炭素系物質除去方法及び該除去方法を備えた部品等の製造方法・リサイクル方法
【課題】炭素系素材及び炭素系コーティング膜を表面にもつ部品等の所定部位を選択的にかつ効率的に物質除去し、所定の寸法、形状の除去範囲を獲得する。
【解決手段】グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材において、任意に選択した表面部位に、原子状酸素3あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法とする。
【解決手段】グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材において、任意に選択した表面部位に、原子状酸素3あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイト、グラッシー・カーボン、ダイヤモンドなどの炭素系素材(コーティング膜を含む)及び炭素系素材を表面にもつ部品や部材の表面の炭素系物質を、選択的に,かつ所定の寸法、形状まで除去する方法及び該除去方法を備えた部品等の製造方法や部品等のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素系素材の多くは、グラッシー・カーボン、焼結ダイヤモンドなどのように、脆弱あるいは高硬度の材料であり、グラファイトあるいは黒鉛のように機械的な除去方法により所定の形状、寸法を獲得できるものは少数である。又,焼結法などを介して、出発原料より粗い形状、寸法の部材の作成も可能であるが、最終形状寸法への仕上げ、選択的な表面形状・パターンの転写などは、困難あるいはほとんど不可能である。
【0003】
特に最近、工具・金型・機械部品の表面処理あるいは表面改質に利用されているDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜あるいはダイヤモンド膜などを、場所を特定して,選択的に除去したり、所定の形状寸法を付与したり、あるいは所定の形状・パターンを転写したりするには、機械的な物質除去方法や溶液による化学的な物質除去方法では難しい。尚、ここで「所定の形状寸法を付与したり、あるいは所定の形状・パターンを転写したりする」とは、深さ・幅・ピッチ長などの特性寸法を高精度に研削したり、溝パターンあるいは平面フレネルパターンのような機能的に意味のある形状パターンをDLC膜あるいはダイヤモンド膜上に形成することを意味する。
【0004】
さらに,近年注目されている超硬工具基材にダイヤモンドコーティングしたダイヤモンド工具,あるいは各種金属工具基材に焼結ダイヤモンドを接合したダイヤモンド工具では、使用後に残存するダイヤモンド膜あるいは焼結ダイヤモンド部位を除去し、基材を再利用することで、ゼロエミッションに向けて、製造工程の物質循環を高効率化し、コスト低減をはかることが強く求められている。
【0005】
この場合、工具形状寸法が多様であるため、対象とする工具形状に影響されないこと、必要に応じて選択的に物質除去ができること、さらに、超硬基材の過大な損傷を伴わないことなど、解決すべき課題が多く、ダイヤモンド工具の展開の大きな障害となっている。
【0006】
炭素系素材あるいは炭素系コーティング膜の除去技術に関しては、機械的除去法、化学的除去法、プラズマ加工法の3つに大別される。
【0007】
機械的除去法では、特許文献1(特開2003−200350号公開特許公報:特許3997084号特許公報)のように、空気と共に研磨剤を噴出させブラスト処理する方法、あるいは特許文献2(特開2008−30142号公開特許公報)のように、工業用ブラシで機械的研磨をする方法がある。これらの手法は、対象が切削工具被覆などの小面積膜の除去にも長時間の処理を必要とし、その除去速度はきわめて遅い。さらに研磨が、研磨剤を衝突させた部位あるいはブラッシングした部位のみで進むため、均一な研磨・研削をすることは、原理上難しい。
【0008】
ダイヤモンド相などのように化学的に安定な炭素系素材を化学的に除去することは、本質的に困難を伴う。特許文献3(特開2006−247751号公開特許公報)のように、真空焼結炉内の熱処理により直接的に除去する方法、特許文献4(特開2001−295044号公開特許公報)あるいは特許文献5(特開2003−171785号公開特許公報)のように、酸素プラズマ加熱あるいは水素プラズマ加熱で除去すべき被覆工具を温度上昇させ、膜と基材との熱膨張差により生じる熱応力で除去する方法がある。これらの方法では、基材を900°C以上に加熱するため、基材の加熱損傷は避けられず、又加熱−冷却サイクルに必要なエネルギー、処理時間も大となる。
【0009】
他の方法としては、特許文献6(特開平6−48716号公開特許公報)のように、酸素又は水素雰囲気下で紫外領域のエキシマレーザーを用いて欠陥を除去する方法もあるが、すべての被覆を除去することは困難であることに加え、その適用は半導体上のダイヤモンド膜のような平面的なものに限定される。
【0010】
プラズマを用いる方法の代表例が、特許文献7(特開平5−339758号公開特許公報)のように、エッチング処理あるいはアッシング処理による除去である。この場合、被覆工具が受けるエッチング速度にむらが生じ、均一な被覆除去が難しい。特にダイヤモンド結晶膜のように、結晶間がエッチングされやすい場合には、不均一な除去を生じるのみならず、除去すべきダイヤモンド相内にクラックを導入することにもなりかねず、再生すべき基材を損傷させる危険性もはらんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−200350号公開特許公報(特許3997084号)
【特許文献2】特開2008−30142号公開特許公報
【特許文献3】特開2006−247751号公開特許公報
【特許文献4】特開2001−295044号公開特許公報
【特許文献5】特開2003−171785号公開特許公報
【特許文献6】特開平6−48716号公開特許公報
【特許文献7】特開平5−339758号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術(背景技術)のもつ問題点や危険性を解決して、機械的な物質除去処理が困難な脆弱な炭素系素材及び炭素系コーティング膜を表面にもつ部品等の所定部位を選択的にかつ効率的に物質除去し、所定の寸法、形状の除去範囲を獲得することを課題としている。具体的には、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンを活用し、それらを炭素系素材及び炭素系コーティング膜を表面にもつ部品等の所定部位に選択的に付与することにより、それらの構成元素である炭素と酸素との反応を促進させ、化学的に効率よく物質除去する方法及びその方法を備えた部品等の製造方法や部品等のリサイクル方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記問題点を解決するため、第1の発明は、グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材において、任意に選択した表面部位に、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法とする。
