説明

炭素繊維強化樹脂組成物およびその成形品

【課題】機械的特性、表面外観等に優れ、特に引張強度、曲げ弾性率、外観・意匠性に優れた炭素繊維強化樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、引張強度が5.1GPa以上の炭素繊維(B)20〜160重量部を配合してなる炭素繊維強化樹脂組成物であり、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)が、テレフタル酸成分単位、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位とからなるジカルボン酸成分単位(a1)と、ジアミン成分単位(a2)脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位、芳香族ジアミン単位とからなるジアミン成分単位(a2)とからなる繰返し単位から構成されるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性、表面外観等に優れ、特に引張強度、曲げ弾性率、外観・意匠性に優れた炭素繊維強化樹脂組成物を提供することをその課題とするものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の機械特性を向上させるための手段として、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状充填材を配合することは一般的に知られている。一般的な配合手法としては、熱可塑性樹脂と繊維のチョップドストランド(短繊維)を押出機中で溶融混練することにより繊維強化樹脂組成物が得られる手法が用いられる。
【0003】
しかし、近年プラスチックの高性能化に対する要求が高度化し、金属同等の剛性が求められるようになってきている。金属同等の剛性を実現するためには繊維状充填材を高充填し繊維長を長く保つ必要があるが、一般的な繊維状充填材を用い押出機中で溶融混練する手法では溶融混練時の剪断により繊維が折損すること、多量の繊維状充填材起因の剪断発熱によって樹脂を劣化させることなど多くの問題があり、熱可塑性樹脂と繊維状充填材を押出機で溶融混練する手法では高性能化には限界があった。
【0004】
また、要求性能として金属同等の剛性と同時に意匠性を向上するため良外観が求められるようになってきている。しかし、前記繊維状充填材を高充填する手法で得られた成形品は、高光沢であっても、うねり状凹凸が発生する問題により良外観が得られないため、機械的特性と外観・意匠性の両立は困難であった。
【0005】
これに対し、特許文献1において軽量化、高剛性化を行う目的でナイロン6に特定の炭素繊維を添加する手法が提案されている。しかしながら、炭素繊維を用いた軽量化、高剛性化は達成されるものの、うねり状凹凸が発生し外観が大幅に悪化する傾向にあり、外観・意匠性に問題がある。また、特許文献2においても軽量化、高剛性化を行う目的で芳香族ナイロン(MXD6)に特定の炭素繊維を添加する手法が提案されている。しかしながら、同様に炭素繊維を用いた軽量化、高剛性化は達成されるものの、うねり状凹凸が発生し外観が大幅に悪化する傾向にあり、外観・意匠性に問題がある。特許文献3において特定ポリアミド樹脂に充填材添加し摺動特性を向上させる手法が提案されている。しかしながら、うねり状凹凸に関する記載はなく、炭素繊維の記載はあるものの実施記載はなくそれに伴う優れた効果についても記載されていない。さらに、特許文献4において特定ポリアミド樹脂に特定化合物、充填材と炭素繊維を併用添加し、耐衝撃性と表面光沢を向上させる手法が提案されている。しかしながら、光沢に優れるもののうねり状凹凸に関する記載はなく、炭素繊維の記載はあるものの実施記載はなく、それに伴う優れた効果についても記載されていない。
【0006】
以上の通り、樹脂組成物において、ポリマー原料、繊維状充填材等原料面で様々な工夫は為されているが、金属同等の剛性が得られ、優れた外観・意匠性が得られるような公知技術は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−1964号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2006−1965号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平7−228774号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2010−209247号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、炭素繊維強化により、優れた機械的特性、外観・意匠性を改善した炭素繊維強化樹脂組成物を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果得られたものである。
(1)熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、引張強度が5.1GPa以上の炭素繊維(B)20〜160重量部を配合してなる炭素繊維強化樹脂組成物。
(2)熱可塑性ポリアミド樹脂(A)が、テレフタル酸成分単位、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位とからなるジカルボン酸成分単位(a1)と、ジアミン成分単位(a2)脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位、芳香族ジアミン単位とからなるジアミン成分単位(a2)とからなる繰返し単位から構成されたこと特徴とする(1)記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
(3)熱可塑性ポリアミド樹脂(A)の、ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位50〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位50〜0モル%からなり、ジアミン成分単位(a2)が脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位50〜100モル%、芳香族ジアミン単位50〜0モル%からなる繰返し単位で構成されることを特徴とする(2)記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
(4)熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、さらに粒状充填材(C)1〜40重量部を配合してなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
(5)粒状充填材(C)が、平均粒子径0.1〜30μmの板状充填材であることを特徴とする(4)記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなる成形品。
