説明

点灯装置および照明器具

【課題】構成を複雑化させることなくきめ細かい調光制御が可能な点灯装置を提供する。
【解決手段】直列に接続した蛍光ランプ13,14のうち、蛍光ランプ14のみと並列に、高周波電流の少なくとも一部をバイパスするバイパス用コンデンサC9を接続する。バイパス用コンデンサC9により、全光点灯時の10%以下の調光状態では蛍光ランプ14を消灯させる。例えば複数の蛍光ランプのそれぞれを点灯制御するインバータ回路などを設けるなど構成を複雑化させることなく、きめ細かい調光制御が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの調光信号に応じてインバータ回路の動作周波数を制御する調光制御手段を有する点灯装置およびこれを備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば出力が異なる複数の放電ランプを連続調光する点灯装置が知られている。このような点灯装置は、それぞれの放電ランプに対応した複数のインバータ回路を備え、これらインバータ回路の動作周波数をそれぞれ制御することで放電ランプを個別に調光点灯する。この調光の際に、例えば高光束領域では主として高出力側の放電ランプを調光制御し、低光束領域では主として低出力側の放電ランプを調光制御することにより、視覚的にきめ細かな調光効果を達成している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−45694号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の点灯装置では、複数のインバータ回路を備えるため、回路規模が大きくなるだけでなく、制御回路なども複雑になるという問題点を有している。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構成を複雑化させることなくきめ細かい調光制御が可能な点灯装置およびこれを備えた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の点灯装置は、直列に接続された複数のランプを一括して点灯可能なインバータ回路と;共振用インダクタおよび共振用コンデンサを備え、インバータ回路とランプとの間に接続される共振回路と;外部からの調光信号に応じてインバータ回路の動作周波数を制御する調光制御手段と;いずれかのランプを除く残りの他のランプの少なくともいずれかと並列に接続されて高周波電流の少なくとも一部をバイパスし、全光点灯時の10%以下の所定の調光点灯状態では並列に接続されたランプを消灯させるバイパス用コンデンサと;を具備しているものである。
【0006】
ランプは、例えば蛍光ランプなどの低圧水銀放電灯が好適であるが、これに限定されるものではない。
【0007】
インバータ回路は、例えば対をなすスイッチング素子を備えたハーフブリッジ型などのものが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0008】
共振回路は、インバータ回路から入力される高周波電圧の周波数に応じて、ランプに供給する電力を可変できる。
【0009】
調光制御手段は、例えばインバータ回路の動作周波数を高周波電圧の周波数より低い、または高い周波数で間欠的にオン、オフするPWM変化方式などを採用することができる。
【0010】
全光点灯時とは、全てのランプを定格点灯したときをいう。
【0011】
バイパス用コンデンサは、例えば浮遊容量相当の小容量のバイパス用コンデンサが用いられる。
【0012】
請求項2記載の照明器具は、複数のランプが取り付けられる器具本体と;ランプを点灯制御する請求項1記載の点灯装置と;を具備しているものである。
【0013】
照明器具は、屋外照明用、室内照明用、一般照明用、表示用などのいずれでもよいし、その形状もどのようなものでもよい。また、点灯装置は、器具本体と一体または別体のいずれでもよい。
【0014】
