説明

焙煎装置及び焙煎方法

【課題】移送板への供給から加湿乾燥工程に亘り、食品素材が移送板上を飛び跳ね上がりながら処理されることにより、均一な加湿、乾燥を可能とする。
【解決手段】移送板取付箱20には、超音波加湿装置と遠赤外線放射装置48を設け、内部には移送板23が移送方向にかけて下傾して配設されている。移送板23の上端下方には、モーター22の駆動により上下動する偏心軸30を、下端には上方に付勢する弾性部材を設けて移送板23全体が上下方向に振動するようにしている。ホッパー2の底面供給口下方には、ホッパー2から落下供給された食品素材を受けるための振動受板3を設けている。振動受板3の下端縁は、上傾したベルトコンベア15の下端上方に位置し、食品素材を移送板23上に供給するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキノコや海産物等の焙煎装置に関し、詳しくは超音波発生された水蒸気及び遠赤外線放射加熱による食品の焙煎装置及び焙煎方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の焙煎装置としては、本体フレーム内に超音波加湿器、冷却ブロア、及び電磁バイブレータを備え真上に面状ヒーターを具備した複数のフィーダを搬送方向に段差を有して配設し、ホッパーから供給された茶葉を面状ヒータで乾燥し、又は電磁バイブレータでフィーダのベルトを前後方向に振動させて、傾斜したベルトの下端から下方に位置するベルト上に茶葉を落下搬送し、或いは超音波加湿器でフレーム内に水蒸気を充満し、或いはフレーム内に送風若しくは窒素ガスを充満させる等して使用するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記特許文献1に記載の焙煎装置であると、1つの本体フレーム内に均一に水蒸気や冷却ブロアからのガスを供給するように構成されているため、面状ヒーターによる乾燥後、どの部分であっても均一な加湿がなされ、茶葉のように乾燥と加湿を繰り返して行うことを必要とする食品の加工には好適であるが、椎茸や海草のように1回のみの乾燥と焙煎を必要とするものについては適用されない。又、電磁バイブレータでフィーダのベルトを前後方向に振動させるのは、傾斜したベルトの下端から下方に位置するベルトに茶葉を搬送方向に放り出して落下させるためのものであり、茶葉の個々の片を離隔させて加湿或いは焙煎するためのものではないため、茶葉が互いに引っ付きあって塊状となる事態が生じ、個々の茶葉片にばらけた状態で均一な加湿及び焙煎ができないという問題点があった。
又、マイクロ波照射装置と遠赤外線照射装置を搬送方向に所定距離離隔して設け、マイクロ波照射装置の前後にはマイクロ波を遮断するためのマイクロ波トラップを夫々上下方向に振動可能に取り付け、移送用ベルトがマイクロ波照射装置と遠赤外線照射装置内を移動するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記特許文献2に記載の加熱乾燥装置であると、マイクロ波トラップを上下方向に振動させて高さのある食品を装置内に出入させることが可能な為、加工食品の形崩れが生じないという利点があるが、単に食品をベルトコンベア上を静止状態で搬送させるため、均一な乾燥等が困難であり、個々の食品素材が互いに付着して塊状になる場合があるという問題点があった。
又、本願発明とは用途が異なるが、箱状物の高さ方向略中央にベルトコンベアが通過可能に形成され、このベルトコンベア通過部を中心として下部には排水可能な貯水槽を、上部にはベルトコンベア上の物を直接加熱可能な加熱装置を具備した加熱乾燥兼用装置が提案されている(例えば、特許文献3)。
しかしながら、特許文献3に記載の発明であると、加熱乾燥兼用装置内に送り込まれた物をコンベアベルト上で加熱する場合は遠赤外線ヒーターを使用し、加湿する場合は遠赤外線ヒーターを使用せず貯水槽の水を水温調節ヒーターに通電して所定温度に加熱し水蒸気圧を高くして行う。このように、加熱乾燥兼用装置内での乾燥は高湿度雰囲気中で乾燥を抑制しながら加熱乾燥するため被乾燥物が塊状に付着し合うことがあり、椎茸の焙煎等のように複数の食品素材が付着し合うことなく各食品素材のどの部位も均一な水分含有率となるような乾燥を必要とする用途には不適切であるという問題点があった。
