炭酸ガスの地中貯留システム
【課題】炭酸ガスを飽和濃度レベル付近の高い濃度で溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で帯水層に圧入し、長期的かつ安定的に帯水層に貯留・隔離する。
【解決手段】炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置2と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプ3と、圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、溶媒に炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽4と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から帯水層まで貫通した注入井5とから構成され、前記溶解槽4は、密閉された容器10の下部に、炭酸ガス圧縮装置2から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口11と、溶媒圧送ポンプ3から送られた溶媒が注入される溶媒注入口12とが形成されるとともに、容器10内に粒状の充填材16が充填されて構成される。
【解決手段】炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置2と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプ3と、圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、溶媒に炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽4と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から帯水層まで貫通した注入井5とから構成され、前記溶解槽4は、密閉された容器10の下部に、炭酸ガス圧縮装置2から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口11と、溶媒圧送ポンプ3から送られた溶媒が注入される溶媒注入口12とが形成されるとともに、容器10内に粒状の充填材16が充填されて構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの一つである炭酸ガスの削減に資するため、炭酸ガスの大規模な排出源等から分離・回収した炭酸ガスを、地中に圧入し、長期的かつ安定的に貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排出ガスから分離・回収した炭酸ガスを、地中の枯渇した油田やガス田あるいは帯水層に貯留する際、下記非特許文献1,2に記載されるように、前記炭酸ガスを液体又は超臨界状態に圧縮し、注入井より地中に圧入することが試みられている。一般に、この炭酸ガスは深度800m以上の貯留層に圧入することにより、炭酸ガスの超臨界状態(二酸化炭素の場合、温度31℃以上、圧力7.4MPa以上)を維持し、炭酸ガスの密度を大きくして効率的な貯留を図っている。
【0003】
しかしながら、超臨界状態の炭酸ガスは周辺地下水より比重が軽く、浮力で上方へ移動するため、炭酸ガスを貯留する帯水層として、形状がドーム状とされ、上方中央部に浮上した炭酸ガスがトラップされるようなシール層(キャップロック)が形成されていることが必要であった。ところが、一般的に油田やガス田では、貯留層が前記シール層とドーム形状との組合せによるトラップ構造を有することが確認されているが、自然界において係る条件に適合した帯水層を見つけることが課題となっている。このため適用できる条件を拡げ、炭酸ガスが浮上せず長期的かつ安定的に地中に貯留・隔離させる方法が望まれていた。
【0004】
一方、炭酸ガスの地中への圧入方法としては、地表面上から地中に貫通したパイプの上部から、CO2昇圧装置で昇圧された二酸化炭素と、ポンプで昇圧された水とをパイプ内で合流混合しつつ圧入する下記特許文献1記載の方法、ガス田又は油田の地下層内に二酸化炭素をミキサーによって水に溶解させた状態で貯蔵する下記特許文献2記載の方法、炭酸ガスを含む気体をマイクロバブル化して水または海水中に分散させ、マイクロバブル化した炭酸ガスを地底に隔離する下記特許文献3記載の方法などがある。これらいずれの方法も、帯水層に海水又は水の溶媒と炭酸ガスとを圧入し、溶媒に炭酸ガスを溶解させて帯水層に貯留させるようにしている。
【非特許文献1】IPCC、“IPCC Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage”、Chapter 5、2005年、Cambridge University Press
【非特許文献2】大関真一、嘉納康二、”「二酸化炭素地中貯留」事業の実現にむけて〜石油・天然ガス上流技術への期待〜”、「石油・天然ガスレビュー」、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2006.7、vol.40 No.4、p57-70
【特許文献1】特開平6−170215号公報
【特許文献2】特開平3−258340号公報
【特許文献3】特開2004−50167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3記載の方法では、溶媒に炭酸ガスを飽和濃度レベルの高い濃度で溶解させることにより、周辺地下水より比重を重くした状態とし、帯水層に炭酸ガスを長期的かつ安定的に貯留・隔離させるというというものであるが、溶媒が水だけであったり、溶解手段が「合流」、「ミキサー」、「マイクロバブル発生装置」では、溶解条件によっては、炭酸ガスの溶解濃度レベルが不十分であると考えられ、周辺地下水より比重を重くすることができないおそれがあった。また、溶解する位置によっては、炭酸ガスの溶解量の確認が出来ないおそれもある。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガスを溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で、炭酸ガス溶解水を帯水層に圧入し、貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、炭酸ガスを溶媒に溶解させた状態で地中の帯水層に圧入し、貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムであって、
炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成されることを特徴とする炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明では、前記溶解槽を、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に、前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成されることにより、この溶解槽において飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガス(液体又は超臨界状態)を溶媒(海水又は水)に溶解させることが可能となり、これにより炭酸ガス溶解水の比重が周辺地下水より大きくなるため、炭酸ガスを帯水層に長期的かつ安定的に貯留・隔離させることができるようになる。
