説明

無人搬送システムおよび無人搬送車

【課題】パレットのバッテリ残量に影響されることなく、パレットからのデータ信号を無人搬送車で受信して走行することができる無人搬送システムおよび無人搬送車を提供すること。
【解決手段】無人搬送車1のハロゲンランプ7から光をパレット100の太陽電池パネル106へ出力することにより、パレット100の光データ通信器105を太陽電池パネル106から供給される電力によって駆動させて光データ信号を出力させ、その光データ信号が光データ通信器6に受信される。これにより、パレット100のバッテリ残量に影響されることなく、無人搬送車1の走行を制御させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送システムおよび無人搬送車に関し、特にパレットのバッテリ残量に影響されることなく、パレットからのデータ信号を無人搬送車で受信して走行することができる無人搬送システムおよび無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場等において、搬送物が戴置されたパレットを積載し自律走行により運搬する無人搬送車として、そのパレットに設けられたスイッチの状態を示す情報を、積載しているパレットからワイヤレスで取得し、取得した情報に基づいて走行を制御する無人搬送車が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、門型パレットとその門型パレットを搬送する搬送車両とから構成される搬送装置が記載されている。この搬送装置の門型パレットは、非常停止スイッチおよび接触検出バンパースイッチと、それらのスイッチの状態に応じた光信号を、バッテリから電力が供給されている状態で発信する送光器とを備えている。一方、この搬送装置の搬送車両は、その門型パレットの送光器から発信された光信号を、その門型パレットを該搬送車両に積載した状態で受信可能な受光器を備えている。かかる搬送装置によれば、門型パレットの送光器から発信された光信号を搬送車両の受光器に受信させることで、受信させた光信号に基づいて搬送車両の走行を制御させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−255310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の搬送装置では、門型パレットの送光器の電源としてバッテリを用いるので、そのバッテリの残量が尽きた場合には、門型パレットの送光器は光信号を発信できず、搬送車両の走行を、門型パレットから取得した情報に基づいて制御できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、パレットのバッテリ残量に影響されることなく、パレットからのデータ信号を無人搬送車で受信して走行することができる無人搬送システムおよび無人搬送車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
請求項1記載の無人搬送システム及び請求項5記載の無人搬送車によれば、パレットの台部下方の所定位置において、無人搬送車が支持手段によってそのパレットを支持している場合に、無人搬送車の光源から、パレットの光電池へ光エネルギーとしての光が照射されると、その光電池において光エネルギーから変換された電力が、パレットのデータ発信手段に供給される。パレットのデータ発信手段は、その電力によって駆動され、パレットの状態検出手段によって検出されているパレットの台部又は脚部の状態に応じたデータ信号を発信(送信)する。発信されたデータ信号は、無人搬送車のデータ受信手段によって受信される。受信されたデータ信号に基づいて、無人搬送車は、走行制御手段によって走行が制御される。即ち、無人搬送車の走行が、パレットの状態検出手段により検出されたパレットの台部又は脚部の状態に応じて制御される。
【0008】
このように、無人搬送車がパレットを支持している場合、無人搬送車の光源からの光は、パレットの光電池へ照射され、電力に変換される。パレットのデータ発信手段は、該電力によって駆動されるので、パレットのバッテリ残量に影響されることなく、パレットから無人搬送車へデータ信号を発信して無人搬送車の走行を制御できるという効果がある。なお、請求項1及び請求項5のパレットは、バッテリを有しないものでも良い。
【0009】
