説明

点灯装置、及びこれを備えた画像表示装置

【課題】駆動周波数を固定しつつ、消灯状態にフィラメント電流を安定して供給する。
【解決手段】熱陰極蛍光ランプ101を含む共振負荷回路に電力を供給するインバータ150と、このインバータを制御する制御装置とを備える点灯装置500であって、インバータは、熱陰極蛍光ランプの消灯状態において、共振負荷回路に流れる交流電流の周波数が、前記インバータを駆動する周波数の(自然数+1)倍となるように設定された前記共振負荷回路を備える。さらに、共振負荷回路は、共振用のコンデンサ109にトランス112を介して前記熱陰極蛍光ランプを交流的に並列接続した並列回路と、この並列回路に直列接続したチョークコイル108とを備え、インバータは点灯時は消灯時よりも高い電圧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯装置、及びこれを備えた画像表示装置、特に熱陰極蛍光ランプの点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、液晶パネル自体が発光しないため、液晶パネルを背面から照射するバックライトが必要である。従来では、バックライトを軽薄化可能な冷陰極蛍光ランプを用いることが一般的であったが、冷陰極蛍光ランプに比べて強度が高く、また高効率点灯が可能であるという利点から、熱陰極蛍光ランプを用いることもある。この熱陰極蛍光ランプでは、直流電圧を矩形波状の交流電圧に変換し、チョークコイルとコンデンサを備える共振負荷回路に印加して、正弦波状の共振電流を流す電流共振型インバータを用いて、ランプに流れる電流(以下、「ランプ電流」と記す。)を安定化させる。
【0003】
また、一般照明用途では、熱陰極蛍光ランプを調光するとき、インバータの駆動周波数を変化させることによって、ランプ電流を制御する方法が一般的である。ところが、液晶ディスプレイのバックライトでは、インバータ駆動周波数が、液晶パネルの動作周波数と干渉することで、画面のちらつき、または干渉縞の発生といった問題が起こり得る。この問題を避けるために、バックライト用インバータでは、駆動周波数の固定を要求されることがあり、さらに、点灯装置より上位の制御装置から与えられる固定周波数の信号に同期して、インバータを駆動することを要求される場合もある。
【0004】
ところで、冷陰極蛍光ランプは、熱陰極蛍光ランプに比べてランプ電流が小さいため、インバータの駆動周波数によるランプ電流制御が困難である。そのため、冷陰極蛍光ランプは、駆動周波数を固定し、PWM(Pulse Width Modulation)調光(バースト調光とも呼ばれる)を利用する。PWM調光では、インバータ駆動周波数に比べて十分低い周波数である調光用PWM信号のレベルにしたがって、ランプの点灯、消灯を繰り返して調光する。点灯状態では、インバータを固定周波数で駆動し、消灯状態では、インバータを停止させる。このとき、調光用PWM信号がハイ(H)レベルとなる時比率(すなわち、duty)によって調光が可能である。
【0005】
一方、熱陰極蛍光ランプでPWM調光を用いる場合、例えば、特許文献1に記載のインバータが使用される。このインバータでは、直流電源に対して、主となる点灯用インバータと共に、フィラメント予熱用のインバータが並列に接続される。また、予熱用インバータと直流電源との間には、フィラメント電流制御用のDC−DCコンバータが挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−275387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱陰極蛍光ランプのPWM調光には以下のような問題がある。
熱陰極蛍光ランプのインバータは、ランプ電流を供給するだけでなく、電極部のフィラメントを予熱するためのフィラメント電流を供給する必要がある。フィラメント電流を供給する回路構成としては、共振用チョークコイルに巻回した2次巻線にフィラメントを接続する構成などがあり、2次巻線を用いた構成は部品数が少ないという利点からよく用いられる。
しかし、このような構成では、インバータを停止させて消灯状態にすると、ランプ電流だけでなくフィラメント電流も流れなくなる。消灯状態のフィラメント電流が不十分の場合、再点灯時にフィラメント損傷が大きくなり、ひいてはランプ寿命が短くなる。さらに、再点灯時の損失が増大したり、再点灯に失敗したりする。
PWM調光の消灯状態においてもフィラメント電流を供給するためには、例えば特許文献1に記載のインバータを用いる必要がある。このインバータでは、PWM調光の消灯状態に点灯用インバータを停止させていても、予熱用インバータを継続して動作させることによってフィラメント電流を供給できる。また、DC−DCコンバータによって予熱用インバータの入力電圧を変化させることで、消灯状態のフィラメント電流を制御することができる。
しかしながら、特許文献1に記載のインバータでは、予熱用インバータを別に設けるなど、フィラメント電流を供給するための回路構成が複雑であるため、回路の大型化、高コスト化が問題になると考えられる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、駆動周波数を固定しつつ、消灯状態にフィラメント電流を安定して供給することができる点灯装置及びこれを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、直流電圧を交流電圧に変換し、熱陰極蛍光ランプ(101)を含む共振負荷回路に電力を供給するインバータ(150)と、このインバータを制御する制御装置とを備える点灯装置(500)であって、前記インバータは、前記熱陰極蛍光ランプの消灯状態において、前記共振負荷回路に流れる交流電流の周波数が、前記インバータを駆動する周波数の(自然数+1)倍となるように設定された前記共振負荷回路を備えることを特徴とする。このとき、前記共振負荷回路は、共振用のコンデンサ(109)にトランス(112)を介して前記熱陰極蛍光ランプを並列に交流接続した並列回路と、この並列回路に直列接続したチョークコイル(108)とを備えて構成され、前記インバータは、点灯時は消灯時よりも高い電圧を出力することが好ましい。なお、かっこ内の数字は例示である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動周波数を固定しつつ、消灯状態にフィラメント電流を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における点灯装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における点灯装置の点灯状態と消灯状態とを示す動作波形図である。
【図3】第1実施形態において、ランプの消灯状態で5倍共振を発生させる場合の動作波形図である。
【図4】本発明の第2実施形態における点灯装置の構成図である。
【図5】第2実施形態における点灯装置の点灯状態と消灯状態とを示す動作波形図である。
【図6】第2実施形態において、ランプの消灯状態で3倍共振を発生させる場合の動作波形図である。
【図7】第2実施形態をハーフブリッジインバータに適用する場合における点灯装置の主回路の構成図である。
【図8】第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてフルブリッジインバータに適用する場合における動作波形図である。
【図9】本発明の第3実施形態における点灯装置の構成図である。
