説明

炭素繊維亜鉛電極

【解決手段】亜鉛電極の導電性は界面活性剤でコーティングされた炭素繊維の使用によって向上する。炭素繊維は酸化ビスマス、亜鉛金属などのその他の活性物質と共に亜鉛陰極内に電子的に導電性のマトリクスを形成する。此処に記載される亜鉛陰極はニッケル−亜鉛二次バッテリの中で殊に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[他の出願の相互参照]
本出願は、すべての目的のために全内容が参照により本願に組み込まれる、2009年8月7日に提出された米国特許仮出願61/232,271号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般的に充電式バッテリに関し、殊に充電式ニッケル−亜鉛バッテリに関するものである。更に詳細に言えば、本発明は充電式ニッケル−亜鉛バッテリに使用される亜鉛陰極の構成及び製法に関する。
【背景技術】
【0003】
パワー用具のようなコードレスの携帯用装置が普及するに従い、高度のパワーが供給可能であり、且つ高エネルギイ密度である充電式バッテリへの必要性及び要求度が増加している。パワー及びエネルギイ密度に関する要求度が増すに従って、高サイクル寿命の充電式電極の必要性も増加する。アルカリ性亜鉛電極はその高電圧、低等価重量、及び低価によって知られており、亜鉛電極はその充放電に関する高速電気化学的動特性により高度のパワーも高度のエネルギイ密度も供することが出来るが、更に新しい技術の到来と共に、更に高度のパワー及びエネルギイ密度の充電式バッテリが必要となっている。
【0004】
より高度のパワー及びエネルギイ密度が必要となるに従い、ニッケル−亜鉛バッテリの構成及びそれに関連する製法が性能に関して重要となる。電気乗用車(EV)、プラグ型ハイブリッド式電気乗用車(PHEV)、使用者用電子器具及びその他の応用面において、より高度のパワー/エネルギイ密度のバッテリならびにその製法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
亜鉛陰極の導電率は界面活性剤でコーティングされた導電粒子の使用によって向上される。或る実施形態の場合、導電粒子は炭素粒子であり、それは繊維の形態であってよい。炭素繊維は亜鉛陰極内でそれのみ又は酸化ビスマス、亜鉛などのその他の物質と共に電子的に導電性のマトリクスを形成する。此処に記載される亜鉛陰極はニッケル−亜鉛二次バッテリに殊に有用である。
【0006】
従って、本発明はその一面において、電気化学的に活性な亜鉛と界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を有する亜鉛陰極とニッケル陽極とを備える充電式ニッケル−亜鉛セルに関する。或る実施形態の場合、電気化学的活性の亜鉛には少なくとも亜鉛と酸化亜鉛の中の一つが含まれる。或る実施形態の場合、電気化学的活性の亜鉛はサイズが約40ミクロン以下で、任意的に錫及び/又は鉛でコーティングされた粒子の形態である。亜鉛粒子が鉛でコーティングされる或る実施形態の場合、鉛は亜鉛陰極活性物質の約0.05重量%未満の割合で存在する。或る実施形態の場合、亜鉛陰極は炭素繊維を乾燥状態の陰極の約3重量%未満の割合で存在する。或る実施形態の場合、此処に記載されるニッケル−亜鉛セルのニッケル陽極にはコバルト及び/又はコバルト化合物が、ある場合には水酸化ニッケル粒子をコーティングされて(又はその他の様相で組み込まれて)含まれている。
【0007】
炭素繊維が使用される場合、炭素繊維の次元が重要となることがある。或る実施形態の場合、炭素繊維は長さが約10μmから500μmの間で、直径が約1μmから50μmの間である。或る実施形態の場合、炭素繊維は長さが約100μmから400μmの間で、直径が約2.5μmから40μmの間であり、更に特殊な或る実施形態の場合、長さが約100μmから300μmの間で、直径が約5μmから20μmの間である。或る実施形態の場合、繊維は長さと幅の比が約50:1から約10:1の間であり、特殊の実施形態の場合約40:1から約10:1の間、更に特殊の実施形態の場合約30:1から約10;1の間である。
【0008】
種々の実施形態の場合、此処に記載される陰極に使用される電気化学的活性の粒子は界面活性剤でコーティングされている。炭素粒子が使用される場合、この炭素粒子は金属化されていてもよい。従って、本発明はその他の面において、電気化学的活性亜鉛を含む亜鉛陰極及び界面活性剤でコーティングされた炭素粒子に関する。或る実施形態の場合、炭素粒子は上記のような炭素繊維である。特殊な実施形態の場合、この炭素繊維は亜鉛で金属化されており、界面活性剤でコーティングされている。
【0009】
その他の面において本発明は亜鉛陰極の製法に関するものであり、この方法は(i)電気化学的活性の亜鉛を受ける工程、(ii)界面活性剤でコーティングされた導電性粒子を受ける工程、(iii)この電気化学的活性の亜鉛、コーティングされた導電性粒子、及び液体からペースト又はスラリを形成する工程、及び(iv)このペースト又はスラリを亜鉛電極に組み込む工程が含まれるものである。その他、以下のように特徴付けられる工程が含まれる方法もある。(i)亜鉛金属粒子を鉛及び/又は錫でコーティングする工程、(ii)炭素粒子を界面活性剤でコーティングしてコーティングされた炭素粒子を製造する工程、(iii)このコーティングされた亜鉛粒子、コーティングされた炭素粒子、酸化ビスマス、分散剤、結着剤、及び液体とからペーストを形成する工程、及び(iv)このペーストを亜鉛電極下地層にコーティングする工程。或る実施形態の場合、この炭素粒子は上記のような炭素繊維である。このような方法で製造される亜鉛陰極の中には、例えば炭素粒子の次元などのような上記の亜鉛陰極の特徴を有するものもある。ペーストされた電極は典型的に巻かれた状態、及び角柱状セルに使用され、その一方、ゲル状の電極は典型的にペンシル型セルに使用される。
【0010】
更なる面において、本発明は以下の工程を含む亜鉛陰極の製法に関するものである。(i)炭素粒子を界面活性剤で処理して界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を作成する工程、(ii)界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を少なくとも電気化学的活性の亜鉛と結合させて均等に分散された混合物を製造する工程、及び(iii)下地電流コレクターをこの均等に分散された混合物でコーティングする工程。或る実施形態の場合、この炭素粒子は炭素繊維である。本発明はその更なる面において、(iii)の工程の後にこの下地電流コレクターを加熱して或る有機成分を除去し、亜鉛陰極をバッテリに合同する前に下地電流コレクターを周囲の温度にまで冷却する工程をも含む。或る実施形態の場合、このバッテリはニッケル陽極がコバルト及び/又はコバルト化合物を含み、或る場合には水酸化ニッケル粒子の上にコーティングされ(又はその中に合同され)たニッケル−亜鉛バッテリである。この方法の或る面においては、亜鉛陰極をニッケル−亜鉛二次バッテリに使用のためにジェリイロール構成に合同される工程が含まれる。
【0011】
或る実施形態は、(i)炭素粒子を界面活性剤で処理して界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を製造する工程、(ii)界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を少なくとも電気化学的活性の亜鉛と結合させて均等に分散された混合物を作成する工程、及び(iii)この均等に分散された混合物をゲル化剤と結合する工程を含むゲル状亜鉛陰極の製法に関する。実施形態の中には任意的に金属化された界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を含む此処に記載される炭素粒子が含まれる。
【0012】
上記及びその他の特徴及び利点は図を参照して以下説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】円筒形ニッケル−亜鉛セルの主要部品を図示するものである。
【図1B】円筒形ニッケル−亜鉛セルの主要部品を図示するものである。
【図1C】円筒形ニッケル−亜鉛セルの主要部品を図示するものである。
【図2】ニッケル−亜鉛ペンシル型バッテリを製造する一方法を示すものである。
【図3】ジェリーロール又は角柱状セル構成用の陰極―セパレータ―陽極のサンドイッチ構成内の層を示すものである。
【図4A】界面活性剤でコーティングされた炭素繊維セルに対するコントロールセル(アルミナ繊維)のサイクル動作を示すものである。
【図4B】界面活性剤でコーティングされた炭素繊維セルに対するコントロールセル(アルミナ繊維)のサイクル動作を示すものである。
【図5A】20アンペア放電曲線の8で測定された放電容量(A−Hr)に対する電圧(V)のグラフである。
【図5B】20アンペア放電曲線の54サイクルで測定された放電容量(A−Hr)に対する電圧(V)のグラフである。
【図5C】20アンペア放電曲線の104サイクルで測定された放電容量(A−Hr)に対する電圧(V)のグラフである。
【図5D】20アンペア放電曲線の152サイクルで測定された放電容量(A−Hr)に対する電圧(V)のグラフである。
【図6】10アンペア及び20アンペア以下の放電におけるコントロールセルと界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を含むセルの中点電圧の比較を示す。
【図7】30アンペア以下の放電(15C)におけるコントロールセルと界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を含むセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。
【図8】20アンペア及び30アンペア(50サイクルごと)の放電(10C及び15C)におけるアルミナ繊維を含むコントロールセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。
【図9】20アンペア及び30アンペア(50サイクルごと)の放電(10C及び15C)におけるセル6個入りパック内の図8に示すコントロールセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。
【図10】30アンペアの放電(15C)における界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を含むセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。
【図11】20アンペアの放電(10C)におけるセル9個入りパック内の図10に示すセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。
【図12】20アンペアの放電(10C)における炭素繊維セルに対するコントロールセル(アルミナ繊維)を示す。
【図13】20アンペアの放電(10C)におけるセル9個入りパック内の炭素繊維セルに対するコントロールセル(アルミナ繊維)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.定義
此処に使用される用語はこの技術分野で普遍的に使用されるものに限られていない。その他の用語は複数の意味を持つ場合もある。よって此処における開示の理解の援助のために以下の定義を供する。クレーム部に記載される本発明は必ずしもこの定義に限定されるものではない。
【0015】
此処で「粒子」と呼ばれるものには、球形、回転楕円体、不定形体、及び繊維など種々の形態が含まれる。
【0016】
「繊維」とは通常長さに対して小さい直径を有する延長された構成体を意味する。繊維は一般的に横縦比(即ち幅(又は直径)に対する長さの比)で特徴付けされる。或る場合において、繊維とは横縦比が少なくとも約1.5:1又は少なくとも約2:1のものである。繊維はその繊維と同じ物質である繊維以外の成分と結合して存在してもよい。例えば炭素繊維の源泉に繊維と繊維以外の粒子が含まれていてもよい。典型的に、繊維と繊維以外の粒子の混合物が「繊維」とみなされるためには、含まれる繊維が大部分でなくてはならない。繊維は例えば円形又は矩形のような実質的に規則的な、又は不規則的な断面、及び/又は平滑又は粗い面を有するものでよい。繊維は線的に、実質上線的に、又は屈曲的に延長したものでよい。繊維の例には糸状物、フィラメント、ウイスカ状物、その他が含まれる。
【0017】
「直径」とは例えば実質上球形の場合、又は繊維の場合(ここでは軸方向と直角方向の次元を指す)、
平均直径のことであり、典型的に関連する標準偏差が示される。
【0018】
「長さ」とは繊維の主要、又は軸方向の次元を指す。この用語は典型的に平均値を指し、典型的に関連する標準偏差が示される。
【0019】
「界面活性剤でコーティングされた」とは、粒子、繊維、又は記述される構成体が界面活性剤にさらされ、少なくともその一部が構成体の表面に残留していることを意味する。
【0020】
「Triton(商標)」(以下「トリトン」と記載)は親水性酸化ポリエチレン基及び炭化水素親油性又は疎水性基を有する非イオン型界面活性剤のファミリーである(トリトン界面活性剤はペンシルバニア州フィラデルフィアのRohm and Haasより入手可能)。