請求項2記載の無人搬送システムによれば、請求項1記載の無人搬送システムの効果に加え、無人搬送車の光源は、側方に向けて光を照射するようにその無人搬送車に取り付けられているので、光源を上方に向けて光を照射するように取り付けた場合に比べ、光源の表面(照射口)に埃や水滴をたまり難くさせることができる。故に、表面に付着した埃や水滴を原因とする光源の出力低下を抑制できるので、光源の出力を安定させることができ、それにより、パレットの光電池へ供給する光量を安定させることができる。よって、無人搬送車の光源から、パレットの光電池に光が照射された場合、その光電池にて変換される電力量を安定させることができるという効果がある。
【0010】
請求項3記載の無人搬送システムによれば、請求項2記載の無人搬送システムの効果に加え、無人搬送車のパレットへの進入方向視において、パレットの脚部の厚さは、光電池の厚さ以上に形成され、光電池は、パレットの脚部の厚さ内に配設されている。よって、光電池をパレットの脚部の内側面から突出させることなく、パレットの脚部に配設することができる。これにより、光電池が配設されたパレットの脚部が、その脚部の間を出入りする無人搬送車と接触することがあっても、光電池と無人搬送車との接触を防ぐことができるので、光電池の破損を防止することができるという効果がある。
【0011】
また、光電池は、パレットの脚部の厚さ内に配設されているので、パレットの脚部の間を出入りする無人搬送車の各側面とパレットの各脚部との間に形成される間隙は減殺されない。即ち、光電池の設置に拘わらず、パレットの脚部の間における無人搬送車の走行可能な領域は変化しない。よって、無人搬送車をパレットの脚部の間で走行させる場合には、無人搬送車と脚部との接触を防ぎつつ、無人搬送車をより確実に走行させることができるという効果がある。
【0012】
請求項4記載の無人搬送システムによれば、請求項1から3のいずれかに記載の無人搬送システムの効果に加え、パレットのデータ発信手段から発信され且つ無人搬送車のデータ受信手段が受信するデータ信号は光データ信号であるので、磁気による影響を受けない。よって、無人搬送車を誘導するために工場に設置されている誘導体やIDタグ等から磁気が出力されていても、無人搬送車のデータ受信手段とパレットのデータ発信手段との間で、安定した通信を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態における無人搬送システムを構成する、無人搬送車及びパレットの側面図であり、(b)は、(a)に示す無人搬送車の側面図であり、(c)は、(a)に示す矢印Ic方向から見た正面図である。
【図2】無人搬送車及びパレットの電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態における無人搬送システム500を構成する、無人搬送車1及びパレット100の側面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す無人搬送車1の側面図であり、図1(c)は、図1(a)に示す矢印Ic方向から見た正面図である。
【0015】
本実施形態の無人搬送システム500は、パレット100と、そのパレット100を積載(支持)する無人搬送車1とから構成されている。この無人搬送システム500は、無人搬送車1がパレット100を積載している場合に、無人搬送車1に設けたハロゲンランプ7が、パレット100に設けた太陽電池パネル106へ光を照射することによって、パレット100に設けた光データ通信器105を駆動させて光データ信号を無人搬送車1の光データ通信器6へ発信する。これにより、光データ通信器6が受信した光データ信号(即ち、光データ通信器105から発信された光データ信号)に基づいて無人搬送車1を走行させるものである。
【0016】
図1(a)〜(c)に示すとおり、無人搬送車1は、車体2と、複数の走行装置3と、複数のリフタ4と、制御BOX5と、光データ通信器6と、ハロゲンランプ7と、警報ランプ8とを主に有している。
【0017】
車体2は、シャーシ2a,2bから構成される。シャーシ2aは、リフタ4が設置される台部であって、無人搬送車1のほぼ全長にわたって形成される。シャーシ2bは、シャーシ2aを下方から支持する部分である。
【0018】
図1(a)〜(c)に示すとおり、シャーシ2aの底面には、無人搬送車1を走行させるための走行装置3が、車体2の左右に2個ずつ計4個設けられている。各走行装置3は、車軸3aと、車軸3aの両端に連結された一対の車輪3bと、車軸3aを回転可能に軸支する車軸保持部材(図示せず)とから構成されている。この走行装置3は、後述する回転駆動装置56(図2参照)からそれぞれ独立に動力が付与され、各走行装置3ごとに独立して車輪3bを車軸3a回りに回転できるように構成されている。また、各走行装置3は、後述する操舵駆動装置57からそれぞれ独立に動力が付与され、各走行装置3の旋回軸(図示せず)回りにそれぞれ独立して旋回できるように構成されている。これにより、無人搬送車1を前後進いずれにも走行させたり、所望する方向へカーブさせることができる。また、全車輪3bを同じ方向に向けて、無人搬送車1を斜行させることもできる。