【図10】第3実施形態における点灯装置の動作波形図である。
【図11】第1実施形態の点灯装置における主回路について、フィラメント電流を供給する回路の変形例である。
【図12】第1実施形態の点灯装置における主回路について、フィラメント電流を供給する回路の他の変形例である。
【図13】第1実施形態の点灯装置における主回路について、フィラメント電流を供給する回路のさらに他の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の構成について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における点灯装置の構成図であり、この点灯装置500はインバータ等の主回路とその制御装置200とを備え、主として図示しない画像表示装置のバックライトとして使用される。
図1の主回路は、直流電源100と、フルブリッジインバータ150と、共振用のチョークコイル108と、共振用のコンデンサ109と、トランス112と、熱陰極蛍光ランプ101と、チョークコイル108に設けた二次巻線115,116と、直流阻止用のコンデンサ110,111,117,118とを備える。
【0013】
熱陰極蛍光ランプ101は、略円筒形状、あるいは略U字円筒形状であり、両端にフィラメント102,103を備える。このフィラメント102,103の各々に電流を流し加熱しつつ、フィラメント102,103の間にランプを電圧を印加することで,フィラメント102と、フィラメント103との間にランプ電流iLAMPが流れ、発光するようになっている。また、熱陰極蛍光ランプ101は、ランプ電流iLAMPに応じてランプ電圧が変化し、また負性抵抗性を有する。
【0014】
フルブリッジインバータ150は、直流電源100に対して、スイッチング素子であるパワーMOSFET104とパワーMOSFET105の直列体、及びパワーMOSFET106とパワーMOSFET107との直列体が並列に接続され、これら2組の直列体が上下アームとして動作するように構成され、直流電圧を矩形波状の交流電圧に変換する。
パワーMOSFET104のソースとパワーMOSFET107のドレインとの間、すなわち、フルブリッジインバータ150の出力端子間には、以下に述べる構成の共振負荷回路が接続される。まず、パワーMOSFET104のソースとパワーMOSFET107のドレインとの間には、共振用のチョークコイル108と共振用のコンデンサ109との直列体が接続されている。コンデンサ109の端子間には、トランス112の1次巻線113、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ110の直列体が接続されている。トランス112の2次巻線114の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101、及びそれに流れるランプ電流iLAMPから直流成分を除去するためのコンデンサ111の直列体が接続されて構成されている。なお、スイッチング素子としてパワーMOSFETを用いているが、トランジスタやIGBTでも構わない。また、直流電源100の電圧が高い場合には、トランス112、及び、コンデンサ110,111のいずれか一方を削除してもよい。
これらの接続により、フルブリッジインバータ150は、共振用のチョークコイルに流れる電流(以下、「チョークコイル電流」と記す)、及びランプ電流iLAMPが正弦波状に流れる電流共振型インバータとして機能する。
【0015】
電流共振型インバータは、チョークコイル電流の位相が、前記の矩形波電圧の位相よりも進んでいる進相動作のとき、パワーMOSFET104,105,106,107の寄生ダイオード(転流ダイオード)に流れる逆回復電流によりパワーMOSFET104,105,106,107が破壊したり、電力損失が増大したりする性質を有する。一方、チョークコイル電流の位相が、前記の矩形波電圧の位相よりも遅れている遅相動作では、寄生ダイオード(転流ダイオード)に逆回復電流が流れることなく安定に動作し、パワーMOSFET104,105,106,107のターンオン動作がゼロ電圧スイッチングとなるため、スイッチング損失が小さくなる性質を有する。
【0016】
トランス112の一次側から見た熱陰極蛍光ランプ101は抵抗値Rの抵抗で表現され、チョークコイル108のインダクタンスLr、コンデンサ109の静電容量Crとすると、共振負荷回路のインピーダンスZはおよそ、
Z=jωLr+1/(R+1/jωCr)
となる。この共振負荷回路の共振周波数f0は、熱陰極蛍光ランプ101が消灯状態であり、R=無限大のとき、f0=1/(2π√LrCr)であるが、
熱陰極蛍光ランプ101が点灯状態であり、RがインピーダンスZにおいて無視できないとき、共振周波数はf0よりも低くなる。ここで、電流共振型インバータは、その共振周波数が駆動周波数より低いとき、前記の遅相動作となるおそれがある。したがって、後記のようにランプの消灯状態おいてもインバータを動作させ、かつ、このときに遅相動作を維持するためには、点灯状態に比べて駆動周波数を高くする必要がある。しかし、バックライト用インバータでは、画面のちらつきや干渉縞の発生といった問題を避けるために、駆動周波数の固定を要求されることがある。
本実施形態では、駆動周波数を固定して、消灯状態ではチョークコイル電流を共振周波数f0で共振させ、点灯状態ではチョークコイル電流の周波数と駆動周波数が一致するようにした。このとき、共振周波数f0が駆動周波数の(2×自然数+1)倍か、または、それよりわずかに低くなるように、前記のLr、Crを設定した。これによって、消灯状態において共振周波数f0は駆動周波数より低くなるが、後記の要領で進相動作を回避できる。
【0017】
共振用チョークコイル108は、2個の2次巻線115,116が巻回されており、2次巻線115の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント102、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ117が直列に接続されており、また、2次巻線116の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント103、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ118が直列に接続されている。すなわち、コンデンサ117,118により、共振用チョークコイル108の2次巻線115,116と、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント102,103とが交流的に接続(交流接続)されている。
【0018】
制御装置200は、入力される調光用PWM信号Iに応じて、4つのパワーMOSFET104,105,106,107にゲート信号G1,G2,G3,G4を出力する。制御装置200は、ゲート信号G1,G2,G3,G4の出力パターンを調光用PWM信号Iのレベルによって切り替えると共に、駆動電圧のdutyを変えることで、調光用PWM信号のdutyによる調光が可能となっている。なお、制御装置200は、調光用PWM信号IがHレベルのときにランプが点灯状態となり、Lレベルのときに消灯状態となるようにゲート信号G1,G2,G3,G4を出力するが、調光用PWM信号IがLレベルのときにランプが点灯状態となり、Hレベルのときに消灯状態となるようにゲート信号G1,G2,G3,G4を出力するようにしてもよい。
【0019】
<PWM調光・点灯状態の動作>