請求項3記載の照明器具は、請求項2記載の照明器具において、器具本体に装着されランプを覆うセードを具備し、ランプは、それぞれ互いに大きさおよび定格電力が異なる環形に形成されて同心状に配置され、点灯装置のバイパス用コンデンサは、最も定格電力および大きさが大きいランプと並列に接続されているものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の点灯装置によれば、直列に接続された複数のランプのうち、いずれかのランプを除く残りの他のランプの少なくともいずれかと並列に、高周波電流の少なくとも一部をバイパスするバイパス用コンデンサを接続し、このバイパス用コンデンサにより、全光点灯時の10%以下の所定の調光点灯状態ではこのバイパス用コンデンサを並列に接続したランプを消灯させることで、例えば複数のランプのそれぞれを点灯制御するインバータ回路などを設けるなど構成を複雑化させることなく、きめ細かい調光制御が可能になる。
【0016】
請求項2記載の照明器具によれば、請求項1記載の点灯装置を備えることで、その効果を奏することができる。
【0017】
請求項3記載の照明器具によれば、請求項2記載の照明器具の効果に加えて、互いに大きさおよび定格電力が異なる環形に形成されて同心状に配置されたランプのうち、最も定格電力および大きさが大きいランプに対してバイパス用コンデンサを並列に接続することで、直列接続したランプの一方のみを消灯させる制御が可能になるとともに、外側のランプを消灯させて内側のランプを点灯させることで全体の明るさを低下させつつ意匠性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は放電灯点灯装置の回路図、図2は放電灯点灯装置を備えた照明器具を示す斜視図、図3は放電灯点灯装置の調光時の光出力変化を示すグラフ、図4は放電灯点灯装置の電源部の動作を示すタイミングチャートである。
【0020】
図2において、11は照明器具を示し、この照明器具11は、器具本体12に円環状のランプとしての蛍光ランプ13,14が同心状に配設され、これら蛍光ランプ13,14を覆うように乳白色のセード15が器具本体12に装着されている。
【0021】
本実施の形態において、一方の蛍光ランプ13は、他方の蛍光ランプ14よりも径寸法が小さく、そのため、定格電力が小さく設定されている。また、他方の蛍光ランプ14は、低電位側、すなわちグランド電位側に接続されている。さらに、これら蛍光ランプ13,14は、略同一面上に配置され、照明器具11を薄型としている。
【0022】
そして、器具本体12に搭載される点灯装置42は、図1に示すように、商用交流電源eを整流平滑する電源部51にインバータ回路52が接続され、このインバータ回路52の出力端には、共振回路53を介して蛍光ランプ13,14のフィラメントFL1a,FL2aが接続されている。また、インバータ回路52と共振回路53との接続部には、蛍光ランプ13,14のフィラメントFL1a,FL1b,FL2a,FL2bの予熱回路55が接続されている。すなわち、蛍光ランプ13,14は互いに直列に接続されている。さらに、電源部51、インバータ回路52および予熱回路55には、調光制御手段としてのディジタル信号処理装置56(以下、DSP56という)が接続されている。また、このDSP56に対して、調光信号DIMを外部から入力する調光信号部57が接続されている。そして、商用交流電源e、電源部51、インバータ回路52、共振回路53、予熱回路55、DSP56および調光信号部57などにより作動回路としての点灯回路58が構成されているとともに、この点灯回路58と蛍光ランプ13,14とが接続されることにより、主回路59が構成されている。
【0023】
電源部51は、入力電流I0と入力電圧V0との位相を合わせる、いわゆる臨界モードの力率改善(PFC)機能を備えた昇圧チョッパ電源であり、商用交流電源eに全波整流部としての全波整流素子REC1が接続され、この全波整流素子REC1の出力側には、昇圧チョッパ回路60が接続されている。この昇圧チョッパ回路60は、全波整流素子REC1の出力側に、インバータ回路52との間に昇圧用のトランスであるチョッパチョークL1と逆阻止用のダイオードD1との直列回路が接続されているとともに、チョッパチョークL1とダイオードD1のアノードとの接続点にスイッチング素子としての第1スイッチング素子、すなわちチョッピング用スイッチング素子である電界効果トランジスタ(FET)Q1が並列に接続されて、かつ、ダイオードD1のカソードとインバータ回路52との接続点に、平滑用のコンデンサである電解コンデンサC1が並列に接続されている。