【0019】
図1(a)〜(c)に示すとおり、車体2のシャーシ2a上面には、昇降自在に駆動するリフタ4が、シャーシ2aの前後2箇所に設けられている。前後のリフタ4のそれぞれには、後述するリフタ駆動装置58(図2参照)から作動油が供給されるシリンダ(図示せず)が設けられており、各リフタ4は、このシリンダに供給される作動油の油圧に応じて上下方向に伸び縮みする。各リフタ4を下げた状態(図1(b)参照)から、各リフタ4のシリンダに作動油が供給されると、シリンダがそれぞれ上方に延び、各リフタ4が上昇する(図1(a)、(c)参照)。このため、パレット100の台部101の下方から各リフタ4を上昇させることにより、各リフタ4でパレット100を持ち上げて支えることができる。よって、全てのリフタ4を下げた状態の無人搬送車1を、パレット100の長手方向(図1(a)紙面左右方向)に沿って脚部102の間に進入させ、その上で、パレット100の台部101の下方において無人搬送車1の各リフタ4を上昇させることで、無人搬送車1にパレット100を積載することができる(図1(a)、(c)参照)。
【0020】
図1(a)〜(c)に示すとおり、シャーシ2bの前側(図1(a)紙面左側)の部分には、制御BOX5が設けられている。制御BOX5には、走行装置3の回転駆動及び操舵駆動や、リフタ4の昇降、警報ランプ8の点灯などを制御する制御装置50(図2参照)が収納されている。
【0021】
図1(b)、(c)に示すとおり、車体2(シャーシ2b)の左側面(図1(c)紙面右方を向く面)には、光データ通信器6が設けられている。この光データ通信器6は、光データ信号の出力口6aおよび受信窓6bが、車体2の左方(図1(c)紙面右方)に向けて形成され、この光データ通信器6と後述するパレット100の光データ通信器105とが対向する場合に、その光データ通信器105と光データ通信を行うためのものである。無人搬送車1の光データ通信器6は、パレット100の光データ通信器105から発信(送信)される光データ信号を、受信窓6bを介して受信する。これにより、無人搬送車1は、パレット100に設けた後述の各種スイッチ(第1〜第4在荷スイッチ103a〜103d,第1および第2バンパースイッチ104a,104b)の状態を示す情報を非接触(ワイヤレス)で取得することができ、取得した情報に基づいて走行できる。
【0022】
図1(b)、(c)に示すとおり、車体2(シャーシ2b)の左側面(図1(c)紙面右方を向く面)には、ハロゲンランプ7が設けられている。ハロゲンランプ7は、照射口を車体2の左方(図1(c)紙面右方)に向けて形成されており、このハロゲンランプ7と後述するパレット100の太陽電池パネル106とが対向する場合に、太陽電池パネル7に光を照射するためのものである。詳細は後述するが、ハロゲンランプ7からの光は、パレット100の太陽電池パネル106によって電力に変換され、その電力がパレット100の光データ通信器105に供給される。ここで、ハロゲンランプ7は、光データ通信器105を駆動させ光データ信号を発信させるに十分な光を出力する。よって、パレット100が光データ通信器105を駆動させるためのバッテリを有していなくても、無人搬送車1がハロゲンランプ7から光を出力させることで、光データ通信器105に光データ信号を出力させることができる。それにより、無人搬送車1は、無人搬送車1の走行を制御するための情報をパレット100から常時受信できる。
【0023】
また、ハロゲンランプ7は、照射口を車体2の左方(図1(c)紙面右方)に向けて形成されているので、照射口を車体2の上方に向けて取り付けた場合に比べ、照射口の表面に埃や水滴をたまり難くできる。故に、ハロゲンランプ7の出力が、照射口の表面に付着した埃や水滴が原因となって低下することを抑制できるので、ハロゲンランプ7の出力を安定させることができ、それにより、ハロゲンランプ7がパレット100の太陽電池パネル106へ供給する光量を安定させることができる。よって、無人搬送車1のハロゲンランプ7からパレット100の太陽電池パネル106へ光が照射された場合に、太陽電池パネル106において変換される電力量を安定させ、光データ通信器105を安定して動作させることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、無人搬送車1が、パレット100の太陽電池パネル106に光エネルギーとしての光を照射するための光源としてハロゲンランプ7を採用したが、これ以外を本発明の光源として採用することは当然可能である。この光源としては、蛍光灯や、アーク灯、LED、HIDランプなどから適宜採用することができる。