図2は、図1の点灯装置によってPWM調光を行う場合の動作波形を、(a)点灯状態、(b)消灯状態に分けて示したものである。ここで、図2を含む以下、すべての動作波形図における電流は、図1の回路図における各素子を上から下に流れる電流を正とし、左から右に流れる電流を正としている。以下、図2をもとに第1実施形態におけるPWM調光について説明する。
【0020】
調光用PWM信号がHレベルの状態、すなわち、PWM調光の点灯状態において、制御装置200は、図1の主回路がフルブリッジインバータとしての基本動作(以下、「フルブリッジ動作」という。)をするように固定周波数のゲート信号を出力する。すなわち、パワーMOSFET104,107が、また、パワーMOSFET105,106が、それぞれ同時にオン、又はオフとなるように、パワーMOSFET104,105から構成される上下アーム、及びパワーMOSFET106,107から構成される上下アームをそれぞれスイッチング動作させる。なお、図2では、4つのパワーMOSFET104,105,106,107のオン時間dutyをそれぞれ50%としている。
【0021】
点灯装置500は、パワーMOSFET104,107がオンのとき、初めは、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、パワーMOSFET104、直流電源100、パワーMOSFET107、コンデンサ109の経路で環流電流が流れ、チョークコイル108のエネルギが放出される。チョークコイル108のエネルギが放出されると、チョークコイル108に流れる電流(以下、「チョークコイル電流」という。)iの極性が反転し、直流電源100、パワーMOSFET104、チョークコイル108、コンデンサ109、パワーMOSFET107の経路で共振電流が流れ、再びチョークコイル108にエネルギが蓄えられる。
なお、図2の点灯状態(a)では、熱陰極蛍光ランプ101の抵抗値Rが小さく、チョ−クコイル電流iは、L−R直列回路に流れる電流波形に近似する臨界状態の近くで共振している。また、パワーMOSFET104のソースとパワーMOSFET107のドレインとの間に発生する電圧、すなわちインバータ出力電圧は、直流電源100の電圧をVinと表記するとすれば、およそ+Vinとなる。
【0022】
パワーMOSFET104,107がオフになると共に、パワーMOSFET105,106がオンになると、初めは、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、コンデンサ109、パワーMOSFET106、直流電源100、パワーMOSFET105の経路で環流電流が流れ、チョークコイル108のエネルギが放出される。チョークコイル108のエネルギが放出されると、チョークコイル電流iの極性が反転し、直流電源100、パワーMOSFET106、コンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET105の経路で共振電流が流れ、再びチョークコイル108にエネルギが蓄えられる。このとき、インバータ出力電圧Voは、およそ−Vinとなる。
【0023】
以上の動作によって、コンデンサ109に交流電圧が発生し、コンデンサ110を介してトランス112の1次巻線113に交流電流が流れる。この電流によって、点灯装置500には、トランス112の2次巻線114に交流電圧が誘起し、この誘起電圧によって熱陰極蛍光ランプ101が放電する。熱陰極蛍光ランプ101が放電すると、点灯装置500には2次巻線114、コンデンサ111、熱陰極蛍光ランプ101からなる閉路に交流のランプ電流iLAMPが流れ、熱陰極蛍光ランプ101は安定した点灯状態を保つ。
【0024】
また、点灯装置500には、チョークコイル108に設けた2個の2次巻線115,116にもそれぞれ交流電圧が発生し、2次巻線115、コンデンサ117、及びフィラメント102からなる閉路と、2次巻線116、コンデンサ118、及びフィラメント103からなる閉路とにそれぞれ交流のフィラメント電流が流れ、フィラメント102,103が加熱される。
以上の動作がインバータ駆動周波数で繰り返され、インバータ出力電圧、チョークコイル電流i、ランプ電流iLAMP、フィラメント電流、パワーMOSFET104に流れる電流の波形は図2(a)のようになる。なお、2個のフィラメント102,103に流れるフィラメント電流はほぼ同じであるとして、図2にはその波形をまとめて示している。
【0025】
<PWM調光・消灯状態の動作>
制御装置200は、調光用PWM信号IがLレベルになり、PWM調光の消灯状態に移行すると、パワーMOSFET106が常にオフになるように、パワーMOSFET107が常にオンになるように、ゲート信号G1,G2,G3,G4の出力パターンを切り替える。制御装置200は、パワーMOSFET104,105に対しては、点灯状態と同じ要領でゲート信号を出力する。このとき、フルブリッジインバータ150は、パワーMOSFET104,105の直列体を上下アームとするSEPP(Single-Ended Push-Pull)インバータとして動作(以下、「SEPP動作」という。)する。
【0026】
直流電源電圧が同じVinであれば、SEPPインバータの出力電圧は、フルブリッジインバータの2分の1である。すなわち、制御装置200は、消灯状態においては、フルブリッジインバータ150の動作をフルブリッジ動作からSEPP動作に切り替え、インバータ出力電圧を点灯状態に比べて減少させる。これによって、フルブリッジインバータ150は、熱陰極蛍光ランプ101の放電を維持するだけの電圧を出力できなくなり、熱陰極蛍光ランプ101は消灯する。ランプ電流iLAMPは減衰してゼロになる一方、フルブリッジインバータ150がSEPP動作することで、チョークコイル108には後記の要領で交流電流が流れ続ける。これにより、チョークコイル108、及びその2次巻線115,116に交流電圧が発生し、フィラメント電流が流れ続ける。
【0027】
まず、パワーMOSFET104がオンのときの動作を説明する。初めは、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、パワーMOSFET104、直流電源100、パワーMOSFET107、コンデンサ109の経路に環流電流が流れ、チョークコイル108のエネルギが放出される。チョークコイル108のエネルギが放出されると、チョークコイル電流iの極性が反転し、直流電源100、パワーMOSFET104、チョークコイル108、コンデンサ109、パワーMOSFET107の経路で共振電流が流れ、再びチョークコイル108にエネルギが蓄えられる。
【0028】
点灯装置500は、熱陰極蛍光ランプ101が消灯状態であるため、このときの共振電流の周波数は共振用チョークコイル108のインダクタンスLr、及び共振用コンデンサ109の静電容量Crによって決まる共振周波数f0=1/(2π√(Lr・Cr))とほぼ一致し、点灯状態よりも高くなる。前記の通り、Lr、Crの設定によって、共振周波数f0は駆動周波数のおよそ(2×自然数+1)倍か、それよりわずかに低くなっている。以下では特に、f0が駆動周波数の3倍よりもわずかに低くなるようにLr、Crを設定した場合について説明する。
【0029】