(7)うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が3.0μm以下であることを特徴とする(6)記載の成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、引張強度、曲げ弾性率が大幅に優れながら、表面外観(うねり状凹凸)が良好な組成物を提供できる。そのため、機械的特性に加え外観・意匠性が必要な自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品など各種用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の炭素繊維強化樹脂組成物について具体的に説明する。
【0012】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物に使用する熱可塑性ポリアミド樹脂(A)とは、熱可塑性を示す樹脂であれば特に限定されず、ポリアミドとしては、ポリマーの繰り返し構造中にアミド結合を有するものであれば、特に限定されるものではない。ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではないが、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等の方法が挙げられる。前記、ラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、及びω−ラウロラクタム等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及び13−アミノトリデカン酸等が挙げられる。前記ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及び芳香族ジアミンが挙げられる。ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等が挙げられる。前記、ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びダイマー酸等が挙げられる。具体的な例としては、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11,ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612,ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/612、ナイロンMXD(m−キシリレンジアミン)6などが挙げられる。また、ナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/M5Tコポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン66/6T/6Iコポリマーおよびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する共重合体等も挙げられる。
【0013】
さらに、好ましいポリアミド構成としては、テレフタル酸成分単位、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位とからなるジカルボン酸成分単位(a1)と、脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位、芳香族ジアミン単位とからなるジアミン成分単位(a2)とからなる繰返し単位から構成された重合体が挙げられる。ジカルボン酸成分単位(a1)としては、テレフタル酸成分単位、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位が好ましく使用できる。前記、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位としては、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。ジカルボン酸成分単位(a1)におけるテレフタル酸成分単位は50〜100モル%の範囲が好ましく、70〜100%の範囲がより好ましく、90〜100%の範囲がさらに好ましい。また、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位は50〜0モル%の範囲が好ましく、30〜0%の範囲がより好ましく、10〜0%の範囲がさらに好ましい。ジカルボン酸成分単位(a1)として、テレフタル酸のみを用いる構成が特に好ましい。テレフタル酸成分単位は50モル%未満であると熱可塑性ポリアミド樹脂(A)の耐熱性が低下し好ましくない。ジアミン成分単位(a2)としては、脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位、芳香族ジアミン単位が好ましく使用できる。前記、脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位、芳香族ジアミン単位としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0014】
ジアミン成分単位(a2)における脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位は50〜100モル%の範囲が好ましく、70〜100%の範囲がより好ましく、90〜100%の範囲がさらに好ましい。芳香族ジアミン単位50〜0モル%の範囲が好ましく、30〜0%の範囲がより好ましく、10〜0%の範囲がさらに好ましい。ジアミン成分単位(a2)として、脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位のみを用いることが好ましく、1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物が特に好ましい構成である。脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位は50モル%未満であると熱可塑性ポリアミド樹脂(A)の機械的特性、吸水性、耐熱性、外観・意匠性が低下し好ましくない。
【0015】
さらにこれらの熱可塑性ポリアミド樹脂(A)を、耐衝撃性、成形加工性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲が好ましい。熱可塑性ポリアミド樹脂(A)には、長期耐熱性を向上させる添加物として、銅化合物が好ましく用いられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、ヨウ化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0016】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物に使用する炭素繊維(B)とは、引張強度が5.1GPa以上のものであれば特に制限はなく特に限定されるものではない。製造方法に関しても公知の手法で有れば特に制限はなく限定されるものではない。具体的にはPAN系やピッチ系の炭素繊維等が挙げられるが、機械的特性向上が可能なPAN系炭素繊維が好ましく利用できる。また、炭素繊維(B)は引張強度(JIS R7601準拠による測定)が5.1GPa以上であり、5.2GPa以上であることがより好ましく、5.3GPa以上であることがさらに好ましい。炭素繊維の引張強度の上限は8GPaである。炭素繊維(B)の引張強度が5.1GPa未満である場合、炭素繊維強化樹脂組成物の機械的特性が金属並特性を発現できないため好ましくない。炭素繊維(B)の引張弾性率が250〜600GPaの範囲が好ましく、260〜500GPaの範囲がより好ましく、270〜400GPaの範囲がさらに好ましい。炭素繊維(B)の繊維径(単繊維)としては4.0〜6.0μmの範囲が好ましく、4.5〜5.5μmの範囲がさらに好ましい。炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維(B)重量平均繊維長は特に限定されるものでないが0.1〜0.5mmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.125〜0.45mm、特に好ましくは0.15〜0.40mmである。0.1mm以下の場合は十分な曲げ弾性率改良効果が得られず、0.40mm以上では表面外観が悪化し好ましくない。重量平均繊維長は得られたペレットまたは成形品を熱可塑性ポリアミド樹脂が溶ける溶剤にて溶解させた後、濾過・洗浄を行い、その残渣を光学顕微鏡にて観察し、1000本の長さを測定した結果を重量平均繊維長に計算して得られたものである。