【0024】
チョッパチョークL1は、一次巻線L1aと二次巻線L1bとを有し、一次巻線L1aが全波整流素子REC1の出力側とダイオードD1のアノードとの間に接続されているとともに、二次巻線L1bの一端側がグランド電位側に接続され、他端側が検出用の抵抗R1を介して制御信号生成部としての順序回路であるフリップフロップ61のセット端子に接続されている。したがって、フリップフロップ61のセット端子には、チョッパチョークL1の二次巻線L1bからチョーク電流Iにより抵抗R1に生じるチョーク電圧Vが入力されている。
【0025】
電界効果トランジスタQ1は、ドレイン端子がチョッパチョークL1とダイオードD1のアノードとの接続点に接続されているとともに、ソース端子が抵抗R2を介してグランド電位側に接続され、かつ、制御端子であるゲート端子がフリップフロップ61の出力端子に接続されている。
【0026】
ここで、フリップフロップ61は、いわゆるRS型のものであり、オペアンプとしての比較器すなわちコンパレータであるアナログコンパレータ63の出力端子がリセット端子に接続されている。このアナログコンパレータ63は、一方の入力端子が電界効果トランジスタQ1のドレイン端子と抵抗R2との接続点に接続されて電界効果トランジスタQ1のスイッチング電流IQにより抵抗R2にて生じる電圧VQが入力されるとともに、他方の入力端子が抵抗R3を介してDSP56に接続され、この抵抗R3との接続点がコンデンサC2を介してグランド電位側に接続されている。
【0027】
そして、これらフリップフロップ61およびアナログコンパレータ63などにより、チョーク電流Iのゼロ電流位相と、スイッチング電流IQとに基づいて昇圧チョッパ回路60の動作を制御するスイッチングパルス生成回路としての昇圧チョッパ回路制御手段であるチョッピング制御部64が構成されている。
【0028】
また、インバータ回路52は、電源部51に対して、第2スイッチング素子としてのインバータ用のスイッチング素子である電界効果トランジスタQ2,Q3が直列に接続された、いわゆるハーフブリッジ型のものである。
【0029】
電界効果トランジスタQ2,Q3は、制御端子であるゲート端子が制御手段としてのハイサイドドライバ65を介してDSP56に接続されており、このハイサイドドライバ65から供給される信号によってオンオフが制御される。
【0030】
ハイサイドドライバ65は、DSP56から供給される調光用のPWM信号Pに応じて、数十kHz〜200kHz程度の動作周波数、本実施の形態では例えば50kHz以上で電界効果トランジスタQ2,Q3を交互にオンオフする(スイッチング駆動する)ことで、電界効果トランジスタQ3のドレイン−ソース間に所定の高周波交流を発生させるものである。
【0031】
共振回路53は、電界効果トランジスタQ3の両端間に、直流成分を遮断するコンデンサC3と共振用インダクタL2とを直列に介して共振用コンデンサC4が並列に接続されている。
【0032】
予熱回路55は、予熱用トランスL3、コンデンサC5、予熱用スイッチング素子としての電界効果トランジスタQ4および電流検出用の抵抗R4の直列回路を備え、コンデンサC5と電界効果トランジスタQ4との接続点と電界効果トランジスタQ2のソース端子との間に、ダイオードD2が接続されている。
【0033】
予熱用トランスL3は、一次巻線L3aと、第1二次巻線L3b、第2二次巻線L3cおよび第3二次巻線L3dとが対向配置されており、一次巻線L3aは、電界効果トランジスタQ2,Q3の接続点と共振用コンデンサC4との間に接続され、第1二次巻線L3bは、コンデンサC6を介して一方の蛍光ランプ13のフィラメントFL1aに接続され、第2二次巻線L3cは、コンデンサC7を介して一方の蛍光ランプ13のフィラメントFL1bおよび他方の蛍光ランプ14のフィラメントFL2bに接続され、第3二次巻線L3dは、コンデンサC8を介して他方の蛍光ランプ14のフィラメントFL2aに接続されている。