共振電流の周波数が高くなる一方、パワーMOSFET104,105がスイッチング動作する駆動周波数は点灯状態と同じであるため、以下の作用が発生する。点灯装置500は、パワーMOSFET104がオンのうちに、チョークコイル108のエネルギがコンデンサ109に移動し、コンデンサ109に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル電流iの極性が再び反転する。このとき、点灯装置500は、コンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET104、直流電源100、パワーMOSFET107の経路で共振電流(反転電流)が流れる。このとき、反転電流はパワーMOSFET104の寄生ダイオードに流れている。この状態でパワーMOSFET104がオフになり、パワーMOSFET105がオンになると、パワーMOSFET104の寄生ダイオードが逆回復し、直流電源100、パワーMOSFET104の寄生ダイオード、パワーMOSFET105の経路に大きな逆回復電流が流れる。この動作は前記の進相動作と呼ばれており、前記の逆回復電流によって損失が増大し、最悪の場合パワーMOSFETが破損してしまうため、避けるべき動作である。
【0030】
第1実施形態では、以下の作用により、進相動作を回避する。点灯装置500は、パワーMOSFET104がオフになる前に、コンデンサ109のエネルギがチョークコイル108に移動し、共振電流がコンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET104、直流電源100、パワーMOSFET107の経路で流れ続ける。チョークコイル108のエネルギが放出されると、チョークコイル電流iの極性が三度反転し、直流電源100、パワーMOSFET104、チョークコイル108、コンデンサ109、パワーMOSFET107の経路で共振電流が流れる。すなわち、パワーMOSFET104がオフになる前に、共振動作の2周期目に移行する。この状態で、制御装置200は、パワーMOSFET104をオフさせ、パワーMOSFET105をオンさせる。パワーMOSFET104がオフになる直前において、その寄生ダイオードには電流が流れていない。よって、点灯装置500は、パワーMOSFET105のターンオンにおいて前記の逆回復電流は流れず、スイッチング損失は小さくなる。なお、パワーMOSFET104がオンの期間中、インバータ出力電圧Voはおよそ+Vinとなる。
【0031】
パワーMOSFET105がオンになると、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、コンデンサ109、パワーMOSFET107、パワーMOSFET105の経路に環流電流が流れる。環流電流によってコンデンサ109が充電されることで、チョークコイル108に蓄えられたエネルギがコンデンサ109に移動する。コンデンサ109に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル電流iの極性が反転し、環流電流はコンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET105、パワーMOSFET107の経路に流れる。
【0032】
この環流電流の周波数は、前記の共振電流と同じであり、およそ共振周波数f0になる。そのため、パワーMOSFET105がオンの期間中に、チョークコイル108とコンデンサ109とでエネルギのやりとりが繰り返され、チョークコイル電流iの極性も繰り返し反転する。環流電流が2周期目に移行し、その経路がコンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET105、パワーMOSFET107である状態で、パワーMOSFET105がオフとなり、再びパワーMOSFET104がオンになる。パワーMOSFET105がオフになる直前において、パワーMOSFET105の寄生ダイオードには電流が流れていない。
よって、パワーMOSFET104のターンオンにおいて逆回復電流は流れず、スイッチング損失は小さくなる。なお、パワーMOSFET105がオンの期間中、インバータは直流電源100から切り離された状態となり、出力電圧は略ゼロである。
【0033】
以上の動作によって、点灯装置500では、コンデンサ109に交流電圧が発生し、フルブリッジ動作と同様の要領でトランス112の2次巻線114に交流電圧が誘起する。しかし、この誘起電圧はフルブリッジ動作時に比べて小さいため、熱陰極蛍光ランプ101は放電せず、ランプ電流は流れない。一方、前記の説明の通り、2次巻線115、コンデンサ117、フィラメント102からなる閉路、及び2次巻線116、コンデンサ118、フィラメント103からなる閉路にそれぞれフィラメント電流が流れる。
【0034】
以上によって、インバータ出力電圧、チョークコイル電流i、ランプ電流iLAMP、フィラメント電流、パワーMOSFET104に流れる電流の波形は図2(b)のようになる。チョークコイル電流iの周波数がインバータ駆動周波数の3倍になっており、以下ではこの現象を3倍共振と呼ぶ。一方、図2(a)に示した点灯状態では、チョークコイル電流iの周波数とインバータ駆動周波数とが一致しており、以下ではこの現象を1倍共振と呼ぶ。ランプ消灯に伴う共振回路特性の変化を利用し、前記の定数Lr、Cr を適切に設定することで、点灯状態では1倍共振を、消灯状態では3倍共振をそれぞれ発生させ、かつ、いずれの状態においても前記の進相動作を避けることができる。なお、点灯状態と消灯状態とで、定数Lr、Cr を切り替えるようにはしない。
【0035】
点灯装置500は、3倍共振によって、インバータ駆動周波数を固定したまま、消灯状態における回路の動作周波数を点灯状態に比べて3倍高くできる。このとき、フィラメント電流を供給する回路中のコンデンサ117,118のインピーダンスが減少し、フィラメント電流が流れやすくなる。3倍共振によって、消灯状態においてインバータ出力電圧を減少させる状況であっても、十分なフィラメント電流の供給が可能となる。
以上の通り、第1実施形態に示した点灯装置500は、インバータ駆動周波数の固定に対応可能であり、かつ、PWM調光の消灯状態におけるフィラメント電流の安定供給を、従来必要であった予熱用インバータ無しで実現することができる。
【0036】
<第1実施形態の変形例>
以下、第1実施形態の変形例について説明する。
共振周波数f0=1/(2π√(Lr・Cr))が駆動周波数の5倍よりもわずかに低くなるように定数 Lr、Cr を設定すると、点灯または消灯の各状態における共振周波数の差を、前記説明の場合と比べて大きくすることができ、図3に示す動作波形を得る。図3(a)の点灯状態では、図2(a)と同様に1倍共振で動作する。一方、図3(b)の消灯状態では、チョークコイル電流iの周波数がインバータ駆動周波数の5倍になっており、以下ではこの現象を5倍共振と呼ぶ。さらに、消灯状態において、チョークコイル電流iの周波数をインバータ駆動周波数の7倍、9倍とすることも考えられる。まとめると、前記実施形態では、消灯状態において(2×自然数+1)倍共振を発生させると説明できる。また、定数 Lr、Cr の設定によっては、点灯状態において(2×自然数+1)倍共振を発生させることも考えられる。ただし、消灯状態におけるチョークコイル電流iの周波数を、点灯状態に比べて高くすることが望ましい。
【0037】
次に、消灯状態において、制御装置200は、パワーMOSFET106が常にオン、107が常にオフとなるようにゲート信号を出力してもよい。また、パワーMOSFET106と107のスイッチング動作を継続させ、パワーMOSFET104とパワーMOSFET105とのうち、片方が常にオン、他方が常にオフとなるようにゲート信号を出力してもよい。
【0038】
