説明

炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法

【課題】シリカのマトリックス中に比較的多くの炭素繊維を均一に分散した炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素繊維とシリカとを含む炭素繊維−シリカ複合体の製造方法であって、少なくともアルコキシシラン、水および酸を含むゾル溶液に、炭素繊維を分散させ、かつ当該ゾル溶液を半ゲル化させる分散・半ゲル化工程(ステップS101、ステップS102)と、分散・半ゲル化工程(ステップS101、ステップS102)にて得られた混合物のゲル化を促進させるゲル化工程(ステップS103)と、ゲル化工程(ステップS103)により得られたゲルを加熱する加熱工程(ステップS104)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ材料は耐酸化性、電気絶縁性および光学的性質等に優れていることから、その特性を生かして、多くの分野で利用されている。近年、シリカ材料の微細構造制御を行うことによって、より均質で、高性能の新規複合体を開発することが検討されている。例えば、多孔質ガラス体を、水酸基と反応するカーボンを含むシリコン化合物と反応させた後、焼成して、緻密なシリカ複合体を製造する方法が報告されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、ゾル・ゲル方法を利用して、シリカ材料と炭素繊維を複合する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
炭素繊維は、電気伝導性、熱伝導性、耐熱性、化学的安定性および剛性に優れた繊維である。このため、樹脂、金属およびセラミックスへのフィラー材、として、極めて有用な繊維である。シリカ材料と炭素繊維を複合化することにより、シリカ材料の特性を著しく損なうことなく、炭素繊維の特性を付加し、さらには、シリカ材料若しくは炭素繊維単体では得られない特性を得ることが期待できる。
【特許文献1】特開平3−126638号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特表平10−511889号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の製造方法により得られるシリカ複合体には、次のような問題がある。特許文献1に開示されるカーボンを含むシリカ複合体の場合には、当該カーボンを、シリカ中にわずかに残留する揮発性物質の炭化によって得ているため、シリカ複合体中のカーボン含有量はわずかであり、電気伝導性および熱伝導性を大きく改善することはできないという問題がある。また、製造過程中に高温処理が必要であるため、大量の熱エネルギーが必要とされる。このことから、製造工程が複雑となり、もって製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示される炭素繊維−シリカ複合体の場合には、用いられる炭素繊維の表面の疎水性が大きく、炭素繊維は、シリカゾルの溶液中に分散しにくく、炭素繊維同士が凝集してしまう。したがって、得られた炭素繊維−シリカ複合体は、炭素繊維の凝集体とシリカとを複合した形態の複合体に過ぎない。近年、ミクロンオーダの直径を有する炭素繊維よりもさらに径の小さい炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、以後、代表して、「カーボンナノチューブ:CNT」という。)が注目されている。CNTは、直径0.4〜200nm、長さ0.5〜100μmの高アスペクト比を有する極細の繊維であり、一層のグラフェンシートのみから構成される単層CNT(Single−Walled Carbon Nano Tube: SWCNT)と複数層のグラフェンシートが同心円筒状に存在する多層CNT(Multi−Walled Carbon Nano Tube: MWCNT)に大別される。CNTを用いる場合、ミクロンオーダの炭素繊維よりもさらに凝集しやすくなるので、各CNTを均一に分散することは難しい。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、シリカのマトリックス中に比較的多くの炭素繊維を均一に分散した炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、炭素繊維とシリカとを含む炭素繊維−シリカ複合体の製造方法であって、少なくともアルコキシシラン、水および酸を含むゾル溶液に、炭素繊維を分散させ、かつ当該ゾル溶液を半ゲル化させる分散・半ゲル化工程と、その分散・半ゲル化工程にて得られた混合物のゲル化を促進させるゲル化工程と、そのゲル化工程により得られたゲルを加熱する加熱工程とを含む炭素繊維−シリカ複合体の製造方法としている。アルコキシシランおよび酸を用いたゾル・ゲル法を採用し、炭素繊維を、そのゾル溶液に分散させているため、炭素繊維同士の凝集を低減し、均一に分散させることが可能となる。その結果、均一性を有する炭素繊維−シリカ複合体が得られる。
【0009】
また、別の本発明は、先の発明における分散・半ゲル化工程の前に、アルコキシシラン、水および酸を混合してゾル溶液を作製するゾル溶液作製工程を行い、分散・半ゲル化工程では、炭素繊維をそのゾル溶液に加えて分散させると同時に、ゾル溶液を半ゲル化させる炭素繊維−シリカ複合体の製造方法としている。このように、十分に混合したゾル溶液中に炭素繊維を混ぜるので、炭素繊維をゾル溶液中により均一分散することができる。
【0010】