【0017】
また、炭素繊維(B)の表面に、樹脂の濡れ性の改善、取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や集束剤等を付着させたものを用いてもよい。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、及びカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物及びこれら化合物の誘導体から選ばれる1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。炭素繊維(B)中の集束剤の含有量は、0.1〜10.0重量%であることが好ましく、0.3〜8.0重量%がさらに好ましく、0.5〜6.0重量%が特に好ましい。また、溶融混練時に使用する炭素繊維(B)形態としては、溶融混練装置に添加できる形態で有れば制限はなく、予め裁断されているチョップドストランドや破砕繊維、連続長繊維等が挙げられ、生産性の観点からチョップドストランドが好ましく利用できる。炭素繊維(B)の配合量は熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、20〜160重量部であり、好ましくは40〜150重量部、より好ましくは60〜130重量部である。配合量が20重量部未満の場合は、十分な機械的特性改良効果が得られず、160重量部を越えるときには生産性が大幅に低下し、成形性および表面外観が悪化し好ましくない。
【0018】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物には、さらに粒状充填材(C)を配合しても良い。粒状充填材(C)としては、特に限定されるものでなく、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。具体的には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材、およびモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母に代表される層状珪酸塩が挙げられる。層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩であってもよく、有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられ、上記の非繊維状充填材は2種以上を併用して使用することもできる。またこれら非繊維状充填材はシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤で処理されている場合が優れた機械的特性を発現できるため特に好ましい。これら粒状充填材(C)の中で好ましくは、タルク、マイカ、カオリン、クレー、ガラスフレーク、カーボンブラック、黒鉛、モンモリロナイト等の板状充填材が好ましく用いられる。中でもタルク、マイカ、ガラスフレークがより好ましく使用できる。粒状充填材(C)の粒子径は平均粒子径0.1〜30μmの範囲が好ましく、0.5〜25μmの範囲がより好ましく、1.0〜23μmの範囲がさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm未満であると充分な表面外観改良効果が得られず生産性が大幅に低下し、平均粒子径が30μm以上では表面外観改良効果が得られず表面外観が大幅に悪化し好ましくない。ここで、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定して得られる算術平均径であり、体積平均粒子径(MV)である。
【0019】
本発明における粒状充填材(C)の配合量は、全組成物100重量部に対し、1〜40重量部が好ましく、さらに好ましくは3〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部である。配合量が1重量部未満の場合は、表面外観改良効果が得られず、40重量部を越えるときには成形性および表面外観が悪化し好ましくない。
【0020】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物を、射出成形により得られた成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。また、うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値の下限値は最大0μmであり特に限定されない。うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が3.0μmを越えると、炭素繊維強化樹脂組成物の表面に目視によってもうねり状凹凸が目立ち外観・意匠性が大幅に低下しているため好ましくない。ここでのうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値とは、JIS B0601で定義されるものであり、射出成形により作製した80mm×80mm×3mmの角板成形品を用い、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secで、成形品表面を測定して得られるうねり曲線の算術平均高さ(Wa)である。
【0021】