【0014】
第2の発明は、第1の発明である炭素系物質除去方法を備えた炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材の製造方法とする。
【0015】
第3の発明は、グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材において、任意に選択した表面部位に,原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法とする。
【0016】
第4の発明は、第3の発明である炭素系物質除去方法を備えた炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材のリサイクル方法とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、機械的な操作を全く含まないことから、脆弱な炭素系素材などの物質除去が可能となった。又、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンのみを、除去対象とする炭素系素材などに付与するため、物質除去の反応場の形状や寸法に制限はなく、小部品から中大型部材まで、物質除去の対象とすることが可能となった。
【0018】
特に、原子状酸素あるいは活性化酸素を用いることで、酸素イオンのエッチングに脆弱な超硬基材でも、ほとんど損傷を与えることなく物質除去ができるものとなった。
【0019】
さらに、付与する原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンのプロセス条件ならびに処理プロセスの温度を制御することにより、物質除去速度を選択的に変化させることも可能となった。
【0020】
本発明は、物質除去において、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンが、炭素系素材あるいは炭素系コーティング膜の表面へ流体力学的に付与され、対象とする素材あるいは部品の形状、寸法によらず除去が化学的に進行するため、一定の速度での均一除去が達成できるものとなった。尚、除去速度は、プロセス条件・プロセス温度などで制御されるため、対象とする炭素系素材などに応じた除去環境を設定できる。
【0021】
マスキング技法を用いて、除去の必要がない部位あるいは除去しない部位を保護することで、炭素系素材などに、所定の形状・パターンでの物質除去ができるものとなった。加えて、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンの付与条件を制御することで、比較的深い物質除去も可能となる。
【0022】
特にグラッシー・カーボンあるいは焼結ダイヤモンドのように、機械的な除去処理が困難な脆弱な材料表面への所定の形状・所定の寸法・パターン転写が可能となった。
【0023】
炭素系素材は、グラファイト、ダイヤモンドなど結晶構造の異なる物質あるいはグラッシー・カーボン、DLC膜などのアモルファスの物質まで多様であるが、本発明では、炭素と原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンの構成元素である酸素との反応を促進させ、化学的に効率よく物質除去を行うため、除去速度は変化するものの、原理的にすべての炭素系素材などの物質除去が可能となる。
【0024】
特に原子状酸素あるいは活性化酸素を用いることで、酸素イオンでは局所的なエッチング効果の懸念のある超硬基材上の炭素系コーティング膜の物質除去を行う。加工時に発生するのは微量な2酸化炭素ガスのみであり、製造時の物質エミッションを最小にしつつ、超硬を基材とする各種ダイヤモンド工具などの効率的なリサイクルを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンを用いた物質除去装置を示す説明図。
【図2】マスキングを用いて選択的に物質除去したグラッシー・カーボン材料表面の外観を示す図。
【図3】グラッシー・カーボン材料の除去深さの変化を示す図。
【図4】グラッシー・カーボン材料における除去速度の変化を示す図。
【図5】マスキングを用いて選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料表面の外観を示す図。
【図6】CVDダイヤモンド膜材料の除去深さを示す図。
【図7】CVDダイヤモンド膜材料における除去速度の変化を示す図。
【図8】超硬基材上のマスキングを用いて選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料表面の外観を示す図。
【図9】超硬基材上の選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の表面形状を示す図。
【図10】マスキングを用いて選択的に物質除去したダイヤモンド工具表面の外観を示す図。
【図11】選択的に物質除去したダイヤモンド工具の表面形状を示す図。
【図12】選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の処理前(0s)と処理後(3000s)との表面性状の比較図。
【図13】選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の処理前(0s)と処理後(3000s)との微細組織の比較図であって、(a)は処理前を示し、(b)は処理後を示す図。
【図14】選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の処理前(0s)と処理後(3000s)との残留ダイヤモンド相の比較図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、炭素系物質除去方法を主たる構成とする。本発明における炭素系物質は、グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含むものである。
【0027】
炭素系物質除去方法が適用されるものは、炭素系物質単体からなる炭素系素材、炭素系物質を含む炭素系素材、それらの炭素系素材からなる部品若しくは部材、上記炭素系物質からなる炭素系コーティング膜又は炭素系コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材などである。
【0028】
本発明の炭素系物質除去方法では、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどを、図1に示すようにチャンバー1内において、所定の流速で、処理する対象の炭素系素材あるいは炭素系膜をコーティングした部材(金型4や工具5)に付与する。原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンは、複数を同時に付与してもよい。またキャリアガスとして、アルゴン、ヘリウムを併用してもよい。図1では、チャンバー1内で原子状酸素発生装置2より発生させた原子状酸素3を炭素系素材あるいは炭素系膜をコーティングした金型4や工具5に付与している。