【0009】
請求項2に係る本発明として、前記粒状の充填材として、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせとする請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0010】
上記請求項2記載の発明では、溶解槽に充填される粒状充填材として、例えば砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせて用いるものである。
【0011】
請求項3に係る本発明として、前記粒状の充填材は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定される最適な平均粒径とする請求項1,2いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0012】
上記請求項3記載の発明では、粒状の充填材は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定される最適な平均粒径のものを用いるものであり、平均粒径が上記の最適平均粒径であると、溶解効率に優れるようになる。
【0013】
請求項4に係る本発明として、前記溶解槽において、前記充填材の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板が1又は複数設けられている請求項1〜3いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。 上記請求項4記載の発明では、前記整流板を設けることにより、前記溶解槽における炭酸ガスの溶解が促進されるようになる。
【0014】
請求項5に係る本発明として、前記溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設された請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0015】
上記請求項5記載の発明は、前記溶解槽で生成した炭酸ガス溶解水の全量を対象として、未溶解炭酸ガス分を前記分離槽において分離し、この未溶解の炭酸ガス分を溶解槽にリターンさせることにより、飽和濃度レベルで炭酸ガスを溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で地中に圧入することが可能となる。この炭酸ガス溶解水は、帯水層の周辺地下水より大きな比重を持つようになり、帯水層に注入しても炭酸ガスが浮上せず、長期的かつ安定的に帯水層に貯留・隔離させることができるようになる。
【0016】
請求項6に係る本発明として、前記溶解槽は複数配置され、これら溶解槽の内の一部については、溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設され、残る溶解槽については、前記分離槽の下流側に流路が接続されている請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0017】
上記請求項6記載の発明では、地下水に対する炭酸ガスの溶解を期待して、ある程度、未溶解の炭酸ガスを含んだ状態(最大で溶媒重量の5%)で地中の帯水層に圧入し、この未溶解の炭酸ガスを地下水に対して溶解させるように制御するものである。なお、地下水に対する炭酸ガスの溶解期間としては、炭酸ガスの圧入が行われ、帯水層内で炭酸ガスの流動が生じている期間のみを考慮するものとする。本請求項6記載の発明は、上記請求項5記載の発明と対比すると、炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーを削減することが可能となる。
【0018】
請求項7に係る本発明として、前記溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0019】
上記請求項7記載の発明は、更に炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を進めたものである。溶解槽において、帯水層への注入期間後に帯水層内で未溶解の炭酸ガスが存在しないように、溶解槽への炭酸ガス導入量を調整することにより、分離装置が不要になるとともに、海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガスを溶媒に溶解させた状態で、長期的かつ安定的に帯水層に貯留・隔離することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0022】
本発明に係る炭酸ガスの地中貯留システム1は、炭酸ガスの大規模な排出源等から分離・回収した炭酸ガスを、飽和濃度レベル付近の高い濃度で溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で地中の帯水層に封じ込め、長期的かつ安定的に貯留・隔離するためのものである。
【0023】
このように本発明では、溶媒に炭酸ガスを飽和濃度レベルの高い濃度で溶解させることにより、周辺地下水より比重を重くした状態とし、帯水層に炭酸ガスを長期的かつ安定的に貯留・隔離させるというものであるため、炭酸ガスの溶解量は、溶媒1m3当たり40〜50kg、好ましくは45〜50kgを目標とする。
【0024】
また、系内の圧力は、炭酸ガスが液体又は超臨界状態を維持した状態で溶解が行われるようにするとともに、炭酸ガス溶解水を地下の帯水層に圧入するための帯水層内の注入圧力と配管系の圧力損失とを考慮して、8MPa以上の高圧状態を維持するようにする。
【0025】
〔第1構成パターン〕
図1は、本発明に係る炭酸ガスの地中貯留システム1の第1構成パターンを示す概念図である。
本地中貯留システム1は、図1に示されるように、炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置2と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプ3と、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする複数の溶解槽4、4…と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から前記帯水層まで貫通した注入井5とから主に構成される。
【0026】
なお、本形態例では、前記溶解槽4は、炭酸ガスの溶解を促進するため複数設置したが、必要に応じて1基としてもよい。
【0027】
前記溶解槽4は、図2に示されるように、密閉された容器10の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置2から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口11と、前記溶媒圧送ポンプ3から送られた溶媒が注入される溶媒注入口12とが形成されるとともに、前記容器10の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口13が形成され、前記容器10内の下方及び上方に夫々、前記容器10内を上下方向に仕切る多孔板14、15がそれぞれ配設され、前記多孔板14、15間に粒状の充填材16が充填されて構成されている。
【0028】