【0021】
B.概論
亜鉛陰極の導電率は界面活性剤でコーティングされた粒子の使用によって向上される。或る実施形態の場合、これらの粒子は炭素粒子である。炭素又はその他の粒子は繊維の形態であってよい。炭素繊維は此処に記述されるように酸化ビスマス、亜鉛などのその他の活性物質と共に亜鉛陰極内で電子的に導電性のマトリクスを形成する。此処に記述されるような亜鉛陰極はニッケル−亜鉛二次バッテリにおいて殊に有用である。結果として得られる本発明の充電式セルは長い貯蔵期間、高い中心点電圧、低い漏出、膨張が少なく若しくは無いこと、などの特徴の中一つ以上を有するものである。貯蔵期間が長いと言うのは、60℃で一ヶ月後容量が10%残って居ることで定義される。漏出は通常通風機構から漏出する薬品で特徴付けされる。缶の膨張は例えば内部ガスの堆積を意味する底部(又は側部)の拡張で特徴付けされてよい。
【0022】
以下、発明に関するニッケル−亜鉛バッテリの化学作用、更に説明対象のニッケル−亜鉛バッテリに関連して本発明に特別な特色に焦点を当てながらバッテリのデザインをより詳細に説明する。
【0023】
ニッケル―亜鉛バッテリの電気化学的反応
アルカリ性電気化学セルに於ける水酸化ニッケル陽極の充電工程は以下の反応式による。
Ni(OH)2+OH- → NiOOH+H2O+e- (1)
【0024】
アルカリ性電解質は亜鉛電極内の電気化学反応でイオン担体として作用する。充電式亜鉛電極に於ける初期活性材料はZnO粉末或いは亜鉛と酸化亜鉛粉末の混合物である。ZnO粉末は反応式(2)のようにKOH溶液に溶解してZn(OH)42−を生成し、これは充電工程に於いて反応式(3)のように金属亜鉛に還元する。亜鉛電極に於ける反応は以下のように記載される。
ZnO+2OH-+H2O → Zn(OH)42- (2)
及び
Zn(OH)42-+2e- → Zn+4OH- (3)
【0025】
従って、ニッケル―亜鉛バッテリ全体の反応は以下のように記載される。
ZnO+H2O+2e- → Zn+2OH-+2e- (4)
【0026】
全体としてのニッケル−亜鉛バッテリの反応は以下のようになる。
Zn+2NiOOH+H2O → ZnO+2Ni(OH)2 (5)
【0027】
亜鉛電極における放電工程においては、金属亜鉛が電子を放出して亜鉛酸塩を生成する。それと同時にKOH溶液の亜鉛酸塩濃度は増加する。
【0028】
再充電の場合、反応(1)−(5)が繰り返される。ニッケル−亜鉛バッテリの寿命期間内において、このような充電−放電のサイクルは何回も繰り返される。本発明は亜鉛陰極の効率に関し、例えば此処に記載される導電性繊維を含む亜鉛電極を使用するバッテリセルは多数の面において優秀な作用を提供するものである。
【0029】
C.実施形態
従来例の亜鉛陰極では、陰極を灌漑すること、即ち電解質の流れと分配を向上させるウィッキング剤として作用することにより流密度を均等化するために、活性物質にアルミナ、セラミクス、セルローズ、炭素、又は繊維のような他の粒子が含まれる。これらは樹枝状突起形成を防止するのに有用であり、電極の構成要素として作用する。繊維には導電性のものもある。
【0030】
本発明の発明者は、陰極に界面活性剤でコーティングされた粒子を導入すると電極の全体的通電能力が向上することを発見した。従って、本発明は一面において界面活性剤でコーティングされた粒子を含む陰極に関するものである。界面活性剤でコーティングされた繊維は延長された構造とネットワークを形成する能力とによって殊に作用が優秀である。界面活性剤でコーティングされた粒子、そして殊に界面活性剤でコーティングされた繊維は更に上記のような灌漑剤として、及び/又は、他の粒子や繊維と共に使用されてよい。
【0031】
或る実施形態の場合、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維は酸化ビスマス、亜鉛などの他の活性物質と共に電子的に導電性のマトリクスを形成するのに使用される。本願の発明者は、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を含む電極が、高放電率の場合、アルミナ繊維を含むコントロール電極より、より平坦で高い電圧放電曲線を有することも発見している。発明者は更に界面活性剤でコーティングされた炭素繊維がペースト工程において電極の全体にわたって均等に分散されることも確認した。理論に拘束される意図を有するものではないが、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維は電子的導電性を促進することによって電極の表面における反応を均等化するものと信じられる。界面活性剤でコーティングされた繊維は更に界面活性剤でコーティングされていない粒子と比較して繊維の親水度を向上し、それによって陰極内の水性電解質の灌漑に寄与するものと信じられる。炭素繊維はセラミク、金属、及びその他の重い粒子や繊維の場合より重量を軽減して、そのような繊維を使用する陰極に構成的要素を付与するものとも信じられる。
【0032】
界面活性剤でコーティングされた粒子を使用する陰極は、例えば充電式ニッケル−亜鉛セルに使用可能である。従って、本発明はその一面において、電子的活性亜鉛及び界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を有する亜鉛陰極及びニッケル陽極を含む充電式ニッケル−亜鉛セルに関するものである。かかる電極は巻かれた状態(ジェリーロール)、角柱状、及びペンシル型セルとして使用可能である。ニッケル−亜鉛バッテリのより詳細な記述が、電極と部品の実施例、殊に陰極とその部品の記述と共に、ニッケル−亜鉛バッテリがより詳細に以下記述される。
【0033】
ニッケル−亜鉛バッテリ及びバッテリの部品
【0034】
図1A及び1Bは一実施形態による円筒形燃料セルの主成分を図示するものであり、図1Aはセルの分解図である。電極と電解質の層が交互に円筒形の集合体101(ジェリイロールと呼ばれる)の中に与えられて居る。円筒形集合体、又はジェリイロール101は缶113又はその他の収容容器の内部に位置されている。負電流コレクタ円板103(例えば任意的に例えば錫でメッキされた銅)と正電流コレクタ円板105(例えば泡状のニッケル)とが円筒形集合体101の相対する端部に付着されている。負電流と正電流のコレクタ円板は内部端子として機能し、負電流コレクタ円板は陰極に電気的に接続し、正電流コレクタ円板は陽極に電気的に接続して居る。キャップ109と缶113とは外部端子として機能する。図示された実施形態では、負電流コレクタ円板103は負電流コレクタ円板103をキャップ109に接続するためのタブ107を含んで居る。正電流コレクタ円板105は溶接或は別法によって電気的に缶113に接続されて居る。別の実施形態の場合、負電流コレクタ円板が缶に接続し、正電流コレクタ円板がキャップに接続する。
【0035】
負電流と正電流のコレクタ円板103、105は穿孔と共に示されて居り、これによってジェリイロールへの結合及び/又は電解質のセルの一部から他の部分への移行を容易にする。別の実施形態の場合、円板に於ける(径方向、或は周辺の)孔、溝、或はその他の構成によって、これらの結合及び/或は電解質の分布を容易にする。負電流コレクタ円板は典型的に銅であり、任意的に錫でコーティングされる。正電流コレクタ円板は典型的にニッケルであるか、その構成の中に少なくともニッケルを含むものである。
【0036】
柔軟なガスケット111が、キャップ109に近く、缶113の上部の周辺に沿って備えられた周辺ビーズ115の上に設置されている。このガスケット111はキャップ109を電気的に缶113から隔離する役を果たす。実施形態によっては、ガスケット111が置かれるこれらのビーズ115は重合体でコーティングされて居る。ガスケットはキャップを缶から電気的に隔離するならば、どのような材料であってもよい。この材料は高温であまり変形しないものが好ましく、ナイロンなどがその一例である。別例として好ましいのは、比較的疎水性の材料を使用することで、アルカリ性の電解液をしみこませて終局的に継ぎ目とかそれ以外の侵入口の位置から漏れる力を減少させることである。濡れにくい材料の一例としてプロプロピレンがある。
【0037】
缶叉はそれ以外の収容容器が電解液で満たされた後、容器は典型的にビーズ115の上の缶の部分を使用するクリンピング工程で缶113の環状部分を内側方向へガスケット111の最上部の上をクリンピングして密封され、電極や電解質が環境から隔離される。実施形態によっては、漏れを防ぐために密封剤が使用される。密封剤の適宜な例として、瀝青剤、タール 及びオハイオ州、シンシナティ在のCognis から入手可能な VERSAMID(商標)がある。
【0038】
図1Cは此処に記載されるジェリイロールニッケル−亜鉛セルのより特種な構成を示すものである。このセルは図1A及び1Bのものに似ており、ジェリイロール電極集合体110、缶113、キャップ109、柔軟性ガスケット111などを有するが、この例では負電流コレクタ円板103aにスロットがあり、ジェリイロール101の最上部にある巻かれた負電流コレクタへの電気的接続を形成するための鉛直(降下)タブ108即ちエネルギイ誘導体が存在する。タブ108はこのセルが組み立てられる時負電流コレクタに押しつけられ、負電流コレクタ円板103aの最上部はキャップ109を押し、負電流コレクタとキャップ109との電気的接続が完成する。一実施形態の場合、タブ108は破れたり負電流コレクタへ裂かれたりしないように構成される(図示されるように、タブ108はスキーのように示されたこの例の場合負電流コレクタの上にのせられた曲がった部分を有する)。一実施形態の場合、タブ108は例えばスキーのない負電流コレクタに噛み入れないように構成される。別の実施形態のタブ108は負電流コレクタに噛み入れる意図の曲がった部分及び突起部を有することが出来る。負電流コレクタ円板103aはジェリイロールへ電解質を導入する中央の孔も有する。中央の孔が電解質の流れを容易にする場合、例えば電解質貯蔵場がセルの下部でジュリイロールの底部と缶の底の間に保持される場合、正電流コレクタ円板も円板103aのように構成されてよい。この実施形態の場合、正電流コレクタ円板105aは図1Aの円板105について記述されたように穿孔されているが、円板105aにはジェリイロール110の底部の巻かれた正電流コレクタと電気的に接触する突起部112も含まれる。一実施形態の場合、巻かれた正電流コレクタはジェリイロール101の底部に対して折り曲げられ、突起部112は折り曲げられた正電流コレクタを貫いて電気的接触を達成する。
【0039】
或る実施形態の場合、セルは電解質枯渇の状態で作用するように構成されている。更に或る実施形態の場合、本発明のニッケル―亜鉛セルは電解質枯渇様式を使用するものである。かようなセルは、活性電極材料に比して、相対的に少量の電解質を有するものであり、セル内部に遊離電解液を有する浸水型のセルから容易に区別することが出来る。米国特許出願11/116、113(「Nickel Zinc Battery Design」 2005年4月26日出願)(本願に参照して組み込まれるものとする)で説明される如く、セルを枯渇した状態で作用することは、多くの理由により望ましいことである。一般的に、枯渇したセルとは、セル電極スタックの中の空間総体積が電解質によって占められて居ないもののことと理解されて居る。典型的な例の場合、電解質充填後の枯渇状態のセルのボイド容積は、充填前のボイドの総容積の少なくとも約10%である。
【0040】
本発明のバッテリセルは、多くの異なる形状及びサイズのものでよい。例えば、本発明の円筒形セルは通常のAAA型セル、AA型セル、D型セル、C型セルなどの直径や長さでよい。或る応用面に於いては、カストマイズされたセル設計が適当となる。特別な実施形態の場合、セルのサイズは直径22mmで、長さ43mmのサブC型セルのものでよい。本発明は種々の非携帯用の応用で使用される種々の大きさのセルのみならず、比較的小さい角柱のセル形で使用されることに留意されるべきである。動力機具とか芝刈り機のようなものの為のバッテリパックのプロファイルによって、バッテリセルの大きさとか形状は決定されるものである。本発明は、本発明によるニッケル−亜鉛バッテリセルを一個以上含んだバッテリパックとか、電気器具の充電放電を可能とする適宜なケイシング、接点、導電線にも関するものである。
【0041】
図1A、1B及び1Cに示された実施形態は従来例のNiCdセルと極性が逆になって居り、キャップが陰性で缶が陽性となって居ることに留意されたい。従来の電力セルでは、セルの極性がキャップで陽性、缶或は容器で陰性である。即ち、セル集合体の陽極はキャップと電気的に連結し、セル集合体の陰極はセル集合体を保持する缶と電気的に連結する。 図1A、1B及び1Cに示されるものを含めて本発明の或る実施形態に於いて、セルの極性は従来例のセルのものと逆である。従って、陰極はキャップと電気的に連結し、陽極は缶と電気的に連結する。本発明の或る実施形態に於いては、極性が従来例のデザインと同じであり、キャップが陽性であると留意されたい。
【0042】