【特許文献1】特公平6−91789号公報
【特許文献2】特開平7−198257号公報
【特許文献3】特開平10−267533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、食品素材の移送板への供給から加湿及び乾燥工程に亘り、食品素材が移送板上を飛び跳ねながら各工程での処理が施され次工程へと移送させることにより、移送板上の食品素材は移送されながら容易に均一な加湿、乾燥が可能な焙煎装置及び焙煎方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明のうち請求項1に記載の発明は、食品素材を移送板上に供給するためのホッパーと、移送板上を移動する食品素材に加湿する超音波加湿装置と、加湿された食品素材に移送板上で遠赤外線を放射する遠赤外線放射装置とより成り、前記移送板は移送方向に著しく長い平板状に形成されると共に移送方向に低勾配を有して下傾し、且つ移送板上の上端側に供給された食品素材を、移送板の振動により移送板上を飛び跳ねさせながら下端側方向に移動可能な移送板振動手段を具備し、該移送板振動手段が前記移送板の上端部下方に於いて移送方向に直交して回転自在に軸架した偏心軸の回転により移送板を上下方向に振動させるようにしたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、超音波加湿装置が移送板の上端側に設置され、遠赤外線放射装置は移送板の下端側に設置されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、超音波加湿装置と遠赤外線放射装置を用いた焙煎方法であって、ホッパーから供給された食品素材を移送板状を飛び跳ねながら超音波加湿装置で加湿しつつ移送し、前記加湿工程で加湿された食品素材を移送板上を飛び跳ねながら遠赤外線放射装置で遠赤外線放射により乾燥しつつ次工程へ移送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は移送板上に供給された食品素材を、移送板上で上下に飛び上がらせ移送方向に移動させながら超音波加湿するように構成しているので、移送板上に供給された食品素材がくっつき合うことなくバラケタ状態で加湿され、食品素材がむらなく均一に加湿されるという効果がある。
【0006】
移送板上で上下に飛び上がらせながら搬送方向に移動させつつ遠赤外線放射加熱乾燥するように構成しているので、遠赤外線放射加熱により食品素材が均一に加熱される。又、食品素材が移送板上を静止せず飛び跳ねているため、被乾燥物である食品素材が高温度化した移送板からの加熱により焦げることなく乾燥可能であるという効果がある。
【発明の実施するための最良の形態】
【0007】
食品素材が互いにくっつき合うことなくバラケタ状態で均一に加湿され、且つ食品素材が焦げることなく乾燥させるという目的を、移送板を上下方向に振動可能に構成することで実現した。
【実施例1】
【0008】
図1は本発明焙煎装置の全体を示す側面図、図2は食品素材を移送板に供給するためのホッパー、振動板、ベルトコンベアの位置関係を示す説明図、図3は超音波加湿装置と遠赤外線放射装置を備えた焙煎装置の要部を示す拡大側面図、図4は移送板の上下振動手段を示す説明図、図5は移送板下端部の取付状態を示す説明斜視図である。
【0009】
まず、図1及び図2において、支持枠体1にはホッパー2を取り付けている。ホッパー2には、食品素材の落下供給量を制御する自動制御機構を設け、安定した供給量を提供可能にしている。ホッパー2の底面供給口下方には、ホッパー2から落下供給された食品素材を受けるための振動受板3を設けている。振動受板3は下傾した底板4の両側に側板5、5を設けている。支持枠体1にはピロー形軸受6を取り付け、軸孔には偏心軸7を回転自在に軸架している。モーター8のモーター軸と偏心軸7の軸端には夫々プーリーを設け、これらプーリーには無端ベルト9を懸回し、モーター8の動力を偏心軸7に伝達するようにしている。コイルばね10は支持枠体1の横木と底板4との間に取り付けられ、偏心軸7の回転とコイルばね10とで、振動受板3の上下方向振動運動を振動受板3の移送方向全体に亘り円滑に行い得るようにしている。11はキャスターである。