【0025】
図1(c)に示すとおり、光データ通信器6及びハロゲンランプ7のそれぞれの取付位置は、無人搬送車1が、パレット100と前後の向きを揃えて、そのパレット100の所定の積載位置に位置決めして停止し、その位置にて各リフタ4を上昇させてパレット100を持ち上げた場合に、光データ通信器6がパレット100の光データ通信器105と対向し、且つ、ハロゲンランプ7がパレット100の太陽電池パネル106と対向するようにされている。よって、無人搬送車1がパレット100を積載している場合には、無人搬送車1のハロゲンランプ7は、パレット100の太陽電池パネル106の表面に光を常時入射させることができ、これにより、太陽電池パネル106は常時電力をパレット100の光データ通信器105に供給することができる。よって、光データ通信器105は常時駆動して、いつでも光データ信号を無人搬送車1の光データ通信器6へ発信できる。そして、無人搬送車1は、パレット100に設けた各種スイッチの状態を示す情報をいつでも取得することができる。
【0026】
図1(a)〜(c)に示すとおり、シャーシ2bの前側および後側の部分には、警報ランプ8が左右に2個ずつ設けられている。この警報ランプ8は、パレット100の光データ通信器105から発信された、パレット100に設けた各種スイッチ(第1〜第4在荷スイッチ103a〜103d,第1および第2バンパースイッチ104a,104b)が特定の状態であることを示す光データ信号を、無人搬送車1の光データ通信機6によって受信した場合に点灯するものである。これにより、無人搬送車1に積載したパレット100に設けた各種スイッチ103a〜103d,104a,104bが特定の状態である場合に、その旨を報せることができる。なお、ここでいう特定の状態は、パレット100の台部101に載せた搬送物の位置ズレや落下によって、第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dのいずれかが非作動(オフ)となった状態、又は、パレット100の脚部102と、障害物や作業員などとの接触によって、第1および第2バンパースイッチ104a,104bが作動(オン)した状態が該当する。
【0027】
次にパレット100の概略構成について説明する。図1(a)、(c)に示すように、パレット100は、台部101と、その台部101を支える脚部102と、第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dと、第1および第2バンパースイッチ104a,104bと、光データ通信機105と、太陽電池パネル106とを有している。
【0028】
台部101は、その上面が搬送物(図示せず)を戴置する部分として構成されている。一方、台部101の下面は、脚部102が設けられる部分であると共に、無人搬送車1のリフタ4によって支持されるための部分として構成されている。
【0029】
台部101には、その台部101に載せた搬送物を検出する第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dが、台部上面の前後に2個ずつ計4個設けられている。各在荷スイッチ103a〜103dは、台部101から上方に傾くように付勢されており、下方に傾ける(回動させる)ことで作動する(オンする)ものである。そのため、それぞれの在荷スイッチ103a〜103dの上に載るように搬送物を台部101に載せることで、それぞれを作動させることができる。これにより、台部101に載せた搬送物の有無を、各在荷スイッチ103a〜103dによって検出することができる。即ち、搬送中に台部101に載せた搬送物が位置ズレしたり落下した場合には、第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dのいずれかが非作動(オフ)となるので、各在荷スイッチ103a〜103dの状態によって搬送物の位置ズレや落下を検出することができる。
【0030】
図1(a)、(c)に示すように、脚部102(102a〜102f)は、台部101の左右の側縁においてトラス状に形成された一組の部材であって、台部101を路面(地表)から所定の高さで支持する部材である。