【0029】
原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどの付与は、任意に選択した表面部位に対して行う。炭素系物質除去の必要のない部位はマスキング技法を用いて保護し、必要部位のみを所定の形状、所定の寸法で除去する。
【0030】
炭素系素材表面あるいは炭素系コーティング膜表面などの炭素系物質除去は、室温で行える。好ましくは、50℃以上処理対象素材の軟化点以下に、処理対象物を加熱して物質除去するとよい。より好ましくは、200℃以上処理対象素材の軟化点以下に、処理対象物を加熱して物質除去するとよい。すなわち、有効温度範囲は室温以上で処理対象素材の軟化点以下である。尚、上記炭素系物質(項目0026で示した物質)の軟化点は、概ね600°C以下である。
【0031】
炭素系素材表面あるいは炭素系コーティング膜表面の物質除去は、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどの発生源である酸素を含むキャリアガスで行う。好ましくは純度80%以上の酸素を含むキャリアガス、より好ましくは純度95%以上の酸素を含むキャリアガスを使用する。
【0032】
炭素系物質除去プロセス時のキャリアガス流量は、10mL(ミリリットル)/min(毎分)程度の低い条件でも炭素系物質除去ができる。好ましくは、10mL/min以上、より好ましくは50mL/minの流量を用いる方がよい。
【0033】
炭素系物質除去プロセス時のチャンバー内の圧力は、1Pa(パスカル)以下の低圧でも物質除去できる。好ましくは1Pa以上、より好ましくは3Pa以上にする方がよい。
【0034】
炭素系物質除去速度は、上記項目0030で示したプロセス温度、上記項目0031〜0033で示したキャリアガス条件に加え、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどを発生する出力条件にも依存する。50W以上の低出力でも炭素系物質除去はできるが、好ましくは200W以上、より好ましくは500W以上の出力で炭素系物質除去を行う方がよい。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。
【0036】
(実施例1:グラッシー・カーボン材料の物質除去)
神港精機製・RIE600を利用し、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、グラッシー・カーボン材料の物質除去を行った。酸素フローに直交するようにグラッシー・カーボン材を設置し、マスキングにより選択的に物質除去し、4つの段差をもつ試料を作成した。具体的には、グラッシー・カーボン材料をマスキングにより、物質除去時間0s(秒)、500s(秒)、1000s(秒)、2000s(秒)とした場合の4つの表面状態が観察できる試料を作成した。
【0037】
図2は物質除去を2000s(秒)行った後のグラッシー・ガーボン材料表面の外観を示す図である。除去前は、平滑面でガラス光沢を示した表面性状であったものが、除去後は消失し、除去による典型的な粗い面が形成されていることがわかる。
【0038】
所定の4段階設定に対応した4つの段差がマスキングにより創出された試料を、実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定した。図3は、4段階の設定に対応した試料の各表面位置の差より求めたデータを示す棒グラフであって、図3中左の棒は、処理時間0s(秒)での表面位置と処理時間500s(秒)後の表面位置の差から処理時間500s(秒)後の除去深さを示すものであり、図3中真中の棒は、処理時間500s(秒)での表面位置と処理時間1000s(秒)後の表面位置の差から処理時間500s(秒)より処理時間1000s(秒)後までの除去深さを示すものであり、図3中右の棒は、処理時間1000s(秒)での表面位置と処理時間2000s(秒)後の表面位置の差から処理時間1000s(秒)より処理時間2000s(秒)後までの除去深さを示すものである。
【0039】
この段差から求めた、所定の時間範囲ごとの物質除去速度の変化を図4に示す。削除時間によらずほぼ一定の物質除去速度が達成されていることがわかる。すなわち、本方法は、除去したグラッシー・カーボンの深さにほぼ無関係に、一定の速度で、炭素系物質除去ができることがわかる。尚、平均の除去速度は、毎分0.22μmであり、0.1mm厚のグラッシー・カーボン・シートでも、7時間程度で、選択的に完全除去できると考えられる。
【0040】
(実施例2:Si基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去)
実施例1において使用した同一の装置を用いて、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、Si基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去を行った。酸素フローに直交するようにCVDダイヤモンド膜材料を設置し、マスキングにより選択的に物質除去し、4つの段差をもつ試料を作成した。具体的には、CVDダイヤモンド膜材料をマスキングにより、物質除去時間0s(秒)、1000s(秒)、2000s(秒)、3000s(秒)とした場合の4つの表面状態が観察できる試料を作成した。
【0041】
図5に物質除去を3000s(秒)行った後のCVDダイヤモンド膜材料表面の外観を示す。除去前には灰色光沢のあった面は、段階的に黒色に変化し、光沢を喪失した面となった。
【0042】
所定の4段階設定に対応した4つの段差がマスキングにより創出された試料を、 実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定した。図6は、4段階の設定に対応した試料の各表面位置の差より求めたデータを示す棒グラフであって、図6中左の棒は、処理時間0s(秒)での表面位置と処理時間1000s(秒)後の表面位置の差から1000s(秒)後の除去深さを示すものであり、図6中真中の棒は、処理時間1000s(秒)での表面位置と処理時間2000s(秒)後の表面位置の差から処理時間1000s(秒)より処理時間2000s(秒)後までの除去深さを示すものであり、図6中右の棒は、処理時間2000s(秒)での表面位置と処理時間3000s(秒)後の表面位置の差から処理時間2000s(秒)より処理時間3000s(秒)後までの除去深さを示すものである。
【0043】
この段差から求めた、所定の時間範囲ごとの物質除去速度変化を図7に示す。削除時間によらずほぼ一定の物質除去速度が達成されていることがわかる。すなわち、本方法は、除去したCVDダイヤモンド膜材料の深さにほぼ無関係に、一定の速度で、CVDダイヤモンド膜材料を物質除去できることがわかる。尚、平均の除去速度は、毎分0.075μmであり、通常の10μm厚のCVDダイヤモンド膜材料でも、2時間程度で、選択的に完全除去できると考えられる。
【0044】
(実施例3:超硬基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去)