また、別の本発明は、先の各発明における分散・半ゲル化工程において、超音波分散処理を施す炭素繊維−シリカ複合体の製造方法としている。このように超音波分散処理を施すことにより、凝集している炭素繊維を効果的にほぐすことができると同時に、ゾル溶液を半ゲル化することにより炭素繊維の再凝集を防ぐことができる。したがって、シリカのマトリックス中に炭素繊維をより均一分散させることができ、この結果、炭素繊維の分散性がきわめて良好な炭素繊維−シリカ複合体を製造できる。
【0011】
また、別の本発明は、先のいずれかの製造方法を用いて製造された炭素繊維−シリカ複合体としている。このため、炭素繊維同士の凝集を低減し、均一に分散させることが可能となる。その結果、均一性を有する炭素繊維−シリカ複合体が得られる。
【0012】
また、別の本発明は、炭素繊維とシリカとを含む炭素繊維−シリカ複合体であって、炭素繊維がシリカ中に分散しており、炭素繊維を構成する炭素とシリカを構成するシリコンのモル総量に対する炭素のモルの比(C/(C+Si))が0.1以上0.4以下の範囲である炭素繊維−シリカ複合体としている。このような構成の炭素繊維−シリカ複合体とすると、炭素繊維およびシリカの両方の特長を生かせるシリカ複合体が得られる。また、炭素繊維−シリカ複合体の電気伝導性および熱伝導性は、複合体中に含まれた炭素繊維とシリカとの配合量および炭素繊維の分散状態に大きく依存する。炭素繊維を構成する炭素とシリカを構成するシリコンのモル比が上記範囲内にあるため、炭素繊維−シリカ複合体の電気伝導性および熱伝導性が高まる。
【0013】
また、別の本発明は、先の各発明における炭素繊維を、平均直径200nm以下のカーボンナノチューブとする炭素繊維−シリカ複合体としている。CNTのように、直径が小さい微細円筒形状の炭素繊維をシリカマトリックスに分散させることにより、わずかな添加量でも、炭素繊維の特性を十分発揮させた複合体を得ることができる。したがって、ミクロンオーダの炭素繊維を含む炭素繊維−シリカ複合体と比べて、より広範囲な応用が期待できる。
【0014】
本発明に係る炭素繊維−シリカ複合体に用いられる炭素繊維としては、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、CNT等が挙げられる。特に、CNTを用いるのが好ましい。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法、レーザー・アブレーション法等によって好適に作製される。本発明に係る炭素繊維−シリカ複合体に用いられるCNTは、上記いずれの方法によって得られたCNTでも好適に用いることができる。具体的には、MWCNTの他、SWCNT、2層カーボンナノチューブ(Double−Walled Carbon Nano Tube: DWCNT)等を好適に用いることができる。原料のコスト、表面の酸処理への耐性を考慮すると、MWCNTを用いるのがより好ましい。なお、これらの炭素繊維は、単独で使用しても、2種以上併用しても良い。
【0015】
本発明に係る炭素繊維−シリカ複合体に用いられるアルコキシシランとしては、1分子中に単一のシリコン原子を有するアルコキシシランを好適に用いることができる。すなわち、一般式Si(OR)n またはRm Si(OR)t (但し、Rはアルキル基またはアリール基、n、m、tは1以上の整数を表す)で示される1個のシリコン原子が加水分解性のアルコキシド基に結合した化合物である。具体例としては、テトラエトキシシランの他、フェニルトリエトキシシラン、メトキシシラン、エトキシシラン、ブトキシシラン、プロポキシシラン、イソプロポキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジブトキシシラン、ジプロポキシシラン、トリメトキシシラン、トリブトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン等を挙げることができる。特に、好ましいのは、テトラエトキシシランである。ただし、上述のアルコキシシランは一例に過ぎず、他のアルコキシシランを採用しても良い。なお、アルコキシシランは、一種類のアルコキシシラン化合物でも、二種類以上のアルコキシシラン化合物でも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリカのマトリックス中に比較的多くの炭素繊維を均一に分散した炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する好適な実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0018】
この実施の形態の炭素繊維−シリカ複合体は、黒色のガラス質の形態を呈している。シリカのマトリックス中に炭素繊維を均一に分散し、炭素繊維を構成する炭素と上記シリカを構成するシリコンのモル総量に対する炭素のモルの比(C/(C+Si))は、0.1以上0.4以下の範囲である。当該モル比となるような多量の炭素繊維を均一にシリカのマトリックス中に分散させた複合体は、今までにない新規な複合体である。
【0019】
上記複合体は、シリカが有する耐酸化性、光学的性質等の特性を損ねずに、炭素繊維の量に応じた電気伝導性および熱伝導性を有する。モル比(C/(C+Si))が0.1以上の場合、複合体の電気伝導性を効果的に向上させることができる。一方、モル比(C/(C+Si))が0.4以下の場合、炭素繊維の凝集が生じにくい。
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る炭素繊維−シリカ複合体の製造方法について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る炭素繊維−シリカ複合体の製造工程を示すフローチャートである。