【0031】
左右の脚部102の外側面には、第1および第2バンパースイッチ104a,104bが、パレット100の前後方向に延びた脚部102dの略全長にわたってそれぞれ設けられている。この第1および第2バンパースイッチ104a,104bは、パレット100の左または右側面(脚部102の外側面)が障害物や作業員などと接触した場合に、押圧されて作動する(オンする)ものとして構成されている。よって、各バンパースイッチ104a,104bが作動した場合に、障害物などとの接触を検出することができる。
【0032】
図1(a)、(c)に示すように、光データ通信器105が、パレット100の左側(図1(c)紙面右側)の脚部102fに取り付けられている。この光データ通信器105は、光データ信号の出力口105aおよび受信窓105bを脚部102の内側(パレット100の右方、即ち、図1(c)紙面左方)に向けて配設されている。光データ通信器105は、前述の通り、無人搬送車1の光データ通信器6と対向する場合に、その光データ通信器6と光データ通信を行うものである。詳細は後述するが、光データ通信器105は、パレット100に設けた第1〜第4在荷スイッチ103a〜103d及び第1および第2バンパースイッチ104a,104bのそれぞれと電気的に接続されており、それら各種スイッチ103a〜103d,104a,104bの状態を示す情報を、光データ信号として出力口105aから出力するように構成されている。
【0033】
図1(a)、(c)に示すように、太陽電池パネル106が、パレット100の左側(図1(c)紙面右側)に配置される脚部102fに取り付けられている。この太陽電池パネル106は、表面(受光面)をパレット100の内側(パレット100の右方、即ち、図1(c)紙面左方)に向けて配設されており、その表面に入射(受光)した光の光エネルギーを電力に変換(発電)し、その電力を、パレット100の光データ通信器105に供給するものである。この電力により、パレット100の光データ通信器105を駆動させることができ、光データ通信器105に光データ信号を発信させることができる。
【0034】
図1(c)に示すように、パレット100の正面視(即ち、無人搬送車1のパレット100への進入方向視)において、光データ通信器105及び太陽電池パネル106は、それぞれが脚部102の厚み(図1(c)紙面左右方向長さ)よりも薄く形成され、且つ、パレット100の正面視にて光データ通信器105及び太陽電池パネル106の全体が脚部102と重なるように、即ち、光データ通信器105及び太陽電池パネル106が脚部102の厚さ内に収まるように、脚部102を構成する各部材(脚部102a〜102f)の間隙に配設されている。このため、光データ通信器105及び太陽電池パネル106は、いずれも脚部102の内側面(図1(c)紙面左方を向く面)から突出することはない。これにより、無人搬送車1が、パレット100の左右の脚部102の間を進入または退出する場合、脚部102が無人搬送車1と接触することがあっても、パレット100の光データ通信器105及び太陽電池パネル106は、いずれも無人搬送車1と接触しない。よって、パレット100と無人搬送車1との接触を原因とする光データ通信器105及び太陽電池パネル106の破損を防止することができる。
【0035】
また、光データ通信器105及び太陽電池パネル106は、脚部102の内側面から突出することはないので、左右の脚部102の間を出入りする無人搬送車1の各側面とパレット100の各脚部102との間に形成される間隙が減殺されることはない。即ち、太陽電池パネル106の設置に拘わらず、脚部102で無人搬送車1が走行できる領域は変化しない。よって、無人搬送車1とパレット100の脚部102との接触を防ぎつつ、無人搬送車1に左右の脚部102の間を確実に走行させることができる。
【0036】
次に、図2を参照して、無人搬送車1及びパレット100(図1参照)の電気的構成について説明する。図2は、無人搬送車1及びパレット100の電気的構成を示したブロック図である。
【0037】
無人搬送車1の制御装置50は、無人搬送車1の各部を制御するための装置であって、図2に示すように、CPU51、ROM52及びRAM53を有し、これらがバスライン54を介して入出力ポート55にそれぞれ接続されている。また、入出力ポート55には、回転駆動装置56、操舵駆動装置57、リフタ駆動装置58、警報装置59、光データ通信器6及びハロゲンランプ7がそれぞれ接続されている。