【0010】
支持枠体12はその上端には上傾したベルトコンベア取付台13を取り付け、下端にはキャスター14を備えている。ベルトコンベア15は駆動ベルト車16及びベルト車17に懸回され、駆動ベルト車16及びベルト車17間を循環するようにしている。駆動ベルト車16とモーター18のモーター軸には、モーター軸の回転動を駆動ベルト車16に伝達可能に無端ベルト19が懸回されている。ベルトコンベア15のうちベルト車17側の上方に、振動受板3の下端縁が位置するように配設されている。
【0011】
図3〜図5を参照にして、超音波加湿装置及び遠赤外線放射装置を具備した焙煎装置について説明する。移送板取付箱20の脚部下端にはキャスター21を設けている。移送板取付箱20の脚部には支承板を取り付け、該支承板上にはモーター22を取り付けている。移送板23は防錆性及び耐熱性を有する材料、例えばステンレススチールを材料とし、上下方向に所定距離離隔し移送方向に著しく長い上板24と下板25及び上下板を連設する1対の側板26とよりなる。上板24の裏面には、上板24の補強目的で縦横に立骨27が設けられている。移送板23の前端縁横方向両端は前方へ連続的に延設され、ピロー形軸受取付部28を対向位置に設けている。1対のピロー形軸受取付部28、28にはピロー形軸受29、29が夫々取り付けられ、これらピロー形軸受29、29には偏心軸30が回転自在に架設されている。偏心軸30の軸端にはベルト31を懸回可能にプーリー32が形成されている。モーター22のモーター軸に設けられたプーリー33と、無段階変速機34内のプーリー(図示せず)にはベルト35が懸回されている。移送板取付箱20内に於いて、移送板23は移送方向にかけて低勾配をもって下傾して配設されている。移送板23の側板26のうち移送方向終端部近傍には長孔を設けたクランプ36が取り付けられている。移送板取付箱20の底面には立上り片を有する台板37を固着し、台板37の立上り片の穿孔とクランプ36の長孔に調整金属板38を夫々枢着し、偏心軸30による移送板23の振動に、移送板23の移送方向終端部も対応して移送板23全体が上下方向に振動するようにしている。
【0012】
超音波加湿装置について説明する。超音波加湿器39で発生させた細かな粒子の蒸気を、蒸気噴出管40から移送板取付箱20内部のベルトコンベア15方向に噴出するように設けられている。モータースイッチ41、超音波コントロールボックス42及びブレーカー43を具備した操作部44と超音波加湿器39とはバルブ(図示せず)を介装した給水管45が連通接続されている。46は排水管、47はドレン受タンクである。
【0013】
遠赤外線放射装置について説明する。遠赤外線放射装置48は、ベルトコンベア15の上面に遠赤外線を放射可能な面状ヒーター49を設けている。また、遠赤外線放射装置48は面状ヒーター49の昇降手段及び温度制御手段を具備している。
【0014】
下端にキャスター50を具備した支持枠体51上には紫外線照射処理装置52及び遠赤外線照射処理装置53を連続して設け、搬送ベルト54が紫外線照射処理装置52及び遠赤外線照射処理装置53を連続して通過するようにしている。
【0015】
次に、作用について説明する。ホッパー2内の食品素材は、落下供給量を制御手段により調整されながら振動受板3上に供給される。モーター8の駆動により偏心軸7は回転動し、偏心軸7の軸部から距離の長い位置の偏心軸7周面が振動受板3の底板4に衝突すると、振動受板3は上方へ押し上げられ、偏心軸7の軸部から距離の短い位置の周面が振動受板3の底板4の下方に位置すると振動受板3は下降する。コイルばね10を振動受板3の裏面と支持枠体1の横桟間に取り付けているので、振動受板3は偏心軸7の回転動に対応して上下動し、ホッパー2から供給された食品素材は振動受板3の振動で移送方向に飛び跳ねながら移動する。この移動により、振動受板3上の食品素材はベルトコンベア15上へ送り込まれる。モーター18の駆動によりモーター軸は回転し、無端ベルト19は回転して駆動ベルト車16を回転させる。ベルトコンベア15は回転し、振動受板3から送り込まれた食品素材はベルトコンベア15上を移送し、移送板23上に送り込まれる。操作部44のモータースイッチ41を入りにし、超音波コントロールボックス42で蒸気噴出管40、40からの蒸気吐出量を調整する。