説明

炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料

【課題】優れた耐衝撃性と導電性とを兼ね備えた炭素繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび優れた耐衝撃性と導電性とを兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】少なくともエポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、熱可塑性樹脂粒子および導電性粒子を含有する樹脂組成物(A)、またはエポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、および熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を含有する樹脂組成物(B)であって、そのカップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して0.001〜0.5重量%である炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、および、それを用いたプリプレグと炭素繊維強化複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた力学特性と導電性を兼ね備えた炭素繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化複合材料は、強度、剛性および導電性等に優れていることから有用であり、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、その需要は年々増加しつつある。
【0003】
炭素繊維強化複合材料は、強化繊維である炭素繊維とマトリックス樹脂を必須の構成要素とするプリプレグを成形してなる不均一材料であり、そのため強化繊維の配列方向の物性とそれ以外の方向の物性に大きな差が存在する。例えば、落錘衝撃に対する抵抗性で示される耐衝撃性は、炭素繊維強化複合材料の層間の板端剥離強度等で定量される層間剥離強度によって支配されるため、強化繊維の強度を向上させるのみでは、抜本的な改良に結びつかないことが知られている。特に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂の低い靭性を反映し、強化繊維の配列方向以外からの応力に対し、破壊され易い性質を持っている。そのため、強化繊維の配列方向以外からの応力に対応することができる複合材料物性の改良を目的に、種々の技術が提案されている。
【0004】
その中の一つに、表面部分に樹脂微粒子を分散させたプリプレグが提案されている。例えば、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる樹脂微粒子を部分表面に分散させたプリプレグを用いて、耐熱性の良好な高靭性複合材料を与える技術が提案されている(特許文献1参照。)。また別に、ポリスルホンオリゴマー添加により靭性が改良されたマトリックス樹脂と熱硬化性樹脂からなる樹脂微粒子との組み合わせによって、炭素繊維強化複合材料に高度の靭性を発現させる技術が提案されている(特許文献2参照。)。ところが、このような技術は、高度な耐衝撃性を与える一方で層間に絶縁層となる樹脂層を生じることになる。そのため、炭素繊維強化複合材料の特徴の一つである導電性のうち、厚み方向の導電性が著しく劣るという欠点があり、炭素繊維強化複合材料において優れた耐衝撃性と導電性とを両立することは困難であった。
【0005】
そこで、層間の導電性を向上させる方法として、予めマトリックス樹脂に金属粒子(特許文献3参照。)やカーボン粒子(特許文献4参照。)などの導電性粒子を配合させる方法が考えられるが、これらの文献においては、高度な導電性と耐衝撃性との両立についてなんら触れられていないばかりか、微粒子とマトリックス樹脂との低い接着性や微粒子そのものの低い靭性のため、耐衝撃性を十分満足できるものではない。
【0006】
また、マトリックス樹脂との接着性を改良する方法として、シランカップリング剤を用いたカーボン粒子を用いる方法(特許文献5参照)があるが、この特許文献においても、高度な耐衝撃性と導電性との両立についてはなんら触れられていない。
【特許文献1】米国特許第5,028,478号明細書
【特許文献2】特開平3−26750号公報
【特許文献3】特開平6−344519号公報
【特許文献4】特開平8−34864号公報
【特許文献5】特開平8−157620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、優れた力学特性と導電性を兼ね備えた炭素繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび優れた耐衝撃性等の力学特性と導電性を兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために次のいずれかの構成を有するものである。
【0009】
すなわち、本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、熱可塑性樹脂粒子及び導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、前記のカップリング剤の添加量が、全樹脂組成物に対して0.005〜0.1重量%であることを特徴とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、または、エポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、および熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、前記のカップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して、0.005〜0.1重量%であることを特徴とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物である。
【0010】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のカップリング剤はシランカップリング剤であり、より好適には、エポキシ基またはアミノ基を有するシランカップリング剤である。
【0011】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の導電性粒子の平均粒径は、前記の熱可塑性樹脂粒子の平均粒径と同じかもしくはそれより大きく、そして導電性粒子の比重は大きくとも3.2である。
【0012】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の導電性粒子が、カーボン粒子、無機材料の核および有機材料の核のそれぞれが導電性物質で被覆されてなる導電性粒子からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、そして前記の導電性物質は、白金、金、銀、銅、ニッケル、チタンおよび炭素からなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでなるものである。
【0013】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の導電性粒子の添加量は、全樹脂組成物に対して0.01〜20重量%である。
【0014】
また、本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、熱可塑性樹脂粒子および導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、前記のカップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して、0.005〜0.1重量%である炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させてなるプリプレグ、または、エポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、および熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、前記のカップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して、0.005〜0.1重量%である炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させてなるプリプレグである。
【0015】
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、エポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、熱可塑樹脂粒子および導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、前記のカップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して、0.005〜0.1重量%である炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させたプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料、または、エポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、および熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、前記のカップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して、0.005〜0.1重量%である炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させたプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂と導電性粒子との接着を強固なものとし、それを硬化してなる成形体に優れた耐衝撃性と導電性とを兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を得ることができる。従来技術では、耐衝撃性が高いと導電性が低く、また、導電性が高いものは耐衝撃性に劣る炭素繊維強化複合材料しか得られなかったが、本発明により耐衝撃性と導電性とを同時に満たす炭素繊維強化複合材料を提供することが可能になった。