実施例1及び実施例2において使用した同一の装置を用いて、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、超硬基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去を行った。酸素フローに直交するようにCVDダイヤモンド膜材料を設置し、マスキングにより試料表面の半分を保護し、本方法による物質除去の進行を測定した。
【0045】
図8に物質除去を3000s(秒)行った後の試料表面の外観を示す。マスキングした面(図8中右側の面)は、除去前と同様に光沢面を維持しているが、非マスキング面(図8中左側の面)、すなわち物質除去したCVDダイヤモンド膜材料は黒色化し、光沢が全く喪失していることがわかる。
【0046】
実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定すると、図9に示すように、除去面は一様に物質除去されていることがわかる。マスキング面と非マスキング面との段差を測定し、物質除去速度を求めると、平均で毎分0.063μm、最大で毎分0.15μmとなり、実施例2で行ったSi基材上にコーティングしたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去速度と同等であることがわかった。これより本方法では、基材の材質に関係なく、CVDダイヤモンド膜材料の物質除去を高速で行うことができる。
【0047】
(実施例4:ダイヤモンドバイトを装着した工具での物質除去)
本方法の実用性を評価するため、市販されているダイヤモンドバイトを装着した超硬工具を用いて、実施例1〜実施例3において使用した同一の装置を用いて、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、物質除去を行った。酸素フローに直交するように、ダイヤモンドバイトを装着した工具試料を設置し、マスキングにより試料表面の半分を保護し、本方法による物質除去の進行を測定した。
【0048】
図10に物質除去を3000s(秒)行った後の試料(ダイヤモンド工具)表面の外観を示す。マスキングした面(図10中下部)は、除去前と同様にダイヤモンドバイトは光沢面を維持しているが、非マスキング面(図10中上部3角形部分)、すなわち物質除去したダイヤモンドバイトは黒色化し、光沢が全く喪失していることがわかる。
【0049】
実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定すると、図11に示すように、除去面は一様に物質除去されていることがわかる。マスキング面と非マスキング面との段差を測定し、物質除去速度を求めると、毎分0.009μm(毎時0.53μm)となった。図11において、マスキング面と非マスキング面との境界では、除去深さが深いことから、原子状酸素あるいは酸素イオンのフラックスを高めると急速に除去速度が向上することも明らかになった。
【0050】
(実施例5:除去処理前後のCVDダイヤモンドコーティング膜材料の表面性状比較)
前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法において、マスキング部位(除去効果なし:0秒)と非マスキング部位(3000秒)における表面性状について、高精度表面粗さ測定装置で評価した。
【0051】
図12に、非マスキング部位(3000秒)とマスキング部位(0秒)との表面性状を比較する。除去処理により均一にダイヤモンド相が除去されており、その除去深さは約5μm見積もられる。これを前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法の平均除去速度(毎分0.063μm)、最大除去速度(毎分0.15μm)と比較すると、良好に一致する。このことから、比較的広い面積でほぼ均一にダイヤモンド相が除去されていることがわかる。
【0052】
(実施例6:除去処理前後のCVDダイヤモンドコーティング膜材料の微細組織比較)
前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法において、マスキング部位(除去効果なし:0秒)と非マスキング部位(3000秒)における微細組織についてSEMで評価した。
【0053】
図13に、非マスキング部位(3000秒)とマスキング部位(0秒)との微細組織を比較する。処理前には、ダイヤモンド膜成長特有の凸凹の結晶相が観察されるが、これらが除去処理により平坦化され、ダイヤモンド結晶レベルでも均一に物質除去が進んでいることがわかる。さらに処理後においてダイヤモンド粒界に優先的にエッチングされた痕跡も見えないことから、超硬素材への損傷も少ないと想定される。
【0054】
(実施例7:除去処理前後のCVDダイヤモンドコーティング膜材料のダイヤモンド相の比較)
ダイヤモンド相のみが除去され、基材の超硬が健全性を保持しているのであれば、膜厚減少によりダイヤモンド固有のラマンスペクトルピークは単調に減少のみが生じ、他の波数域には全く変化はないと考えられる。前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法において、マスキング部位(除去効果なし:0秒)と非マスキング部位(3000秒)におけるラマンスペクトルを測定すると、図14において除去処理に変化しているのは、ダイヤモンド相固有のピーク位置(1320cm−1近傍)でのピーク高の減少のみである。このことからも、本発明の物質除去法によるダイヤモンド相の均一除去能が実証された。
【符号の説明】
【0055】
1・・・チャンバー
2・・・原子状酸素発生装置
3・・・原子状酸素
4・・・金型
5・・・工具
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイト、グラッシー・カーボン、ダイヤモンドなどの炭素系素材(コーティング膜を含む)及び炭素系素材を表面にもつ部品や部材の表面の炭素系物質を、選択的に,かつ所定の寸法、形状まで除去する方法及び該除去方法を備えた部品等の製造方法や部品等のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素系素材の多くは、グラッシー・カーボン、焼結ダイヤモンドなどのように、脆弱あるいは高硬度の材料であり、グラファイトあるいは黒鉛のように機械的な除去方法により所定の形状、寸法を獲得できるものは少数である。又,焼結法などを介して、出発原料より粗い形状、寸法の部材の作成も可能であるが、最終形状寸法への仕上げ、選択的な表面形状・パターンの転写などは、困難あるいはほとんど不可能である。
【0003】
特に最近、工具・金型・機械部品の表面処理あるいは表面改質に利用されているDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜あるいはダイヤモンド膜などを、場所を特定して,選択的に除去したり、所定の形状寸法を付与したり、あるいは所定の形状・パターンを転写したりするには、機械的な物質除去方法や溶液による化学的な物質除去方法では難しい。尚、ここで「所定の形状寸法を付与したり、あるいは所定の形状・パターンを転写したりする」とは、深さ・幅・ピッチ長などの特性寸法を高精度に研削したり、溝パターンあるいは平面フレネルパターンのような機能的に意味のある形状パターンをDLC膜あるいはダイヤモンド膜上に形成することを意味する。