さらに本発明の炭素繊維強化樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、離型剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、滑剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、流動改質剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などの添加剤、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を添加することができる。特にABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物、などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウムなどの滑剤、難燃剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0022】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法は、溶融混練する方法が好ましく、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)と炭素繊維(B)、場合によって粒状充填材(C)との配合物製造時に、溶融混練装置の温度設定としては使用する熱可塑性ポリアミド樹脂の融点(Tm)+30℃以上で行うことが好ましい。熱可塑性ポリアミド樹脂(A)と炭素繊維(B)、場合によって粒状充填材(C)を供給する溶融混練装置原料供給位置は、特に制限はないが熱可塑性ポリアミド樹脂(A)は主原料供給口が好ましく、炭素繊維(B)、場合によって粒状充填材(C)に関しては、特に制限はないが主原料供給口と吐出口の中間、具体的にはスクリューエレメントデザインで主原料供給口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンと吐出口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンの中間位置であれば重量平均繊維長のコントロールが容易となり好ましい。
【0023】
前記を製造する溶融混練装置としては特に制限はなく、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)と炭素繊維(B)、場合によって粒状充填材(C)とを、適度な剪断場の下で加熱溶融混合することが可能な樹脂加工用に使用される公知の押出機、連続式ニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。例えば、スクリューが1本の単軸押出機及びニーダー、スクリューが2本の二軸押出機及びニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機及びニーダー、さらに、押出機及びニーダーが1台の押出機、押出機及びニーダーが2台繋がったタンデム押出機、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置された押出機及びニーダー等特に制限はない。スクリューエレメントデザインにおいては、フルフライトスクリュー等を有する溶融または非溶融搬送ゾーン、シールリング等を有するシールゾーン、ユニメルト、ニーディング等を有するミキシングゾーン等の組み合わせにも特に制限はなく、例えばシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する連続溶融混練装置が好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸スクリュー部を有する連続溶融混練装置がさらに好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸押出機が最も好ましい。
【0024】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性、表面外観にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッド、その他の希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。
【0025】
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンのハウジング、シャーシおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジング、シャーシおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジング、シャーシおよび内部部品、コピー機のハウジング、シャーシおよび内部部品、ファクシミリのハウジング、シャーシおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品およびハウジング、シャーシ部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジング、シャーシおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、コンクリート型枠などの土木関連部材、釣竿部品、リールのハウジング、スプールおよびボディー部品、ルアー部品、クーラーボックス部品、ゴルフクラブ部品、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット部品、スキー板部品、スキーストック部品、自転車のフレーム、ペダル、フロントフォーク、ハンドルバー、ブレーキブラケット、クランク、シートピラー、車輪、専用シューズ等の部品、ボート用オール、スポーツ用ヘルメット、フェンス構成部材、ゴルフティー、剣道用防具(面)および竹刀などのスポーツ用品部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、農ビの止め具などの農業部材、骨折補強材などの医療用品、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ICトレイ、文房具、排水溝フィルター、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。特に自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品として有用である。
【0026】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物および成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して使用することができるが、繊維の折損がおきている場合、得られる樹脂組成物は、本発明の成形品と同様の機械強度を発現することは困難である。
【実施例】
【0027】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
使用原料としては下記のものを使用した。
【0029】
(A)熱可塑性ポリアミド樹脂
<A1>ナイロン9T樹脂“ジェネスタ”N1001D(株式会社クラレ製)
<A2>ナイロン6樹脂“アミラン”CM1001(東レ株式会社製)
<A3>ナイロンMXD6樹脂“レニー”#6002(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)。
【0030】
(B)炭素繊維
<B1>炭素繊維“トレカ”原糸T800SC−24K(東レ株式会社製、引張強度5.88GPa、引張弾性率294GPa)を、樹脂成分付着量が3.0重量%になるようにウレタン樹脂エマルジョン:スーパーフレックス300(第一工業製薬株式会社製)を付着させ、200℃の乾燥炉で乾燥し水分を除去したのち、ロータリーカッターで繊維長6.0mmにカットしたカットファーバーを使用した。
<B2>炭素繊維“トレカ”原糸M40JB−12K(東レ株式会社製、引張強度4.40GPa、引張弾性率343GPa)を、樹脂成分付着量が3.0重量%になるようにウレタン樹脂エマルジョン:スーパーフレックス300(第一工業製薬株式会社製)を付着させ、200℃の乾燥炉で乾燥し水分を除去したのち、ロータリーカッターで繊維長6.0mmにカットしたカットファーバーを使用した。
