合する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
重合工程が、塩基性触媒の存在下に重合する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
重合工程で得られた重合物を水洗する水洗工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
重合工程で得られた重合物を乾燥する乾燥工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
【請求項7】
式(1)で表される化合物におけるR’がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の製造方法。
【請求項8】
式(1)で表される化合物におけるRがいずれも炭素数1〜12のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の製造方法。
【請求項9】
アルデヒド化合物がホルムアルデヒドであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか記載の製造方法で得られた炭素材料を含むことを特徴とする電極。
【請求項11】
請求項10記載の電極を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
請求項10記載の電極を含むことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項13】
式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させて得られた重合物を、
不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱することにより得られる炭素材料。
【請求項14】
式(1)

(式中、Rは独立して、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルホ基(−SOH)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基およびカルバモイル基からなる群から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。R’は独立して、水素原子またはメチル基を表わす。nは3〜7の整数を表わす。)
で表される化合物、
分子内に、少なくとも1個の式(2a)

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。)
で示される2価の基または少なくとも2個の式(2b)

(式中、Xは前記と同じ意味表わし、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。)
で表される2価の基を有する炭素数1〜30の化合物、及び、
アルデヒド化合物を重合させて得られた重合物を、
酸化性ガス雰囲気下で400℃以下にて加熱し、
得られた焼成品を不活性ガス雰囲気下、600℃〜3000℃で加熱することにより得られる炭素材料。
【請求項15】
炭素原子に対する水素原子の原子数比(H/C)が0.08〜0.25であることを特徴とする請求項13又は14記載の炭素材料。
【請求項16】
炭素材料における窒素の含有量が0.5重量%以上であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載の炭素材料。

【公開番号】特開2010−184859(P2010−184859A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6676(P2010−6676)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】