【0017】
また、本発明において、上記の耐衝撃性と導電性とを同時に満たす炭素繊維強化複合材料は、本発明の上記特定組成の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物およびそれを炭素繊維に含浸させてなるプリプレグを用いることにより得られるものである。本態様を使うことにより、導電性粒子とのエポキシ樹脂組成物との接着性と分散性が向上し、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物として好適なエポキシ樹脂組成物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、炭素繊維、エポキシ樹脂、硬化剤および熱可塑性樹脂粒子からなる炭素繊維強化複合材料の導電性メカニズムを追及した結果、導電性粒子とある特定量のカップリング剤を配合した炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物が、驚くべきことに導電性粒子とマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂との接着を強固なものとし、優れた耐衝撃性と導電性とを高いレベルで兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を得られることが分かった。さらには、熱可塑性樹脂粒子の代わりに熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を配合した炭素繊維強化複合材料エポキシ樹脂組成物が、優れた耐衝撃性と導電性とを高度に兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を得られることが分かり、本発明に到達したものである。
【0019】
本発明の第1態様では、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料は、いずれもエポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、熱可塑性樹脂粒子および導電性粒子を含んでいる。また、本発明の第2態様では、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料は、いずれもエポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、および熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を含んでいる。プリプレグと炭素繊維強化複合材料は、いずれも炭素繊維を含んでいる。
【0020】
本発明の第1態様は、本発明の第2態様に比べると、導電性粒子とマトリックス樹脂のエポキシ樹脂との接着性が、耐衝撃性へ与える影響がより小さいという点で優れている。一方、本発明の第2態様は、本発明の第1態様に比べると、用いられる成分が少ないことにより、より低コスト化でき生産性の向上が期待できるという点で優れている。
【0021】
本発明で用いられる炭素繊維は、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、より高い導電性を発現することから、少なくとも280GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、耐衝撃性との両立の点から高くとも440GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、耐衝撃性の観点からは耐衝撃性に優れ、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が好ましくは4 .4〜6.5GPaであり、一方、引張伸度も重要な要素であり1 .7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、高い導電性および耐衝撃性を両立する点から、引張弾性率が少なくとも280GPaであり、引張強度が少なくとも4 .4GPaであり 、引張伸度が少なくとも1 .7%であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。引張弾性率、引張強度および引張伸度は、JIS R7601−1986年に記載されるストランド引張試験により測定することができる。
【0022】
本発明で用いられる炭素繊維は、次のようにして製造することができる。まず、アクリル系の炭素繊維の場合、炭素繊維の前駆体として、アクリロニトリルが90重量%以上でアクリロニトリルと共重合可能なモノマーが10重量%未満の構成であるポリアクリロニトリル系共重合体からなる前駆体繊維束を使用することが好ましい。上記の共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸またはこれらのメチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩からなるグループから選ばれた少なくとも1種を用いることが可能である。
【0023】
このポリアクリロニトリル系前駆体繊維束は、単繊維繊度は1.0〜2.0dtexであることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.7dtexであり、さらに好ましくは1.2〜1.5dtexである。単繊維繊度が1.0dtexに満たないと、炭素繊維束の弾性率および強度が高くなりすぎ、また生産性も劣る傾向がある。また、単繊維繊度が2.0dtexを超えると、炭化工程にて斑を生じやすくなり、全体の強度を低下させてしまう可能性がある。このポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を、空気などの酸化性雰囲気中にて好適には200℃〜300℃の温度範囲で加熱耐炎化することにより耐炎化繊維を製造する。
【0024】
次に、次工程の炭化処理前に、耐炎化繊維を窒素などの不活性雰囲気中で好適には300℃〜1000℃の範囲温度内で予備炭化処理を行う。このように、耐炎化繊維を予備炭化処理を施した後で、窒素などの不活性雰囲気中で最高温度が好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1000〜1300℃、さらに好ましくは1100〜1250℃の温度範囲で炭化することにより、炭素繊維束を製造することができる。炭化温度の最高温度が1400℃を超えると炭素繊維束の弾性率が高くなり過ぎ、1000℃未満であると炭素繊維の結晶サイズが小さくなり、炭素結晶の成長が不十分なため、得られる炭素繊維束の水分率が高くなって、繊維強化複合材料を成形する際に、マトリックス樹脂の硬化が不十分となり、繊維強化複合材料の引張強度が十分発現しない場合がある。
【0025】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ”(登録商標)T800SC−24K−10Eおよび“トレカ”(登録商標)T700SC−24K−50C(以上いずれも東レ(株)製)などが挙げられる。
【0026】
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、ロービングおよびチョップド等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維、織物、トウおよびロービング等連続繊維の形態であることが好ましい。
【0027】
本発明において用いる炭素繊維束は、単繊維繊度は0.2〜2.0dtexであることが必要であり、好ましくは0.4〜1.8dtexであるのが良い。0.2dtex未満であると、撚糸時においてガイドローラーとの接触による炭素繊維束の損傷が起こりやすくなることがあり、また樹脂組成物の含浸処理工程においても同様の損傷が起こることがある。2.0dtexを越えると炭素繊維束に樹脂組成物が十分に含浸されないことがあり、結果として耐疲労性が低下することがある。
【0028】
本発明において用いられる炭素繊維束は、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数が2500本を下回ると繊維配列が蛇行しやすく強度低下の原因となりやすい。また、フィラメント数が50000本を上回るとプリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂含浸をし難い。フィラメント数は、より好ましくは2800〜25000本の範囲である。
【0029】
また、炭素繊維の形態としては、プリフォームを適用することができる。ここで、プリフォームとは、通常、長繊維の炭素繊維からなる織物基布を積層したもの、またはその織物基布をステッチ糸により縫合一体化したもの、あるいは立体織物や編組物などの繊維構造物を意味する。
【0030】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂単体の他、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体、変性体および2種類以上ブレンドした樹脂なども用いることができる。
【0031】
エポキシ樹脂と共重合させて用いられる上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド等が挙げられる。
【0032】