前記充填材16は、溶媒と炭酸ガスとの撹拌を促し、炭酸ガスの溶解を効率化するためのものであり、例えば、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせとすることができる。前記ラシヒリングとは、セラミック、プラスチック、メタル、カーボンなどからなる円筒形状をした、充填塔で使用される充填物で、一般に広く用いられているものを使用することができる。前記サドルとは、セラミックなどからなる馬鞍形状をした、充填塔で使用される充填物で、一般に前記ラシヒリングより圧力損失が小さくなるように形成されている。
【0029】
また、前記充填材16は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定する最適な平均粒径とすることが好ましい。具体的には、充填材の種類ごとに、充填材の平均粒径に対する次の2つの関係を実験的に得た上で、溶解槽において許容される圧力損失(溶解槽の注入口と吐出口の間の圧力差)に対して、最も溶解量が多くなる平均粒径のものを最適な平均粒径として選定する。
(1)所定の炭酸ガス及び溶媒の流量及び溶解槽の形状において、充填材の平均粒径に対する炭酸ガス溶解量の関係。
(2)充填材の平均粒径に対する溶解槽の圧力損失の関係。
【0030】
一般に、前記充填材の平均粒径に対する特性は、(1)炭酸ガス及び溶媒の流量と溶解槽の形状とが与えられれば、充填材の平均粒径を細かくするほど、炭酸ガスの溶解量は増加する。(2)一方、充填材の平均粒径を細かくするほど、溶解槽内の炭酸ガス及び溶媒の流れによる圧力損失が大きくなり、一定の流量を確保するために使用するエネルギーが増加する、という傾向がある。したがって、上記炭酸ガス及び溶媒の流量と溶解槽の形状とを総合的に勘案した上で、充填材の平均粒径を選定する。なお、所要の炭酸ガス溶解量が決定できない場合には、溶解槽の大型化などの対策を採ることも考慮する。
【0031】
上記の最適な平均粒径の充填材16を用いることにより、炭酸ガスの溶解効率に優れるようになる。
【0032】
前記容器10は、図2に示されるように、密閉された縦長の管型とすることが好ましい。これにより、溶解槽4における炭酸ガスと溶媒の滞留時間を確保することが可能になる。また、系内の前記設定圧力に対して耐圧性を有する構造とすることができるとともに、短時間で連続的かつ安定的な炭酸ガス溶解水の生成が可能となる。
【0033】
ここで、溶解槽4内の流れについて図2に基づいて説明すると、前記炭酸ガス注入口11及び溶媒注入口12から容器10内に圧送された炭酸ガス及び溶媒は、下方ホッパー部17で混合されるとともに、下方側多孔板14から均等に充填材16の充填領域に浸入する。前記充填材16の充填領域においては、充填材16間での流動と相まって溶媒と炭酸ガスとが充分に撹拌されて溶媒に炭酸ガスが溶解されるとともに、上方に流動していく。この作用により、上方側多孔板15に到達したときには、溶媒に炭酸ガスがほぼ溶解された炭酸ガス溶解水が生成され、溶媒の飽和溶解レベルにまで達するようになる。その後、上方側多孔板15から上方ホッパー部18に浸入した炭酸ガス溶解水は、吐出口13から吐出される。
【0034】
前記溶解槽4においては、前記充填材16の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板19を1又は複数設けるようにするのが望ましい。前記整流板19を設けることにより、充填材16による炭酸ガスと溶媒との流れが均一に整えられ、両者の接触機会の増大により、前記溶解槽4における炭酸ガスの溶解が向上するようになる。前記溶解槽4における滞留時間と炭酸ガス溶解量とは、飽和濃度レベルまでは概ね比例的関係にあるため、所定の操業条件の下で、目標溶解量に応じた滞留時間となるように装置規模を設定するのが望ましい。
【0035】
また、本第1構成パターンでは、前記溶解槽4から注入井5に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽6が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置2と溶解槽4との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置7が配設されている。
【0036】
本第1構成パターンでは、前記溶解槽4で生成した炭酸ガス溶解水の全量を対象として、未溶解炭酸ガス分を前記分離槽6において分離し、この未溶解の炭酸ガス分を溶解槽4にリターンさせることにより、飽和濃度レベルで炭酸ガスを溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で地中に圧入することが可能となる。この炭酸ガス溶解水は、帯水層の周辺地下水より大きな比重を持つようになり、帯水層に注入しても炭酸ガスが浮上せず、長期的かつ安定的に帯水層に貯留・隔離させることができるようになる。
【0037】
前記分離槽6は、図3に示されるように、密閉された容器20の内部に下面から所定高さで立設し、前記溶解槽4を通過した炭酸ガス溶解水の流路と接続した流入管21が設けられ、概ね前記炭酸ガス溶解水で容器20内が満たされて、未溶解炭酸ガスが上方側に重力分離されるとともに、前記容器20の上部に、前記未溶解炭酸ガスを吐出する未溶解炭酸ガス吐出口22が形成され、前記容器20の下方に、前記未溶解炭酸ガスが分離された後の炭酸ガス溶解水を吐出する炭酸ガス溶解水吐出口23が形成されて構成されている。
【0038】
溶解槽1基当たりの溶媒及び炭酸ガスの各流量は、溶解槽4の容積と炭酸ガス及び溶媒の溶解槽4内の滞留時間によって定めた全体流量に対して、注入する炭酸ガス及び溶媒の重量比(炭酸ガス重量/溶媒重量)から求めることができる。この際、炭酸ガス及び溶媒の重量比は、所望の炭酸ガスの溶解量に基づいて定められる。この炭酸ガス及び溶媒の重量比と炭酸ガスの溶解量との関係については、予め行われる通水試験によって求めておく。
【0039】
後段の実施例で詳述するように、溶解槽4での溶解濃度は、注入される炭酸ガス及び溶媒の重量比(炭酸ガス重量/溶媒重量)に影響する。具体的には、注入される前記重量比が大きくなると、溶解槽4での溶解濃度が大きくなる傾向にあるため、炭酸ガスの溶解を促進させる目的で、炭酸ガス及び溶媒の注入重量比は、前記炭酸ガス溶解濃度の目標値より大きく設定することが好ましい。
【0040】
本第1構成パターンでは、前述の通り、全ての溶解槽4、4…から吐出された炭酸ガス溶解水は前記分離槽6に注入されるため、前記分離槽6において溶解槽4、4…から吐出される炭酸ガス溶解水に含まれる未溶解炭酸ガスが完全に分離され、注入井5には、炭酸ガスが溶媒に完全に溶解した状態の炭酸ガス溶解水が圧入される。
【0041】
〔第2構成パターン〕
第2構成パターンは、地中貯留システム1の主な構成は、前記第1構成パターンと同様であるが、以下の点が相違する。すなわち、図4に示されるように、前記溶解槽4は複数配置され、これら溶解槽4、4…の内の一部については、溶解槽4から注入井5に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽6が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置2と溶解槽4との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置7が配設され、残る溶解槽については、前記分離槽6の下流側に流路が接続される構成となっている。
【0042】