【0004】
さらに,近年注目されている超硬工具基材にダイヤモンドコーティングしたダイヤモンド工具,あるいは各種金属工具基材に焼結ダイヤモンドを接合したダイヤモンド工具では、使用後に残存するダイヤモンド膜あるいは焼結ダイヤモンド部位を除去し、基材を再利用することで、ゼロエミッションに向けて、製造工程の物質循環を高効率化し、コスト低減をはかることが強く求められている。
【0005】
この場合、工具形状寸法が多様であるため、対象とする工具形状に影響されないこと、必要に応じて選択的に物質除去ができること、さらに、超硬基材の過大な損傷を伴わないことなど、解決すべき課題が多く、ダイヤモンド工具の展開の大きな障害となっている。
【0006】
炭素系素材あるいは炭素系コーティング膜の除去技術に関しては、機械的除去法、化学的除去法、プラズマ加工法の3つに大別される。
【0007】
機械的除去法では、特許文献1(特開2003−200350号公開特許公報:特許3997084号特許公報)のように、空気と共に研磨剤を噴出させブラスト処理する方法、あるいは特許文献2(特開2008−30142号公開特許公報)のように、工業用ブラシで機械的研磨をする方法がある。これらの手法は、対象が切削工具被覆などの小面積膜の除去にも長時間の処理を必要とし、その除去速度はきわめて遅い。さらに研磨が、研磨剤を衝突させた部位あるいはブラッシングした部位のみで進むため、均一な研磨・研削をすることは、原理上難しい。
【0008】
ダイヤモンド相などのように化学的に安定な炭素系素材を化学的に除去することは、本質的に困難を伴う。特許文献3(特開2006−247751号公開特許公報)のように、真空焼結炉内の熱処理により直接的に除去する方法、特許文献4(特開2001−295044号公開特許公報)あるいは特許文献5(特開2003−171785号公開特許公報)のように、酸素プラズマ加熱あるいは水素プラズマ加熱で除去すべき被覆工具を温度上昇させ、膜と基材との熱膨張差により生じる熱応力で除去する方法がある。これらの方法では、基材を900°C以上に加熱するため、基材の加熱損傷は避けられず、又加熱−冷却サイクルに必要なエネルギー、処理時間も大となる。
【0009】
他の方法としては、特許文献6(特開平6−48716号公開特許公報)のように、酸素又は水素雰囲気下で紫外領域のエキシマレーザーを用いて欠陥を除去する方法もあるが、すべての被覆を除去することは困難であることに加え、その適用は半導体上のダイヤモンド膜のような平面的なものに限定される。
【0010】
プラズマを用いる方法の代表例が、特許文献7(特開平5−339758号公開特許公報)のように、エッチング処理あるいはアッシング処理による除去である。この場合、被覆工具が受けるエッチング速度にむらが生じ、均一な被覆除去が難しい。特にダイヤモンド結晶膜のように、結晶間がエッチングされやすい場合には、不均一な除去を生じるのみならず、除去すべきダイヤモンド相内にクラックを導入することにもなりかねず、再生すべき基材を損傷させる危険性もはらんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−200350号公開特許公報(特許3997084号)
【特許文献2】特開2008−30142号公開特許公報
【特許文献3】特開2006−247751号公開特許公報
【特許文献4】特開2001−295044号公開特許公報
【特許文献5】特開2003−171785号公開特許公報
【特許文献6】特開平6−48716号公開特許公報
【特許文献7】特開平5−339758号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術(背景技術)のもつ問題点や危険性を解決して、機械的な物質除去処理が困難な脆弱な炭素系素材及び炭素系コーティング膜を表面にもつ部品等の所定部位を選択的にかつ効率的に物質除去し、所定の寸法、形状の除去範囲を獲得することを課題としている。具体的には、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンを活用し、それらを炭素系素材及び炭素系コーティング膜を表面にもつ部品等の所定部位に選択的に付与することにより、それらの構成元素である炭素と酸素との反応を促進させ、化学的に効率よく物質除去する方法及びその方法を備えた部品等の製造方法や部品等のリサイクル方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記問題点を解決するため、第1の発明は、グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材において、任意に選択した表面部位に、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法とする。
【0014】
第2の発明は、第1の発明である炭素系物質除去方法を備えた炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材の製造方法とする。
【0015】
第3の発明は、グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材において、任意に選択した表面部位に,原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法とする。
【0016】
第4の発明は、第3の発明である炭素系物質除去方法を備えた炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材のリサイクル方法とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、機械的な操作を全く含まないことから、脆弱な炭素系素材などの物質除去が可能となった。又、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンのみを、除去対象とする炭素系素材などに付与するため、物質除去の反応場の形状や寸法に制限はなく、小部品から中大型部材まで、物質除去の対象とすることが可能となった。
【0018】
特に、原子状酸素あるいは活性化酸素を用いることで、酸素イオンのエッチングに脆弱な超硬基材でも、ほとんど損傷を与えることなく物質除去ができるものとなった。
【0019】
さらに、付与する原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンのプロセス条件ならびに処理プロセスの温度を制御することにより、物質除去速度を選択的に変化させることも可能となった。
【0020】
本発明は、物質除去において、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンが、炭素系素材あるいは炭素系コーティング膜の表面へ流体力学的に付与され、対象とする素材あるいは部品の形状、寸法によらず除去が化学的に進行するため、一定の速度での均一除去が達成できるものとなった。尚、除去速度は、プロセス条件・プロセス温度などで制御されるため、対象とする炭素系素材などに応じた除去環境を設定できる。