本発明では、エポキシ樹脂の中でも、特に、アミン類、フェノール類および炭素−炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましく用いられる。具体的には、アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンは、耐熱性に優れているため、航空機構造材等に用いられる炭素繊維複合材料用エポキシ樹脂組成物として好ましく用いられる。
【0033】
また、フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびレゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0034】
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびレゾルシノール型エポキシ樹脂は、低粘度であるために、他のエポキシ樹脂と組み合わせて使うことが好ましい。
【0035】
また、固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂に比較し架橋密度の低い構造を与えるため耐熱性は低くなるが、より靭性の高い構造が得られるため、グリシジルアミン型エポキシ樹脂や液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂と組み合わせて用いられる。
【0036】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、低吸水率かつ高耐熱性の硬化樹脂を与える。また、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂も、低吸水率の硬化樹脂を与えるため好適に用いられる。ウレタン変性エポキシ樹脂およびイソシアネート変性エポキシ樹脂は、破壊靱性と伸度の高い硬化樹脂を与える。
【0037】
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。少なくとも2官能のエポキシ樹脂および3官能以上のエポキシ樹脂を配合することは、樹脂の流動性と硬化後の耐熱性を兼ね備えるものとする。特に、グリシジルアミン型エポキシとグリシジルエーテル型エポキシの組み合わせは、耐熱性および耐水性とプロセス性の両立を可能にする。また、常温で液状のエポキシ樹脂を少なくとも1種と、常温で固形状のエポキシ樹脂を少なくとも1種を配合することは、プリプレグのタック性とドレープ性を適切なものとする。
【0038】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性が高く吸水率が小さいため、耐熱耐水性の高い硬化樹脂を与える。これらのフェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることによって、耐熱耐水性を高めつつプリプレグのタック性とドレープ性を調節することができる。
【0039】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)825および“jER”(登録商標)834(以上いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、“エピクロン” (登録商標)850(大日本インキ化学工業(株)製)、“エポトート” (登録商標)YD―128(東都化成(株)製)、DER―331およびDER−332(以上いずれもダウケミカル社製)などが挙げられる。
【0040】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)806、 “jER”(登録商標)807および“jER”(登録商標)1750(以上いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、“エピクロン”830(大日本インキ化学工業(株)製)、および“エポトート”(登録商標)YD―170(東都化成(株)製)などが挙げられる。
【0041】
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デコナール”(登録商標)EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0042】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂市販品としては、ELM434(住友化学(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY720、“アラルダイト”(登録商標)MY721、“アラルダイト”(登録商標)MY9512および“アラルダイト”(登録商標)MY9663(以上いずれもVantico社製)、“エポトート”(登録商標)YH―434(東都化成(株)製)などが挙げられる。
【0043】
アミノフェノール型のエポキシ樹脂市販品としては、ELM120やELM100(以上いずれも住友化学(株)製)、“エピコート”(登録商標)630(ジャパンエポキシレジン(株)製)、および“アラルダイト”(登録商標)MY0510(Vantico社製)などが挙げられる。
【0044】
グリシジルアニリン型のエポキシ樹脂市販品としては、GANやGOT(以上いずれも日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0045】
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0046】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、HP7200(大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0047】
ウレタン変性エポキシ樹脂の市販品としては、AER4152(旭化成エポキシ(株)製)などが挙げられる。
【0048】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DEN431やDEN438(以上いずれもダウケミカル社製)、および“エピコート”(登録商標)(ジャパンエポキシレジン(株)製)などが挙げられる。
【0049】
導電性粒子との接着性と機械物性のバランスから、グリシジルアミン型エポキシは、全エポキシ樹脂組成中に30〜70重量%配合されることが好ましく、より好ましくは40〜60%である。
【0050】
本発明において、硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。硬化剤としては、より具体的には、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
【0051】
芳香族ジアミンを硬化剤として用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。特に、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物を得るため最も適している。
【0052】
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。酸無水物を用いてエポキシ樹脂を硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化物を与える。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。
【0053】
その添加量の最適値は、エポキシ樹脂と硬化剤の種類によりことなる。例えば、芳香族アミン硬化剤では、化学量論的に当量となるように添加することが好ましいが、当量比0.7〜0.8附近を用いることにより当量で用いた場合より高弾性率樹脂が得られることがあり、これも好ましい態様である。これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0054】
芳香族アミン硬化剤の市販品としては、例えば、“スミキュア”(登録商標)S(住友化学(株)製)、MDA−220(三井化学ファイン(株)製)、“エピキュア”(登録商標)W(ジャパンエポキシレジン(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0055】
また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
【0056】
本発明においては、上記エポキシ樹脂に、熱可塑性樹脂を混合または溶解して用いることも好適である。このような熱可塑性樹脂としては、一般に、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましいが、部分的に架橋構造を有していても差し支えない。また、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が、エポキシ樹脂に、混合または溶解していることが好適である。
【0057】
これらの熱可塑性樹脂は、市販のポリマーを用いてもよく、また市販のポリマーより分子量の低い、いわゆるオリゴマーを用いても良い。オリゴマーとしては、エポキシ樹脂と反応し得る官能基を末端または分子鎖中に有するオリゴマーが好ましい。
【0058】
エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との混合物は、それらを単独で用いた場合より良好な結果を与える。エポキシ樹脂の脆さを熱可塑性樹脂の強靱さでカバーし、かつ熱可塑性樹脂の成形困難性をエポキシ樹脂でカバーし、バランスのとれたベース樹脂となる。エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂と使用割合(重量部)は、バランスの点で好ましくは100:2〜100:50の範囲であり、より好ましくは100:5〜100:35の範囲である。
【0059】
本発明の第1態様では、熱可塑性樹脂粒子を必須成分として用いているため、優れた耐衝撃性を実現することができる。本発明で用いられる熱可塑性樹脂粒子の素材としては、エポキシ樹脂に混合または溶解して用い得る熱可塑性樹脂として、先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。中でも、ポリアミドは最も好ましく、ハニカムコア/スキンパネルの引き剥がし強度を大きく向上させる。ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11やナイロン6/12共重合体は、特に良好な熱硬化性樹脂との接着強度を与える。