【0034】
ここで、一方の蛍光ランプ13のフィラメントFL1bと他方の蛍光ランプ14のフィラメントFL2bとは、互いに一端側が電気的に接続され、他端側間に第2二次巻線L3cとコンデンサC8との直列回路が電気的に接続されている。また、一方の蛍光ランプ13のフィラメントFL1bと他方の蛍光ランプ14のフィラメントFL2bとの一端側は、バイパス用コンデンサC9を介してグランド電位側に電気的に接続されている。
【0035】
バイパス用コンデンサC9は、浮遊容量相当の容量、例えば220pF程度の容量を有しており、他方の蛍光ランプ14に流れようとする電流の一部をバイパスする機能を有している。このため、他方の蛍光ランプ14は、調光信号部57から出力された調光信号DIMによる調光段階が深くなると、他方の蛍光ランプ14に流れる電流に対してバイパス用コンデンサC9にバイパスされる電流の割合が相対的に増加することで、蛍光ランプ13,14の全光点灯時の10%以下に設定されたときに、消灯するように設定されている。なお、このバイパス用コンデンサC9は、物理的にコンデンサを接続して形成してもよく、他方の蛍光ランプ14のフィラメントFL2a,FL2b間に形成される浮遊容量であってもよい。
【0036】
電界効果トランジスタQ4は、制御端子であるゲート端子がDSP56に接続され、このDSP56から供給される予熱用PWM信号によりスイッチング制御される。
【0037】
そして、DSP56は、ディジタル信号処理を行う、いわゆるマイコンなどのMPU(演算素子)であり、アナログコンパレータ63の入力端子と接続される基準波形設定部としての参照電圧設定部である電圧設定部71、予熱回路55の電界効果トランジスタQ4のスイッチングを制御するための予熱回路制御部72、放電電流すなわちランプ電流ILおよび放電電圧すなわちランプ電圧VLの少なくともいずれか一方を検出することで点灯回路58および蛍光ランプ13,14の動作状態(主回路59の動作状態)を検出する状態検出手段の機能を有する状態検出部73、および、電界効果トランジスタQ2,Q3の動作制御用のPWM信号Pを生成する信号生成手段としてのインバータ回路制御部である制御信号生成部74などを内部に一体に備えているとともに、図示しない記憶手段としてのROM、RAM、インターフェースであるI/Oポートなどをそれぞれ備えている。
【0038】
なお、DSP56が電圧設定部71、予熱回路制御部72、および、制御信号生成部74などを一体に備えるとは、これらがDSP56においてソフトウェア処理部分を共有していることをいう。
【0039】
電圧設定部71は、電源部51の入力電圧V0および出力電圧V1の少なくともいずれか一方を検出する電源電圧検出手段の機能を有するソフトウェア部であり、この検出した電圧V0,V1の少なくともいずれか一方に基づいて、アナログコンパレータ63の比較のための基準電圧であってPWM信号である参照電圧VTHを設定する。
【0040】
具体的に、本実施の形態において、参照電圧VTHは、アナログコンパレータ63に入力される電圧VQと参照電圧VTHとの大小によってオフされるように、基準波形SWとなる整流された電源電圧波形によって、出力電圧V1が所望の目標値に近付くようにフィードバック制御するための制御信号すなわちPWM制御信号である電界効果トランジスタQ1のスイッチングパルスSPを生成するように設定される。なお、基準波形SWは、例えば電源部51からの出力電圧V1(出力電流I1)および電源電圧の少なくともいずれか一方に対応して可変させることが可能である。
【0041】
換言すれば、点灯装置42は、電源部51のPFC制御用のスイッチングのための参照電圧VTHをDSP56により生成し、電界効果トランジスタQ1をスイッチングするためのスイッチングパルスSPを、フリップフロップ61やアナログコンパレータ63などのハードウェアにより構成したチョッピング制御部64により生成している。
【0042】
予熱回路制御部72は、予熱回路55の予熱電流IPを検出する予熱電流検出手段の機能を有するソフトウェア部であり、予熱回路55の予熱電流IPを監視しつつ、状態検出部73で検出したランプ電流ILおよびランプ電圧VLの少なくともいずれか一方の変化に追従するように最適予熱条件すなわち目標値を設定し、予熱電流IPが目標値に近付くように、予熱回路55の電界効果トランジスタQ4のゲート端子に供給する予熱用PWM信号PPを生成する。