図1A、1B及び1Cはジェリイロールのデザインを示しているが、これは本発明を限定するものではない。或る実施形態の場合、此処に記載されるバッテリにはペンシル型セル構成が含まれる。図2には此処に記載されるようなペンシル型バッテリの方法が示されている。図2において、陽極物質(活性物質と追加物質)とがペレットの例えば小さい円筒形の中空スタック201として形成される。この例の場合、四個のペレットが缶202に導入される。この例の場合チューブ203aと底キャップ203bとチューブに連合された隔離チューブが、此処に断線の矢印で此処に示されるように形成された陽極中空部(缶202内の環状陽極スタック内)に位置される。かようなセパレータは、此処に記述されたように二個の部分を組み立てる代わり、一個の部品として押し出し成型されてもよい。ペレット201,202の集合体及びセパレータは集合体204として図示されている。此処に記述されたような界面活性剤でコーティングされた粒子を含むゲル化された陰極物質は次いで隔離チューブ内に導入される。一実施形態の場合、界面活性剤でコーティングされた粒子とは界面活性剤でコーティングされた炭素繊維のことである。ゲル化された陰極物質は事前に形成されて隔離チューブに導入されてもよく、又はセパレータ内のその場で混合されてもよい。或る実施形態の場合、セパレータの最上部は中空の円筒形陽極の最上部より高く、後者は更にゲル化された陰極の最上部より高い。その他の実施形態の場合、セパレータの最上部は中空の円筒形陽極の最上部より約2mmと約5mmの間(例えば約3mm)だけ高く、後者は更にゲル化された陰極の最上部より約0.5mmと約2mmの間(例えば約1mm)だけ高い。これは亜鉛がセパレータから逃れて陽極に到達することの防止に役立つ。
【0043】
代行的な方法によると、ペレットにされた陽極物質のスタックのかわりに、陽性の物質が缶の中へと導入され、次いでセパレータの導入前又はそれと同時に中空の円筒形に圧縮される。これは例えばダミー棒を缶に挿入し、棒の回りに陽極物質を圧縮し、次いで棒を引き抜くことで達成される。一例の場合、圧縮の期間中ダミイ棒の上にセパレータがあり、これで棒が除去されると組み立てが効率よく完成する。
【0044】
再び図2を参照し、例えば真鍮、ステンレススチール、又は錫でコーティングされた真鍮構造体の電流コレクタ205がゲル化された陰極へ挿入される。電流コレクタの様相は以下更に詳細に記述される。ある場合には例えば「釘」である電流コレクタ205が閉包206に溶接され、これはバッテリを密閉するのに使用される場合ゲル化された陰極の中央に位置する。一旦密閉されると、バッテリ207の組み立ては完了する。組み立て、形成、充電、放電、及び再充電が実施可能となる。
【0045】
此処に記述される充電式ニッケル−亜鉛「ペンシル型」バッテリは幾何学的円筒形であり、バッテリの長さは直径以上であり、バッテリの長さとバッテリの直径の比は少なくとも約1.5:1であり、或る実施形態の場合には約1.5:1と約20:1の間である。より特別な或る実施形態の場合、バッテリの長さとバッテリの直径の比は約1.5:1と約10:1の間である。他の実施形態の場合、バッテリの長さとバッテリの直径の比は約1.5:1と約5:1の間である。或る実施形態の場合、此処に記述されるバッテリの直径は約5mmから約100mmの間である。或る実施形態の場合、バッテリの長さとバッテリの直径の比は約5.5:1以上であって、直径は約10mmから約50mmの間である。或る実施形態の場合、此処に記述されるバッテリは例えばAAAA型、AAA型、AA型、C型、D型、サブC型などの市場で入手可能なサイズに構成される。その他の実施形態の場合、此処に記述されるバッテリは市場で入手可能なバッテリと実質的に同じサイズであって、それ以上の長さのものであってよい。
【0046】
或る実施形態の場合、此処に記述される充電式ペンシル型バッテリはフルに充電された状態からフルに放電された状態へ約1C又はそれ以上の放電率で約50及び1000サイクルの間可能であり、又はフルに充電された状態からフルに放電された状態へ約1C又はそれ以上の放電率で約100及び800サイクルの間可能であり、又はフルに充電された状態からフルに放電された状態へ約1C又はそれ以上の放電率で約200及び500サイクルの間可能である。或る実施形態の場合、これらのサイクル数の範囲は此処に記述されるバッテリにより、フルに充電された状態からフルに放電された状態へ約0.5C又はそれ以上の放電率で達成される。
【0047】
バッテリ缶
バッテリ缶とは、最終的なセルの外側のハウジング或はケーシングとなる容器のことである。缶が陰性端子となる従来例のニッケル―カドミウムセルに於いて、これは典型的にニッケルでメッキされたスチールである。上記の如く、本発明に於いて、缶は陰性端子でも陽性端子であってもよい。缶が陰性である実施形態の場合、缶材料は、亜鉛電極の電圧に対応出来る物質でコーティングされて居る限り、スチールのような、従来例のニッケル―カドミウムバッテリで使用されるような構成に似たものであってよい。例えば、陰性の缶は腐食を妨げるべく、銅のような物質でコーティングされてよい。缶が陽性でキャップが陰性の実施形態の場合では、缶は従来例のニッケル―カドミウムセルで使用されるような構成に似たもの、典型的にはニッケルでメッキされたスチールでよい。
【0048】
或る実施例の場合、水素再結合を補助するための物質で缶の内部をコーティングすることが出来る。水素再結合の触媒となる物質ならば、何を使用してもよい。酸化銀はその一例である。
【0049】
通気キャップ
セルは通常環境から密閉されたものであるが、充電や放電に際してバッテリから発生するガスを放出可能にしてもよい。典型的なニッケル―カドミウムセルの場合、約200PSIの圧力でガスを放出する。或る実施形態の場合、本発明のニッケル―亜鉛セルは、通気なしのまま、この圧力或はそれ以上の圧力(例えば300PSI位まで)で作用するように設計されて居る。これにより、セル内部で生成される酸素や水素の再結合が促進される。実施形態によっては、内圧を450PSI位まで、更には600PSI位までに保つように、セルが構成されてある。その他の実施例のニッケル−亜鉛セルは、比較的低圧でガスを放出するように設計される。設計が水素及び/或は酸素ガスをセル内部で再結合させず、制御された状態での放出を促進する場合に適切である。
【0050】
通気キャップ及び円板、ならびに担体下地層の構成に関する或る程度の詳細な説明は以下の特許出願に記載されており、これらはすべての目的で本願に参照により組み込まれる。2006年4月25日を出願日とするPCT/US2006/015807及び2004年8月17日を出願日とするPCT/US2004/026859(WO2005/020353 A3)。
【0051】
電極及びセパレータの構成
図3はジェリイロール又は角柱セル構成に使用可能な陰極―セパレータ―陽極サンドイッチ構成の種々の層を示す。セパレータ305は電極と電解質の間のイオン交換を可能にする一方、陰極(成分301と303)を陽極(成分307と309)から機械的及び電気的に隔離するものである。陰極は電気化学的活性層301と電極下地層303とを含む。亜鉛陰極の電気化学的活性層301は、典型的に電気化学的活性成分として、酸化亜鉛及び/或は金属亜鉛ならびに此処に記述される界面活性剤でコーティングされた粒子を含む。層301には亜鉛酸カルシウム、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化インジウム、ヒドロキシエチルセルローズ、及び分散剤など、その他の添加剤又は電気化学的活性成分も含まれてよい。或る実施形態の場合の亜鉛陰極の構成は以下詳細に説明される。
【0052】
電極下地層303は陰極材料301と電気化学的に共存可能であるべきものである。上記の如く、電極下地層は穿孔された金属シート、拡張された金属、泡状金属、或は連続パタンの金属シートの形体であり得る。或る実施形態の場合、下地層は単に金属箔のような金属層であってもよい。
【0053】
陰極に対して、セパレータ305の別側にあるのが陽極である。陽極も電気化学的活性層307と電極下地層309を含むものである。陽極の層307は電気化学的活性材料として、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、及び/或はオキシ水酸化ニッケル及び此処に記述される種々の添加剤を含んでもよい。電極下地層309は例えばニッケル金属泡状マトリクス又はニッケル金属シートであってよい。もしニッケル泡状マトリクスが使用されるなら、金属泡のボイドが埋まるので、層307は連続した電極を構成することになる。層状の亜鉛陰極とニッケル陽極構成は図1A及び1Bに示されるようなジェリイロール、構成101へと巻かれ、又はそのように巻かれずに角柱状のセルの中で使用される。
【0054】
上記のように、ペンシル型セル構成の中ではペースト物質よりゲル化された陰極が典型的に使用されるが、これは必然的なものではない。一実施形態の場合、上記のような陰性活性物質のペーストがペンシル型セルの陰極内に使用される。
【0055】
ジェリイロール及びペンシル型セル構成の陽極、セパレータ、電解質、及び陰極が以下においてより詳細に記述される。
【0056】
陽極
水酸化ニッケル電極は、高パワー高エネルギイ金属ニッケル水素化物バッテリ、ニッケル―カドミウムバッテリ、及びニッケル−亜鉛バッテリの陽極として使用されてきた。ニッケル陽極には、製造、電子運送、濡れ、機械的特性などの目的で、通常電気化学的活性の酸化、又は水酸化、又はオキシ水酸化ニッケル、及び一種以上の添加剤が含まれる。例えば、陽極には水酸化ニッケル粒子、酸化亜鉛、酸化コバルト(CoO
)、コバルト金属、ニッケル金属、及びカルボキシメチルセルローズ(CMC)のような揺変剤が含まれてよいコバルト金属及びニッケル金属は化学的に純粋な金属としてでも、合金として提供されてもよいことに留意されたい。陽極はこれらの物質と重合体フルオロカーボン(例えばTeflon(商標))のような結合剤を含むペーストから製造されてもよい。
【0057】
或る実施形態の場合、水酸化ニッケル電極には水酸化ニッケル(及び/又はオキシ水酸化ニッケル)、コバルト/コバルト化合物粉末、ニッケル粉末、及び結合物質が含まれる。コバルト化合物はニッケル電極の導電率を増加するために導入される。一実施形態の場合、ニッケル電極には酸化コバルト、水酸化コバルト、及び/又はオキシ水酸化コバルトの中の一つが、任意的に水酸化(又はオキシ水酸化)ニッケル粒子にコーティングされて含まれる。
【0058】
電気的活性酸化ニッケル(例えばNi(OH)2)電極物質を支持するために、ニッケル泡状マトリクスが使用可能である。泡状下地層の厚さは15と60ミルの間でよい。電気化学的活性及びその他の電極物質が充填された泡状ニッケルを含む陽極の厚さは約16−24ミルの範囲であり、好適には約20ミルである。一実施形態の場合、密度が約350g/m2であって、厚さが約16−18ミルの範囲である泡状ニッケルが使用される。
【0059】
或る実施形態の場合、バッテリにニッケル以外の陽極(例えば銀又は空気の陽極)が使用される。銀―亜鉛システムには陽極として酸化銀が使用される一方、亜鉛―空気システムの場合には酸素還元―生成用の触媒を含むガス拡散電極が使用される。
【0060】
ペンシル型セル構成に関し、陽極物質には此処に記述されるようなタイプの電気化学的活性の水酸化ニッケルが含まれる。追加的に、少量のカルボキシメチルセルローズ(CMC)、アルミナ、セルローズ、アルミナ/シリカ合成物、及びナイロン繊維のような「灌漑性」剤が電極に含まれてもよい。一実施形態では新聞紙が灌漑剤として使用される。存在時において、この灌漑剤の濃度は約1%と約6%の間であり、或る実施形態の場合重量で約2%と約3%の間である。この灌漑剤はサイクリングの間において陽極を十分濡れた状態に保持するのに有用である。電極の厚みによってサイクリングが繰り返される間の電子の電極内部への移動が阻害されるので、十分な量の灌漑剤が長期間に亘る好適な作用に必要である。陽極には任意的にTeflon(商標)通常フッ素化ポリオレフィンPTFE)のような結合剤が重量で約0.1−2%の濃度で含まれる。
【0061】
陽極には更にニッケル金属、炭素、導電性セラミク、コバルト金属粉末又はコバルト化合物、及び導電性重合体のような高度に導電性の添加剤が含まれてよい。導電性添加剤は、陽極物質全体の体積の約2%と8%の間の量で添加される。陽極内の導電性添加剤の最終的濃度は体積で少なくとも約10%である。或る実施形態の場合、導電性添加剤の最終的濃度は体積で約20%である。導電性物質は粉末、泡状、繊維、又はそれらの混合の形態でよい。導電性添加剤は相対的に厚い(例えばジェリイロール構成と比較して)此処に記述される電極の良好な機能、殊に高率の機能を維持する為に必要である。
【0062】
陽極物質の残りは水酸化ニッケル(又は変性ニッケル化合物)である。或る実施形態の場合、水酸化ニッケルは約60〜95重量%の割合で存在する。尚、此処に記載される陽極成分の濃度や量は陽極の組み立てや運転の最中に注入される電解質は含まれない乾燥重量に基づいたものであることに留意されたい。
【0063】
特種な実施形態の場合、ペーストされた水酸化ニッケル電極成分は約1から約5重量%のコバルト粉末、約2から約10重量%のニッケル210粉末、約0.4から約2重量%のカルボキシメチルナトリウムセルローズ(CMC)、及び約0.1から約2重量%のポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)からつくられる。その残りは水酸化ニッケル粉末である。
【0064】