本第2構成パターンでは、地下水に対する炭酸ガスの溶解を期待して、ある程度、未溶解の炭酸ガスを含んだ状態(最大で溶媒重量の5%)で地中の帯水層に圧入し、この未溶解の炭酸ガスを地下水に対して溶解させるように制御するものである。なお、地下水に対する炭酸ガスの溶解期間としては、炭酸ガスの圧入が行われ、帯水層内で炭酸ガスの流動が生じている期間のみを考慮するものとする。
【0043】
本第2構成パターンは、上記第1構成パターンと対比すると、炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーを削減することが可能となる。
【0044】
〔第3構成パターン〕
第3構成パターンは、図5に示されるように、上記第1構成パターンと対比して、前記溶解槽4から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある点で相違する。
【0045】
本第3構成パターンは、更に炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を進めたものである。本第3構成パターンでは、地下水に対する炭酸ガスの溶解を期待して、未溶解の炭酸ガス(最大で溶媒重量の5%)は、地中の帯水層で、地下水に対して溶解させるように制御するものである。この地下水に対する炭酸ガスの溶解期間としては、未溶解の炭酸ガスの注入が行われ、帯水層内で炭酸ガスの流動が生じている期間のみを考慮するものとする。溶解槽4において、上記の期間より後に帯水層内で未溶解の炭酸ガスが存在しないように、溶解槽への炭酸ガス導入量を調整することにより、分離装置が不要になるとともに、海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を図ることが可能となる。
【実施例】
【0046】
本地中貯留システム1による炭酸ガスの溶解状態を実証するため、図6に示される実験装置を用いて炭酸ガスの溶解実験を行った。
【0047】
実験装置は、図6に示されるように、炭酸ガスボンベ30の炭酸ガスを炭酸ガス圧縮装置2によって加圧して溶解槽4に注入するとともに、塩水タンク31の塩水を溶媒圧送ポンプ3によって加圧して溶解槽4に注入し、溶解槽4で炭酸ガスの溶解処理を行い、この炭酸ガス溶解水を分離槽で未溶解炭酸ガスを分離した後の炭酸ガス溶解水をサンプリングする。ここで、溶解槽4の容積は850mlとし、充填材16は、平均粒径が0.18mm(粒度1)、0.63mm(粒度2)、1.32mm(粒度3)の砂状のものを使用した。実験では、温度、圧力、塩水流量、充填材16の粒度及び炭酸ガスと塩水の重量比(炭酸ガス重量/塩水重量)をそれぞれ変化させたとき、サンプリングした炭酸ガス溶解水の炭酸ガス溶解量を測定した。
【0048】
図7、図8は、各温度における塩水流量及び充填材16の粒度をそれぞれ変化させたときの溶解槽4に注入する炭酸ガス及び塩水の重量比(炭酸ガス重量/塩水重量)と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、温度29℃、33℃のいずれの試験温度においても、炭酸ガスと塩水の重量比を増大させるほど、また充填材16の粒度を小さくするほど炭酸ガス溶解量が大きくなる傾向にある。
【0049】
図9〜図11は、各温度における塩水流量及び圧力をそれぞれ変化させたときの前記重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、前述と同様に、炭酸ガスと塩水の重量比を増大させるほど、炭酸ガス溶解量が増大する傾向にあるが、ある重量比以上では炭酸ガス溶解量がほぼ一定の飽和濃度レベルとなり、本地中貯留システムの有効性が確認された。
【0050】
図12は、各圧力における温度と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、25℃〜40℃の範囲の一般的な温度条件においては、炭酸ガス溶解量に大きく影響を及ぼさないことが確認された。
【0051】
図13は、各塩水流量における充填材の平均粒径と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、本実施例では、充填材の平均粒径は、平均粒径1.0mm以下とすることにより、炭酸ガスの溶解効率に優れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかる炭酸ガスの地中貯留システム1(第1の構成パターン)の概念図である。
【図2】溶解槽4の縦断面図である。
【図3】分離槽6の縦断面図である。
【図4】本発明にかかる炭酸ガスの地中貯留システム1(第2の構成パターン)の概念図である。
【図5】本発明にかかる炭酸ガスの地中貯留システム1(第3の構成パターン)の概念図である。
【図6】実験装置の概念図である。
【図7】温度29℃における塩水流量及び粒度に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図8】温度33℃における塩水流量及び粒度に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図9】温度25℃における塩水流量及び圧力に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図10】温度29℃における塩水流量及び圧力に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図11】温度33℃における塩水流量及び圧力に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図12】温度と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図13】充填材の平均粒径と炭酸ガス溶解量との関係との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1…地中貯留システム、2…炭酸ガス圧縮装置、3…溶媒圧送ポンプ、4…溶解槽、5…注入井、6…分離槽、7…炭酸ガス圧送装置、10…容器、11…炭酸ガス注入口、12…溶媒注入口、13…吐出口、14、15…多孔板、16…充填材、19…整流板、20…容器、21…流入管、22…未溶解炭酸ガス吐出口、23…炭酸ガス吐出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの一つである炭酸ガスの削減に資するため、炭酸ガスの大規模な排出源等から分離・回収した炭酸ガスを、地中に圧入し、長期的かつ安定的に貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排出ガスから分離・回収した炭酸ガスを、地中の枯渇した油田やガス田あるいは帯水層に貯留する際、下記非特許文献1,2に記載されるように、前記炭酸ガスを液体又は超臨界状態に圧縮し、注入井より地中に圧入することが試みられている。一般に、この炭酸ガスは深度800m以上の貯留層に圧入することにより、炭酸ガスの超臨界状態(二酸化炭素の場合、温度31℃以上、圧力7.4MPa以上)を維持し、炭酸ガスの密度を大きくして効率的な貯留を図っている。
【0003】
しかしながら、超臨界状態の炭酸ガスは周辺地下水より比重が軽く、浮力で上方へ移動するため、炭酸ガスを貯留する帯水層として、形状がドーム状とされ、上方中央部に浮上した炭酸ガスがトラップされるようなシール層(キャップロック)が形成されていることが必要であった。ところが、一般的に油田やガス田では、貯留層が前記シール層とドーム形状との組合せによるトラップ構造を有することが確認されているが、自然界において係る条件に適合した帯水層を見つけることが課題となっている。このため適用できる条件を拡げ、炭酸ガスが浮上せず長期的かつ安定的に地中に貯留・隔離させる方法が望まれていた。