モーター22を駆動させると、無段階変速機34を介して偏心軸30が回転開始し、移送板23は上下方向に振動開始する。調整金属板38の移送板23との角度調整により移送板23の振動幅が調整可能である。具体的に説明すると、調整金属板38が伏せると移送板23の振動幅が小となり、調整金属板38が起き上がると移送板23の振動幅が大となる。移送板23が上下方向に振動すると、移送板23上の食品素材は飛び跳ねながら移送方向へ移動し、食品素材は移送板23上の移動過程で飛び跳ねながら蒸気噴出管40から噴射される細かな水蒸気を浴びながら移送される。移送板23の振動により、食品素材は移送板23上を飛び跳ねながら蒸気を浴びるので、満遍なく均一に蒸気を浴びることが可能である。また、移送板23上で飛び跳ねながら面状ヒーター49から遠赤外線の放射を受けながら移送され、焙煎される。移送板23の振動により、食品素材は焦げることなく満遍なく乾燥焙煎される。乾燥焙煎された食品素材は、飛び跳ねながら搬送ベルト54上に送り込まれる。食品素材は、搬送ベルト上を静止状態で紫外線照射処理装置52内を通過し、紫外線照射処理される。この紫外線照射処理により、食品素材によってはビタミンBやビタミンDが増加する。食品素材は、紫外線照射処理装置52を通過後、更に遠赤外線照射処理装置53へと送り込まれ、搬送ベルト上を静止状態で遠赤外線照射処理され、乾燥される。
得られた製品は焦げておらず、しかも従来品と比較して風味が増し、ビタミンの増加した栄養豊かな乾燥食品であった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】焙煎装置の全体を示す側面図である。(実施例1)
【図2】食品素材を移送板に供給するためのホッパー、振動板、ベルトコンベアの位置関係を示す説明図である。(実施例1)
【図3】超音波加湿装置と遠赤外線放射装置を備えた焙煎装置の要部を示す拡大側面図である。(実施例1)
【図4】移送板の上下振動手段を示す説明図である。(実施例1)
【図5】移送板下端部の取付状態を示す説明斜視図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0017】
2 ホッパー
7、30 偏心軸
39 超音波加湿器
48 遠赤外線放射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品素材を移送板上に供給するためのホッパーと、移送板上を移動する食品素材に加湿する超音波加湿装置と、加湿された食品素材に移送板上で遠赤外線を放射する遠赤外線放射装置とより成り、
前記移送板は移送方向に著しく長い平板状に形成されると共に移送方向に低勾配を有して下傾し、且つ移送板上の上端側に供給された食品素材を、移送板の振動により移送板上を飛び跳ねさせながら下端側方向に移動可能な移送板振動手段を具備し、
該移送板振動手段が前記移送板の上端部下方に於いて移送方向に直交して回転自在に軸架した偏心軸の回転により移送板を上下方向に振動させるようにしたことを特徴とする焙煎装置。
【請求項2】
上記超音波加湿装置は移送板の上端側に設置され、上記遠赤外線放射装置は移送板の下端側に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の焙煎装置。
【請求項3】
超音波加湿装置と遠赤外線放射装置を用いた焙煎方法であって、
ホッパーから供給された食品素材を移送板状を飛び跳ねながら超音波加湿装置で加湿しつつ移送し、前記加湿工程で加湿された食品素材を移送板上を飛び跳ねながら遠赤外線放射装置で遠赤外線放射により乾燥しつつ次工程へ移送することを特徴とする焙煎方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−72172(P2009−72172A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273155(P2007−273155)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(507347417)有限会社タイセイ (1)
【出願人】(507347428)神石物産株式会社 (1)
【Fターム(参考)】