【0060】
この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が、樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
【0061】
熱可塑性樹脂粒子の量は、プリプレグ100重量%中に1〜10重量%の範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂粒子の量が、プリプレグに対して10重量%を超えると、プリプレグのタック性やドレープ性が低下するため取り扱い性が悪くなる傾向を示す。熱可塑性樹脂粒子の量は、高い耐衝撃性を得るためには、プリプレグに対し好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上である。
【0062】
本発明では、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂と後述する導電性粒子との接着性を強固なものとするため、カップリング剤が必須の成分である。さらには、カップリング剤は、炭素繊維との接着性の向上ならびに導電性粒子の表面エネルギーを低下させ、マトリックス樹脂中の導電性粒子の分散性を顕著に向上させる効果がある。
【0063】
本発明で用いられるカップリング剤としては、シラン系、チタン系、アルミニウム系およびトリアジンチオール系のカップリング剤が好適に用いられ、これらカップリング剤は、単独で使用しても併用してもよい。カップリング剤が適当でないと、導電性粒子とマトリックス樹脂との接着が不十分となり、耐衝撃性が低下する場合があり、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中の導電性粒子の分散性が悪くなり、プロセス性が低下する場合がある。このような問題を避けるためには、エポキシ樹脂と親和性を有し相溶するカップリング剤や、エポキシ樹脂と反応し強い接着を実現できるカップリング剤を用いることが好ましい。このようなカップリング剤として、例えば、エポキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基あるいは一置換アミノ基を一つ以上有するカップリング剤が好ましく用いられる。
【0064】
カップリング剤としては、各種官能基を有するカップリング剤が入手しやすいことから、特にシランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤の具体例を挙げると、アミノシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−( フェニルアミノ) プロピルトリメトキシシランおよび3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等であり、エポキシシランとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよびγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等であり、ビニルシランとしては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランおよびビニルトリアセトキシシラン等を挙げることができる。
【0065】
特に分子内にエポキシ基、アミノ基あるいは一置換アミノ基を有するシランカップリング剤は、広範囲な樹脂に適用可能で反応性も高いため、特に好ましく用いられる。
【0066】
カップリング剤の配合量は、エポキシ樹脂/硬化剤/熱可塑粒子/カップリング剤/導電性粒子からなる全樹脂組成物、あるいはエポキシ樹脂/硬化剤/カップリング剤/熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子からなる全樹脂組成物に対して、好ましくは0.001〜0.5重量%であり、より好ましくは0.05〜0.2重量%である。カップリング剤の配合量が少なすぎると、エポキシ樹脂と導電性粒子との接着性が十分発揮しなかったり、エポキシ樹脂中の導電性粒子の分散性が悪くなったりする場合がある。逆に、カップリング剤の配合量が多すぎると、硬化物の機械物性が低下する場合がある。
【0067】
カップリング剤の市販品としては、例えば、Z−6040(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、Z−6011(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)およびZ−6300(ビニルトリメトキシシラン(以上いずれも東レ・ダウコーニング(株)製))などがある。
【0068】
本発明で用いられる導電性粒子は、電気的に良好な導体である粒子であれば良く、例えば、カーボン粒子、無機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子、熱可塑性樹脂等の有機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子の他、ポリアセチレン粒子およびポリアニリン粒子、ポリピロール粒子、ポリチオフェン粒子、ポリイソチアナフテン粒子、ポリエチレンジオキシチオフェン粒子等の導電性ポリマー粒子を使用することができる。特に、本発明の第2態様のように、熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる粒子を採用すれば、前記した熱可塑性樹脂粒子を用いずとも、得られる炭素繊維強化複合材料において優れた耐衝撃性を実現することができる。もちろん、本発明の第2態様においても、熱可塑性樹脂粒子を用いることはできる。
【0069】
無機材料や有機材料の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子は、核である無機材料や有機材料と導電性物質からなる導電性層とから構成されるが、必要に応じてその核と導電性層の間に接着層を入れてもよい。
【0070】
導電性物質が被覆された導電性粒子の核として用い得る無機材料としては、無機酸化物、無機有機複合物および炭素などを挙げることができる。
【0071】
無機酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア等、単一の無機酸化物、および2種以上の複合無機酸化物が挙げられる。無機有機複合物としては、例えば、金属アルコキシドおよび/または金属アルキルアルコキシドを加水分解して得られるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。また、炭素としては、ガラス状炭素が好ましく用いられ、例えば、“ベルパール”(登録商標)C−600、C−800、C−2000(エア・ウォーター(株)製)、“NICABEADS”(登録商標)ICB、PC、MC(日本カーボン(株)製)などが具体的に挙げられる。
【0072】
また、有機材料としては、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ジビニルベンゼン樹脂およびエポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および有機無機ハイブリッド共重合体等が挙げられる。また、ここで挙げた材料を2種類以上複合して用いても良い。中でも、優れた耐熱性を有するアクリル樹脂やジビニルベンゼン樹脂および優れた耐衝撃性を有するポリアミド樹脂が好ましく用いられる。かかる有機材料の中で熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂の核としては、前記した熱可塑性樹脂粒子と同様のものも用いることができる。中でも、優れた耐衝撃性を有するポリアミド樹脂を核として用いることが好ましい。
【0073】
本発明で用いられる導電性物質としては、金属または炭素を挙げることができる。また、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子においては、導電性物質により導電性層が構成されているが、導電性層は金属や炭素の連続した膜状であっても良いし、導電性繊維、カーボンブラックおよび金属微粒子など、繊維状または粒子状の材料が集合したものであっても良い。
【0074】
導電性繊維としては、炭素で構成された導電性繊維が好ましい。より好ましい導電性繊維は、中空カーボンファイバーである。この中空カーボンファイバーの外径は、好ましくは0.1〜1000nmであり、より好ましくは1〜100nmのものである。中空カーボンファイバーの外径が小さすぎても、大きすぎても、そのような中空カーボンファイバーを製造することが困難であることが多い。
【0075】
上記の中空カーボンファイバーは、表面にグラファイト層を形成したものでもよい。その際、構成するグラファイト層の総数は、好ましくは1〜100層であり、より好ましくは1〜10層であり、さらに好ましくは、1〜4層であり、特に好ましいものは、1層または2層のものである。
【0076】
また、炭素で構成されたチャネルブラック、サーマルブラックおよびファーネスブラックなどのカーボンブラックも導電性層を構成する材料として好ましく用いられる。
【0077】
導電性物質としての金属は、メッキして使用される金属であることが好ましい。好ましい金属としては、炭素繊維との電位差による腐蝕を防ぐことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウムおよびマグネシウム等が用いられ、これらの中でも、高い導電性および安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケルおよびチタンが特に好ましく用いられる。これら金属は単独で用いられても良いし、これら金属を主成分とする合金として用いられても良い。
【0078】