【0043】
状態検出部73は、アナログ信号であるランプ電流ILおよびランプ電圧VLの少なくともいずれか一方を、これらランプ電流ILやランプ電圧VLに対応したディジタルの周波数データに変換する演算手段であるA/D変換器の機能を有しており、A/D変換したランプ電流ILおよびランプ電圧VLの少なくともいずれか一方を予熱回路制御部72あるいは制御信号生成部74などに出力するものである。この状態検出部73でのランプ電流IL、あるいはランプ電圧VLの検出のタイミングは、例えば電源電圧波形、あるいは共振用コンデンサC4の両端電圧など、主回路59中の少なくともいずれかのアナログ信号、あるいは、この状態検出部73で検出したランプ電流ILやランプ電圧VLなどに基づいて演算されたディジタル信号である所定の周波数データによって、ランプ電流ILやランプ電圧VLのピーク位相に同期したタイミングに決定される。本実施の形態では、例えば状態検出部73がA/D変換器の機能を有しているので、ランプ電流ILやランプ電圧VLなどに基づいて演算されたディジタル信号である所定の周波数データに基づいてランプ電流ILあるいはランプ電圧VLの検出のタイミングが決定される。
【0044】
ROMには、DSP56の各部、例えば電圧設定部71、予熱回路制御部72および制御信号生成部74などにより実行される各種プログラムが予め格納されている。
【0045】
RAMには、状態検出部73などにより検出した各種ディジタル値がそれぞれに割り当てられた領域に記憶される。
【0046】
調光信号部57は、例えば100Hz程度のPWM調光信号を出力する信号出力部75と、この信号出力部75から出力されたPWM調光信号を整流してDSP56へと入力させる整流手段としての全波整流素子REC2とを備えている。
【0047】
制御信号生成部74は、状態検出部73により検出した蛍光ランプ13,14の点灯状態、すなわちランプ電流ILおよびランプ電圧VLの少なくともいずれか一方、あるいは、調光信号部57から出力された調光信号DIMに基づいて、所定の周波数を有するPWM信号Pを生成するソフトウェア部である。なお、この制御信号生成部74により生成されたPWM信号Pでの調光特性は、図3に示すように、蛍光ランプ13の光出力をA1、蛍光ランプ14の光出力をA2、蛍光ランプ13,14の光出力A1,A2の和を光出力Aとする。
【0048】
次に、上記一実施の形態の動作を説明する。
【0049】
点灯装置42は、電源部51において、フリップフロップ61の動作によってスイッチングパルスSPを生成して電界効果トランジスタQ1をスイッチング動作させ、入力電圧V0と入力電流I0との位相を合わせて力率を改善する。
【0050】
具体的に、図1および図4に示すように、図示しない起動用回路などにより電界効果トランジスタQ1がオンされると、チョッパチョークL1(ダイオードD1)に直線的に増加する電流が流れることで、このチョッパチョークL1の二次巻線L1bにチョーク電流Iが流れ、チョッパチョークL1に電磁的エネルギが蓄積される。同時に、電界効果トランジスタQ1のオンによるスイッチング電流IQによって抵抗R2により生じる電圧VQ(≧参照電圧VTH)がアナログコンパレータ63に入力されると、アナログコンパレータ63からフリップフロップ61のリセット端子にリセット電圧VR(=電圧VQ)が入力され、このフリップフロップ61の出力端子からオフのスイッチングパルスSPが電界効果トランジスタQ1のゲート端子に供給されてこの電界効果トランジスタQ1がオフされることで、チョッパチョークL1に蓄積された電磁的エネルギが放出され、チョッパチョークL1(ダイオードD1)に直線的に減少する電流が流れる。
【0051】
この動作の繰り返しにより、入力電圧V0の波形すなわち全波整流されたサイン波形である基準波形SWを包絡線として出力電流I1が形成される。
【0052】
電源部51により生成された出力電圧V1は、インバータ回路52の電界効果トランジスタQ2,Q3を、例えば50kHzなどの所定の周波数および所定のオンデューティでオンオフ動作させることで、高周波交流電圧に変換される。