【0004】
一方、炭酸ガスの地中への圧入方法としては、地表面上から地中に貫通したパイプの上部から、CO2昇圧装置で昇圧された二酸化炭素と、ポンプで昇圧された水とをパイプ内で合流混合しつつ圧入する下記特許文献1記載の方法、ガス田又は油田の地下層内に二酸化炭素をミキサーによって水に溶解させた状態で貯蔵する下記特許文献2記載の方法、炭酸ガスを含む気体をマイクロバブル化して水または海水中に分散させ、マイクロバブル化した炭酸ガスを地底に隔離する下記特許文献3記載の方法などがある。これらいずれの方法も、帯水層に海水又は水の溶媒と炭酸ガスとを圧入し、溶媒に炭酸ガスを溶解させて帯水層に貯留させるようにしている。
【非特許文献1】IPCC、“IPCC Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage”、Chapter 5、2005年、Cambridge University Press
【非特許文献2】大関真一、嘉納康二、”「二酸化炭素地中貯留」事業の実現にむけて〜石油・天然ガス上流技術への期待〜”、「石油・天然ガスレビュー」、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2006.7、vol.40 No.4、p57-70
【特許文献1】特開平6−170215号公報
【特許文献2】特開平3−258340号公報
【特許文献3】特開2004−50167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3記載の方法では、溶媒に炭酸ガスを飽和濃度レベルの高い濃度で溶解させることにより、周辺地下水より比重を重くした状態とし、帯水層に炭酸ガスを長期的かつ安定的に貯留・隔離させるというというものであるが、溶媒が水だけであったり、溶解手段が「合流」、「ミキサー」、「マイクロバブル発生装置」では、溶解条件によっては、炭酸ガスの溶解濃度レベルが不十分であると考えられ、周辺地下水より比重を重くすることができないおそれがあった。また、溶解する位置によっては、炭酸ガスの溶解量の確認が出来ないおそれもある。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガスを溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で、炭酸ガス溶解水を帯水層に圧入し、貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、炭酸ガスを溶媒に溶解させた状態で地中の帯水層に圧入し、貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムであって、
炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成されることを特徴とする炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明では、前記溶解槽を、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に、前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成されることにより、この溶解槽において飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガス(液体又は超臨界状態)を溶媒(海水又は水)に溶解させることが可能となり、これにより炭酸ガス溶解水の比重が周辺地下水より大きくなるため、炭酸ガスを帯水層に長期的かつ安定的に貯留・隔離させることができるようになる。
【0009】
請求項2に係る本発明として、前記粒状の充填材として、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせとする請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0010】
上記請求項2記載の発明では、溶解槽に充填される粒状充填材として、例えば砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせて用いるものである。
【0011】
請求項3に係る本発明として、前記粒状の充填材は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定される最適な平均粒径とする請求項1,2いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0012】
上記請求項3記載の発明では、粒状の充填材は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定される最適な平均粒径のものを用いるものであり、平均粒径が上記の最適平均粒径であると、溶解効率に優れるようになる。
【0013】
請求項4に係る本発明として、前記溶解槽において、前記充填材の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板が1又は複数設けられている請求項1〜3いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。 上記請求項4記載の発明では、前記整流板を設けることにより、前記溶解槽における炭酸ガスの溶解が促進されるようになる。
【0014】
請求項5に係る本発明として、前記溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設された請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0015】
上記請求項5記載の発明は、前記溶解槽で生成した炭酸ガス溶解水の全量を対象として、未溶解炭酸ガス分を前記分離槽において分離し、この未溶解の炭酸ガス分を溶解槽にリターンさせることにより、飽和濃度レベルで炭酸ガスを溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で地中に圧入することが可能となる。この炭酸ガス溶解水は、帯水層の周辺地下水より大きな比重を持つようになり、帯水層に注入しても炭酸ガスが浮上せず、長期的かつ安定的に帯水層に貯留・隔離させることができるようになる。
【0016】
請求項6に係る本発明として、前記溶解槽は複数配置され、これら溶解槽の内の一部については、溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設され、残る溶解槽については、前記分離槽の下流側に流路が接続されている請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0017】
上記請求項6記載の発明では、地下水に対する炭酸ガスの溶解を期待して、ある程度、未溶解の炭酸ガスを含んだ状態(最大で溶媒重量の5%)で地中の帯水層に圧入し、この未溶解の炭酸ガスを地下水に対して溶解させるように制御するものである。なお、地下水に対する炭酸ガスの溶解期間としては、炭酸ガスの圧入が行われ、帯水層内で炭酸ガスの流動が生じている期間のみを考慮するものとする。本請求項6記載の発明は、上記請求項5記載の発明と対比すると、炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーを削減することが可能となる。