【0021】
マスキング技法を用いて、除去の必要がない部位あるいは除去しない部位を保護することで、炭素系素材などに、所定の形状・パターンでの物質除去ができるものとなった。加えて、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンの付与条件を制御することで、比較的深い物質除去も可能となる。
【0022】
特にグラッシー・カーボンあるいは焼結ダイヤモンドのように、機械的な除去処理が困難な脆弱な材料表面への所定の形状・所定の寸法・パターン転写が可能となった。
【0023】
炭素系素材は、グラファイト、ダイヤモンドなど結晶構造の異なる物質あるいはグラッシー・カーボン、DLC膜などのアモルファスの物質まで多様であるが、本発明では、炭素と原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンの構成元素である酸素との反応を促進させ、化学的に効率よく物質除去を行うため、除去速度は変化するものの、原理的にすべての炭素系素材などの物質除去が可能となる。
【0024】
特に原子状酸素あるいは活性化酸素を用いることで、酸素イオンでは局所的なエッチング効果の懸念のある超硬基材上の炭素系コーティング膜の物質除去を行う。加工時に発生するのは微量な2酸化炭素ガスのみであり、製造時の物質エミッションを最小にしつつ、超硬を基材とする各種ダイヤモンド工具などの効率的なリサイクルを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンを用いた物質除去装置を示す説明図。
【図2】マスキングを用いて選択的に物質除去したグラッシー・カーボン材料表面の外観を示す図。
【図3】グラッシー・カーボン材料の除去深さの変化を示す図。
【図4】グラッシー・カーボン材料における除去速度の変化を示す図。
【図5】マスキングを用いて選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料表面の外観を示す図。
【図6】CVDダイヤモンド膜材料の除去深さを示す図。
【図7】CVDダイヤモンド膜材料における除去速度の変化を示す図。
【図8】超硬基材上のマスキングを用いて選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料表面の外観を示す図。
【図9】超硬基材上の選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の表面形状を示す図。
【図10】マスキングを用いて選択的に物質除去したダイヤモンド工具表面の外観を示す図。
【図11】選択的に物質除去したダイヤモンド工具の表面形状を示す図。
【図12】選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の処理前(0s)と処理後(3000s)との表面性状の比較図。
【図13】選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の処理前(0s)と処理後(3000s)との微細組織の比較図であって、(a)は処理前を示し、(b)は処理後を示す図。
【図14】選択的に物質除去したCVDダイヤモンド膜材料の処理前(0s)と処理後(3000s)との残留ダイヤモンド相の比較図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、炭素系物質除去方法を主たる構成とする。本発明における炭素系物質は、グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含むものである。
【0027】
炭素系物質除去方法が適用されるものは、炭素系物質単体からなる炭素系素材、炭素系物質を含む炭素系素材、それらの炭素系素材からなる部品若しくは部材、上記炭素系物質からなる炭素系コーティング膜又は炭素系コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材などである。
【0028】
本発明の炭素系物質除去方法では、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどを、図1に示すようにチャンバー1内において、所定の流速で、処理する対象の炭素系素材あるいは炭素系膜をコーティングした部材(金型4や工具5)に付与する。原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンは、複数を同時に付与してもよい。またキャリアガスとして、アルゴン、ヘリウムを併用してもよい。図1では、チャンバー1内で原子状酸素発生装置2より発生させた原子状酸素3を炭素系素材あるいは炭素系膜をコーティングした金型4や工具5に付与している。
【0029】
原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどの付与は、任意に選択した表面部位に対して行う。炭素系物質除去の必要のない部位はマスキング技法を用いて保護し、必要部位のみを所定の形状、所定の寸法で除去する。
【0030】
炭素系素材表面あるいは炭素系コーティング膜表面などの炭素系物質除去は、室温で行える。好ましくは、50℃以上処理対象素材の軟化点以下に、処理対象物を加熱して物質除去するとよい。より好ましくは、200℃以上処理対象素材の軟化点以下に、処理対象物を加熱して物質除去するとよい。すなわち、有効温度範囲は室温以上で処理対象素材の軟化点以下である。尚、上記炭素系物質(項目0026で示した物質)の軟化点は、概ね600°C以下である。
【0031】
炭素系素材表面あるいは炭素系コーティング膜表面の物質除去は、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどの発生源である酸素を含むキャリアガスで行う。好ましくは純度80%以上の酸素を含むキャリアガス、より好ましくは純度95%以上の酸素を含むキャリアガスを使用する。
【0032】
炭素系物質除去プロセス時のキャリアガス流量は、10mL(ミリリットル)/min(毎分)程度の低い条件でも炭素系物質除去ができる。好ましくは、10mL/min以上、より好ましくは50mL/minの流量を用いる方がよい。
【0033】
炭素系物質除去プロセス時のチャンバー内の圧力は、1Pa(パスカル)以下の低圧でも物質除去できる。好ましくは1Pa以上、より好ましくは3Pa以上にする方がよい。
【0034】
炭素系物質除去速度は、上記項目0030で示したプロセス温度、上記項目0031〜0033で示したキャリアガス条件に加え、原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素イオンなどを発生する出力条件にも依存する。50W以上の低出力でも炭素系物質除去はできるが、好ましくは200W以上、より好ましくは500W以上の出力で炭素系物質除去を行う方がよい。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。