【0022】
(1)ゾル溶液作製工程(ステップS101)
この工程は、アルコキシシラン、水および酸を含むゾル溶液を作製する工程である。アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン(TEOS)を好適に使用できる。ただし、TEOS以外に、テトラクロロシラン(TCS)等の他のアルコキシシランを用いても良い。酸としては、常温での乾燥および加熱処理により揮発し、炭素繊維−シリカ複合体中に残留しないものが好ましく、例えば、塩酸を好適に使用できる。ただし、塩酸以外に、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸等の他の無機酸および有機酸を用いても良い。また、これらの酸は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。ゾル溶液を作製する際、TEOSと水を超音波処理にて混合し、そこに塩酸等の酸を添加すると良い。なお、混合方法は、超音波処理以外に、攪拌羽根を用いた攪拌等の他の方法であっても良い。
【0023】
また、必要に応じて、アルコキシシランと相溶性のあるアルコールを添加しても良い。アルコールの代表例としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらの利用により、均一で安定的なゾル溶液を作製できる。ただし、必ずしもアルコールを添加する必要はない。
【0024】
(2)分散・半ゲル化工程(ステップS102)
この工程は、前述のゾル化工程により得られたゾル溶液中にて、炭素繊維を分散すると共に、ゾル溶液が半ゲル化する工程である。炭素繊維としては、平均直径200nm以下の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を好適に用いることができる。ただし、MWCNT以外に、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を採用しても良い。炭素繊維の分散方法については、超音波を利用した方法が好ましいが、攪拌羽根を用いた方法等の他の方法で行っても良い。分散処理に際して、炭素繊維の直径および長さによって嵩が変動するので、炭素繊維の炭素モル量および種類に応じて分散処理の時間を変えるのが好ましい。
【0025】
また、分散・半ゲル化工程は、2つの工程から構成することができる。具体的には、MWCNTを水に分散させる第一分散工程と、第一分散工程に続いて、先に作製したゾル溶液中に、MWCNT分散水を加える添加工程とから、分散・半ゲル化工程を構成することができる。分散・半ゲル化工程では、炭素繊維が分散した状態のゾル溶液のゲル化の初期段階が進行し、ゼリー状のゲルができる。このように、ゾル溶液が半固体化することで、分散したMWCNTの自己凝集を防ぎ、超音波攪拌によりもたらされたMWCNTの均一な分散状態を維持した状態の半固体状の炭素繊維−シリカ複合体を得ることができる。
【0026】
(3)ゲル化工程(ステップS103)
この工程は、前記分散・半ゲル化工程にて得られた混合物のゲル化を促進させる工程である。ゲル化を促進させるための温度と時間は適宜選択可能であるが、この実施の形態では、約40℃の温度、15時間の条件でゲル化を行うことが好ましいが、これらに限定されない、30〜50℃の温度、10〜96時間の条件でゲル化を行っても良い。このゲル化工程により、炭素繊維−シリカ複合体を得ることができる。
【0027】
(4)加熱工程(ステップS104)
この工程は、ゲル化工程にて得られたゲル状の生成物を加熱する工程である。通常40℃〜200℃、好ましくは60℃〜120℃で加熱する。加熱方法は特に限定されないが、連続式でもバッチ式でも良く、また、常圧あるいは減圧で加熱しても良い。また、必要に応じて、さらに高温(400〜800℃の範囲)で加熱工程を行っても良い。さらに、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に、シリカ結合の三次元構造(ネットワーク)がより高度に発達した炭素繊維−シリカ複合体が得られる。なお、加熱工程の前に、ゲル状の生成物を濾過してアルコールで洗浄するのが好ましい。
【0028】
以上、本発明に係る炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法の実施の形態について説明したが、本発明に係る炭素繊維−シリカ複合体およびその製造方法は、上述の実施の形態に限定されず、種々変形した形態にて実施可能である。
【0029】
上記のゾル溶液作製工程と上記の分散・半ゲル化工程とを一つの工程(分散・半ゲル化工程)とし、アルコキシシラン、水、酸、炭素繊維を混合し、炭素繊維を分散させた半ゲル化生成物を作製しても良い。
【0030】
シリカのマトリックス中にCNTを均一に分散した炭素繊維−シリカ複合体を得るため、CNT表面の改質または化学修飾等によって、CNTの分散性を向上させ、シリカのマトリックス中により均一に分散させる方法を採用することができる。例えば、CNTを強酸中で超音波処理することにより短く切断する。切断されたCNTは、その両末端が開いており、カルボン酸基等の含酸素官能基で終端されている。化学反応により終端のカルボン酸基の部分に長鎖アルキル基を導入し、溶媒に可溶化CNTとなる。このようなCNTを使用すると、CNTの分散性を一層向上する炭素繊維−シリカ複合体が得られる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