水酸化ニッケル、ニッケル、及びコバルトの粉末の成分物質は乾式で適当な結合剤と混合され、ホッパへ導入される。一実施形態の場合、乾燥混合物は此処に記載される或るバアッテリの製造に使用される此処に記載されるようなアノードペレットを形成するのに使用される。別の実施形態の場合、回転ブラッシが乾燥物質を泡の孔部に押し込む間、泡状ニッケルの連続片が粉末を通して引きずられる。圧接段が次いで例えば泡体を上記のように環状のペレットに押し込む。
【0065】
此処に記述されるような陽極は中空な実質上円筒状の形態である。上記のように、陽極は一体の構造でもよいが、或る実施形態の場合には環状の陽極物質(此処に記述されるように活性物質及びその他の試薬を含む)を積み重ねて構築できる。実験的実施形態として下記されるように、所望の高さの電極とするのに多くの薄い環状体がスタックに使用可能であり、また或る実施形態の場合、図1に示されるように、少数のより高い環状体がスタックの形成に使用可能である。
【0066】
一度スタックに重ねられると陰極によって占められる空間を形成するので、陽極のスタックを形成するのに使用される環状体の幅の考慮は重要である。この中空部は陰極が(セパレータを通じて)電気的接触を達成する面積を定義するものであり、セパレータ(アノードに比して相対的に薄いものであるが)を含んで体積及びセル内で使用可能な陰極の最大量を決定する。此処に記載される陽極と陰極の両方のための種々の方式及びその結果としての導電率は、インタフェイスの各平方センチメートルの面積について利用可能なmAHを決定する負から正への電気交信面積の所望のバランスを達成するため、特種な正の環状体の厚さが要求される。正の厚さは中空部の直径とセルの直径の相対比で表現可能である。一実施形態の場合、中空部の直径とセルの直径の相対比は約0.4から約0.95の間である。別の実施形態の場合、中空部の直径とセルの直径の相対比は約0.5から約0.9の間である。更に別の実施形態の場合、中空部の直径とセルの直径の相対比は約0.6から約0.85の間である。或る実施形態の場合、此処に記述されるようなセルの直径は約5mmから100mmの間である。従って、一例において、高度のサイクル寿命と高エネルギイ密度におけるより高率のため、AA型のセル(直径が例えば14mm)の円筒形陽極の厚さは約1mmから約3mmの間であり、別の実施形態の場合AA型のセルの円筒形陽極の厚さは約1.5mmから約2.5mmの間であり、更に別の実施形態の場合AA型のセルの円筒形陽極の厚さは約2.1mmから約2.5mmの間である(中空部の直径とセルの直径の相対比は約0.6から約0.7の間である)。例えばD型又は従来例以外のサイズの直径がより大きいセルの場合、インタフェイス面積がより大きいのでアノードはより厚くてもよいが、パワーとエネルギイのトレードオフを勘案する必要がある。
【0067】
セパレータ
典型的に、セパレータは小さい孔を有するものである。此処に記載されるいくつかの実施形態に於いて、セパレータは複数の層から成るものである。孔の存在及び/叉は層状構成により、亜鉛の樹枝状突起は曲がりくねった通路を形成することになり、従って効果的に貫通することと、短絡とを防止することになる。好ましくは、多孔性セパレータのくねり度は約1.5〜10の範囲であり、より好ましくは約2〜5である。孔の平均直径は好ましくは大きくとも約0.2ミクロンで、更に好ましくは、約0.02〜0.1ミクロンの間である。孔のサイズはセパレータの内部に於いて均一であることが好ましい。特別な実施形態に於いて、セパレータは多孔率が約35〜55%の間であり、多孔率が45%で孔のサイズが0.1ミクロンの好ましい材料を有するものとする。
【0068】
或る実施形態の場合、セパレータは亜鉛の貫通を防止するバリヤ層とセルを電解質と共に濡れ状態に保ってイオン流を可能にする浸潤層の少なくとも二層から成る(更に好ましくは只二層のみから成る)ものである。これは互いに隣接する電極間に唯一の隔離材料を使用するニッケル−カドミウムセルに於いて通常のことではない。
【0069】
セルの作用は陽極を濡らし、陰極を比較的乾燥状態に保てば向上する。従って、或る実施形態に於いては、バリヤ層は陰極に隣接し、浸潤層を陽極に隣接して位置させる。この配置により、電解層を陽極に密接させ、セルの作用が向上する。
【0070】
その他の実施形態の場合、浸潤層が陰極に隣接し、バリヤ層が陽極に隣接して位置される。この配置は酸素の電解質を通って陰極への移行を容易にし、陰極での酸素の再結合に役立つ。
【0071】
バリヤ層は典型的に微小な孔を有する多孔性の膜である。導イオン性の微小な孔を持つ多孔性の膜ならば、いずれのものでも使用可能である。多孔率が30〜80%の間のポリオレフィンがしばしば使用されるが、孔の平均径が約0.005〜0.3ミクロンの間であることが好適である。好ましい実施形態の場合、バリヤ層は微小な孔を持つ多孔性のポリプロピレンである。バリヤ層は典型的に厚さが約0.5〜4ミルで、より好ましくは約1.5―4ミルの間である。
【0072】
浸潤層は浸潤性が適当にある如何なる隔離層材料であってもよい。典型的に、浸潤層の多孔率は比較的高く、例えば約50〜85%の間である。例として、ナイロンを基にした浸潤性のあるポリエチレンやポリプロピレン材料のようなポリアミドが挙げられる。或る実施形態の場合、浸潤層の厚さは約1〜10ミルの間であり、好ましくは約3〜6ミルの間である。隔離層材料で、浸潤層材料として使用できるものの例としては、NKK VL100 (東京都のNKK Corporation 製)、Freudenberg FS2213E、Scimat 650/45 (英国 Swindon の SciMAT Limited製)、及び Vilene FV4365 がある。
【0073】
当業者に周知のその他の隔離部材料も使用可能である。上記の如く、ナイロンを基にした材料や、微小な孔を有する多孔性ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポロプロピレン)はしばしば非常に好適である。此処に記載されるようなペンシル型セルの場合、例えば図2を参照して記述されたような実質上管状のセパレータが使用される。
【0074】
電極/セパレータのデザインについて更に考慮すべきことは、セパレータを電極及び電流コレクタシートと略同じ厚さのシートとして提供すべきか、又は電極の一方又は両方をセパレータ層に入れ込むべきかと言うことである。後者の場合、セパレータは一方の電極シート用の袋として機能し、効果的に電極層を包み込む。或る実施形態の場合、陰極をセパレータ層に包み込むことは樹枝状突起形成の防止に役立つ。しかし、他の実施形態の場合、電極を包み込まないバリヤ層シートを使用すれば樹枝状突起の貫通を防止するのに十分である。
【0075】
セパレータは此処に記述されるようなジェリイロール及びペンシル型セル構成バッテリ用に例えば図2及び3を参照して此処に記述されたようにセルの中へと合同される。
【0076】
電解質
ニッケル−亜鉛セルに関連する或る実施形態の場合、亜鉛電極内の樹枝状突起の形成及びその他の形態の物質の再分配が電解質成分によって限定される。好適な電解質成分の例は此処に参照により組み込まれる1993年6月1日にM.Eisenbergに対して発行された米国特許5215836号に記載されている。或る場合において、電解質には(1)アルカリ又はアルカリ土金属の水酸化物、(2)アルカリ又はアルカリ土金属の溶解性フッ化物、及び(3)ホウ酸塩、ヒ酸塩、及び/又はリン酸塩(例えばホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、及び/又はリン酸ナトリウム又はカリウム)が含まれる。一特殊実施形態の電解質の場合、約4.5から10当量リットルの水酸化カリウム、約2から6当量リットルのホウ酸又はメタホウ酸ナトリウム、及び約0.01から1当量のフッ化カリウムが含まれる。高級応用の特殊な好適電解質は約8.5当量リットルの水酸化物、約4.5当量リットルのホウ酸、及び約0.2当量のフッ化カリウムを含むものである。
【0077】
本発明はEisenbergの特許に記載された電解質成分に限定されるものではない。一般的に、所望の特殊応用面での判定基準に従うならば、いずれの電解質成分でも十分である。高パワーの応用の場合、電解質は良好な導電性が要求される。良好なサイクル寿命が望ましい場合、電解質は樹枝状物の生成しにくいものがよい。本発明の場合、適当なセパレータ層と共にホウ酸塩及び/又はフッ化物を含む水酸化カリウム電解質を使用すると樹枝状物の形成が減少し、より頑丈で長寿命のパワーセルが達成される。
【0078】
或る特殊実施形態の場合、約3から5当量リットルの過剰水酸化物(例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び/又は水酸化リチウム)が電解質成分に含まれる。これは陰極が酸化亜鉛に基づく電極である仮定のもとである。亜鉛酸カルシウムの陰極の場合には、その他の電解質方式が適当であろう。一実施形態の場合、約15から25重量%の水酸化カリウム、約0.5から5.0重量%の水酸化リチウムの構成の電解質が亜鉛酸カルシウムに好適である。
【0079】
種々の実施形態の場合、液体及びゲルが電解質に含まれてよい。ゲルの電解質には、オハイオ州ClevelandのNoveonから入手可能なCARBOPOLRのような増長剤が含まれても良い。好適な実施形態の場合、活性電解質成分の一部分がゲル状である。特殊実施形態の場合、電解質の約5〜25重量%がゲルであり、ゲル成分の約1−2重量%がCARBOPOL(登録商標)である。
【0080】
場合により、本願にすべての目的で参照により組み込まれる、発明の名称を「Electrlyte Composition for Nickel Zinc Batteries」とする2006年2月1日にJ.Phillips及びS.Mahantaによって提出された米国特許7550230号に記載されたように、電解質には相対的に高濃度のリン酸塩イオンが含まれてもよい。
【0081】
陰極
ニッケル−亜鉛バッテリに応用される陰極は下記の如く、此処に記載された界面活性剤でコーティングされた粒子、腐食抑制剤、浸潤剤などの一種以上と共に、亜鉛或は亜鉛酸イオンの電気的活性源を一種以上含むものである。 電極は、その製造の時に、クーロム容量、活性亜鉛の化学的構成、多孔性、曲げ特性のような物理的、化学的、形態的特性によって特徴付けられるものである。
【0082】
或る実施形態の場合、電気化学的活性亜鉛源は、酸化亜鉛、亜鉛酸カルシウム、金属亜鉛、及び種々な亜鉛合金から選ばれる一種以上から成る。これらの物質はいずれも製造中に供給及び/或は通常のセル周期の間に生成されるものである。特別な例として、亜鉛酸カルシウムが考慮されるが、これは例えば酸化カルシウムと酸化亜鉛とを含むペースト或はスラリイから製造出来るものである。
【0083】
充電式亜鉛アルカリ性電気化学的セルの陰極の活性物質には亜鉛金属(又は亜鉛合金)粒子が含まれて良い。亜鉛合金が使用される場合、実施形態によっては、これにビスマス及び/又はインジウムが含まれて居てもよい。実施形態によっては、百万に対して約20部未満の鉛が含まれてもよい。この構成条件を満たし、市場で入手可能な亜鉛合金として、カナダのNoranda社によるPG101がある。或る実施形態の場合、約0.05重量%の鉛が此処に記載されるニッケル−亜鉛セルの電気化学的活性亜鉛金属成分に含まれる。
【0084】
或る実施形態の場合、亜鉛金属粒子は錫及び/又は鉛でコーティングされてよい。亜鉛粒子をコーティングする場合、鉛や錫の塩が亜鉛粒子、増長剤、及び水を含む混合物の中に加えられる。亜鉛金属は酸化亜鉛及び他の電極成分の存在下でコーティング可能である。鉛又は錫でコーティングされた亜鉛粒子を含む亜鉛電極は一般的に電解質内にコバルトが存在するとガス放出をしにくい。亜鉛の導電性マトリクスがそのままであり、貯蔵期間の放電が減少すると、セルのサイクル寿命及び貯蔵期間が向上する。本発明の陰極に好適な活性物質の例は更に発明の名称を「Pasted Zinc Electrode for Rechargeable Nickel−Zinic Batteries」とするJ.Phillips et.al.によって2009年5月18日に提出された米国特許出願12/467993号に記載されており、これは本願にすべての目的で参照により組み込まれる。
【0085】
亜鉛活性物質は粉末状、粒子状などでよい。亜鉛電極のペースト材料内部の各成分が比較的小さい粒径であることが望ましい。これは、粒子が浸透或はその他によって陽極と陰極の間のセパレータを傷害する可能性を減少する為である。
【0086】
電気化学的活性亜鉛成分(及びその他の電極粒子成分)を殊に考慮する場合、かような成分の粒子サイズは約40又は50ミクロメートル未満であることが望ましい。或る実施形態の場合、粒子サイズは約40ミクロン未満であり、即ち平均直径が約40ミクロン未満であると言うことである。このサイズ体制には鉛でコーティングされた亜鉛又は酸化亜鉛粒子も含まれる。或る実施形態の場合、物質はその粒子の約1%未満の主次元(例えば直径、又は主軸)が約50ミクロメートル未満であることで特徴付けされる。このような組成物は例えば篩いわけ又はその他の大粒子を除去するように亜鉛粒子を処理することで製造可能である。此処に記載される粒子サイズ体制は亜鉛金属のみならず酸化亜鉛及び亜鉛合金の粉末にも応用されるものである。
【0087】