【0018】
請求項7に係る本発明として、前記溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システムが提供される。
【0019】
上記請求項7記載の発明は、更に炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を進めたものである。溶解槽において、帯水層への注入期間後に帯水層内で未溶解の炭酸ガスが存在しないように、溶解槽への炭酸ガス導入量を調整することにより、分離装置が不要になるとともに、海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガスを溶媒に溶解させた状態で、長期的かつ安定的に帯水層に貯留・隔離することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0022】
本発明に係る炭酸ガスの地中貯留システム1は、炭酸ガスの大規模な排出源等から分離・回収した炭酸ガスを、飽和濃度レベル付近の高い濃度で溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で地中の帯水層に封じ込め、長期的かつ安定的に貯留・隔離するためのものである。
【0023】
このように本発明では、溶媒に炭酸ガスを飽和濃度レベルの高い濃度で溶解させることにより、周辺地下水より比重を重くした状態とし、帯水層に炭酸ガスを長期的かつ安定的に貯留・隔離させるというものであるため、炭酸ガスの溶解量は、溶媒1m3当たり40〜50kg、好ましくは45〜50kgを目標とする。
【0024】
また、系内の圧力は、炭酸ガスが液体又は超臨界状態を維持した状態で溶解が行われるようにするとともに、炭酸ガス溶解水を地下の帯水層に圧入するための帯水層内の注入圧力と配管系の圧力損失とを考慮して、8MPa以上の高圧状態を維持するようにする。
【0025】
〔第1構成パターン〕
図1は、本発明に係る炭酸ガスの地中貯留システム1の第1構成パターンを示す概念図である。
本地中貯留システム1は、図1に示されるように、炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置2と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプ3と、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする複数の溶解槽4、4…と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から前記帯水層まで貫通した注入井5とから主に構成される。
【0026】
なお、本形態例では、前記溶解槽4は、炭酸ガスの溶解を促進するため複数設置したが、必要に応じて1基としてもよい。
【0027】
前記溶解槽4は、図2に示されるように、密閉された容器10の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置2から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口11と、前記溶媒圧送ポンプ3から送られた溶媒が注入される溶媒注入口12とが形成されるとともに、前記容器10の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口13が形成され、前記容器10内の下方及び上方に夫々、前記容器10内を上下方向に仕切る多孔板14、15がそれぞれ配設され、前記多孔板14、15間に粒状の充填材16が充填されて構成されている。
【0028】
前記充填材16は、溶媒と炭酸ガスとの撹拌を促し、炭酸ガスの溶解を効率化するためのものであり、例えば、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせとすることができる。前記ラシヒリングとは、セラミック、プラスチック、メタル、カーボンなどからなる円筒形状をした、充填塔で使用される充填物で、一般に広く用いられているものを使用することができる。前記サドルとは、セラミックなどからなる馬鞍形状をした、充填塔で使用される充填物で、一般に前記ラシヒリングより圧力損失が小さくなるように形成されている。
【0029】
また、前記充填材16は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定する最適な平均粒径とすることが好ましい。具体的には、充填材の種類ごとに、充填材の平均粒径に対する次の2つの関係を実験的に得た上で、溶解槽において許容される圧力損失(溶解槽の注入口と吐出口の間の圧力差)に対して、最も溶解量が多くなる平均粒径のものを最適な平均粒径として選定する。
(1)所定の炭酸ガス及び溶媒の流量及び溶解槽の形状において、充填材の平均粒径に対する炭酸ガス溶解量の関係。
(2)充填材の平均粒径に対する溶解槽の圧力損失の関係。
【0030】
一般に、前記充填材の平均粒径に対する特性は、(1)炭酸ガス及び溶媒の流量と溶解槽の形状とが与えられれば、充填材の平均粒径を細かくするほど、炭酸ガスの溶解量は増加する。(2)一方、充填材の平均粒径を細かくするほど、溶解槽内の炭酸ガス及び溶媒の流れによる圧力損失が大きくなり、一定の流量を確保するために使用するエネルギーが増加する、という傾向がある。したがって、上記炭酸ガス及び溶媒の流量と溶解槽の形状とを総合的に勘案した上で、充填材の平均粒径を選定する。なお、所要の炭酸ガス溶解量が決定できない場合には、溶解槽の大型化などの対策を採ることも考慮する。
【0031】
上記の最適な平均粒径の充填材16を用いることにより、炭酸ガスの溶解効率に優れるようになる。
【0032】
前記容器10は、図2に示されるように、密閉された縦長の管型とすることが好ましい。これにより、溶解槽4における炭酸ガスと溶媒の滞留時間を確保することが可能になる。また、系内の前記設定圧力に対して耐圧性を有する構造とすることができるとともに、短時間で連続的かつ安定的な炭酸ガス溶解水の生成が可能となる。
【0033】
ここで、溶解槽4内の流れについて図2に基づいて説明すると、前記炭酸ガス注入口11及び溶媒注入口12から容器10内に圧送された炭酸ガス及び溶媒は、下方ホッパー部17で混合されるとともに、下方側多孔板14から均等に充填材16の充填領域に浸入する。前記充填材16の充填領域においては、充填材16間での流動と相まって溶媒と炭酸ガスとが充分に撹拌されて溶媒に炭酸ガスが溶解されるとともに、上方に流動していく。この作用により、上方側多孔板15に到達したときには、溶媒に炭酸ガスがほぼ溶解された炭酸ガス溶解水が生成され、溶媒の飽和溶解レベルにまで達するようになる。その後、上方側多孔板15から上方ホッパー部18に浸入した炭酸ガス溶解水は、吐出口13から吐出される。
【0034】
前記溶解槽4においては、前記充填材16の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板19を1又は複数設けるようにするのが望ましい。前記整流板19を設けることにより、充填材16による炭酸ガスと溶媒との流れが均一に整えられ、両者の接触機会の増大により、前記溶解槽4における炭酸ガスの溶解が向上するようになる。前記溶解槽4における滞留時間と炭酸ガス溶解量とは、飽和濃度レベルまでは概ね比例的関係にあるため、所定の操業条件の下で、目標溶解量に応じた滞留時間となるように装置規模を設定するのが望ましい。
【0035】