【0038】
CPU51は、バスライン54により接続された各部を制御する演算装置である。ROM52は、CPU51により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。ROM52に格納される制御プログラムには、無人搬送車1にパレット100を積載している場合における無人搬送車1の走行を規定する制御プログラムがある。この制御プログラムによれば、無人搬送車1がパレット100を積載した状態で走行する間、CPU51を、光データ通信器6に対して定期的(例えば、1秒毎)にアクセスさせ、光データ通信器6による光データ信号の受信状況を確認させる。これにより、CPU51に、各在荷スイッチ103a〜103dおよび各バンパースイッチ104a,104bの状態を示す情報を取得させる。その取得した情報が、前述の特定の状態、即ち、第1および第2バンパースイッチ104a,104bの作動(オン)状態、又は、走行開始時とは異なる第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dの状態を示すものである場合は、CPU51に、回転駆動装置56を制御させて走行を停止させると共に、警報装置59を制御させて警報ランプ8を点灯させる。
【0039】
RAM53は、CPU51が制御プログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、在荷状態メモリ53aが設けられている。この在荷状態メモリ53aは、無人搬送車1がパレット100を積載して走行する場合に、走行開始時点でパレット100より取得した、第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dの状態を記憶しておくためのメモリである。CPU51は、無人搬送車1の光データ通信器6から各在荷スイッチ103a〜103dの状態を示す情報を取得する度に、その状態と在荷状態メモリ53aに格納されている走行開始時点における各スイッチの状態とを比較する。両者が一致しない場合は、搬送物がパレット100の台部101からズレていたり落下している可能性がある。このため、CPU51は、各在荷スイッチ103a〜103dの状態と、在荷状態メモリ53aの内容とが一致していない場合に後述する回転駆動装置56へ走行停止を指令すると共に、後述する警報装置59へ警報ランプ8の点灯を指令して、その旨を作業員に報せる。
【0040】
次に、パレット100の電気的構成について説明する。パレット100は、第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dと、第1および第2バンパースイッチ104a,104bとを有し、それぞれが入出力ポート107を介して、光データ通信器105と電気的に接続されている。これにより、各在荷スイッチ103a〜103dおよび各バンパースイッチ104a,104bの状態(オン/オフ)は、光データ通信器105に出力され、光データ通信器105に光データ信号として各種スイッチの状態を出力させることができる。また、光データ通信器105には、太陽電池パネル106が接続されている。これにより、太陽電池パネル106で発電された電力が、光データ通信器105を駆動させるために供給される。
【0041】
以上説明したように、無人搬送システム500によれば、無人搬送車1のハロゲンランプ7から光をパレット100の太陽電池パネル106へ出力することにより、パレット100の光データ通信器105を太陽電池パネル106から供給される電力によって駆動させて光データ信号を出力させ、その光データ信号が光データ通信器6に受信されることによって、無人搬送車1の走行を制御させることができる。
【0042】
ここで、パレット100の光データ通信器105から出力される光データ信号は、第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dと、第1および第2バンパースイッチ104a,104bとの状態を示すものであるので、無人搬送車1の走行を、パレット100に設けた各種のスイッチの状態に応じて制御することができる。
【0043】
また、パレット100の光データ通信器105から発信され、且つ、無人搬送車1の光データ通信器6が受信するデータ信号は光データ信号であるので、無人搬送車1とパレット100との間で行われる通信は、磁気による影響を受けない。そのため、無人搬送車1を誘導するために工場に設置されている誘導体やIDタグ等から磁気が出力されていても、無人搬送車1とパレット100との間で、安定したデータ通信を行うことができる。