また、パワーMOSFET104〜107をスイッチング動作させる場合のオン時間dutyを、図2に示したように50%とする必要はない。パワーMOSFETのオン時間dutyを調整することで、インバータの出力電力を変化させ、ランプ電流とフィラメント電流を微調整できる。ただし、パワーMOSFETのスイッチング時における逆回復電流を回避でき、かつ、消灯状態では(2×自然数+1)倍共振を発生可能な範囲でオン時間dutyを設定することが望ましい。
【0039】
<第2実施形態>
第1実施形態に示した調光方式は、フルブリッジインバータを備える点灯装置に対して適用可能な方式である。2つのパワーMOSFETを用いるハーフブリッジインバータ、又はSEPPインバータは、フルブリッジインバータに比べて出力電圧が2分の1であるものの、トランス昇圧比の増大、直流電源電圧の増大などで補うことによって、蛍光ランプを点灯させることができる。この第2実施形態は、フルブリッジインバータだけでなく、ハーフブリッジインバータ、及びSEPPインバータにも適用可能な方式である。以下では、SEPPインバータに適用する場合の例について説明する。
【0040】
図4は、本発明の第2実施形態において用いる点灯装置510であり、インバータの主回路と、その制御装置201とを備える。図4の主回路は、図1の主回路について、パワーMOSFET106,107を削除し、共振用のチョークコイル108と共振用コンデンサ109との直列体をパワーMOSFET105のドレイン−ソース間に接続した回路となっている。すなわち、図4の主回路は、パワーMOSFET104,105の直列体である上下アームを1組備えたSEPPインバータ152の出力端子間に、図1と同様の共振負荷回路を接続した回路となる。なお、トランス112、熱陰極蛍光ランプ101の接続形態など、共振負荷回路の構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
チョークコイル108のインダクタンスLr,コンデンサ109の静電容量Crの設定においては、前記の共振周波数f0=1/(2π√(Lr・Cr))が駆動周波数のおよそ(自然数+1)倍か、それよりわずかに低くなるようにする。以下では特に、共振周波数f0が駆動周波数の2倍よりもわずかに低くなるようにLr、Crを設定した場合を説明する。
図4の制御装置201は、入力される調光用PWM信号にしたがって、2つのパワーMOSFET104,105にゲート信号G1,G2を出力する。
【0041】
<PWM調光・点灯状態の動作>
図5は、図4の点灯装置によってPWM調光を行う場合の動作波形を、(a)点灯状態、(b)消灯状態に分けて示したものである。以下、図5をもとに第2実施形態におけるPWM調光について説明する。
点灯状態において、制御装置201は、パワーMOSFET104,105の上下アームがスイッチング動作するように固定周波数のゲート信号を出力する。なお、図4(a)では、パワーMOSFET104,105のオン時間dutyをそれぞれすべて50%とした。
点灯装置510は、パワーMOSFET104がオンのとき、初めは、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、パワーMOSFET104、直流電源100、コンデンサ109の経路に環流電流が流れ、チョークコイル108のエネルギが放出される。チョークコイル108のエネルギが放出されると、点灯装置510は、チョークコイル電流iの極性が反転し、直流電源100、パワーMOSFET104、チョークコイル108、コンデンサ109の経路で共振電流が流れ、再びチョークコイル108にエネルギが蓄えられる。パワーMOSFET104がオンの期間中、パワーMOSFET105のソース−ドレイン電圧、すなわちインバータ出力電圧Voは、およそ+Vinとなる。
【0042】
パワーMOSFET104がオフになり、パワーMOSFET105がオンになると、点灯装置510では、初めは、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、コンデンサ109、パワーMOSFET105の経路に環流電流が流れる。環流電流によってコンデンサ109が充電されることで、チョークコイル108のエネルギがコンデンサ109に移動する。コンデンサ109に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル電流iの極性が反転し、環流電流はコンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET105の経路に流れる。パワーMOSFET105がオンの期間中、インバータは直流電源100から切り離された状態となり、インバータ出力電圧Voはおよそゼロである。
【0043】
以上の動作によって、点灯装置510では、コンデンサ109に交流電圧が発生し、第1実施形態と同様の要領でトランス112の2次巻線114に交流電圧が誘起する。この誘起電圧によって蛍光ランプ101は放電し、2次巻線114、コンデンサ111、蛍光ランプ101からなる閉路に交流のランプ電流iLAMPが流れ、蛍光ランプ101は安定した点灯状態を保つ。
また、チョークコイル108に巻回した2個の2次巻線115,116にもそれぞれ交流電圧が発生し、2次巻線115、コンデンサ117、フィラメント102からなる閉路、及び2次巻線116、コンデンサ118、フィラメント103からなる閉路にそれぞれ交流のフィラメント電流が流れ、フィラメント102,103が加熱される。
以上の回路動作によって、インバータ出力電圧Vo、チョークコイル電流i、ランプ電流iLAMP、フィラメント電流、パワーMOSFET104に流れる電流の波形は図5(a)のようになる。
【0044】
<PWM調光・消灯状態の動作>
消灯状態に移行すると、制御装置201は、図5(b)のように、パワーMOSFET104のオン時間dutyを50%より小さくし、かつ、パワーMOSFET105のオン時間dutyを50%より大きくする。ただし、パワーMOSFET104、105の上下アームがスイッチング動作する駆動周波数は、点灯状態と変わらない固定値である。
このとき、制御装置201がパワーMOSFET104のオン時間dutyを小さくし、またパワーMOSFET105のオン時間dutyを大きくする程、SEPPインバータ152の出力電圧Vは減少する。この原理を利用して、点灯装置510のインバータが熱陰極蛍光ランプ101の放電を維持できなくなる程度に、制御装置201はパワーMOSFET104,105のオン時間dutyを設定する。例として、図5(b)では、パワーMOSFET104のオン時間dutyをおよそ25%に設定している。点灯状態と比べてインバータ出力電圧Vを減少させる点では、第1実施形態と変わらない。
【0045】
まず、パワーMOSFET104がオンのとき、初めは、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、パワーMOSFET104、直流電源100、コンデンサ109の経路に環流電流が流れ、チョークコイル108のエネルギが放出される。チョークコイル108のエネルギが放出されると、チョークコイル電流iの極性が反転し、直流電源100、パワーMOSFET104、チョークコイル108、コンデンサ109の経路で共振電流が流れ、再びチョークコイル108にエネルギが蓄えられる。なお、パワーMOSFET104がオンの期間中、インバータ出力電圧Vは、およそ+Vinとなる。
【0046】