また、本第1構成パターンでは、前記溶解槽4から注入井5に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽6が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置2と溶解槽4との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置7が配設されている。
【0036】
本第1構成パターンでは、前記溶解槽4で生成した炭酸ガス溶解水の全量を対象として、未溶解炭酸ガス分を前記分離槽6において分離し、この未溶解の炭酸ガス分を溶解槽4にリターンさせることにより、飽和濃度レベルで炭酸ガスを溶媒(海水又は水)に溶解させた状態で地中に圧入することが可能となる。この炭酸ガス溶解水は、帯水層の周辺地下水より大きな比重を持つようになり、帯水層に注入しても炭酸ガスが浮上せず、長期的かつ安定的に帯水層に貯留・隔離させることができるようになる。
【0037】
前記分離槽6は、図3に示されるように、密閉された容器20の内部に下面から所定高さで立設し、前記溶解槽4を通過した炭酸ガス溶解水の流路と接続した流入管21が設けられ、概ね前記炭酸ガス溶解水で容器20内が満たされて、未溶解炭酸ガスが上方側に重力分離されるとともに、前記容器20の上部に、前記未溶解炭酸ガスを吐出する未溶解炭酸ガス吐出口22が形成され、前記容器20の下方に、前記未溶解炭酸ガスが分離された後の炭酸ガス溶解水を吐出する炭酸ガス溶解水吐出口23が形成されて構成されている。
【0038】
溶解槽1基当たりの溶媒及び炭酸ガスの各流量は、溶解槽4の容積と炭酸ガス及び溶媒の溶解槽4内の滞留時間によって定めた全体流量に対して、注入する炭酸ガス及び溶媒の重量比(炭酸ガス重量/溶媒重量)から求めることができる。この際、炭酸ガス及び溶媒の重量比は、所望の炭酸ガスの溶解量に基づいて定められる。この炭酸ガス及び溶媒の重量比と炭酸ガスの溶解量との関係については、予め行われる通水試験によって求めておく。
【0039】
後段の実施例で詳述するように、溶解槽4での溶解濃度は、注入される炭酸ガス及び溶媒の重量比(炭酸ガス重量/溶媒重量)に影響する。具体的には、注入される前記重量比が大きくなると、溶解槽4での溶解濃度が大きくなる傾向にあるため、炭酸ガスの溶解を促進させる目的で、炭酸ガス及び溶媒の注入重量比は、前記炭酸ガス溶解濃度の目標値より大きく設定することが好ましい。
【0040】
本第1構成パターンでは、前述の通り、全ての溶解槽4、4…から吐出された炭酸ガス溶解水は前記分離槽6に注入されるため、前記分離槽6において溶解槽4、4…から吐出される炭酸ガス溶解水に含まれる未溶解炭酸ガスが完全に分離され、注入井5には、炭酸ガスが溶媒に完全に溶解した状態の炭酸ガス溶解水が圧入される。
【0041】
〔第2構成パターン〕
第2構成パターンは、地中貯留システム1の主な構成は、前記第1構成パターンと同様であるが、以下の点が相違する。すなわち、図4に示されるように、前記溶解槽4は複数配置され、これら溶解槽4、4…の内の一部については、溶解槽4から注入井5に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽6が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置2と溶解槽4との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置7が配設され、残る溶解槽については、前記分離槽6の下流側に流路が接続される構成となっている。
【0042】
本第2構成パターンでは、地下水に対する炭酸ガスの溶解を期待して、ある程度、未溶解の炭酸ガスを含んだ状態(最大で溶媒重量の5%)で地中の帯水層に圧入し、この未溶解の炭酸ガスを地下水に対して溶解させるように制御するものである。なお、地下水に対する炭酸ガスの溶解期間としては、炭酸ガスの圧入が行われ、帯水層内で炭酸ガスの流動が生じている期間のみを考慮するものとする。
【0043】
本第2構成パターンは、上記第1構成パターンと対比すると、炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーを削減することが可能となる。
【0044】
〔第3構成パターン〕
第3構成パターンは、図5に示されるように、上記第1構成パターンと対比して、前記溶解槽4から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある点で相違する。
【0045】
本第3構成パターンは、更に炭酸ガスの単位重量当たりの処理に要する海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を進めたものである。本第3構成パターンでは、地下水に対する炭酸ガスの溶解を期待して、未溶解の炭酸ガス(最大で溶媒重量の5%)は、地中の帯水層で、地下水に対して溶解させるように制御するものである。この地下水に対する炭酸ガスの溶解期間としては、未溶解の炭酸ガスの注入が行われ、帯水層内で炭酸ガスの流動が生じている期間のみを考慮するものとする。溶解槽4において、上記の期間より後に帯水層内で未溶解の炭酸ガスが存在しないように、溶解槽への炭酸ガス導入量を調整することにより、分離装置が不要になるとともに、海水又は水の使用量及び使用エネルギーの削減を図ることが可能となる。
【実施例】
【0046】
本地中貯留システム1による炭酸ガスの溶解状態を実証するため、図6に示される実験装置を用いて炭酸ガスの溶解実験を行った。
【0047】
実験装置は、図6に示されるように、炭酸ガスボンベ30の炭酸ガスを炭酸ガス圧縮装置2によって加圧して溶解槽4に注入するとともに、塩水タンク31の塩水を溶媒圧送ポンプ3によって加圧して溶解槽4に注入し、溶解槽4で炭酸ガスの溶解処理を行い、この炭酸ガス溶解水を分離槽で未溶解炭酸ガスを分離した後の炭酸ガス溶解水をサンプリングする。ここで、溶解槽4の容積は850mlとし、充填材16は、平均粒径が0.18mm(粒度1)、0.63mm(粒度2)、1.32mm(粒度3)の砂状のものを使用した。実験では、温度、圧力、塩水流量、充填材16の粒度及び炭酸ガスと塩水の重量比(炭酸ガス重量/塩水重量)をそれぞれ変化させたとき、サンプリングした炭酸ガス溶解水の炭酸ガス溶解量を測定した。
【0048】
図7、図8は、各温度における塩水流量及び充填材16の粒度をそれぞれ変化させたときの溶解槽4に注入する炭酸ガス及び塩水の重量比(炭酸ガス重量/塩水重量)と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、温度29℃、33℃のいずれの試験温度においても、炭酸ガスと塩水の重量比を増大させるほど、また充填材16の粒度を小さくするほど炭酸ガス溶解量が大きくなる傾向にある。
【0049】
図9〜図11は、各温度における塩水流量及び圧力をそれぞれ変化させたときの前記重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、前述と同様に、炭酸ガスと塩水の重量比を増大させるほど、炭酸ガス溶解量が増大する傾向にあるが、ある重量比以上では炭酸ガス溶解量がほぼ一定の飽和濃度レベルとなり、本地中貯留システムの有効性が確認された。
【0050】
図12は、各圧力における温度と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、25℃〜40℃の範囲の一般的な温度条件においては、炭酸ガス溶解量に大きく影響を及ぼさないことが確認された。
【0051】