上記の金属を用いて金属メッキを施す方法としては、湿式メッキと乾式メッキが好ましく用いられる。湿式メッキとしては、無電解メッキ、置換メッキおよび電気メッキ等の方法を採用することができるが、中でも不導体にもメッキを施すことが可能であることから、無電解メッキによる方法が好ましく用いられる。また、乾式メッキとしては、真空蒸着、プラズマCVD(chemical vapor deposition)、光CVD、イオンプレーティングおよびスパッタリング等の方法を採用することができるが、低温においても優れた密着性が得られることから、スパッタリングによる方法が好ましく用いられる。
【0079】
また、金属メッキは、単一の金属の被膜であっても複数の金属からなる複数層の被膜であってもよい。金属メッキをする場合は、最表面を金、ニッケル、銅、またはチタンからなる層とするメッキ被膜が形成されてなることが好ましい。最表面を上記の金属とすることにより、接続抵抗値の低減化や表面の安定化を図ることができる。例えば、金層を形成する際は、無電解ニッケルメッキによりニッケル層を形成し、その後、置換金メッキにより金層を形成する方法が好ましく用いられる。
【0080】
本発明で用いられる核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子においては、核と導電性層の間に接着剤層は存在してもしなくとも良いが、核と導電性層が剥離しやすい場合は接着剤層を存在させても良い。この場合の接着剤層の主成分としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル樹脂、ポリアミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、SBR、再生ゴム、ブチルゴム、水性ビニルウレタン、α−オレフィン、シアノアクリレート、変成アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−フェノール、ブチラール−フェノールおよびニトリル−フェノールなどが好ましく、中でも好ましい接着剤層の主成分としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル樹脂およびエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0081】
また、導電性層を構成する導電性物質として金属微粒子を用いる場合、金属微粒子として使用される金属は、炭素繊維との電位差による腐食を防ぐことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウムおよびマグネシウム、またはこれらを主成分とする合金、若しくは酸化錫、酸化インジウムおよび酸化インジウム・錫(ITO)等が好ましく用いられる。これらの中でも、高い導電性および安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタンおよびこれらを主成分とする合金が特に好ましく用いられる。
【0082】
上記の金属微粒子で核を被覆する方法として、メカノケミカルボンディング方法が好ましく用いられる。メカノケミカルボンディングとは、複数の異なる素材粒子を、機械的エネルギーを加えて、メカノケミカル的に分子レベルで結合させ、その界面で強固なナノ結合を創成し、複合微粒子を創出する方法であり、本発明では、無機材料や有機材料の核に金属微粒子を結合させ、かかる核を金属微粒子で被覆する。この金属微粒子の粒径は、好ましくは核の平均粒径の1/1000〜1/10倍であり、より好ましくは1/500〜1/100倍のものである。粒径があまりに小さい金属微粒子を製造することは困難な場合があり、逆に金属微粒子の粒径が大きすぎると被覆ムラが発生する場合がある。
【0083】
導電性物質で核が被覆されてなる導電性粒子としては、[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比が、好ましくは0.1〜500であり、より好ましくは1〜300であり、さらに好ましくは5〜100である導電性粒子が用いられる。かかる体積比が小さすぎると得られる炭素繊維強化複合材料の重量が増加するだけでなく、樹脂調合中に均一に分散できない場合があり、逆に大きすぎると得られる炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。
【0084】
本発明で用いられる導電性粒子の比重は大きくとも3.2であることが好ましい。導電性粒子の比重が大きすぎると得られる炭素繊維強化複合材料の重量が増加するだけでなく、エポキシ樹脂組成物調合中に均一に分散できないこともある。導電性粒子の比重は、好ましくは1〜2.2である。導電性粒子の比重が小さすぎると、エポキシ樹脂組成物調合中に均一に分散できない場合がある。
【0085】
導電性粒子の形状は、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が、樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
【0086】
本発明のプリプレグでは、熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子とを併用する第一態様の場合、導電性粒子の平均粒径が熱可塑性樹脂粒子の平均粒径と同じかもしくは大きいことが好ましい。導電性粒子の平均粒径が熱可塑性樹脂粒子の平均粒径よりも小さい場合、導電性粒子が層間に埋もれてしまい、十分な導電性向上効果をもたらさないことがある。
【0087】
本発明では、熱可塑性樹脂粒子や導電性粒子の平均粒径は、大きくとも150μmであることが好ましい。平均粒径が大きすぎると、炭素繊維の配列を乱したり、後述するように粒子層がプリプレグの表面付近部分に形成するようにした場合、得られる複合材料の層間を必要以上に厚くするため、複合材料に形成されたとき、その物性を低下させることがある。平均粒径は、好ましくは1〜150μmであり、さらに好ましくは3〜60μmであり、特に好ましくは5〜30μmである。平均粒径が小さすぎると、炭素繊維の繊維間に粒子が潜り込み、プリプレグ積層体の層間部分に局在化せず、粒子の存在効果が十分に得られず、耐衝撃性が低くなりがちである。
【0088】
また、第二態様の導電性物質で核が被覆されてなる導電性粒子についても、大きくとも150μmであることが好ましい。平均粒径が大きすぎると、炭素繊維の配列を乱したり、後述するように粒子層がプリプレグの表面付近部分に形成するようにした場合、得られる複合材料の層間を必要以上に厚くするため、複合材料に形成されたとき、その物性を低下させることがある。平均粒径は、好ましくは1〜150μmであり、さらに好ましくは3〜60μmであり、特に好ましくは5〜30μmである。平均粒径が小さすぎると、炭素繊維の繊維間に粒子が潜り込み、プリプレグ積層体の層間部分に局在化せず、粒子の存在効果が十分に得られず、耐衝撃性が低くなりがちである。
【0089】
ここで用いられる平均粒径は、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で粒子を1000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に粒子を選び、その粒子の外接する円の直径を粒径とし、その粒径の平均値(n=50)を粒子の平均粒径とする。また、導電性物質で核が被覆されてなる導電性粒子の[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を求める際は、まず導電性粒子の核の平均粒径を前記手法にて測定する。その後、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の断面写真を走査型顕微鏡にて1万倍に拡大し観察し、導電性層の厚さの平均値(n=5)を測定する。無作為に導電性粒子を選び、前記手法にて導電性層の厚さを測定し導電性層の厚さの平均値(n=10)を測定する。導電性粒子の核の平均粒径と導電性層の厚さの平均値を足し合わせることで導電性粒子の平均粒径とする。そして、導電性粒子の核の平均粒径と導電性粒子の平均粒径を用いて、[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を計算することができる。
【0090】
導電性粒子の添加量は、前記の全樹脂組成物に対して好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜10%である。導電性粒子の添加量が少ないと十分な導電性が得られず、添加量が多すぎると耐衝撃性が低下する場合がある。
【0091】
本発明において、熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子とを併用する場合には、[熱可塑性樹脂粒子の配合量(重量部)]/[導電性粒子の配合量(重量部)]で表される重量比が、好ましくは1〜1000、さらに好ましくは5〜200、特に好ましくは10〜100である。かかる重量比が1よりも小さくなると、十分な耐衝撃性を得ることができない場合があり、また、かかる重量比が1000よりも大きくなると、十分な導電性が得られない場合がある。
【0092】
本発明において、エポキシ樹脂、導電性粒子、カップリング剤からなるマスターバッチを使用することも好ましい。すなわち、混合方法によっては、導電性粒子の凝集物がzんぞんすることにより本来の力学特性、導電性が発揮されない場合があるのに対し、マスターバッチとすることで樹脂組成物中への粗大な凝集物の混入を抑制し、かつ、カップリング剤を使用することで、さらに樹脂組成物中への分散性が向上する。分散性が向上することで、本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の曲げ伸度が向上する。マスターバッチ中のカップリング剤と導電性粒子の配合比は、重量比で1/200〜1/10の割合が好ましく、エポキシ樹脂を総量で20〜95重量%含むことが好ましい。カップリング剤の配合量が少なすぎると、エポキシ樹脂と導電性粒子との接着性が十分発揮されず、エポキシ樹脂中の導電性粒子の分散性が悪くなる場合がある。逆に、カップリング剤の配合量が多すぎると、硬化物の機械物性が低下する場合がある。また、エポキシ樹脂量の重量比が少なすぎると導電性粒子の分散性が悪くなる場合があり、逆に、この範囲よりもエポキシ樹脂の重量比が大きくなるとマスターバッチ法を用いる有用性が低くなる場合がある。