この状態でパワーMOSFET104をオフさせ、パワーMOSFET105をオンさせる。パワーMOSFET105がオンのとき、初めは、チョークコイル108に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル108、コンデンサ109、パワーMOSFET105の経路に環流電流が流れる。環流電流によってコンデンサ109が充電されることで、チョークコイル108のエネルギがコンデンサ109に移動する。コンデンサ109に蓄えられたエネルギによって、チョークコイル電流iの極性が反転し、環流電流はコンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET105の経路に流れる。
ここで、第1実施形態と同様の理由から、消灯状態では点灯状態に比べて環流電流の周波数が高くなっており、さらに、パワーMOSFET105のオン時間dutyはパワーMOSFET104に比べて大きい。パワーMOSFET105のオン時間dutyによっては、チョークコイル電流iの極性がさらに反転し続ける。環流電流が2周期目に移行し、その経路がコンデンサ109、チョークコイル108、パワーMOSFET105である状態で、パワーMOSFET105がオフとなり、再びパワーMOSFET104がオンになる。第1実施形態と同様の理由から、パワーMOSFET104のターンオンにおいて逆回復電流は流れず、スイッチング損失は小さくなる。なお、パワーMOSFET105がオンの期間中、SEPPインバータ152は直流電源100から切り離された状態となり、出力電圧Vはおよそゼロである。
【0047】
以上の動作によって、点灯装置510では、コンデンサ109に交流電圧が発生し、トランス112の2次巻線114に交流電圧が誘起する。しかし、前記の理由から、この誘起電圧は点灯状態に比べて小さくなっており、熱陰極蛍光ランプ101は放電せず、ランプ電流iLAMPは流れない。一方、チョークコイル108には交流電流が流れるため、チョークコイル108に設けた2個の2次巻線115,116にそれぞれ交流電圧が発生し、フィラメント電流が流れる。
【0048】
以上の動作によって、インバータ出力電圧Vo、チョークコイル電流i、ランプ電流iLAMP、フィラメント電流、パワーMOSFET104に流れる電流の波形は図5(b)のようになる。チョークコイル電流iの周波数は、インバータ駆動周波数の2倍になっており、以下ではこの現象を2倍共振と呼ぶ。前記の定数Lr、Cr、及びパワーMOSFET104,105のオン時間dutyを適切に設定することで、点灯状態では1倍共振を、消灯状態では2倍共振をそれぞれ発生させ、かつ、いずれの状態においても前記の進相動作を避けることができる。
2倍共振によって、インバータ駆動周波数を固定したまま、消灯状態における回路の動作周波数を点灯状態に比べて2倍高くできる。このとき、第1実施形態にて説明した理由から、フィラメント電流が流れやすくなる。2倍共振によって、消灯状態においてインバータ出力電圧を減少させる状況であっても、十分なフィラメント電流の供給が可能となる。
【0049】
<第2実施形態の変形例>
以下、第2実施形態の変形例について説明する。
定数Lr、Cr の設定、及びパワーMOSFET104,105のオン時間dutyによっては、図6に示す動作波形を得ることができる。図6(a)の点灯状態では、図5(a)と同様に1倍共振で動作する。一方、図6(b)の消灯状態では、チョークコイル電流iの周波数がインバータ駆動周波数の3倍になっており、第1実施形態と同様の3倍共振で動作する。さらに、消灯状態において、チョークコイル電流iの周波数をインバータ駆動周波数の4倍、5倍とすることもできる。まとめると、第2実施形態では、消灯状態において(自然数+1)倍共振を発生させるということができる。また、定数Lr,Crの設定によっては、点灯状態において(自然数+1)倍共振を発生させることも考えられる。ただし、消灯状態におけるチョークコイル電流iの周波数を、点灯状態に比べて高くすることが望ましい。
【0050】
次に、消灯状態において、制御装置201は、パワーMOSFET105のオン時間dutyが50%より小さく、かつ、パワーMOSFET104のオン時間dutyが50%より大きくなるように、ゲート信号を出力してもよい。また、点灯状態におけるパワーMOSFET104,105のオン時間dutyを、図5(a)に示したようにそれぞれ50%とする必要はない。パワーMOSFETのオン時間dutyを調整することで、インバータの出力電力Voを変化させ、ランプ電流iLAMPとフィラメント電流を微調整できる。
【0051】
次に、第2実施形態を、図7に示すハーフブリッジインバータに適用する場合を説明する。なお、図7では制御装置を省略しているが、図4に示した制御装置201をそのまま利用できる。図7の点灯装置520における主回路は、図4の主回路について、コンデンサ119,120の直列体を直流電源100に接続し、共振用のチョークコイル108と共振用のコンデンサ109の直列体を、パワーMOSFET104,105の接続点とコンデンサ119,120の接続点が作る端子間に接続した回路である。すなわち、図7の主回路は、パワーMOSFET104,105の直列体である上下アームを1組と、コンデンサ119,120の直列体を備えたハーフブリッジインバータ155の出力端子間に、図4と同様の共振負荷回路を接続した回路となる。トランス112、熱陰極蛍光ランプ101の接続形態など、共振負荷回路の構成については、図4の主回路と同様であるので説明を省略する。図7の主回路についても、前記説明のPWM調光方式が適用可能であり、図5,図6とほぼ同様の動作波形が得られる。
【0052】
最後に、第2実施形態を、図1の主回路におけるフルブリッジインバータに適用する場合は、消灯状態において、パワーMOSFET104,107のオン時間dutyを50%より小さくすると共に、パワーMOSFET105,106のオン時間dutyを50%より大きくするか、あるいは、パワーMOSFET105,106のオン時間dutyを50%より小さくすると共に、パワーMOSFET104,107のオン時間dutyを50%より大きくすればよい。また、フルブリッジインバータに適用する場合、第1実施形態に示したフルブリッジ動作からSEPP動作への切り替えを組み合わせることで、図8に示す動作波形を得ることができる。この場合、フルブリッジ動作からSEPP動作への切り替えによってランプを消灯させた上で、スイッチング動作をさせるパワーMOSFETのオン時間dutyによってフィラメント電流を調整することができる。
【0053】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態における点灯装置の構成図である。点灯装置530は、インバータとDC−DCコンバータを備える主回路と、その制御装置とを備えて構成される。
図9のDC−DCコンバータは、スイッチング素子である1個のパワーMOSFET301、ダイオード302、チョークコイル303、コンデンサ304を備える降圧チョッパ(チョッパ回路)であり、直流電源100とインバータとの間に挿入される。この降圧チョッパは、直流電源100に接続されるスイッチング素子301とダイオード302の直列体と、このダイオードに接続されるチョークコイル303と平滑用のコンデンサ304の直列体を備え、コンデンサ304の両端から出力電圧を取り出している。なお、DC−DCコンバータであれば、昇圧チョッパ、フライバックコンバータなど、他種のコンバータを利用してもよい。
【0054】