図13は、各塩水流量における充填材の平均粒径と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、本実施例では、充填材の平均粒径は、平均粒径1.0mm以下とすることにより、炭酸ガスの溶解効率に優れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかる炭酸ガスの地中貯留システム1(第1の構成パターン)の概念図である。
【図2】溶解槽4の縦断面図である。
【図3】分離槽6の縦断面図である。
【図4】本発明にかかる炭酸ガスの地中貯留システム1(第2の構成パターン)の概念図である。
【図5】本発明にかかる炭酸ガスの地中貯留システム1(第3の構成パターン)の概念図である。
【図6】実験装置の概念図である。
【図7】温度29℃における塩水流量及び粒度に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図8】温度33℃における塩水流量及び粒度に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図9】温度25℃における塩水流量及び圧力に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図10】温度29℃における塩水流量及び圧力に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図11】温度33℃における塩水流量及び圧力に対する重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図12】温度と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。
【図13】充填材の平均粒径と炭酸ガス溶解量との関係との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1…地中貯留システム、2…炭酸ガス圧縮装置、3…溶媒圧送ポンプ、4…溶解槽、5…注入井、6…分離槽、7…炭酸ガス圧送装置、10…容器、11…炭酸ガス注入口、12…溶媒注入口、13…吐出口、14、15…多孔板、16…充填材、19…整流板、20…容器、21…流入管、22…未溶解炭酸ガス吐出口、23…炭酸ガス吐出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスを溶媒に溶解させた状態で地中の帯水層に圧入し、貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムであって、
炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成されることを特徴とする炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項2】
前記粒状の充填材として、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせとする請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項3】
前記粒状の充填材は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定される最適な平均粒径とする請求項1,2いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項4】
前記溶解槽において、前記充填材の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板が1又は複数設けられている請求項1〜3いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項5】
前記溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設された請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項6】
前記溶解槽は複数配置され、これら溶解槽の内の一部については、溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設され、残る溶解槽については、前記分離槽の下流側に流路が接続されている請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項7】
前記溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項1】
炭酸ガスを溶媒に溶解させた状態で地中の帯水層に圧入し、貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留システムであって、
炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成されることを特徴とする炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項2】
前記粒状の充填材として、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせとする請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項3】
前記粒状の充填材は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定される最適な平均粒径とする請求項1,2いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項4】
前記溶解槽において、前記充填材の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板が1又は複数設けられている請求項1〜3いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項5】
前記溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設された請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項6】
前記溶解槽は複数配置され、これら溶解槽の内の一部については、溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽が配設されるとともに、分離された前記未溶解炭酸ガスを前記炭酸ガス圧縮装置と溶解槽との中間流路に戻す炭酸ガス圧送装置が配設され、残る溶解槽については、前記分離槽の下流側に流路が接続されている請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【請求項7】
前記溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある請求項1〜4いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−238054(P2008−238054A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82078(P2007−82078)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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