【0036】
(実施例1:グラッシー・カーボン材料の物質除去)
神港精機製・RIE600を利用し、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、グラッシー・カーボン材料の物質除去を行った。酸素フローに直交するようにグラッシー・カーボン材を設置し、マスキングにより選択的に物質除去し、4つの段差をもつ試料を作成した。具体的には、グラッシー・カーボン材料をマスキングにより、物質除去時間0s(秒)、500s(秒)、1000s(秒)、2000s(秒)とした場合の4つの表面状態が観察できる試料を作成した。
【0037】
図2は物質除去を2000s(秒)行った後のグラッシー・ガーボン材料表面の外観を示す図である。除去前は、平滑面でガラス光沢を示した表面性状であったものが、除去後は消失し、除去による典型的な粗い面が形成されていることがわかる。
【0038】
所定の4段階設定に対応した4つの段差がマスキングにより創出された試料を、実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定した。図3は、4段階の設定に対応した試料の各表面位置の差より求めたデータを示す棒グラフであって、図3中左の棒は、処理時間0s(秒)での表面位置と処理時間500s(秒)後の表面位置の差から処理時間500s(秒)後の除去深さを示すものであり、図3中真中の棒は、処理時間500s(秒)での表面位置と処理時間1000s(秒)後の表面位置の差から処理時間500s(秒)より処理時間1000s(秒)後までの除去深さを示すものであり、図3中右の棒は、処理時間1000s(秒)での表面位置と処理時間2000s(秒)後の表面位置の差から処理時間1000s(秒)より処理時間2000s(秒)後までの除去深さを示すものである。
【0039】
この段差から求めた、所定の時間範囲ごとの物質除去速度の変化を図4に示す。削除時間によらずほぼ一定の物質除去速度が達成されていることがわかる。すなわち、本方法は、除去したグラッシー・カーボンの深さにほぼ無関係に、一定の速度で、炭素系物質除去ができることがわかる。尚、平均の除去速度は、毎分0.22μmであり、0.1mm厚のグラッシー・カーボン・シートでも、7時間程度で、選択的に完全除去できると考えられる。
【0040】
(実施例2:Si基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去)
実施例1において使用した同一の装置を用いて、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、Si基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去を行った。酸素フローに直交するようにCVDダイヤモンド膜材料を設置し、マスキングにより選択的に物質除去し、4つの段差をもつ試料を作成した。具体的には、CVDダイヤモンド膜材料をマスキングにより、物質除去時間0s(秒)、1000s(秒)、2000s(秒)、3000s(秒)とした場合の4つの表面状態が観察できる試料を作成した。
【0041】
図5に物質除去を3000s(秒)行った後のCVDダイヤモンド膜材料表面の外観を示す。除去前には灰色光沢のあった面は、段階的に黒色に変化し、光沢を喪失した面となった。
【0042】
所定の4段階設定に対応した4つの段差がマスキングにより創出された試料を、 実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定した。図6は、4段階の設定に対応した試料の各表面位置の差より求めたデータを示す棒グラフであって、図6中左の棒は、処理時間0s(秒)での表面位置と処理時間1000s(秒)後の表面位置の差から1000s(秒)後の除去深さを示すものであり、図6中真中の棒は、処理時間1000s(秒)での表面位置と処理時間2000s(秒)後の表面位置の差から処理時間1000s(秒)より処理時間2000s(秒)後までの除去深さを示すものであり、図6中右の棒は、処理時間2000s(秒)での表面位置と処理時間3000s(秒)後の表面位置の差から処理時間2000s(秒)より処理時間3000s(秒)後までの除去深さを示すものである。
【0043】
この段差から求めた、所定の時間範囲ごとの物質除去速度変化を図7に示す。削除時間によらずほぼ一定の物質除去速度が達成されていることがわかる。すなわち、本方法は、除去したCVDダイヤモンド膜材料の深さにほぼ無関係に、一定の速度で、CVDダイヤモンド膜材料を物質除去できることがわかる。尚、平均の除去速度は、毎分0.075μmであり、通常の10μm厚のCVDダイヤモンド膜材料でも、2時間程度で、選択的に完全除去できると考えられる。
【0044】
(実施例3:超硬基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去)
実施例1及び実施例2において使用した同一の装置を用いて、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、超硬基材上にコーティングされたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去を行った。酸素フローに直交するようにCVDダイヤモンド膜材料を設置し、マスキングにより試料表面の半分を保護し、本方法による物質除去の進行を測定した。
【0045】
図8に物質除去を3000s(秒)行った後の試料表面の外観を示す。マスキングした面(図8中右側の面)は、除去前と同様に光沢面を維持しているが、非マスキング面(図8中左側の面)、すなわち物質除去したCVDダイヤモンド膜材料は黒色化し、光沢が全く喪失していることがわかる。
【0046】
実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定すると、図9に示すように、除去面は一様に物質除去されていることがわかる。マスキング面と非マスキング面との段差を測定し、物質除去速度を求めると、平均で毎分0.063μm、最大で毎分0.15μmとなり、実施例2で行ったSi基材上にコーティングしたCVDダイヤモンド膜材料の物質除去速度と同等であることがわかった。これより本方法では、基材の材質に関係なく、CVDダイヤモンド膜材料の物質除去を高速で行うことができる。
【0047】
(実施例4:ダイヤモンドバイトを装着した工具での物質除去)
本方法の実用性を評価するため、市販されているダイヤモンドバイトを装着した超硬工具を用いて、実施例1〜実施例3において使用した同一の装置を用いて、酸素イオンならびに原子状酸素を発生させ、出力600W、酸素流量100mL/min、5Paの条件で、物質除去を行った。酸素フローに直交するように、ダイヤモンドバイトを装着した工具試料を設置し、マスキングにより試料表面の半分を保護し、本方法による物質除去の進行を測定した。
【0048】
図10に物質除去を3000s(秒)行った後の試料(ダイヤモンド工具)表面の外観を示す。マスキングした面(図10中下部)は、除去前と同様にダイヤモンドバイトは光沢面を維持しているが、非マスキング面(図10中上部3角形部分)、すなわち物質除去したダイヤモンドバイトは黒色化し、光沢が全く喪失していることがわかる。