【0093】
マスターバッチの適用法としては、例えば次のような手順が、例として挙げられる。まず、攪拌機によりエポキシ樹脂、導電性粒子、カップリング剤を混練し、導電性粒子を分散させてマスターバッチを作製し、設計したエポキシ樹脂組成物の重量比となるように、残りのエポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂粒子、硬化剤などの配合物に、作製したマスターバッチを添加することで、目的の炭素繊維複合材料用エポキシ樹脂組成物が得られる。
【0094】
本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を得るには、熱可塑性樹脂粒子と硬化剤以外の構成要素を150℃程度で均一に加熱混練し、硬化反応が進みにくい温度まで冷却した後に熱可塑性樹脂粒子および硬化剤を加えて混練することが好ましいが、各成分の配合方法は特にこの方法に限定されるものではない。
【0095】
本発明によるプリプレグは、前記の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸したものである。そのプリプレグの炭素繊維重量分率は好ましくは40〜90重量%であり、より好ましくは50〜80重量%である。炭素繊維重量分率が低すぎると、得られる複合材料の重量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれることがあり、また、炭素繊維重量分率が高すぎると、樹脂の含浸不良が生じ、得られる複合材料がボイドの多いものとなり易く、その力学特性が大きく低下することがある。
【0096】
本発明のプリプレグは、粒子に富む層、すなわち、その断面を観察したときに、前記したすべての粒子が局在して存在している状態が明瞭に確認しうる層(以下、粒子層と略記することがある。)が、プリプレグの表面付近部分に形成されている構造であることが好ましい。
【0097】
このような構造をとることにより、プリプレグを積層してエポキシ樹脂を硬化させて炭素繊維強化複合材料とした場合は、プリプレグ層、即ち複合材料層の間で樹脂層が形成され易く、それにより、複合材料層相互の接着性や密着性が高められ、得られる炭素繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性が発現されるようになる。
【0098】
このような観点から、前記の粒子層は、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から、表面を起点として厚さ方向に好ましくは20%の深さ、より好ましくは10%の深さの範囲内に存在していることが好ましい。また、粒子層は、片面のみに存在させても良いが、プリプレグに表裏ができるため、注意が必要となる。プリプレグの積層を間違えて、粒子のある層間とない層間が存在すると、衝撃に対して弱い複合材料となる。表裏の区別をなくし、積層を容易にするため、粒子層はプリプレグの表裏両面に存在する方がよい。
【0099】
さらに、粒子層内に存在する熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の存在割合は、プリプレグ中、熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の全量100重量%に対して好ましくは90〜100重量%であり、より好ましくは95〜100重量%である。
【0100】
この粒子の存在率は、例えば、下記の方法で評価することができる。すなわち、プリプレグを2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板の間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に硬化温度まで温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状のプリプレグ硬化物を作製する。このプリプレグ硬化物の両面に、プリプレグ硬化物の表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引く。次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算する。ここで、粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その重量から換算して求める。樹脂中に分散する粒子の写真撮影後の判別が困難な場合は、粒子を染色する手段も採用できる。
【0101】
また、本発明において熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の和の量は、プリプレグに対して20重量%以下の範囲であることが好ましい。プリプレグに対して20重量%を超えると、粒子と樹脂との混合が困難になる上、プリプレグのタックとドレープ性が低下することがある。すなわち、ベース樹脂であるエポキシ樹脂の特性を維持しつつ、粒子による耐衝撃性を付与するには、熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の和の量は、プリプレグに対して20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは15重量%以下である。プリプレグのハンドリングを一層優れたものにするためには、熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の和の量は、10重量%以下であることが好ましい。その粒子量は、高い耐衝撃と導電性を得るために、プリプレグに対し1重量%以上とすることが好ましく、より好ましくは2重量%以上である。なお、本発明において、熱可塑性樹脂粒子を用いない第2の態様の場合には、上記の熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の和の量は、導電性粒子のみの量となる。
【0102】
本発明のプリプレグは、特開平1−26651号公報、特開昭63−170427号公報または特開昭63−170428号公報に開示されているような方法を応用して製造することができる。具体的には、本発明のプリプレグは、炭素繊維とマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂からなる一次プリプレグの表面に、熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子、あるいは熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を粒子の形態のまま塗布する方法、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中にこれらの粒子を均一に混合した混合物を調整し、この混合物を炭素繊維に含浸させる過程において強化繊維でこれら粒子の侵入を遮断せしめてプリプレグの表面部分に粒子を局在化させる方法、または予めエポキシ樹脂を炭素繊維に含浸させて一次プリプレグを作製しておき、一次プリプレグ表面に、これらの粒子を高濃度で含有する熱硬化性樹脂のフィルムを貼付する方法等で製造することができる。熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子、及び熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子が、プリプレグの厚み20%の深さの範囲に均一に存在することで、耐衝撃性と導電性とを兼ね備えた炭素繊維複合材料用のプリプレグが得られる。
【0103】
本発明の炭素繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加圧・加熱して樹脂を硬化させる方法を一例として、製造することができる。可塑性樹脂粒子と導電性の粒子とを組み合わせて用いることにより、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃(または局所的な衝撃)時、局所的な衝撃により生じる層間剥離が低減されるため、かかる衝撃後の炭素繊維強化複合材料に応力がかかった場合において応力集中による破壊の起点となる前記局所的な衝撃に起因して生じた層間剥離部分が少ないことや、導電性粒子が積層層内の炭素繊維との接触確率が高く、導電パスを形成し易いことから、高い耐衝撃性と導電性とを発現する炭素繊維強化複合材料が得られる。
【0104】
本発明の炭素繊維強化複合材料は、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例によって、本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物と、それを用いたプリプレグと炭素繊維強化複合材料について、より具体的に説明する。実施例で用いた樹脂原料、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料の作製方法、衝撃後圧縮強度の評価方法を、次に示す。実施例のプリプレグの作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。
【0106】
<炭素繊維>
・“トレカ”(登録商標)T800S−24K−10E(繊維数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率290GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、総繊度1.03g/m、東レ(株)製)
<エポキシ樹脂>
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂、“jER”(登録商標)825(ジャパンエポキシレジン(株)製)
・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ELM434(住友化学(株)製)