【0053】
この高周波交流電圧により、共振回路53が共振して共振電流が流れ、予熱回路制御部72で生成された所定の周波数の予熱用PWM信号PPにより電界効果トランジスタQ4がスイッチング動作された予熱回路55の予熱用トランスL3の各二次巻線L3b,L3c,L3dにそれぞれ予熱電流IPが流れて、蛍光ランプ13,14のフィラメントFL1a,FL1b,FL2a,FL2bを予熱する。
【0054】
そして、フィラメントFL1a,FL1b,FL2a,FL2bの予熱によりフィラメントFL1a,FL1b間およびフィラメントFL2a,FL2b間に所定の始動電圧が印加されて蛍光ランプ13,14が点灯(始動)し、これら蛍光ランプ13,14が定常点灯される。
【0055】
このように点灯した蛍光ランプ13,14を調光する場合には、点灯装置42のハイサイドドライバ65にDSP56の制御信号生成部74からPWM信号Pを入力してインバータ回路52を駆動する駆動周波数を可変する。インバータ回路52の駆動周波数を増加、あるいは減少させることで、インバータ回路52からの高周波電力が抑制、あるいは増加されて、ランプ電流ILが抑制、あるいは増加され、蛍光ランプ13,14が調光される。
【0056】
このインバータ回路52の動作周波数、すなわちPWM信号Pの周波数は、制御信号生成部74において、状態検出部73により検出したランプ電流ILおよびランプ電圧VLの少なくともいずれか一方、あるいは、調光信号部57から出力された調光信号DIMに基づいて設定される。
【0057】
図1および図3に示すように、調光信号部57から出力された調光信号DIMにより調光度が全光点灯時の10%以下の状態に設定されると、バイパス用コンデンサC9によりランプ電流ILの一部がバイパスされることで、他方の蛍光ランプ14が消灯し(光出力A2)、一方の蛍光ランプ13のみが点灯する。
【0058】
したがって、全光点灯時の10%以下の調光状態では、インバータ回路52およびDSP56などは一方の蛍光ランプ13のみを調光制御する。
【0059】
なお、予熱回路55では、状態検出部73で検出したランプ電流IL、ランプ電圧VL、ランプ電力、あるいは周囲の温度変化などに追従するように予熱回路制御部72により設定された目標値に予熱電流IPが近付くように生成した予熱用PWM信号PPによって電界効果トランジスタQ4がスイッチング動作されることで、蛍光ランプ13,14の種類や製造過程でのばらつきなどによって変化する点灯中の予熱量を最適化する。
【0060】
以上のように、直列に接続された蛍光ランプ13,14のうち、蛍光ランプ14のみに対して、高周波電流の一部をバイパスするバイパス用コンデンサC9を並列に接続し、このバイパス用コンデンサC9により、全光点灯時の10%以下の所定の調光状態では蛍光ランプ14を消灯させることで、光出力が小さい場合には一方の蛍光ランプ13のみを調光制御できるので、例えば蛍光ランプ13,14のそれぞれを点灯制御するインバータ回路などを設けるなど、構成を複雑化させることなく、きめ細かい調光制御が可能になる。
【0061】
また、本実施の形態では、蛍光ランプ13,14のうち最も定格電力が大きくかつ最も大きい、すなわち最も外側に配置された他方の蛍光ランプ14にバイパス用コンデンサC9を並列に接続する。一般に、同一平面上に配置された蛍光ランプ13,14は、外側が明るい場合よりも内側が明るいほうが、より暗く見えるため、全光点灯時の10%以下の所定の調光状態では、蛍光ランプ13,14のうち最も定格電力が大きくかつ最も大きい、すなわち最も外側に配置された他方の蛍光ランプ14を消灯することにより、直列接続した蛍光ランプ13,14でも一灯すなわち他方の蛍光ランプ14のみを消灯させる制御が可能であるとともに、照明器具11の全体の明るさを低下させ、これら蛍光ランプ13,14がセード15により覆われていることにより、蛍光ランプ13,14がともに点灯する面発光状態から、照明器具11の中央部に位置する一方の蛍光ランプ13のみが点灯する点発光状態へと推移させることができ、意匠性が向上する。
【0062】