【0049】
実際、高精度微細形状測定機(SURFCORDER/ET4000L、小坂研究所製)で測定すると、図11に示すように、除去面は一様に物質除去されていることがわかる。マスキング面と非マスキング面との段差を測定し、物質除去速度を求めると、毎分0.009μm(毎時0.53μm)となった。図11において、マスキング面と非マスキング面との境界では、除去深さが深いことから、原子状酸素あるいは酸素イオンのフラックスを高めると急速に除去速度が向上することも明らかになった。
【0050】
(実施例5:除去処理前後のCVDダイヤモンドコーティング膜材料の表面性状比較)
前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法において、マスキング部位(除去効果なし:0秒)と非マスキング部位(3000秒)における表面性状について、高精度表面粗さ測定装置で評価した。
【0051】
図12に、非マスキング部位(3000秒)とマスキング部位(0秒)との表面性状を比較する。除去処理により均一にダイヤモンド相が除去されており、その除去深さは約5μm見積もられる。これを前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法の平均除去速度(毎分0.063μm)、最大除去速度(毎分0.15μm)と比較すると、良好に一致する。このことから、比較的広い面積でほぼ均一にダイヤモンド相が除去されていることがわかる。
【0052】
(実施例6:除去処理前後のCVDダイヤモンドコーティング膜材料の微細組織比較)
前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法において、マスキング部位(除去効果なし:0秒)と非マスキング部位(3000秒)における微細組織についてSEMで評価した。
【0053】
図13に、非マスキング部位(3000秒)とマスキング部位(0秒)との微細組織を比較する。処理前には、ダイヤモンド膜成長特有の凸凹の結晶相が観察されるが、これらが除去処理により平坦化され、ダイヤモンド結晶レベルでも均一に物質除去が進んでいることがわかる。さらに処理後においてダイヤモンド粒界に優先的にエッチングされた痕跡も見えないことから、超硬素材への損傷も少ないと想定される。
【0054】
(実施例7:除去処理前後のCVDダイヤモンドコーティング膜材料のダイヤモンド相の比較)
ダイヤモンド相のみが除去され、基材の超硬が健全性を保持しているのであれば、膜厚減少によりダイヤモンド固有のラマンスペクトルピークは単調に減少のみが生じ、他の波数域には全く変化はないと考えられる。前記項目0044〜0046記載の実施例3の物質除去方法において、マスキング部位(除去効果なし:0秒)と非マスキング部位(3000秒)におけるラマンスペクトルを測定すると、図14において除去処理に変化しているのは、ダイヤモンド相固有のピーク位置(1320cm−1近傍)でのピーク高の減少のみである。このことからも、本発明の物質除去法によるダイヤモンド相の均一除去能が実証された。
【符号の説明】
【0055】
1・・・チャンバー
2・・・原子状酸素発生装置
3・・・原子状酸素
4・・・金型
5・・・工具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む
炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材において、
任意に選択した表面部位に、
原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、
所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素系物質除去方法を備えた炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材の製造方法。
【請求項3】
グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む
炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材において、
任意に選択した表面部位に,
原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、
所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法。
【請求項4】
請求項3に記載の炭素系物質除去方法を備えた炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材のリサイクル方法。
【請求項1】
グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む
炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材において、
任意に選択した表面部位に、
原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、
所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素系物質除去方法を備えた炭素系素材又はそれらの炭素系素材からなる部品若しくは部材の製造方法。
【請求項3】
グラファイト、グラッシー・カーボン、アモルファス・カーボン(ダイヤモンド・ライク・カーボンを含む)、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、焼結ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれか又はそれを含む
炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材において、
任意に選択した表面部位に,
原子状酸素あるいは活性化酸素あるいは酸素系イオンのいずれか一つ又は複数を同時に、室温以上で処理対象素材の軟化点以下の温度のもとで付与することにより、
所定の寸法、形状にまで,上記任意に選択した表面部位の上記炭素系物質を除去する炭素系物質除去方法。
【請求項4】
請求項3に記載の炭素系物質除去方法を備えた炭素系コーティング膜又は該コーティング膜を表面にもつ部品若しくは部材のリサイクル方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−178616(P2011−178616A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45110(P2010−45110)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(501133236)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(501133236)
【Fターム(参考)】
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