<硬化剤>
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製)
<熱可塑性樹脂>
・末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン“スミカエクセル”(登録商標)PES5003P(住友化学(株)製)
<熱可塑性樹脂粒子>
・下記の製造方法で得られたエポキシ変性ナイロン粒子A
透明ポリアミド(商品名“グリルアミド”(登録商標)−TR55、エムザベルケ社製)90重量部、エポキシ樹脂(商品名“jER”(登録商標)828、ジャパンエポキシレジン(株)製)7.5重量部および硬化剤(商品名“トーマイド”(登録商標)#296、富士化成工業(株)社製)2.5重量部を、クロロホルム300重量部とメタノール100重量部の混合溶媒中に添加して、均一溶液を得た。次に、得られた均一溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、良く撹拌して3000重量部のn−ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n−ヘキサンで良く洗浄した後に、100℃の温度で24時間の真空乾燥を行い、エポキシ変性ナイロン粒子Aを得た。(平均粒径:12μm)。
【0107】
<カップリング剤>
・Z−6040(東レ・ダウコーニング(株)製):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・Z−6011(東レ・ダウコーニング(株)製):3−アミノプロピルトリエトキシシラン
・Z−6300(東レ・ダウコーニング(株)製):ビニルトリメトキシシラン
・“ジスネット”(登録商標)DB(三協化学(株)製):2−ジブチルアミノ−4、6ジメルカプト−s−トリアジン
・“プレンアクト”(登録商標)AL−M(味の素ファインテクノ(株)製):アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート
・トリエタノールアミンチタネート(三菱ガス化学(株)製):ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン
・“オルガチックス”(登録商標)TPHS(松本ファインケミカル(株)製):ポリヒドロキシチタンステアレート
<導電性粒子>
・ジビニルベンゼンポリマー粒子にニッケルをメッキし、さらにその上に銅をメッキした粒子“ミクロパール”(登録商標)CU215(積水化学(株)製、比重:1.43g/cm、導電性層の厚さ:156nm、[核の体積]/[導電性層の体積]:23.31)
・ジビニルベンゼンポリマー粒子にニッケルをメッキした粒子“ミクロパール”(登録商標)NI215(積水化学(株)製、比重:1.58g/cm、導電性層の厚さ:261nm、[核の体積]/[導電性層の体積]:10.73)。
・ガラス状カーボン粒子“ベルパール”(登録商標)C−2000(エア・ウォーター(株)製、比重:1.5g/cm
・下記の製造方法で得られた導電性粒子B
1000mlの無電解ニッケルメッキ液NLT−PLA(日鉱メタルプレーティング(株)製)に、エポキシ変性ナイロン粒子Aを100g添加し、次いで50℃の温度で60分間メッキ処理を行い、導電性粒子Bを作製した。導電性粒子Bの比重は1.4g/cmであり、導電性層の厚さは180nmであり、[核の体積]/[導電性層の体積]は24.9であった。
【0108】
(1)粒子の平均粒径および導電性粒子の[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比の測定
走査型電子顕微鏡で粒子を1000倍に拡大して写真撮影し、無作為に粒子を選び、その粒子の外接する円の直径を粒径とし、その粒径の平均値(n=50)を粒子の平均粒径とする。また、核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を求める際は、まず導電性粒子の核の平均粒径を前記手法にて測定する。その後、導電性物質で被覆されている導電性粒子の断面写真を走査型顕微鏡にて1万倍に拡大し観察し、導電性層の厚さの平均値(n=5)を測定する。無作為に導電性粒子を選び、前記手法にて導電性層の厚さを測定し導電性層の厚さの平均値(n=10)を測定する。導電性粒子の核の平均粒径と導電性層の厚さの平均値を足し合わせることで導電性粒子の平均粒径とする。そして、導電性粒子の核の平均粒径と導電性粒子の平均粒径を用いて、[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を計算する。実施例では、走査型電子顕微鏡として日立製作所(株)製S−4000を用いた。
【0109】
熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の各粒子の平均粒径測定結果は、下記のとおりであった。
【0110】
<熱可塑性樹脂粒子>
・エポキシ変性ナイロン粒子A・・・(平均粒径)12.5μm
<導電性粒子>
・“ミクロパール”CU215・・・(平均粒径)15.5μm
・“ミクロパール”NI215・・・(平均粒径)15.4μm
・“ベルパール”C−2000・・・(平均粒径)15.3μm
・導電性粒子B・・・・・・・・・・(平均粒径)13.8μm。
【0111】
(2)プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率
プリプレグを、2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に150℃迄温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状の樹脂硬化物を作製する。硬化後、密着面と垂直な方向から切断し、その断面を研磨後、光学顕微鏡で200倍以上に拡大しプリプレグの上下面が視野内に納まるようにして写真撮影する。同様な操作により、断面写真の横方向の5ヵ所でポリ四フッ化エチレン樹脂板間の間隔を測定し、その平均値(n=5)をプリプレグの厚さとする。
【0112】
プリプレグの両面について、プリプレグの表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引く。次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算する。ここで、微粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その重量から換算して求める。マトリックス樹脂中に分散する粒子の写真撮影後の判別が困難な場合は、粒子を染色する手段も採用することができる。
【0113】
(3)繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定
一方向プリプレグを、[+45°/0°/−45°/90°]3s構成で、擬似等方的に24プライ積層し、オートクレーブにて、180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成形して25個の積層体を作製した。これらの各積層体から、縦150mm×横100mm(厚み4.5mm)のサンプルを切り出し、SACMA SRM 2R−94に従い、サンプルの中心部に6.7J/mmの落錘衝撃を与え、衝撃後圧縮強度を求めた。
【0114】
(4)繊維強化複合材料の導電性測定
一方向プリプレグを、それぞれ[0°]構成で、擬似等方的に24プライ積層し、オートクレーブにて、180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成形して25個の積層体を作製した。これらの各積層体から、縦50mm×横50mm(厚み3mm)のサンプルを切り出し、両面に導電性ペースト“ドータイト”(登録商標)D−550(藤倉化成(株)製)を塗布したサンプルを作製した。これらのサンプルを、アドバンテスト(株)製R6581デジタルマルチメーターを用いて、四端子法で積層方向の抵抗を測定し、体積固有抵抗を求めた。
【0115】
(5)エポキシ樹脂硬化物の曲げ伸度測定
曲げ伸度の測定は、以下のように行った。まず、未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得、この樹脂硬化物を幅10±0.1mm、長さ60±1mmでカットし、試験片を作製した。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1.0mm/分、圧子径10mm、支持径4mm、スパン間32mmで3点曲げを測定し、エポキシ樹脂硬化物の曲げ伸度を求めた。測定数はn=5とし、その平均値を求めた。
【0116】
(実施例1)
混練装置で、49重量部の“jER”825と50重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、 “jER”825とZ−6040の混合物(“jER”825を95重量部に対してZ−6040を5重量部)を1.5重量部混練した。その後、0.01重量部の“ミクロパール”CU215を混練し、さらに硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0117】
表1に示す炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(表中、数字は重量部を表す。)について、熱可塑性樹脂粒子を除くベース樹脂を調製し、ナイフコーターを用いて樹脂目付31g/mで離型紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを一方向に引き揃えた炭素繊維(目付190g/m)の両側に重ね合せてヒートロールを用い、100℃、1気圧で加熱加圧しながら炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を含浸させ、一次プリプレグを得た。次に、最終的な炭素繊維強化複合材料用プリプレグのエポキシ樹脂組成が表1の配合量になるように、熱可塑性粒子を加えて調整したエポキシ樹脂組成物で、ナイフコーターを用いて樹脂目付21g/mで離型紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを、一次プリプレグの両側に重ね合せてヒートロールを用い、100℃、1気圧で加熱加圧しながら炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を含浸させ、目的のプリプレグを得た。得られたプリプレグを用い、上記の(3)繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定と(4)繊維強化複合材料の導電性測定に記載のとおりに実施して繊維強化複合材料を得、衝撃後圧縮強度と体積固有抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0118】