電気化学的活性の亜鉛成分に加え、陰極は更にイオン移送、電子移送(例えば導電性の向上のため)、濡れ、多孔性、構成的完全性(例えば結合性)、ガス放出、活性物質の溶解性、バリヤ性能(例えば電極から脱出する亜鉛の量の削減)、腐食防止など電極内でのプロセスを容易にしたり、影響を与えたりする一種以上の物質を追加的に含むものでよい。
【0088】
結合、分散、及び/或はセパレータの代用物たることの目的として、陰極には種々の有機物が添加され得る。その例として、ヒドロキシルエチルセルローズ(HEC)、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、遊離酸の形態のカルボキシメチルセルローズ(HCMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレンスルフォネート(PSS)、ポリビニルアルコール(PVA)、nopcospeprse 分散剤(京都府のSan Nopco Ltd.より入手可能)などがある。
【0089】
或る実施形態の場合、PSSやPVAのような重合体材料は陰極内でセパレータにとって危険となる鋭い或は大きな粒子を埋め込む目的で、ペースト構成(コーティングではなく)に混入してもよい。
【0090】
此処で電極構成を定義する場合、これは形成サイクリングの間又はその後、又はセルが例えば携帯用ツールの使用で充放電サイクルを繰り返す間又はその後のものであるばかりでなく、製造過程で得られた構成(例えばペースト、スラリ、又は乾式製造方式)に応用可能である。
【0091】
本発明の範囲内の種々の陽極構成は以下の文献に記載されて居り、これらの文献はすべてあらゆる目的に対して参照して本願に合同されるものとする。国際公開公報WO02/39517(J.Phillips)、国際公開公報WO02/39520( J.Phillips )、国際公開公報WO02/39521、国際公開公報WO02/39534( J.Phillips )、米国特許公開2002182501号。上記文献に於ける陰極添加剤の例として、シリカ、各種アルカリ土金属のフッ化物、遷移金属、貴金属がある。
【0092】
留意すべきことは、或る特種な性質を得る為に、何種もの物質を陰極に加えることが出来るが、これらの性質は陰極以外のバッテリ成分によって導入されることが出来ると言うことである。例えば、電解質内での亜鉛の溶解度を減少させる為の物質は、陰極によっても導入されるか否かを問わず、電解質或はセパレータ(陰極にもまた与えられて居るか否かを問わず)の中に供給されてもよい。そのような物質の例にはリン酸塩、フッ化物、ホウ酸塩、亜鉛酸塩、ケイ酸塩、ステアリン酸塩などがある。上記された電極添加剤のその他の例で、電解質及び/又はセパレータの中に付与されてもよいものとして、インジウム、ビスマス、鉛、錫、カルシウムなどのイオンがある。
【0093】
例えば、或る実施形態の場合、陰極は酸化ビスマス、酸化インジウム、及び/叉は酸化アルミニウムのような酸化物を含む。酸化ビスマスと酸化インジウムとは、亜鉛と反応して電極に於けるガス放出を低減する。酸化ビスマスは乾燥状陰極構成に対し、重量で約1%―10%の間の濃度で与えられる。これで、水素と酸素の再結合を容易にすることが出来る。酸化インジウムは、乾燥状陰極構成に対し、重量で約0.05%〜1%の間の濃度で存在してよい。酸化アルミニウム、乾燥状陰極構成に対し、重量で約1%〜5%の間の濃度で供給されて良い。
【0094】
或る実施形態の場合、電気的活性亜鉛物質の耐腐食性を向上し、それによって貯蔵期間を延長させるように、一種以上の添加剤を加えてもよい。貯蔵期間は、バッテリセルが商業的に成功するか不成功に終わるかについて決定的な要素である。バッテリは本来不安定なものであるから、陰極をも含めてバッテリの成分などは、化学的に有用な形態で保存されるように努力が必要である。何週間も何ヶ月も使用しない中に、電極物質が腐食したり、その他の理由で多分に変質すれば、貯蔵期間の短い事でこの値打ちは限られてしまう。
【0095】
電解質内での亜鉛の溶解度を減らす為に加えられるアニオンの例として、燐酸塩、フッ酸塩、ホウ酸塩、珪酸塩、ステアリン酸塩などがある。一般的にこれらのアニオンは乾燥状陰極構成に対し重量で約5%以内の濃度で陰極内に存在してよい。これらのアニオンの中、少なくともあるものはセル周期の間に溶液中に入り、亜鉛の溶解度を減少させるものと思われて居る。これらの材料を含んだ電極構成の例は以下の特許及び特許出願に記載されて居り、これらは総て、あらゆる目的において参照により本願に組み込まれる。米国特許6797433号(「Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Negative toZinc Potential」、発明者 Jeffrey Phillips, 2004年9月28日発行)、米国特許6835499(「Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Positive to Zinc Potential」、発明者 Jeffrey Phillips, 2004年12月28日発行)、米国特許6818350(「Alkaline Cells Having Low Toxicity Rechargeable Zinc Electrodes」、発明者Jeffrey Phillips, 2004年11月16日発行)、PCT特許出願PCT/NZ02/00036(公開番号WO02/075830号、発明者 Hall,et al.2002年3月15日出願)。
【0096】
ペンシル型セル構成には、此処に記述された導電率増加物質、腐食防止剤、濡れ(又は灌漑)剤、及びゲル化剤のような一種以上の追加的物質と共に、亜鉛又は酸化亜鉛の一種以上の電気的活性源を含むゲル化された陰極が含まれてよい。電極は、その製造の時に、クーロム容量、活性亜鉛の化学的構成、多孔性、曲げ特性のような物理的、化学的、形態的特性によって特徴付けられるものである。
【0097】
一実施形態の場合、ゲル化された陰極にはゲル化剤及びアルカリ電解質に結合した固体混合物が含まれる。この固体混合物には亜鉛及び/又は酸化亜鉛が含まれる。或る実施形態の場合、固体混合物には重量で0%から約30%の間の亜鉛と重量で約65%から100%の間の酸化亜鉛が含まれる。電気化学的活性亜鉛成分以外に、固体混合物はより少量の例えば此処に記述された灌漑剤、結合剤のようなものも含んでよい。固体混合物は電解質及びゲル化剤と結合されてゲル化した陰極を形成する。此処で陰極の成分の濃度に関して「重量で」というのは添加された電解質を除去した乾燥された成分に基づいたことを指す。
【0098】
電気化学的活性の亜鉛成分に加え、陰極は更にイオン移送、電子移送(例えば導電性の向上のため)、濡れ、多孔性、構成的完全性(例えば結合性)、ガス放出、活性物質の溶解性、バリヤ性能(例えば電極から脱出する亜鉛の量の削減)、腐食防止など電極内でのプロセスを容易にしたり、影響を与えたりする一種以上の物質を追加的に含むものでよい。
【0099】
導電性試薬はゲル化された陰極の体積の約35%まで(特殊実施形態では約5と30%の間)占めるものでよい。電子導電率を向上するために陰極に加えられる物質の例には本質的に電子導電率の高い種々の電極とコンパチブルな物質がある。厳密な濃度は勿論選択された添加物に依存する。ゲル化された陰極用の導電性試薬には炭素(、界面活性剤でのコーティングの有無を問わず)、窒化チタン、亜酸化チタン、ビスマス、錫粉末、又はビスマスと錫の酸化物などの(形成時に金属に変換する)セラミクが含まれる。導電性物質は粉末、泡状体、繊維、又はこれらの結合体の形態でよい。或る実施形態の場合、任意的に錫又は亜鉛でコーティングされた泡状の銅が導電性マトリクスとして使用される。此処に記載される相対的に厚手の陰極を殊に高率で良好な作用性能を維持するため、相対的に高濃度の導電性添加物が必要かもしれない。
【0100】
此処に記述されるゲル化された陰極用のゲル化剤にはカルボキシメチルセルローズ、交差結合タイプ分枝型ポリアクリル酸、天然ゴム質、CARBOPOLRが含まれる。此処では陰極が「ゲル化された」電極と記述されているが、本発明がこれに限定されるものでないことに留意されたい。ペンシル型セル用の陰極は代行的にスラリ、ペースト、固体混合物などとして提供されてよい。
【0101】
本発明は一実施形態においてゲル化された亜鉛陰極を製造する方法であって、これは(i)炭素粒子を界面活性剤で処理して界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を製造する工程と、(ii)界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を少なくとも電気化学的活性亜鉛と結合して均等的に分散された混合物を製造する工程と、(iii)均等的に分散された混合物をゲル化剤と結合する工程とから成るものである。実施形態には界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を含む此処に記載される炭素粒子が含まれる。
【0102】
上記のように、陰極に添加される導電性繊維は電極を灌漑又は浸潤させる役を果たす。界面活性剤でコーティングされた炭素繊維はこのような物質の一例であるが、その他の物質も濡れを容易にする為に含まれてよいと理解されるべきである。そのような物質の例には酸化チタン、アルミナ、シリカなどがある。
一般的に、これらは乾燥状陰極構成に対して重量で約10%以内の濃度で付与される。このような物質については米国特許6811926号(「Formulation of Zinc Negative Electrode for Rechargeable Cells Having an Alkaline Electrolyte」、発明者 Jeffrey Phillips, 2004年11月2日発行)に記載されてあり、この特許は本願に全体としてあらゆる目的に対して参照により組み込まれる。
【0103】
此処に記述される亜鉛陰極は亜鉛陰極の電気化学的活性成分とニッケル陽極との間の導電的交信を達成する物質を含むものである。上記のように、本発明の発明者は電極の全体的電流搬送能力が陰極の中へ界面活性剤でコーティングされた粒子を導入することで向上されることを発見した。従って、本発明はその一面において界面活性剤でコーティングされた粒子を含む陰極に関するものである。導電性粒子、殊に繊維の物質には炭素、セラミク、金属、酸化金属、及びそれらの結合物が含まれる。これらの結合物には例えば炭素繊維、金属化された炭素繊維、錫、及び鉛(殊に錫及び鉛でコーティングされた亜鉛繊維)が含まれるが、それに限定されるものではない。本発明は一面において電気化学的活性の亜鉛と界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を含む亜鉛陰極に関する。別の実施形態の場合、炭素繊維は上記のように金属化されたものである。
【0104】
界面活性剤でコーティングされた繊維はその延長された構成とネットワークを形成する能力のために極めて有用である。界面活性剤でコーティングされた粒子は、殊に此処に記述される繊維の場合、例えば上記の様に灌漑剤として、及び/又は他の粒子や繊維と共に他の機能を有することになる。或る実施形態の場合、界面活性剤でコーティングされた繊維とは炭素繊維のことである。
【0105】
界面活性剤でコーティングされた炭素繊維は酸化ビスマス、亜鉛などの他の活性物質と共に陰極内で均等的に分配されて非常に良好な導電性マトリクスを形成するのに役立つ。その結果、約10C又はそれ以上、例えば約11C又は17Cの割合又はそれ以上の放電率が得られる。
【0106】
上記のように、炭素繊維が使用される場合、その炭素繊維の次元は厳密に統制される。長さはセパレータを貫通する事態が増加しないよいに選択されなくてはならない。例えばジェリイロール構成の場合、殊に400ミクロン程の大きい直径と組み合わせられる場合、2mmでは長過ぎる。或る実施形態の場合、炭素繊維は長さが約10μmから500μmの間であり、直径は約1μmから50μmの間であり、長さと幅の比は約50:1から約10:1の間である。別の実施形態の場合、炭素繊維は長さが約100μmから400μmの間であり、直径は約2.5μmから40μmの間であり、長さと幅の比は約40:1から約10:1の間である。更に別の実施形態の場合、炭素繊維は長さが約100μmから300μmの間であり、直径は約5μmから20μmの間であり、長さと幅の比は約30:1から約10:1の間である。炭素繊維はサイズが小さいと電極内で均等に分散されて導電性が更に向上する。或る実施形態の場合、繊維はコーティングとか電極混合物への添加などの工程の前に篩い分け、濾過などのサイズを調節するプロセスを必要としない形態で供給される。
【0107】
此処に記述される炭素繊維は一般に主として炭素原子から成る薄手の繊維である。炭素原子は繊維の長軸と略平行に整列した顕微鏡的結晶内に結合されて居る。結晶的整列によって、繊維はサイズに拘らず極めて強固である。強張力、軽重力、及び低熱拡張などの特性により、炭素繊維は上記のような優れた導電性、ウイッキングのみならず、軽量や構成的完全性を亜鉛陰極に付与するので、此処に記述される電極として非常に有用である。或る実施形態の場合、此処に記載されるような亜鉛電極で炭素繊維は陰極の乾燥重量の3重量%以下であり、別の実施形態の場合、陰極の乾燥重量の2重量%以下である。
【0108】