図9の主回路におけるインバータは、図4におけるSEPPインバータ152と同じ構成のインバータである。ただし、SEPPインバータの他に、図7に示したハーフブリッジインバータや、図1に示したフルブリッジインバータを利用してもよい。チョークコイル108のインダクタンスLr,コンデンサ109の静電容量Crの設定においては、前記の共振周波数f0=1/(2π√(Lr・Cr))が駆動周波数のおよそ(自然数+1)倍か、それよりわずかに低くなるようにする。以下では特に、f0が駆動周波数の3倍よりもわずかに低くなるようにLr、Crを設定した場合を説明する。
図9の制御装置202は、入力される調光用PWM信号にしたがって、インバータのパワーMOSFET104,105、及びチョッパのパワーMOSFET301にゲート信号を出力する。なお、第3実施形態を図1に示したフルブリッジインバータに適用する場合は、前記の動作に加えて、MOSFET106,107にゲート信号を出力する制御装置を利用する。
【0055】
<PWM調光・点灯状態の動作>
図10は、図9の点灯装置530によってPWM調光を行う場合の動作波形を、(a)点灯状態、(b)消灯状態に分けて示したものである。以下、図10をもとに第3実施形態におけるPWM調光について説明する。
点灯状態において、制御装置202は、パワーMOSFET104、105がスイッチング動作するように固定周波数のゲート信号を出力する。なお、図10では、パワーMOSFET104、105のオン時間dutyがそれぞれ50%になるようにした。
また、制御装置202は、パワーMOSFET301がスイッチング動作するようにゲート信号を出力する。図10(a)では、パワーMOSFET301のオン時間dutyを100%としているが、ランプが点灯状態となる範囲であれば、100%にする必要はない。このとき、チョッパの出力電圧、すなわちインバータの入力電圧は、直流電源100の電圧と同じVinとなる。
【0056】
チョッパ、及びインバータが動作することで、ランプ電流とフィラメント電流とが流れ、インバータ出力電圧Vo、チョークコイル電流i、ランプ電流iLAMP、フィラメント電流、パワーMOSFET104に流れる電流の波形は図10(a)のようになる。なお、インバータの詳細な動作については、第2実施形態に示した点灯状態のインバータ動作から容易に考えられるため省略する。
【0057】
<PWM調光・消灯状態の動作>
消灯状態に移行すると、制御装置202は、パワーMOSFET301のオン時間dutyを減少させる。すなわち、消灯状態のスイッチング素子のオン時間dutyが、熱陰極蛍光ランプ101の点灯状態に比べて小さくなるようにしている。図10(b)には、例として、オン時間dutyを50%まで減少させる場合を示している。このとき、チョッパの出力電圧、すなわちインバータの入力電圧はVin/2に半減する。なお、パワーMOSFET104,105に対しては、点灯状態と同様にゲート信号を出力する。点灯状態と比べてインバータ出力電圧Vを減少させる点では、第1実施形態、及び第2実施形態と変わらない。
インバータの入力電圧が半減することで、その出力電圧Vも半減し、第1実施形態、及び第2実施形態と同様の理由からランプは消灯する。ランプ電流は減衰してゼロになる一方、インバータの動作が継続することで、フィラメント電流が流れ続ける。
【0058】
以上によって、インバータ出力電圧Vo、チョークコイル電流i、ランプ電流iLAMP、フィラメント電流、パワーMOSFET104に流れる電流の波形は図10(b)のようになる。第3実施形態においても、定数Lr、Crを適切に設定することで、第1実施形態と同様に3倍共振を発生させることができる。インバータの詳細な動作については、第1実施形態に示した消灯状態の動作から容易に考えられるため省略する。
【0059】
<第3実施形態の変形例>
以下では、第3実施形態の変形例について説明する。
まず、インバータの前段にチョッパを設ければ、第1実施形態、及び第2実施形態に対しても、インバータ入力電圧の制御を取り入れることが可能である。例えば、フルブリッジインバータを対象として、第1実施形態、及び第3実施形態を組み合わせると、フルブリッジ動作からSEPP動作への切り替えによってランプを消灯させた上で、チョッパによるインバータ入力電圧の制御によってフィラメント電流を調整できる。また、図10の点灯装置を対象として、第2実施形態、及び第3実施形態を組み合わせると、インバータ入力電圧の制御と、パワーMOSFET104,105のオン時間dutyの制御という、2つの手段によってランプを消灯させ、かつフィラメント電流を調整することができる。
【0060】
次に、定数Lr、Crの設定によっては、消灯状態において5倍共振、7倍共振を発生させることも可能である。また、前記の通りに第2実施形態、及び第3実施形態を組み合わせる場合、定数 Lr、Crの設定とパワーMOSFETのオン時間dutyによっては、2倍共振、4倍共振を発生させることも可能である。まとめると、第3実施形態では、消灯状態において(自然数+1)倍共振を発生させるということができる。また、定数 Lr、Crの設定によっては、点灯状態において、(自然数+1)倍共振を発生させることも考えられる。ただし、消灯状態におけるチョークコイル電流iの周波数を、点灯状態に比べて高くすることが望ましい。
【0061】
最後に、第1実施形態乃至第3実施形態に共通の変形例として、共振負荷回路の構成、特に、フィラメント電流を供給する回路構成について説明する。
以上の説明では、共振用チョークコイルに設けられた2次巻線を利用していたが、図11に示す主回路のように、昇圧トランス112に対して2つの3次巻線121、122を追加する方法も考えられる。図11の主回路は、図1の主回路について、チョークコイル108の2次巻線115、116を削除し、昇圧トランス112の3次巻線121をコンデンサ117とフィラメント102との直列体に接続し、3次巻線122をコンデンサ118とフィラメント103との直列体に接続したものである。
【0062】
図11の主回路では、ランプの点灯、又は消灯によらず、インバータが動作していれば、コンデンサ109に発生する交流電圧が3次巻線121,122を介してフィラメント102、103にそれぞれ印加され、フィラメント電流が流れる。また、(自然数+1)倍共振の発生時においては、コンデンサ109に発生する交流電圧の周波数もインバータ駆動周波数の(自然数+1)倍となる。よって、図1の場合とほぼ同様の回路動作、効果を得ることができる。
【0063】
また、図12、図13に示すように、フィラメント電流を供給する回路のために、2つの2次巻線125,126を備えるトランス123を追加する方法も考えられる。図12、図13の主回路は、図1の主回路について、チョークコイル108の2次巻線115、116を削除し、2次巻線125をコンデンサ117とフィラメント102との直列体に接続し、2次巻線122をコンデンサ118とフィラメント103との直列体に接続したものである。図12の点灯装置550では、チョークコイル108と直列にトランス123の1次巻線124が接続され、図13の点灯装置560では、チョークコイル108と並列に1次巻線124が接続される。図12、図13においても、図1の場合とほぼ同様の回路動作、効果を得ることができる。
なお、図11乃至図13では、図1に示した主回路に対して、フィラメント電流を供給する回路の変形例を示したが、同様の変形を図4、図7、図10に示した主回路についても施すことができる。
【符号の説明】
【0064】
100 直流電源
101 熱陰極蛍光ランプ
102、103 フィラメント
104、105、106、107、301 パワーMOSFET(スイッチング素子,SW素子)