(実施例2〜17、比較例1〜4)
カップリング剤または導電性粒子の種類や配合量を表1〜5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。作製した一方向プリプレグを用いて、プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率、繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度および導電性を測定した。得られた結果を表1〜5にまとめて示す。
【0119】
(実施例18)
20重量部の“ミクロパール”NI215と0.1重量部のZ−6040を、80重量部のELM434へ配合した後、混練してマスターバッチを作製した。混練装置で、50重量部の“jER”825と44重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、前述のマスターバッチを7.5重量部混練した。その後、硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を、(5)エポキシ樹脂硬化物の曲げ伸度測定のとおりに実施して曲げ伸度を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0120】
(実施例19)
20重量部の“ミクロパール”NI215と0.4重量部のZ−6040を、80重量部のELM434へ配合した後、混練してマスターバッチを作製した。
【0121】
混練装置で、50重量部の“jER”825と44重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、前述のマスターバッチを7.5重量部混練した。その後、硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を、(5)エポキシ樹脂硬化物の曲げ伸度測定のとおりに実施して曲げ伸度を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0122】
(実施例20)
20重量部の“ミクロパール”NI215と2重量部のZ−6040を、80重量部のELM434へ配合した後、混練してマスターバッチを作製した。
【0123】
混練装置で、50重量部の“jER”825と44重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、前述のマスターバッチを7.5重量部混練した。その後、硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を、(5)エポキシ樹脂硬化物の曲げ伸度測定のとおりに実施して曲げ伸度を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0124】
(実施例21)
混練装置で、49重量部の“jER”825と50重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、 “jER”825とZ−6040の混合物(“jER”825を97重量部に対してZ−6040を3重量部)を1重量部混練した。その後、1重量部の“ミクロパール”NI215を混練し、さらに硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を、(5)エポキシ樹脂硬化物の曲げ伸度測定のとおりに実施して曲げ伸度を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0125】
(実施例22〜23)
カップリング剤の配合量を表6に示すように変更したこと以外は、実施例21と同様にして炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を、(5)エポキシ樹脂硬化物の曲げ伸度測定のとおりに実施して曲げ伸度を測定した。得られた結果を表6にまとめて示す。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
実施例1〜18と比較例1〜4との対比により、本発明の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を用いた炭素繊維強化複合材料は、導電性粒子とマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂との接着を強固なものとし、高い衝撃後圧縮強度と低い体積固有抵抗を実現し、高度な耐衝撃性と導電性を両立していることが分かる。また、実施例7〜9と、比較例1または比較例4との対比により、本発明において請求項1の範囲は、特異的に低い体積固有抵抗と高い衝撃後圧縮強度を達成することができ、導電性と耐衝撃性が両立できる範囲であることが分かる。さらに実施例13〜18に示すように、様々なカップリング剤を用いても導電性粒子とエポキシ樹脂との接着を強固なものとし、高度な耐衝撃性と導電性とを両立しており、特にZ−6040(東レ・ダウコーニング(株)製)配合組成において効果が高いことがわかる。
【0133】
また、実施例12では、熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子Bを用いているため、低い体積固有抵抗と高い衝撃後圧縮強度を達成することができ、導電性と耐衝撃性が両立できていることが分かる。
【0134】
さらに、実施例18〜23より、マスターバッチを使用することで、導電性粒子の分散性が向上し、樹脂曲げ伸度が向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明よれば、優れた力学特性と導電性を兼ね備えた炭素繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料が得られるため、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開でき、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、熱可塑性樹脂粒子および導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、該カップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して0.005〜0.1重量%であることを特徴とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
少なくともエポキシ樹脂、硬化剤、カップリング剤、および熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる導電性粒子を含有する樹脂組成物であって、該カップリング剤の添加量が全樹脂組成物に対して0.005〜0.1重量%であることを特徴とする炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
カップリング剤がシランカップリング剤である請求項1または2記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
カップリング剤が、エポキシ基またはアミノ基を有するシランカップリング剤である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
導電性粒子の平均粒径が、熱可塑性樹脂粒子の平均粒径と同じかもしくはそれより大きく、150μmより小さい請求項1記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
導電性粒子の比重が0.8〜3.2であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
導電性粒子が、カーボン粒子、無機材料の核および有機材料の核のそれぞれが導電性物質で被覆されてなる導電性粒子からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
導電性物質が、白金、金、銀、銅、ニッケル、チタンおよび炭素からなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでなる請求項2または7記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
導電性粒子の添加量が全樹脂組成物に対して0.01〜20重量%である請求項1〜8のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
カップリング剤と導電性粒子を重量比で1/200〜1/10の割合で含むとともに、エポキシ樹脂を総量で20〜95重量%含むマスターバッチを使用して得られたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項12】
請求項11に記載のプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料。

【公開番号】特開2009−74075(P2009−74075A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219358(P2008−219358)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】