なお、上記一実施の形態において、ランプは、蛍光ランプなどの放電ランプだけでなく、LEDなどでもよい。
【0063】
また、ランプは、3つ以上にしてもよい。この場合には、少なくとも1つのランプを除く残りのランプのうち、少なくとも1つに対してバイパス用コンデンサC9と同様のバイパス用コンデンサを並列に接続したり、バイパス用コンデンサの容量を異ならせたりすれば、全光点灯時の10%以下の所定の調光状態での各ランプの点灯状態および消灯状態をバイパス用コンデンサの容量によってそれぞれ設定でき、上記一実施の形態と同様の動作を得ることができる。すなわち、全光点灯時の10%以下の調光状態では、バイパス用コンデンサが並列に接続されたランプのうち少なくとも1つが消灯するように制御し、バイパス用コンデンサが並列に接続された他のランプは、調光状態がさらに低下したときに順次消灯するようにしてもよい。例えば、ランプの定格電力が大きいほど並列に接続するバイパス用コンデンサの容量を大きく設定すると、全光点灯時の10%以下の調光状態としたとき、定格電力が大きいランプから順次消灯させることができ、上記一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0064】
さらに、定格電力が小さいランプ、すなわち内側に配置されたランプに対して上記バイパス用コンデンサC9と同様のコンデンサを並列に接続してもよい。この場合には、全光点灯時の10%以下の所定の調光状態としたとき、内側のランプから消灯するので、調光下限付近の低照度領域においても面発光を維持できる。
【0065】
そして、電源部51、共振回路53および予熱回路55などのそれぞれの構成、および、これらの制御などは、上記構成および制御に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態を示す放電灯点灯装置の回路図である。
【図2】同上放電灯点灯装置を備えた照明器具を示す斜視図である。
【図3】同上放電灯点灯装置の調光時の光出力変化を示すグラフである。
【図4】同上放電灯点灯装置の電源部の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0067】
11 照明器具
12 器具本体
13,14 ランプとしての蛍光ランプ
15 セード
42 点灯装置
52 インバータ回路
53 共振回路
56 調光制御手段としてのディジタル信号処理装置
C4 共振用コンデンサ
C9 バイパス用コンデンサ
L2 共振用インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のランプを一括して点灯可能なインバータ回路と;
共振用インダクタおよび共振用コンデンサを備え、インバータ回路とランプとの間に接続される共振回路と;
外部からの調光信号に応じてインバータ回路の動作周波数を制御する調光制御手段と;
いずれかのランプを除く残りの他のランプの少なくともいずれかと並列に接続されて高周波電流の少なくとも一部をバイパスし、全光点灯時の10%以下の所定の調光点灯状態では並列に接続されたランプを消灯させるバイパス用コンデンサと;
を具備していることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
複数のランプが取り付けられる器具本体と;
ランプを点灯制御する請求項1記載の点灯装置と;
を具備していることを特徴とする照明器具。
【請求項3】
器具本体に装着されランプを覆うセードを具備し、
ランプは、それぞれ互いに大きさおよび定格電力が異なる環形に形成されて同心状に配置され、
点灯装置のバイパス用コンデンサは、最も定格電力および大きさが大きいランプと並列に接続されている
ことを特徴とする請求項2記載の照明器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−289665(P2009−289665A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142789(P2008−142789)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】