【0044】
また、無人搬送車1に、上述の誘導体やIDタグを検出するための磁気センサを設けて構成した場合であっても、その磁気センサの検出ノイズとして、パレット100の光データ通信器105から出力された光データ信号は混入しない。そのため、磁気センサを設けて構成した無人搬送車1に、誘導体やIDタグ等を好適に検出させることができる。
【0045】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0046】
例えば、上記の実施形態では、パレット100の光データ通信器105および太陽電池パネル106を、それぞれ脚部102の厚み(図1(c)紙面左右方向長さ)よりも薄く形成し、それぞれを脚部102を構成する各部材(脚部102a〜102f)の間隙に配設することで、それぞれを脚部102の内側面から突出させないように構成した。しかし、必ずしもこれに限られるものでなく、それぞれの配設位置を適宜変更することができる。例えば、パレット100の脚部102の内側面に(図1(c)紙面左方を向く面)に、太陽電池パネル106の厚み以上の深さで凹部を形成し、その凹部内に太陽電池パネル106を配設するようにしても良い。
【0047】
この構成によれば、上記実施の形態と同様に、太陽電池パネル106の表面(受光面)が脚部102の内側面から突出することはない。よって、パレット100と無人搬送車1との接触を原因とする太陽電池パネル106の破損を防止することができる。また、太陽電池パネル106は、脚部102の外側面(図1(c)紙面右方を向く面)に露出していないので、無人搬送車1がパレット100を支持して運搬している場合に、脚部102の外側面が障害物などと接触することがあっても、太陽電池パネル106は、かかる障害物などから保護される。また、太陽電池パネル106は、脚部102の内側面に形成される凹部の内部に配設されているので、上記実施の形態と同様に、左右の脚部102の間を出入りする無人搬送車1の各側面とパレット100の各脚部102との間に形成される間隙が減殺されることはない。即ち、太陽電池パネル106の設置に拘わらず、脚部102で無人搬送車1が走行できる領域は変化しない。よって、無人搬送車1とパレット100の脚部102との接触を防ぎつつ、無人搬送車1に左右の脚部102の間を確実に走行させることができる。
【0048】
また、上記の実施形態では、無人搬送車1の車体2の同一側面に、光データ通信器6とハロゲンランプ7とを配設していたが、必ずしもこれに限られるものでなく、それぞれの配設位置を適宜変更してもよい。例えば、光データ通信器6とハロゲンランプ7とを、車体2の各側面および上面のうち別々の面に配設してもよい。この場合、無人搬送車1の光データ通信器6とハロゲンランプ7との配設位置に応じて、パレット100の光データ通信器105と太陽電池パネル106とを、左右の脚部102および台部101のうち、別々の部材に配置させることとなる。
【0049】
また、上記の実施形態では、光データ通信器105を駆動させるためのバッテリを、パレット100に備えずに構成したが、必ずしもこれに限られるものでなく、パレット100に光データ通信器105を駆動させるためのバッテリを太陽電池パネル106に加えて設けてもよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、パレット100の台部101又は脚部102の状態を検出するものとして、第1〜第4在荷スイッチ103a〜103dと、第1および第2バンパースイッチ104a,104bという、いずれも接触式のセンサを採用したが、必ずしもこれに限られるものでなく、それぞれを非接触のセンサとして構成してもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、その説明を省略したが、無人搬送車1とパレット100との間で行われる光データ通信は、パレット100の光データ通信器105が、無人搬送車1の光データ通信器6へ一方的に光データ信号を発信するものに限られるものではなく、無人搬送車1の光データ通信器6が、パレット100の光データ通信器105へ光データ信号を発信するものであってもよい。例えば、無人搬送車1の光データ通信器6を、無人搬送車1がパレット100を積載して走行を開始する際に所定の光データ信号を出力するものとして構成し、且つ、パレット100の光データ通信器105を、無人搬送車1からの所定の光データ信号を受信したことを条件に、パレット100の各種スイッチの状態を示す情報を光データ信号として出力するものとして構成しても良い。