本発明に好適な炭素繊維は当業者に知られた多くの方法で製作可能である。炭素繊維は例えば時として黒鉛に転換する炭素の長くて薄いフィラメントから製造可能である。ポリアクリロニトリル(PAN)の酸化及び熱分解が普遍的な炭素フィラメントの製法である。普遍的な製法ではPANを空気中で約300℃に熱して水素結合の多くを破壊し、物質を酸化する。酸化されたPANは次いでアルゴンのような不活性ガスの炉に入れられ、約2000℃に加熱され、これにより黒鉛化され、分子結合個性が変わる。加熱されるとこれらの鎖は左右交互の結合(即ちハシゴ型重合体)となり、典型的に炭素を93〜95%含む狭いグラフェンのシートを形成する。炭素繊維はPANの代わりにピッチ又はレイヨンのような炭素質の前駆体を使用しても製造可能である。熱処理プロセスによって炭素は例えば係数、強度、又は導電率を向上させることができる。1500℃から2000℃の範囲で加熱(炭素化)された炭素は非常に高度な張力(820,000psi,又は5,650MPa,又は5,650N/mm2)を示す一方、2500℃から3000℃の範囲で加熱(黒鉛化)された炭素繊維はより高い弾性係数(77、000,000psi,又は531GPa,又は531kN/mm2)を示す。sp2及びsp3の相対量で炭素繊維の導電率は可変であるが、導電率は此処に記述する利点の重要な一面である。黒鉛炭素の形態学的特性により、繊維にはより高度の導電率が得られよう。
【0109】
上記のように、此処に記述される亜鉛陰極に使用される粒子は一般的に界面活性剤でコーティングされている。界面活性剤は浸潤剤であり、液体の表面張力を低下させて広がりを容易にし、例えばガス―液体、液体―液体、及び固体―液体インタフェイスのような二種の物質の間の界面張力を低下するものである。此処に記載される界面活性剤はイオン型でも非イオン型でもよい。或る実施形態の場合、界面活性剤は重合体の多角形ファミリの中の非イオン型メンバーである。特殊実施形態の場合、界面活性剤はトリトンである。更なる特殊実施形態の場合、界面活性剤はTriton X−100である。X−100(C1422O(C24))は親水性酸化ポリエチレン基(平均9.5の酸化エチレン単位)と炭化水素親油性4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル基を有する。当業者にはその他のトリトンを含む他の界面活性剤も此処に記載される界面活性剤でコーティングされた繊維の製造に好適であることが明白であろう。本発明に好適な界面活性剤には少なくともトリトンの一種、ポロキサマ、及びフルオロ界面活性剤(例えば Dupont Corporation of Wilmington DE から入手可能であるZonylの商標を持つ一連のフルオロ界面活性剤)がある。
【0110】
界面活性剤は以下に記載するような利益を亜鉛陰極に付与し得るものである。(1)電極の製造工程における混合の容易化(処理されていない炭素は電極の製造に使用される液体に浮上することが観察されている)、(2)界面活性剤は炭素表面に親水性を付与するので、灌漑性の向上、(3)炭素の堆積に体する抵抗の向上(これにより炭素は導電性向上剤及び灌漑剤として機能し続けることが出来る)、及び(4)亜鉛電極の通常運転中の水素ガス生成の低下。
【0111】
上記のように、加熱処理された炭素繊維及び/又は例えば熱分解法によって増加した酸素成分により親水性表面が増加して表面エネルギイの増加したものは導電性(及びウイッキング作用)が向上する。界面活性剤のコーティングを有する炭素繊維は向上されたウイッキング性能がある。上記のように、理論にとらわれる意図ではないが、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維は電子的導電性を増加することにより、電極表面での均等的反応を促進すると信じられる。界面活性剤のコーティングは炭素繊維の加熱処理で付与された改良された導電性などを維持するものとも信じられる。従って本発明の一面は炭素繊維が予め約2000℃から約3000℃の間で加熱処理されたものである界面活性剤でコーティングされた炭素繊維に関するものである。界面活性剤のコーティングは繊維の親水性を向上し、促進された電解質の運動によって導電性を維持し、活性亜鉛が分解して炭素繊維へ堆積するのを防止する。本発明の他の一面は(i)炭素繊維を約2000℃から約3000℃の間で加熱処理する工程と、(ii)加熱処理された炭素繊維を界面活性剤にあてる工程とからなる界面活性剤でコーティングされた炭素繊維の製法に関するものである。一実施形態の場合、この界面活性剤は多角形ファミリの非イオン型界面活性剤であり、別の実施形態の場合、これはトリトンである。更に別の実施形態の場合、これはTriton X−100である。
【0112】
此処に記載される亜鉛陰極において、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維は電極に亘って均一的に分散されているものであり、即ち顕微鏡による目視検査によっても塊などは見えないものである。通常添加される炭素繊維は電極全体に亘って均一に分配される。成分が好適に分散されるように剪断刃で混合が実施され、炭素繊維の均一的分散は顕微鏡解析で確認される。この均一的分散で、亜鉛及び酸化ビスマスなどのその他の活性物質と共に導電性マトリクスが形成される。この炭素繊維を伴う電極は放電充電のサイクルにあたって優良な導電率及び接続性を維持する。
【0113】
上記のように、鉛が亜鉛粒子のコーティングに使用される実施形態の場合、この鉛は亜鉛電極活性物質の約0.05重量%である。亜鉛陰極、活性及びその他の物質の中の鉛の総量は約0.05%未満である。此処に記述される炭素繊維は他の金属によって金属化されてもよい。或る実施形態の場合、炭素繊維は鉛、錫、インジウム、銀、及びこれらの合金の混合物の中の少なくとも一種で金属化されたものである。或る実施形態の場合、炭素繊維は鉛で金属化される。特別な実施形態の場合、炭素繊維は金属塩溶液のスラリで金属化される。更に特別な実施形態の場合、炭素繊維は繊維を鉛及び/又は錫で金属化するために鉛塩及び/又は錫塩で処理される。
【0114】
上記のように、亜鉛陰極の製造には安定した粘性を有して亜鉛電極の製造にあたって使用しやすいスラリ/ペーストが使用されてよい。かようなスラリ/ペーストは.任意的に鉛及び錫の塩を亜鉛粒子、増長剤、及び例えば水であるような液体を含む混合物に加えた亜鉛粒子を有するものである。酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(Bi23)、分散剤、及びテフロン(登録商標)のような結合剤も添加されてよい。発明のこの面において好適な結合剤にはPTFE、スチレン、ブタジエンゴム、ポリスチレン、及びHECがある。発明のこの面において好適な分散剤には石けん、有機物分散剤、アンモニウム塩分散剤、ワクス分散剤があるが、それらに限定されるものではない。発明のこの面に好適であって市場で入手可能な分散剤の一例にNopcosperse(商標)(Nopco Paper Technology Australia Pty. Ltd.から入手可能な分散剤の液体シリーズの商標名)がある。発明のこの面に好適な液体には水、アルコール、エーテル、及びこれらの混合物があるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
界面活性剤でコーティングされた粒子は亜鉛陰極に合同される。また、上記のように、この粒子は任意的に金属化された炭素繊維であってよい。一般的に炭素繊維は界面活性剤、任意的に金属でコーティングされ、或る時点で他の成分に添加されて負電流コレクタに応用するスラリ/ペーストが製造される。炭素繊維は先ず例えば溶液を含む金属塩への露出、プラズマ蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、及びその他の当業者に周知の方法で金属化され、次いで界面活性剤に露出される。炭素繊維は界面活性剤で処理された後に金属化プロセスで処理されても良い。叉、炭素繊維は金属化と界面活性剤でのコーティングを単一の工程で処理してもよい。
【0116】
或る実施形態の場合、炭素繊維は増長剤と液体を含む混合物に金属塩と界面活性剤を加えてコーティングされる。界面活性剤は例えばTritonのような上記のものであってよい。金属塩は例えば鉛塩、錫塩のような、適当なものでよい。金属塩の対イオンは、例えば液体の中でより可溶性であって、コーティングを援助するものが選択される。増長剤は電極を形成するのに使用される最終的ペースト又はスラリの形成を援助するものである。増長剤にはカルボキシメチルセルローズ(CMC)、ヒドロキシエチルセルローズ(HEC)、ヒドロキシルプロピルメチルセルローズ(HPMC)などのようなものが含まれるが、これらに限定されるものではない。液体は水性、有機物、又はその混合物であってよい。例えば水がそのまま、又は混合体成分の可溶性化及び/又は懸濁化を援助するためにアルコール又はエーテルと共に使用されてよい。揺変性試薬も任意的に添加されてよい。特殊実施形態の場合、炭素繊維はこれらを水中で例えば酢酸鉛のような鉛塩、CMC、及びTriton X−100と結合することによりコーティングをする。別の実施形態の場合、炭素繊維は2%の水性溶液の中で12時間別々にTriton X−100で処理される。次いで例えば酢酸鉛のような金属塩が例えばCMCのような増長剤に添加されて混合物を形成し、その中で炭素繊維は界面活性剤でコーティングされる。代行的叉はそれと共に、混合物が酸化物の還元に必要な負のレドクス電位を亜鉛又は亜鉛に接触している繊維に与える亜鉛を含むペーストの成分に添加される時、金属化プロセスが起こってもよい。
【0117】
界面活性剤でコーティングされた炭素繊維は次いでその他の試薬と混合されて亜鉛陰極に合同され、負電流コレクタへの応用のためのスラリ/ペーストが形成される。まず酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(Bi23)、分散剤、及びテフロンのような残りの亜鉛電極成分が繊維コーティング用の混合物に添加される。次いで残りのスラリが陰極に合同される。負電流コレクタのコーティングに使用されるスラリ/ペーストを形成するには、不溶性腐食防止剤のようなその他の添加剤が含まれてもよい。これらの成分はスラリに添加される時点で混合前の粉末の形態であり、混合の後に有効となるスラリ又はペーストを形成するものでもよい。陰極製造はその一面において製造期間に亘ってのスラリやペーストの安定性に関するものである。種々の実施形態の場合、スラリ/ペーストはスラリの準備からそれが下地層にペーストされるまでの4〜6時間からそれ以上かかるものであるプロセスの間に亘って安定であることが必要である。スラリ/ペーストは少量の鉛/錫の添加で安定化されることが知られている。或る実施形態の場合、可溶性の鉛及び可溶性の錫が別個に添加されてよい。
【0118】
亜鉛電極の或る製法は以下の工程によって特徴付けされることができる。(i)亜鉛及び酸化亜鉛の中の少なくとも一つから成る亜鉛粒子の上へ鉛及び/又は錫をコーティングする工程、(ii)炭素粒子を界面活性剤でコーティングしてコーティングされた炭素粒子を製造する工程、(iii)コーティングされた亜鉛粒子、コーティングされた炭素粒子、酸化ビスマス、分散剤、結合剤、及び液体からペーストを形成する工程、及び(iv)ペーストを亜鉛電極に合同させる工程。此処に記載された炭素粒子や殊に炭素繊維のコーティング方法はこの製法に応用可能である。本発明のこの面に好適な結合剤にはPTFE、スチレン、ブタジエンゴム、ポリスチレン、及びHECが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明のこの面に好適な分散剤には石けん、有機物分散剤、アンモニウム塩分散剤、ワクス分散剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明のこの面の目的に好適な市場で入手可能な分散剤はNopcosperse(商標)(Nopco Paper Technology Australia Pty. Ltd.から入手可能な分散剤の液体シリーズの商標名)である。本発明のこの面に好適な液体には水、アルコール、エーテル、及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