A.炭素繊維−シリカ複合体の製造方法
(実施例)
テトラエトキシシラン(TEOS)0.0333mol(6.94g)、水0.0666mol(1.20g)およびメタノール1.80gを反応容器に入れ、超音波分散処理を供することにより攪拌しながら混合した。次に、上述の混合溶液に酸として0.05Mの塩酸0.37gを添加し、さらに1時間、超音波分散処理を行った後、加水分解反応によって均一なゾル溶液を得た。
【0033】
続いて、ゾル溶液に多層カーボンナノチューブ(MWCNT、ILJIN社製)を200.0mg(炭素モル量「炭素原子量」0.01665mol)を加え、3時間、超音波分散処理を施した。この工程により、超音波分散されたMWCNTを凝集することなく、均一な分散状態を維持した状態で半ゲル化した混合物を得ることができる。
【0034】
その後、ある程度固まり状態を有したゾル溶液を40℃の恒温槽中で15時間程静置してゲル化させた。そして、ゲル化反応終了後のゲル状の生成物を濾過し、エタノールを用いて洗浄した。また、複合体に混入された水および有機溶媒を除去するため、60℃で24時間、続いて120℃で24時間加熱し、乾燥ゲルを得た。さらに、必要に応じて、この乾燥ゲルを空気中で約500℃の温度で加熱処理した。こうして、炭素繊維−シリカ複合体を得た。
【0035】
B.炭素繊維−シリカ複合体の特性評価方法
得られた炭素繊維−シリカ複合体の外観を目視で調べた。また、炭素繊維−シリカ複合体の組織観察には、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)を用いた。また、四端子法により、電気抵抗率の測定を行った。
【0036】
C.炭素繊維−シリカ複合体の特性評価結果および考察
図2は、実施例の条件にて製造した炭素繊維−シリカ複合体の写真を示す。また、図3は、実施例の条件にて製造した炭素繊維−シリカ複合体のSEM写真である((a):複合体平面の写真(1000倍)、(b):複合体平面の写真(30000倍)、(c):複合体破断面の写真(20000倍))。
【0037】
図2に示すように、実施例の条件にて得られた炭素繊維−シリカ複合体は、不規則の形状を有しており、黒色のガラス質のものであった。実施例の条件にて得られた炭素繊維−シリカ複合体は、図3に示すように、シリカのマトリックス中にMWCNTが均一に分散して組織を有していた。また、四端子抵抗測定の結果、シリカゲルと比べて、電気抵抗率が約1/27に低減していた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、炭素繊維−シリカ複合体を製造あるいは使用する産業、特に、抵抗測定用の基準抵抗体として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る炭素繊維−シリカ複合体の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施例の条件にて製造した炭素繊維−シリカ複合体の写真である。
【図3】本発明の実施例の条件にて製造した炭素繊維−シリカ複合体の走査型電子顕微鏡の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維とシリカとを含む炭素繊維−シリカ複合体の製造方法であって、
少なくともアルコキシシラン、水および酸を含むゾル溶液に、炭素繊維を分散させ、かつ当該ゾル溶液を半ゲル化させる分散・半ゲル化工程と、
上記分散・半ゲル化工程にて得られた混合物のゲル化を促進させるゲル化工程と、
上記ゲル化工程により得られたゲルを加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする炭素繊維−シリカ複合体の製造方法。
【請求項2】
前記分散・半ゲル化工程の前に、前記アルコキシシラン、前記水および前記酸を混合してゾル溶液を作製するゾル溶液作製工程を行い、
前記分散・半ゲル化工程では、前記炭素繊維を前記ゾル溶液に加えて分散させることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維−シリカ複合体の製造方法。
【請求項3】
前記分散・半ゲル化工程において、超音波分散処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の炭素繊維−シリカ複合体の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれか1項に記載の炭素繊維−シリカ複合体の製造方法を用いて製造された炭素繊維−シリカ複合体。
【請求項5】
炭素繊維とシリカとを含む炭素繊維−シリカ複合体であって、
上記炭素繊維が上記シリカ中に分散しており、上記炭素繊維を構成する炭素と上記シリカを構成するシリコンのモル総量に対する上記炭素のモルの比(C/(C+Si))が0.1以上0.4以下の範囲であることを特徴とする炭素繊維−シリカ複合体。
【請求項6】
前記炭素繊維は、平均直径200nm以下のカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項4または5に記載の炭素繊維−シリカ複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−254189(P2007−254189A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78393(P2006−78393)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】