この構成によれば、無人搬送車1によって確実に光データ信号が受信される場合に、パレット100の光データ通信器105に出力を行わせることができるので、パレット100の光データ通信器105からの誤出力を防止することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、無人搬送車1とパレット100との通信において光データ信号を利用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、通信に利用するデータ信号に電波や磁気を利用するものとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 無人搬送車
4 リフタ(支持手段)
6 光データ通信器(データ受信手段)
7 ハロゲンランプ(光源)
50 制御装置(走行制御手段)
100 パレット
101 台部
102 脚部
103a〜103d 在荷スイッチ(状態検出手段)
104a,104b バンパースイッチ(状態検出手段)
105 光データ通信器(データ発信手段)
106 太陽電池パネル(光電池)
500 無人搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物が戴置される台部と、その台部の両側に設けられ前記台部を支持する脚部と、前記台部又は前記脚部の状態を検出する状態検出手段と、電力により駆動され且つ前記状態検出手段で検出される前記台部又は前記脚部の状態に対応するデータ信号を発信するデータ発信手段とを備えるパレットと、
そのパレットを前記台部の下方から持ち上げて支持する支持手段と、前記パレットの台部下方の所定位置においてそのパレットを前記支持手段によって支持している場合に、そのパレットのデータ発信手段から発信されたデータ信号を受信するデータ受信手段と、そのデータ受信手段により受信されたデータ信号に基づいて走行を制御する走行制御手段とを備える無人搬送車と、を有する無人搬送システムにおいて、
前記パレットは、光エネルギーを電力に変換して前記データ発信手段へ供給する光電池を備え、
前記無人搬送車は、前記パレットの所定位置においてそのパレットを前記支持手段によって支持している場合に、そのパレットの光電池に光エネルギーとしての光を照射する光源を備えていることを特徴とする無人搬送システム。
【請求項2】
前記光源は、側方に向けて光を照射するように前記無人搬送車に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の無人搬送システム。
【請求項3】
前記無人搬送車の前記パレットへの進入方向視において、前記パレットの脚部の厚さは、前記光電池の厚さ以上に形成され、その光電池は、前記パレットの脚部の厚さ内に配設されていることを特徴とする請求項2記載の無人搬送システム。
【請求項4】
前記パレットのデータ発信手段から発信され、かつ、前記無人搬送車のデータ受信手段が受信する前記データ信号は、光データ信号であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無人搬送システム。
【請求項5】
パレットを下方から持ち上げて支持する支持手段と、前記パレットの台部下方の所定位置においてそのパレットを前記支持手段によって支持している場合に、データ信号を受信可能なデータ受信手段と、その受信手段により受信されたデータ信号に基づいて走行を制御する走行制御手段とを備え、
搬送物が戴置される台部と、その台部の両側に設けられ前記台部を支持する脚部と、前記台部又は前記脚部の状態を検出する状態検出手段と、電力により駆動され前記状態検出手段で検出される前記台部又は前記脚部の状態に応じたデータ信号を発信するデータ発信手段と、光エネルギーを電力に変換してそのデータ発信手段へ供給する光電池とを備えるパレットを、前記支持手段により支持して走行する無人搬送車において、
前記パレットの所定位置においてそのパレットを前記支持手段によって支持している場合に、そのパレットの光電池に光エネルギーとしての光を照射可能な光源を備えていることを特徴とする無人搬送車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71843(P2013−71843A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214743(P2011−214743)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】