別の実施形態の場合、亜鉛電極の製法には以下の工程が含まれる。(i)炭素粒子を界面活性剤で処理して界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を製造する工程、(ii)界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を少なくとも電気化学的活性亜鉛と結合して均等的に分散された混合物を製造する工程、及び(iii)下地電流コレクターを均等的に分散された混合物でコーティングする工程。一実施形態の場合、炭素粒子は炭素繊維である。別の実施形態の場合、下地電流コレクタは均等的に分散された混合物によってコーティングされた後に加熱される。一実施形態の場合、均等的に分散された混合物によってコーティングされ、分離された下地電流コレクタには焼却プロセスが施行され、ここで亜鉛電極は400℃もの高温で一時間まで加熱されてよい。或る実施形態の場合、電極は不活性の雰囲気において約250℃から約300℃の間で約30分から約60分の間加熱される。別の実施形態の場合、下地電流コレクタは不活性の雰囲気において約260℃へと約45分間加熱される。電極が焼却工程で製造される或る実施形態の場合、或る界面活性剤は焼却工程によって除去されることがある。任意的に、焼却工程の条件は界面活性剤が全部は除去されないように選択される。例えばトリトンのような界面活性剤は各種の分子量のものが市場で入手可能なので、界面活性剤は焼却プロセスによって完全には除去されないように分子量が選択される。一実施形態の場合、ペースティングされた電流コレクタは約200℃から約400℃の間で約30分から約120分の間加熱される。別の実施形態の場合、ペースティングされた電流コレクタは約250℃から約300℃の間で約30分と約60分の間加熱される。Triton X−100が界面活性剤として使用される特別な実施形態の場合、ペースティングされた電流コレクタは約260℃へと約45分間加熱される(Triton X−100の沸騰点は約270℃である)。この加熱プロセスは空気中で行われるが、電流コレクタ物質(例えば銅)の酸化及び界面活性剤の分解を限定するために不活性雰囲気又は真空の中で行われてもよい。
【0120】
亜鉛陰極を例えばニッケル−亜鉛バッテリのジェリイロール電極集合体に合同する前に、下地層は典型的に周囲の温度まで冷却される。一実施形態の場合、このジェリイロール電極集合体には(上記のような)熱処理された亜鉛陰極で巻かれたニッケル陽極が含まれる。この実施形態に好適な界面活性剤には此処に記載されたような非イオン型とイオン型の両方が含まれる。
【0121】
ペンシル型セルに関し、陰極電流コレクタは例えば図2に関連して説明されたようにゲル化された陰極の中に位置される。製造費を意図する一方、電流収集効率を最大化するように考慮される。一実施形態の場合、陰極電流コレクタは真鍮、銅、スチール、これらの結合物の中の一つ、又は合金から製造される。或る実施形態の場合、陰極電流コレクタには水素生成抑制剤が含まれる。此処に記載の水素生成抑制剤には錫、鉛、ビスマス、銀、インジウム、及び炭素の中の少なくとも一つが含まれる。電流コレクタに使用される物質には表面のコーティングのみのものもある。そのような実施形態の場合、コーティングはメッキ(電解及び無電解メッキ)、塗装、噴霧などで行われる。
【0122】
陰極電流コレクタは典型的にゲル化された陰極に挿入された「釘」のタイプの構成であるが、それに限定されるものではない。「釘」は細くて実質的に円筒形で、任意的にゲル化された電極に向けて先細い形状である。
【0123】
電流収集効率とゲル化された陰極の中の活性物質の量との間のバランスが重要である。電流コレクタが実質上円筒形状である場合、ゲル化された陰極と実際接触している電流コレクタの直径と長さとが電流コレクタとゲル化された陰極の間のインタフェイス面積を決定するものである。或る実施形態の場合、電流コレクタの直径はバッテリの直径の約5%から約20%の間、又はバッテリの直径の約10%から約15%の間、又はバッテリの直径の約10%から約12%の間である。従って、ゲル化された陰極と実際接触している電流コレクタの長さは重要なパラメタである。上記のように電流コレクタの長さが与えられた或る実施形態の場合、セパレータ内のゲル化された陰極(中空な円筒形陽極に内在)の長さL1とゲル化された陰極内に位置する陰極電流コレクタの対応する部分の長さL2とは以下の関係にある:0.5≦L2/L1≦0.95、又は0.6≦L2/L1≦0.9、又は0.75≦L2/L1≦0.85。
【0124】
他の実施形態の場合、表面積を増加して電流コレクタ効率を向上するために、陰極電流コレクタの形状を変更することが望ましい。或る実施形態の場合、陰極電流コレクタには表面積を増加する幾何学的部分が含まれている。従って、電流コレクタにはフィン、メッシュ、穿孔、螺旋状体、コイル、ジグザグ状体、尾根状体、及びその組み合わせが含まれてよい。一実施形態の場合、電流コレクタは穿孔された板、又は円筒である。別の実施形態の場合、電流コレクタは剛直なメッシュであり、例えば金属又は合金のメッシュを圧搾して電流コレクタに形成したものである。別の実施形態の場合、電流コレクタは穿孔された板、又は円筒(剛直性を付与するため)であり、その穿孔された金属面の上又は内部(円筒の場合)にメッシュ及び/又は泡体を有するものである。表面積を拡大するこのような実施形態の場合、電流コレクタの直径は重要度が減少するが、ゲル化された電極に挿入された電流コレクタの長さは放電、充電、及び再充電に使用可能なゲル化された電極の量を最大化するのに依然重要である。従って、此処に記載されるように表面積を増大させる(単に円筒形である形状に比較して)幾何学的形状の部分によって増加された表面積を有する電流コレクタは、平均直径が実質的に円筒形の電流コレクタに比して小さくてよい。
【0125】
最後に、此処に記載されるペンシル型バッテリは、陰極電流コレクタに電気的に接続される陰極端子板を含むものである。この端子板は図2に関連して記述された閉包206に合同されている。
【0126】
上記のように、界面活性剤でコーティングされた粒子は、それらが導電性セラミク、金属、炭素、又はそれ以外のものであっても、ジェリイロール電極構成及びペンシル型セル電極構成のいずれにおいても使用可能である。本発明の陰極に好適なジェリイロール亜鉛陰極製造プロセスは更に発明の名称を「Method of Manufacturing Nickel−Zinc Batteries”とするJ.Phillips及びJ.Zhaoによって2004年8月17日に出願された米国特許2005−0064292A1に記載されて居り、これは本願にすべての目的で参照により組み込まれる。
【0127】
亜鉛電極及びバッテリの性能
密閉型の充電式ニッケル−亜鉛バッテリはパワーツール及びハイブリッド電気乗用車のような高パワーの応用に開発されている。これらのバッテリは最大パワー密度が2000W/kg以上の極めて高率の充電放電能力を有するものである。
【0128】
上記のように、ニッケル−亜鉛セルの陰極の中に界面活性剤でコーティングされた繊維を使用すると、高率性能及が向上し、サイクル寿命が改善する。炭素繊維を使用すると陰極の導電性が向上し、叉電極を灌漑する高価な(例えば篩い分け工程のため)アルミナ繊維の機能を果たすように見えることが発見されて居る。
【0129】
導電性粒子、殊に此処に記載された繊維を亜鉛電極を使用するバッテリセルは多くの面で優秀な性能を供する。例えば、パワーツール、芝刈りなどの園芸用具、及び電気乗用車(ハイブリッド電気乗用車を含む)などの高率応用に使用される場合に長いサイクル寿命を提供する。或る実施形態の場合、これらのセルは一貫的に高率で使用される場合(例えば最低約5Cの放電率の場合、又は最低約10Cの充電率の場合、更には最低約25Cの場合)に最低約250Cの充電―放電サイクルを提供する。或る実施形態の場合、同様の高率条件で最低約500サイクル(又は700又はそれ以上のサイクル)を提供する。
【0130】
更に、形状の変更で一般のセルに比較して高率炭素繊維セルが改良されたように見える。炭素繊維は電極のペースティングにおいて有利である。亜鉛の電位で水素ガスを発生する炭素粒子の天然の傾向は、本発明の場合、界面活性剤及び鉛、錫、又は鉛―錫のコーティングを使用することで制御される。界面活性剤は電極の質量に亘って電解質の灌漑をも促進する。
【0131】
実験結果
例1 実験用セル
下記のように組成物1及び2が負電流コレクタのペースティング及びジェリイロール型ニッケル−亜鉛セルの製造に使用された。
【0132】
組成物1(テスト用):炭素繊維(100重量部、平均長さ100ミクロン、平均直径7ミクロン、Toho Tenex America of Rockwood TNから入手可能)が200重量部のTriton X−100の2%水性溶液でコーティングされた。ヒドロキシエチレンセルローズ(20重量部)及び1.4重量部の鉛塩が1400重量部の水に溶解され、これが混合物に添加された。更に以下のものが添加された:3000重量部のZnO、97重量部のBi23、16重量部のCa(OH)2、240重量部の60%テフロン結合剤を含む水性スラリ、及び900重量部の金属亜鉛粉末。
【0133】
組成物2(コントロール(制御、基準)用):組成物1と同じであり、アルミナ繊維を有し、炭素繊維、鉛、及びTriton X−100を含まない。
【0134】
組成物1及び2を各々負電流コレクタ下地層に付与し、他の成分は同じとして、最終的に標準的なサブCサイズのセルを製造した。これらのセルは以下の構成を有する電解質を使用した。760g H2O,1220g 45%水酸化カリウム溶液、84.7gリン酸ナトリウム(Na3PO4・12H2O)、59g水酸化ナトリウム、16.8g水酸化リチウム、3.2g酸化亜鉛(ZnO)。UBE製の微孔性50ミクロンセパレータ及びセルローズ―ポリビニルアルコールウィッキングセパレータが二つの電極の間に使用された。
【0135】
陽極は粒子間の導電性を供するコバルト(III)でコーティングされた層を含む水酸化ニッケルで準備された。高放電率性能用に導電性を追加すべく、コバルト金属粉末(2%)及びニッケル粉末(9%)が追加された。セルの充填と最初の形成電荷の印加の間に存在する1―2時間の浸潤の間に、添加されたコバルトは溶解し、陰極へと移動することができる。図8―13におけるデータに関するセルの陰極には0%のコバルト、5%のニッケル、0.2%のCa(OH)2、及び0.5%の酸化イットリウムが使用された。
【0136】
上記の総てのセルは同様に形成された。セルの形成とは最初の充電を意味する。各セルは91mAで20.5時間充電され、1Aで1.0Vへ放電された。次いで0.1Aで18時間、及び0.75Aで6.5時間充電された。次いでセルはサイクリングと老化について試験された。サイクリングの様相について、以下図を参照して説明する。コントロール用のセルにおいては、セルの運行中に電極を濡れた状態に保つため、陰極の灌漑にアルミナのような繊維が使用された。陰極に親水性界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を導入することにより、より良好な灌漑と良好な導電性が得られる。 図4Aは此処に記載された界面活性剤でコーティングされた炭素繊維セルに対するコントロールセル(アルミナ繊維)の10アンペアの放電におけるサイクル動作を示すものである。図4Aの上方二本の曲線はテストセル曲線(太線)である。コントロールセル曲線(細線)である。図4Bは界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を有するセルに対するコントロールセル(アルミナ繊維、細線)の10アンペアと20アンペア(24時間の休止期間付きで50サイクル毎に20アンペアの放電)の両方の場合のサイクル寿命を示すものである。図4A及び4Bはコーティングされた炭素繊維セルがアルミナ繊維(非導電性)を有するコントロールセルと同等であることを示している。
【0137】
図5A〜5Dは20アンペア放電曲線の夫々8、54、104、及び152サイクルで測定された放電容量(A−Hr)に対する電圧(V)のグラフである。界面活性剤でコーティングされた炭素繊維電極を含むセルはアルミナ繊維を含む電極を有するセル(点線はコントロール用)と比較された。殊に10Cの電流の場合において界面活性剤でコーティングされた炭素繊維が高放電性能を向上することが見出された。電極構成の導電率の向上と電気的活性物質の良好な接続性により、炭素繊維は有意義的にセル電位を改善する。これにより電極内のオーム抵抗低下が減少され、すべての電気的活性物質の参与の度合いが改良する。図6は10アンペア及び20アンペア以下の放電(50サイクル毎に20アンペア(10C))におけるコントロールセル(細曲線)と界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を含むセルの中点電圧の比較を示す。中点電圧とはフルの容量の50%が流出した時の電圧である。これは両方の運行電圧によって決定されるので、此の点における全体的電圧の極性化を反映するものである。セルのサイクルにおいて中点電圧が高くて不変であることは、電極の物理的変化が少ないことを意味する。炭素繊維セルで中点電圧は有意義的により高く、250サイクルに亘って改良が維持される。
【0138】
図7は30以下の放電(15C)におけるコントロールセル(二本の下方の細線)と界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を含むセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。約80サイクルに亘ってこれらの曲線は同等であるが、その後炭素繊維セルは殊に80から150サイクルに亘って有意義的な向上を示す。
【0139】
図8は20アンペア及び30アンペア(50サイクルごと)の放電(10C及び15C)におけるアルミナ繊維を含むコントロールセル(4走程)のサイクルインデクスに対する放電容量を示す。このデータから曲線が約211サイクルの後1200mAh以下に下がることが見られる。
【0140】
図9は20アンペア及び30アンペア(50サイクルごと)の放電(10C及び15C)におけるセル6個入りパック内の図8に示すコントロールセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。この条件でのコントロールセルのパックは出力が1200mAhよりかなり下がるまでに約160サイクルしかなかった。