108、303 チョークコイル
109 コンデンサ(共振用のコンデンサ)
110、111、117、118、119、120、304 コンデンサ
112、123 トランス
113、124 1次巻線
114、115、116、125、126 2次巻線(二次巻線)
121、122 トランスの3次巻線
150 フルブリッジインバータ(インバータ)
155 ハーフブリッジインバータ(インバータ)
200、201、202 制御装置
302 ダイオード
500、510、520、530、540、550.560 点灯装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を交流電圧に変換し、熱陰極蛍光ランプを含む共振負荷回路に電力を供給するインバータと、このインバータを制御する制御装置とを備える点灯装置であって、
前記インバータは、前記熱陰極蛍光ランプの消灯状態において、前記共振負荷回路に流れる交流電流の周波数が、前記インバータを駆動する周波数の(自然数+1)倍となるように設定された前記共振負荷回路を備えることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記共振負荷回路は、共振用のコンデンサにトランスを介して前記熱陰極蛍光ランプを並列に交流接続した並列回路と、この並列回路に直列接続したチョークコイルとを備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載の点灯装置。
【請求項3】
前記インバータは、前記熱陰極蛍光ランプの点灯時において、消灯時よりも高い電圧を出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の点灯装置。
【請求項4】
前記チョークコイルは、前記熱陰極蛍光ランプが備える2個のフィラメントに電力を供給するための2個の二次巻線をさらに備え、
前記二次巻線の各々は、コンデンサを介して、前記フィラメントに接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の点灯装置。
【請求項5】
前記トランスは、前記熱陰極蛍光ランプが備える2個のフィラメントに電力を供給するための2個の二次巻線がさらに巻回され、
前記二次巻線の各々は、コンデンサを介して、前記フィラメントに接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の点灯装置。
【請求項6】
前記インバータは、2個のスイッチング素子の直列体である上下アームを1組備えるSEPP(Single-Ended Push-Pull)インバータ、又はハーフブリッジインバータであることを特徴とする請求項3に記載の点灯装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記上下アームにおける一方のスイッチング素子のオン時間dutyを50%より大きくし、かつ、他方のスイッチング素子のオン時間dutyを50%より小さくして、前記上下アームを駆動し、前記熱陰極蛍光ランプを消灯状態にする
ことを特徴とする請求項6に記載の点灯装置。
【請求項8】
前記インバータは、2個のスイッチング素子の直列体である上下アームを2組備えるフルブリッジインバータであることを特徴とする請求項3に記載の点灯装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記2組の上下アームのうち一方をスイッチング動作させ、他方の上下アームにおいては、一方のスイッチング素子が常にオンになり、他方のスイッチング素子が常にオフとなるように、前記2組の上下アームを駆動し、前記熱陰極蛍光ランプを消灯状態することを特徴とする請求項8に記載の点灯装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記2組の上下アームのうち、スイッチング動作させる方の上下アームについて、一方のスイッチング素子のオン時間dutyを50%より大きくし、かつ、他方のスイッチング素子のオン時間dutyを50%より小さくするように前記2組の上下アームを駆動して、前記熱陰極蛍光ランプを消灯状態にすることを特徴とする請求項8に記載の点灯装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記2組の上下アームのうち、一方の上下アームにおける上側のスイッチング素子と、他方の上下アームにおける下側のスイッチング素子のオン時間dutyを50%より大きくし、かつ、それ以外のスイッチング素子のオン時間dutyを50%より小さくするように、前記2組の上下アームを駆動し、前記熱陰極蛍光ランプを消灯状態にすることを特徴とする請求項8に記載の点灯装置。
【請求項12】
前記チョークコイルと並列に他のトランスの1次巻線が接続されており、
前記他のトランスが備える2個の2次巻線の一方には、前記熱陰極蛍光ランプが備える2個のフィラメントの一方が交流接続され、他方の2次巻線には、前記熱陰極蛍光ランプが備えるフィラメントの他方と交流接続されることを特徴とする請求項2に記載の点灯装置。
【請求項13】
直流電圧を変換して、前記インバータの入力電圧を制御するDC−DCコンバータを備え、
前記制御装置は、前記インバータの入力電圧が、前記熱陰極蛍光ランプの点灯状態に比べて減少するように、前記DC−DCコンバータを制御し、前記熱陰極蛍光ランプを消灯状態にすることを特徴とする請求項1に記載の点灯装置。
【請求項14】
前記DC−DCコンバータは、少なくとも1個のスイッチング素子を備えるチョッパ回路であり、
前記制御装置は、前記チョッパ回路の出力電圧が、前記熱陰極蛍光ランプの点灯状態に比べて低くなるように、前記チョッパ回路のスイッチング素子を駆動し、前記熱陰極蛍光ランプを消灯状態にすることを特徴とする請求項13に記載の点灯装置。
【請求項15】
前記チョッパ回路は、直流電源に接続されるスイッチング素子とダイオードの直列体と、このダイオードに接続されるチョークコイルと平滑用コンデンサの直列体を備える降圧チョッパ回路であり、
前記制御装置は、前記降圧チョッパ回路におけるスイッチング素子のオン時間dutyが、前記熱陰極蛍光ランプの点灯状態に比べて小さくなるように、前記降圧チョッパ回路のスイッチング素子を駆動し、前記熱陰極蛍光ランプを消灯状態にすることを特徴とする請求項14に記載の点灯装置。
【請求項16】
前記インバータは、前記共振負荷回路に流れる交流電流の周波数が、前記インバータを駆動する周波数と一致するように設定された前記共振負荷回路を備え、
前記熱陰極蛍光ランプを点灯状態にさせることを特徴とする請求項1乃至請求項15の何れか一項に記載の点灯装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記熱陰極蛍光ランプの点灯状態または消灯状態にかかわらず、前記インバータを一定の周波数で駆動することを特徴とする請求項1乃至請求項16の何れか一項に記載の点灯装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17の何れか一項に記載の点灯装置を備えた画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−54294(P2011−54294A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199463(P2009−199463)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】