<B3>炭素繊維“トレカ”カットファイバーTV14−006(東レ株式会社製、原糸T700SC−12K:引張強度4.90GPa、引張弾性率230GPa)。
【0031】
(C)粒状充填材
<C1>マイカ粉A−11(ヤマグチマイカ製、平均粒子径3μm)
<C2>マイカ粉A−21(ヤマグチマイカ製、平均粒子径22μm)
<C3>マイカ粉A−51S(ヤマグチマイカ製、平均粒子径52μm)。
【0032】
[実施例1〜10、比較例1〜4]
表1および表2記載の組成で、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)を表中に示す諸条件に設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)主ホッパーに供給後、炭素繊維(B)および/または粒状充填材(C)をサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、炭素繊維強化樹脂組成物ペレットを得た。
【0033】
前記で得られた炭素繊維強化樹脂組成物ペレットを80℃で一昼夜真空乾燥し、表中の条件で射出成形機(住友重機械社製SG75H−MIV)を使用し、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧(最低充填圧力)+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
【0034】
[繊維長]:曲げ弾性率をギ酸にて溶かした後、濾過を行い、その残渣を光学顕微鏡にて20〜100倍の倍率で観察しながら、1000本の長さを測定し重量平均繊維長(mm)を求めた。
【0035】
[耐衝撃性]:ISO179に従い23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を評価した。
【0036】
[引張強度]:ISO527に従い23℃で引張強度を評価した。
【0037】
[曲げ強度、曲げ弾性率]ISO178に従い23℃で曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。
【0038】
[耐熱性]:ISO75(荷重:0.45MPa)に従い耐熱性を評価した。
【0039】
[表面粗さ]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ8mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面の算術平均粗さ(Ra)値を評価した。
【0040】
[表面うねり]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値を評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
本発明のとおり熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、引張強度が5.1GPa以上の炭素繊維(B)および/または粒状充填材(C)を用いた実施例1〜7の炭素繊維強化樹脂組成物は、特定の炭素繊維を添加することにより比較例に比較し、シャルピー衝撃強度、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率が大幅に高く、外観特性の指標である表面粗さ、表面うねりも低い値であり、金属並の機械的特性と外観・意匠性が両立できている樹脂組成物である。また、実施例8〜11の炭素繊維強化樹脂組成物においては、実施例1〜7とは違った熱可塑性ポリアミドを使用しているが、特定の炭素繊維を添加することにより、シャルピー衝撃強度、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率が大幅に高く、金属並の機械的特性実現できている樹脂組成物である。
【0044】
比較例1〜2においては、引張弾性率は高いが引張強度の低い炭素繊維を使用することによって、配合時に繊維が大きく折損し、外観・意匠性良好であり曲げ弾性率は高いものの、他の機械的特性は大幅に低下し所望の特性を得ることができない。また、比較例3〜4においては、中間的な引張弾性率および引張強度を持つ炭素繊維を使用することによって、外観・意匠性良好ではあるが、金属並の機械的特性の実現はできず所望の特性を得ることができない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、引張強度、曲げ弾性率が大幅に優れながら、表面外観(うねり状凹凸)が良好な組成物を提供できる。そのため、機械的特性に加え外観・意匠性が必要な自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品など各種用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、引張強度が5.1GPa以上の炭素繊維(B)20〜160重量部を配合してなる炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性ポリアミド樹脂(A)が、テレフタル酸成分単位、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位とからなるジカルボン酸成分単位(a1)と、ジアミン成分単位(a2)脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位、芳香族ジアミン単位とからなるジアミン成分単位(a2)とからなる繰返し単位から構成されたこと特徴とする請求項1記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項3】
熱可塑性ポリアミド樹脂(A)の、ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位50〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位50〜0モル%からなり、ジアミン成分単位(a2)が脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位50〜100モル%、芳香族ジアミン単位50〜0モル%からなる繰返し単位で構成されることを特徴とする請求項2記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項4】
熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、さらに粒状充填材(C)1〜40重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項5】
粒状充填材(C)が、平均粒子径0.1〜30μmの板状充填材であることを特徴とする請求項4記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項7】
うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が3.0μm以下であることを特徴とする請求項6記載の成形品。

【公開番号】特開2012−255063(P2012−255063A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128063(P2011−128063)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】