【0141】
図10は30アンペアの放電(15C)における界面活性剤でコーティングされた炭素繊維を含むセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。このデータはテスト用のセルが約1200mAhで少なくとも260サイクル運行したことを示している。図8のデータはより厳しくない条件のもとでコントロール用のセルが1200mAhを211サイクルしか維持しないのに比し、この定常30アンペアの条件のもとでこれらのセルはかなりのストレスに拘わらず好適に作用する。
【0142】
図11は20アンペアの放電(10C)におけるセル9個入りパック内の図10に示すセルのサイクルインデクスに対する放電容量を示す。このデータは一つのパックが少なくとも240サイクルに亘って1200mAh、更に20サイクルに亘って同様のレベルを供することを示している。別のパックは約280サイクルに亘って略1200mAhの出力を、そして更に340サイクルまでそれに近いレベルを維持した。最高の理論的出力の50%(2000mAh)が360サイクルの後明白であった。
【0143】
図12は20アンペアの放電(10C)における炭素繊維セルに対するコントロールセル(アルミナ繊維)を示す。四個のテスト用及びコントロール用のセルが運行された。炭素繊維を有するテスト用セル(太線)がアルミナ繊維を有するコントロール用のセルより相対的に良好な性能を示した。
【0144】
図13は20アンペアの放電(10C)におけるセル9個入りパック内の炭素繊維セルに対するコントロールセル(アルミナ繊維)を示す。炭素繊維セル(太線)は181サイクルの後1200mAの出力を維持し、196サイクルに亘って同様であった。コントロール用セルパックは約175サイクルの後に出力を失った。
【0145】
例2 水素発生の低下
通常のセルと比較し、鉛、錫と共に電極から製造されたセルは水素ガス発生が40−70%も低い。更に、アルカリ性溶液の中の炭素は水素ガスを発生する傾向がある。
【0146】
亜鉛及びアルカリ性電解質の存在下におけるトリトンのコーティイングによる炭素繊維の水素ガス発生の触媒活性低下の効率を測定するために、0.5gの炭素繊維が2gのTriton X−100の2%溶液でコーティングされた。コーティングされた炭素繊維は5gの亜鉛と共に次いで760GgのH2O、1220gの水酸化カリウムの45%溶液、84.7gのリン酸ナトリウム(Na3PO4・12H2O)、59gの水酸化ナトリウム、16.8gの水酸化リチウム、及び3.2gの酸化亜鉛(ZnO)の構成物の溶液に浸潤させた。
【0147】
【表1】

【0148】
亜鉛の腐食によって発生するガスが収集され三日に亘って測定された。それと平行してコーティングされていない繊維を同じ溶液と使用し、溶液に繊維を添加せずに同じテストが実施された(5gの亜鉛が繊維なしでコントロール用として使用される上記の溶液に浸潤された)。表1はトリトンでコーティングされた炭素繊維がコーティングされていないもの(炭素繊維が添加されないのと同等)よりガスの発生が少ないことを示している。
【0149】
結果:2%のトリトンと鉛塩でコーティングされた炭素繊維は無繊維でコーティングのないコントロール用繊維と比較して水素ガスの発生が少ない。
【0150】
結論
亜鉛陰極の導電性は界面活性剤でコーティングされた炭素繊維の使用によって向上する。此処に記載される炭素繊維は酸化ビスマス、亜鉛金属などのその他の活性物質と共に亜鉛陰極内に電子的に導電性のマトリクスを形成する。此処に記載される亜鉛陰極はニッケル−亜鉛二次バッテリの中で殊に有用である。界面活性剤でコーティングされた炭素繊維は高度の放電特性を改善するので、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維セルは(非導電性)アルミナ繊維のコントロール用のセルと同等のサイクリング特性である。中点電圧は界面活性剤でコーティングされた炭素繊維セルの中で有意義的により高く、改良は250サイクルに亘って維持される。更に、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維セルはコントロール用のセルと比較して有意義的に向上された放電容量を維持するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的活性亜鉛と、界面活性剤でコーティングされた炭素繊維とを備える亜鉛陰極、及びニッケル陽極とを備える充電式ニッケル−亜鉛セル。
【請求項2】
前記電気化学的活性亜鉛は亜鉛と酸化亜鉛の中の少なくとも一つを含む、請求項1に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項3】
前記電気化学的活性亜鉛は、錫及び/又は鉛でコーティングされた約40ミクロン未満のサイズの粒子の形態である、請求項2に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項4】
前記鉛は亜鉛陰極活性物質に約0.05重量%未満含まれている、請求項3に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項5】
前記亜鉛陰極は陰極の乾燥重量で炭素繊維に約3重量%未満含まれている、請求項1に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項6】
前記炭素繊維は、長さが約10μmから500μmの間であり、直径が約1μmから50μmの間であり、長さと幅の比が約50:1から約10:1の間である、請求項5に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項7】
前記界面活性剤は非イオン型界面活性剤のポリグリコール族のメンバーである、請求項5に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項8】
前記界面活性剤はトリトン、ポロキサマ、及びフルオロ界面活性剤の中の少なくとも一つを含む、請求項5に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項9】
前記炭素繊維は鉛、錫、インジウム、ビスマス及び銀の中の少なくとも一つで金属化されている、請求項5に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項10】
前記ニッケル陽極はコバルト及び/又はコバルト化合物を含む、請求項5に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項11】
前記コバルト化合物は酸化コバルト、水酸化コバルト、及び/又はオキシ水酸化コバルトの中の少なくとも一つを含み、任意的に水酸化ニッケル粒子の上にコーティングされている、請求項10に記載のニッケル−亜鉛セル。
【請求項12】
電気化学的活性亜鉛と、界面活性剤でコーティングされた炭素粒子とを備える亜鉛電極。
【請求項13】
前記炭素粒子は炭素繊維である、請求項12に記載の亜鉛電極。
【請求項14】
前記炭素繊維は鉛、錫、インジウム、ビスマス及び銀の中の少なくとも一つで金属化されている、請求項13に記載の亜鉛電極。
【請求項15】
前記電気化学的活性亜鉛は、錫及び/又は鉛でコーティングされた約40ミクロン未満のサイズの粒子の形態である、請求項12に記載の亜鉛電極。
【請求項16】
前記鉛は亜鉛陰極活性物質に約0.05重量%未満含まれている、請求項15に記載の亜鉛電極。
【請求項17】
前記陰極の乾燥重量で炭素繊維に約3重量%未満含まれている、請求項13に記載の亜鉛電極。
【請求項18】
前記炭素繊維は長さが約10μmから500μmの間であり、直径が約1μmから50μmの間であり、長さと幅の比が約50:1から約10:1の間である、請求項13に記載の亜鉛電極。
【請求項19】
前記界面活性剤はトリトン、ポロキサマ、及びフルオロ界面活性剤の中の少なくとも一つを含む、請求項12に記載の亜鉛電極。
【請求項20】
亜鉛電極を製造する方法であって、
(i)亜鉛及び酸化亜鉛の中の少なくとも一を含む亜鉛粒子上に鉛及び/又は錫をコーティングする工程と、
(ii)炭素粒子を界面活性剤でコーティングしてコーティングされた炭素粒子を作成する工程と、
(iii)コーティングされた前記亜鉛粒子、コーティングされた前記炭素粒子、酸化ビスマス、分散剤、結合剤、及び液体からペーストを形成する工程と、
(iv)ペーストを亜鉛電極に組み込む工程と、を備える方法。
【請求項21】
前記炭素粒子は炭素繊維である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素繊維は金属化されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記炭素繊維は鉛、錫、インジウム、ビスマス及び銀の中の少なくとも一つで金属化されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
コーティングされた前記亜鉛粒子のサイズは約40ミクロン未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記亜鉛粒子は鉛でコーティングされ、前記鉛は陰極活性物質に約0.05重量%未満含まれている、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記亜鉛陰極は、亜鉛陰極の乾燥重量で炭素繊維に約3重量%未満含まれている、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記炭素繊維は長さが約10μmから500μmの間であり、直径が約1μmから50μmの間であり、長さと幅の比が約50:1から約10:1の間である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記界面活性剤がトリトン、ポロキサマ、及びフルオロ界面活性剤の中の少なくとも一つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記液体は水、アルコール、及びエーテルの中の少なくとも一つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
亜鉛電極を製造する方法であって、
(i)炭素粒子を界面活性剤で処理し、界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を製造する工程と、
(ii)界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を少なくとも電気化学的活性亜鉛と結合して均等的に分散された混合物を製造する工程と、
(iii)下地電流コレクターを前記均等的に分散された混合物でコーティングする工程とを備える、方法。
【請求項31】
前記炭素繊維は金属化されている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(iii)の後に前記下地電流コレクターを加熱する工程をさらに備える、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記下地電流コレクターは不活性の雰囲気において約250℃から約300℃の間で約30分から約60分の間加熱される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記界面活性剤はトリトン、ポロキサマ、及びフルオロ界面活性剤の中の少なくとも一つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
亜鉛電極を製造する方法であって、
(i)炭素粒子を界面活性剤で処理し、界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を製造する工程と、
(ii)界面活性剤でコーティングされた炭素粒子を少なくとも電気化学的活性亜鉛と結合して均等的に分散された混合物を製造する工程と、
(iii)前記均等的に分散された混合物をゲル化剤と結合する工程と、を備える方法。
【請求項36】
前記炭素粒子は炭素繊維である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記界面活性剤はトリトン、ポロキサマ、及びフルオロ界面活性剤の中の少なくとも一つを含む、請求項35に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−502026(P2013−502026A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523988(P2012−523988)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/044773
【国際公開番号】WO2011/017655
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511262359)パワージェニックス・システムズ・インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】POWERGENIX SYSTEMS, INCORPORATED
【Fターム(参考)】